特開2021-138586(P2021-138586A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-138586(P2021-138586A)
(43)【公開日】2021年9月16日
(54)【発明の名称】オゾン水製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 13/10 20060101AFI20210820BHJP
【FI】
   C01B13/10 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2020-39622(P2020-39622)
(22)【出願日】2020年3月9日
(71)【出願人】
【識別番号】507016616
【氏名又は名称】小平 猛
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小平 猛
【テーマコード(参考)】
4G042
【Fターム(参考)】
4G042CE01
(57)【要約】
【課題】オゾン水の効用が長期に亘って維持されるオゾン水が得られるオゾン水製造方法を提供する。
【解決手段】本開示のオゾン水製造方法は、水にケトン基を有する化合物が溶解した原料液に、オゾンガスを注入して、オゾン水を製造することを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水にケトン基を有する化合物が溶解した原料液に、オゾンガスを注入して、オゾン水を製造することを特徴とするオゾン水製造方法。
【請求項2】
前記ケトン基を有する化合物は、糖類であることを特徴とする請求項1に記載のオゾン水製造方法。
【請求項3】
前記糖類は、ブドウ糖、グラニュー糖及び果糖からなる群から選択されることを特徴とする請求項1又は2に記載のオゾン水製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オゾン水製造方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
水にオゾンガスを溶解させたオゾン水はその強い酸化力から殺菌、消臭、洗浄、浄化、漂白等の効果を持ち、様々な分野で広く利用されている。水にオゾンガスを溶解させる方法としては、純水とオゾンガスとを混合して渦巻き式ポンプで撹拌、混合してオゾンガスを純水中に溶解させる方法や、エジェクタを用いて被処理水とオゾンガスとの混合水を形成する方法等が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−237113
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、オゾン水は製造時には十分な濃度を有するものであったとしても、時間が経つにつれて濃度が低下してしまうという問題があった。このため、オゾン水の生成から使用までの時間が長すぎると、殺菌、消臭、洗浄等のオゾン水の効用を十分に活用することができなかった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、オゾン水の効用が長期に亘って維持されるオゾン水が得られるオゾン水製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係るオゾン水製造方法は、水にケトン基を有する化合物が溶解した原料液に、オゾンガスを注入して、オゾン水を製造することを特徴とする。
【0007】
また、本発明の実施形態に係るオゾン水製造方法において、前記ケトン基を有する化合物は、糖類であることが好ましい。
【0008】
また、本発明の実施形態に係るオゾン水製造方法において、前記糖類は、ブドウ糖、グラニュー糖及び果糖からなる群から選択されることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態に係るオゾン水製造方法によれば、オゾン水の効用が長期に亘って維持されるオゾン水が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】オゾン水の製造装置の一例の概略構成図である。
図2】実施例1のオゾン水の各経過時間における吸収スペクトルを示す。
図3】実施例2のオゾン水の各経過時間における吸収スペクトルを示す。
図4】実施例3のオゾン水の各経過時間における吸収スペクトルを示す。
図5】実施例4のオゾン水の各経過時間における吸収スペクトルを示す。
図6】実施例2のオゾン水を散布した消臭試験の結果を示す図である。
図7】実施例5及び6のオゾン水を散布した消臭試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0012】
図1にオゾン水の製造装置の一例の概略構成図を示す。オゾン水の製造装置1は、反応槽10と、反応槽10に、水にケトン基を有する化合物を溶解させた原料液を供給する原料液供給部12と、オゾンガスを発生させ、発生したオゾンガスを反応槽10に供給し、原料液にオゾンガスを注入するオゾンガス供給部14とを備える。
【0013】
原料液供給部12は、原料液を貯留するタンク16、バルブ18、配管20を有する。タンク16内の原料液は、バルブ18を開放することにより、配管20を通じて反応槽10中に供給される。原料液は自重でまたはポンプを使って反応槽10に供給されるようにすればよい。
【0014】
オゾンガス供給部14は、オゾンガス発生装置22、バルブ24、配管26を有する。オゾンガス発生装置22は、オゾンガスを発生させるものであればどのような装置でもよい。オゾンガス発生装置22のオゾンガスを発生させる方式は、無声放電法、紫外線照射法、電気分解法等のいずれの方式でもよく、市販されている各方式のオゾナイザを用いることができる。また、ここで用いる電気分解する装置は、オゾンガス発生のために用いるものであり、原料液を電気分解させるために用いるものではない。
【0015】
オゾンガス発生装置22により発生したオゾンガスは、バルブ24を開放することにより、配管26を通じて反応槽10中に供給される。これにより、反応槽10中で、原料液にオゾンガスが注入され、オゾン水が製造される。反応槽10で得られたオゾン水は、バルブ28を開けることにより、反応槽10の底部から配管30を通じ、自重でまたはポンプを使って送出される。反応槽10から送出されたオゾン水は、例えば、密閉型容器(不図示)に充填され、保管される。
【0016】
以下、原料液やオゾン水の製造条件等について詳述する。
【0017】
オゾンガスが注入される原料液は、水、及び水に溶解したケトン基を有する化合物を含む。原料液の水は、特に限定されるものではなく、例えば、一般の水道水や、それを浄水器に通した浄水等でもよいが、より高濃度のオゾン水を得る観点からは、蒸留水や逆浸透膜(RO膜)やイオン交換膜を通して調製したイオン交換水等の純水が好ましい。
【0018】
ケトン基を有する化合物は、直鎖状、分岐状、環状、脂肪族、芳香族、飽和型、不飽和型等、特に限定されない。ケトン基を有する化合物は、例えば、アセトン、メチルアセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−アミルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、アセトン油、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコール、メシチルオキシド、ホロン、イソホロン、アセトフェノン、糖類等があげられる。ケトン基を有する化合物としての糖類は、例えば、グルコース(ブドウ糖)、フルクトース(果糖)、ガラクトース、アラビノースなどの単糖類、スクロース(ショ糖)、マルトース(麦芽糖)、乳糖、トレハロース、パラチノース、セロビノースなどの二糖類、マルトトリオースなどの三糖類等が挙げられる。また、ケトン基を有する化合物としての糖類は、グラニュー糖、上白糖等でもよい。
【0019】
上記例示したケトン基を有する化合物の中では、時間経過に伴うオゾン濃度の低下をより抑制し、オゾン水の効用をより長期に維持することができる点で、糖類が好ましい。また、上記例示した糖類の中では、ブドウ糖、グラニュー糖、果糖からなる群から選択されることが好ましい。
【0020】
ケトン基を有する化合物の溶解量は、特に限定されないが、例えば、0.1質量%〜50質量%の範囲である。溶解量が0.1質量%未満であると、ケトン基を有する化合物を溶解することによる効果が十分に得られないおそれがある。一方、50質量%より多くしても、ケトン基を有する化合物を溶解することによる効果の向上は期待できずコストがかかるだけである。
【0021】
オゾンガスを注入する際の原料液の温度は、0℃〜60℃とすることが好ましく、さらには0℃〜40℃とすることが好ましい。原料液の温度が60℃を超えると、オゾンガスの水に対する溶解度が低下するため、生成したオゾン水のオゾン濃度が低下する場合がある。また原料液の温度が0℃より低いと氷結のおそれがある。原料液の加熱は、例えば、タンク16内の原料液、反応槽10内の原料液、或いは配管20を流れる原料液を加熱する加熱装置を用いて適宜行えばよい。
【0022】
原料液へのオゾンガスの注入時間は、特に限定されないが、例えば、5分以上が好ましく、30分以上がより好ましく、1時間以上がより好ましい。
【0023】
原料液及びオゾン水のpHは、例えば、4〜9が好ましく、6〜8がより好ましい。pHを上記範囲とすることで、高濃度のオゾン水を得ること又は時間経過に伴うオゾン濃度の低下をより抑制できる場合がある。pHの調整は、塩酸や水酸化ナトリウム等のpH調整剤を反応槽10に供給するpH調整剤供給装置を用いて適宜行えばよい。
【0024】
本実施形態の製造方法により得られたオゾン水は、例えば、大気圧下で密閉容器に充填したものを25℃の温度条件下において保存した場合に、30日間以上、オゾン水の効用を維持することができる。このようにオゾン水の効用を長期に亘って維持できるメカニズムは必ずしも明らかでないが、以下のことが推察される。原料液にオゾンガスが注入されると、オゾンより発生した励起状態の酸素原子(O*)が、ケトン基を有する化合物と反応する。この反応により、励起状態の酸素原子が、化合物中のケトン基を反応の起点として、2個の酸素原子と結合すると考えられる。すなわち、上記反応により、ケトン基を有する化合物内にオゾンが取り込まれた状態となり、水中で安定に存在するため、オゾン水の効用を長期に亘って維持できると推察される。ここで、本実施形態の製造方法により得られたオゾン水の紫外線吸収スペクトルを測定すると、振動励起オゾンに由来するピークが観察される(後述の実施例を参照)。したがって、ケトン基を有する化合物内に取り込まれたオゾンは振動励起オゾンの状態であると推察される。
【0025】
本実施形態の製造方法により得られたオゾン水は、オゾン水の用途として知られている各種の用途に利用することができる。例えば、オゾン水は、殺菌効果、消臭効果、洗浄効果等の効用を発揮する。本実施形態の製造方法により得られたオゾン水を使用する場合には、殺菌効果、消臭効果、洗浄効果等の効用をより発揮させることができる点で、例えば、本実施形態の製造方法により得られたオゾン水に紫外線を照射することが好ましい。また、オゾンガス注入前又は注入後の原料液にクエン酸を添加することが好ましい。クエン酸を添加したオゾン水は、クエン酸を添加していないオゾン水と比べて、例えば、より高い消臭効果や殺菌効果が得られる。
【実施例】
【0026】
以下、実施例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0027】
<実施例1>
純水100Lに果糖を500g溶かした原料液に、オゾンガスを6時間注入し、オゾン水を製造した。製造したオゾン水を密閉容器で保存した。
【0028】
<実施例2>
純水100Lにグラニュー糖を500g溶かした原料液に、オゾンガスを6時間注入し、オゾン水を製造した。製造したオゾン水を密閉容器で保存した。
【0029】
<実施例3>
純水100Lにグラニュー糖を250g及び果糖を250g溶かした原料液に、オゾンガスを6時間注入し、オゾン水を製造した。製造したオゾン水を密閉容器で保存した。
【0030】
<実施例4>
純水100Lに上白糖を250g溶かした原料液に、オゾンガスを6時間注入し、オゾン水を製造した。製造したオゾン水を密閉容器で保存した。
【0031】
実施例1〜4のオゾン水について、密閉容器で保存してから(すなわち、オゾン注入の停止後から)1時間、20日、25日、30日経過時において、密閉容器からオゾン水を所定量採取し、230〜360nmの波長範囲で紫外線分光光度計による測定を行った。図2に、実施例1のオゾン水の各経過時間における吸収スペクトルを示し、図3に、実施例2のオゾン水の各経過時間における吸収スペクトルを示し、図4に、実施例3のオゾン水の各経過時間における吸収スペクトルを示し、図5に、実施例4のオゾン水の各経過時間における吸収スペクトルを示す。
【0032】
図2〜5に示すように、実施例1〜4のオゾン水のいずれにおいても、ピークは時間経過と共に286nm付近にシフトしている。ここで、オゾンは、254nmに吸収極大をもつ基底状態のオゾンが生成する前に、310nm、286nm付近に極大を持つ振動励起オゾンが存在することが知られている(「オゾンの基礎と応用」、杉本英俊著、93頁参照)。この点を考慮すると、糖類を純水に溶かした原料液内に取り込まれたオゾンは、時間経過と共に、振動励起オゾンに遷移して、水中に安定に存在していると推察される。
【0033】
上記実施例と同様に、アセトンを純水に溶かした原料液にオゾンガスを注入したオゾン水の場合も、実施例と同様の結果が得られた。
【0034】
<消臭試験>
100ppmのアンモニアが入った容器(5リットル)に、3ヶ月間保存した実施例2のオゾン水を散布した後、容器に紫外線を照射した。そして、経過時間とその時のアンモニア濃度を測定した。また、空試験として、オゾン水を散布していないものについても同一の試験を行った。ここで、容器内のアンモニア採取には、製品名:気体採取器(株式会社ガステック製)、アンモニア濃度の測定には、製品名:気体検知管(3Lアンモニア)(株式会社ガステック製)を使用した。
【0035】
図6は、実施例2のオゾン水を散布した消臭試験の結果を示す図である。図6に示すように、3ヶ月間保存した実施例2のオゾン水を散布した場合、オゾン水を散布しなかった空試験の場合と比較して、アンモニア濃度が低下した。すなわち、本実施例により製造したオゾン水は長期に亘って消臭効果が維持されていると判断できる。
【0036】
<実施例5>
純水100Lにブドウ糖を500g溶かした原料液に、オゾンガスを6時間注入し、オゾン水を製造した。製造したオゾン水を密閉容器で保存した。
【0037】
<実施例6>
純水100Lにブドウ糖を500g溶かした原料液に、クエン酸を添加(濃度0.1g/100mL)した後、オゾンガスを6時間注入し、オゾン水を製造した。製造したオゾン水を密閉容器で保存した。
【0038】
3ヶ月間保存した実施例5及び6においても、前述と同様の消臭試験を行った。その結果を図7に示す。図7に示すように、3ヶ月間保存した実施例5及び6のオゾン水を散布した場合、オゾン水を散布しなかった空試験の場合と比較して、アンモニア濃度が低下した。特に、クエン酸を含有する実施例6のオゾン水は、クエン酸を含有しない実施例5のオゾン水と比べて、よりアンモニア濃度が低下した。すなわち、クエン酸を添加することで、より高い消臭効果が発揮された。
【0039】
<乳化試験>
食用油が入った容器に、3ヶ月間保存した実施例1のオゾン水を滴下した後、容器内の液に紫外線を30分照射した。照射後の容器内の液体を観察したところ、白濁しており、水と油とが乳化した状態となっていた。3ヶ月間保存した実施例2〜4のオゾン水も同様に試験した結果、実施例1と同様に乳化状態となった。すなわち、本実施例により製造したオゾン水は長期に亘って、油を乳化して除去する洗浄効果が維持されていると判断できる。
【符号の説明】
【0040】
1 オゾン水の製造装置、10 反応槽、12 原料液供給部、14 オゾンガス供給部、16 タンク、18,24,28 バルブ、20,26,30 配管、22 オゾンガス発生装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7