【解決手段】本発明は、衝突板式ジェットミルを使用する、大麦緑葉粉末の製造方法である。本発明の製造方法は、大麦緑葉の乾燥した粗粉砕物を粉砕する微粉砕工程を有することが好ましい。得られる大麦緑葉粉末は、水分量が5質量%以下であり、且つ、累積体積50%における体積累積粒径が5μm以上50μm以下であることが好ましい。前記衝突板式ジェットミルの粉砕条件は、前記粗粉砕物の供給速度が20kg/hr以上150kg/hr以下であることが好ましい。
水分量が5質量%以下であり、且つ、累積体積50%における体積累積粒径が5μm以上50μm以下である大麦緑葉粉末を製造する、請求項1〜3の何れか1項に記載の大麦緑葉粉末の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、本発明者は、特許文献1に記載の従来の大麦緑葉粉末の製造方法では、得られる大麦緑葉粉末の水への分散しやすさに改善の余地があることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は乾燥工程及び粉砕工程を経て大麦の緑葉を粉砕する大麦緑葉粉末の製造方法であって、
粉砕工程において衝突板式ジェットミルを使用する、大麦緑葉粉末の製造方法を提供するものである。
【0011】
具体的には、本発明の概要は以下の通りである。
<1>乾燥工程及び粉砕工程を経て大麦の緑葉を粉砕する大麦緑葉粉末の製造方法であって、
粉砕工程において衝突板式ジェットミルを使用する、大麦緑葉粉末の製造方法。
<2>前記粉砕工程は、大麦緑葉の乾燥した粗粉砕物を粉砕する微粉砕工程を有し、
前記微粉砕工程において前記衝突板式ジェットミルを使用する、<1>に記載の大麦緑葉粉末の製造方法。
<3>前記衝突板式ジェットミルの粉砕条件は、前記粗粉砕物の供給速度が20kg/hr以上150kg/hr以下である、<2>に記載の大麦緑葉粉末の製造方法。
<4>水分量が5質量%以下であり、且つ、累積体積50%における体積累積粒径が5μm以上50μm以下である大麦緑葉粉末を製造する、<1>〜<3>の何れかに記載の大麦緑葉粉末の製造方法。
【0012】
更に、本発明は以下の<5>〜<7>の何れかに記載の大麦緑葉の粉末(以下、「本発明の大麦緑葉粉末ともいう。」)を提供するものである。
<5>大麦緑葉の粉末であって、100msにおける接触角が90°以下であることを特徴とする、大麦緑葉の粉末。
<6>大麦緑葉の粉末であって、1100msにおける接触角が22°以下であることを特徴とする、大麦緑葉の粉末。
<7>大麦緑葉の粉末であって、一の凹部の底から隣接する凸部の頂点までの最大高さH1の、粒子全体の最大高さH2に対する比(H1/H2)が、0.6以下であることを特徴とする、大麦緑葉の粉末。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、水へ分散しやすく、且つ、色や香り、飲感に優れた大麦緑葉粉末及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の一の側面は、乾燥工程及び粉砕工程を経て大麦の緑葉を粉砕する大麦緑葉粉末の製造方法であって、粉砕工程において衝突板式ジェットミルを使用する、大麦緑葉粉末の製造方法である。本発明者らは水への分散しやすさに優れた大麦緑葉粉末が得られる大麦緑葉粉末の製造方法について鋭意検討した。その結果、驚くべきことに、粉砕工程において衝突板式ジェットミルを用いることで、水への分散しやすさに優れた大麦緑葉粉末が得られることを知見した。本明細書でいう大麦緑葉粉末とは、大麦の緑葉を乾燥及び粉砕することで得られる粉末である。乾燥工程及び粉砕工程はいずれを先に行ってもよいし、同時に行ってもよいが、乾燥工程を先に行うことが製造効率上好ましい。大麦緑葉粉末は、搾汁工程又は抽出工程を経ずに製造されることが好ましい。このような大麦緑葉粉末は、大麦の緑葉の搾汁液の乾燥粉末や抽出液の乾燥粉末に比して、風味が良好であり且つ不溶性食物繊維を豊富に含み、健康食品素材として有用なものである。以下説明する本発明の大麦緑葉粉末の製造方法は、本発明の大麦緑葉粉末の好適な製造方法である。
【0017】
本発明で得られる大麦緑葉粉末の原料となる大麦は、二条大麦、六条大麦、裸大麦などを特に限定なく使用でき、これらを1種のみ使用してもよく、2種以上組み合わせて使用してもよい。大麦緑葉は、植物体の葉の部分だけではなく、葉とともに茎その他の部分を含んでもよい。
【0018】
大麦緑葉は何れの収穫時期に収穫されたものであってもよく、特に限定されないが、例えば、成熟期前、すなわち、分けつ開始期から出穂開始前期に収穫されたものであることが好ましい。具体的には、品種の違いによっても異なるが、一般に、背丈が10cm以上、好ましくは10〜90cm程度、特に好ましくは20〜80cm程度、とりわけ30〜70cm程度である大麦から、緑葉を収穫することが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0019】
大麦は、収穫後、直ちに粉末化することが好ましい。粉末化までに時間を要する場合、緑葉の変質を防ぐために低温貯蔵などの当業者が通常用いる貯蔵手段により貯蔵することが好ましい。
【0020】
大麦緑葉の粉砕に用いる衝突板式ジェットミルは、超音速の空気流を用いて衝突板に原料粒子を叩き付けて粉砕するものであることが、得られる大麦緑葉粉末の味及び香りや飲感等が良好であるため好ましい。衝突板式ジェットミルでは、原料粒子を衝突板に直接衝突させる。このため衝突板式ジェットミルは、旋回流式ジェットミル等の粒子同士の衝突により粉砕を行うタイプのジェットミルに比して、衝撃力、衝突確率、粉砕速度が大きく、粒子の粉砕に有利といわれている(非特許文献1のp662の右欄)。また衝突板式ジェットミルでは、粒子と衝突板の衝突を利用するため、粒子が衝突板に衝突したエネルギーが熱エネルギーに変換されるといわれている(特許文献2の段落〔0004〕)。本発明者らは、衝突板式ジェットミルを用いて粉砕された大麦緑葉粉末は、旋回流式ジェットミルにより粉砕されたものに比べ、粒子の角が取れ、より滑らかな丸みを帯びた構造を有していることを確認している。この粒子形状の違いにより、衝突板式ジェットミルによって粉砕された粉末では分散性の向上が起きていたと考えられる。また、この現象を裏付けるように、旋回流式ジェットミルにより粉砕された大麦緑葉粉末と比較して、衝突板式ジェットミルを用い粉砕された粉末では接触角の減少、即ち濡れ性の向上が確認できた。接触角は例えばさらに、粒子形状の違いは口当たりの良さやざらつきの少なさといった飲感の向上にも寄与していると考えている。
【0021】
衝突板式ジェットミルは衝突板と圧縮空気が導入されるノズルを有する。衝突板式ジェットミルとしては例えば
図1に示す構造のものが知られている。
図1に示す衝突板式ジェットミル1では、原料粒子は原料吸入口5から原料吸入管2に導入されてラバールノズルであるノズル4に投入される。ノズル4に投入された原料粒子は、圧縮空気導入口3から導入された圧縮空気に駆動され、末広部4bで超音速に加速された後、ノズル出口6から吐出されて、衝突板7に衝突し、粉砕される。なお、
図1は衝突板式ジェットミルの粉砕機構を説明するために用いた模式図に過ぎず本発明を何ら限定するものではない。衝突板式ジェットミルは、原料粒子を衝突板に衝突させる形式であればよく、
図1の構造に限定されず、旋回流式や流動層式を組み合わせた形式であってもよい。また原料粒子の導入方式や圧縮空気の導入形式、衝突板の固定形式等も
図1に限定されない。
【0022】
衝突板の表面形状としては、平板、凹凸や突起を有するもの、円錐状や角錐状であるもの等が挙げられ、凹凸や突起を有するもの、円錐状、角錐状であることが、表面を滑らかな大麦緑葉粉末を得ることができ、分散性に一層優れるため好ましい。
【0023】
ラバールノズル等のノズルからの吐出圧力は特に限定されないが、0.4MPa以上1.2MPa以下であることが、衝撃力が適度であり、得られる大麦緑葉粉末の香りや味、飲みやすさが一層優れるため好ましく、0.5MPa以上1.0MPa以下であることがより好ましく、0.65MPa以上0.95MPa以下であることが、特に好ましい。
【0024】
原料粉末の装置への供給速度は特に限定されないが、例えば5kg/hr以上250kg/hr以下であることが、衝突効率が良好であり、得られる大麦緑葉粉末の香りや味、飲みやすさが一層優れるため好ましく、10kg/hr以上200kg/hr以下であることがより好ましく、20kg/hr以上150kg/hr以下であることが特に好ましい。なおhrは時間を指す。
【0025】
図1に示すように、ノズル4の吐出方向と直交する平面に対し、衝突板7のノズル側の表面がなす傾斜角度は、適宜調整することができる。
【0026】
大麦緑葉はこれを粗粉砕物とし、当該粗粉砕物を衝突板式ジェットミルによる微粉砕に供することが、生産性向上の点で好ましい。衝突板式ジェットミルによる微粉砕に供する粗粉砕物の大きさとしては目開き2mmの篩を50質量%以上が通過する大きさであることが生産性向上の点で好ましい。この観点から、衝突板式ジェットミルによる微粉砕に供する粗粉砕物の大きさは、目開き2mmの篩を70質量%以上通過する大きさであることがより好ましく、目開き1mmの篩を70質量%以上通過する大きさであることが更に一層好ましい。
【0027】
衝突板式ジェットミルによる微粉砕に供する粗粉砕物は、乾燥した粗粉砕物であることが製造時の粉砕物の取扱いの点で好ましい。衝突板式ジェットミルによる微粉砕に供する乾燥した粗粉砕物は、水分量が10質量%以下であることが、保存安定性及び嗜好性の点で好ましい。この観点から乾燥した粗粉砕物の水分量は8質量%以下がより好ましく、5質量%以下が更に一層好ましい。水分量の測定は、常圧加熱乾燥法及び赤外線水分計法の何れかの方法を用いることが好ましい。いずれか一方の方法で測定した場合に本明細書記載の上限以下となる場合であって他方の測定方法では該当しない場合も当該上限以下の水分量とみなすこととする。
【0028】
大麦緑葉粉末の製造方法において、衝突板式ジェットミルに供給する粉末として、大麦緑葉を乾燥した粗粉砕物を用いる場合、当該粗粉砕物は、大麦緑葉に対する乾燥処理及び粗粉砕処理により得られればよい。乾燥処理及び粗粉砕処理は同時に行ってもよく、或いはいずれを先に行ってもよいが、乾燥処理を先に行った後に粗粉砕処理を行うことが製造効率等の点で好ましい。
【0029】
乾燥処理は例えば、緑葉の水分含量が10質量%以下、好ましくは8質量%以下、特に好ましくは5質量%以下となるように乾燥する処理が挙げられる。乾燥処理は、例えば、熱風乾燥、高圧蒸気乾燥、電磁波乾燥、凍結乾燥などの当業者に公知の任意の方法により行われ得る。加熱による乾燥は、例えば、40℃〜140℃、好ましくは80〜130℃にて加温により緑葉が変色しない温度及び時間で行われ得る。
【0030】
粗粉砕処理は例えば、スライサー、クラッシャー、ミル、ブレンダー、石臼、カッター、ミキサーなどの機器や器具などを用いて、緑葉を粉砕、破砕、スライス又は細断する処理が挙げられる。また、粗粉砕等の作業効率等の点から、粗粉砕前に裁断処理を行ってもよい。
【0031】
大麦の緑葉から乾燥した粗粉砕物を得るに際しては、大麦緑葉の乾燥処理及び粗粉砕処理のほかに、必要に応じて、ブランチング処理、殺菌処理などの処理から選ばれる1種又は2種以上の処理を組み合わせて行ってもよい。ブランチング処理は緑葉の緑色を鮮やかに保つための処理であり、ブランチング処理の方法としては、熱水処理や蒸煮処理などが挙げられる。ブランチング処理を行う場合、乾燥処理の前に行われることが美しい緑色の粉末を一層得やすいために好ましい。
【0032】
熱水処理としては、例えば、70〜100℃、好ましくは80〜100℃の熱水又は水蒸気中で、緑葉を30〜240秒間、好ましくは60〜180秒間処理する方法などが挙げられる。また、熱水処理に際して、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩や炭酸水素ナトリウムなどの炭酸水素塩を用いることが好ましく、炭酸水素の塩を熱水に溶解することにより、緑葉の緑色をより鮮やかにすることができる。
【0033】
蒸煮処理は、常圧又は加圧下において、緑葉を水蒸気により蒸煮する処理である。蒸煮処理は、蒸煮処理と冷却する処理とを繰り返す間歇的蒸煮処理であってもよい。蒸煮処理において、水蒸気により蒸煮する処理は、例えば、30〜240秒間、好ましくは60〜180秒間行われる。蒸煮処理後の冷却処理は、直ちに行われることが好ましく、その方法は特に限定されないが、冷水への浸漬、冷蔵、冷風による冷却、温風による気化冷却、温風と冷風とを組み合わせた気化冷却などが用いられる。このような冷却処理は、緑葉の品温が、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下、さらに好ましくは40℃以下となるように行われる。
【0034】
殺菌処理を行う場合、殺菌処理は、粗粉砕工程の後であり、微粉砕処理の前か後に行われることが作業効率等の点で好ましい。殺菌処理は当業者に通常知られている殺菌処理であれば特に限定されないが、例えば、温度、圧力、電磁波、薬剤などを用いて物理的又は化学的に微生物を殺滅させる処理であるということができる。
【0035】
衝突板式ジェットミルによる粉砕に供する大麦緑葉の粗粉砕物の製造方法としては、従来公知の方法、例えば、特開2004−000210号公報、特開2002−065204号公報、特許第3428956号公報、特開2003−033151号公報、特許第3277181号公報に記載の方法を適宜採用できる。
【0036】
次いで、本発明の製造方法により得られる大麦緑葉粉末について更に詳細に説明する。以下の説明はすべて上記の本発明の大麦緑葉粉末に該当する。
本発明で得られる大麦緑葉粉末の粒度は、分散性及び飲感を良好にする点から、累積体積50%における体積累積粒径が1μm以上であることが好ましく、3μm以上がより好ましく、5μm以上が特に好ましい。また累積体積50%における体積累積粒径は、100μm以下が好ましく、70μm以下がより好ましく、50μm以下が特に好ましく、30μm以下がとりわけ好ましい。同様に、累積体積100%における体積累積粒径は10μm以上が好ましく、20μm以上であることがより好ましく、30μm以上であることが特に好ましく、50μm以上であることがとりわけ好ましい。また累積体積100%における体積累積粒径は、500μm以下が好ましく、400μm以下がより好ましく、300m以下が特に好ましい。体積累積粒径は、例えばレーザー回折・散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置により測定することができる。
【0037】
本発明で得られる大麦緑葉粉末は、保存性や風味の良さ、色の鮮やかさ等の点から、水分量が10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが特に好ましい。大麦緑葉粉末の水分量の測定は、粗粉砕物の水分量の測定と同様の方法にて行うことができる。
【0038】
本発明で得られる大麦緑葉粉末は、保存性や風味の良さ、色の鮮やかさ等の点から、カサ比重が1以下であることが好ましく、0.7以下であることがより好ましく、0.5以下であることが特に好ましく、0.3以下であることがとりわけ好ましい。大麦緑葉粉末のカサ比重の測定は、例えば、JISK6721に準拠し、カサ比重測定器を用いて行うことができる。
【0039】
本発明により得られる大麦緑葉粉末は、上述した通り、粒子の角が取れ、より滑らかな丸みを帯びた構造を有しているところ、当該大麦緑葉粉末は、レーザー顕微鏡での観察像が所定の特徴を有することが飲感や分散性向上の点から好ましい。具体的には、大麦緑葉粉末の構成粒子を、水平面に戴置した状態でレーザー顕微鏡を用いて観察して得られる、水平面と直交する断面の輪郭図(プロファイル)について、一の凹部の底から隣接する凸部の頂点までの最大高さH1の、粒子全体の最大高さH2に対する比(H1/H2)が、0.6以下であることが好ましく、0.5以下であることがより好ましく、0.4以下であることが特に好ましい。また、前記の比H1/H2は0.001以上であることが好ましい。
前記の輪郭図(例えば後述する
図4参照)は、レーザー顕微鏡の断面輪郭の表示機能により得られる。例えば一の輪郭図において、凹部及び凸部であるか否かについては所定の判断基準により判断されることが好ましい。例えば、輪郭図の輪郭線に沿って幅方向に(例えば右方向に)0.1μmごとに点を打った場合に、連続して三つ以上の点で上昇する部分と、それと直近で連続して三つ以上の点で下降する部分とに挟まれた凸形状部分を凸部とし、連続して三つ以上の点で下降する部分と、それと直近で連続して三つ以上の点で上昇する部分とに挟まれた凹形状部分を凹部とすることが好ましい。凹部の底から隣接する凸部の頂点までの最大高さH1とは、粒子における一の断面のみにおける最大高さであるのみならず、粒子全体における凹部の底から隣接する凸部の頂点までの最大高さを意味することが好ましい。例えばレーザー顕微鏡では、3D表示機能により粒子を立体的に観察し、最も高い点(最高点)を特定できるところ、平面視において当該最高点を通り、向きが角度5°ごとに異なる直線を引き、各直線を通り且つ水平面に直交する断面プロファイルをすべて調べることで、H1及びH2を求めることが好ましい。
【0040】
本発明で得られる緑葉粉末は、上述した通り接触角が小さいものであるところ、該大麦緑葉粉末の接触角は、例えば100msのときに90°以下が好ましく、88°以下がより好ましい。また、30°以上が好ましく、40°以上がより好ましい。また、1100msのとき22°以下が好ましく、20°以下がより好ましい。また、1°以上が好ましく、5°以上がより好ましい。接触角は、測定温度約20℃にて0.1gの大麦緑葉粉末に対して水を5μL滴下してから100ms後及び1100ms後の接触角を、接触角計を用いて測定する。測定した合計3点の接触角の平均値とする。msはミリ秒を指す。
【0041】
本発明で得られる大麦緑葉粉末は、後述する実施例に示す通り、水への分散性が良好であり、青臭さや青のり臭がなく、香りが良好である。またえぐみが弱く、後味が良好であり、舌触り、粉っぽさのなさ、口当たりの良さ、のど越しのよさ、ざらつきのなさに優れている。このような大麦緑葉粉末は飲食品用途に適している。
【0042】
飲食品に適用される場合、大麦緑葉粉末のみを含有するものであってもよく、また、その他の成分を含有しても良い。その他の成分を含有する場合、大麦緑葉粉末の含有量は、飲食品中、乾燥質量で、下限値としては、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、1質量%以上がさらに好ましく、上限値としては、99質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、80質量%以下がさらに好ましい。
【0043】
本発明により得られる大麦緑葉粉末の成人1日の摂取量は特に限定されず、緑葉の種類、摂取態様や摂取者の食事内容などに応じて適宜設定され得るが、例えば、大麦緑葉粉末の質量換算で、0.1〜100gであり、好ましくは1〜50gである。
【0044】
本発明により得られる大麦緑葉粉末をその他の成分とともに飲食品に適用する場合、その他の成分としては、例えば、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンC、ビタミンEなどのビタミン類;ゼラチン、コラーゲンペプチド、植物由来タンパク質などのタンパク質;難消化性デキストリン、ポリデキストロースなどの水溶性食物繊維;ビートオリゴ糖、大豆オリゴ糖、キシロオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖などのオリゴ糖;カルシウム、マグネシウム、鉄などのミネラル類;N−アセチルグルコサミン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸などのムコ多糖類;乳、発酵乳、脱脂粉乳などの乳製品;豆乳、豆乳粉末などの豆乳製品;レモン、リンゴ、じゃがいも、ニンジン、カボチャ、ニガウリ、トマト、グリーンピースなどの植物又は植物加工品;乳酸菌、納豆菌、酪酸菌、麹菌、酵母などの微生物などが挙げられる。さらに必要に応じて通常食品分野で用いられる、デキストリン、ブドウ糖、乳糖、ショ糖、麦芽糖(マルトース)、果糖、エリスリトール、トレハロース、マルチトール、キシリトール、でんぷんなどの糖類;ステビア、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテーム、ソーマチン、還元麦芽糖などの甘味料;クエン酸、乳酸、グルコン酸、リンゴ酸などの酸味料;酸化チタンなどの着色料;アラビアガム、キサンタンガムなどの増粘剤;シェラックなどの光沢剤;タルク、二酸化ケイ素、セルロース、ステアリン酸カルシウムなどの製造用剤などを、その他の成分としてもよい。これら以外にも、種々の賦形剤、結合剤、滑沢剤、安定剤、希釈剤、増量剤、増粘剤、乳化剤、着色料、香料、食品添加物、調味料などをその他の成分として挙げることができ、これらは単独又は2種以上の組み合わせであってもよい。その他の成分の含有量は、飲食品の利用形態や本発明により得られる大麦緑葉粉末の含有量などに応じて適宜選択することができる。また、その他成分は製品中で混合しても良いし、使用時に併用しても良い。
【0045】
飲食品の形態は特に限定されず、任意の形態とすることができる。例えば、粉末状、粒状、細粒状、顆粒状、錠状、棒状、板状、ブロック状、固形状、丸状、液状、飴状、ペースト状、クリーム状、ハードカプセルやソフトカプセルのようなカプセル状、カプレット状、タブレット状、ゲル状、ゼリー状、グミ状、ウエハース状、ビスケット状、クッキー状、ケーキ状、チュアブル状、シロップ状、スティック状などの各形態が挙げられる。本発明により得られる大麦緑葉粉末を含む飲食品を水などと混合し、溶解したり懸濁させたりするなどして使用する場合は、水などへの溶解性の観点から、飲食品の形態は粉末状、粒状、細粒状、顆粒状であることが好ましく、さらに、飛び散りにくく、ダマになりにくいことから、粒状、細粒状、顆粒状であることがより好ましい。
【0046】
飲食品の摂取方法は特に限定されないが、例えば、飲食品が固形状の形態である場合、摂取する者の好みなどに応じて、固形状のまま経口摂取してもよいし、これを水などの液体と混合した液状物とし、該液状物を飲用するなどして経口摂取してもよい。
【0047】
飲食品の具体例としては、清涼飲料などの各種飲料、パン・菓子類、麺類などの各種食品、調理品などを挙げることができる。ここでいう飲料には、青汁や、青汁に果汁や野菜、乳製品等を添加してジュース、シェイク、スムージーにしたものや、清涼飲料、炭酸飲料やそれらのもとなどの形態としたものを挙げることができる。ここでいう飲料には、液体状の組成物だけでなく、固形状の組成物であって、飲用時に水などの溶媒と混合して液体状の飲料とするものが含まれる。また、パン・菓子類としては、食パン、菓子パン、フランスパン、イギリスパン、マフィン、蒸しパン、ドーナツ、ワッフルなどのパン類;バターケーキ、スポンジケーキ、シフォンケーキ、ホットケーキなどのケーキ類;シャーベット、アイスなどの冷菓;ゼリー;クッキーなどを挙げることができる。麺類としては、うどんや素麺などが挙げられる。調理品としては、カレー、シチュー、味噌汁、野菜スープなどのスープやそれらのもと、粉末調味料などを挙げることができる。
【0048】
本発明で得られる大麦緑葉粉末は後述する実施例に示す通り、水への分散性が良好であり、青臭さや青のり臭がなく、香りが良好であり、えぐみが弱く、後味が良好であり、舌触り、粉っぽさのなさ、口当たりの良さ、のど越しのよさ、ざらつきのなさに優れる。このことから本発明で得られる大麦緑葉粉末は、飲食品の中でも、青汁用の飲食用組成物に用いることが特に好ましい。
【0049】
青汁用の飲食用組成物としては、青汁や、青汁に果汁や野菜、乳製品等を添加してジュース、シェイク、スムージーにしたり、清涼飲料、炭酸飲料やそれらのもと等の形態としたものを挙げることができる。
【0050】
青汁用の飲食用組成物は、水等の液体と混合した混合物を経口摂取する形態であると、分散性が良好であり、青臭さや青のり臭がなく、香りが良好であり、えぐみが弱く、後味が良好であり、舌触り、粉っぽさのなさ、口当たりの良さ、のど越しのよさ、ざらつきのなさに優れる効果が効果的に発揮されるために特に好ましい。また青汁用の飲食用組成物が固体の形態である場合、上述したように、これを水と混合した液状体となし、該液状体を飲用する等経口摂取することができるが、摂取する者の好み等に応じて、固体のまま経口摂取してもよい。また水だけでなく、牛乳、豆乳、果汁飲料、乳清飲料、清涼飲料、ヨーグルト、ホットケーキミックス等に添加して使用してもよい。また、栄養機能表示食品、特定保健用食品、機能性表示食品として用いても良いことは言うまでもない。
【0051】
青汁用の飲食用組成物の具体的な形態としては、例えば、飲食などの経口摂取に適した形態、具体的には、粉末状、粒状、顆粒状、錠状、棒状、板状、ブロック状、固形状、丸状、液状、飴状、ペースト状、クリーム状、ハードカプセルやソフトカプセルのようなカプセル状、カプレット状、タブレット状、ゲル状、ゼリー状、グミ状、ウエハース状、ビスケット状、クッキー状、ケーキ状、チュアブル状、シロップ状、スティック状等の各形態が挙げられる。
【0052】
青汁用の飲食用組成物は、大麦緑葉粉末以外に、その他の成分を含んでいてもよい。前記のその他の成分としては、例えば、ビタミン類、タンパク質、オリゴ糖、ミネラル類、多糖類、乳製品、植物加工品、乳酸菌、などの微生物、糖類、甘味料、クエン酸、酸味料、着色料、増粘剤、光沢剤のほか、タルク、二酸化ケイ素、セルロース、ステアリン酸カルシウム等の製造用剤等を配合することができる。その他の成分としては、これら以外にも、種々の賦形剤、結合剤、滑沢剤、安定剤、希釈剤、増量剤、増粘剤、乳化剤、着色料、香料、食品添加物、調味料などを挙げることができる。その他の成分の含有量は、飲食品の形態等に応じて適宜選択することができる。
【0053】
本発明で得られる大麦緑葉粉末を青汁用の飲食用組成物に用いる場合、当該大麦緑葉粉末は、青汁用の飲食用組成物の固形分中、3質量%以上であることが本発明の製造方法を適用する効果を一層高める点で好ましく、5質量%以上であることが更に好ましく、10質量%以上であることが特に好ましい。好ましい上限は飲食品に対する大麦緑葉粉末の割合と同様である。
【実施例】
【0054】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。しかし本発明の範囲はかかる実施例に限定されない。以下、特に断らない場合「%」は質量%、「部」は質量部を表す。
【0055】
(実施例1〜4)
背丈が30〜50cmで刈り取った、大麦の茎を含む緑葉を用いた。これを水洗いし、付着した泥などを除去し、次いで2〜5cm程度の大きさに切断する前処理を行った。前処理した緑葉を、85〜95℃の熱湯に90秒間浸漬してブランチング処理し、その後、室温の水で冷却した。続いて、緑葉を遠心分離して脱水した後、裁断機を用いて粗粉砕した。その後、最終水分量が5質量%以下となるまで、90〜130℃にて温風乾燥した。乾燥後の粗粉砕物は、目開き1mmの篩を全て通過するものであった。得られた粗粉砕物を、衝突板式ジェットミルにより微粉砕して実施例1の大麦緑葉粉末を得た。衝突板式ジェットミルの衝突板(金属酸化物製)の形状は円錐状であった。粉砕におけるラバールノズルからの吐出圧力を0.7〜0.9MPaとした。得られた大麦緑葉粉末の体積基準の粒度分布をレーザー回折・散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置にて測定に用いる液媒をエタノールとして測定し、水分量は常圧加熱乾燥法にて測定し、カサ比重はJIS K6721に準拠して測定した。製造条件(衝突板式ジェットミルへの粗粉砕物の供給速度)及び得られた大麦緑葉粉末の各種物性の測定結果を表1に示す。なお、以下の表において、「×50」は累積体積50%における体積累積粒径を指し、「×100」は累積体積100%における体積累積粒径を指す。表1に記載の粒度は4回〜23回の測定の平均値であり、各実施例及び比較例で測定の振れ幅は累積体積50%における体積累積粒径は最大3μm、累積体積100%における体積累積粒径は最大50μm弱程度である。
【0056】
(比較例1)
微粉砕工程において、衝突板式ジェットミルの代わりに、旋回流式ジェットミルを用いた以外は実施例1と同様として、比較例1の大麦緑葉粉末を得た。製造条件(旋回流式ジェットミルへの粗粉砕物の供給速度)及び得られた大麦緑葉粉末の各種物性の測定結果を表1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
<試験1>沈殿のしやすさに関する評価
[評価1] 分散性測定
実施例1〜4及び比較例1で得られた大麦緑葉粉末5gをそれぞれ純水50mlと混合し、水流アスピレーターを用いて脱気した。脱気後、混合液をメスシリンダーに移し、純水を加えて100mlになるよう調整した。24時間静置後、上清部分を分取し、エバポレーターを用いて乾固させ、上清中に浮遊していた大麦緑葉粉末の乾燥質量を測定した。比較例1の大麦緑葉粉末について測定した乾燥質量を1としたときの相対乾燥質量(質量比)を表2に示す。
【0059】
【表2】
【0060】
表2の結果から、旋回流式ジェットミルを用いて製造された大麦緑葉粉末に比べ、衝突板式ジェットミルを用いて製造された大麦緑葉粉末のほうが、分散性が高く沈殿しにくいことが分かった。
【0061】
[評価2]接触角の測定
実施例1、2、4及び比較例1で得られた大麦緑葉粉末について、接触角計(協和界面化学社製、DME−211)を用いて上記の方法にて接触角の測定を行った。結果を表3に示す。
【0062】
【表3】
【0063】
表3の結果から、旋回流式ジェットミルを用いて製造された大麦緑葉粉末に比べ、衝突板式ジェットミルを用いて製造された大麦緑葉粉末のほうが、接触角が小さいことが分かった。
【0064】
以上より、本発明の大麦緑葉粉末は接触角が小さいことから濡れ性が高いため、分散性が高く沈殿しにくいことが分かった。
【0065】
<試験2>大麦緑葉粉末の形状評価
実施例1及び比較例1で得られた大麦緑葉粉末について、レーザー顕微鏡(VK-X1000)を用いて粒子の観察を行った。また、一の凹部の底から隣接する凸部の頂点までの最大高さH1の、粒子全体の最大高さH2に対する比(H1/H2;
図5参照)を測定した。結果を
図2〜5に示す。
【0066】
図2〜
図5より、旋回流式ジェットミルを用いて製造された大麦緑葉粉末に比べ、衝突板式ジェットミルを用いて製造された大麦緑葉粉末のほうが粒子表面の凹凸が少なく、滑らかな形状となっていることがわかる。また、
図5より、実施例1のH1/H2は0.1であり、比較例1のH1/H2は0.7であった。このことからも、衝突板式ジェットミルを用いて製造された大麦緑葉粉末のほうが、滑らかな形状となっていることがわかる。
【0067】
<試験3>官能評価
実施例1及び比較例1で得られた大麦緑葉粉末について、官能試験を実施した。50mlの飲料水に大麦緑葉粉末1.5gを混合し、よく分散させた。被験者として、健常な成人6名(男性5人、女性1人、平均年齢28.1歳)を無作為に選出した。これらの被験者6名に対し以下の表4に示す項目に従って、官能評価を実施した。官能評価は、比較例1の大麦緑葉粉末を基準とし、実施例1の大麦緑葉粉末を以下の評価基準で評価した。各被験者の評価点の平均値を表4に示す。
【0068】
<評価基準>
比較例1に比して非常に良い。 7点
比較例1に比して良い。 6点
比較例1に比して若干良い。 5点
比較例1と同等である。 4点
比較例1に比して若干悪い。 3点
比較例1に比して悪い 2点
比較例1に比して非常に悪い。 1点
【0069】
【表4】
【0070】
表4に示すように、実施例1は味や香り、飲感が優れていることが分かった。また、見た目にも沈殿しにくいことが確認され、飲料用組成物等の飲食用組成物として優れていることが分かった。
水分量が5質量%以下であり、且つ、累積体積50%における体積累積粒径が5μm以上50μm以下である大麦緑葉粉末を製造する、請求項1〜3の何れか1項に記載の大麦緑葉粉末の製造方法。