(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-137965(P2021-137965A)
(43)【公開日】2021年9月16日
(54)【発明の名称】プリフォーム成形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 45/27 20060101AFI20210820BHJP
【FI】
B29C45/27
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-99806(P2018-99806)
(22)【出願日】2018年5月24日
(71)【出願人】
【識別番号】390007179
【氏名又は名称】株式会社青木固研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100062225
【弁理士】
【氏名又は名称】秋元 輝雄
(74)【代理人】
【識別番号】100186060
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100145458
【弁理士】
【氏名又は名称】秋元 正哉
(72)【発明者】
【氏名】町田 敏宏
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202AG07
4F202AH55
4F202AJ01
4F202AJ08
4F202AJ13
4F202AM32
4F202AR12
4F202CA11
4F202CB01
4F202CK04
4F202CK89
4F202CN27
(57)【要約】
【課題】キャビティ型側の円孔状凹部とこの円孔状凹部に差し込みするホットランナーノズルの先端部との間にシンプルな形状である円板状の断熱紙を挟み込みしたプリフォーム成形装置で、ブロー成形できる状態のプリフォームを、このプリフォームのゲート部の樹脂部分と断熱紙側に位置する樹脂部分との間が適正に分断されて離型できるようにして、ゲート部に白化が生じず糸引きの無い中空成形体を製造する。
【解決手段】断熱紙12の厚さを、その断熱紙12の開孔15に樹脂溶融層18と樹脂断熱層19とが形成される厚さとするとともに、開孔15の円開口を、樹脂溶融層18との熱交換をする樹脂断熱層19に位置する樹脂が、キャビティ型5の円孔状凹部6の凹部内天面10と接触して、固化状態に維持する熱交換が可能な広さとした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のホットランナーノズルが立設しているホットランナー装置と、前記ホットランナーノズルの先端部が入り込む円孔状凹部に、下方に向けて先細りしたキャビティゲートが達しているキャビティ型を有していて、ホットランナーノズル側からキャビティゲートを経て射出された樹脂をプリフォームに成形し、その射出成形後にブロー成形が可能な状態でプリフォームを離型する射出成形型とを備えるプリフォーム成形装置において、
キャビティ型の円孔状凹部の凹部内天面が平坦面とされているとともに、ホットランナーノズルの先端部の先端部端面が平坦面とされ、
前記キャビティ型の円孔状凹部に、中心に開孔を有した円板状の断熱紙を嵌め込みして、この断熱紙の開孔の中心にキャビティゲートのゲート口が対応位置しており、
前記断熱紙が、キャビティ型の円孔状凹部の凹部内天面の前記平坦面とホットランナーノズルの先端部の先端部端面の前記平坦面とで圧縮変形可能に挟み込まれていて、
キャビティ型の円孔状凹部とこの円孔状凹部に入り込んだホットランナーノズルの先端部とで挟み込みされた前記断熱紙は、
キャビティ型の円孔状凹部の凹部内天面の平坦面と断熱紙の開孔とホットランナーノズルの先端部の先端部端面の平坦面とで囲まれて、ホットランナーノズルのノズル口とキャビティゲートのゲート口とが臨んでいる空間に、
ホットランナーノズルからの溶融樹脂で形成される樹脂溶融層と、
前記樹脂溶融層の上に重なってこの樹脂溶融層との熱交換をするとともに、キャビティ型の円孔状凹部の凹部内天面に接触してキャビティ型との熱交換で溶融樹脂が固化可能な樹脂断熱層と
の二層を形成する厚さに圧縮変形されていて、
前記断熱紙の開孔は、
樹脂溶融層との前記熱交換をする樹脂断熱層に位置する樹脂を、キャビティ型の円孔状凹部の凹部内天面との前記接触で、前記ブロー成形を可能にした状態のプリフォームの離型時にキャビティゲートのゲート口に位置する樹脂との間で破断分離が生じる固化状態に維持するものであって、
前記開孔の円開口は、
樹脂溶融層との前記熱交換をする樹脂断熱層に位置する樹脂が、キャビティ型の円孔状凹部の凹部内天面と接触して、前記固化状態に維持する熱交換が可能な広さとされていることを特徴とするプリフォーム成形装置。
【請求項2】
前記キャビティゲートのゲート口に対する前記断熱紙の開孔の円開口面積比は、
樹脂溶融層との前記熱交換をする樹脂断熱層に位置する樹脂が、キャビティ型の円孔状凹部の凹部内天面との前記接触で、前記ブロー成形を可能にした状態のプリフォームの離型時にキャビティゲートのゲート口に位置する樹脂との間で破断分離が生じる固化状態に維持する熱交換が可能とされている円開口面積比である請求項1に記載のプリフォーム成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形されたプリフォームを離型してから延伸ブロー成形を行なって中空成形体を得て、その中空成形体を取り出す射出延伸ブロー成形機におけるプリフォーム成形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出延伸ブロー成形機においては、射出装置から樹脂が射出されてプリフォームを射出成形する射出成形部と、前記射出成形部の射出成形型から離型したプリフォームを、ブロー成形型にて延伸ブロー成形を行なって中空成形体を得る延伸ブロー成形部と、この延伸ブロー成形部のブロー成形型から中空成形体を離型して成形機外へと送り出すことができるように取り出す取り出し部との三つのステージを備えているものがある。
【0003】
上記射出延伸ブロー成形機の射出成形部では、射出装置から送り込まれる溶融樹脂を複数のランナーに分岐するホットランナー装置と、ホットランナー装置の上部に位置し、前記ランナーごとに対応してプリフォームを射出成形する金型からなる射出成形型とでプリフォーム成形装置が構成される。
【0004】
このプリフォーム成形装置での射出成形型は、プリフォームの口部外周面形状を形成するとともに射出成形されたプリフォームを搬送する役割を兼ねるリップ型と、プリフォームの胴部外周面形状と底部外面形状とを形成するキャビティ型と、プリフォームの口部から底部にかけての内面形状を形成するコア型とが組み合わされている。
【0005】
図2に示すようにプリフォーム成形装置1の上記ホットランナー装置2はホットランナーノズル3が立設していて、図示はされていないが前記ホットランナーノズル3は複数が立設した状態で配列されている。ホットランナー装置2の上に、連結板2aを介して射出成形型4のキャビティ型5が取り付けられていて、キャビティ型5の下面に凹設された円孔状凹部6にホットランナーノズル3の先端部7が入り込んでいる。そして前記円孔状凹部6の中心に、下方に向けて先細りしているキャビティゲート8が達している。
【0006】
上記キャビティ型5の下面の円孔状凹部6とホットランナーノズル3の先端部7との間には、中心に開孔15(
図3参照)を有した断熱部材9が挟み込まれている。断熱部材9は高温度のホットランナーノズル3とキャビティ型5との間で熱の伝搬が起こり難くする目的で用いられ、また樹脂漏れを防ぐシール部材の役割も果たしている。
【0007】
つまり、上記射出延伸ブロー成形機では、高温度の溶融樹脂を射出装置からホットランナー装置を通して射出成形金型に射出しており、樹脂の溶融状態を保つためにホットランナーノズルの部分も高温度に維持されているが、一方、ホットランナーノズルのノズル口から射出成形型に送り込まれた樹脂を素早くプリフォームに成形するためにキャビティ型を冷やしている。
【0008】
そして、射出成形型側での冷却がホットランナーノズルの先端部に影響を及ぼさないように、またホットランナーノズル側からの熱によって、射出成形型に射出された溶融樹脂に対する冷却が損なわないようにする必要がある。そのために、キャビティ型の円孔状凹部とホットランナーノズルの先端部との間に上記断熱部材を挟み込んでいる。
【0009】
なお、上記射出延伸ブロー成形機は、上述したように射出成形型から離型したプリフォームを、ブロー成形型にて延伸ブロー成形を行なうホットパリソンタイプの成形方法で中空成形体を製造する成形機である。そのために離型しても型崩れせず、かつブロー成形を行なうことができる状態になるタイミングで射出成形型からプリフォームを離型している。
【0010】
また、断熱部材を用いた技術としては、本願出願人の先の出願である特許文献1の
図4に示されているように、キャビティ型の下面における凹部とホットランナーノズルの先端部との間に円板状の断熱部材を挟み込むようにした技術が示されている。
【0011】
また、断熱部材を用いた技術としては、お椀状の断熱部材を、キャビティ型の下面の凹部の凹曲面部分とホットランナーノズルの先端部の凸曲面部分との間に挟み込むようにした点を文献中の
図2として示す特許文献2がある。
【0012】
同じく断熱部材を用いた技術として、特許文献3に、浅鍋状の断熱部材を、キャビティ型の下面の凹部の凹部とホットランナーノズルの先端部との間に挟み込むようにした点が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2004−025812号公報(
図4)
【特許文献2】特開2000−351151号公報(
図2)
【特許文献3】特開2002−316342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記特許文献2に示されたキャップ状の断熱部材や特許文献3に示された浅鍋状の断熱部材ではその断熱部材の形状が複雑であり、断熱部材自体の作製がコスト高になるという問題がある。
【0015】
特許文献1に示された断熱部材は円板状であり、特許文献2、3に示された断熱部材に対して形状の対比をすればシンプルな形状となっていて、歩留まりよく作成することができる断熱部材である。
【0016】
図2、
図3に示す上述したプリフォーム成形装置1では、キャビティ型5の円孔状凹部6の凹部内天面10が平坦面とされているとともに、ホットランナー装置2のホットランナーノズル3の先端部7の先端部端面11が平坦面とされている。
【0017】
そして、
図3に示すように上記プリフォーム成形装置1において、キャビティ型5側の凹部内天面10とホットランナーノズル3側の前記先端部端面11との間に、円板状の断熱部材9である断熱紙12を下位に、ステンレス製の断熱板13を上位にした重ね合わせ状態で挟み込みしていた。
【0018】
上記組み合わせで使用している断熱紙12と断熱板13とは、勿論、キャビティゲート8の下端のゲート口14(直径約2mm)に対応する開孔15が開けられている。断熱板13の開孔15の直径を、例えばゲート口14の直径と同径、或いは小径とするとともに、断熱紙12の開孔15の直径を、例えばゲート口14の直径より小径である約1.4mm程度のものとしていた。そして、断熱紙12と断熱板13とを重ね合わせた厚さtが約0.4mm程度になるように、キャビティ型5側の凹部内天面10とホットランナーノズル3側の先端部端面11との二面の平坦面で圧縮されている。
【0019】
断熱紙12と断熱板13とを重ね合わせて断熱部材9を構成している理由は、断熱紙12を単独で使用した場合、溶融樹脂が繰り返し通過することでその断熱紙12の開孔15が徐々に拡径してしまうためであり、金属製の断熱板13を断熱紙12に重ねることで断熱紙12の開孔15の広がりを防止していた。
【0020】
このようにプリフォームを射出成形してそのプリフォームを、時間を置かずに延伸ブロー成形型へ移すことができるように離型するプリフォーム成形装置では、断熱部材9を円板状の形態としていた。
【0021】
しかしながら上記プリフォーム成形装置1において、ブロー成形が可能となるタイミングでプリフォームを離型するときに、そのプリフォームのゲート部の樹脂と上記断熱部材9の開孔15にある樹脂とが適正に分離せず、ゲート部に糸引きが生じる場合があった。
【0022】
ブロー成形が可能な状態で離型できるようにするという条件の下で、上記糸引き自体を生じないようにする対策としては、断熱部材9の開孔15を小径にして対処するが、開孔15を小径にすると、溶融樹脂がホットランナーノズルから射出成形型に送り込み難くなっていた。またプリフォームのゲート部を白化させるという不具合が生じる。
【0023】
そこで本発明は上記事情に鑑み、キャビティ型側の円孔状凹部とこの円孔状凹部に差し込みするホットランナーノズルの先端部との間にシンプルな形状である円板状の断熱紙を挟み込みしたプリフォーム成形装置で、ブロー成形できる状態のプリフォームを、このプリフォームのゲート部の樹脂部分と断熱紙側に位置する樹脂部分との間が適正に分断されて離型できるようにすることを課題とし、ゲート部に白化が生じず糸引きの無い中空成形体を製造することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
(請求項1の発明)
本発明は上記課題を考慮してなされたもので、複数のホットランナーノズルが立設しているホットランナー装置と、前記ホットランナーノズルの先端部が入り込む円孔状凹部に、下方に向けて先細りしたキャビティゲートが達しているキャビティ型を有していて、ホットランナーノズル側からキャビティゲートを経て射出された樹脂をプリフォームに成形し、その射出成形後にブロー成形が可能な状態でプリフォームを離型する射出成形型とを備えるプリフォーム成形装置において、
キャビティ型の円孔状凹部の凹部内天面が平坦面とされているとともに、ホットランナーノズルの先端部の先端部端面が平坦面とされ、
前記キャビティ型の円孔状凹部に、中心に開孔を有した円板状の断熱紙を嵌め込みして、この断熱紙の開孔の中心にキャビティゲートのゲート口が対応位置しており、
前記断熱紙が、キャビティ型の円孔状凹部の凹部内天面の前記平坦面とホットランナーノズルの先端部の先端部端面の前記平坦面とで圧縮変形可能に挟み込まれていて、
キャビティ型の円孔状凹部とこの円孔状凹部に入り込んだホットランナーノズルの先端部とで挟み込みされた前記断熱紙は、
キャビティ型の円孔状凹部の凹部内天面の平坦面と断熱紙の開孔とホットランナーノズルの先端部の先端部端面の平坦面とで囲まれて、ホットランナーノズルのノズル口とキャビティゲートのゲート口とが臨んでいる空間に、
ホットランナーノズルからの溶融樹脂で形成される樹脂溶融層と、
前記樹脂溶融層の上に重なってこの樹脂溶融層との熱交換をするとともに、キャビティ型の円孔状凹部の凹部内天面に接触してキャビティ型との熱交換で溶融樹脂が固化可能な樹脂断熱層と
の二層を形成する厚さに圧縮変形されていて、
前記断熱紙の開孔は、
樹脂溶融層との前記熱交換をする樹脂断熱層に位置する樹脂を、キャビティ型の円孔状凹部の凹部内天面との前記接触で、前記ブロー成形を可能にした状態のプリフォームの離型時にキャビティゲートのゲート口に位置する樹脂との間で破断分離が生じる固化状態に維持するものであって、
前記開孔の円開口は、
樹脂溶融層との前記熱交換をする樹脂断熱層に位置する樹脂が、キャビティ型の円孔状凹部の凹部内天面と接触して、前記固化状態に維持する熱交換が可能な広さとされていることを特徴とするプリフォーム成形装置であり、このプリフォーム成形装置を提供して上記課題を解消するものである。
【0025】
(請求項2の発明)
前記キャビティゲートのゲート口に対する前記断熱紙の開孔の円開口面積比は、
樹脂溶融層との前記熱交換をする樹脂断熱層に位置する樹脂が、キャビティ型の円孔状凹部の凹部内天面との前記接触で、前記ブロー成形を可能にした状態のプリフォームの離型時にキャビティゲートのゲート口に位置する樹脂との間で破断分離が生じる固化状態に維持する熱交換が可能とされている円開口面積比であることが良好である。
【発明の効果】
【0026】
(請求項1の発明)
請求項1の発明によれば、円板状の断熱部材である断熱紙は、キャビティ型の円孔状凹部の凹部内天面の平坦面とホットランナーノズルの先端部の先端部端面である平坦面との挟み込みによって、開孔の部分に、ホットランナーノズルからの溶融樹脂で形成される樹脂溶融層と、この樹脂溶融層の上に重なってこの樹脂溶融層との熱交換をするとともに、キャビティ型の円孔状凹部の凹部内天面に接触してキャビティ型との熱交換で固化が可能な樹脂断熱層との二層が形成されるようにした厚さに設けられている。
【0027】
このように断熱紙の開孔の部分には、樹脂溶融層とこの樹脂溶融層に重なる樹脂断熱層との二層が形成されるようにしているので、ブロー成形を可能にした状態のプリフォームの離型時には、そのプリフォームのゲート部の樹脂と樹脂断熱層の樹脂との間に破断が起きて、糸引きを生じさせずることがない。そのため、ブロー成形できるタイミングでプリフォームをキャビティ型から引き上げるようにしても、糸引きの無い適正な離型が行なえるという効果を奏する。
【0028】
また、ホットランナーノズルからの溶融樹脂が流れ込んでなる樹脂溶融層が上記樹脂断熱層の下層となる形で設けられているので、断熱紙の厚さを調整するという簡単な操作にて、ホットランナーノズル側からの溶融樹脂の送り込みによって抵抗なく樹脂断熱層を突き破って射出成形型側に溶融樹脂を送り込みできる状態を確保できるという効果を奏する。
【0029】
さらに、開孔が小孔であった場合にプリフォームのゲート部に白化が生じ易かったが、本発明において開孔の円開口は、樹脂溶融層との前記熱交換をする樹脂断熱層に位置する樹脂が、キャビティ型の円孔状凹部の凹部内天面と接触して、前記固化状態に維持する熱交換が可能な広さとしているので、開孔の広さを広くしてプリフォームのゲート部の白化を防止することができる。
【0030】
(請求項2の発明)
請求項2の発明によれば、キャビティ型のキャビティゲートのゲート口の円開口面積に基づいて比率から断熱紙の開孔を設けるようにすればよく、断熱紙の作製が容易になるという優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明に係るプリフォーム成形装置の実施の形態でのホットランナーノズルの先端部側を拡大した状態で示す説明図である。
【
図2】従来のプリフォーム成形装置を示す説明図である。
【
図3】同じく従来のプリフォーム成形装置の実施の形態でのホットランナーノズルの先端部側を拡大した状態で示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
つぎに本発明を
図1に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。なお、
図2と
図3に示す従来例と構成が重複する部分は同符号を付してその説明を省略する。
【0033】
本発明のプリフォーム成形装置1はホットランナー装置2とこのホットランナー装置2の上部に構成される射出成形型4とを備えているものである。そして上述したようにホットランナー装置2では型取り数に応じた複数のホットランナーノズル3が立設している。
【0034】
また射出成形型4では、ホットランナーノズル3の上方となる部分にプリフォームの成形空間が形成されるようにしており、ホットランナーノズル3の先端部7が入り込む円孔状凹部6に下方に向けて先細りしたキャビティゲート8が達しているキャビティ型5を有している。射出成形型4は、上述したように前記キャビティ型5と、上下してこのキャビティ型5の内側に配置可能とされるコア型と、プリフォームの口部外周面形状を形成し、プリフォームの搬送及びブロー成形された中空成形体を搬送する役割も兼ねるリップ型とから構成される。
【0035】
そして、射出成形型4は、ホットランナーノズル3側からキャビティゲート8を経て射出された樹脂をプリフォームに成形し、その射出成形後にブロー成形が可能な状態でプリフォームを離型するようにしているものである。なお、射出成形型4はキャビティ型5とコア型とリップ型とで構成されているが、本発明のポイントを明確に説明するために、
図1においては、射出成形型4の下部部分を図示している。また
図2と
図3においても射出成形型4はその下部部分が図示されている。
【0036】
(断熱紙)
キャビティ型5の上記円孔状凹部6の凹部内天面10側に円板状の断熱紙12が嵌め入れられている。そして、キャビティ型5側の凹部内天面10とホットランナーノズル3側の前記先端部端面11との間で前記断熱紙12を挟み込みしている。
【0037】
上記断熱紙12の中央には開孔15が打ち抜き形成されていて、この開孔15は断熱紙15自体の中心と同心の円状の開口である。そして開孔15の中心はキャビティゲート8のゲート口14と対応位置していて、前記ゲート口14に比べて大径にして開口されている。
【0038】
キャビティ型5側の凹部内天面10は平坦面であるとともに、ホットランナーノズル3側の前記先端部端面11も平坦面としている。そして上記断熱紙12は単にキャビティ型5側の凹部内天面10の平坦面とホットランナーノズル3側の先端部端面11の平坦面とに挟まれているわけではなく、前記二面の平坦面で挟み込まれて断熱紙12の厚さが小さくなるように圧縮変形している。
【0039】
(圧縮変形による断熱紙の厚さ調整)
断熱紙12の厚さが小さくなる圧縮変形の度合いについては、例えば厚さ方向に圧縮の圧力を受けていないときの厚さを100した場合、圧縮変形した後の断熱紙12の厚さが前記100に対して約92程度となるようにすることが良好である。なお、射出成形に際して開孔15に後述する樹脂による二層が形成されるようにすることを条件とするものである。
【0040】
断熱紙12は一枚であることが限定されているものではなく、必要に応じて複数枚を重ね合わせて用いることができる。具体的な一例としては、開孔15の直径が8mm、厚さ0.76mmの断熱紙12を二枚用意し、重ね合わせた状態で円孔状凹部6に嵌め入れる。そしてこの二枚にして重ね合わされた断熱紙12を上記二面の平坦面の挟み込みで1.40mmの厚さになるように圧縮変形させる。
【0041】
(断熱紙中央部分の空間)
上述したように断熱紙12が、キャビティ型5の円孔状凹部6とホットランナーノズル3の先端部7とで挟み込まれている。そして断熱紙12の中央の部分には、キャビティ型5の円孔状凹部6の平坦面である凹部内天面10と断熱紙12の開孔15の内周面とホットランナーノズル3の先端部7の平坦面とされている先端部端面11とで囲まれている空間16が形成されている。
【0042】
上記空間16には、下方からホットランナーノズル3のノズル口17が臨んでいるとともに、上方からはキャビティゲート8のゲート口14が臨んでいる。そして本プリフォーム成形装置1を搭載した射出袁敏ブロー成形機が稼働して射出装置側からホットランナー装置2を経て射出成形型4に溶融樹脂が供給されることで、前記空間16は、常時樹脂で満たされる箇所となる。
【0043】
断熱紙12は上述したように上下方向から圧力を加えることでその厚さを変更することができる。そして断熱紙12の厚さによって上記空間16に満たされる樹脂の状態が変化する。即ち、空間16の上下の寸法を大きくした場合と小さくした場合とでは、空間16の内部の樹脂の状態が相違する。
【0044】
そして本実施の形態において、上記断熱紙12は、キャビティ型5の円孔状凹部6の凹部内天面10とホットランナーノズル3の先端部7の先端部端面11との間に挟まれている上記断熱紙12の開孔15の空間16に、本プリフォーム成形装置1の稼働時にノズル口17からゲート口14に向けての樹脂経路を通る溶融樹脂が満ちて、この溶融樹脂によって樹脂溶融層18と樹脂断熱層19との二層を形成する厚さに圧縮変形されている。
【0045】
(樹脂溶融層)
樹脂溶融層18は、ホットランナーノズル3からの溶融樹脂で形成される層であり、高温度の溶融樹脂が流動可能な状態となっている部分である。
【0046】
(樹脂断熱層)
また樹脂断熱層19は、樹脂溶融層18の上に重なって樹脂溶融層18の溶融樹脂との熱交換をするとともに、キャビティ型5の円孔状凹部6の凹部内天面10に接触してキャビティ型5との熱交換で溶融樹脂が固化可能な層である。
【0047】
なお、空間16の上下の寸法を、圧縮変形した後の断熱紙12の厚さが非圧縮時の厚さ100に対して約92程度より更に小さくなるようにした場合の間隔では、空間16は溶融樹脂で満たされる可能性が高い。一方、空間16の上下の寸法を、上記1.40mmの値より大幅に大きくなるようにした場合(例えば三枚の断熱紙12を重ねるなどして空間16の上下の寸法を大きくした場合)、キャビティ型5の円孔状凹部6の凹部内天面10側で形成される固化状態の樹脂層の厚さが大きくなって、キャビティ型5側へ溶融樹脂を送り込みするときの抵抗が大きくなる。
【0048】
(開孔の円開口の大きさ)
上述しているようにプリフォーム成形装置1は、ブロー成形できる状態でプリフォームを離型するようにしているものである。そして断熱紙12の開孔15にあっては、プリフォームを離型するときにゲート部の樹脂と開孔15に位置する樹脂との間で、細く糸状に引き伸ばされる樹脂が生じないように工夫が、簡易な構成で実施されている。
【0049】
即ち、断熱紙12の開孔15は、樹脂溶融層18との上記熱交換を常時行なっている樹脂断熱層19に位置する樹脂を、キャビティ型5の円孔状凹部6の凹部内天面10との接触で、ブロー成形を可能にした状態のプリフォームの離型時にキャビティゲート8のゲート口14に位置する樹脂との間で破断分離が生じる固化状態に維持する。
【0050】
そして開孔15の円開口は、樹脂溶融層18との熱交換をする樹脂断熱層19に位置する樹脂がキャビティ型5側の凹部内天面10と接触して、上記条件の固化状態に維持する熱交換が可能な広さに設けられている。
【0051】
さらにゲート口14と開孔15とが共に円開口であるとともに、同心となるように配置されていて、キャビティゲート8のゲート口14に対する断熱紙12の開孔15の円開口面積比をつぎのようにしている。即ち、前記円開口面積比を、樹脂溶融層18との上記熱交換をする樹脂断熱層19に位置する樹脂が、キャビティ型5の円孔状凹部6の凹部内天面10との接触で、ブロー成形を可能にした状態のプリフォームの離型時にキャビティゲート8のゲート口14に位置する樹脂との間で破断分離が生じる固化状態に維持する熱交換が可能とされている円開口面積比としている。
【0052】
具体的な一例としては、上記ゲート口14の直径が2mmとされたキャビティ型5であって、このキャビティ型5側の凹部内天面10との間で熱交換することとなる上記樹脂断熱層19を好適に得られるようにするために、開孔15の円開口の直径を約8mmとすることが好ましく、ゲート口14の円開口面積と開孔15の円開口面積との比を、約3:50とすることが良好である。
【0053】
上記円面積比とすることで、キャビティ型5に接して熱交換している樹脂断熱層19は、ブロー成形が可能なタイミングで離型するプリフォームのゲート部の樹脂と同様の固化状態に維持される。そして、前記プリフォームを離型するときに、プリフォームのゲート部の樹脂と前記樹脂断熱層19の固化状態に維持されている樹脂との間で、破断分離が生じる。このため、ブロー成形が可能なタイミングで離型されたプリフォームのゲート部に糸引きが生じない。
【0054】
なお、上述のように厚さを圧縮変形した断熱紙12の開孔15の円開口の直径を約4mmの直径として、ゲート口14と開孔15の円開口面積比を約3:13とすると、糸引きが生じる可能性が高まって好ましくない。
【0055】
上述した断熱紙は高断熱性のある紙状シートを指した呼び方であり、100%のパルプからなるものではない。上記実施の形態で用いた断熱紙12はメタ系アラミド繊維から作製されている断熱紙であり、デュポン社製ノーメックス紙(ノーメックス登録商標)を使用した。
【符号の説明】
【0056】
1…プリフォーム成形装置
2…ホットランナー装置
3…ホットランナーノズル
4…射出成形型
5…キャビティ型
6…キャビティ型の円孔状凹部
7…ホットランナーノズルの先端部
8…キャビティゲート
10…凹部内天面
11…先端部端面
12…断熱紙
14…ゲート口
15…開孔
16…空間
17…ノズル口
18…樹脂溶融層
19…樹脂断熱層