粉体を、脱イオン水、希釈剤、粘着剤および高分子材料と、サンドミルでボールミル混合し、固体含有量が70〜80%の間にあり、粘度が120〜300mPa・sの間にあるITOセラミックスラリーを取得し、且つ、混合粉体の平均粒径D50を100〜300nmに制御するステップと、加圧鋳込によりITOセラミックスラリーを形成し、相対密度が58〜62%であるITOセラミックのグリーン体を取得するステップと、一体化脱脂焼結によりITOセラミックのグリーン体を処理して、ITOセラミックターゲット材を取得するステップを含む、ITOセラミックターゲット材の調製方法。
前記希釈剤はポリアクリル酸系またはポリカルボン酸系希釈剤を含み、前記粘着剤はアラビアゴム、ポリビニルアルコール、またはアクリル樹脂を含み、高分子材料はポリアクリルアミドを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の調製方法。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
従来技術に存在する上記の技術的課題の1つを少なくとも解決するために、本願の実施例は、
質量部数が90〜97であるIn
2O
3粉体および質量部数が10〜3であるSnO
2粉体を、脱イオン水、希釈剤、粘着剤および高分子材料と、サンドミルでボールミル混合し、固体含有量が70〜80%の間にあり、粘度が120〜300mPa・sの間にあるITOセラミックスラリーを取得し、且つ、ITOセラミックスラリー中の混合粉体の平均粒径D50を200〜300nmに制御するステップと、
加圧鋳込によりITOセラミックスラリーを形成し、相対密度が58〜62%であるITOセラミックのグリーン体を取得するステップと、
一体化脱脂焼結によりITOセラミックのグリーン体を処理して、ITOセラミックターゲット材を取得するステップ、を含み、
前記一体化脱脂焼結処理は、
ITOセラミックのグリーン体を脱脂焼結一体化炉に入れることと、
脱脂焼結一体化炉を脱脂温度である700〜800℃まで加熱し、ITOセラミックターゲット材を常圧酸素雰囲気で脱脂処理し、脱脂時間を12〜36時間とすることと、
脱脂焼結一体化炉を脱脂温度から第1焼結温度である1600〜1650℃まで昇温することと、
第1焼結温度に昇温した後、第1焼結温度で0〜60min保温し、その後、脱脂焼結一体化炉を第1焼結温度から第2焼結温度である1500〜1540℃まで降温し始め、ITOターゲット材を第2焼結温度かつ常圧酸素雰囲気で焼結処理し、12〜36時間保温し、最終的にITOセラミックターゲット材を取得すること、
を含む結晶粒サイズが制御可能なITOセラミックターゲット材の調製方法を提供する。
【0006】
いくつかの実施例に開示される結晶粒サイズが制御可能なITOセラミックターゲット材の調製方法において、In
2O
3粉体およびSnO
2粉体の質量部数は90および10である。
【0007】
いくつかの実施例に開示される結晶粒サイズが制御可能なITOセラミックターゲット材の調製方法において、In
2O
3粉体およびSnO
2粉体の質量部数は95および5である。
【0008】
いくつかの実施例に開示される結晶粒サイズが制御可能なITOセラミックターゲット材の調製方法において、In
2O
3粉体およびSnO
2粉体の質量部数は93および7である。
【0009】
いくつかの実施例に開示される結晶粒サイズが制御可能なITOセラミックターゲット材の調製方法において、In
2O
3粉体の一次粒子の粒径分布範囲は80〜200nmであり、SnO
2粉体の一次粒子の粒径分布範囲は80〜200nmである。
【0010】
いくつかの実施例に開示される結晶粒サイズが制御可能なITOセラミックターゲット材の調製方法において、希釈剤はポリアクリル酸系またはポリカルボン酸系希釈剤を含み、粘着剤はアラビアゴム、ポリビニルアルコール、またはアクリル樹脂を含み、高分子材料はポリアクリルアミドを含む。
【0011】
いくつかの実施例に開示される結晶粒サイズが制御可能なITOセラミックターゲット材の調製方法において、In
2O
3粉体およびSnO
2粉体を、脱イオン水、希釈剤、粘着剤および高分子材料と、サンドミルで真空負圧条件においてボールミル混合し、負圧の圧力は9Pa以下である。
【0012】
いくつかの実施例に開示される結晶粒サイズが制御可能なITOセラミックターゲット材の調製方法において、室温から脱脂温度までの昇温速度を1〜3℃/minとする。
【0013】
いくつかの実施例に開示される結晶粒サイズが制御可能なITOセラミックターゲット材の調製方法において、脱脂温度から第1焼結温度までの昇温速度を2〜5℃/minとする。
【0014】
いくつかの実施例に開示される結晶粒サイズが制御可能なITOセラミックターゲット材の調製方法において、第1焼結温度から第2焼結温度までの降温速度を8〜16℃/minとする。
【発明の効果】
【0015】
本願の実施例に開示される結晶粒サイズが制御可能なITOセラミックターゲット材の調製方法は、粉体の一次粒径の分布、混合粉体のボールミル分散粒径の分布、成形プロセスおよび焼結プロセスの相乗効果が最適な組み合わせ、ITOセラミックターゲット材の結晶構造等から鋭意検討を行い、結晶粒サイズが制御可能なITOセラミックターゲット材を調製して取得し、優れた電気的および力学的等の性能を有し、高品質なITO薄膜の調製に寄与する。プロセス操作が簡単で、グリーン体の焼結性が良く、様々なサイズのITOセラミックターゲット材を調製しやすく、且つITOセラミックターゲット材の密度が高く、抵抗率が低く、結晶粒が細かくて粒度分布が均一であり、その相対密度は99.7%に達することができ、抵抗率は0.13mΩ・cmと低く、結晶粒サイズは制御可能で、その数値は3〜5μmと低くすることができ、焼結温度の低下は、対応して製造コストを削減して機器の耐用年数を延長することができ、工業生産に適する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ここで、「実施例」という専門用語は、「例示的」として説明するいずれかの実施例が、他の実施例よりも優れているか、または良いと解釈される必要はない。本願の実施例における性能指標の試験は、特に断りのない限り、本分野の通常の試験方法を用いる。本願に係る用語は、特別な実施形態を説明するためのものに過ぎず、本願に開示された内容を限定するものではないことは理解されるべきである。
【0018】
特に断りのない限り、本文に使用される技術および科学用語は、当業者の通常の理解と同じ意味を有し、本願において特に明記されていない他の試験方法および技術的手段は、いずれも当業者が通常採用する実験方法および技術的手段を指す。
【0019】
本開示に用いられる「基本的」および「約」という用語は、小さな変動を説明するために用いられる。例えば、±5%以下を指すことができ、例えば、±2%以下、例えば、±1%以下、例えば、±0.5%以下、例えば、±0.2%以下、例えば、±0.1%以下、例えば、±0.05%以下である。濃度、量および他の数値データは、本文において、範囲形式で表示または提示することができる。このような範囲形式は、説明の便宜上のために用いられるものに過ぎないため、該範囲の限界として明確に列挙された数値を含むだけでなく、該範囲内に含まれる全ての独立した数値またはサブ範囲を更に含むと柔軟に解釈されるべきである。例えば、「1〜5%」の数値範囲は、1%〜5%の明確に列挙された値を含むだけでなく、示された範囲内の独立した値およびサブ範囲を更に含むと解釈されるべきである。そのため、この数値範囲内に、2%、3.5%、および4%のような独立した値、および1%〜3%、2%〜4%、および3%〜5%等のようなサブ範囲を含む。この原理は、同様に1つの数値のみが挙げられた範囲にも適用される。また、該範囲の幅または前記特徴に関わらず、このような解釈はいずれも適用される。
【0020】
特許請求の範囲を含む本開示において、「包含する」、「含む」、「備える」、「有する」、「含有する」、「関する」、「収容する」等のような全ての連結語は、包括的なものであると理解される。すなわち、「……を含んでもよいが、これらに限定されない」ことを指す。「……で構成される」および「……からなる」という連結語のみが排他的な連結語である。
【0021】
本願の内容をよりよく説明するために、以下の具体的な実施例において多くの具体的な詳細を示す。当業者であれば、いくつかの具体的な詳細がなくても、本願は同様に実施できることを理解すべきである。実施例において、本願の要点を強調するために、当業者によく知られているいくつかの方法、手段、装置、機器等は詳細には説明しない。矛盾しない限り、本願の実施例に開示される技術的特徴は、互いに任意に組み合わせることができ、得られた技術案は、本願の実施例に開示される内容に属する。
【0022】
いくつかの実施形態において、結晶粒サイズが制御可能なITOセラミックターゲット材の調製方法は、スラリー調製ステップと、グリーン体成形ステップと、グリーン体一体化脱脂焼結ステップとを含む。
【0023】
スラリー調製ステップは、すなわち、質量部数が90〜97であるIn
2O
3粉体および質量部数が10〜3であるSnO
2粉体を、脱イオン水、希釈剤、粘着剤、および高分子材料と、サンドミルでボールミル混合し、固体含有量が70〜80%の間にあり、粘度が120〜300mPa・sの間にあるITOセラミックスラリーを取得し、サンドミルで分散したITOセラミックスラリー中の混合粉体の平均粒径D50を200〜300nmに制御するステップである。本願に係る混合粉体とは、In
2O
3粉体およびSnO
2粉体を含む粉体混合物を指す。混合粉体の粒径を制御することは、生成物の性能に対する影響が大きく、特に、混合粉体の平均粒径がITOセラミックターゲット材の結晶粒サイズの制御と密接に関連し、平均粒径D50を200〜300nmの間に制御することにより、理想的な結果が得られる。
【0024】
グリーン体成形ステップは、すなわち、加圧鋳込によりITOセラミックスラリーを形成し、ITOセラミックのグリーン体を取得し、且つ、該グリーン体の相対密度が62%以上であるステップである。ITOセラミックターゲット材のグリーン体の相対密度は、その最終生成物ITOターゲット材の緻密化程度を制御する重要なパラメータの1つであり、グリーン体の相対密度を62%以上に制御することにより、緻密化程度が高いITOセラミックターゲット材を取得することができる。
【0025】
グリーン体一体化脱脂焼結ステップは、すなわち、一体化脱脂焼結によりITOセラミックのグリーン体を処理して、ITOセラミックターゲット材を取得するステップである。ここで、一体化脱脂焼結処理は、具体的には、ITOセラミックのグリーン体を脱脂焼結一体化炉に入れることと、脱脂焼結一体化炉を脱脂温度である700〜800℃まで加熱し、ITOセラミックターゲット材を常圧酸素雰囲気で脱脂処理し、脱脂時間を12〜36時間とすることと、脱脂過程が終了した後、脱脂焼結一体化炉を脱脂温度から第1焼結温度である1600〜1650℃まで昇温することと、第1焼結温度に昇温した後、該焼結温度で0〜60min保温し、その後、第1焼結温度から第2焼結温度である1500〜1540℃まで降温し、且つ、第2焼結温度かつ常圧酸素雰囲気で焼結処理を行い、12〜36時間保温し、最終的にITOセラミックターゲット材を取得することを含む。
【0026】
いくつかの実施形態において、In
2O
3粉体の質量部数は90、93、95、または97であり、それに対応し、SnO
2粉体の質量部数は、両者の質量部数の和が100となるように、それぞれ10、7、5または3である。
【0027】
いくつかの実施形態において、In
2O
3粉体およびSnO
2粉体の一次粒子の粒径分布範囲は80〜200nmである。
【0028】
いくつかの実施形態のスラリーの調製ステップにおいて、In
2O
3およびSnO
2という2種の酸化物粉体を、脱イオン水、希釈剤、粘着剤および高分子材料と混合し、高固体含有量かつ低粘度のITOスラリーに調製する。ここで、希釈剤はポリアクリル酸系またはポリカルボン酸系希釈剤を含み、粘着剤はアラビアゴム、ポリビニルアルコール、またはアクリル樹脂を含み、高分子材料はポリアクリルアミドを含む。
【0029】
いくつかの実施形態のスラリーの調製において、In
2O
3粉体およびSnO
2粉体を、脱イオン水、希釈剤、粘着剤および高分子材料と、負圧環境でサンドミルを用いてボールミル混合し、負圧の圧力は9Pa以下である。サンドミルを用いて粉体材料を混合することにより、生産効率を向上させることができる。一方、短時間のボールミルはジルコニアボールミルによりITOスラリー内に取り込まれたジルコニウム不純物を大きく減少することができる。好ましい実施形態として、サンドミルでボールミルする前に予備混合してボールミルしてもよく、例えば、ドラム式ボールミルポットでボールミルによる予備混合を行う。
【0030】
通常、ボールミル混合後に、ITOスラリーの固体含有量がターゲット材のグリーン体の成形に大きく影響するが、実験により、固体含有量を70〜80%の間に制御することが好ましく、70%よりも低い場合、スラリーの水分含有量が高すぎて成形が困難となり、グリーン体が割れやすくなり、80%よりも高い場合、スラリーを取得しにくく、スラリーの調製プロセスの安定性に影響を及ぼすことが示されている。
【0031】
通常、ボールミル混合後に、ITOスラリーの平均粒径D50を200〜300nmの間に制御することが好ましく、平均粒径が200nmよりも低い場合、後続の成形に層間剥離が現れてITOグリーン体の品質が低下し、グリーン体が成形しにくくて割れやすくなり、300nmよりも高い場合、粉体に微小凝集の現象が現れ、粉体の活性が不足して焼結が完全に緻密化することができなくなる。
【0032】
通常、ボールミル混合後に、ITOスラリーの捻じれはターゲット材のグリーン体の成形に影響を及ぼすが、実験により、粘度を120〜300mPa・sの間に制御したITOセラミックスラリーは、ターゲット材の成形に寄与し、粘度が120よりも低いスラリーは、鋳込成形によりターゲット材に成形しにくく、300よりも高いスラリーは、レオロジー性能が悪くなり、鋳込の難しさが増大してターゲット材のグリーン体に成形しにくくなることが示されている。
【0033】
通常、負圧下で酸化物のスラリーをボールミルすることにより、ボールミル過程で空気および不純物がスラリーに混入するのを減らすことができる。一方、ボールミル後にスラリーを真空脱泡するプロセスを省略し、機器および時間コストを削減し、生産効率を向上させる。本願の実施例に開示される負圧の圧力が9Pa以下であれば、上記の技術的効果を達成することができる。
【0034】
いくつかの実施形態において、結晶粒サイズが制御可能なITOセラミックターゲット材の調製方法は、ITOスラリーをITOセラミックのグリーン体に成形するグリーン体成形ステップを含む。
【0035】
いくつかの実施形態において、得られたITOスラリーを加圧鋳込プロセスで成形し、特定の圧力で、石膏型のような型に注入し、成形してグリーン体を取得する。通常、ITOグリーン体の相対密度は58〜62%の間に制御される。相対密度が58%よりも低い場合、焼結後のセラミック材料は緻密化できず、且つ結晶粒サイズを効果的に制御することができず、62%よりも高い場合、最終製品の焼結効果を大幅に改善できず、かえって製造コストが増加する。
【0036】
いくつかの実施形態において、結晶粒サイズが制御可能なITOセラミックターゲット材の調製方法は、一体化脱脂焼結ステップを含む。一体化脱脂焼結ステップは、通常、一定温度でITOターゲット材のグリーン体に対して脱脂過程を行い、脱脂過程が終了した後、直接脱脂温度から焼結温度まで昇温して焼結過程を行うことを指し、脱脂および焼結過程が同一の装置で連続して行われ、ターゲット材の調製時間を短縮するとともに、調製機器または環境を交換する過程でターゲット材の構造を損傷することにより、製品の性能に影響を及ぼすことを回避する。通常、ITOターゲット材の脱脂焼結過程は常圧酸素雰囲気の一体化炉で行われ、プロセスフローが簡単で、セラミック表面の焼結活性の低下を回避し、緻密化程度が高いセラミックターゲット材を取得しやすい。
【0037】
好ましい実施形態として、通常、一定温度でITOセラミックのグリーン体に対して脱脂処理を行い、例えば、いくつかの実施例で選択された脱脂温度は700〜800℃の間にある。
【0038】
好ましい実施形態として、通常、高い温度で脱脂後のITOセラミックのグリーン体を焼結してセラミックターゲット材を取得する。いくつかの実施例において、まず、ITOセラミックターゲット材のグリーン体を第1焼結温度である1600〜1650℃に昇温し、その後、第2焼結温度である1500〜1540℃に降温し、第2焼結温度で12〜36時間保温する。通常、焼結過程は常圧高純度酸素雰囲気で行われる。
【0039】
好ましい実施形態として、通常、高い温度で脱脂後のITOセラミックのグリーン体を焼結してセラミックターゲット材を取得する。いくつかの実施例において、まず、ITOセラミックターゲット材のグリーン体を第1焼結温度である1600〜1650℃に昇温し、第1焼結温度での保持時間は60分を超えないようにした。その後、第2焼結温度である1500〜1540℃に降温し、第2焼結温度で12〜36時間保温する。通常、焼結過程は常圧高純度酸素雰囲気で行われる。
【0040】
いくつかの実施形態の一体化脱脂焼結ステップにおいて、室温から脱脂温度までの昇温速度を1〜3℃/minとする。脱脂温度の昇温速度を制御することは、ターゲット材の焼結効果の制御に寄与し、緻密度が高く、抵抗率が低く、結晶粒が細かく均一であるセラミックターゲット材を取得しやすく、昇温速度を1〜3℃/minに制御する形態は、好ましい実施形態に属する。
【0041】
いくつかの実施形態の一体化脱脂焼結ステップにおいて、脱脂温度から第1焼結温度までの昇温速度を2〜5℃/minとする。第1焼結温度の昇温速度を制御することは、ターゲット材の焼結効果の制御に寄与し、緻密度が高く、抵抗率が低く、結晶粒細かく均一であるセラミックターゲット材を取得しやすく、昇温速度を2〜5℃/miとする形態は、好ましい実施形態に属する。
【0042】
いくつかの実施形態の一体化脱脂焼結ステップにおいて、第1焼結温度から第2焼結温度までの降温速度を8〜16℃/minとする。第2焼結温度の降温速度を制御することは、ターゲット材の焼結効果の制御に寄与し、緻密度が高く、抵抗率が低く、結晶粒細かく均一であるセラミックターゲット材を取得しやすく、降温速度を8〜16℃/minとする形態は、好ましい実施形態に属する。
【0043】
以下、具体的な実施例により、結晶粒サイズが制御可能なITOセラミックターゲット材の調製方法の実施詳細について更に説明する。
【0044】
<実施例1>
本実施例1の結晶粒サイズが制御可能なITOセラミックターゲット材を調製する方法は、以下を含む。
【0045】
450gのIn
2O
3粉体および50gのSnO
2粉体をそれぞれ秤量し、9gのポリアクリル酸と、2.5gのアラビアゴムと、9gのアクリルアミドと、125gの脱イオン水とでプレミックス液を構成した。
【0046】
2種の酸化物粉体およびプレミックス液をドラム式ボールミルポットに加えて混合し、1時間ボールミルした後、スラリーをサンドミルに移して高エネルギーボールミルを行い、ボールミルポットの真空度を9Paにし、粉体の固体質量含有量が80%であるITOスラリーを取得し、レーザー粒度計により測定した混合粉体の平均粒径分布D50は200nmであった。
【0047】
スラリーを石膏型に注入し、圧力0.2MPaの条件で成形し、ITOセラミックのグリーン体を取得し、その相対密度は62%であった。
【0048】
ITOセラミックのグリーン体を乾燥した後、脱脂焼結一体炉に入れ、脱脂温度を750℃、時間を24時間とし、脱脂終了後に直接3℃/minの昇温速度で第1焼結温度である1640℃に昇温し、第1焼結温度で30min保温した後、16℃/minの降温速度で第2焼結温度である1540℃に降温し、第2焼結温度で36時間保温し、焼結雰囲気は常圧高純度酸素であった。
【0049】
実施例1で得られたITOセラミックターゲット材の相対密度は99.7%で、抵抗率は0.13mΩ・cmであり、そのミクロ組織のトポグラフィーは
図1に示すように、セラミック内部が完全に緻密化し、結晶粒分布は均一であり、その結晶粒の平均サイズは12.3μmであった。
【0050】
<実施例2>
本実施例2の結晶粒サイズが制御可能なITOセラミックターゲット材を調製する方法は、以下を含む。
【0051】
450gのIn
2O
3粉体および50gのSnO
2粉体をそれぞれ秤量し、9gのポリアクリル酸と、2.5gのアラビアゴムと、9gのアクリルアミドと、125gの脱イオン水とでプレミックス液を構成した。
【0052】
2種の酸化物粉体およびプレミックス液をドラム式ボールミルポットに加えて混合し、1時間ボールミルした後、スラリーをサンドミルに移して高エネルギーボールミルを行い、ボールミルポットの真空度を9Paにし、粉体の固体質量含有量が80%であるITOスラリーを取得し、レーザー粒度計により測定した混合粉体の平均粒径分布D50は200nmであった。
【0053】
スラリーを石膏型に注入し、圧力0.2MPaの条件で成形し、ITOセラミックのグリーン体を取得し、その相対密度は62%であった。
【0054】
ITOセラミックのグリーン体を乾燥した後、脱脂焼結一体炉に入れ、脱脂温度を750℃、時間を24時間とし、脱脂終了後に直接3℃/minの昇温速度で第1焼結温度である1640℃に昇温し、その後、16℃/minの降温速度で第2焼結温度である1540℃に降温し、T2(第2)焼結温度で24時間保温し、焼結雰囲気は常圧高純度酸素であった。
【0055】
実施例2で得られたITOセラミックターゲット材の相対密度は99.5%で、抵抗率は0.14mΩ・cmであり、そのミクロ組織トポグラフィーは
図2に示すように、完全に緻密化し、その結晶粒平均サイズは5.6μmであった。
【0056】
<実施例3>
本実施例3の結晶粒サイズが制御可能なITOセラミックターゲット材を調製する方法は、以下を含む。
【0057】
450gのIn
2O
3粉体および50gのSnO
2粉体をそれぞれ秤量し、9gのポリアクリル酸と、2.5gのアラビアゴムと、9gのアクリルアミドと、125gの脱イオン水とでプレミックス液を構成した。
【0058】
2種の酸化物粉体およびプレミックス液をドラム式ボールミルポットに加えて混合し、1時間ボールミルした後、スラリーをサンドミルに移して高エネルギーボールミルを行い、ボールミルポットの真空度を9Paにし、粉体の固体質量含有量が80%であるITOスラリーを取得し、レーザー粒度計により測定した混合粉体の平均粒径分布D50は200nmであった。
【0059】
スラリーを石膏型に注入し、圧力0.2MPaの条件で成形し、ITOセラミックのグリーン体を取得し、その相対密度は62%であった。
【0060】
ITOセラミックのグリーン体を乾燥した後、脱脂焼結一体炉に入れ、脱脂温度を750℃、時間を24時間とし、脱脂終了後に直接3℃/minの昇温速度で第1焼結温度である1600℃に昇温し、その後、16℃/minの降温速度で第2焼結温度である1540℃に降温し、第2焼結温度で24時間保温し、焼結雰囲気は常圧高純度酸素であった。
【0061】
実施例3で得られたITOセラミックターゲット材の相対密度は99.6%で、抵抗率は0.15mΩ・cmであり、そのミクロ組織トポグラフィーは
図3に示すように、完全に緻密化し、その結晶粒の平均サイズは3.8μmであった。
【0062】
<比較例1>
本比較例1の結晶粒サイズが制御可能なITOセラミックターゲット材を調製する方法は、以下を含む。
【0063】
450gのIn
2O
3粉体および50gのSnO
2粉体をそれぞれ秤量し、9gのポリアクリル酸と、2.5gのアラビアゴムと、9gのアクリルアミドと、125gの脱イオン水とでプレミックス液を構成した。
【0064】
酸化物粉体およびプレミックス液をドラム式ボールミルポットに加えて混合し、1時間ボールミルした後、スラリーをサンドミルに移して高エネルギーボールミルを行い、ボールミルポットの真空度を9Paにし、粉体の固体質量含有量が80%であるITOスラリーを取得し、レーザー粒度計により測定した混合粉体の平均粒径分布D50は500nmであった。
【0065】
スラリーを石膏型に注入し、圧力0.2MPaの条件で成形し、ITOセラミックのグリーン体を取得し、その相対密度は62%であった。
【0066】
ITOセラミックのグリーン体を乾燥した後、脱脂焼結一体炉に入れ、脱脂温度を750℃、時間を24時間とし、脱脂終了後に直接3℃/minの昇温速度で最高焼結温度である1600℃に昇温し、その後、該焼結温度で24時間保温し、焼結雰囲気は常圧高純度酸素であった。
【0067】
比較例1で得られたITOセラミックターゲット材の相対密度は97.4%で、抵抗率は0.19mΩ・cmであり、そのミクロ組織トポグラフィーは
図4に示すように、平均結晶粒サイズは11.5μmであり、セラミック内部が完全には緻密化できず、いくつかの孔が依然として存在しているが、その原因は、混合粉体の処理が不十分であり、粉体の焼結活性が不足しているためである。
【0068】
<比較例2>
本比較例2の結晶粒サイズが制御可能なITOセラミックターゲット材を調製する方法は、以下を含む。
【0069】
450gのIn
2O
3粉体および50gのSnO
2粉体をそれぞれ秤量し、9gのポリアクリル酸と、2.5gのアラビアゴムと、9gのアクリルアミドと、125gの脱イオン水とでプレミックス液を構成した。
【0070】
2種の酸化物粉体およびプレミックス液をドラム式ボールミルポットに加えて混合し、その後、スラリーをサンドミルに移して高エネルギーボールミルを行い、ボールミルポットの真空度を9Paにし、1時間ボールミルし、粉体の固体質量含有量が80%であるITOスラリーを取得し、レーザー粒度計により測定した混合粉体の平均粒径分布D50は400nmであった。
【0071】
スラリーを石膏型に注入し、圧力0.2MPaの条件で成形し、ITOセラミックのグリーン体を取得し、その相対密度は62%であった。
【0072】
ITOセラミックのグリーン体を乾燥した後、脱脂焼結一体炉に入れ、脱脂温度を750℃、時間を24時間とし、脱脂終了後に直接3℃/minの昇温速度で最高焼結温度である1600℃に昇温し、その後、該焼結温度で24時間保温し、焼結雰囲気は常圧高純度酸素であった。
【0073】
比較例2で得られたITOセラミックターゲット材の相対密度は97.8%で、抵抗率は0.18mΩ・cmであり、そのミクロ組織トポグラフィーは
図5に示すように、平均結晶粒サイズは9.5μmであり、セラミック内部が完全には緻密化できず、いくつかの孔が依然として存在しているが、その原因は、混合粉体の処理が不十分であり、粉体の焼結活性が不足しているためである。
【0074】
<比較例3>
本比較例3の結晶粒サイズが制御可能なITOセラミックターゲット材を調製する方法は、以下を含む。
【0075】
450gのIn
2O
3粉体および50gのSnO
2粉体をそれぞれ秤量し、9gのポリアクリル酸と、2.5gのアラビアゴムと、9gのアクリルアミドと、125gの脱イオン水とでプレミックス液を構成した。
【0076】
2種の酸化物粉体およびプレミックス液をドラム式ボールミルポットに加えて混合し、1時間ボールミルした後、スラリーをサンドミルに移して高エネルギーボールミルを行い、ボールミルポットの真空度を9Paにし、粉体の固体質量含有量が80%であるITOスラリーを取得し、レーザー粒度計により測定した混合粉体の平均粒径分布D50は200nmであった。
【0077】
スラリーを石膏型に注入し、圧力0.05MPaの条件で成形し、ITOセラミックのグリーン体を取得し、その相対密度は57%であった。
【0078】
ITOセラミックのグリーン体を乾燥した後、脱脂焼結一体炉に入れ、脱脂温度を750℃、時間を24時間とし、脱脂終了後に直接3℃/minの昇温速度で最高焼結温度である1600℃に昇温し、該焼結温度で24時間保温し、焼結雰囲気は常圧高純度酸素であった。
【0079】
比較例3で得られたITOセラミックターゲット材の相対密度は98.2%で、抵抗率は0.17mΩ・cmであり、そのミクロ組織トポグラフィーは
図6に示すように、平均結晶粒サイズは11.5μmであり、セラミック内部が完全には緻密化できず、いくつかの孔が依然として存在しているが、その原因は、ITOセラミックのグリーン体の相対密度が不足し、該焼結プロセスの要求を満たすことができないためである。
【0080】
実施例1〜3に対し、比較例1〜3で得られたITOセラミックターゲット材は、相対密度が小さく、抵抗率が高く、焼結体が完全には緻密化できない。
【0081】
本願の実施例に開示される結晶粒サイズが制御可能なITOセラミックターゲット材の調製方法は、粉体の一次粒径の分布、混合粉体のボールミル分散粒径の分布、成形プロセスおよび焼結プロセス等の相乗効果が最適な組み合わせ、ITOセラミックターゲット材の結晶構造等から鋭意検討を行い、結晶粒サイズが制御可能なITOセラミックターゲット材を調製して取得し、優れた電気的および力学的等の性能を有し、高品質なITO薄膜の調製に寄与する。プロセス操作が簡単で、グリーン体の焼結性が良く、様々なサイズのITOセラミックターゲット材を調製しやすく、且つITOセラミックターゲット材の密度が高く、抵抗率が低く、結晶粒が細かくて粒度分布が均一であり、その相対密度は99.7%に達することができ、抵抗率は0.13mΩ・cmと低く、結晶粒サイズが制御可能で、その数値は3〜5μmと低くすることができ、焼結温度の低下は、対応して製造コストを削減して機器の耐用年数を延長することができ、工業生産に適する。
【0082】
本願に開示される技術案および実施例に開示される技術的詳細は、本願の発想を例示的に説明するものに過ぎず、本願の技術案を限定するものではなく、本願に開示される技術的詳細に対して行われる進歩性のない変更は、いずれも本願と同じ発明発想を有し、全て本願の特許請求の範囲内に含まれる。