【解決手段】工具交換装置10は、筒状のアーム軸25と、前記筒状のアーム軸内に配置され、その軸方向に変位可能な、変位軸部21と、前記筒状のアーム軸の一端部に配置され、工具を把持するための把持部32を有する、アーム30と、前記把持部に把持される工具をロックするためのロック部材33と、前記アーム軸に対する前記変位軸部の相対移動に応じて、前記ロック部材に前記工具をロックさせるロック機構(リンク35、ロックシャフト34)と、前記変位軸部の相対移動の範囲を制限する制限機構(貫通孔25a、ロッド21b)と、を備える。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施形態に係る工具交換装置10について、図面を参照しながら以下、詳細に説明する。
図1、
図2は、実施形態に係る工具交換装置10を表す。
図1、
図2の工具交換装置10はそれぞれ、工具(図示せず)をロックしないアンロック状態、工具をロックするロック状態にある。
【0010】
工具交換装置10は、NC制御装置50(制御装置)に制御され、変位軸部21、アーム軸25、およびアーム30を昇降および回転させ、工具をロックする。
図1、
図2に示されるように、工具交換装置10は、筐体11、モータ13、減速機構14、カム17、リンク18、変位軸部21、筒状体22、回転係合部23、アーム軸25、昇降係合部26、検出器27、およびアーム30を有する。このうち、カム17、リンク18、回転係合部23、昇降係合部26は、変位軸部21などを昇降、回転させるカム機構を構成する。
【0011】
筐体11は、内部空間11aおよび連通孔11bを有する。カム機構の潤滑性を保持するために、内部空間11aは液状の潤滑材Lが入っている。この結果、内部空間11aは、潤滑材Lによって満たされる潤滑材領域と、その上方の大気(気化した潤滑材Lの成分を含んでもよい)によって満たされる大気領域に区分できる。但し、これらの領域の境界は、注入あるいは消費した潤滑材Lの量によって変動する。連通孔11bは、大気領域に開口し、内部空間11a(大気領域)を外部(大気)と連通させる。
【0012】
モータ13は、筐体11の外部に取り付けられ、筐体11内に回転力を供給する。後述のように、モータ13は、変位軸部21を移動、回転することができる。減速機構14は、モータ13から出力される回転数を適宜な値まで減速する。なお、減速機構14の一例として、ウォームギア、ウォームホイルの組み合わせを用いることができるが、これに限定されず、種々の減速機構(例えば、ギア)を用いることができる。
【0013】
カム17は、減速機構14を介して、モータ13によって回転軸Oを中心に回転される。この例では、回転軸Oはモータ13の軸と直交しているが、並行であってもよい。カム17は、略円柱形状を有し、その端面に溝17aが、その周側面に溝17b(図示せず)が形成されている。溝17aは、区間A1〜A4に区分できる。溝17aは、区間A1、A3では略円弧形状であり、区間A2、A4では略直線形状を有する。溝17bは、溝17aの区間A1〜A4と対応する区間B1〜B4に区分される。溝17bは、区間B2、B4ではカム17の周に略平行であり、区間B1、B3ではカム17の周に対して傾く。
【0014】
リンク18は、リンク本体18a、支点18b、突起部18c、突起部18dを有する。リンク本体18aは、全体として、棒形状あるいは細長い板形状を有する。支点18bは、リンク本体18aの一端に配置され、回転可能に筐体11に固定される。すなわち、リンク18は、この支点18bを中心に回転できる。突起部18cは、カム17の溝17aに挿入(係合)される。突起部18dは、リンク本体18aの他端に配置され、昇降係合部26に係合する。
【0015】
変位軸部21は、略円柱形状であり、下端にリンク接続部21aを有する。後述のように、リンク接続部21aはリンク35と接続され、ロック部材33をロック、アンロックさせる。変位軸部21の上部に筒状体22、回転係合部23が、下部にアーム軸25、昇降係合部26(ガイドリング)が配置される。
【0016】
筒状体22、回転係合部23は、アーム軸25、昇降係合部26とは分離され、これらの相対的な移動(昇降)を規制しない。筒状体22の上端は、筐体11に対して軸回転可能に支持される。筒状体22は、略筒形状を有し、その内部に変位軸部21の上部を保持する。変位軸部21は、筒状体22に対して一体的に回転し、かつ相対的昇降が可能に係合する。
【0017】
回転係合部23は、略リング形状を有し、筒状体22の下端近傍の外周に固定され、筒状体22と共に回転可能である。回転係合部23は、溝17bに係合する係合突起部23aを有する。
【0018】
アーム軸25は、段部251を有する筒状(より具体的には、略円筒形状)の部材である。段部251は、略リング形状を有し、アーム軸25の上端に配置されて、アーム軸25と一体に移動し、後述のように、検出器27の検出対象となる。アーム軸25の内部に変位軸部21が昇降可能(アーム軸25の軸方向に移動可能)に配置される。すなわち、変位軸部21は、アーム軸25(および段部251)に対して移動できる。但し、後述のように、その範囲は制限される。
【0019】
昇降係合部26は、略リング形状を有し、アーム軸25の外周に配置され、リンク18の突起部18dに係合する。しかし、昇降係合部26は、アーム軸25には直接固定されず、変位軸部21に固定される。これら変位軸部21、アーム軸25、昇降係合部26の結合関係の詳細は後述する。
【0020】
昇降係合部26は、略リング形状の側面に貫通孔を有する筒状部26a、その上下にリング状の突出部26b、26cを有する。突出部26bは、後述のように、検出器27の検出対象となる。なお、後述の非検出期間T01の有無の判定を考慮すると、アーム30がアンロック状態のとき(後述のロッド21bが貫通孔25aの上側に当接)、突出部26bはアーム軸25の段部251と接触または近接していることが好ましい(例えば、後述の貫通孔25aの長径より小さな間隔で、突出部26bと段部251が配置される)。
【0021】
図3は、変位軸部21とアーム軸25を側面から見た状態を表す側面図である。以下、
図3を参照して、変位軸部21、アーム軸25、昇降係合部26の結合関係の詳細を説明する。
【0022】
アーム軸25は、筒状であり、その内部と外周を繋ぐ一対の貫通孔25aを有する。この貫通孔25aを通じて、アーム軸25内の変位軸部21と、アーム軸25外の昇降係合部26が接続される。すなわち、変位軸部21の外周と昇降係合部26の内周がロッド21bを介して接続、固定される。
【0023】
ここでは、変位軸部21および昇降係合部26それぞれに、固定用の貫通孔を形成し、ロッド21bを貫通、係合させることで、変位軸部21および昇降係合部26を互いに固定している。但し、変位軸部21および昇降係合部26が互いに固定されていれば、固定用の貫通孔を形成しなくてもよい。すなわち、変位軸部21の外周と昇降係合部26の内周が突起などにより固定されていれば足りる。
【0024】
貫通孔25aは上下方向(軸方向)に沿って延びる長孔形状である。一方、ロッド21bは、略円柱形状であり、貫通孔25a内を通過する。すなわち、ロッド21b(変位軸部21)は、貫通孔25aの長径の範囲で、アーム軸25に対して、上下に変位可能である。ロッド21bは、貫通孔25aの上下端に達すると、これに係合し、貫通孔25aに対する変位が規制される。一方、貫通孔25aの短径は、ロッド21bの直径と略同一であり、貫通孔25a(アーム軸25)に対するロッド21b(変位軸部21)の回転は規制される。
【0025】
すなわち、貫通孔25aの長径が変位軸部21の軸方向であることから、変位軸部21はアーム軸25に対して、その軸方向に所定範囲で昇降可能であり、この所定範囲に達すると、アーム軸25と一体に昇降する。一方、貫通孔25aの短径が、変位軸部21の径方向であり、ロッド21bの径と略同一であることから、変位軸部21はアーム軸25と一体に回転する。
【0026】
貫通孔25aとロッド21bの組み合わせは、アーム軸25に対する変位軸部21の相対移動の範囲を制限する制限機構として機能する。ロッド21b(突起部)が貫通孔25a(孔部)の上側または下側に当接することによって、アーム軸25に対する変位軸部21の相対移動が制限される。貫通孔25aは、アーム軸25の内側側面に形成される孔部として機能する。ロッド21bは、変位軸部21の側面上に形成され、貫通孔25a(孔部)に挿入される突起部として機能する。
【0027】
ロッド21bが貫通孔25aの下側に当接するとき(変位軸部21がアーム軸25に対して第1の相対位置にあるとき)、ロック部材33は把持部32に把持される工具をロックする(
図2参照)。一方、ロッド21bが貫通孔25aの上側に当接するとき(変位軸部21がアーム軸25に対して第2の相対位置にあるとき)、ロック部材33は把持部32に把持される工具のロックを解除する(
図1参照)。すなわち、工具のロック、アンロックに適正な範囲で変位軸部21を相対移動できるように、貫通孔25aに対するロック部材33の可動範囲が規定される。
【0028】
アーム30は、アーム軸25の下端部に接続され、アーム軸25と共に、昇降、回転する。アーム30は、略直方体形状をなし、アーム本体31、把持部32、ロック部材33、ロックシャフト34、リンク35を有する。アーム30は、いわゆるダブルアームであり、一対の把持部32、一対のロック部材33を有する。
【0029】
アーム本体31は、シャフト収容部31a、リンク収容部31bに区分できる。シャフト収容部31aは、ロックシャフト34を収容する空間を有する。リンク収容部31bは、リンク35を収容する空間を有する。
【0030】
把持部32は、工具を把持する。ロック部材33は、把持部32に把持された工具をロック、アンロックする。ロック部材33は、ロックシャフト34、リンク35によって、変位軸部21のリンク接続部21aに接続される。
【0031】
ロックシャフト34は、ロック部材33に接続される一端と、リンク35の一端(把持部32の側端)に接続される他端を有する。リンク35の他端(中央側端)は、変位軸部21のリンク接続部21aに回転可能に接続される。リンク35は、アーム軸25に対する変位軸部21の相対移動に応じて、ロック部材33を動かし、把持部32に把持された工具をロックさせる。ロックシャフト34、リンク35は、把持部32に把持された工具をロックさせるロック機構として機能する。
【0032】
既述のように、変位軸部21は、アーム軸25に対して、貫通孔25aの範囲で上下に変位できる。変位軸部21の降下によって、リンク35の中央側端部が下がり、ロックシャフト34を把持部32に向かって押し出す。この結果、ロック部材33は、把持部32に把持された工具をロックする(
図2参照)。逆に、変位軸部21をアーム軸25に対して、上昇させると、ロック部材33は、把持部32に把持された工具のロックを解除する(
図1参照)。
【0033】
このように、アーム軸25に対して変位軸部21を移動(昇降)することで、工具のロック、およびその解除が可能である。すなわち、実施形態のアーム30は、リンク35やロック部材33を復帰させる弾性部材(例えば、バネ)を用いる必要がない。このため、弾性部材が消耗することによる工具交換装置10の故障を低減できる。
【0034】
検出器27は、例えば、筐体11に固定され、アーム軸25に対する変位軸部21の相対移動を検出する。既述のように、ロッド21bが貫通孔25aの下側、上側に当接する範囲(相対移動範囲の上限:第2の相対位置、下限:第1の相対位置の範囲)で、変位軸部21はアーム軸25に対して相対的に移動できる。検出器27は、第1の相対位置と第2の相対位置間での変位軸部21の移動を検出する。
【0035】
ロッド21bが貫通孔25aの上側に当接するとき、検出器27は、昇降係合部26の突出部26bに近接し、突出部26bを検出する(
図1参照)。一方、ロッド21bが貫通孔25aの下側に当接するとき、検出器27は、昇降係合部26の突出部26bに近接せず(
図2参照)、突出部26bを検出しなくなる。このように、検出器27は、相対移動範囲の上限からの移動および復帰を検出する。
【0036】
相対移動範囲が限定されていることを考慮すると、検出器27は、実質的に、相対移動範囲の上限から下限への(第2の相対位置から第1の相対位置への)、あるいはその逆方向での変位軸部21の移動を検出していることになる。
【0037】
ここで、ロッド21bが貫通孔25aの下側に当接した状態で変位軸部21が下方に移動することを考える。この場合、変位軸部21と共に、アーム軸25も移動し、検出器27は、アーム軸25の段部251に近接し、段部251を検出する。さらに、アーム軸25の移動が進むと、検出器27は、アーム軸25の段部251に近接せず、段部251を検出しなくなる。
【0038】
すなわち、ロッド21bが貫通孔25aの上側に当接した状態から変位軸部21を下方に移動させると、検出器27の検出結果は次の(1)〜(4)のように推移する。このとき、リンク35は後述の破損がない通常の状態とする。
(1)突出部26bの検出:検出期間T11
(2)突出部26b(および段部251)の非検出:非検出期間T01
(3)段部251の検出:検出期間T12
(4)段部251(および突出部26b)の非検出:非検出期間T02
【0039】
検出器27は、接触しなくても、突出部26bを検出できる近接センサであることが好ましい。検出器27に接触センサを用いると、検出器27と突出部26bが接触することで消耗、故障しやすくなる。なお、検出器27は、突出部26bと段部251を識別する必要はないが、これらを識別させてもよい。
【0040】
アーム30内の機構、例えば、リンク35が破損すると(一例として、リンク35が、アーム本体31に固着する)、変位軸部21がアーム軸25に対して変位しなくなる(変位軸部21とアーム軸25が一体的に移動する)可能性がある。この場合、検出期間T11、T12の間の非検出期間は存在しないか、あっても比較的短時間となり(前述のように、突出部26bは、好ましくは、アーム軸25の段部251と接触または近接する)、本来の非検出期間T01と区別できる。この非検出期間T01の有無によって、変位軸部21がアーム軸25に対して相対的に移動するか否か(アーム30が通常の状態か否か、すなわち故障の有無)を判定できる。なお、この判定は、モータ制御部51が行える。
【0041】
より詳細には、検出期間、非検出期間の長さに基づいて、非検出期間T01の有無を判定できる。例えば、変位軸部21の降下開始からの検出期間T1の長さが基準値L1より長い(T1>L1)場合、非検出期間T01が存在しない(検出期間T11、T12が1の検出期間T1として検出)と判定できる。また、基準値L1以下の検出期間T1(T1≦L1)の後に非検出期間T0があったとき、次のように判定する。すなわち、この非検出期間T0の長さが基準値L2より長ければ(T0>L2)、この非検出期間T0を非検出期間T01と判定し、そうでなければ(T0≦L2)、非検出期間T01は存在しないと判定できる。
【0042】
NC制御装置50は、モータ制御部51を有する。モータ制御部51は、工具交換装置10のモータ13の動きを制御する。既述のように、モータ13は、カム17を回転させることで、変位軸部21を昇降(移動)させる。
【0043】
モータ制御部51は、工具交換装置10から検出器27の検出信号を受ける。この検出信号は、変位軸部21が相対移動範囲の上限側にあるか否か(相対移動範囲が狭いことを考慮すると、実質的には、上限側、下限側のいずれにあるか否か)を表す。
【0044】
モータ制御部51は、検出信号を用いて、モータ13が変位軸部21を移動させる動作中に、検出器27が変位軸部21の相対移動を検出するか否かを判断する。すなわち、モータ13が変位軸部21を降下させる場合、変位軸部21の位置は、相対移動範囲の上限(第2の相対位置)から下限(第1の相対位置)に切り換わる。一方、モータ13が変位軸部21を上昇させる場合、変位軸部21の位置は、相対移動範囲の下限から上限に切り換わる。
【0045】
モータ制御部51は、モータ13が変位軸部21を移動させる動作中に、検出器27がアーム軸25に対する変位軸部21の相対移動を検出しないとき、モータ13の動作、ひいては、変位軸部21の昇降を停止させる。既述のように、モータ制御部51は、検出器27による検出期間、非検出期間の長さに基づいて、非検出期間T01の有無(アーム軸25に対する変位軸部21の相対移動の有無)を判定できる。モータ13と変位軸部21の動作は同期しているため、検出器27の反応から工具交換装置10の故障(ロック機構の不具合)を検出できる。このとき、モータ制御部51は、工具交換動作(モータ13)を停止する。また、モータ制御部51は、表示または音声を用いて、作業者に警告するアラーム機能を有する。
【0046】
(工具交換装置10の動作)
工具交換装置10は、NC制御装置50に制御され、次のように動作する。
【0047】
(1)待機状態(
図4A、
図1)
リンク18の突起部18cは、カム17の溝17aの区間A1と区間A4の境界付近に配置され、回転係合部23の係合突起部23aは溝17bの区間B1と区間B4の境界付近に配置されるとする。このとき、モータ13は未動作である。
相対的移動 以下、モータ13が動作し、カム17が回転することで、リンク18の突起部18cは、溝17aの区間A1〜A4を移動し、回転係合部23の係合突起部23aは溝17bの区間B1〜B4を移動するものとする。
【0048】
(2)アーム30の回転(
図4A〜
図4B)
モータ13が駆動されて、カム17の回転が始まる。突起部18cは、溝17aの区間A1内を移動し、係合突起部23aは溝17bの区間B1内を移動する。このとき、変位軸部21(アーム軸25、アーム30)は、昇降せず回転する。
【0049】
変位軸部21が昇降せず回転するのは次のように説明できる。溝17bは、区間B1でカム17の周に対して傾く。このため、係合突起部23aは、区間B1を移動するときにカム17の軸方向に動き、回転係合部23を回転させる。回転係合部23が回転すると、筒状体22、ひいては変位軸部21が回転する。一方、溝17aは、区間A1では回転軸Oを中心とする略円弧形状である。このため、突起部18cは、区間A1内を移動するときに、回転軸Oからの距離が一定に保たれるため、実質的に昇降せず、リンク18が回動することもない。この結果、リンク18の突起部18d、ひいては昇降係合部26、変位軸部21が昇降することはない。
【0050】
(3)工具のロック(
図4B〜
図4C、
図2)
突起部18cは、溝17aの区間A2に達し、その中で移動する。一方、係合突起部23aは溝17bの区間B2内を移動する。このとき、変位軸部21(アーム軸25、アーム30)は、回転せず降下する。
【0051】
変位軸部21が回転せず昇降するのは次のように説明できる。突起部18cは、区間A2を移動するときに、回転軸Oからの距離が変化することで、昇降(ここでは降下)し、リンク18が回動する。この結果、リンク18の突起部18d、ひいては昇降係合部26、変位軸部21が昇降する。一方、溝17bは、区間B2でカム17の周に平行である。このため、係合突起部23aは、区間B2を移動するときにカム17の軸方向に動かず、回転係合部23を回転させることもない。回転係合部23が回転しないため、筒状体22、変位軸部21も回転しない。
【0052】
このように、変位軸部21は、アーム軸25に対して相対的に移動(降下)する。この結果、リンク35が動作して、ロック部材33がマガジンなどに配置される工具をロックする。このとき、アーム軸25(アーム30)は昇降しない。既述のように、このときにアーム軸25に対する変位軸部21の移動が検出されないと、NC制御装置50はモータ13の動作、ひいては工具の交換作業を停止させることができる。
【0053】
(4)アーム30の降下(
図4C〜
図4D)
突起部18cが溝17aの区間A2をさらに移動することで、変位軸部21がさらに降下する。この結果、変位軸部21のロッド21bがアーム軸25の貫通孔25a下端に当接する。このため、変位軸部21と一体に、アーム軸25(アーム30)が降下する。このとき、工具がロックされていることから、工具がマガジンなどから引き抜かれる。
【0054】
その後は、次のような経過を辿り、工具が交換される。
【0055】
(5)アーム30の回転
突起部18cは、溝17aの区間A3内を移動し、係合突起部23aは溝17bの区間B3内を移動する。このとき、変位軸部21(アーム軸25、アーム30)は、昇降せず回転する。
【0056】
(6)工具のアンロック
突起部18cは、溝17aの区間A4に達し、その中で移動する。一方、係合突起部23aは溝17bの区間B4内を移動する。このとき、変位軸部21(アーム軸25、アーム30)は、回転せず上昇する。
【0057】
変位軸部21は、アーム軸25に対して相対的に移動(上昇)する。この結果、リンク35が動作して、ロック部材33が把持部32に把持される工具のロックを解除する。このとき、アーム軸25(アーム30)は昇降しない。既述のように、このときにアーム軸25に対する変位軸部21の移動が検出されないと、NC制御装置50はモータ13の動作、ひいては工具の交換作業を停止させることができる。
【0058】
(7)アーム30の上昇
突起部18cが溝17aの区間A4内をさらに移動することで、変位軸部21をさらに上昇させる。この結果、変位軸部21のロッド21bがアーム軸25の貫通孔25a上端に当接する。このため、変位軸部21と一体に、アーム軸25(アーム30)が上昇する。この結果、工具を工作機械の主軸に取り付けることが可能となる。
【0059】
〔実施形態から得られる技術的思想〕
上記実施形態から把握しうる技術的思想について、以下に記載する。
【0060】
〔1〕工具交換装置(10)は、筒状のアーム軸(25)と、前記筒状のアーム軸(25)内に配置され、その軸方向に変位可能な、変位軸部(21)と、前記筒状のアーム軸(25)の一端部に配置され、工具を把持するための把持部(32)を有する、アーム(30)と、前記把持部(32)に把持される工具をロックするためのロック部材(33)と、前記アーム軸(25)に対する前記変位軸部(21)の相対移動に応じて、前記ロック部材(33)に前記工具をロックさせるロック機構(リンク35、ロックシャフト34)と、前記変位軸部(21)の相対移動の範囲を制限する制限機構(貫通孔25a、ロッド21b)と、を備える。これにより、外力の非印加時にリンクを復帰させる弾性部材(例えば、バネ)を用いる必要が低減し、弾性部材が消耗することによる工具交換装置(10)の故障を低減できる。
【0061】
〔2〕前記制限機構(貫通孔25a、ロッド21b)は、前記筒状のアーム軸(25)の内側側面に形成される孔部(貫通孔25a)と、前記変位軸部(21)の側面上に形成され、前記孔部(貫通孔25a)に挿入される突起部(ロッド21b)と、を有し、前記突起部(ロッド21b)が前記孔部(貫通孔25a)の上側または下側に当接することによって、前記アーム軸(25)に対する前記変位軸部(21)の相対移動が制限される。これにより、アーム軸(25)に対する変位軸部(21)の相対移動の範囲を制限し、工具のロック、アンロックに適正な範囲で変位軸部(21)を相対移動できる。
【0062】
〔3〕孔部(貫通孔25a)は、前記軸方向に沿って延びる長孔である。これにより、アーム軸(25)に対して変位軸部(21)の昇降を可能とし、かつアーム軸(25)と変位軸部(21)を一体的に回転可能となる。
【0063】
〔4〕変位軸部(21)の相対移動を検出する検出器(27)をさらに備える。これにより、変位軸部(21)の相対移動を検出し、工具交換装置(10)の故障を検出できる。
【0064】
〔5〕前記変位軸部(21)の前記相対移動の範囲は、第1の相対位置と、第2の相対位置と、を含み、前記変位軸部(21)が前記第1の相対位置にあるとき、前記ロック部材(33)は前記工具をロックし、前記変位軸部(21)が前記第2の相対位置にあるとき、前記ロック部材(33)は前記工具のロックを解除し、前記検出器(27)は、前記第1の相対位置と前記第2の相対位置間での前記変位軸部(21)の移動を検出する。これにより、第1の相対位置と第2の相対位置間での前記変位軸部(21)の移動を検出し、より的確な故障の判定が可能となる。
【0065】
〔6〕工具交換装置(10)を制御する制御装置(NC制御装置50)であって、前記工具交換装置(10)が、前記変位軸部(21)を移動させるためのモータ(13)をさらに備え、前記制御装置(NC制御装置50)は、前記モータ(13)の動作を制御する、モータ制御部(51)を備え、前記モータ制御部(51)は、前記モータ(13)が前記変位軸部(21)を移動させる動作中に、前記検出器(27)が前記変位軸部(21)の相対移動を検出しない場合、前記モータ(13)の動作を停止させる。これにより、モータ(13)が前記変位軸部(21)を移動させる動作中に、前記検出器(27)が前記変位軸部(21)の相対移動を検出しない場合に、故障と判定し、モータ(13)の動作を停止することで、工具交換装置(10)を用いた交換作業中の安全性を向上できる。