(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-137833(P2021-137833A)
(43)【公開日】2021年9月16日
(54)【発明の名称】溶接ワイヤ送給用ケーブル、および溶接ロボットにおける溶接用ケーブルの取付構造
(51)【国際特許分類】
B23K 9/133 20060101AFI20210820BHJP
B23K 9/12 20060101ALI20210820BHJP
B25J 19/00 20060101ALI20210820BHJP
【FI】
B23K9/133 504B
B23K9/12 301D
B23K9/12 331F
B25J19/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2020-36904(P2020-36904)
(22)【出願日】2020年3月4日
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(72)【発明者】
【氏名】宮原 寿朗
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS11
3C707BS10
3C707CY03
3C707CY06
3C707CY12
(57)【要約】
【課題】溶接トーチの軸線周りの回動動作に伴うケーブルの捻れを無くし、または低減しつつ、接続構造の簡素化と小型化を図ることが可能な溶接ロボット用の溶接ワイヤ送給用ケーブルを提供する。
【解決手段】溶接ロボットのマニピュレータに基端が支持されるケーブル本体31と、当該ケーブル本体31の先端に設けられた接続具32と、を備え、溶接トーチ2の基端部が固定されたアダプタ14に接続具32が着脱可能に取り付けられる、溶接ワイヤ送給用ケーブル3であって、接続具32は、ケーブル本体31の先端に固定される第1接続部33と、アダプタ14に着脱可能に取り付けられる第2接続部34と、を含み、第1接続部33および第2接続部34が相対回転可能に連結される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接ロボットのマニピュレータに基端が支持されるケーブル本体と、当該ケーブル本体の先端に設けられた接続具と、を備え、溶接トーチの基端部が固定されたアダプタに上記接続具が着脱可能に取り付けられる、溶接ワイヤ送給用ケーブルであって、
上記接続具は、上記ケーブル本体の先端に固定される第1接続部と、上記アダプタに着脱可能に取り付けられる第2接続部と、上記第1接続部および上記第2接続部を相対回転可能に連結する回転機構と、を含む、溶接ワイヤ送給用ケーブル。
【請求項2】
上記第2接続部は、雄ねじ部を有し、上記アダプタの適部に外嵌される筒状接続部材と、上記雄ねじ部に螺合し得る雌ねじ部を有する固定ナットと、を含み、
上記筒状接続部材は、軸線方向に沿う複数のスリットによって周方向において相互に間隔を隔てた複数の可動片を有し、かつ上記各可動片の外周にはテーパー面が形成されており、
上記固定ナットは、上記テーパー面と摺接可能な傾斜面を有し、
上記固定ナットの上記雌ねじ部を上記筒状接続部材の上記雄ねじ部に締め付けることで上記複数の可動片が縮径し得る、請求項1に記載の溶接ワイヤ送給用ケーブル。
【請求項3】
上記回転機構は、上記第1接続部および上記第2接続部の一方に設けられる筒部と、上記第1接続部および上記第2接続部の他方に設けられ、上記筒部に内挿される軸部と、上記筒部および上記軸部の間に介在し、記筒部および上記軸部の相対回転時の摩擦を低減する摩擦低減部と、上記筒部から上記軸部が抜け出すのを防止する抜け止め部と、を含む、請求項1または2に記載の溶接ワイヤ送給用ケーブル。
【請求項4】
マニピュレータの先端に溶接トーチがその軸線周りに回動可能に支持された溶接ロボットにおける溶接用ケーブルの取付構造であって、
上記マニピュレータに基端が取り付けられ、かつ先端が上記溶接トーチ側の取付部位に相対回転可能に取り付けられる溶接ワイヤ送給用ケーブルと、上記取付部位よりも上記溶接トーチに近接する部位、あるいは上記溶接トーチに取り付けられ、上記溶接トーチに溶接用電力を供給するためのパワーケーブルと、を含む、溶接ロボットにおける溶接用ケーブルの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接ワイヤ送給用ケーブルに関し、マニピュレータの先端に溶接トーチが支持された溶接ロボットに用いられる溶接ワイヤ送給用ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
消耗電極式ガスシールドアーク溶接において、溶接ロボットを用いた自動溶接の手法が採用されている。多関節型ロボットなどのマニピュレータを備えた自動溶接を行うための溶接ロボットでは、溶接トーチはマニピュレータ先端の手首部に設けられる。溶接ロボットによる溶接作業時には、マニピュレータに搭載されたワイヤ送給装置により溶接トーチに溶接ワイヤが送り出され、また、溶接トーチには電力およびシールドガスが供給される。
【0003】
溶接トーチへの溶接ワイヤの送給は、コンジットケーブルなどの溶接ワイヤ送給用ケーブル、あるいは一線式パワーケーブルを介して行われる。たとえば一線式パワーケーブルは、その基端が溶接ロボットのマニピュレータの適所に搭載されたワイヤ送給装置に接続されており、当該ワイヤ送給装置を介して一線式パワーケーブルの基端がマニピュレータに支持される。一線式パワーケーブルの先端は、溶接トーチ側の取付部位に接続される。当該一線式パワーケーブルを介して、溶接ワイヤ、溶接用電力およびシールドガスが溶接トーチへ供給される。
【0004】
溶接作業時にはマニピュレータが各回動軸周りへ適宜回動させられるとともに、溶接トーチの軸線周りに回動させられる。したがって、多関節ロボットのマニピュレータ先端に設けられた溶接トーチは、多様な動作が可能である。その一方、上記ケーブル類は、溶接トーチの軸線周りの回動動作に伴い、マニピュレータのアーム部外面と干渉する恐れが生じ得た。このような不都合に対し、たとえば特許文献1では、一線式パワーケーブルをマニピュレータの中空軸内に通すことで当該マニピュレータとの干渉を回避する対策がなされる。
【0005】
このようにマニピュレータの中空軸内に一線式パワーケーブルを通す構成によれば、一線式パワーケーブルのマニピュレータとの干渉を回避することができ、溶接トーチの軸線周りの回動可能範囲を大きくとることできる。その一方、一線式パワーケーブルの先端が溶接トーチ側の取付部位に接続固定されていると、溶接トーチの回動動作が一線式パワーケーブルに伝わり、一線式パワーケーブルが捻じれる。そして、溶接トーチが軸線周りへの回動動作を繰り返すと一線式パワーケーブルも繰り返し捻じられ、ケーブル内の導電線に断線が生じる恐れがある。その結果、溶接トーチの回動に伴うケーブルの動き自体に制約が無くても、上記断線等を防止するために溶接トーチの軸線周りへの回動動作を制限する必要が生じ得た。これに対し、上記特許文献1では、一線式パワーケーブルの先端は、溶接トーチ側の取付部位に対し、滑り接触構造を採用したスリップ式給電機構を介して接続されている。スリップ式給電機構を利用した一線式パワーケーブルの接続構造によれば、溶接トーチの回動動作に伴う一線式パワーケーブルの捻れは抑制される。しかしながら、スリップ式給電機構を利用した一線式パワーケーブルの接続構造では、当該ケーブルの接続構造が複雑になるとともに、ケーブル接続部の大型化を招くことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−306072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、溶接トーチの軸線周りの回動動作に伴うケーブルの捻れを無くし、または低減しつつ、接続構造の簡素化と小型化を図ることが可能な溶接ロボット用の溶接ワイヤ送給用ケーブルを提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を採用した。
【0009】
本発明の第1の側面によって提供される溶接ワイヤ送給用ケーブルは、溶接ロボットのマニピュレータに基端が支持されるケーブル本体と、当該ケーブル本体の先端に設けられた接続具と、を備え、溶接トーチの基端部が固定されたアダプタに上記接続具が着脱可能に取り付けられる、溶接ワイヤ送給用ケーブルであって、上記接続具は、上記ケーブル本体の先端に固定される第1接続部と、上記アダプタに着脱可能に取り付けられる第2接続部と、上記第1接続部および上記第2接続部を相対回転可能に連結する回転機構と、を含む。
【0010】
好ましい実施の形態においては、上記第2接続部は、雄ねじ部を有し、上記アダプタの適部に外嵌される筒状接続部材と、上記雄ねじ部に螺合し得る雌ねじ部を有する固定ナットと、を含み、上記筒状接続部材は、軸線方向に沿う複数のスリットによって周方向において相互に間隔を隔てた複数の可動片を有し、かつ上記各可動片の外周にはテーパー面が形成されており、上記固定ナットは、上記テーパー面と摺接可能な傾斜面を有し、上記固定ナットの上記雌ねじ部を上記筒状接続部材の上記雄ねじ部に締め付けることで上記複数の可動片が縮径し得る。
【0011】
好ましい実施の形態においては、上記回転機構は、上記第1接続部および上記第2接続部の一方に設けられる筒部と、上記第1接続部および上記第2接続部の他方に設けられ、上記筒部に内挿される軸部と、上記筒部および上記軸部の間に介在し、記筒部および上記軸部の相対回転時の摩擦を低減する摩擦低減部と、上記筒部から上記軸部が抜け出すのを防止する抜け止め部と、を含む。
【0012】
本発明の第2の側面によって提供される溶接ロボットにおける溶接用ケーブルの取付構造は、マニピュレータの先端に溶接トーチがその軸線周りに回動可能に支持された溶接ロボットにおける溶接用ケーブルの取付構造であって、上記マニピュレータに基端が取り付けられ、かつ先端が上記溶接トーチ側の取付部位に相対回転可能に取り付けられる溶接ワイヤ送給用ケーブルと、上記取付部位よりも上記溶接トーチに近接する部位、あるいは上記溶接トーチに取り付けられ、上記溶接トーチに溶接用電力を供給するためのパワーケーブルと、を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る溶接ワイヤ送給用ケーブルによれば、溶接ロボットによる溶接作業時に溶接トーチが軸線周りに回動させられても、接続具が溶接トーチの取付部位(アダプタ)に対して回転可能である。このため、溶接ワイヤ送給用ケーブル(ケーブル本体)に溶接トーチの回動動作は伝わらず、溶接ワイヤ送給用ケーブル(ケーブル本体)においては、捻れが生じない、または捻れが大幅に低減される。また、本発明では、溶接用電力を供給するためのパワーケーブルは、溶接ワイヤ送給用ケーブルとは別に分離され、溶接ワイヤ送給用ケーブルの先端(接続具)の溶接トーチ側の取付部位(アダプタ)を迂回して溶接トーチに近接する部位、あるいは溶接トーチに接続される。このため、溶接ワイヤ送給用ケーブルについては、溶接ワイヤを送給ができれば溶接用電力の供給等の機能を持たせる必要がない。その結果、溶接ワイヤ送給用ケーブル(接続具)の接続構造の簡素化および小型化を図ることができる。
【0014】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る溶接ワイヤ送給用ケーブル等が溶接ロボットに取り付けられた一例を示す全体図である。
【
図3】
図2のIII−III線に沿う部分拡大断面図である。
【
図4】本発明に係る溶接ワイヤ送給用ケーブルを示す部分正面図である。
【
図5】
図4に示す溶接ワイヤ送給用ケーブルの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態につき、図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0017】
図1は、本発明に係る溶接ワイヤ送給用ケーブル等が溶接ロボットに使用された場合の一例を示しており、溶接ロボットの全体図である。
図1に示す溶接ロボットA1は、マニピュレータ1、溶接トーチ2、溶接ワイヤ送給用ケーブル3、水冷パワーホースケーブル4、ホース5および信号用ケーブル6を備える。マニピュレータ1は、たとえば多関節ロボットである。溶接トーチ2は、マニピュレータ1の先端に支持されている。マニピュレータ1が駆動することにより、所定の作業範囲内において溶接トーチ2が上下前後左右に自在に移動できる。
【0018】
溶接トーチ2には、図示しないワイヤ送給装置により溶接ワイヤが送給される。溶接ワイヤは、溶接ワイヤ送給用ケーブル3を介して溶接トーチ2の先端のノズル21内に設けられた給電チップに向けて送給され、ノズル21先端の開口から外部に送り出される。
【0019】
また、溶接トーチ2には、電力およびシールドガスが供給される。本実施形態では、溶接用電力は、水冷パワーホースケーブル4を介して溶接トーチ2に供給され、この電力は、溶接トーチ2内部の給電チップを介して溶接ワイヤに供給される。本実施形態では、一対の水冷パワーホースケーブル4を具備しており、これら水冷パワーホースケーブル4によって、溶接トーチ2への電力供給経路と溶接トーチ2への冷却水の往復流路が形成される。ホース5は、溶接トーチ2へシールドガスを供給するためのガス流路である。
【0020】
図2は、
図1に示した溶接ロボットA1の一部を示す斜視図であり、マニピュレータ1の先端アームと、当該アームに支持された溶接トーチ2等を表す。
図3は、
図2のIII−III線に沿う部分拡大断面図である。
【0021】
図1〜
図3に示すように、溶接トーチ2は、中空軸11、ブラケット12、絶縁ブラケット13、アダプタ14、ショックセンサ15、給電ブロック16およびホルダ17等を介して、マニピュレータ1に支持されている。
【0022】
中空軸11は、マニピュレータ1先端の回動軸であり、溶接トーチ2に所定の回動動作を与えるものである。中空軸11は中空構造とされており、当該中空軸11の中空部分に溶接ワイヤ送給用ケーブル3、水冷パワーホースケーブル4等のケーブル類が挿通されている。
【0023】
溶接トーチ2の基端部には、給電ブロック16に取り付けられており、この給電ブロック16に、ホルダ17、ショックセンサ15およびアダプタ14が順次接続固定されている。したがって、溶接トーチ2の基端部は、給電ブロック16、ホルダ17およびショックセンサ15を介して、アダプタ14に固定されている。アダプタ14は、絶縁ブラケット13、ブラケット12を介して中空軸11に支持されており、中空軸11の回動により、溶接トーチ2は軸線Ox周りに回動させられる。
【0024】
溶接ワイヤ送給用ケーブル3の先端は、溶接トーチ2側の適所に取り付けられている。本実施形態では、溶接ワイヤ送給用ケーブル3の先端は、アダプタ14上部の固定軸141に取り付けられている。溶接ワイヤ送給用ケーブル3の詳細については、後述する。
【0025】
図3に示すように、信号用ケーブル6の先端は、アダプタ14の上部壁に取り付けられている。信号用ケーブル6は、ショックセンサ15による検出信号を送るための信号線である。
図1、
図2に示すように、水冷パワーホースケーブル4およびホース5それぞれの先端は、給電ブロック16に取り付けられている。これら水冷パワーホースケーブル4およびホース5は、溶接ワイヤ送給用ケーブル3の先端の取付部位(アダプタ14)よりも溶接トーチ2に近接する部位(給電ブロック16)に取り付けられている。水冷パワーホースケーブル4は、本発明で言うパワーケーブルの一例に相当する。なお、水冷パワーホースケーブル4やホース5の先端が給電ブロック16に取り付けられる構成に代えて、水冷パワーホースケーブル4やホース5の先端が溶接トーチ2に直接取り付けられる構成にしてもよい。
【0026】
溶接ワイヤ送給用ケーブル3は、ワイヤ送給装置から送給される溶接ワイヤを溶接トーチ2へ送るための通路である。
図3に示すように、溶接ワイヤ送給用ケーブル3は、ケーブル本体31および接続具32を備える。ケーブル本体31は、たとえば可撓性を有する合成樹脂製チューブからなる。図示説明は省略するが、ケーブル本体31の基端は、たとえば接続金具等を介してマニピュレータ1の適所に固定支持されている。ケーブル本体31は、中空軸11の中空部分に挿通している。
【0027】
接続具32は、ケーブル本体31の先端に設けられている。接続具32は、第1接続部33および第2接続部34を含む。第1接続部33は、ケーブル本体31の先端に固定される部分である。第2接続部34は、アダプタ14に着脱可能に取り付けられる部分である。詳細は後述するが、第1接続部33および第2接続部34は、互いに相対回転可能に連結される。
【0028】
図4、
図5に示すように、本実施形態において、第1接続部33は、互いに筒状をなす金属製のケーブル側接続金具331および回転金具332を有する。ケーブル側接続金具331は、ケーブル本体31の先端に取り付けられる部材である。
図5に示すように、ケーブル側接続金具331の接続軸部331aがケーブル本体31の先端に内挿され、かつ当該ケーブル本体31の先端に外嵌させられる筒状体315(たとえばアルミニウム等の比較的軟質な金属からなる)を縮径側に加圧することでケーブル本体31の先端にケーブル側接続金具331が固定される。回転金具332は、ケーブル側接続金具331の図中下端部に対し、たとえばねじ接続により固定されている。回転金具332は、第2接続部34側と接続される筒部332aを有する。
【0029】
図4および
図5に示すように、本実施形態において、第2接続部34は、金属製の筒状接続部材35および固定ナット36を含む。筒状接続部材35は、回転金具332(第1接続部33)と相対回転可能に連結される部材である。具体的には、筒状接続部材35は、筒状胴部351、および当該筒状胴部351の上端につながる軸部352を有する。軸部352は、筒状胴部351よりも小径とされており、回転金具332の筒部332aに内挿されている。
【0030】
図5に示すように、本実施形態において、回転金具332(筒部332a)と筒状接続部材35(軸部352)との間には、鍔付きブッシュ371および平ワッシャ372が介在している。これら鍔付きブッシュ371および平ワッシャ372は、回転金具332や筒状接続部材35を構成する金属材料より摩擦抵抗が小さい材料からなり、たとえば合成樹脂材料からなる。鍔付きブッシュ371は筒部332aの内周面と軸部352の外周面との間に介在し、平ワッシャ372は回転金具332(筒部332a)の図中下面と筒状接続部材35(筒状胴部351)の図中上面との間に介在する。また、軸部352の上端部は筒部332aの上方に突出しており、突出部の外周溝にC型リング373が取り付けられる。このような構造により、軸部352の筒部332aからの抜け出しが防止されており、回転金具332(筒部332a)と筒状接続部材35(軸部352)とが相対回転可能に連結される。上記構成において、鍔付きブッシュ371および平ワッシャ372は、本発明で言う摩擦低減部の一例に相当し、C型リング373は、本発明で言う抜け止め部の一例に相当する。また、回転金具332の筒部332a、筒状接続部材35の軸部352、鍔付きブッシュ371、平ワッシャ372およびC型リング373は、本発明で言う回転機構を構成する。
【0031】
上記筒状胴部351の外周部には、雄ねじ部353が形成されている。また、筒状胴部351の図中下方寄りには、複数のスリット354および複数の可動片355が形成されている。各スリット354は、筒状胴部351の軸線方向に沿っており、当該筒状胴部351の上下方向中間位置から下端まで通じている。複数のスリット354は、筒状胴部351の周方向において略等間隔に形成されている。本実施形態では、4つのスリット354が形成されている。上記複数の可動片355は、複数のスリット354によって筒状胴部351の周方向において互いに間隔を隔てた部位である。各可動片355は、部分円筒状とされている。各可動片355の外周には、テーパー面356が形成されている。テーパー面356は、部分円錐状とされており、図中下方に向かうにつれて径寸法が大きくなるように傾斜している。
【0032】
固定ナット36は、雌ねじ部361を有する。雌ねじ部361は、筒状接続部材35(筒状胴部351)の雄ねじ部353に螺合し得る。また、固定ナット36の図中下端寄りの内周には、傾斜面362が形成されている。傾斜面362は、円錐状とされている。傾斜面362は、図中下方に向かうにつれて径寸法が大きくなるように傾斜しており、筒状胴部351(各可動片355)のテーパー面356と摺接可能である。このような構成によって、固定ナット36の雌ねじ部361を筒状接続部材35の雄ねじ部353に締め付けることで、複数の可動片355は、径方向内方に変位させられ、縮径可能である。
【0033】
本実施形態において、溶接ワイヤ送給用ケーブル3の接続具32は、アダプタ14上部の固定軸141に取り付けられる。具体的には、筒状接続部材35の筒状胴部351が固定軸141(
図5において想像線で表す)に外嵌させる。筒状接続部材35において、複数の可動片355がなす円筒状内面の自然状態における内径寸法は、当該複数の可動片355が外嵌される固定軸141の直径寸法と同程度または僅かに小さくされる。筒状接続部材35を固定軸141に外嵌したまま固定ナット36(雌ねじ部361)を筒状接続部材35(雄ねじ部353)に締め付けると、複数の可動片355が縮径して当該複数の可動片355が固定軸141を強固に挟持する。また、固定ナット36(雌ねじ部361)を緩めると、筒状接続部材35を固定軸141から分離することができる。このようにして、筒状接続部材35(接続具32)は、固定軸141(アダプタ14)に着脱可能に固定される。
【0034】
なお、可動片355の図中下端の適所には、下方に突出する突出片363が設けられている。詳細な図示説明は省略するが、筒状接続部材35(筒状胴部351)を固定軸141に外嵌した状態において、突出片363はアダプタ14の上部と凹凸嵌合しており、筒状接続部材35の固定軸141周りの回転移動が阻止される。
【0035】
なお、
図3、
図5に示すように、溶接ワイヤ送給用ケーブル3の内部には、コイルライナ38が内挿される。コイルライナ38は、溶接ワイヤを安定して送給するものであり、その先端部は溶接トーチ2近傍のホルダ17内部に至る。
【0036】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0037】
本実施形態によれば、溶接ロボットA1に装備される溶接ワイヤ送給用ケーブル3は、その基端がマニピュレータ1の適所に取り付けられる。その一方、溶接ワイヤ送給用ケーブル3の先端(接続具32)は、溶接トーチ2側の取付部位(アダプタ14)に取り付けられる。接続具32は、ケーブル本体31の先端に固定される第1接続部33(ケーブル側接続金具331)と、取付部位(アダプタ14)に着脱可能に取り付けられる第2接続部34(筒状接続部材35)と、を含み、第1接続部33(回転金具332)および第2接続部34(筒状接続部材35)は、互いに相対回転可能に連結される。このように、溶接ワイヤ送給用ケーブル3の先端(接続具32)は、溶接トーチ2側の取付部位(アダプタ14)に相対回転可能に取り付けられる。
【0038】
このような構成によれば、溶接ロボットA1による溶接作業時に溶接トーチ2が軸線Ox周りに回動させられても、接続具32が溶接トーチ2側の取付部位(アダプタ14)に対して回転可能である。このため、溶接ワイヤ送給用ケーブル3(ケーブル本体31)に溶接トーチ2の回動動作は伝わらず、溶接ワイヤ送給用ケーブル3(ケーブル本体31)においては、捻れが生じない、または捻れが大幅に低減される。また、本実施形態では、溶接用電力を供給するための水冷パワーホースケーブル4(パワーケーブル)やシールドガスを供給するためのホース5は、溶接ワイヤ送給用ケーブル3とは別に分離され、溶接ワイヤ送給用ケーブル3の先端(接続具32)の溶接トーチ2側の取付部位(アダプタ14)を迂回して溶接トーチ2に近接する部位(給電ブロック16)に接続されている。このため、溶接ワイヤ送給用ケーブル3については、溶接ワイヤを送給ができれば溶接用電力の供給等の機能を持たせる必要がない。その結果、溶接ワイヤ送給用ケーブル3(接続具32)の接続構造の簡素化および小型化を図ることができる。なお、溶接ワイヤ送給用ケーブル3の接続具32が溶接トーチ2側の取付部位(アダプタ14)に対して回転可能である構成により、溶接トーチ2を軸線Ox周りに±270°程度の動作範囲で繰り返し回動させても、溶接ワイヤ送給用ケーブル3等のケーブル類の状態は安定しており、溶接作業に支障を来すことは無かった。
【0039】
本実施形態において、溶接ワイヤ送給用ケーブル3の先端の接続具32のうち、アダプタ14に着脱可能に取り付けられる第2接続部34は、筒状接続部材35および固定ナット36を含む。
図4、
図5を参照して説明したように、筒状接続部材35は、雄ねじ部353、複数のスリット354、複数の可動片355およびテーパー面356を有し、固定ナット36は、雄ねじ部353に螺合する雌ねじ部361、および、テーパー面356と摺接する傾斜面362を有する。上記構成によれば、筒状接続部材35を固定軸141に外嵌したまま固定ナット36(雌ねじ部361)を筒状接続部材35(雄ねじ部353)に締め付けると、複数の可動片355が縮径して当該複数の可動片355が固定軸141を強固に挟持する。第2接続部34が上記した筒状接続部材35および固定ナット36を具備する構成によれば、溶接トーチ2側の取付部位(アダプタ14)への接続具32の着脱作業の作業性に優れており、ねじ締結部(雄ねじ部353および雌ねじ部361)においても緩みが生じ難い。
【0040】
本実施形態において、第1接続部33(回転金具332)および第2接続部34(筒状接続部材35)を相対回転可能に連結する回転機構は、回転金具332に設けられる筒部332aと、筒状接続部材35に設けられ、上記筒部332aに内挿される軸部352と、を含む。また、上記回転機構は、回転金具332(筒部332a)および筒状接続部材35(軸部352)の間に介在し、筒部332aおよび軸部352の相対回転時の摩擦を低減する鍔付きブッシュ371および平ワッシャ372(摩擦低減部)と、軸部352の筒部332aからの抜け出しを防止するC型リング373(抜け止め部)と、を含む。このような構成によれば、第1接続部33(回転金具332)および第2接続部34(筒状接続部材35)の連結構造の小型化を図るとともに、これら第1接続部33(回転金具332)および第2接続部34(筒状接続部材35)の相対回転動作による摩耗を低減することができるので、耐久性向上が見込まれる。
【0041】
なお、本実施形態では、第1接続部33(回転金具332)に筒部332aを設け、第2接続部34(筒状接続部材35)に、上記筒部332aに内挿される軸部352を設けたが、これとは異なり、第2接続部34に筒部を設け、第1接続部33において、第2接続部34の筒部に内挿される軸部を設ける構成としてもよい。
【0042】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の範囲は上記した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した事項の範囲内でのあらゆる変更は、すべて本発明の範囲に包摂される。
【0043】
上記実施形態において、第2接続部34が筒状接続部材35および固定ナット36の二部材からなる構成としたが、これに限定されない。第2接続部34について単一のナット部材により構成してもよく、この場合、アダプタ側に設けられたねじ部に当該ナット部材が締結固定される。
【符号の説明】
【0044】
A1:溶接ロボット、1:マニピュレータ、14:アダプタ、2:溶接トーチ、3:溶接ワイヤ送給用ケーブル、31:ケーブル本体、32:接続具、33:第1接続部、332a:筒部、34:第2接続部、35:筒状接続部材、352:軸部、353:雄ねじ部、354:スリット、355:可動片、356:テーパー面、36:固定ナット、361:雌ねじ部、362:傾斜面、371:鍔付きブッシュ(摩擦低減部)、372:平ワッシャ(摩擦低減部)、373:C型リング(抜け止め部)、4:水冷パワーホースケーブル(パワーケーブル)、Ox:軸線