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  • 特開2021137924-工具交換装置およびその制御装置 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-137924(P2021-137924A)
(43)【公開日】2021年9月16日
(54)【発明の名称】工具交換装置およびその制御装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/157 20060101AFI20210820BHJP
【FI】
   B23Q3/157 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-38324(P2020-38324)
(22)【出願日】2020年3月6日
(71)【出願人】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】石山 尚弥
【テーマコード(参考)】
3C002
【Fターム(参考)】
3C002FF03
3C002FF05
3C002KK04
(57)【要約】
【課題】故障の低減を図った工具交換装置およびその制御装置を提供する。
【解決手段】工具交換装置10は、筒状のアーム軸25と、前記筒状のアーム軸内に配置され、その軸方向に変位可能な、変位軸部21と、前記筒状のアーム軸の一端部に配置され、工具を把持するための把持部32を有する、アーム30と、前記把持部に把持される工具をロックするためのロック部材33と、前記アーム軸に対する前記変位軸部の相対移動に応じて、前記ロック部材に前記工具をロックさせるロック機構(リンク35、ロックシャフト34)と、前記変位軸部の相対移動の範囲を制限する制限機構(貫通孔25a、ロッド21b)と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のアーム軸と、
前記筒状のアーム軸内に配置され、その軸方向に変位可能な、変位軸部と、
前記筒状のアーム軸の一端部に配置され、工具を把持するための把持部を有する、アームと、
前記把持部に把持される工具をロックするためのロック部材と、
前記アーム軸に対する前記変位軸部の相対移動に応じて、前記ロック部材に前記工具をロックさせるロック機構と、
前記変位軸部の相対移動の範囲を制限する制限機構と、
を備える、工具交換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の工具交換装置であって、
前記制限機構は、前記筒状のアーム軸の内側側面に形成される孔部と、前記変位軸部の側面上に形成され、前記孔部に挿入される突起部と、を有し、
前記突起部が前記孔部の上側または下側に当接することによって、前記アーム軸に対する前記変位軸部の相対移動が制限される、工具交換装置。
【請求項3】
請求項2に記載の工具交換装置であって、
前記孔部は、前記軸方向に沿って延びる長孔である、工具交換装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の工具交換装置であって、
前記変位軸部の相対移動を検出する検出器をさらに備える、工具交換装置。
【請求項5】
請求項4に記載の工具交換装置であって、
前記変位軸部の前記相対移動の範囲は、第1の相対位置と、第2の相対位置と、を含み、
前記変位軸部が前記第1の相対位置にあるとき、前記ロック部材は前記工具をロックし、
前記変位軸部が前記第2の相対位置にあるとき、前記ロック部材は前記工具のロックを解除し、
前記検出器は、前記第1の相対位置と前記第2の相対位置間での前記変位軸部の移動を検出する、工具交換装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の工具交換装置を制御する制御装置であって、
前記工具交換装置が、前記変位軸部を移動させるためのモータをさらに備え、
前記制御装置は、前記モータの動作を制御する、モータ制御部を備え、
前記モータ制御部は、前記モータが前記変位軸部を移動させる動作中に、前記検出器が前記変位軸部の相対移動を検出しない場合、前記モータの動作を停止させる、制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具交換装置およびその制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械の主軸上の工具を交換する工具交換装置が開発されている。工具交換装置は、工具を把持するアーム、および把持された工具をロック、アンロックするロック機構を備える。このロック機構は、外力によって動作するリンクと、外力の非印加時にリンクを復帰させる弾性部材(例えば、バネ)を有することが多い。
【0003】
しかしながら、多数回のロック、アンロックによって、弾性部材が消耗するなどして、工具交換装置が故障することがある。この結果、工具のロックが不確実になり、工具の交換中に工具がアームから落下などするおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−013318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、故障の低減を図った工具交換装置およびその制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に係る工具交換装置は、筒状のアーム軸と、前記筒状のアーム軸内に配置され、その軸方向に変位可能な、変位軸部と、前記筒状のアーム軸の一端部に配置され、工具を把持するための把持部を有する、アームと、前記把持部に把持される工具をロックするためのロック部材と、前記アーム軸に対する前記変位軸部の相対移動に応じて、前記ロック部材に前記工具をロックさせるロック機構と、前記変位軸部の相対移動の範囲を制限する制限機構と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、故障の低減を図った工具交換装置およびその制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る工具交換装置を表す図である。
図2】実施形態に係る工具交換装置を表す図である。
図3】変位軸部とアーム軸を側面から見た状態を表す側面図である。
図4図4A図4Dは、工具交換装置を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施形態に係る工具交換装置10について、図面を参照しながら以下、詳細に説明する。図1図2は、実施形態に係る工具交換装置10を表す。図1図2の工具交換装置10はそれぞれ、工具(図示せず)をロックしないアンロック状態、工具をロックするロック状態にある。
【0010】
工具交換装置10は、NC制御装置50(制御装置)に制御され、変位軸部21、アーム軸25、およびアーム30を昇降および回転させ、工具をロックする。図1図2に示されるように、工具交換装置10は、筐体11、モータ13、減速機構14、カム17、リンク18、変位軸部21、筒状体22、回転係合部23、アーム軸25、昇降係合部26、検出器27、およびアーム30を有する。このうち、カム17、リンク18、回転係合部23、昇降係合部26は、変位軸部21などを昇降、回転させるカム機構を構成する。
【0011】
筐体11は、内部空間11aおよび連通孔11bを有する。カム機構の潤滑性を保持するために、内部空間11aは液状の潤滑材Lが入っている。この結果、内部空間11aは、潤滑材Lによって満たされる潤滑材領域と、その上方の大気(気化した潤滑材Lの成分を含んでもよい)によって満たされる大気領域に区分できる。但し、これらの領域の境界は、注入あるいは消費した潤滑材Lの量によって変動する。連通孔11bは、大気領域に開口し、内部空間11a(大気領域)を外部(大気)と連通させる。
【0012】
モータ13は、筐体11の外部に取り付けられ、筐体11内に回転力を供給する。後述のように、モータ13は、変位軸部21を移動、回転することができる。減速機構14は、モータ13から出力される回転数を適宜な値まで減速する。なお、減速機構14の一例として、ウォームギア、ウォームホイルの組み合わせを用いることができるが、これに限定されず、種々の減速機構(例えば、ギア)を用いることができる。
【0013】
カム17は、減速機構14を介して、モータ13によって回転軸Oを中心に回転される。この例では、回転軸Oはモータ13の軸と直交しているが、並行であってもよい。カム17は、略円柱形状を有し、その端面に溝17aが、その周側面に溝17b(図示せず)が形成されている。溝17aは、区間A1〜A4に区分できる。溝17aは、区間A1、A3では略円弧形状であり、区間A2、A4では略直線形状を有する。溝17bは、溝17aの区間A1〜A4と対応する区間B1〜B4に区分される。溝17bは、区間B2、B4ではカム17の周に略平行であり、区間B1、B3ではカム17の周に対して傾く。
【0014】
リンク18は、リンク本体18a、支点18b、突起部18c、突起部18dを有する。リンク本体18aは、全体として、棒形状あるいは細長い板形状を有する。支点18bは、リンク本体18aの一端に配置され、回転可能に筐体11に固定される。すなわち、リンク18は、この支点18bを中心に回転できる。突起部18cは、カム17の溝17aに挿入(係合)される。突起部18dは、リンク本体18aの他端に配置され、昇降係合部26に係合する。
【0015】
変位軸部21は、略円柱形状であり、下端にリンク接続部21aを有する。後述のように、リンク接続部21aはリンク35と接続され、ロック部材33をロック、アンロックさせる。変位軸部21の上部に筒状体22、回転係合部23が、下部にアーム軸25、昇降係合部26(ガイドリング)が配置される。
【0016】
筒状体22、回転係合部23は、アーム軸25、昇降係合部26とは分離され、これらの相対的な移動(昇降)を規制しない。筒状体22の上端は、筐体11に対して軸回転可能に支持される。筒状体22は、略筒形状を有し、その内部に変位軸部21の上部を保持する。変位軸部21は、筒状体22に対して一体的に回転し、かつ相対的昇降が可能に係合する。
【0017】
回転係合部23は、略リング形状を有し、筒状体22の下端近傍の外周に固定され、筒状体22と共に回転可能である。回転係合部23は、溝17bに係合する係合突起部23aを有する。
【0018】
アーム軸25は、段部251を有する筒状(より具体的には、略円筒形状)の部材である。段部251は、略リング形状を有し、アーム軸25の上端に配置されて、アーム軸25と一体に移動し、後述のように、検出器27の検出対象となる。アーム軸25の内部に変位軸部21が昇降可能(アーム軸25の軸方向に移動可能)に配置される。すなわち、変位軸部21は、アーム軸25(および段部251)に対して移動できる。但し、後述のように、その範囲は制限される。
【0019】
昇降係合部26は、略リング形状を有し、アーム軸25の外周に配置され、リンク18の突起部18dに係合する。しかし、昇降係合部26は、アーム軸25には直接固定されず、変位軸部21に固定される。これら変位軸部21、アーム軸25、昇降係合部26の結合関係の詳細は後述する。
【0020】
昇降係合部26は、略リング形状の側面に貫通孔を有する筒状部26a、その上下にリング状の突出部26b、26cを有する。突出部26bは、後述のように、検出器27の検出対象となる。なお、後述の非検出期間T01の有無の判定を考慮すると、アーム30がアンロック状態のとき(後述のロッド21bが貫通孔25aの上側に当接)、突出部26bはアーム軸25の段部251と接触または近接していることが好ましい(例えば、後述の貫通孔25aの長径より小さな間隔で、突出部26bと段部251が配置される)。
【0021】
図3は、変位軸部21とアーム軸25を側面から見た状態を表す側面図である。以下、図3を参照して、変位軸部21、アーム軸25、昇降係合部26の結合関係の詳細を説明する。
【0022】
アーム軸25は、筒状であり、その内部と外周を繋ぐ一対の貫通孔25aを有する。この貫通孔25aを通じて、アーム軸25内の変位軸部21と、アーム軸25外の昇降係合部26が接続される。すなわち、変位軸部21の外周と昇降係合部26の内周がロッド21bを介して接続、固定される。
【0023】
ここでは、変位軸部21および昇降係合部26それぞれに、固定用の貫通孔を形成し、ロッド21bを貫通、係合させることで、変位軸部21および昇降係合部26を互いに固定している。但し、変位軸部21および昇降係合部26が互いに固定されていれば、固定用の貫通孔を形成しなくてもよい。すなわち、変位軸部21の外周と昇降係合部26の内周が突起などにより固定されていれば足りる。
【0024】
貫通孔25aは上下方向(軸方向)に沿って延びる長孔形状である。一方、ロッド21bは、略円柱形状であり、貫通孔25a内を通過する。すなわち、ロッド21b(変位軸部21)は、貫通孔25aの長径の範囲で、アーム軸25に対して、上下に変位可能である。ロッド21bは、貫通孔25aの上下端に達すると、これに係合し、貫通孔25aに対する変位が規制される。一方、貫通孔25aの短径は、ロッド21bの直径と略同一であり、貫通孔25a(アーム軸25)に対するロッド21b(変位軸部21)の回転は規制される。
【0025】
すなわち、貫通孔25aの長径が変位軸部21の軸方向であることから、変位軸部21はアーム軸25に対して、その軸方向に所定範囲で昇降可能であり、この所定範囲に達すると、アーム軸25と一体に昇降する。一方、貫通孔25aの短径が、変位軸部21の径方向であり、ロッド21bの径と略同一であることから、変位軸部21はアーム軸25と一体に回転する。
【0026】
貫通孔25aとロッド21bの組み合わせは、アーム軸25に対する変位軸部21の相対移動の範囲を制限する制限機構として機能する。ロッド21b(突起部)が貫通孔25a(孔部)の上側または下側に当接することによって、アーム軸25に対する変位軸部21の相対移動が制限される。貫通孔25aは、アーム軸25の内側側面に形成される孔部として機能する。ロッド21bは、変位軸部21の側面上に形成され、貫通孔25a(孔部)に挿入される突起部として機能する。
【0027】
ロッド21bが貫通孔25aの下側に当接するとき(変位軸部21がアーム軸25に対して第1の相対位置にあるとき)、ロック部材33は把持部32に把持される工具をロックする(図2参照)。一方、ロッド21bが貫通孔25aの上側に当接するとき(変位軸部21がアーム軸25に対して第2の相対位置にあるとき)、ロック部材33は把持部32に把持される工具のロックを解除する(図1参照)。すなわち、工具のロック、アンロックに適正な範囲で変位軸部21を相対移動できるように、貫通孔25aに対するロック部材33の可動範囲が規定される。
【0028】
アーム30は、アーム軸25の下端部に接続され、アーム軸25と共に、昇降、回転する。アーム30は、略直方体形状をなし、アーム本体31、把持部32、ロック部材33、ロックシャフト34、リンク35を有する。アーム30は、いわゆるダブルアームであり、一対の把持部32、一対のロック部材33を有する。
【0029】
アーム本体31は、シャフト収容部31a、リンク収容部31bに区分できる。シャフト収容部31aは、ロックシャフト34を収容する空間を有する。リンク収容部31bは、リンク35を収容する空間を有する。
【0030】
把持部32は、工具を把持する。ロック部材33は、把持部32に把持された工具をロック、アンロックする。ロック部材33は、ロックシャフト34、リンク35によって、変位軸部21のリンク接続部21aに接続される。
【0031】
ロックシャフト34は、ロック部材33に接続される一端と、リンク35の一端(把持部32の側端)に接続される他端を有する。リンク35の他端(中央側端)は、変位軸部21のリンク接続部21aに回転可能に接続される。リンク35は、アーム軸25に対する変位軸部21の相対移動に応じて、ロック部材33を動かし、把持部32に把持された工具をロックさせる。ロックシャフト34、リンク35は、把持部32に把持された工具をロックさせるロック機構として機能する。
【0032】
既述のように、変位軸部21は、アーム軸25に対して、貫通孔25aの範囲で上下に変位できる。変位軸部21の降下によって、リンク35の中央側端部が下がり、ロックシャフト34を把持部32に向かって押し出す。この結果、ロック部材33は、把持部32に把持された工具をロックする(図2参照)。逆に、変位軸部21をアーム軸25に対して、上昇させると、ロック部材33は、把持部32に把持された工具のロックを解除する(図1参照)。
【0033】
このように、アーム軸25に対して変位軸部21を移動(昇降)することで、工具のロック、およびその解除が可能である。すなわち、実施形態のアーム30は、リンク35やロック部材33を復帰させる弾性部材(例えば、バネ)を用いる必要がない。このため、弾性部材が消耗することによる工具交換装置10の故障を低減できる。
【0034】
検出器27は、例えば、筐体11に固定され、アーム軸25に対する変位軸部21の相対移動を検出する。既述のように、ロッド21bが貫通孔25aの下側、上側に当接する範囲(相対移動範囲の上限:第2の相対位置、下限:第1の相対位置の範囲)で、変位軸部21はアーム軸25に対して相対的に移動できる。検出器27は、第1の相対位置と第2の相対位置間での変位軸部21の移動を検出する。
【0035】
ロッド21bが貫通孔25aの上側に当接するとき、検出器27は、昇降係合部26の突出部26bに近接し、突出部26bを検出する(図1参照)。一方、ロッド21bが貫通孔25aの下側に当接するとき、検出器27は、昇降係合部26の突出部26bに近接せず(図2参照)、突出部26bを検出しなくなる。このように、検出器27は、相対移動範囲の上限からの移動および復帰を検出する。
【0036】
相対移動範囲が限定されていることを考慮すると、検出器27は、実質的に、相対移動範囲の上限から下限への(第2の相対位置から第1の相対位置への)、あるいはその逆方向での変位軸部21の移動を検出していることになる。
【0037】
ここで、ロッド21bが貫通孔25aの下側に当接した状態で変位軸部21が下方に移動することを考える。この場合、変位軸部21と共に、アーム軸25も移動し、検出器27は、アーム軸25の段部251に近接し、段部251を検出する。さらに、アーム軸25の移動が進むと、検出器27は、アーム軸25の段部251に近接せず、段部251を検出しなくなる。
【0038】
すなわち、ロッド21bが貫通孔25aの上側に当接した状態から変位軸部21を下方に移動させると、検出器27の検出結果は次の(1)〜(4)のように推移する。このとき、リンク35は後述の破損がない通常の状態とする。
(1)突出部26bの検出:検出期間T11
(2)突出部26b(および段部251)の非検出:非検出期間T01
(3)段部251の検出:検出期間T12
(4)段部251(および突出部26b)の非検出:非検出期間T02
【0039】
検出器27は、接触しなくても、突出部26bを検出できる近接センサであることが好ましい。検出器27に接触センサを用いると、検出器27と突出部26bが接触することで消耗、故障しやすくなる。なお、検出器27は、突出部26bと段部251を識別する必要はないが、これらを識別させてもよい。
【0040】
アーム30内の機構、例えば、リンク35が破損すると(一例として、リンク35が、アーム本体31に固着する)、変位軸部21がアーム軸25に対して変位しなくなる(変位軸部21とアーム軸25が一体的に移動する)可能性がある。この場合、検出期間T11、T12の間の非検出期間は存在しないか、あっても比較的短時間となり(前述のように、突出部26bは、好ましくは、アーム軸25の段部251と接触または近接する)、本来の非検出期間T01と区別できる。この非検出期間T01の有無によって、変位軸部21がアーム軸25に対して相対的に移動するか否か(アーム30が通常の状態か否か、すなわち故障の有無)を判定できる。なお、この判定は、モータ制御部51が行える。
【0041】
より詳細には、検出期間、非検出期間の長さに基づいて、非検出期間T01の有無を判定できる。例えば、変位軸部21の降下開始からの検出期間T1の長さが基準値L1より長い(T1>L1)場合、非検出期間T01が存在しない(検出期間T11、T12が1の検出期間T1として検出)と判定できる。また、基準値L1以下の検出期間T1(T1≦L1)の後に非検出期間T0があったとき、次のように判定する。すなわち、この非検出期間T0の長さが基準値L2より長ければ(T0>L2)、この非検出期間T0を非検出期間T01と判定し、そうでなければ(T0≦L2)、非検出期間T01は存在しないと判定できる。
【0042】
NC制御装置50は、モータ制御部51を有する。モータ制御部51は、工具交換装置10のモータ13の動きを制御する。既述のように、モータ13は、カム17を回転させることで、変位軸部21を昇降(移動)させる。
【0043】
モータ制御部51は、工具交換装置10から検出器27の検出信号を受ける。この検出信号は、変位軸部21が相対移動範囲の上限側にあるか否か(相対移動範囲が狭いことを考慮すると、実質的には、上限側、下限側のいずれにあるか否か)を表す。
【0044】
モータ制御部51は、検出信号を用いて、モータ13が変位軸部21を移動させる動作中に、検出器27が変位軸部21の相対移動を検出するか否かを判断する。すなわち、モータ13が変位軸部21を降下させる場合、変位軸部21の位置は、相対移動範囲の上限(第2の相対位置)から下限(第1の相対位置)に切り換わる。一方、モータ13が変位軸部21を上昇させる場合、変位軸部21の位置は、相対移動範囲の下限から上限に切り換わる。
【0045】
モータ制御部51は、モータ13が変位軸部21を移動させる動作中に、検出器27がアーム軸25に対する変位軸部21の相対移動を検出しないとき、モータ13の動作、ひいては、変位軸部21の昇降を停止させる。既述のように、モータ制御部51は、検出器27による検出期間、非検出期間の長さに基づいて、非検出期間T01の有無(アーム軸25に対する変位軸部21の相対移動の有無)を判定できる。モータ13と変位軸部21の動作は同期しているため、検出器27の反応から工具交換装置10の故障(ロック機構の不具合)を検出できる。このとき、モータ制御部51は、工具交換動作(モータ13)を停止する。また、モータ制御部51は、表示または音声を用いて、作業者に警告するアラーム機能を有する。
【0046】
(工具交換装置10の動作)
工具交換装置10は、NC制御装置50に制御され、次のように動作する。
【0047】
(1)待機状態(図4A図1
リンク18の突起部18cは、カム17の溝17aの区間A1と区間A4の境界付近に配置され、回転係合部23の係合突起部23aは溝17bの区間B1と区間B4の境界付近に配置されるとする。このとき、モータ13は未動作である。
相対的移動 以下、モータ13が動作し、カム17が回転することで、リンク18の突起部18cは、溝17aの区間A1〜A4を移動し、回転係合部23の係合突起部23aは溝17bの区間B1〜B4を移動するものとする。
【0048】
(2)アーム30の回転(図4A図4B
モータ13が駆動されて、カム17の回転が始まる。突起部18cは、溝17aの区間A1内を移動し、係合突起部23aは溝17bの区間B1内を移動する。このとき、変位軸部21(アーム軸25、アーム30)は、昇降せず回転する。
【0049】
変位軸部21が昇降せず回転するのは次のように説明できる。溝17bは、区間B1でカム17の周に対して傾く。このため、係合突起部23aは、区間B1を移動するときにカム17の軸方向に動き、回転係合部23を回転させる。回転係合部23が回転すると、筒状体22、ひいては変位軸部21が回転する。一方、溝17aは、区間A1では回転軸Oを中心とする略円弧形状である。このため、突起部18cは、区間A1内を移動するときに、回転軸Oからの距離が一定に保たれるため、実質的に昇降せず、リンク18が回動することもない。この結果、リンク18の突起部18d、ひいては昇降係合部26、変位軸部21が昇降することはない。
【0050】
(3)工具のロック(図4B図4C図2
突起部18cは、溝17aの区間A2に達し、その中で移動する。一方、係合突起部23aは溝17bの区間B2内を移動する。このとき、変位軸部21(アーム軸25、アーム30)は、回転せず降下する。
【0051】
変位軸部21が回転せず昇降するのは次のように説明できる。突起部18cは、区間A2を移動するときに、回転軸Oからの距離が変化することで、昇降(ここでは降下)し、リンク18が回動する。この結果、リンク18の突起部18d、ひいては昇降係合部26、変位軸部21が昇降する。一方、溝17bは、区間B2でカム17の周に平行である。このため、係合突起部23aは、区間B2を移動するときにカム17の軸方向に動かず、回転係合部23を回転させることもない。回転係合部23が回転しないため、筒状体22、変位軸部21も回転しない。
【0052】
このように、変位軸部21は、アーム軸25に対して相対的に移動(降下)する。この結果、リンク35が動作して、ロック部材33がマガジンなどに配置される工具をロックする。このとき、アーム軸25(アーム30)は昇降しない。既述のように、このときにアーム軸25に対する変位軸部21の移動が検出されないと、NC制御装置50はモータ13の動作、ひいては工具の交換作業を停止させることができる。
【0053】
(4)アーム30の降下(図4C図4D
突起部18cが溝17aの区間A2をさらに移動することで、変位軸部21がさらに降下する。この結果、変位軸部21のロッド21bがアーム軸25の貫通孔25a下端に当接する。このため、変位軸部21と一体に、アーム軸25(アーム30)が降下する。このとき、工具がロックされていることから、工具がマガジンなどから引き抜かれる。
【0054】
その後は、次のような経過を辿り、工具が交換される。
【0055】
(5)アーム30の回転
突起部18cは、溝17aの区間A3内を移動し、係合突起部23aは溝17bの区間B3内を移動する。このとき、変位軸部21(アーム軸25、アーム30)は、昇降せず回転する。
【0056】
(6)工具のアンロック
突起部18cは、溝17aの区間A4に達し、その中で移動する。一方、係合突起部23aは溝17bの区間B4内を移動する。このとき、変位軸部21(アーム軸25、アーム30)は、回転せず上昇する。
【0057】
変位軸部21は、アーム軸25に対して相対的に移動(上昇)する。この結果、リンク35が動作して、ロック部材33が把持部32に把持される工具のロックを解除する。このとき、アーム軸25(アーム30)は昇降しない。既述のように、このときにアーム軸25に対する変位軸部21の移動が検出されないと、NC制御装置50はモータ13の動作、ひいては工具の交換作業を停止させることができる。
【0058】
(7)アーム30の上昇
突起部18cが溝17aの区間A4内をさらに移動することで、変位軸部21をさらに上昇させる。この結果、変位軸部21のロッド21bがアーム軸25の貫通孔25a上端に当接する。このため、変位軸部21と一体に、アーム軸25(アーム30)が上昇する。この結果、工具を工作機械の主軸に取り付けることが可能となる。
【0059】
〔実施形態から得られる技術的思想〕
上記実施形態から把握しうる技術的思想について、以下に記載する。
【0060】
〔1〕工具交換装置(10)は、筒状のアーム軸(25)と、前記筒状のアーム軸(25)内に配置され、その軸方向に変位可能な、変位軸部(21)と、前記筒状のアーム軸(25)の一端部に配置され、工具を把持するための把持部(32)を有する、アーム(30)と、前記把持部(32)に把持される工具をロックするためのロック部材(33)と、前記アーム軸(25)に対する前記変位軸部(21)の相対移動に応じて、前記ロック部材(33)に前記工具をロックさせるロック機構(リンク35、ロックシャフト34)と、前記変位軸部(21)の相対移動の範囲を制限する制限機構(貫通孔25a、ロッド21b)と、を備える。これにより、外力の非印加時にリンクを復帰させる弾性部材(例えば、バネ)を用いる必要が低減し、弾性部材が消耗することによる工具交換装置(10)の故障を低減できる。
【0061】
〔2〕前記制限機構(貫通孔25a、ロッド21b)は、前記筒状のアーム軸(25)の内側側面に形成される孔部(貫通孔25a)と、前記変位軸部(21)の側面上に形成され、前記孔部(貫通孔25a)に挿入される突起部(ロッド21b)と、を有し、前記突起部(ロッド21b)が前記孔部(貫通孔25a)の上側または下側に当接することによって、前記アーム軸(25)に対する前記変位軸部(21)の相対移動が制限される。これにより、アーム軸(25)に対する変位軸部(21)の相対移動の範囲を制限し、工具のロック、アンロックに適正な範囲で変位軸部(21)を相対移動できる。
【0062】
〔3〕孔部(貫通孔25a)は、前記軸方向に沿って延びる長孔である。これにより、アーム軸(25)に対して変位軸部(21)の昇降を可能とし、かつアーム軸(25)と変位軸部(21)を一体的に回転可能となる。
【0063】
〔4〕変位軸部(21)の相対移動を検出する検出器(27)をさらに備える。これにより、変位軸部(21)の相対移動を検出し、工具交換装置(10)の故障を検出できる。
【0064】
〔5〕前記変位軸部(21)の前記相対移動の範囲は、第1の相対位置と、第2の相対位置と、を含み、前記変位軸部(21)が前記第1の相対位置にあるとき、前記ロック部材(33)は前記工具をロックし、前記変位軸部(21)が前記第2の相対位置にあるとき、前記ロック部材(33)は前記工具のロックを解除し、前記検出器(27)は、前記第1の相対位置と前記第2の相対位置間での前記変位軸部(21)の移動を検出する。これにより、第1の相対位置と第2の相対位置間での前記変位軸部(21)の移動を検出し、より的確な故障の判定が可能となる。
【0065】
〔6〕工具交換装置(10)を制御する制御装置(NC制御装置50)であって、前記工具交換装置(10)が、前記変位軸部(21)を移動させるためのモータ(13)をさらに備え、前記制御装置(NC制御装置50)は、前記モータ(13)の動作を制御する、モータ制御部(51)を備え、前記モータ制御部(51)は、前記モータ(13)が前記変位軸部(21)を移動させる動作中に、前記検出器(27)が前記変位軸部(21)の相対移動を検出しない場合、前記モータ(13)の動作を停止させる。これにより、モータ(13)が前記変位軸部(21)を移動させる動作中に、前記検出器(27)が前記変位軸部(21)の相対移動を検出しない場合に、故障と判定し、モータ(13)の動作を停止することで、工具交換装置(10)を用いた交換作業中の安全性を向上できる。
【符号の説明】
【0066】
10…工具交換装置 11…筐体
11a…内部空間 11b…連通孔
13…モータ 14…減速機構
17…カム 17a、17b…溝
18、35…リンク 18a…リンク本体
18b…支点 18c、18d…突起部
21…変位軸部 21a…リンク接続部
21b…ロッド 22…筒状体
23…回転係合部 23a…係合突起部
25…アーム軸 25a…貫通孔
26…昇降係合部 26a…筒状部
26b、26c…突出部 27…検出器
30…アーム 31…アーム本体
31a…シャフト収容部 31b…リンク収容部
32…把持部 33…ロック部材
34…ロックシャフト 50…NC制御装置
図1
図2
図3
図4