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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-137977(P2021-137977A)
(43)【公開日】2021年9月16日
(54)【発明の名称】感熱記録体
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/44 20060101AFI20210820BHJP
【FI】
   B41M5/44 220
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2020-34863(P2020-34863)
(22)【出願日】2020年3月2日
(71)【出願人】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110249
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 昭
(74)【代理人】
【識別番号】100113022
【弁理士】
【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】平井 健二
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 賢太郎
(72)【発明者】
【氏名】緑川 佳美
(72)【発明者】
【氏名】村田 佑香
【テーマコード(参考)】
2H026
【Fターム(参考)】
2H026AA07
2H026BB01
2H026BB21
2H026DD48
2H026FF01
2H026FF11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】屋外で使用する際の雨などの水分や湿気に対して十分な耐水性を有し、発色感度、高速印字時の印字画質、耐可塑剤性、耐塩ビ貼り付き性、インキ密着性等に優れた感熱記録体を提供する。
【解決手段】支持体上に感熱記録層を設け、この感熱記録層上に設けた保護層に、コアシェル型粒子の水性エマルジョンである特定のシラン変性アクリル系樹脂及びガラス転移点(Tg)が50℃より高く95℃以下である非コアシェル型アクリル系樹脂を含有させる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、無色ないし淡色の電子供与性ロイコ染料及び電子受容性顕色剤を含有する感熱記録層及び該感熱記録層上に保護層を有する感熱記録体において、該保護層が、シラン変性アクリル系樹脂及びガラス転移点(Tg)が50℃より高く95℃以下である非コアシェル型アクリル系樹脂を含有し、
該シラン変性アクリル系樹脂が、下記(a1)、(a2)及び(a3)を(b)の存在下で重合させて成る共重合体Aから成るコアと、下記(a1)及び(a2)を(b)の存在下で重合させて成る共重合体Bから成るシェルとから成るコアシェル型粒子の水性エマルジョンである感熱記録体。
(a1)少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル
(a2)アルコキシシリル基及びエチレン性二重結合を有する単量体
(a3)カルボキシル基及びエチレン性二重結合を有する単量体
(b)アリル基及びポリオキシエチレン鎖を有する硫酸塩を含有する重合性界面活性剤
【請求項2】
前記共重合体Aが、前記(a1)、(a2)及び(a3)にスチレンモノマーを加えて(b)の存在下で重合させて成る、及び/又は共重合体Bが、前記(a1)及び(a2)にスチレンモノマーを加えて(b)の存在下で重合させて成る、請求項1に記載の感熱記録体。
【請求項3】
前記共重合体A中、前記a1、a2及びa3成分の合計重量に対する、前記a2成分の割合が0.05〜1.0重量%、前記a3成分の割合が0.5〜10重量%であり、前期共重合体B中、前記a1及びa2成分の合計重量に対する、前記a2成分の割合が0.01〜1.0重量%である請求項1又は2に記載の感熱記録体
【請求項4】
前記共重合体A及びBの前記a1、a2及びa3成分の合計重量に対する、(b)成分の割合が、総量で0.5〜5重量%である請求項1〜3のいずれか一項に記載の感熱記録体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、耐水性、発色感度、高速印字時の印字画質、耐可塑剤性、耐塩ビ貼り付き性、インキ密着性等に優れた感熱記録体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、感熱記録体は通常無色ないし淡色の電子供与性ロイコ染料(以下、「ロイコ染料」ともいう)とフェノール性化合物等の電子受容性顕色剤(以下、「顕色剤」ともいう)とを、それぞれ微細な粒子に磨砕分散した後、両者を混合し、バインダー、充填剤、感度向上剤、滑剤及びその他の助剤を添加して得られた塗液を、紙、合成紙、フィルム、プラスチック等の支持体に塗工したものであり、サーマルヘッド、ホットスタンプ、熱ペン、レーザー光等の加熱による瞬時の化学反応により発色し、記録画像が得られる。一般に、感熱記録体の保存安定性を向上させる方法として、感熱記録層の上に保護層を設ける方法が知られている。
この感熱記録層や保護層にシラン変性アクリル樹脂を含有させることにより、印刷時のヘッド摩耗を改善したり、感熱記録体の画像保存性や耐水性を改善させることが知られている(特許文献1、2等)。また、保護層に、ガラス転移点(Tg)が50℃より高く95℃以下であるアクリル系樹脂を含有させることにより、感熱記録体が十分な耐水性等を有することが知られている(特許文献3等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−574
【特許文献2】特開2000−238432
【特許文献3】国際公開WO2010/110209
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、感熱記録体に対して、屋外で使用する際の雨などの水分や湿気に対する耐水性の要求が高まっている。
更に、感熱記録体をラベルとして使用する場合、塩化ビニルを含有するラップ(以下、「塩ビラップ」ともいう。)で包装された食品等に貼付されることがある。この場合、食品等の内容物の重量や使用中の圧力で感熱記録体の表面が塩ビラップに強く密着すると、塩ビラップに含有される可塑剤により感熱記録画像が退色することがある。また、感熱記録体の表面が塩ビラップに貼り付くブロッキングが発生し、感熱記録画像が塩ビラップに転移して劣化することがある。
また、感熱記録体をチケット、ラベル等として使用する場合、オフセット方式、フレキソ方式、グラビア方式などにより、感熱記録面側にも印刷インキを使用した印刷が施されることがある。この場合、印刷インキの密着性が不十分であると、印刷インキが剥がれて、印刷画像が劣化する、サーマルヘッドに付着して感熱記録時に搬送不良が発生するなどの問題が発生しやすくなる。
本発明は、屋外で使用する際の雨などの水分や湿気に対して十分な耐水性を有すると共に、発色感度、高速印字時の印字画質、耐可塑剤性、耐塩ビ貼り付き性、インキ密着性等に優れた感熱記録体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意検討の結果、保護層に、コアシェル型粒子の水性エマルジョンである特定のシラン変性アクリル系樹脂及びガラス転移点(Tg)が50℃より高く95℃以下である非コアシェル型アクリル系樹脂(以下「高Tgアクリル系樹脂」ともいう。)を含有させることにより、感熱記録体が十分な耐水性を有すると共に、発色感度、高速印字時の印字画質、耐可塑剤性、耐塩ビ貼り付き性、インキ密着性等に優れることを見出し、本願発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、支持体上に、無色ないし淡色の電子供与性ロイコ染料及び電子受容性顕色剤を含有する感熱記録層及び該感熱記録層上に保護層を有する感熱記録体において、該保護層が、シラン変性アクリル系樹脂及びガラス転移点(Tg)が50℃より高く95℃以下である非コアシェル型アクリル系樹脂を含有し、
該シラン変性アクリル系樹脂が、下記(a1)、(a2)及び(a3)を(b)の存在下で重合させて成る共重合体Aから成るコアと、下記(a1)及び(a2)を(b)の存在下で重合させて成る共重合体Bから成るシェルとから成るコアシェル型粒子の水性エマルジョンである感熱記録体である。
(a1)少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル
(a2)アルコキシシリル基及びエチレン性二重結合を有する単量体
(a3)カルボキシル基及びエチレン性二重結合を有する単量体
(b)アリル基及びポリオキシエチレン鎖を有する硫酸塩を含有する重合性界面活性剤
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の感熱記録体は、感熱記録層上に設けた保護層が、シラン変性アクリル系樹脂及び高Tgアクリル系樹脂を含有する。
本発明で用いるシラン変性アクリル系樹脂は、界面活性剤の存在下で、複数種類の重合性不飽和単量体を多段階乳化重合して得られる水性樹脂エマルションである。
この該シラン変性アクリル系樹脂は、下記(a1)、(a2)及び(a3)を(b)の存在下で重合させて成る共重合体Aから成るコアと、下記(a1)及び(a2)を(b)の存在下で重合させて成る共重合体Bから成るシェルとから成るコアシェル型粒子の水性エマルジョンである。
(a1)少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル
(a2)アルコキシシリル基及びエチレン性二重結合を有する単量体
(a3)カルボキシル基及びエチレン性二重結合を有する単量体
(b)アリル基及びポリオキシエチレン鎖を有する硫酸塩を含有する重合性界面活性剤
この共重合体Aは、前記(a1)、(a2)及び(a3)にスチレンモノマーを加えて(b)の存在下で重合させて成ってもよく、及び/又は共重合体Bが、前記(a1)及び(a2)にスチレンモノマーを加えて(b)の存在下で重合させて成ってもよい。
【0007】
<(a1)少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル>について
本明細書では、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸とメタクリル酸の双方を示し、アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも1種を含むことを意味する。
「(メタ)アクリル酸エステル」とは(メタ)アクリル酸のエステル、すなわち(メタ)アクリレートをいう。(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレートの双方を示し、アクリレート及びメタクリレートの少なくとも1種を含むことを意味する。
尚、ビニル基と酸素が結合した構造を有するビニルエステル、例えば酢酸ビニル等は、本明細書において、(メタ)アクリレートに含まれない。
【0008】
(メタ)アクリレートの具体例として、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ベヘニル及びドコシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等を例示できる。
これらは単独で又は2種以上併せて用いることができる。
【0009】
本発明の実施形態において、(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、具体的には、メタクリル酸メチル(MMA)、アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)、アクリル酸n−ブチル(n−BA)、メタクリル酸n−ブチル(n−BMA)、メタクリル酸シクロヘキシル(CHMA)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0010】
<(a2)アルコキシシリル基及びエチレン性二重結合を有する単量体>について
アルコキシシリル基及びエチレン性二重結合を有する単量体とは、乳化重合反応によって得られる水性樹脂エマルション樹脂に、アルコキシシリル基を付与することができる化合物をいい、本発明に係る水性樹脂エマルションを得ることができるものであれば特に制限されるものではない。
アルコキシシリル基及びエチレン性二重結合を有する単量体は、アルコキシシリル基とエチレン性二重結合を共に有し、アルコキシシリル基とエチレン性二重結合は、例えば、エステル結合、アミド結合及びアルキレン基等の他の官能基を介して結合してよい。
ここで「アルコキシシリル基」とは、加水分解することによってケイ素に結合するヒドロキシル基(Si−OH)を与えるケイ素含有の官能基をいう。「アルコキシシリル基」として、例えば、トリメトキシシル基、トリエトキシシリル基、ジメトキシシリル基、ジメトキシメチルシリル基、ジエトキシシリル基、モノエトキシシリル基、及びモノメトキシシリル基等のアルコキシシルリ基を例示できる。特に、トリメトキシシリル基及びトリエトキシシリル基が好ましい。
【0011】
本明細書において「エチレン性二重結合」とは、重合反応(ラジカル重合)し得る炭素原子間二重結合をいう。そのようなエチレン性二重結合を有する官能基として、例えば、ビニル基(CH=CH−)、(メタ)アリル基(CH=CH−CH−及びCH=C(CH)−CH−)、(メタ)アクリロイルオキシ基(CH=CH−COO−及びCH=C(CH)−COO−)、(メタ)アクリロイルオキシアルキル基(CH=CH−COO−R−及びCH=C(CH)−COO−R−)及び−COO−CH=CH−COO−等を例示できる。
尚、アルコキシシリル基及びエチレン性二重結合を有する単量体は、上述の(メタ)アクリル酸エステルに含まれない。
【0012】
アルコキシシリル基及びエチレン性二重結合を有する単量体として、下記式(1)で示される化合物を例示できる。
Si(OR)(OR)(OR) (1)
式中、Rはエチレン性二重結合を有する官能基であり、R、R及びRは、炭素数1〜5のアルキル基である。R、R及びRは、相互に同一でも異なってもよい。
のエチレン性二重結合を有する官能基として、例えば、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル基、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピル基、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル基、2−(メタ)アクリロイルオキシブチル基、3−(メタ)アクリロイルオキシブチル基、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルを例示できる。
【0013】
2、及びRの炭素数1〜5のアルキル基として、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、及びn−ペンチル基等の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を例示できる。
「アルコキシシリル基を含有しエチレン性二重結合を有する単量体」として、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン及びビニルトリn−ブトキシシランなどのビニルトリアルコキシシランが挙げられる。
具体的には、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン及び3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランが好ましく、特に、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
これらのアルコキシシリル基を含有しエチレン性二重結合を有する単量体は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0014】
<(a3)カルボキシル基及びエチレン性二重結合を有する単量体>について
カルボキシル基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸が挙げられる。上述したように、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を意味する。(メタ)アクリル酸として、アクリル酸を用いることが特に好ましい。
「エチレン性二重結合」については、上述の通りである。
【0015】
<(b)アリル基及びポリオキシエチレン鎖を有する硫酸塩を含有する重合性界面活性剤>について
アリル基及びポリオキシエチレン基を有する硫酸塩としては、アリル基及びポリオキシエチレン基を有する硫酸エステルアンモニウム塩、アリル基及びポリオキシエチレン基を有する硫酸エステルナトリウム塩、アリル基及びポリオキシエチレン基を有する硫酸エステルカリウム塩が挙げられる。具体的には、ポリオキシエチレン−1−(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩、ポリオキシエチレン−1−(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム塩、ポリオキシエチレン−1−(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルカリウム塩;α−〔1−〔(アリルオキシ)メチル〕−2−(ノニルフェノキシ)エチル〕−ω−ポリオキシエチレン硫酸エステルアンモニウム塩、α−〔1−〔(アリルオキシ)メチル〕−2−(ノニルフェノキシ)エチル〕−ω−ポリオキシエチレン硫酸エステルナトリウム塩、α−〔1−〔(アリルオキシ)メチル〕−2−(ノニルフェノキシ)エチル〕−ω−ポリオキシエチレン硫酸エステルカリウム塩;等が挙げられる。これら硫酸塩は、単独でも複数で用いられても良い。
【0016】
本発明のアリル基及びポリオキシエチレン基を有する硫酸塩としては、硫酸アンモニウム塩が好ましく、すなわち、ポリオキシエチレン−1−(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩、α−〔1−〔(アリルオキシ)メチル〕−2−(ノニルフェノキシ)エチル〕−ω−ポリオキシエチレン硫酸エステル塩が本発明には好ましく、特にポリオキシエチレン−1−(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩が本発明にとって最も望ましい。
アリル基及びポリオキシエチレン基を有する硫酸塩の市販品として、例えば、ポリオキシエチレン−1−(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩である第一工業製薬社製の「アクアロンKH−10」(商品名、ポリオキシエチレン鎖長10)、「アクアロンKH−1025」(商品名、「アクアロンKH−10」の25%水溶液);α−〔1−〔(アリルオキシ)メチル〕−2−(ノニルフェノキシ)エチル〕−ω−ポリオキシエチレン硫酸エステル塩である旭電化工業社製の「アデカリアソープ(商標)SR−1025」等が挙げられる。
【0017】
なお、この重合性不飽和単量体は、目的とする水性樹脂エマルションが得られる限り、「その他の単量体」を含んでよい。「その他の単量体」とは、(メタ)アクリル酸エステル、アルコキシシリル基及びエチレン性二重結合を有する単量体、(メタ)アクリル酸以外の単量体をいう。
「その他の単量体」の一例を以下に示すが、以下に限定されるものではない。スチレン及びスチレンスルホン酸等のスチレン系単量体;イタコン酸、フマール酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸及びそのエステル;及び (メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド。
【0018】
<多段階乳化重合>
本発明のシラン変性アクリル系樹脂(水性樹脂エマルション)は、界面活性剤の存在下で、重合性不飽和単量体が多段階乳化重合することで得られる。
本発明の一つの実施態様において、重合性不飽和単量体を複数段階(実質2段階)の工程で乳化重合する。最終段以外の重合時に用いられる重合性不飽和単量体(上記a1、a2、a3及びb)を重合性不飽和単量体Aとし、得られた重合体を共重合体Aといい、最終段階の重合時に用いられる重合性不飽和単量体(上記a1、a2及びb)を重合性不飽和単量体Bとし、得られた重合体を共重合体Bという。
多段階乳化重合によって最終的に得られる水性樹脂エマルションは、重合性不飽和単量体Aが重合して得られるプレエマルションに、重合性不飽和単量体Bを重合させることで得られる。
【0019】
多段階乳化重合で得られた水性樹脂エマルションは、多層構造(コアシェル)である。
本発明では、多段階乳化重合に用いられる重合性不飽和単量体Aは、最終段階以外で用いる重合性不飽和単量体Aと最終段階で用いる重合性不飽和単量体Bとを有し、重合性不飽和単量体Bと重合性不飽和単量体Aとの質量比(重合性不飽和単量体B/重合性不飽和単量体A)が30/70〜70/30が好ましく、特に40/60〜60/40が好ましい。
重合性不飽和単量体Bと重合性不飽和単量体Aとの質量比が上記割合であることによって、本発明の水性樹脂組成物(水性樹脂エマルション)は、塗工性と耐久性(耐水性、耐溶剤性)のバランスに優れたものとなる。
【0020】
共重合体A中、上記a1、a2及びa3の重合性不飽和単量体の合計重量に対する、上記a2重合性不飽和単量体の割合は、好ましくは0.05〜1.0重量%、より好ましくは0.4〜0.8重量%であり、上記a3重合性不飽和単量体の割合は、好ましくは0.5〜10重量%、より好ましくは2.0〜6.0重量%であり、残部はa1重合性不飽和単量体であるが、上記a1、a2及びa3の重合性不飽和単量体の合計重量に対する、上記a1重合性不飽和単量体の割合は、好ましくは89〜99重量%、より好ましくは90〜98重量%である。
共重合体B中、上記a1及びa2の重合性不飽和単量体の合計重量に対する、上記a2重合性不飽和単量体の割合は、好ましくは0.01〜1.0重量%、より好ましくは0.1〜0.4重量%であり、残部はa1重合性不飽和単量体であるが、上記a1及びa2の重合性不飽和単量体の合計重量に対する、上記a1重合性不飽和単量体の割合は、好ましくは85〜99.9重量%、より好ましくは95〜99.9重量%である。
なお、共重合体A及びB(即ち、シラン変性アクリル系樹脂)の合成における、上記a1、a2及びa3の重合性不飽和単量体の合計重量に対する、(b)アリル基及びポリオキシエチレン鎖を有する硫酸塩を含有する重合性界面活性剤の割合は、該合成工程における総量で、好ましくは0.5〜5重量%である。
本発明のシラン変性アクリル系樹脂(水性樹脂エマルション)は、例えば、ヘンケルジャパン株式会社から商品名:AQUENCE EPIX BC 21066として入手可能である。
【0021】
以下、この多段階乳化重合の工程の一例を記載する。
先ず、反応容器に、(a1)(メタ)アクリル酸エステル 、(a2)アルコキシシリル基及びエチレン性二重結合を有する単量体 及び(a3)カルボキシル基を有する単量体を均一に混合し、重合性不飽和単量体Aの混合物を調製する。
アリル基及びポリオキシエチレン基を有する硫酸塩に水(若しくは水性媒体)を加えて水溶液とし、この水溶液に重合性不飽和単量体Aの混合物を添加し、単量体乳化物Aを調製する。
別の容器内に、単量体乳化物Aとは別に、単量体乳化物Bを調製する。単量体乳化物Bの調製は、単量体乳化物Aの調製と同様で差し支えない。具体的には、(a1)(メタ)アクリル酸エステル及び(a2)アルコキシシリル基及びエチレン性二重結合を有する単量体 を有する単量体を均一に混合し、重合性不飽和単量体Bの混合物を調製する。
アリル基及びポリオキシエチレン基を有する硫酸塩の水溶液に重合性不飽和単量体Bの混合物を添加し、単量体乳化物Bとする。
【0022】
次に、撹拌機、温度計等を備えた反応器に、水及び(b)アリル基及びポリオキシエチレン基を有する硫酸塩を仕込み、単量体乳化物Aの一部と、触媒を添加する。反応器内の温度を適温に保ったまま、単量体乳化物Aの残りと、触媒をさらに滴化し、プレエマルションを調製する。
このプレエマルションに、単量体乳化物Bと触媒を滴下して重合することで、最終生成物である水性樹脂エマルションを多段階乳化重合で合成する。
ここで用いる触媒としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、t−ブチルペルオキシベンゾエート、2,2−アゾビスイソブチトニトリル(AIBN)及び2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、及び2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル) 等を例示することができ、特に、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムが好ましい。
【0023】
本発明で用いるシラン変性アクリル系樹脂のガラス転移点(Tg)は、好ましくは−10℃以上50℃以下、より好ましくは0℃以上50℃以下である。また、共重合体Aのガラス転移温度は、好ましくは共重合体Bのガラス転移温度より低い。また、共重合体Aのガラス転移温度が−20〜20℃であることが好ましく、−10〜20℃であることがより好ましく、−10〜15℃であることが特に好ましい。さらに、共重合体Bのガラス転移温度が10〜50℃であることが好ましく、25〜50℃であることがより好ましく、30〜50℃であることが特に好ましい。また、本発明で用いるシラン変性アクリル系樹脂の最低造膜温度(MFT)は好ましくは25℃以下である。
なお、シラン変性アクリル系樹脂のガラス転移点(Tg)及び最低造膜温度(MFT)は示差走査熱量測定(DSC)によって測定する。
【0024】
本発明で用いる高Tgアクリル系樹脂は、非コアシェル型アクリル系樹脂であって、そのガラス転移点(Tg)は、50℃より高く95℃以下である。このTgは示差走査熱量測定(DSC)によって測定する。
この高Tgアクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸、及び(メタ)アクリル酸と共重合可能な単量体成分を含み、(メタ)アクリル酸が非コアシェル型アクリル系樹脂100重量部中1〜10重量部であることが好ましい。(メタ)アクリル酸は、アルカリ可溶性であり、中和剤の添加により非コアシェル型アクリル系樹脂を水溶性樹脂にする特性を有している。非コアシェル型アクリル系樹脂を水溶性樹脂に変化させることによって、特に保護層中に顔料を含有する場合、顔料への結合性が著しく向上し、多量の顔料含有下でも優れた強度を有する保護層を形成することができる。(メタ)アクリル酸と共重合可能な成分としては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルへキシル、(メタ)アクリル酸オクチルなどのアクリル酸アルキル樹脂及びエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、スチレン又はその誘導体によって変性された上記アクリル酸アルキル樹脂などの変性アクリル酸アルキル樹脂、(メタ)アクリロニトリル、アクリル酸エステル、ヒドロキシアルキルアクリル酸エステルを例示できるが、特に(メタ)アクリロニトリル及び/又はメタクリル酸メチルを配合することが好ましい。(メタ)アクリロニトリルは非コアシェル型アクリル系樹脂100部中15〜70部配合することが好ましい。また、メタクリル酸メチルは非コアシェル型アクリル系樹脂100部中20〜80部含むことが好ましい。(メタ)アクリロニトリル及びメタクリル酸メチルを含む場合、(メタ)アクリロニトリルを非コアシェル型アクリル系樹脂100部中15〜18部、メタクリル酸メチルを非コアシェル型アクリル系樹脂100部中20〜80部配合することが好ましい。
【0025】
次に、本発明で使用される各種材料を例示するが、バインダー、架橋剤、顔料などは上記課題に対する所望の効果を阻害しない範囲で感熱記録層、保護層等をはじめとする必要に応じて設けられた各塗工層に使用することができる。
【0026】
本発明で使用するバインダーとしては、完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、アセトアセチル化ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、アマイド変性ポリビニルアルコール、スルホン酸変性ポリビニルアルコール、ブチラール変性ポリビニルアルコール、オレフィン変性ポリビニルアルコール、ニトリル変性ポリビニルアルコール、ピロリドン変性ポリビニルアルコール、シリコーン変性ポリビニルアルコール、その他の変性ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール類、(メタ)アクリル酸及び、(メタ)アクリル酸と共重合可能な単量体成分(オレフィンを除く)からなるアクリル系樹脂、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、アセチルセルロースなどのセルロース誘導体、酸化澱粉、エーテル化澱粉、エステル化澱粉などの澱粉類、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、カゼイン、アラビヤゴム、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸エステル、ポリビニルブチラール、ポリスチロース及びそれらの共重合体、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂、ケトン樹脂、クマロン樹脂などを例示することができる。これらの高分子物質は水、アルコール、ケトン類、エステル類、炭化水素などの溶剤に溶かして使用するほか、水又は他の媒体中に乳化又はペースト状に分散した状態で使用し、要求品質に応じて併用することもできる。
【0027】
本発明で使用する架橋剤としては、塩化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、オクチル酸ジルコニウム、珪酸ジルコニウム、オキシ硝酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウムカリウム塩、炭酸ジルコニウムアンモニウム塩などのジルコニウム化合物、グリオキザール、グルタルアルデヒド、アルデヒド澱粉などの多価アルデヒド化合物、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドなどのカルボジイミド化合物、メチロールメラミン、メラミンホルムアルデヒド樹脂、メラミン尿素樹脂、ポリアミンエピクロロヒドリン樹脂、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ソーダ、塩化第二鉄、塩化マグネシウム、ホウ砂、ホウ酸、ミョウバン、塩化アンモニウムなどを例示することができる。
本発明では、感熱記録層の架橋剤としてカルボジイミド化合物を使用すると、特に高い耐水性が得られるため好ましい。カルボジイミド化合物の具体例としては、例えば、日清紡ケミカル株式会社製商品名カルボジライトSV−02、V−02、V−02−L2、V−04、E−01、E−02等が挙げられる。
【0028】
本発明で使用する滑剤としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩、ワックス類、シリコーン樹脂類などが挙げられる。
【0029】
本発明で使用する顔料としては、カオリン、焼成カオリン、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、水酸化アルミニウム、シリカ等が挙げられ、要求品質に応じて併用することもできる。
【0030】
また、本発明においては、上記課題に対する所望の効果を阻害しない範囲で、記録画像の耐油性効果などを示す画像安定剤として、4,4'−ブチリデン(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、2,2'−ジ−t−ブチル−5,5'−ジメチル−4,4'−スルホニルジフェノール、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、4−ベンジルオキシ−4'−(2,3−エポキシ−2−メチルプロポキシ)ジフェニルスルホン等を添加することもできる。
このほかにベンゾフェノン系やトリアゾール系の紫外線吸収剤、分散剤、消泡剤、酸化防止剤、蛍光染料等を使用することができる。
【0031】
本発明の感熱記録層は、電子供与性ロイコ染料及び電子受容性顕色剤を含有し、更に増感剤、上記のバインダー、架橋剤、滑剤、顔料、その他の各種成分を含有してもよい。
【0032】
本発明で使用するロイコ染料としては、従来の感圧あるいは感熱記録紙分野で公知のものは全て使用可能であり、特に制限されるものではないが、トリフェニルメタン系化合物、フルオラン系化合物、フルオレン系、ジビニル系化合物等が好ましい。以下に代表的な無色ないし淡色の染料(染料前駆体)の具体例を示す。また、これらの染料前駆体は単独又は2種以上混合して使用してもよい。
【0033】
<トリフェニルメタン系ロイコ染料>
3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド〔別名クリスタルバイオレットラクトン〕; 3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)フタリド〔別名マラカイトグリーンラクトン〕
【0034】
<フルオラン系ロイコ染料>
3−ジエチルアミノ−6−メチルフルオラン; 3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン; 3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(o,p−ジメチルアニリノ)フルオラン; 3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン; 3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(m−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン; 3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン; 3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(p−クロロアニリノ)フルオラン; 3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(o−フルオロアニリノ)フルオラン; 3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(m−メチルアニリノ)フルオラン; 3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−n−オクチルアニリノフルオラン; 3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−n−オクチルアミノフルオラン; 3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−ベンジルアミノフルオラン; 3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−ジベンジルアミノフルオラン;3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−メチルフルオラン; 3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−アニリノフルオラン; 3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−p−メチルアニリノフルオラン; 3−ジエチルアミノ−6−エトキシエチル−7−アニリノフルオラン; 3−ジエチルアミノ−7−メチルフルオラン; 3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン; 3−ジエチルアミノ−7−(m−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン; 3−ジエチルアミノ−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン; 3−ジエチルアミノ−7−(p−クロロアニリノ)フルオラン; 3−ジエチルアミノ−7−(o−フルオロアニリノ)フルオラン; 3−ジエチルアミノ−ベンゾ〔a〕フルオラン; 3−ジエチルアミノ−ベンゾ〔c〕フルオラン; 3−ジブチルアミノ−6−メチル−フルオラン; 3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン; 3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−(o,p−ジメチルアニリノ)フルオラン; 3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン; 3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−(p−クロロアニリノ)フルオラン; 3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−(o−フルオロアニリノ)フルオラン; 3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−(m−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン; 3−ジブチルアミノ−6−メチル−クロロフルオラン; 3−ジブチルアミノ−6−エトキシエチル−7−アニリノフルオラン; 3−ジブチルアミノ−6−クロロ−7−アニリノフルオラン; 3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−p−メチルアニリノフルオラン; 3−ジブチルアミノ−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン; 3−ジブチルアミノ−7−(o−フルオロアニリノ)フルオラン; 3−ジ−n−ペンチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン; 3−ジ−n−ペンチルアミノ−6−メチル−7−(p−クロロアニリノ)フルオラン; 3−ジ−n−ペンチルアミノ−7−(m−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン; 3−ジ−n−ペンチルアミノ−6−クロロ−7−アニリノフルオラン; 3−ジ−n−ペンチルアミノ−7−(p−クロロアニリノ)フルオラン; 3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン; 3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン; 3−(N−メチル−N−プロピルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン; 3−(N−メチル−N−シクロヘキシルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン; 3−(N−エチル−N−シクロヘキシルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン; 3−(N−エチル−N−キシルアミノ)−6−メチル−7−(p−クロロアニリノ)フルオラン; 3−(N−エチル−p−トルイディノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン; 3−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン; 3−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)−6−クロロ−7−アニリノフルオラン; 3−(N−エチル−N−テトラヒドロフルフリルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン; 3−(N−エチル−N−イソブチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン; 3−(N−エチル−N−エトキシプロピルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン; 3−シクロヘキシルアミノ−6−クロロフルオラン; 2−(4−オキサヘキシル)−3−ジメチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン; 2−(4−オキサヘキシル)−3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン; 2−(4−オキサヘキシル)−3−ジプロピルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン; 2−メチル−6−p−(p−ジメチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン; 2−メトキシ−6−p−(p−ジメチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン; 2−クロロ−3−メチル−6−p−(p−フェニルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン; 2−クロロ−6−p−(p−ジメチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン; 2−ニトロ−6−p−(p−ジエチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン; 2−アミノ−6−p−(p−ジエチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン; 2−ジエチルアミノ−6−p−(p−ジエチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン; 2−フェニル−6−メチル−6−p−(p−フェニルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン; 2−ベンジル−6−p−(p−フェニルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン; 2−ヒドロキシ−6−p−(p−フェニルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン; 3−メチル−6−p−(p−ジメチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン; 3−ジエチルアミノ−6−p−(p−ジエチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン; 3−ジエチルアミノ−6−p−(p−ジブチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン; 2,4−ジメチル−6−〔(4−ジメチルアミノ)アニリノ〕−フルオラン
【0035】
<フルオレン系ロイコ染料>
3,6,6'−トリス(ジメチルアミノ)スピロ〔フルオレン−9,3'−フタリド〕; 3,6,6'−トリス(ジエチルアミノ)スピロ〔フルオレン−9,3'−フタリド〕
<ジビニル系ロイコ染料>
3,3−ビス−〔2−(p−ジメチルアミノフェニル)−2−(p−メトキシフェニル)エテニル〕−4,5,6,7−テトラブロモフタリド; 3,3−ビス−〔2−(p−ジメチルアミノフェニル)−2−(p−メトキシフェニル)エテニル〕−4,5,6,7−テトラクロロフタリド; 3,3−ビス−〔1,1−ビス(4−ピロリジノフェニル)エチレン−2−イル〕−4,5,6,7−テトラブロモフタリド; 3,3−ビス−〔1−(4−メトキシフェニル)−1−(4−ピロリジノフェニル)エチレン−2−イル〕−4,5,6,7−テトラクロロフタリド
【0036】
<その他>
3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド; 3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド; 3−(4−シクロヘキシルエチルアミノ−2−メトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド; 3,3−ビス(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド; 3,6−ビス(ジエチルアミノ)フルオラン−γ−(3'−ニトロ)アニリノラクタム; 3,6−ビス(ジエチルアミノ)フルオラン−γ−(4'−ニトロ)アニリノラクタム; 1,1−ビス−〔2',2',2'',2''−テトラキス−(p−ジメチルアミノフェニル)−エテニル〕−2,2−ジニトリルエタン; 1,1−ビス−〔2',2',2'',2''−テトラキス−(p−ジメチルアミノフェニル)−エテニル〕−2−β−ナフトイルエタン; 1,1−ビス−〔2',2',2'',2''−テトラキス−(p−ジメチルアミノフェニル)−エテニル〕−2,2−ジアセチルエタン; ビス−〔2,2,2',2'−テトラキス−(p−ジメチルアミノフェニル)−エテニル〕−メチルマロン酸ジメチルエステル
【0037】
本発明で使用する電子受容性顕色剤としては、従来の感圧あるいは感熱記録紙の分野で公知のものを使用することができ、特に制限されるものではないが、例えば、活性白土、アタパルジャイト、コロイダルシリカ、珪酸アルミニウムなどの無機酸性物質、4,4'−イソプロピリデンジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、ヒドロキノンモノベンジルエーテル、4−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4'−イソプロポキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4'−n−プロポキシジフェニルスルホン、ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、4−ヒドロキシ−4'−メチルジフェニルスルホン、4−ヒドロキシフェニル−4'−ベンジルオキシフェニルスルホン、3,4−ジヒドロキシフェニル−4'−メチルフェニルスルホン、1−[4−(4−ヒドロキシフェニルスルホニル)フェノキシ]−4−[4−(4−イソプロポキシフェニルスルホニル)フェノキシ]ブタン、特開2003−154760号公報記載のフェノール縮合組成物、特開平8−59603号公報記載のアミノベンゼンスルホンアミド誘導体、ビス(4−ヒドロキシフェニルチオエトキシ)メタン、1,5−ジ(4−ヒドロキシフェニルチオ)−3−オキサペンタン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)酢酸ブチル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)酢酸メチル、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,4−ビス[α−メチル−α−(4'−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、1,3−ビス[α−メチル−α−(4'−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、ジ(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、2,2'−チオビス(3−tert−オクチルフェノール)、2,2'−チオビス(4−tert−オクチルフェノール)、WO97/16420号に記載のジフェニルスルホン架橋型化合物等のフェノール性化合物、WO02/081229号あるいは特開2002−301873号公報記載の化合物、またN,N'−ジ−m−クロロフェニルチオウレア等のチオ尿素化合物、p−クロロ安息香酸、没食子酸ステアリル、ビス[4−(n−オクチルオキシカルボニルアミノ)サリチル酸亜鉛]2水和物、4−[2−(p−メトキシフェノキシ)エチルオキシ]サリチル酸、4−[3−(p−トリルスルホニル)プロピルオキシ]サリチル酸、5−[p−(2−p−メトキシフェノキシエトキシ)クミル]サリチル酸の芳香族カルボン酸、及びこれらの芳香族カルボン酸の亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、チタン、マンガン、スズ、ニッケル等の多価金属塩との塩、さらにはチオシアン酸亜鉛のアンチピリン錯体、テレフタルアルデヒド酸と他の芳香族カルボン酸との複合亜鉛塩等が挙げられる。これらの顕色剤は、単独で又は2種以上混合して使用することもできる。1−[4−(4−ヒドロキシフェニルスルホニル)フェノキシ]−4−[4−(4−イソプロポキシフェニルスルホニル)フェノキシ]ブタンは、例えば、三菱ケミカル株式会社製商品名TOMILAC214として入手可能であり、特開2003−154760号公報記載のフェノール縮合組成物は、例えば、三菱ケミカル株式会社製商品名TOMILAC224として入手可能であり、国際公開WO97/16420号に記載のジフェニルスルホン架橋型化合物は、日本曹達株式会社製商品名D−90として入手可能である。また、WO02/081229号等に記載の化合物は、日本曹達株式会社製商品名NKK−395、D−100として入手可能である。
【0038】
本発明で使用可能な増感剤としては、従来公知の増感剤を使用することができる。かかる増感剤としては、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド等の脂肪酸アマイド、エチレンビスアミド、モンタン酸ワックス、ポリエチレンワックス、1,2−ジ−(3−メチルフェノキシ)エタン、p−ベンジルビフェニル、β−ベンジルオキシナフタレン、4−ビフェニル−p−トリルエーテル、m−ターフェニル、1,2−ジフェノキシエタン、シュウ酸ジベンジル、シュウ酸ジ(p−クロロベンジル)、シュウ酸ジ(p−メチルベンジル)、テレフタル酸ジベンジル、p−ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、ジ−p−トリルカーボネート、フェニル−α−ナフチルカーボネート、1,4−ジエトキシナフタレン、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸フェニルエステル、o−キシレン−ビス−(フェニルエーテル)、4−(m−メチルフェノキシメチル)ビフェニル、4,4'−エチレンジオキシ−ビス−安息香酸ジベンジルエステル、ジベンゾイルオキシメタン、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エチレン、ビス[2−(4−メトキシ−フェノキシ)エチル]エーテル、p−ニトロ安息香酸メチル、p−トルエンスルホン酸フェニルなどを例示することができるが、特にこれらに制限されるものではない。これらの増感剤は、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
【0039】
本発明の感熱記録体に使用する電子供与性ロイコ染料、電子受容性顕色剤、増感剤、その他の各種成分の種類及び量は要求される性能及び記録適性に従って決定され、特に限定されるものではないが、通常、電子供与性ロイコ染料1重量部に対して電子受容性顕色剤0.5〜10重量部、増感剤0〜10重量部程度が使用される。
【0040】
電子供与性ロイコ染料、電子受容性顕色剤、増感剤並びに必要に応じて添加する材料は、ボールミル、アトライター、サンドグライダーなどの粉砕機あるいは適当な乳化装置によって数ミクロン以下の粒子径になるまで微粒化し、バインダー及び目的に応じて各種の添加材料を加えて塗工液とする。
【0041】
本発明の感熱記録体は、感熱記録層上に更に保護層を有する。本発明の保護層は、上記のシラン変性アクリル樹脂及び高Tgアクリル系樹脂を含有し、更に上記のバインダー、架橋剤、滑剤、顔料、その他の各種成分を含有してもよい。
【0042】
本発明の保護層は、更に顔料を含むことが好ましい。保護層に用いる顔料としては、上記の感熱記録層に使用可能な顔料が適宜使用可能であるが、カオリン、焼成カオリン、水酸化アルミニウム、シリカが好ましい。これらの顔料は1種又は2種以上用いてもよい。
また、本発明では、保護層の架橋剤として上記のカルボジイミド化合物を使用すると、特に高い耐水性が得られるため好ましい。
【0043】
本発明の保護層中のシラン変性アクリル系樹脂の含有量(固形分換算、以下同じ)は、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは10〜40重量%であり、本発明の保護層中の高Tgアクリル系樹脂の含有量は、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは10〜40重量%である。
【0044】
本発明の感熱記録体は、支持体と感熱記録層との間に下塗り層を設けてもよい。また、支持体の感熱記録層とは反対面にバックコート層を設け、カールの矯正を図ることも可能である。本発明の感熱記録体はさらに、感熱記録層と保護層との間に中間層を設けて、この中間層の上に保護層を形成してもよい。
【0045】
本発明では、紙、再生紙、合成紙、フィルム、プラスチック、発泡プラスチック、不織布等の任意の支持体に、感熱記録層及び該感熱記録層上に保護層を塗工することによって目的とする感熱記録体が得られる。またこれらを組み合わせた複合シートを支持体として使用してもよい。
【0046】
各層の塗工方法としては、ブレード法、エアーナイフ法、カーテン法、グラビア法、ロールコーター法等の既知の塗工方法を利用することができる。
【0047】
感熱記録層、保護層及びその他必要に応じて設けられた各塗工層の塗工量は、要求される性能及び記録適性に従って決定され、特に限定されるものではないが、感熱記録層の一般的な塗工量は固形分で2〜12g/m程度であり、保護層の一般的な塗工量は固形分で1〜5g/m程度である。また、下塗り層の一般的な塗工量は固形分で1〜15g/m程度である。
また、各層の塗工後にスーパーカレンダー掛けなどの平滑化処理を施すなど、感熱記録体分野における各種公知の技術を必要適宜付加することができる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例にて本発明を例証するが、本発明を限定することを意図するものではない。なお、各実施例及び比較例中、特にことわらない限り「部」は「重量部」、「%」は「重量%」を示す。
【0049】
以下の製造例で、水性エマルションを(A)単量体乳化物(共重合体A)及び(B)単量体乳化物(共重合体B)から調製した。(A)及び(B)を製造するための重合性不飽和単量体、界面活性剤、及び各添加剤について以下に記載する。
尚、重合性不飽和単量体のホモポリマーTgは、文献値であり、(a)重合性不飽和単量体の共重合体のTgと(b)重合性不飽和単量体の共重合体のTgは、理論計算式で算出された値である。
【0050】
<重合性不飽和単量体>
メタクリル酸メチル(メチルメタクリレート、以下、「MMA」という、富士フイルム和光純薬社製、ホモポリマーのTg=105℃)
アクリル酸2−エチルヘキシル(2−エチルヘキシルアクリレート、以下、「2EHA」という、富士フイルム和光純薬社製、ホモポリマーのTg=−70℃)
アクリル酸n−ブチル(n-ブチルアクリレート、以下、「n−BA」という、富士フイルム和光純薬社製、ホモポリマーのTg=−54℃)
メタクリル酸n−ブチル(n−ブチルメタクリレート、以下、「n−BMA」という、富士フイルム和光純薬社製、ホモポリマーのTg=20℃)
メタクリル酸シクロヘキシル(シクロヘキシルメタクリレート、以下、「CHMA」という、富士フィルム和光純薬製、ホモポリマーのTg=83℃)
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(富士フィルム和光純薬製社製)
アクリル酸(以下、「AA」という、富士フイルム和光純薬社製、ホモポリマーのTg=106℃)
スチレン(以下、「St」という、富士フイルム和光純薬社製、ホモポリマーのTg=100℃)
【0051】
<界面活性剤>
ポリオキシエチレン−1−(アリルオキシメチル)アルキルエーテル流酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬社製、アクアロンKH10)(以下「b」で表す)
【0052】
[製造例1]
複数の重合性不飽和単量体から単量体乳化物を調製し、その後、単量体乳化物からプレエマルションを調製し、プレエマルションから水性樹脂エマルションを合成した。具体的な工程は以下のとおりである。
【0053】
((A)単量体乳化物の調製)
表1に示されるように、(a1-1)MMA5質量部、(a1-3)BA23質量部、(a1-4)BMA10質量部、(a1-5)CHMA10質量部、(a2)3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.3質量部、(a3)AA2質量部を均一に混合し、重合性不飽和単量体溶液(50.3質量部)を調製した。
水14質量部、(b)ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩0.1質量部が均一に混合された溶液に、上記重合性不飽和単量体溶液を添加し、攪拌機でこれら混合溶液を攪拌して(A)単量体乳化物を得た。
【0054】
((B)単量体乳化物の調製)
(A)表1に示されるように、(a1-1)MMA16.6質量部、(a1-3)BA13質量部、(a1-4)BMA10質量部、(a1-5)CHMA10質量部、(a2)3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.1質量部を均一に混合し、重合性不飽和単量体溶液を調製した。
水14質量部、(b)ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩0.1質量部が均一に混合された溶液に、上記重合性不飽和単量体溶液を添加し、攪拌機でこれら混合溶液を攪拌して(B)単量体乳化物を得た。
【0055】
(プレエマルションの合成)
攪拌機、コンデンサー及び温度計を備えた反応器に、水78質量部及び(b)ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩1.25質量部を仕込み、系内を窒素ガスで置換した後、その仕込み液を80℃に加熱した。
その後、その仕込み液に、(A)単量体乳化物(重合性不飽和単量体を50.3質量部含み、その重合性不飽和単量体の10.1質量部に相当する部分)、1質量%の過硫酸ナトリウム(以下、「SPS」ともいう)水溶液2質量部を添加した。
さらに10分後、反応器内の温度を80℃に保ったまま、上述の(A)単量体乳化物の残り((a)重合性不飽和単量体40.2質量部に相当する部分)及び重合触媒であるSPSの1%水溶液4質量部を各々同時に2時間かけて滴下し、プレエマルジョン((a)重合性不飽和単量体に基づく水性樹脂エマルション)を得た。
【0056】
(水性樹脂エマルションの合成)
反応器内の温度を80℃に保ち、滴下終了から30分後、上述の(B)単量体乳化物(不飽和重合性単量体を49.7質量部含む)、SPSの1%水溶液4質量部を、各々同時に2時間かけて上述のプレエマルションに滴下し、水性樹脂エマルションを得た。
得られた水性樹脂エマルジョンをアンモニア水でpH8.0に調整した。水性樹脂エマルションは、(A)重合性不飽和単量体(共重合体A)ガラス転移温度が−3.8℃、(B)重合性不飽和単量体(共重合体B)のガラス転移温度が26.7℃、固形分濃度が45質量%であった。固形分は、105℃のオーブン中で3時間乾燥し、乾燥前の質量に対する残留する部分の質量百分率である。
得られた水性樹脂エマルションをシラン変性アクリル系樹脂1と呼ぶ。
【0057】
[製造例2〜5]
表1に示す原料の単量体を用いて製造例1と同様に合成した。表中の配合に関する数字は重量部を表す。得られた水性樹脂エマルションをそれぞれシラン変性アクリル系樹脂2〜5と呼ぶ。
【0058】
【表1】
【0059】
次に、感熱記録体の製造のため、各分散液と塗工液を以下のように調製した。
下記配合からなる配合物を攪拌分散して、下塗り層用塗工液を調製した。
【0060】
<下塗り層用塗工液>
焼成カオリン(BASF社製、商品名:アンシレックス90)
100.0部
スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス(日本ゼオン株式会社製、
商品名:ST5526、固形分48%) 10.0部
水 50.0部
【0061】
下記配合の顕色剤分散液(A液)、ロイコ染料分散液(B液)、増感剤分散液(C液)を、それぞれ別々にサンドグラインダーで平均粒子径0.5μmになるまで湿式磨砕を行い、調製した。
【0062】
顕色剤分散液(A液)
4−ヒドロキシ−4'−イソプロポキシジフェニルスルホン
(三菱ケミカル株式会社製、商品名:NYDS) 6.0部
完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(クラレ社製、商品名:
PVA117、固形分10%) 5.0部
水 1.5部
【0063】
ロイコ染料分散液(B液)
3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン
(山本化成株式会社製、商品名:ODB−2) 6.0部
完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(PVA117) 5.0部
水 1.5部
【0064】
増感剤分散液(C液)
1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタン(三光社製、商品名:
KS232) 6.0部
完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(PVA117) 5.0部
水 1.5部
【0065】
次いで、下記の割合で各分散液を混合して感熱記録層用塗工液を調製した。
<感熱記録層用塗工液>
顕色剤分散液(A液) 36.0部
ロイコ染料分散液(B液) 18.0部
増感剤分散液(C液) 9.0部
完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(PVA117) 25.0部
【0066】
次いで、下記割合からなる配合物を混合して保護層用塗工液1〜2を調製した。
<保護層用塗工液1>
水酸化アルミニウム分散液(マーティンスベルク社製、商品名:
マーティフィンOL、固形分50%) 9.0部
シラン変性アクリル系樹脂1(コアシェル型、オールアクリル、Tg18℃、
MFT22℃、固形分40%、以下「アクリル系樹脂A」という。)
5.0部
高Tgアクリル系樹脂(シラン変性なし、非コアシェル型、スチレンアクリル、
Tg55℃、MFT18℃、固形分18%、以下「アクリル系樹脂B」と
いう。) 11.1部
ステアリン酸亜鉛(中京油脂社製、ハイドリンZ−7−30、固形分30%)
2.0部
カルボジイミド化合物(日清紡ケミカル社製、商品名:
カルボジライトSV−02、固形分40%) 0.3部
【0067】
<保護層用塗工液2>
水酸化アルミニウム分散液(マーティフィンOL) 9.0部
完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(PVA117) 40.0部
ステアリン酸亜鉛(ハイドリンZ−7−30) 2.0部
グリオキザール水溶液(日本合成化学社製、固形分40%) 3.0部
【0068】
[実施例1]
支持体(坪量47g/mの上質紙)の片面に、下塗り層用塗工液を、固形分で塗工量10.0g/mとなるようにベントブレード法で塗工した後、乾燥を行ない、下塗り層塗工紙を得た。
この下塗り層塗工紙の下塗り層上に、感熱記録層用塗工液を、固形分で塗工量6.0g/mとなるようにロッドブレード法で塗工した後、乾燥を行い、感熱記録層塗工紙を得た。
この感熱記録層塗工紙の感熱記録層上に、保護層用塗工液1を、固形分で塗工量3.0g/mとなるようにロッドブレード法で塗工した後、乾燥を行い、スーパーカレンダーで平滑度が100〜500秒になるように処理して感熱記録体を作製した。
【0069】
[比較例1]
保護層用塗工液1において、アクリル系樹脂A5.0部を10.0部に変更し、アクリル系樹脂Bを配合しない以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を作製した。
[比較例2]
保護層用塗工液1において、アクリル系樹脂A5.0部及びアクリル系樹脂B11.1部をアクリル系樹脂C(シラン変性なし、非コアシェル型、スチレンアクリル、Tg2℃、MFT10℃、固形分40%)10.0部に変更した以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を作製した。
[比較例3]
保護層用塗工液1において、アクリル系樹脂A5.0部及びアクリル系樹脂B11.1部をアクリル系樹脂D(シラン変性なし、コアシェル型、スチレンアクリル、Tg92℃、MFT50℃、固形分40%)10.0部に変更した以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を作製した。
【0070】
[比較例4]
保護層用塗工液1において、アクリル系樹脂A5.0部を配合せず、アクリル系樹脂B11.1部を22.2部に変更した以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を作製した。
[比較例5]
保護層用塗工液1を保護層用塗工液2に変更した以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を作製した。
[比較例6]
保護層用塗工液1において、アクリル系樹脂B11.1部をアクリル系樹脂D5.0部に変更した以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を作製した。
[比較例7]
保護層用塗工液1において、アクリル系樹脂B11.1部を完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(クラレ社製、商品名:PVA117、固形分10%)20.0部に変更した以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を作製した。
【0071】
作製した感熱記録体について、下記評価を行った。
<発色性能(印字濃度)>
作製した感熱記録体について、大倉電機社製のTH−PMD(感熱記録紙印字試験機、京セラ社製サーマルヘッドを装着)を用い、印字速度50mm/secで、印加エネルギー0.35mJ/dotと0.41mJ/dotで市松模様を印字した。印字部の印字濃度をマクベス濃度計(RD−914、アンバーフィルター使用)で測定し、発色性能(印字濃度)を評価した。
【0072】
<高速印字適性>
作製した感熱記録体について、ゼブラ社製ラベルプリンタ140XiIIIを用い、印字レベル+10、印字速度254mm/秒(10インチ/秒)で、バーコード(CODE39)を縦方向(プリンタヘッドの移動方向とバーコードが直交)に印字した後、印字されたバーコードをバーコード検証機(Honeywell社製、QCPC600、光源640nm)で読み取り試験を実施し、バーコード読み取り適性を評価した。評価結果をANSI規格のシンボルグレードで記した。
※シンボルグレード:バーコードをバーと垂直方向に10分割して、各箇所1回ずつ読み取り試験を実施し、その平均値を(優)A、B、C、D、F(劣)の5段階評価で表す。
【0073】
<耐可塑剤性>
作製した感熱記録体について、大倉電機社製のTH−PMD(感熱記録紙印字試験機、
京セラ社製サーマルヘッドを装着)を用い、印加エネルギー0.41mJ/dot、印字
速度50mm/secで市松模様を印字した。
印字した感熱記録体を、紙管に塩ビラップ(三井化学製ハイラップKMA)を1回巻き付けた上に貼り付け、更にその上に塩ビラップを3重に巻き付けて、40℃環境条件下で24時間静置した後、印字部の印字濃度をマクベス濃度計(RD−914、アンバーフィルター使用)で測定した。
【0074】
<耐塩ビ貼りつき性>
作製した感熱記録体について、大倉電機社製のTH−PMD(感熱記録紙印字試験機、
京セラ社製サーマルヘッドを装着)を用い、印加エネルギー0.41mJ/dot、印字
速度50mm/secで市松模様を印字した。
印字した感熱記録体の上に塩ビラップ(三井化学製ハイラップKMA)を乗せ、10gf/cmの加重を掛けて、40℃環境条件下で24時間静置した後に剥がし、保護層の塩ビへの貼りつきについて、以下の基準で目視評価した。
優:貼りつきが無く、塩ビラップが簡単に剥がれる
可:塩ビラップと保護層が貼りつくが、印字した市松模様への影響はない
不可:塩ビラップと保護層が強く貼りつき、剥がした際に、印字した市松模様がラップ側にも移行している
【0075】
<インキ密着性>
作製した感熱記録体について、感熱記録面に、ローランド製オフセット枚葉印刷機(2色)にてオフセット枚葉用インキ(T&K製 UV161墨)を用いて印刷し、UV照射機(アイグラフィックス社製、アイグランデージ)でUVインキ硬化処理を行った。その後、幅18mmのセロハンテープを、印刷面に貼付し、セロハンテープ上でローラー(直径10cm、幅13cm、重量2000g)を5往復させてから、デジタルフォースゲージ(日本電産シンポ社製、FGX−2)を使用して、引張力4.9N、引張角90°でセロハンテープを引っ張り、インキの密着性を以下の基準で目視評価した。
優:殆どインキが剥がれない
可:インキが僅かに剥がれる
不可:インキが殆ど剥がれる
【0076】
<溶剤バリア性>
作製した感熱記録体の白紙部に、エタノール(99.5%)を綿棒で塗布し、24時間放置した後、以下の基準で目視評価した。
優:全く発色しない
可:僅かに発色する
不可:強く発色する
【0077】
<湿潤摩擦>
作製した感熱記録体について、大倉電機社製のTH−PMD(感熱記録紙印字試験機、
京セラ社製サーマルヘッドを装着)を用い、印加エネルギー0.41mJ/dot、印字
速度50mm/secで市松模様を印字した。
印字した感熱記録体について、水道水を指につけて、保護層表面を80往復摩擦し、感熱記録面側の塗工層の状態を、以下の基準で目視評価した。
優:保護層の溶解が全くない
可:保護層が少し溶解するが、感熱記録層への影響はなく市松模様は保たれている
不可:保護層、感熱記録層が溶解して剥がれ、市松模様が崩れる
【0078】
<耐水ブロッキング>
作製した感熱記録体について、保護層表面に10mlの水道水を滴下し、保護層の塗工面が内側になるように二つ折りにして、20gf/cmの加重を掛けて24時間静置した後に剥がし、水を滴下した部分の感熱記録面側の塗工層の状態を、以下の基準で目視評価した。
優:ブロッキングが全く発生せず、感熱記録面側の塗工層の剥がれがない
可:軽いブロッキングが発生し、サンプルを剥がす際に、塗工層が少しむける
不可:強いブロッキングが発生し、サンプルが剥がれずに破れる
【0079】
<浸漬摩擦>
作製した感熱記録体について、水道水に10分間浸漬し、保護層表面を指で20往復摩擦し、感熱記録面側の塗工層の状態を以下の基準で目視評価した。
優:感熱記録面側の塗工層の溶解、剥がれが全くない
可:保護層表面が少し剥がれるが、塗工層は保たれている
不可:塗工層全体が支持体から剥がれる
【0080】
結果を下表に示す。
【表2】