【解決手段】炭素繊維が一定方向に配向したプリプレグを前記炭素繊維の配向方向を揃えて積層し、室温下で加圧してプリプレグ積層体を得る積層工程を含む熱伝導材料の製造方法である。
炭素繊維が一定方向に配向したプリプレグを前記炭素繊維の配向方向を揃えて積層し、室温下で加圧してプリプレグ積層体を得る積層工程を含むことを特徴とする熱伝導材料の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1に記載の方法では、熱伝導シートにおける炭素繊維の充填量を高くできるものの、熱伝導シートは熱硬化性樹脂の硬化物であるため、柔軟性に欠ける傾向があり、炭素繊維の優れた熱伝導性を完全には活かしきれていない。
また、前記特許文献2に記載の熱伝導シートは、発熱体及び放熱部材の表面形状への追従性には優れるが、炭素繊維の充填量は低くなることから、上記特許文献1に記載の熱伝導シートに比して、熱伝導性は劣ることになる。
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、密着性に優れ、高熱伝導性を有する熱伝導材料、及びその製造方法、熱伝導材料を用いた放熱構造体及びその製造方法、並びに電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 炭素繊維が一定方向に配向したプリプレグを前記炭素繊維の配向方向を揃えて積層し、室温下で加圧してプリプレグ積層体を得る積層工程を含むことを特徴とする熱伝導材料の製造方法である。
<2> 前記プリプレグ積層体を、前記炭素繊維の配向方向と略垂直方向に切断する切断工程とを含む前記<1>に記載の熱伝導材料の製造方法である。
<3> 前記炭素繊維がピッチ系炭素繊維である、前記<1>から<2>のいずれかに記載の熱伝導材料の製造方法である。
<4> 前記プリプレグが前記炭素繊維を熱硬化性樹脂に含侵させて得られたものである、前記<1>から<3>のいずれかに記載の熱伝導材料の製造方法である。
<5> 少なくとも炭素繊維を含む熱硬化性樹脂組成物の半硬化物であり、前記炭素繊維が厚み方向に配向した積層体であることを特徴とする熱伝導材料である。
<6> 発熱体と、熱伝導材料と、放熱部材とから構成される放熱構造体を製造する方法であって、
前記発熱体と前記放熱部材の間に、前記<1>から<4>のいずれかに記載の熱伝導材料の製造方法によって製造された熱伝導材料の半硬化物を挟持し、前記熱伝導材料の半硬化物を加熱し、硬化させることを特徴とする放熱構造体の製造方法である。
<7> 発熱体と、熱伝導材料と、放熱部材とから構成される放熱構造体であって、
前記発熱体と前記放熱部材の間に、前記<5>に記載の熱伝導材料の硬化物を有し、
前記発熱体及び前記放熱部材と前記熱伝導材料の硬化物とが密着性を有することを特徴とする放熱構造体である。
ここで、前記密着性とは、ステンレス板と銅箔を熱伝導材料で貼り合せ、150℃で1時間硬化した後に、室温下で測定した、引っ張り速度50mm/minでの90°剥離試験の剥離力が1N/cm以上であることをいう。
<8> 前記<7>に記載の放熱構造体を有することを特徴とする電子機器である。
<9> 前記<5>に記載の熱伝導材料を有することを特徴とするシリコンウェーハである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、密着性に優れ、高熱伝導性を有する熱伝導材料、及び前記熱伝導材料の製造方法、並びに熱伝導材料を用いた放熱構造体及びその製造方法、及び電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(熱伝導材料の製造方法)
本発明の熱伝導材料の製造方法は、積層工程を含み、切断工程を含むことが好ましく、更に必要に応じてその他の工程を含む。
【0011】
<積層工程>
積層工程は、炭素繊維が一定方向に配向したプリプレグを前記炭素繊維の配向方向を揃えて積層し、室温下で加圧してプリプレグ積層体を得る工程である。
【0012】
積層工程では、プリプレグを積層し、プリプレグ積層体を製造する。
プリプレグ積層体を構成するプリプレグにおける炭素繊維の配向方向は同一方向が好ましい。しかし、熱伝導材料の熱伝導性を妨げない範囲において、熱伝導材料の強度向上を目的として、例えば、炭素繊維の配向方向を揃えた積層枚数5枚〜10枚毎に1枚、炭素繊維の配向方向がそれまでとは略垂直になるようにプリプレグを配してもよい。
【0013】
プリプレグ積層体を得る方法としては、巻重体となった状態からプリプレグを引き出して、1枚積層する毎に加圧してもよく、数枚重ねて加圧(プレス)してもよいし、巻重体から切り出して必要な層数を重ねた後、加圧(プレス)してもよい。また、積層体の厚みを得るために、この工程を繰り返してもよい。又は、必要な厚みになるまでプリプレグを積層し、プレス機などで一度に加圧(プレス)してプリプレグ積層体を得てもよい。
【0014】
前記加圧は、例えば、平盤と表面が平坦なプレスヘッドとからなる一対のプレス装置を使用して行うことができる。また、ピンチロールを使用して行ってもよいし、小面積且つ少量の製造であって、必要な特性が得られるのであればハンドローラーなどの簡易な方法を用いてもよい。
前記加圧の際の圧力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1MPa〜100MPaが好ましく、0.5MPa〜95MPaがより好ましい。
前記加圧の時間としては、特に制限はなく、バインダ樹脂の成分、圧力、シート面積等に応じて、適宜選択することができる。
【0015】
前記加圧(プレス)は、室温下で行う。即ち、加圧をする際にプリプレグの加熱硬化は行わない。
室温下とは、非加熱環境下であることを意味し、例えば、20℃〜30℃の温度を意味する。
室温下の加圧によって得られたプリプレグ積層体を発熱体と放熱部材との間へ柔軟性を有したまま配置することができ、発熱体と放熱部材の各々の表面形状への追従性に優れ、密着性が向上する。
【0016】
プリプレグを積層する枚数は、熱伝導材料の厚み及び積層体から得たい熱伝導材料の枚数に応じて適宜選択することができるが、例えば、積層枚数が100枚〜200枚であることが好ましい。
【0017】
プリプレグとしては、炭素繊維を一定方向に整列させた状態で、炭素繊維に前記の樹脂組成物を含浸させた後、半硬化させた状態でシート状にした、いわゆる「UDプリプレグ」と呼ばれるもの、あるいは、炭素繊維を縦横に織り込みできた炭素繊維シートに樹脂を含侵させた後、半硬化させた状態でシート状にした、「クロスプリプレグ」と呼ばれるものが挙げられる。これらの中でも、熱伝導性の点から、「UDプリプレグ」が好ましい。
【0018】
プリプレグにおける樹脂の占める質量比は、熱伝導材料とした際の導電性をどの程度付与するかに応じて適宜選択することができるが、例えば、20質量%〜35質量%が好ましい。
【0019】
また、プリプレグの単位面積当たりの炭素繊維の質量であるF.A.W(Fiber Areal Weight)値は、最終的に得られる熱伝導材料に付与する熱抵抗及び熱伝導率、更には硬化前の熱伝導材料に付与する柔軟性に応じて適宜選択することができるが、例えば、100g/m
2〜250g/m
2が好ましい。
【0020】
プリプレグの厚みは、積層工程において支障がなく、また、熱伝導材料に付与する熱抵抗及び熱伝導率に応じて適宜選択することができるが、例えば、50μm〜150μmが好ましい。
【0021】
プリプレグとしては、適宜製造したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。該市販品としては、例えば、グラノックプリプレグNT81250−525S、NT81600−520S、NT81000−530S、NT91250−525S、NT91500−520S、NT61000−525S、NT61350−520S(いずれも、日本グラファイトファイバー株式会社製、ピッチ系炭素繊維を熱硬化性樹脂に含侵させたプリプレグ)、ダイアリードプリプレグHyEJ12M65PD、HyEJ28M45PD、HyEJ12M80QD、HyEJ34M65PD(いずれも、三菱ケミカル株式会社製、ピッチ系炭素繊維を用いたプリプレグ)、パイロフィルプリプレグTR350C125、TR350C150、TR350E100R、TR350G175S、MRX350C125S(いずれも、三菱ケミカル株式会社製、PAN系炭素繊維を用いたプリプレグ)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
本発明の熱伝導材料に用いるプリプレグは、少なくとも樹脂組成物と炭素繊維からなる。この樹脂組成物は、熱硬化性樹脂を含むので、熱硬化性樹脂組成物が好適である。本発明の熱伝導材料に用いるプリプレグは同じ種類の熱硬化性樹脂組成物を使用しても、あるいは異なる種類の熱硬化性樹脂組成物を混合して使用してもよく、製造の容易さの観点から、同じ種類の熱硬化性樹脂組成物を使用することが好ましい。
【0023】
−熱硬化性樹脂−
熱硬化性樹脂としては、熱硬化性の官能基を有する化合物であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、トリアジン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、シアネートエステル樹脂、シリコーン樹脂又はこれら樹脂の変性樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、耐熱性と材料の選択性、及び密着性の観点から、エポキシ樹脂がより好ましい。
【0024】
−エポキシ樹脂−
エポキシ樹脂は、1つの分子の中に1つ以上のエポキシ基(−C
3H
5O)を含む化合物のうちの少なくとも1種である。これらの中でも、エポキシ樹脂は、1つの分子の中に2つ以上のエポキシ基を含んでいることが好ましい。エポキシ樹脂は、モノマーであっても、モノマーを硬化剤等により部分的に反応させたプレポリマーの状態であってもよい。
【0025】
エポキシ樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂、長鎖脂肪族型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びビスフェノールF型エポキシ樹脂などが挙げられる。また、これらの骨格にエチレンオキサイド鎖を含むようにしたエチレンオキサイド変性型ビスフェノールA型エポキシ樹脂等でもよい。ノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。この他、エポキシ樹脂の種類としては、例えば、難燃性エポキシ樹脂、ヒダントイン系エポキシ樹脂、イソシアヌレート系エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0027】
エポキシ樹脂の性状については、特に制限はなく、プリプレグの製造のし易さや、プリプレグを積層したときの相互の融着性などを考慮して選択することができ、例えば、25℃下において液状のエポキシ樹脂と固形状のエポキシ樹脂を混合して用いてもよいし、固形状のエポキシ樹脂を加熱溶融して2種以上混合してもよい。また、固形状のエポキシ樹脂においても、軟化点などは所望の物性に応じて適宜選択される。
【0028】
−硬化剤−
熱硬化性樹脂組成物は、更に硬化剤を少なくとも1種類含むことが好ましい。
硬化剤としては、熱硬化性樹脂を熱硬化可能なものであれば特に制限はなく、適宜選択することができる。前記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂の場合の硬化剤としては、例えば、酸無水物系硬化剤、脂肪族アミン系硬化剤、芳香族アミン系硬化剤、フェノール系硬化剤、メルカプタン系硬化剤等の重付加型硬化剤、イミダゾール等の触媒型硬化剤などが挙げられる。また、エポキシ樹脂のグリシジル基に対しイミダゾールなどを過量反応させたアダクト型潜在性硬化剤や、更にこれをイソシアネートなどでマイクロカプセル化したマイクロカプセル型潜在性硬化剤などが挙げられる。
【0029】
−硬化促進剤−
熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて硬化促進剤を併用しても構わない。硬化促進剤を併用することで、更に十分に硬化させることができる。硬化促進剤の種類や含有量については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、反応速度、反応温度、及び保存安定性などの観点から、適切なものを選択することが好ましい。
硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール系化合物、有機リン系化合物、第3級アミン、第4級アンモニウム塩などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
−その他の成分−
熱硬化性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない限りにおいてその他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、例えば、熱伝導性の向上及びプリプレグの強度の調整などの点から、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素等の無機フィラーを添加してもよい。また、熱硬化性樹脂組成物の流動性の調整の点から、ヒュームドシリカ等の金属酸化物の微粉末を添加してもよい。また、炭素繊維に対する樹脂の含浸性の点からは、例えば、シランカップリング剤、アルミニウムキレート等の助剤などを添加してもよい。
【0031】
<炭素繊維>
炭素繊維としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維、PBO繊維を黒鉛化した炭素繊維、アーク放電法、レーザー蒸発法、CVD法(化学気相成長法)、CCVD法(触媒化学気相成長法)等で合成された炭素繊維を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、熱伝導性の点から、PBO繊維を黒鉛化した炭素繊維、PAN繊維を黒鉛化した炭素繊維、ピッチ系炭素繊維が好ましく、ピッチ系炭素繊維が特に好ましい。
【0032】
前記炭素繊維の平均繊維径(平均短軸長さ)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、4μm〜20μmであることが好ましく、5μm〜14μmであることがより好ましい。
【0033】
前記炭素繊維自体の熱伝導率としては、熱伝導材料にした際の所望の熱伝導率に応じて適宜選定されるが、150W/m・K〜1400W/m・Kが好ましい。
【0034】
なお、炭素繊維は、含侵される樹脂との親和性向上の点から、例えば、エポキシ樹脂などが表面に塗布されていてもよい。
【0035】
<切断工程>
切断工程は、前記プリプレグ積層体を、炭素繊維の配向方向と略垂直方向に切断する工程である。
切断は、例えば、スライス装置を用いて行われる。スライス装置としては、プリプレグ積層体を切断できる手段であれば特に制限はなく、公知のスライス装置を適宜用いることができ、例えば、超音波カッター、かんな(鉋)などが挙げられる。
【0036】
<その他の工程>
その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、表面被覆工程、シート作製工程などが挙げられる。
【0037】
(熱伝導材料)
本発明の熱伝導材料は、少なくとも炭素繊維に含侵された熱硬化性樹脂組成物の半硬化物であり、前記炭素繊維が厚み方向に配向した積層体である。
炭素繊維、熱硬化性樹脂などについては、熱伝導材料の製造方法で説明したものと同様のものを用いることができる。
半硬化物とは、プリプレグ積層体が加熱硬化(完全硬化)していない状態を意味し、プリプレグ積層体が発熱体と放熱部材との間で柔軟性を有しており、発熱体と放熱部材の各々の表面形状への追従性を有している状態を意味する。
熱伝導材料の半硬化物を発熱体や放熱部材等に接触するように配置した後、更に加熱等によって本硬化させることにより、硬化物である熱伝導材料を含む層と発熱体や放熱部材との密着性がより向上する。
【0038】
熱伝導材料の形状、厚みなどについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
熱伝導材料の形状としては、例えば、シート状、平板状などが挙げられる。
熱伝導材料の厚みについては、特に制限はなく、用途に応じて適宜設定することができるが、0.1mm〜3.0mmが好ましい。
【0039】
(放熱構造体の製造方法)
本発明の放熱構造体の製造方法は、発熱体と、熱伝導材料と、放熱部材とから構成される放熱構造体を製造する方法であって、
前記発熱体と前記放熱部材の間に、本発明の熱伝導材料の製造方法によって製造された熱伝導材料の半硬化物を挟持し、前記熱伝導材料の半硬化物を加熱し、硬化させる。
【0040】
まず、発熱体と放熱部材との間に本発明の熱伝導材料の製造方法によって製造された熱伝導材料の半硬化物を挟持させ、発熱体、放熱部材それぞれの表面形状に追従するように熱伝導材料の半硬化物を配置する。
【0041】
次に、この状態で熱伝導材料の半硬化物を加熱する。熱伝導材料の半硬化物を加熱する手段としては、例えば、リフロー炉を通すことで発熱体と放熱部材と共に加熱されてもよいし、オーブンで加熱してもよい。発熱体が半導体チップ又は半導体素子あるいは抵抗器などである場合には、通電させることでこれらを発熱させてもよい。
【0042】
加熱前の熱伝導材料の半硬化物は、非加熱下でプリプレグが積層されたプリプレグ積層体から切断された状態であるから、樹脂の状態は半硬化状態である。発熱体と放熱部材の間に熱伝導材料を挟持させた状態で加熱して、熱伝導材料の半硬化物を完全硬化させる。
【0043】
発熱体と放熱部材の間に熱伝導材料の半硬化物を挟持させた状態で完全硬化させることで、発熱体と放熱部材への密着性を維持したまま、更にそれぞれに対して接着されることになり、完全硬化した熱伝導材料を発熱体と放熱部材との間に配置する場合に比べて、より放熱性及び密着性に優れた放熱構造体とすることができる。
【0044】
(放熱構造体)
本発明の放熱構造体は、発熱体と、熱伝導材料と、放熱部材とから構成される放熱構造体であって、
前記発熱体と前記放熱部材の間に、本発明の熱伝導材料の硬化物を有し、
前記発熱体及び前記放熱部材と前記熱伝導材料の硬化物とが密着性を有する。
ここで、前記密着性とは、ステンレス板と銅箔を熱伝導材料で貼り合せ、150℃で1時間硬化した後に、室温下で測定した、引っ張り速度50mm/minでの90°剥離試験の剥離力が1N/cm以上であることをいう。
室温下とは、非加熱環境下であることを意味し、例えば、20℃〜30℃の温度を意味する。
【0045】
放熱構造体としては、例えば、電子部品等の発熱体と、ヒートシンク、ヒートパイプ、ヒートスプレッダ等の放熱部材と、発熱体と放熱部材に挟持された熱伝導材料とからなる。
【0046】
電子部品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)などが挙げられる。
【0047】
放熱構造体としては、電子部品(発熱体)の発する熱を放熱する構造体であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒートスプレッダ、ヒートシンク、ベーパーチャンバー、ヒートパイプなどが挙げられる。
前記ヒートスプレッダは、前記電子部品の熱を他の部品に効率的に伝えるための部材である。前記ヒートスプレッダの材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、銅、アルミニウムなどが挙げられる。前記ヒートスプレッダは、通常、平板形状である。
前記ヒートシンクは、前記電子部品の熱を空気中に放出するための部材である。前記ヒートシンクの材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、銅、アルミニウムなどが挙げられる。前記ヒートシンクは、例えば、複数のフィンを有する。前記ヒートシンクは、例えば、ベース部と、前記ベース部の一方の面に対して非平行方向(例えば、直交する方向)に向かって延びるように設けられた複数のフィンを有する。
前記ヒートスプレッダ、及び前記ヒートシンクは、一般的に、内部に空間を持たない中実構造である。
前記ベーパーチャンバーは、中空構造体である。前記中空構造体の内部空間には、揮発性の液体が封入されている。前記ベーパーチャンバーとしては、例えば、前記ヒートスプレッダを中空構造にしたもの、前記ヒートシンクを中空構造にしたような板状の中空構造体などが挙げられる。
前記ヒートパイプは、円筒状、略円筒状、又は扁平筒状の中空構造体である。前記中空構造体の内部空間には、揮発性の液体が封入されている。
【0048】
ここで、
図1は、本発明の放熱構造体の一例としての半導体装置の概略図である。この
図1は、半導体装置の一例の概略断面図である。本発明の熱伝導シート1は、半導体素子等の電子部品3の発する熱を放熱するものであり、
図1に示すように、ヒートスプレッダ2の電子部品3と対峙する主面2aに固定され、電子部品3と、ヒートスプレッダ2との間に挟持されるものである。また、熱伝導シート1は、ヒートスプレッダ2とヒートシンク5との間に挟持される。そして、熱伝導シート1は、ヒートスプレッダ2とともに、電子部品3の熱を放熱する放熱部材を構成する。
【0049】
ヒートスプレッダ2は、例えば、方形板状に形成され、電子部品3と対峙する主面2aと、主面2aの外周に沿って立設された側壁2bとを有する。ヒートスプレッダ2は、側壁2bに囲まれた主面2aに熱伝導シート1が設けられ、また主面2aと反対側の他面2cに熱伝導シート1を介してヒートシンク5が設けられる。ヒートスプレッダ2は、高い熱伝導率を有するほど、熱抵抗が減少し、効率よく半導体素子等の電子部品3の熱を吸熱することから、例えば、熱伝導性の良好な銅やアルミニウムを用いて形成することができる。
【0050】
電子部品3は、例えば、BGA等の半導体素子であり、配線基板6へ実装される。またヒートスプレッダ2も、側壁2bの先端面が配線基板6に実装され、これにより側壁2bによって所定の距離を隔てて電子部品3を囲んでいる。
【0051】
そして、ヒートスプレッダ2の主面2aに、熱伝導シート1が接着されることにより、電子部品3の発する熱を吸収し、ヒートシンク5より放熱する放熱部材が形成される。ヒートスプレッダ2と熱伝導シート1との接着は、熱伝導シート1自身の密着力によって行うことができる。
【0052】
(シリコンウェーハ)
本発明の放熱構造体及びその製造方法としては、以下のような態様も挙げられる。
図2の(A)に示すように、半導体回路が形成されたシリコンウェーハ12の、回路形成面と対向する面に本発明の熱伝導材料11を貼り合せる。
次に、この状態のシリコンウェーハを、ダイシングテープの設けられたダイシングフレームにセットした後、ダイサーなどを用いて熱伝導材料付き半導体チップとして個片化する(
図2の(B)、(C)参照)。
【0053】
次に、
図2(D)に示すように、個片化した熱伝導材料付き半導体チップ13を、例えば、有機基板15にマウントした後、ヒートスプレッダやヒートシンク等の放熱部材14と接触するように設置する。
図2の(D)中11は本発明の熱伝導材料、16は半田である。
【0054】
その後、例えば、熱伝導材料付き半導体チップの有機基板に対する実装と、ヒートスプレッダ等の放熱部材の半導体チップへの接着を、リフロー炉で加熱しながら一括で実施する。
【0055】
以上のような工程を経ることで、発熱体である電子部品(半導体チップ)の基板への実装と、電子部品とヒートスプレッダやヒートシンクなどの放熱部材とを接着する工程を同時に行うことができ、より一層の生産効率の向上を図ることができる。
【0056】
(電子機器)
本発明の電子機器は、本発明の放熱構造体を有する。
電子機器の一例として、電子部品として半導体素子を用いた半導体装置などが挙げられる。
【実施例】
【0057】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0058】
UDプリプレグとして、幅10cm、長さ5cmのグラノックプリプレグNT81250−525S(炭素繊維の直径10μm、F.A.W値125g/m
2、熱硬化性樹脂組成物含有量25質量%、厚み90μm、日本グラファイトファイバー株式会社製)を、炭素繊維の配向方向が同一方向になるように積層した。室温(25℃)下で積層し、1枚積層毎にハンドローラーで加圧し、最終的に180枚積層した。高さ23mm×幅10cm×長さ5cmのプリプレグ積層体を得た。次に、炭素繊維の配向方向と略垂直方向にプリプレグ積層体をスライスし、厚み方向に炭素繊維が配向した厚さ300μm(0.3mm)の半硬化状態の熱伝導材料を得た。
【0059】
次に、得られた半硬化状態の熱伝導材料について、以下のようにして、熱抵抗及び厚みを測定し、密着性を評価した。結果を表1に示した。
【0060】
<熱抵抗の測定>
得られた半硬化状態の熱伝導材料を、直径20mmの円形になるように切断し、銅板で挟持した後に、150℃で1時間加熱し、熱伝導材料を硬化させたテストピースを得た。
得られたテストピースの熱抵抗[℃・cm
2/W]を、ASTM−D5470に準拠した方法で3kgf/cm
2の荷重で測定した。
また、熱硬化後の熱伝導材料の厚みを、隙間ゲージを用いて測定した。
【0061】
<密着性の評価>
ポリイミドフィルムを裏打ち材とした銅箔を10mm×100mmに切断した。この試験片に厚み0.3mmの半硬化状態である熱伝導材料を銅箔の端部から幅10mm×長さ50mmになるように貼り付けた。半硬化状態にある熱伝導材料を貼り付けた銅箔を、JIS G4305に準拠したSUS304板上に2kgのローラーで1往復して貼り付けた。この状態で、150℃で1時間加熱して熱伝導材料を硬化後、室温(25℃)下で24時間静置しサンプルとした。
このサンプルを材料試験機(テンシロンRTG1250、エー・アンド・デイ株式会社製)にセットし、引っ張り速度50mm/minで90℃剥離試験に供して剥離力を測定し、下記基準により、密着性を評価した。
[密着性の評価基準]
〇:密着性を有している;90°剥離試験の剥離力が1N/cm以上
×:密着性を有していない;90°剥離試験の剥離力が1N/cm未満
【0062】
(比較例1)
<熱抵抗>
実施例1において、銅板に挟む前に、熱伝導材料を150℃で1時間加熱して熱伝導材料を硬化させた以外は、実施例1と同様の条件で熱伝導材料とテストピースを得た。このテストピースについて実施例1と同様にして、熱抵抗及び厚みを測定した。結果を表1に示した。
【0063】
<密着性>
実施例1において、ポリイミドフィルムを裏打ち材とした銅箔に厚み0.3mmの半硬化状態の熱伝導材料を貼り付けた後、そのまま、150℃で1時間加熱硬化した。これをSUS304板に貼り付けようとしたが、貼り付けることができなかった(剥離力測定不能)。結果を表1に示した。
【0064】
【表1】
表1の結果から、実施例1は、炭素繊維を含有する熱伝導材料を得る時点では加熱硬化させておらず、銅板で挟持した後に加熱硬化しているため、銅板の表面形状に追従し且つ銅板と接着されており、密着性及び熱伝導性が良好であり、熱抵抗が低くなることがわかった。
一方、比較例1は、得られた熱伝導材料を加熱硬化した後に銅板で挟持しているため、銅板の表面形状への追従性が低く、密着性も悪いため、実施例1と比較して熱抵抗が高くなることがわかった。