【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)2019年12月12日に、「第20回計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演会」の予稿集にて発表 (2)2019年12月13日に、「第20回計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演会」のスポットライトセッションにて発表 (3)2019年12月13日に、「第20回計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演会」のインタラクティブセッションにて発表
【解決手段】把持中心軸Oの周囲に配置される複数の可動部材21A〜21Fが、該複数の可動部材それぞれの先端把持部21bを該把持中心軸に向けて近づけるように移動することで、該先端把持部によって被把持物を把持する把持装置20であって、前記移動が可能なように、前記複数の可動部材の基端部21aを前記把持中心軸の周囲で保持する保持機構22,23を有し、少なくとも前記把持中心軸に近い領域では、該把持中心軸の軸方向で、前記先端把持部が前記基端部よりも被把持物に近い側に位置するように構成されている。
把持中心軸の周囲に配置される複数の可動部材が、該複数の可動部材それぞれの先端把持部を該把持中心軸に向けて近づけるように移動することで、該先端把持部によって被把持物を把持する把持装置であって、
前記移動が可能なように、前記複数の可動部材の基端部を前記把持中心軸の周囲で保持する保持機構を有し、
少なくとも前記把持中心軸に近い領域では、該把持中心軸の軸方向で、前記先端把持部が前記基端部よりも被把持物に近い側に位置するように構成されていることを特徴とする把持装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上述したグリッパーのような把持装置では、把持することが不得手な被把持物が多い。例えば、多数の線状物(ワイヤー等)あるいは棒状物の場合、2つの棒状部材を閉じる間に2つの棒状部材の自由端側から被把持物が押し出されてしまい、当該被把持物を適切に把持できない。
【0006】
本発明者は、特願2018−170260号において、互いに隣接するように環状配置される複数の可動部材が、隣り合う可動部材間の隣接面同士を互いに対向させて移動することで、当該複数の可動部材によって囲まれて形成される把持空間が縮小して、当該把持空間に被把持物を把持する把持装置を提案した。この把持装置によれば、把持空間に多数の線状物等の被把持物を入れた状態で当該把持空間を縮小して当該被把持物を把持空間で把持することにより、把持力を受けた被把持物に逃げ場がなくなり、多数の線状物等の被把持物であっても、これを適切に把持することが可能である。
【0007】
しかしながら、このような把持装置であっても、まだ、把持することが不得手な被把持物が存在する。例えば、周囲に障害物が存在しているような被把持物を把持したり、台面上に置かれた扁平な被把持物やシート状物などの被把持物を把持したりするような場合には、適切な把持が難しい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明は、把持中心軸の周囲に配置される複数の可動部材が、該複数の可動部材それぞれの先端把持部を該把持中心軸に向けて近づけるように移動することで、該先端把持部によって被把持物を把持する把持装置であって、前記移動が可能なように、前記複数の可動部材の基端部を前記把持中心軸の周囲で保持する保持機構を有し、少なくとも前記把持中心軸に近い領域では、該把持中心軸の軸方向で、前記先端把持部が前記基端部よりも被把持物に近い側に位置するように構成されていることを特徴とするものである。
この把持装置においては、把持中心軸の周囲で保持機構に保持された複数の可動部材を移動させることで、それぞれの先端把持部を把持中心軸に向けて近づけて、先端把持部によって被把持物を把持する。よって、被把持物をその周囲から把持することができるので、把持力を受けた被把持物に逃げ場が少なく、多数の線状物等の被把持物も適切に把持することが可能である。
加えて、本把持装置では、複数の可動部材の各先端把持部が少なくとも把持中心軸に近い領域に位置するときには、各先端把持部は、把持中心軸の軸方向において、保持機構に保持されている基端部よりも被把持物に近い側に位置する。そのため、被把持物を把持する際、複数の可動部材の各先端把持部が、保持機構よりも外側に突出した状態となる。このように突出した複数の先端把持部によれば、保持機構が当該被把持物の周囲の障害物に干渉したり、当該被把持物を載せた台面に干渉したりすることが少なくなる。その結果、従来の把持装置では把持することが難しかった被把持物も適切に把持することが可能となる。
【0009】
また、本発明は、前記把持装置において、前記先端把持部は、弾性材によって形成されていることを特徴とするものである。
この把持装置においては、先端把持部が弾性変形可能であるため、例えば、被把持物が壊れやすいものであっても、弾性変形により把持力を適度に逃がしつつ、当該把持物を把持することができる。また、台面上の被把持物を把持するような場合、先端把持部が台面に衝突しても台面や先端把持部が破損しにくい。しかも、台面に沿って先端把持部が弾性変形した状態で台面上の被把持物を把持することができるので、把持の際に先端把持部と台面との位置合わせを高い精度で行う必要がなくなり、制御が容易になる。
【0010】
また、本発明は、前記把持装置において、前記複数の可動部材は、前記先端把持部が前記基端部に対して前記把持中心軸の軸方向に沿って変位可能に構成されていることを特徴とするものである。
この把持装置においては、先端把持部が、保持機構に保持されている基端部に対して把持中心軸の軸方向に沿って変位可能であるため、例えば、台面上の被把持物を把持するような場合、先端把持部が台面に衝突しても、先端把持部が変位することで衝撃力を逃がすことができ、台面や先端把持部が破損しにくい。しかも、台面に沿って先端把持部が変位した状態で台面上の被把持物を把持することができるので、把持の際に先端把持部と台面との位置合わせを高い精度で行う必要がなくなり、制御が容易になる。
【0011】
また、本発明は、前記把持装置において、前記把持中心軸から遠い領域では、該把持中心軸の軸方向で、前記先端把持部が前記基端部と同じ位置か、又は前記基端部よりも被把持物から遠い側に位置することを特徴とするものである。
この把持装置によれば、先端把持部が把持中心軸から遠い領域にある時(被把持物を把持していない時)に、先端把持部が、基端部と同じ位置か又は基端部よりも被把持物から遠い側に位置し、保持機構よりも外側に突出しない状態となる。これにより、被把持物を把持していない非使用時においては、先端把持部が把持装置周囲の物体に衝突して破損するなどの不具合が抑制される。
【0012】
また、本発明は、前記把持装置において、前記保持機構は、前記複数の可動部材の基端部を前記把持中心軸の軸方向から挟み込むように配置される2つの保持部材によって構成され、前記2つの保持部材のうちの少なくとも被把持物に近い側の保持部材は、前記把持中心軸を含む中心領域が開口しており、前記先端把持部が前記把持中心軸から遠い領域に位置するとき、前記先端把持部の少なくとも一部が前記2つの保持部材が対向する空間に収容されるように構成されていることを特徴とするものである。
この把持装置において、複数の可動部材の基端部を挟み込む2つの保持部材のうちの少なくとも被把持物に近い側の保持部材は、把持中心軸を含む中心領域が開口している。そのため、複数の可動部材の各先端把持部が把持中心軸に近い領域に位置して被把持物を把持する際、当該各先端把持部が被把持物側へ突出できるようになっている。一方、各先端把持部が把持中心軸から遠い領域に位置して被把持物を把持していない非使用時においては、先端把持部の少なくとも一部が2つの保持部材が対向する空間に収容される。これにより、非使用時には、先端把持部の前記少なくとも一部は、2つの保持部材によって保護された状態となるので、先端把持部が把持装置周囲の物体に衝突して破損するなどの不具合が抑制される。
【0013】
また、本発明は、前記把持装置において、前記保持機構は、前記複数の可動部材の各基端部を、前記把持中心軸に平行なそれぞれの回動軸の回りで回動可能に保持し、前記各基端部を共通の駆動手段によりそれぞれ前記回動軸の回りで回動させることにより、前記複数の可動部材がそれぞれの先端把持部を前記把持中心軸に向けて近づけるように移動することを特徴とするものである。
この把持装置によれば、簡易な構成により、複数の可動部材の移動を実現することができる。
【0014】
また、本発明は、前記把持装置において、前記複数の可動部材は、前記先端把持部と前記基端部との間に、前記回動軸と平行な軸回りで回動可能な少なくとも1つの関節部を有することを特徴とするものである。
この把持装置によれば、基端部に対する先端把持部の相対位置を変更することができるので、複数の可動部材において、このような関節部を有しない構成では実現できないような移動を実現することができる。
【0015】
また、本発明は、被把持物を把持する把持装置を備えたロボットアームであって、前記把持装置として、前記把持装置を用いたことを特徴とするものである。
このロボットアームによれば、把持することが不得手な被把持物の種類を減らし、より汎用性の高いロボットアームを提供することが可能となる。
【0016】
また、本発明は、被把持物を把持する把持装置を備えた飛行体であって、前記把持装置として、前記把持装置を用いたことを特徴とするものである。
この飛行体によれば、把持することが不得手な被把持物の種類を減らし、より汎用性の高い飛行体を提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、把持することが不得手な被把持物を減らし、汎用性の高い把持装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る把持装置を、ロボットアームのエンドエフェクタとして適用した一実施形態について説明する。
なお、本実施形態は、部品の組み立てを行う組み立て工場において、被把持物である部品が積載された運搬ケースから、ロボットアームを用いて部品をピックアップし、これを組み立てラインの部品搬送コンベア上の所定位置に配置する。ただし、本発明に係る把持装置について、このようなロボットアームに適用されるものは一例にすぎず、他のシステムに用いられるロボットアームに適用してもよいし、ロボットアーム以外の把持装置として用いられるものであってもよい。
【0020】
図1は、本実施形態における部品組立システムの概要を示す説明図である。
本実施形態の部品組立システム1は、部品取出位置2aに置かれた運搬ケース50内の部品をロボットアーム10により部品組立システムの搬送コンベア45上の所定位置に配置し、この搬送コンベア45で搬送された部品を後段の組み立て工程での組み立てに用いるものである。なお、空になった運搬ケース50は、ケース回収位置2bへ移される。
【0021】
図2は、ロボットアーム10を斜め上方から見た外観斜視図である。
ロボットアーム10は、土台部11、土台部11に対して昇降可能に支持される昇降部12、昇降部12に対して第一回動軸13aの回りで回動可能に支持される第一腕部13、第一腕部13に対して第二回動軸14aの回りで回動可能に支持される第二腕部14、第二腕部14に対して第三回動軸15aの回りで回動可能に支持される手先部15などを有している。
【0022】
昇降部12は、土台部11のスライドレールに対して昇降可能に取り付けられ、昇降モータ12bの駆動力により、土台部11のスライドレールに沿って図中矢印Aで示す方向に上下動可能に構成されている。また、第一腕部13の根本側端は、土台部11の中心を通る鉛直軸である第一回動軸13aを中心にして、図中矢印Bで示す方向に360[°]回転が可能なように、昇降部12に取り付けられている。また、第二腕部14の根本側端は、第一腕部13の先端側端を通る鉛直軸である第二回動軸14aを中心にして、図中矢印Cで示す方向に360[°]回転が可能なように、第一腕部13の先端側端に取り付けられている。
【0023】
手先部15の根本側端は、第二腕部14の先端側端を通る鉛直軸である第三回動軸15aを中心にして、図中矢印Dで示す方向に360[°]回転が可能なように、第二腕部14の先端側端に取り付けられている。手先部15には、様々な種類のエンドエフェクタを着脱することが可能であり、本実施形態では、アイリスロボットハンド20が取り付けられる。
【0024】
図3は、ロボットアーム10のエンドエフェクタとして用いられるアイリスロボットハンド20を、ハンド先端側から見たときの平面図である。
図4は、アイリスロボットハンド20の分解斜視図である。
図5は、アイリスロボットハンド20を構成するフィンガー部材21A〜21Fの1つを示す平面図である。
図6は、フィンガー部材21A〜21Fの1つを示す側面図である。
【0025】
本実施形態のアイリスロボットハンド20は、把持中心軸Oの周囲に配置される複数の可動部材として、6つのフィンガー部材21A,21B,21C,21D,21E,21Fを備えている。本実施形態のフィンガー部材21A〜21Fは、いずれも同一構成からなる部材である。なお、異なる構成の可動部材を組み合わせて用いることも可能である。また、フィンガー部材の数も任意に設定することができるが、好ましくは4つ以上である。
【0026】
本実施形態のアイリスロボットハンド20において、6つのフィンガー部材21A〜21Fは、
図4に示すように、それぞれの基端部21aが、保持機構を構成する2枚の保持部材22,23に挟まれるように保持され、同一平面上に環状配置される。2枚の環状の保持部材22,23は、6つのスペーサ部材24によって、所定の間隔をもって互いに対向するように連結されている。アイリスロボットハンド20は、2枚の保持部材22,23のうちの内側保持部材22を介して、ロボットアーム10の手先部15に取り付けられる。
【0027】
各フィンガー部材21A〜21Fは、
図5及び
図6に示すように、基端部21aに対し、被把持物に接触して把持する先端把持部21bが連結部21cを介して連結された構成をとっている。連結部21cは、基端部21aに対して、把持中心軸Oに平行な連結回動軸21eの回りで回動可能に連結されている。また、先端把持部21bは、連結部21cに対し、連結回動軸21eに対して直交する方向に延びる先端回動軸21fの回りで回動可能に連結されている。先端把持部21bには、図示しない付勢手段としてのトーションバネにより、先端回動軸21fの回りで
図6中矢印Aに示す方向への付勢力が働いている。
【0028】
フィンガー部材21A〜21Fの先端把持部21bは、連結部21cとの連結部分となる剛性の高い基部21b1と、把持の際に被把持物に接触し得る柔軟な先端部21b2とから構成される。本実施形態の先端部21b2は、例えばシリコンなどの弾性材によって形成されている。特に、本実施形態では、先端部21b2を、
図5に示すように複数の内部空間Sが存在するような構造としたことから、より柔軟に弾性変形しやすい構成となっている。
【0029】
本実施形態において、6つのフィンガー部材21A〜21Fは、それぞれの先端把持部21bを把持中心軸Oに向けて近づけるように移動する。この移動により、6つのフィンガー部材21A〜21Fの各先端把持部21bが被把持物の側面に接触して挟み込み、被把持物を把持する。
【0030】
各フィンガー部材21A〜21Fの基端部21aは、2枚の保持部材22,23の間で、把持中心軸Oに平行なそれぞれの回動軸の回りで回動可能に保持される。具体的には、
図4に示すように、タイミングプーリ25A〜25Fの各駆動回動軸25aが、各保持部材22,23の対応する軸受け孔22a,23aにそれぞれ回動可能に支持される。各駆動回動軸25a上には、対応するフィンガー部材21A〜21Fの基端部21aがそれぞれ固定される。これにより、各フィンガー部材21A〜21Fの基端部21aは、タイミングプーリ25A〜25Fの駆動回動軸25aの回りで回動可能に保持される。
【0031】
6つのタイミングプーリ25A〜25Fには、図示しない共通のタイミングベルトが掛け渡される。このタイミングベルトを駆動することにより、各タイミングプーリ25A〜25Fを同時に回動させて、各フィンガー部材21A〜21Fの基端部21aを駆動回動軸25aの回りで回動させることができる。なお、本実施形態では、6つのタイミングプーリ25A〜25F及びタイミングベルトからなる駆動系を用いているが、例えばギヤを用いた他の駆動系を利用することもできる。
【0032】
2枚の保持部材22,23のうちの外側保持部材23には、
図4に示すように、各フィンガー部材21A〜21Fの先端把持部21bの移動方向をそれぞれ規制するための規制部としての6つのガイド長孔23bが形成されている。これらのガイド長孔23bには、各フィンガー部材21A〜21Fの連結部21cに設けられているガイド突起21d(
図3参照)が入り込む。これにより、タイミングプーリ25A〜25Fの各駆動回動軸25aが駆動して、各フィンガー部材21A〜21Fの基端部21aが回動したとき、各フィンガー部材21A〜21Fの連結部21c及びこれに支持されている先端把持部21bは、それぞれのガイド突起21dが各ガイド長孔23bに沿って案内されて、所定の移動方向へ移動する。この移動によって、6つのフィンガー部材21A〜21Fは、それぞれの先端把持部21bが把持中心軸Oに向けて近づくように又は離れるように移動する。
【0033】
タイミングプーリ25A〜25Fを駆動するタイミングベルトは、内側保持部材22のモータ固定部22bに取り付けられる駆動手段としての駆動モータ26のモータギヤ26aに噛み合うように組み付けられる。駆動モータ26は、正逆回転可能なもので、例えばサーボモータを利用することができる。駆動モータ26が駆動されると、モータギヤ26aを介して、タイミングベルトに駆動力が伝達され、タイミングベルトが掛け渡されているタイミングプーリ25A〜25Fに、駆動回動軸25aの回りで回転移動するための移動力が付与され、6つのフィンガー部材21A〜21Fが移動する。
【0034】
なお、本実施形態では、1つの回転入力で6つのフィンガー部材21A〜21Fを移動させる構成であるが、2つ以上の回転入力で6つのフィンガー部材21A〜21Fを移動させる構成であってもよい。
【0035】
図7(a)〜(c)は、6つのフィンガー部材21A〜21Fの動きを説明するためにハンド先端側から見たときの平面図である。
図8(a)〜(c)は、
図7(a)〜(c)に対応した側面図である。
なお、
図7(a)〜(c)については、説明のため、内側保持部材22を取り除いた状態を示す。
【0036】
図7(a)及び
図8(a)に示すように6つのフィンガー部材21A〜21Fが開いた状態において、駆動モータ26の駆動力によってタイミングベルトが
図7及び
図8中反時計回り方向へ回転移動すると、タイミングベルトが掛け渡されているタイミングプーリ25A〜25Fが、それぞれ駆動回動軸25aの回りで図中反時計回り方向へ回動する。これにより、6つのフィンガー部材21A〜21Fの各基端部21aが駆動回動軸25aの回りで図中反時計回り方向へ回動する。
【0037】
このとき、各基端部21aに連結されている連結部21cのガイド突起21dが外側保持部材23のガイド長孔23bに案内される。これにより、基端部21aが駆動回動軸25aの回りで図中反時計回り方向へ回動する間に、基端部21aに対して連結部21cが連結回動軸21eの回りで回動する。このような動きにより、
図7(a)〜
図7(b)に示すように、連結部21cに連結されている先端把持部21bが把持中心軸Oに向けて近づくように移動する。そして、最終的には、
図7(c)に示すように、6つのフィンガー部材21A〜21Fの各先端把持部21bは、その先端部21b2の頂点が把持中心軸O上で接触する位置まで移動し、6つのフィンガー部材21A〜21Fが完全に閉じた状態になる。
【0038】
本実施形態の連結部21cには、コイルバネなどの付勢手段により、連結回動軸21eの回りで
図7中時計回り方向への付勢力が付与されている。これにより、各フィンガー部材21A〜21Fは、閉じた状態において、適正な姿勢が安定して得られるようになっている。
【0039】
図7(c)及び
図8(c)に示す閉じた状態から、
図7(a)及び
図8(a)に示す開いた状態に戻す場合には、駆動モータ26の駆動力によってタイミングベルトを
図7及び
図8中時計回り方向へ回転移動させる。これにより、タイミングベルトが掛け渡されているタイミングプーリ25A〜25Fが、それぞれ駆動回動軸25aの回りで図中時計回り方向へ回動し、6つのフィンガー部材21A〜21Fの各基端部21aが駆動回動軸25aの回りで図中反時計回り方向へ回動する。
【0040】
そして、各基端部21aに連結されている連結部21cのガイド突起21dが外側保持部材23のガイド長孔23bに案内されることで、連結部21cを連結回動軸21eの回りで付勢している付勢力に抗して、連結部21cが基端部21aに対して連結回動軸21eの回りで回動する。このような動きにより、先端把持部21bが把持中心軸Oから離れるように移動し、最終的には、
図7(a)及び
図8(a)に示すように、6つのフィンガー部材21A〜21Fが開いた状態になる。
【0041】
本実施形態においては、把持中心軸Oの軸方向から見たときの先端把持部21bの先端部21b2の形状が、
図5に示すように、三角形状あるいは扇形形状となっており、
図7(c)に示すように完全に閉じた状態において、各先端把持部21bの側面が、隣接するフィンガー部材の先端把持部21bの側面と接触するように構成されている。これにより、
図7(c)に示すように完全に閉じた状態において隙間が少なく、被把持物が隙間から落ちるような事態を抑制することができる。よって、より小さな寸法の被把持物を適切に把持することができる。
【0042】
ロボットアーム10により運搬ケース50内の部品を把持する場合、
図7(a)に示すように6つのフィンガー部材21A〜21Fが開いた状態のアイリスロボットハンド20を、ロボットアーム10の各軸の回転を制御して、運搬ケース50内の部品を把持できる位置まで移動させる。そして、駆動モータ26を駆動してタイミングベルトを回転移動させ、6つのフィンガー部材21A〜21Fを、その先端把持部21bが把持中心軸Oに近づくように移動させる。このように移動させると、当該部品の側面に6つのフィンガー部材21A〜21Fの先端把持部21bの先端部21b2が当接し、当該部品が把持される。
【0043】
ロボットアームに用いられる従来のグリッパーとしては、上述したように、互いに対向配置される2つの棒状部材を駆動し、当該2つの棒状部材の間に被把持物を把持する構成のものがある。このような従来のグリッパーでは、グリッパー上での被把持物の把持位置にバラツキがあり、被把持物をグリッパー上のどの位置で把持するかによって、把持された被把持物の位置にバラツキが出てしまう。その結果、本部品組立システムにおいて従来のグリッパーを用いると、運搬ケース50からピックアップした部品を部品搬送コンベア45上に置く際、部品搬送コンベア45上の当該部品を置くべき目標位置からズレた位置に当該部品が置かれてしまい、その後の組み立て工程に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0044】
また、仮に、被把持物が、多数の線状物(ワイヤー等)あるいは棒状物であるような場合、従来のグリッパーでは、2つの棒状部材を閉じる間に当該2つの棒状部材の自由端側から被把持物が押し出されてしまい、当該被把持物を適切に把持できないという問題もある。
【0045】
本実施形態に係るアイリスロボットハンド20によれば、把持される部品(被把持物)は、6つのフィンガー部材21A〜21Fの先端把持部21bに当接することで把持中心軸Oに寄せられ、最終的には、部品の中心位置が把持中心軸Oに合わせられて把持される。したがって、アイリスロボットハンド上での部品の把持位置にバラツキがなく、把持位置の精度が高い。よって、運搬ケース50からピックアップした部品を部品搬送コンベア45上に置く際、部品搬送コンベア45上の目標位置に当該部品を精度よく置くことができる。
【0046】
また、本実施形態に係るアイリスロボットハンド20によれば、仮に、被把持物が、多数の線状物(ワイヤー等)あるいは棒状物であるような場合でも、6つのフィンガー部材21A〜21Fの先端把持部21bが被把持物の側面に対して全方向から囲い込むことになる。よって、被把持物の逃げ場が少なく、多数の線状物等の被把持物であっても、これを適切に把持することができる。
【0047】
ここで、仮に、6つのフィンガー部材21A〜21Fの先端把持部21bが、把持中心軸Oの軸方向において、2枚の保持部材22,23の間の対向領域内のみを移動する構成である場合を考える。この場合、ロボットアーム10を制御して、ケース内の部品が2枚の保持部材22,23の間の対向領域内に入り込む位置までアイリスロボットハンド20を移動させなければ、当該部品を先端把持部21bで把持することができない。
【0048】
そのため、例えば、ケース内において部品同士の間隔が狭い場合、把持対象の部品が2枚の保持部材22,23の間の対向領域内に入り込む位置までアイリスロボットハンド20を移動させようとしたときに、外側保持部材23が他の部品に干渉してしまい、当該把持対象の部品を把持できない。
【0049】
また、ケース内において部品同士の間隔が十分に広い場合でも、把持対象の部品の形状が例えば扁平な形状である場合には、当該把持対象の部品が2枚の保持部材22,23の間の対向領域内に入り込む位置までアイリスロボットハンド20を移動させようとしたときに、外側保持部材23がケース内の把持対象部品が置かれた面に干渉してしまい、当該把持対象の部品を把持できない。
【0050】
そのほかにも、被把持物の形状や材質などによっては、上述した構成の把持装置では適切に把持することが困難な被把持物も存在する。例えば、台面上に敷かれた布などのシート状物を把持する場合、多数積層されたシート状物から1枚ずつシート状物を把持する場合などは、上述した構成の把持装置では適切に把持することが困難である。また、ネジなどの小物体を把持する場合も、上述した構成の把持装置では適切に把持することが困難である。
【0051】
そこで、本実施形態においては、少なくとも把持中心軸Oに近い領域では、先端把持部21bが基端部21aよりも把持中心軸Oの軸方向外側(
図8中下側)に位置するように構成されている。このような構成により、被把持物を把持する際、
図8(a)に示すように、6つのフィンガー部材21A〜21Fの各先端把持部21bが、把持中心軸Oの軸方向において、2枚の保持部材22,23の間の対向領域内の外側(外側保持部材23よりも外側)に突出した状態となる。なお、本実施形態において、外側保持部材23は、把持中心軸Oを含む中心領域が開口した構成であるため、6つのフィンガー部材21A〜21Fの各先端把持部21bは、外側保持部材23に邪魔されることなく、外側保持部材23よりも外側へ突出することができる。
【0052】
このように突出した複数の先端把持部21bによれば、把持対象の部品が2枚の保持部材22,23の間の対向領域内に入り込む位置までアイリスロボットハンド20を移動させなくても、突出した先端把持部21bによって把持対象の部品を把持することができる。よって、例えば、ケース内において部品同士の間隔が狭い場合でも、外側保持部材23が他の部品に干渉することなく、当該把持対象の部品を把持することができる。また、把持対象の部品の形状が例えば扁平な形状である場合でも、外側保持部材23がケース内の把持対象部品が置かれた面に干渉することなく、当該把持対象の部品を把持することができる。
【0053】
加えて、本実施形態では、6つのフィンガー部材21A〜21Fの各先端把持部21bによって、被把持物を摘み上げるような動作が可能となる。そのため、上述した構成では適切に把持することが困難であった布などのシート状物を把持する場合でも、適切に把持することが可能である。また、ネジなどの小物体を把持する場合も、6つのフィンガー部材21A〜21Fの各先端把持部21bによって摘み上げることができ、適切に把持することが可能である。
【0054】
また、本実施形態に係るアイリスロボットハンド20によれば、例えば農作物などのように大きさや形状にバラツキの大きい被把持物であっても、これを適切に把持することが可能である。そのため、農作物の収穫作業などの用途にも好適に利用することが可能である。
【0055】
また、本実施形態においては、上述したように、先端把持部21bの先端部21b2が弾性材によって形成されているため、先端把持部21bの先端部21b2が弾性変形可能である。これにより、例えば、被把持物が壊れやすいものであっても、弾性変形により把持力を適度に逃がしつつ、当該把持物を把持することができる。また、台面上の被把持物を把持するような場合、先端把持部21bの先端部21b2が台面に衝突しても台面や先端部21b2が破損しにくい。しかも、台面に沿って先端部21b2が弾性変形した状態で台面上の被把持物を把持することができるので、把持の際に先端把持部21bと台面との位置合わせを高い精度で行う必要がなくなり、制御が容易になる。
【0056】
また、本実施形態においては、上述したように、6つのフィンガー部材21A〜21Fの各先端把持部21bが、連結部21cに対し、先端回動軸21fの回りで回動可能に連結されている。これにより、先端把持部21bは、先端回動軸21fの回りで回動することで、連結部21cを支持している基端部21aに対し、把持中心軸Oの軸方向に沿って変位することができる。このような構成によれば、例えば、台面上の被把持物を把持するような場合、先端把持部21bが台面に衝突しても、先端把持部21bがトーションバネの付勢力に抗して先端回動軸21fの回りで回動して、把持中心軸Oの軸方向に沿って変位することができ、衝撃力を逃がすことができる。よって、台面や先端把持部21bが破損しにくい。しかも、台面に沿って先端把持部21bが変位した状態で台面上の被把持物を把持することができるので、把持の際に先端把持部21bと台面との位置合わせを高い精度で行う必要がなくなり、制御が容易になる。
【0057】
また、本実施形態では、
図8(c)に示すように、6つのフィンガー部材21A〜21Fが開いた状態(先端把持部21bが把持中心軸Oから遠い領域に位置するとき)では、把持中心軸Oの軸方向において、先端把持部21bが基端部21aと実質的に同じ位置をとる。このような構成により、被把持物を把持していない時(6つのフィンガー部材21A〜21Fが開いた状態)には、先端把持部21bが外側保持部材23よりも外側に突出しない状態となる。これにより、被把持物を把持していない非使用時においては、先端把持部21bが把持装置周囲の物体に衝突して破損するなどの不具合が抑制される。なお、先端把持部21bが、基端部21aと実質的に同じ位置をとるのではなく、基端部21aよりも内側に位置するように構成しても、同様の効果を得ることができる。
【0058】
特に、本実施形態においては、6つのフィンガー部材21A〜21Fが開いた状態のとき(先端把持部21bが把持中心軸Oから遠い領域に位置するとき)、
図7(a)に示すように、先端把持部21bの少なくとも一部が2つの保持部材22,23が対向する空間に収容されるように構成されている。このような構成により、被把持物を把持していない非使用時においては、先端把持部21bが2つの保持部材22,23によって保護された状態となるので、先端把持部21bが把持装置周囲の物体に衝突して破損するなどの不具合が抑制される。
【0059】
また、本実施形態において、6つのフィンガー部材21A〜21Fは、先端把持部21bと基端部21aとの間が、連結回動軸21eの回りで回動可能な連結部21cによって連結されている。このような連結部を少なくとも1つ備えていることで、これが関節部として機能し、先端把持部21bが基端部21aに対して相対移動することが可能となり、6つのフィンガー部材21A〜21Fにおいて、このような関節部を有しない構成では実現できないような移動を実現することができる。
【0060】
〔実施形態2〕
次に、本発明に係る把持装置を、被把持物を把持する把持装置を備えた飛行体の把持装置として適用した他の実施形態(以下、本実施形態を「実施形態2」という。)について説明する。
本実施形態2は、飛行体としてのドローンに搭載される把持装置として、上述した実施形態1のアイリスロボットハンド20を採用したものである。したがって、アイリスロボットハンド20の説明は省略する。
【0061】
図9は、本実施形態2に係るドローン100を示す模式図である。
本実施形態2のドローン100は、公知のドローン本体101の下部に、上述した実施形態1のアイリスロボットハンド20を取り付けた構成となっている。本実施形態2のドローン100によれば、例えば、飛行状態又は着地した状態において、ドローン本体101の下方に存在する搬送対象物(被把持物)をアイリスロボットハンド20の6つのフィンガー部材21A〜21Fの先端把持部21bで把持することができる。そして、搬送対象物を把持した状態でドローン100が飛行することで、搬送対象物を搬送先まで搬送することができる。
【0062】
本実施形態2のドローン100に用いられているアイリスロボットハンド20は、上述した実施形態1で説明したとおり、これまでの把持装置では適切に把持することが困難であった様々な被把持物を把持することが可能となる。よって、本実施形態2によれば、搬送対象物の制限が少なく、汎用性の高い搬送用ドローンを実現することができる。
【0063】
また、本実施形態2のドローン100に用いられるアイリスロボットハンド20は、構造が単純で、1つの駆動源(アクチュエータ)で駆動できるので軽量である。そのため、軽量であることが重要なドローン100のロボットハンドとして好適に利用することができる。特に、本実施形態のアイリスロボットハンド20は、ドローン100の機体の水平方向中央位置に搭載可能であり、被把持物の把持時における重心変化の影響を受けにくいという効果もある。
【0064】
また、ドローン100に搭載されたアイリスロボットハンド20で被把持物を把持する場合、災害時など着陸せずにホバリングしながら被把持物を把持することも多いため、アイリスロボットハンド20と被把持物との位置合わせが難しい場合が多い。本実施形態2のドローン100に用いられるアイリスロボットハンド20は、被把持物の位置が把持中心軸からずれた状態で把持する場合でも、開いた状態の6つのフィンガー部材21A〜21Fの先端把持部21bの内側に被把持物が位置してさえいれば、その被把持物を把持することが可能である。よって、この点でも、アイリスロボットハンド20は、ドローン100のロボットハンドとして好適に利用することができる。