【解決手段】尿素の種粒子、尿素水溶液、空気を導入して平均粒径1mm以上の尿素粒子を生成させるための流動床型または流動床/噴流床型造粒装置であって、造粒装置が、底床、天面部、側面部で構成される箱型の造粒室を有しており、造粒室の内壁面が金属板材により形成されており、側面部の上方または天面部に排気口を有し、側面部または天面部に尿素の種粒子の導入口を有し、側面部に尿素粒子の回収口を有し、底床または側面部から尿素水溶液が導入され、底床、または底床および側面部から空気が導入され、造粒室の内壁面の少なくとも一部が粗面加工されており、粗面加工面の凸凹の算術平均粗さ(Ra)(JIS B 0601:1994)が0.35〜5.0μ\ochmで、凹凸の局部山頂の平均間隔(S)(JIS B 0601:1994)が2〜300μmである、流動床型または流動床/噴流床型造粒装置。
尿素の種粒子、尿素水溶液および空気を導入して、平均粒径(ふるい分け試験法JIS Z8815、ASTM E11による)1mm以上の尿素粒子を生成させるための流動床型造粒装置または流動床/噴流床型造粒装置であって、
前記流動床型造粒装置または流動床/噴流床型造粒装置が、底床と、前記底床と対向する天面部、前記底床と前記天面部の間の側面部を含む、箱型の造粒室を有しており、前記底床と対向する底面部を前記天面部の反対側に有しており、
前記造粒室の内壁面が金属材料の板材により形成されており、前記天面部または側面部の上方に排気口を有し、前記側面部または天面部に尿素の種粒子の導入口を有し、前記側面部に尿素粒子の出口を有し、前記底床または前記側面部に尿素水溶液の導入口を有し、前記底床、または前記底床および前記側面部に空気の導入口を有しており、
前記造粒室の内壁面の少なくとも一部が粗面加工されているものであり、
前記粗面加工されている面の凸凹の算術平均粗さ(Ra)(JIS B 0601:1994)が0.35〜5.0μmであり、かつ前記凹凸の局部山頂の平均間隔(S)(JIS B 0601:1994)が2〜300μmである、流動床型造粒装置または流動床/噴流床型造粒装置。
前記底床と前記天面部の間の側面部の少なくとも一部が粗面加工され、さらに前記天面部の一部が粗面加工されているものである、請求項1または2記載の流動床型造粒装置または流動床/噴流床型造粒装置。
前記運転時において造粒室内に流動床が形成される高さよりも天面部側の高さ方向の範囲の内壁面が、前記流動床が形成される高さの1倍〜10倍の範囲において、算術平均粗さ(Ra1)(JIS B 0601:1994)が0.35〜5.0μmであり、かつ粗面加工された凹凸の局部山頂の平均間隔(S)(JIS B 0601:1994)が2〜300μmである第一の粗面加工面を有し、
前記第一の粗面加工面よりも天面部側の高さ方向の範囲を含む範囲に第二の粗面加工面を有し、前記第二の粗面加工面の内壁面の算術平均粗さ(Ra2)(JIS B 0601:1994)と前記Ra1が、Ra1>Ra2の関係を満たしているものである、請求項1〜6のいずれか1項記載の流動床型造粒装置または流動床/噴流床型造粒装置。
前記第一の粗面加工面の内壁面の算術平均粗さ(Ra1)(JIS B 0601:1994)と凹凸の局部山頂の平均間隔(S1)(JIS B 0601:1994)と
前記第二の粗面加工面の内壁面の算術平均粗さ(Ra2)(JIS B 0601:1994)と凹凸の局部山頂の平均間隔(S2)(JIS B 0601:1994)が、
Ra1とRa2は、Ra1/Ra2が1〜35 であり、かつS1とS2は、S1/S2が1〜1000の関係を満たしているものである、請求項1〜7のいずれか1項記載の流動床型造粒装置または流動床/噴流床型造粒装置。
前記Ra1が0.35〜5.0μmであり、かつ前記平均間隔(S)が2〜50μmである、請求項1〜8のいずれか1項記載の流動床型造粒装置または流動床/噴流床型造粒装置。
前記造粒室が、複数の噴流管出口が規則的に配置された多孔板からなる底床部を有しており、尿素の種粒子の導入口が前記底床部よりも天面部側に接続されており、尿素水溶液を噴射する噴射ノズルが前記噴流管出口面の中心付近に配置され、前記噴流管出口から噴出す空気噴流とともに尿素水溶液が前記造粒室に形成される流動床に噴射されるものである、請求項1〜9のいずれか1項記載の流動床/噴流床型造粒装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(1)
図1〜
図3に示す流動床/噴流床型造粒装置
図1〜
図3により本発明の流動床型造粒装置または流動床/噴流床型造粒装置の実施形態を説明する。
【0010】
本発明の流動床型造粒装置または流動床/噴流床型造粒装置は、尿素の種粒子、尿素水溶液および空気を導入して、平均粒径1mm以上の尿素粒子を生成させるための装置である。
本発明は、造粒室の内壁面の少なくとも一部が特定の凸凹を有する状態に粗面加工されていることが特徴である。
このため、流動床型造粒装置の場合は、尿素粒子の生成手段として造粒室内に流動床を形成できる装置であればよく、流動床/噴流床型造粒装置の場合は、尿素粒子の生成手段として造粒室内に流動床と噴流床を形成できる装置であればよく、いずれも公知の造粒装置と同じもの、または公知の造粒装置の一部を改変したものが含まれる。
流動床型造粒装置の例としては、特公昭56−47181号公報の第1図などと同じもの、または目的に応じて一部改変したもの、流動床/噴流床型造粒装置の例としては、特許文献2(特開2007−167768号公報)の
図3、特許文献3(特許4455643号公報)の
図1などと同じもの、または目的に応じて一部改変したものなどを挙げることができる。
本発明を適用できる流動床型造粒装置または流動床/噴流床型造粒装置は、新設の造粒装置だけでなく、既設の造粒装置も含まれる。
以下においては、流動床/噴流床型造粒装置(以下「造粒装置」と略すことがある)1として説明する。
【0011】
造粒装置1は、底面部11と底面部11と対向する天面部12、底面部11と天面部12の間の四面の側面部13〜16(13、14、15,16)を有し、底面部11と天面部12の間の底床19により内部空間(造粒室)20U、内部空間(蓄気室)20L(20L1と20L2)に分割される。
側面部は、底床19から上方が側面部13U〜16U(13U、14U。15U、16U)、底床19から下方が13L〜16L(13L、14L。15L、16L)である。
なお、以下において番号と共に「U」と表示するときの「U」は、当該構成要素が底床19より上方(天面部12側)であることを意味し、番号と共に「L」と表示するときときの「L」は、当該構成要素が底床19より下方(底面部11側)であることを意味する。
【0012】
箱型の造粒室20Uには、底床19上に尿素粒子の流動床50および噴流床51が運転時に形成される。
流動床50および噴流床51内の尿素粒子は、激しく踊るように流動しながら、尿素の種粒子が供給される尿素の種粒子の導入ライン25が接続されている側面部16U側から、尿素粒子の回収ライン35が接続されている側面部15U側に向かって(
図2中の白矢印方向)、粒子径を増しながら徐々に移動する。
造粒室20Uは、
図2に示すとおり平面形状が長方形になっているが、長方形に限定されるものではなく、正方形、長方形や正方形の一部が変形された形状のもの、その他の形状のものでもよい。
四面の側面部13U〜16Uは、造粒室20U内の尿素粒子の移動方向に沿う第1長辺側面部13U、第1長辺側面部13Uと対向する第2長辺側面部14Uと、第1短辺側面部15U、第1短辺側面部15Uと対向する第2短辺側面部16Uからなるものである。
【0013】
造粒室20Uを構成する底床19、天面部12、四面の側面部13U〜16Uは、金属材料の板材により形成されている。天面部12、四面の側面部13U〜16Uは、内側面(造粒室20Uに面している面)が金属材料になっていれば、その反対側(当該金属材料の板材の外側)がコンクリートのような非金属材料で構成されている積層構造のものでもよい。
底床19、天面部12、四面の側面部13U〜16Uは、全てが同じ金属材料の板からなるものでもよいし、一部が異なった金属材料の板からなるものでもよい。
底床19、天面部12、四面の側面部13U〜16Uの金属材料の板材は、一部または全部が、鉄または鉄合金(ステンレス鋼など)からなるものであることが好ましい。
【0014】
造粒室20Uの第2短辺側面部16Uには、底床19よりも高い位置に尿素の種粒子の導入口があり、尿素の種粒子の導入ライン25が接続されている。
【0015】
天面部12には排気ライン23が接続されており、排気ライン23の接続口が造粒室20Uの排気口22である。造粒室20U内のダストの大部分は、空気と共に排気口22から排気ライン23を通って外部に排出される。
排気口22は、第1長辺側面部13U、第2長辺側面部14U、第1短辺側面部15Uまたは第2短辺側面部16Uのいずれかの天面部12に近い高さに形成されていてもよい。
【0016】
造粒装置1には、造粒室20Uの下方に底面部11、側面部13L〜16L、隔壁17、底床19で形成される流動用蓄気室20L1および噴流用蓄気室20L2が設けられている。
底床19は、小さい空気孔42が多数設けられた多孔板であり、噴流床を形成させるための空気を通す噴流管41の出口(上端)が規則的に配置されている。
噴流用空気を通す噴流管41の出口が規則的に配置されている多孔板からなる底床19は、例えば、特許文献3(特許4455643号公報)の
図4の多孔板(本発明の
図1の底床19に相当するものである)、同公報の
図9の多孔板(本発明の
図1の底床19に相当するものである)、同公報の
図5、
図6に示す公知の多孔板、またはこれらを改良した多孔板を使用することができる。
図1のような造粒装置1の場合、流動床形成用の空気は、流動用空気導入ライン40から一旦多孔板19の下に設けられた流動用空気蓄気室20L1に供給され、その後、多孔板19の空気孔42を通じて造粒室20Uに導入される。噴流用空気は、噴流用空気導入ライン45から一旦流動用空気蓄気室20L1の下方に設置された噴流用空気蓄気室20L2に供給され、その後、噴流管41を通じて造粒室20Uに導入される。
【0017】
造粒室20Uの底床19に規則的に配置された噴流管41の出口からは噴流用空気が供給され、粒子の存在が疎の空間である噴流床51を流動床50中に形成する。
尿素水溶液は、尿素の水溶液の導入ライン31から導入されて噴流管41の出口面の中央付近に設置された尿素水溶液の噴射ノズル32から、造粒室20U内の噴流床51に噴霧される。
噴流床51中において粒子は噴流空気によって加速され、矢印48のように流動床50上の空間へ飛躍したのち、勢いを失い流動床50中へ落下し、周囲の噴流床51に巻き込まれ再び尿素水溶液の液滴を噴霧される。
噴霧された尿素液滴が噴流床51中の尿素粒子表面に繰り返し付着・乾燥し積層することで、造粒室20U内に供給された種粒子は所定の大きさの尿素粒子に成長する。
噴射ノズル32は、
図2に示すとおり、Y方向に6個、Y方向に直交するZ方向に3個配置されている。噴射ノズル32の数は、造粒装置1において生成する尿素粒子の生産量に応じて調整することができ、噴射ノズル32の配置は造粒装置の形状に応じて調整することができる。
尿素水溶液の噴射ノズル32が配置されている範囲は、第1長辺側面部の13Uaと第2長辺側面部の14Uaにはさまれる範囲であり、第1長辺側面部の13Ubと第2長辺側面部の14Ubにはさまれる範囲には噴射ノズル32は配置されていない。
第1長辺側面部13UのY方向長さに占める13UaのY方向長さ(または第2長辺側面部14UのY方向長さに占める14UaのY方向長さ)の割合は、造粒装置に設置する尿素水溶液の噴射ノズル32の数や尿素粒子の回収ライン35から回収される尿素粒子の温度要求、造粒装置を設置する建屋の形状などを総合的に考慮して決定される。
【0018】
第1短辺側面部15Uには、尿素粒子の出口が設けられ、尿素粒子の回収ライン35に接続されている。
尿素粒子の回収ライン35に流出した尿素粒子のうち、所定の粒子径範囲に入る粒子を篩などで分離し、製品として次の工程に送られるが、その範囲を下回る粒子はそのまま、上回る粒子は粉砕機などで小さく粉砕して、尿素の種粒子の導入ライン25から再び造粒室20Uに供給される。
所定の粒子径範囲に入る粒子も必要な種粒子の数に応じて小さく粉砕して、尿素の種粒子の導入ライン25から再び造粒室20Uに供給してもよい。
【0019】
造粒室20Uの内壁面の一部または全部は、粗面加工されている。前記内壁面とは、底床19、側面部13U〜16Uおよび天面部12である。
内壁面の一部が粗面加工されているときは、少なくとも側面部13Uおよび側面部14Uの底床19から天面部12までの高さ範囲の一部が粗面加工されていることが好ましく、側面部13U〜16Uの底床19から天面部12までの高さ範囲の一部が粗面加工されていることがより好ましい。
側面部13U〜16Uにおいて、粗面加工されている部分の高さの範囲は、底床19から上の運転時に流動床50が形成される高さ53(X方向の範囲)を含む範囲であることが好ましい。
運転時に流動床50が形成される高さ53を含む範囲は、底床19から、運転時に流動床50が形成される高さ53までの範囲と、運転時に流動床50が形成される高さ53より上の天面部12側の範囲であり、後者の範囲は、運転時に流動床50が形成される高さ53の1倍〜10倍の範囲であることが好ましく、3倍〜9倍の範囲であることがより好ましい。
運転時に流動床50が形成される高さ53は、造粒装置1の大きさや運転条件によって異なるが、100〜1000mmの範囲が好ましい。
【0020】
同じく造粒室20Uの内壁面の一部が粗面加工されているとき、側面部13Uおよび側面部14Uにおいて粗面加工されている範囲は、側面部16Uから側面部15Uに向かう方向(Y方向)において、尿素水溶液の噴射ノズル32が設置されている範囲を含むことが好ましい。具体的には、噴射ノズル32が配置された範囲と対向する第1長辺側面部の13Uaと第2長辺側面部の14Uaの範囲であることが好ましい。
【0021】
同じく造粒室20Uの内壁面の一部が粗面加工されているとき、上記した側面部13U〜16Uの少なくとも一部に加えて、さらに天面部12の一部が粗面加工されていることが好ましい。
天面部12の一部が粗面加工されているとき、天面部12において粗面加工されている範囲は、天面部12と側面部13U〜16Uとの境界線に沿った幅100〜1000mmの環状部分、および天面部12と排気口22との境界線に沿った幅100〜1000mmの環状部分であることがより好ましい。
【0022】
造粒室20Uの粗面加工されている内壁面の粗面加工状態(凸凹)は、算術平均粗さ(Ra)(JIS B 0601:1994)が0.35〜5.0μmであり、かつ前記凹凸の局部山頂の平均間隔(S)(JIS B 0601:1994)が2〜300μm、好ましくは2〜50μmである。
内壁面の粗面加工状態(凸凹)が前記数値範囲内であると、粗面加工面のダスト付着抑制効果が最も高い。
【0023】
造粒室20Uは、側面部13U〜16Uの内面の一部が粗面加工されているとき、当該粗面加工面は二種類の異なる粗面形態に加工された第1の粗面加工面と第2の粗面加工面にすることができる。
第1の粗面加工面の範囲は、少なくとも側面部13Uおよび側面部14Uにおいて、高さ方向(
図1のX方向)には、底床19から運転時に流動床50が形成される高さ53までの範囲と、前記運転時に流動床50が形成される高さ53よりも天面部側の範囲であり、後者の範囲は運転時に流動床50が形成される高さ53の1倍〜10倍の範囲であることが好ましく、3倍〜9倍の範囲であることがより好ましい。
また、前記第1の粗面加工面のうち、側面部13Uおよび14Uにおいては、側面部16Uから側面部15Uに向かう方向(
図2のY方向)において、粗面加工の範囲が尿素水溶液の噴射ノズル32が設置されている範囲を含むことが好ましい。具体的には、尿素水溶液の噴射ノズル32が配置された範囲と対向する第1長辺側面部の13Uaと第2長辺側面部の14Uaの範囲であることが好ましい。
第2の粗面加工面の範囲は、造粒室20Uの側面部13U〜16Uおよび天面部12のうち、第1の粗面加工面を除いた範囲であり、第1の粗面加工面に隣接していることが望ましい。
第1の粗面加工面の粗面加工状態(凸凹)は、算術平均粗さ(Ra1)(JIS B 0601:1994)が0.35〜5.0μmであり、かつ前記凹凸の局部山頂の平均間隔(S1)(JIS B0601:2001)が2〜300μm、好ましくは2〜50μmである。
第2の粗面加工面の粗面加工状態(凸凹)は、算術平均粗さ(Ra2)(JIS B 0601:1994)が前記Ra1とRa1>Ra2の関係を満たしているものであることが好ましい。
Ra1とRa2は、Ra1/Ra2が1〜35であることが好ましく、前記第1の粗面加工面の凹凸山頂平均間隔S1と第2の粗面加工面の凹凸山頂平均間隔S2は、S1/S2が1〜1000好ましくは、3〜100である。
なお、Ra及びS等の粗さ測定は、KEYENCE社製 形状解析レーザー顕微鏡 VK-X250などにより実施できる。
【0024】
粗面加工方法としては、公知の各種ブラスト加工またはそれらを改良したブラスト加工(例えば、特開2017−170408号公報[網状フィルタの表面処理方法及び網状フィルタ]、特開2012−040744号公報[金型の表面処理方法及び前記方法で表面処理された金型])を使用することができる。ブラスト加工以外にも、化学研磨(酸洗、強アルカリ)、サンドペーパー、バフ研磨、電解研磨、不動態被膜処理、コーティング(PVD,CVD、フッ素)などの方法によって、粗面加工を施してもよい。
新設の造粒装置に前記粗面加工方法を適用するときは、造粒室20Uの内壁面を直接粗面加工する方法や、別途粗面加工した金属製板材を造粒室20Uの内壁面に溶接やボルト留めなどの固定方法により張り付ける方法を使用することができる。
また既設の造粒装置に前記粗面加工方法を適用するときは、上記同様に造粒室内面を直接粗面加工する方法や、別途粗面加工した金属製板材を造粒室20Uの内壁面に溶接やボルト留めなどの固定方法により張り付ける方法を使用することができる。また、造粒室20Uの既設壁を撤去して別途粗面加工した金属製板材に張り替える方法も使用することができる。
【0025】
(2)
図4〜
図6に示す流動床/噴流床型造粒装置
図4〜
図6により本発明の流動床/噴流床型造粒装置の別実施形態を説明する。
図1〜
図3と同じ部分は同じ番号を付している。
【0026】
図4〜
図6に示す流動床/噴流床型造粒装置1Aは、尿素水溶液の導入ライン31から導入された尿素水溶液と高圧空気用導入ライン60から導入された高圧空気の両方が噴射ノズル61に導入されており、尿素水溶液と高圧空気の混合気として、造粒室20Uの多孔板で形成される底床19に設置された噴射ノズル61から造粒室20U内に噴射する高圧スプレーノズル方式を採用していることが、
図1〜
図3に示す流動床/噴流床型造粒装置1と異なっている。
尿素水溶液と空気の混合気を噴射する噴射ノズル61は、たとえば特許文献9のように、造粒室20Uの側面部13U〜16Uのいずれかに設置されていても良い。
噴射ノズル61は、
図5に示すとおり、Y方向に11個、Y方向に直交するZ方向に6個配置されている。噴射ノズル61の数は、造粒装置1Aにおいて生成する尿素粒子の生産量に応じて調整することができ、噴射ノズル61の配置は造粒装置の形状に応じて調整することができる。
複数の噴射ノズル61が配置されている範囲は、第1長辺側面部の13Uaと第2長辺側面部の14Uaにはさまれる範囲であり、第1長辺側面部の13Ubと第2長辺側面部の14Ubにはさまれる範囲には噴射ノズル61は配置されていない。
第1長辺側面部13UのY方向長さに占める13UaのY方向長さ(または第2長辺側面部14UのY方向長さに占める14UaのY方向長さ)の割合は、造粒装置に設置する噴射ノズル61の数や尿素粒子の回収ライン35から回収される尿素粒子の温度要求、造粒装置を設置する建屋の形状などを総合的に考慮して決定される。
【0027】
造粒室20Uは、内壁面の一部または全部が粗面加工されている。前記内壁面とは、底床19、四面の側面部13U〜16Uと天面部12である。
内壁面の一部が粗面加工されているときは、少なくとも側面部13Uおよび14Uにおいて、底床19から天面部12までの高さ範囲の少なくとも一部が粗面加工されていることが好ましく、側面部13U〜16Uの底床19から天面部12までの高さ範囲の一部が粗面加工されていることがより好ましい。
粗面加工されている側面部13U〜16Uの高さ方向(
図4のX方向)の範囲は
図1〜
図3の造粒装置1と同じである。
運転時に流動床50が形成されている高さ範囲53は、造粒装置1の大きさや運転条件によって異なるが、高さが100〜1000mmの範囲が好ましい。
【0028】
造粒室20Uの粗面加工された内壁面の横方向(X方向に直交する方向であり、
図5中のY方向)の範囲は、尿素水溶液の噴射ノズル61が設置されている横方向範囲を含むことが好ましく、具体的には噴射ノズル61が配置された範囲と対向する第1長辺側面部の13Uaと第2長辺側面部の14Uaの範囲であることが好ましい。
【0029】
また内壁面の一部が粗面加工されているときは、上記した四面の側面部13U〜16Uの少なくとも一部に加えて、さらに天面部12の一部が粗面加工されていることが好ましい。
天面部12の一部が粗面加工されているとき、天面部12の粗面加工の範囲は
図1〜
図3の造粒装置1と同じである。
【0030】
造粒室20Uの粗面加工されている内壁面の粗面加工状態(凸凹)は、
図1〜
図3の造粒装置1と同じである。
【0031】
造粒室20Uは、側面部13U〜16Uの内面の一部が粗面加工されているとき、当該粗面加工面は二種類の異なる粗面形態に加工された第1の粗面加工面と第2の粗面加工面を形成することができる。
第1の粗面加工面および第2の粗面加工面の範囲は、それぞれ
図1〜
図3の造粒装置1と同じである。
第1の粗面加工面と第2の粗面加工面の粗面加工状態(凸凹)は、それぞれ
図1〜
図3の造粒装置1と同じである。
【0032】
粗面加工方法および当該粗面加工方法の造粒室20Uへの適用方法は、それぞれ
図1〜
図3の造粒装置1と同じである。
【0033】
(3)造粒装置の運転方法と造粒室内面の粗面加工の効果について
図1〜
図3に示す造粒装置1を例に、造粒装置の運転方法(造粒装置1による尿素粒子の生成方法)を説明し、合わせて造粒装置の内壁面が粗面加工されていることによる効果を以下に説明する。
造粒装置1の運転方法および運転条件は、流動床を利用して尿素粒子を生成できる方法であれば特に制限されるものではなく、例えば、特許文献3(特許4455643号公報)に記載の運転方法のほか、前記公報に記載されている特公平04−063729号公報、特開平10−216499号公報、特開平11−137988号公報のそれぞれに記載の運転方法、またはそれらの運転方法を改変した運転方法を実施することができる。
図1に示す造粒装置1の造粒室20Uの内面は、天面部12、流動床50と接触する側面部13U〜16U(第1長辺側面部13U、第2長辺側面部14U、第1短辺側面部15U、第2短辺側面部16U)および底床19のうち、少なくとも流動床50内の尿素粒子の移動方向に沿う側面部13Uおよび14Uが、底床19から運転時に形成される流動床50の高さ53までの範囲と、当該範囲から天面部12側に、運転時に形成される流動床50の高さ53の1〜10倍の高さの範囲において、粗面加工面の状態(凸凹)がRa=0.35〜5.0μm、S=2〜300μmの範囲になるように粗面加工されている。
【0034】
造粒装置1の造粒室20Uには、側面部16Uに接続された尿素の種粒子の導入ライン25から連続的に供給される尿素の種粒子と、流動用空気導入ライン40から流動用空気蓄気室20L1を経由して多孔板である底床19の通気孔42から連続的に導入される流動用空気によって、底床19の上で尿素粒子が激しく踊るように流動する流動床50が形成される。
さらに、噴流用空気導入ライン45から噴流用空気蓄気室20L2を経由して、底床19に規則的に配置された噴流管41出口から噴流用空気を連続的に噴き込むことによって、粒子の存在が疎の空間である噴流床51が流動床50内に形成される。
同時に、尿素水溶液の導入ライン31に接続され、噴流管41の出口面中央付近に設置された尿素水溶液の噴射ノズル32から尿素水溶液を連続的に噴霧する。噴流床51中において尿素液を噴霧された尿素粒子は、矢印48のように舞い上げられたのち、勢いを失い流動床50中に落下し、周囲の噴流床51へ巻き込まれ、再び尿素水溶液の液滴を噴霧される。
流動床50と噴流床51を混在させることで、尿素水溶液の噴射ノズル32から噴霧された尿素水溶液はむらなく効率的に尿素の種粒子の表面に付着積層され、尿素粒子は徐々に粒子径を増しながら側面部16Uから側面部15U側に向かって移動し、側面部15Uに接続された尿素粒子の回収ライン35から回収される。
回収された尿素粒子は粒径の異なるものが混在しているため、所定の粒子径範囲に入る粒子を篩などで分離し、製品として次の工程に送る。所定の範囲を下回る粒子はそのまま、上回る粒子は粉砕機などで小さく粉砕して、前記尿素の種粒子の導入ライン25から再び造粒室20Uに供給される。所定の粒子径範囲に入る粒子も、必要な種粒子の数に応じて小さく粉砕して前記尿素の種粒子の導入ライン25から再び造粒室20Uに供給してもよい。
【0035】
このように造粒装置1内で尿素粒子を造粒する過程において、流動状態にある尿素粒子同士または尿素粒子と造粒室20Uの壁面が衝突して発生した細かな破片や、尿素水溶液の噴射ノズル32から噴霧された尿素水溶液の微小液滴が尿素粒子に付着せずに固化したもの、所定の大きさを超える回収尿素粒子を粉砕する際に発生した細かな破片が種粒子に同伴されて尿素の種粒子の導入ライン25から混入したものなど、製品とする尿素の平均粒子径1mm以上(ふるい分け試験法JIS Z8815、ASTM E11による平均粒径)を大きく下回る(例えば400μm以下)細かな尿素粉が造粒室20Uに発生する。このような細かい尿素粉を一般にダストと呼んでいる。
造粒室20U内に発生したダストは、小さく軽いので、基本的には造粒室20U内の空気の流れに乗って排気口22に接続した排気ライン23から空気と共に排出されるが、局所的な気流の速度や方向、乱れの強さなどの影響で、一部のダストは排出されずに造粒室20Uの内壁に付着堆積する。付着堆積が進行してその量が限界に達すると、ダストは自重により大きな塊状に剥離して落下し、それが尿素水溶液の噴射ノズル32を閉塞させたり、流動床50の流動を阻害したりする問題を発生させることになる。
本発明はこの問題を解消・抑制するため、造粒室20Uの内壁面において、従来ダストの付着堆積が発生しやすい箇所に対し、ダストの付着堆積を大きく抑制する効果を有する前記の粗面加工を施すものである。この従来ダストの付着堆積が発生しやすい箇所とは、上記「(1)
図1〜
図3に示す流動床/噴流床型造粒装置」にて詳細に指摘した当該粗面加工を施す範囲がそれである。造粒室20Uの形状の相違などによって、造粒室20Uの内壁にダストが付着堆積する位置が前記当該粗面加工を施す範囲と異なる場合、もしくは異なることが予測される場合には、当該位置に前記粗面加工を施せばよい。
本発明により、造粒室20Uの内壁面にダストが付着堆積し難くなるため、ダストの付着堆積がそもそも発生しなくなるか、発生したとしても、ダストの付着堆積が可能な量の限界が低下するので、ダストはその付着堆積が大きく進行する前に、問題にならない大きさの小塊として自重で剥離するようになる。
このため、造粒室20Uの内壁面に著しく付着堆積したダストや、大塊として剥離・落下して運転を妨げているダストを取り除くために通常実施される造粒室20U内壁面の水洗作業の間隔を長くすることができるようになり、造粒装置の稼働率を高めるとともに、メンテナンスコストを低下させることができる。
例えば、同じ条件で運転を実施した場合、従来の鏡面仕上げ加工の内壁面の造粒室を有する造粒装置においては洗浄間隔が0.5〜1ヶ月程度であったのに対して、本発明の造粒装置1においては洗浄間隔を1〜3ヶ月程度まで広げることができる。
図4〜
図6に示す造粒装置1Aやその他の流動床型造粒装置であっても、造粒室の内壁にダストが付着堆積しやすい箇所は共通しているため、本発明の適用により
図1〜
図3に示す造粒装置1と同じ作用効果を得ることができる。