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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-138644(P2021-138644A)
(43)【公開日】2021年9月16日
(54)【発明の名称】ニトリル化合物を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 253/30 20060101AFI20210820BHJP
   C07C 255/33 20060101ALI20210820BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20210820BHJP
【FI】
   C07C253/30
   C07C255/33
   C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2020-36999(P2020-36999)
(22)【出願日】2020年3月4日
(71)【出願人】
【識別番号】000214272
【氏名又は名称】長瀬産業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100140578
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】大洞 康嗣
(72)【発明者】
【氏名】永田 達己
(72)【発明者】
【氏名】山本 嘉
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC25
4H006BA23
4H006BA25
4H006BB11
4H006BB15
4H006BC34
4H006BE12
4H006QN30
4H039CA19
4H039CL25
(57)【要約】      (修正有)
【課題】遷移金属を含み比較的容易に合成できる触媒を用いながら、遷移金属の量が少ない場合であっても、ニトリル化合物のα−アルキル化反応によってニトリル化合物を効率的に製造できる方法の提供。
【解決手段】式(1)で表されるニトリル含有基を有するニトリル化合物と、式(2)で表される第一級アルコール化合物とを、ルテニウムナノ粒子又はパラジウムナノ粒子のうち少なくとも一方の遷移金属ナノ粒子、塩基及び溶媒を含む反応液中で反応させ、それにより式(3)で表されるニトリル含有基を有するニトリル化合物を製造する方法。



【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
【化1】

で表されるニトリル含有基を有するニトリル化合物と、下記式(2):
【化2】

で表され、Rが置換基を有していてもよい芳香族基、置換基を有していてもよい脂肪族基、又は水素原子を示す、第一級アルコール化合物とを、ルテニウムナノ粒子又はパラジウムナノ粒子のうち少なくとも一方の遷移金属ナノ粒子、塩基及び溶媒を含む反応液中で反応させて、下記式(3):
【化3】

で表され、Rが式(2)中のRと同義である、ニトリル含有基を有する、炭素数が増加したニトリル化合物を生成させる工程を備え、
前記遷移金属ナノ粒子が、配位性有機溶媒を含む溶媒中で遷移金属化合物を加熱することにより生成する粒子である、
炭素数が増加したニトリル化合物を製造する方法。
【請求項2】
前記遷移金属ナノ粒子に含まれるルテニウム原子及びパラジウム原子の合計量が、前記第一級アルコール化合物の量に対して0.5モル%未満である、請求項1に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニトリル化合物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ニトリル化合物のα位の炭素原子をアルキル化するα−アルキル化反応は、種々のニトリル化合物の合成方法として有用である。ニトリル化合物のα−アルキル化反応としては、例えば遷移金属錯体を触媒として用いた方法が検討されている(例えば、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Borghs,J.C.,et al., J.Org.Chem.,2019, 84, 7927-7935
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、α−アルキル化反応の触媒として有効な遷移金属錯体の合成のためには、複雑な工程が必要とされることが多い。また、遷移金属の量が少ない場合であっても効率的に反応を行えることが望ましい。そこで、本発明は、遷移金属を含み比較的容易に合成できる触媒を用いながら、遷移金属の量が少ない場合であっても、ニトリル化合物のα−アルキル化反応によってニトリル化合物を効率的に製造できる方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面は、炭素数が増加したニトリル化合物を製造する方法に関する。当該方法は、下記式(1):
【化1】

で表されるニトリル含有基を有するニトリル化合物と、下記式(2):
【化2】

で表され、Rが置換基を有していてもよい芳香族基、置換基を有していてもよい脂肪族基、又は水素原子を示す、第一級アルコール化合物とを、ルテニウムナノ粒子又はパラジウムナノ粒子のうち少なくとも一方の遷移金属ナノ粒子、塩基及び溶媒を含む反応液中で反応させて、下記式(3):
【化3】

で表され、Rが式(1)中のRと同義である、ニトリル含有基を有する、炭素数が増加したニトリル化合物を生成させる工程を備える。前記遷移金属ナノ粒子は、配位性有機溶媒を含む溶媒中で遷移金属化合物を加熱することにより生成する粒子である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一側面に係る方法によれば、遷移金属を含み比較的容易に合成できる触媒を用いながら、遷移金属の量が少ない場合であっても、ニトリル化合物のα−アルキル化反応によってニトリル化合物を効率的に製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0008】
ニトリル化合物を製造する方法の一実施形態は、下記式(1)で表されるニトリル含有基を有する化合物と、下記式(2)で表される第一級アルコール化合物とを、ルテニウムナノ粒子又はパラジウムナノ粒子のうち少なくとも一方の遷移金属ナノ粒子、塩基及び溶媒を含む反応液中で反応させて、下記式(3)で表されるニトリル含有基を有するニトリル化合物を生成させる工程を備える。
【0009】
【化4】

【化5】

【化6】
【0010】
式(2)中のRは、置換基を有していてもよい芳香族基、置換基を有していてもよい脂肪族基、又は水素原子を示す。この反応は、式(1)中のシアノ基のα位の炭素原子をアルキル化するα−アルキル化反応により、炭素数が増加したニトリル化合物を生成するα−アルキル化反応である。
【0011】
出発物質として用いられるニトリル化合物は、1以上の式(1)のニトリル含有基を有する。ニトリル化合物が有する式(1)のニトリル含有基の数が、1〜4であってもよく、1であってもよい。式(1)のニトリル含有基以外の部分の構造は、α−アルキル化反応が進行できる限り、特に制限されない。ニトリル化合物が反応性の官能基を有する場合、その官能基が必要により保護基によって保護されていてもよい。
【0012】
式(1)のニトリル含有基を有する化合物が、下記式(10)で表されるニトリル化合物であってもよい。この場合、α−アルキル化反応により、下記式(30)で表されるニトリル化合物が生成する。
【化7】
【0013】
式(30)中のRは、式(2)中のRと同義である。Rは、置換基を有していてもよい脂肪族基、置換基を有していてもよい芳香族基、又は水素原子を示す。
【0014】
としての脂肪族基の炭素数は、1〜20であってもよい。脂肪族基は、直鎖状、分岐状、環状又はこれらの組み合わせを含む構造を有していてもよい。脂肪族基がメチル基、エチル基等のアルキル基であってもよい。Rが置換基を有する脂肪族基である場合、その置換基は、α−アルキル化反応が進行できる限り特に制限されないが、例えば置換基(アルキル基、アルコキシ基等)を有していてもよい芳香族基、アルコキシ基、又はアミノ基であってもよい。Rが置換基を有する芳香族基(例えばフェニル基)である場合、その置換基は、α−アルキル化反応が進行できる限り特に制限されないが、例えばアルキル基(メチル基等)、アルコキシ基(メトキシ基等)、ナフチル基、メチレンジオキシ基、又はトリフルオロメチル基であってもよい。
【0015】
式(10)のニトリル化合物の具体例としては、フェニルアセトニトリル、プロピオニトリル、ヘキサンニトリル、及びアセトニトリルが挙げられる。
【0016】
出発物質として用いられる式(2)の第一級アルコール化合物は、アリールメチルアルコール化合物、又は第一級脂肪族アルコール化合物である。Rとしての芳香族基はフェニル基であってもよい。Rが置換基を有する芳香族基である場合、その置換基は、α−アルキル化反応が進行できる限り特に制限されないが、例えばアルキル基(メチル基等)、アルコキシ基(メトキシ基等)、又はアミノ基であってもよい。Rとしての脂肪族基の炭素数は、1〜20、又は4〜18であってもよい。脂肪族基は、直鎖状、分岐状、環状又はこれらの組み合わせを含む構造を有していてもよい。脂肪族基がアルキル基であってもよい。Rが置換基を有する脂肪族基である場合、その置換基は、α−アルキル化反応が進行できる限り特に制限されないが、例えば置換基(アルキル基、アルコキシ基等)を有していてもよい芳香族基、アルコキシ基、ナフチル基、又はメチレンジオキシ基であってもよい。式(2)の第一級アルコール化合物の具体例としては、ベンジルアルコール、1−オクタノール、1−ヘキサノール、及び1−ブタノールが挙げられる。
【0017】
出発物質として用いられるニトリル化合物と第一級アルコール化合物との仕込み量の比は、特に制限されない。例えば、第一級アルコール化合物の仕込み量が、ニトリル化合物が有する式(1)のニトリル含有基1モルに対して0.2モル以上、0.3モル以上、1.0モル以上、2.0モル以上、又は2.5モル以上であってもよく、10モル以下であってもよい。
【0018】
金属触媒として用いられる遷移金属ナノ粒子は、ルテニウムナノ粒子又はパラジウムナノ粒子のうち少なくとも一方であってもよく、ルテニウムナノ粒子であってもよい。遷移金属ナノ粒子は、ナノサイズの粒径を有する粒子であり、金属クラスターの粒子であると考えられる。遷移金属ナノ粒子の平均粒子径は、例えば0.5〜4nmであり、2nm以下であってもよい。遷移金属ナノ粒子の粒子径は、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)の像において観察される遷移金属ナノ粒子の最大幅を意味する。
【0019】
この遷移金属ナノ粒子は、配位性有機溶媒を含む溶媒中で遷移金属化合物を加熱することにより生成する粒子であることができる。この方法により生成する遷移金属ナノ粒子の表面上に配位性有機溶媒が配置され、それにより遷移金属ナノ粒子が保護されていると考えられる。この遷移金属ナノ粒子は、例えば特開2011−12097号公報に記載された方法を参照して、合成することができる。
【0020】
遷移金属ナノ粒子を得るために用いられる遷移金属化合物は、例えば、遷移金属(ここではルテニウム又はパラジウム)のハロゲン化物、硫酸化物、又は硝酸化物であることができる。ルテニウムナノ粒子及びパラジウムナノ粒子は、配位性有機溶媒を含む溶媒中でルテニウム化合物又はパラジウム化合物を加熱することにより得ることができる。遷移金属ナノ粒子の前駆体として用いられるルテニウム化合物及びパラジウム化合物におけるルテニウム及びパラジウムの価数は、特に制限されない。
【0021】
遷移金属ナノ粒子を得るために用いられる配位性有機溶媒は、遷移金属に配位することが可能な有機溶媒である。配位性有機溶媒は、例えば、アミド系溶媒、アミン系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、ニトリル系溶媒、ニトロ系溶媒、スルホキシド系溶媒、又はこれらから選ばれる2種以上の組み合わせであることができる。アミド系溶媒の例としては、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、及びN−メチル−2−ピロリドン(NMP)等のカルボン酸アミド、並びに、ヘキサメチルホスホリックトリアミド(HMPA)等のリン酸アミドが挙げられる。アミン系溶媒の例としては、トリエチルアミン、ピリジン及びエタノールアミンが挙げられる。アルコール系溶媒の例としては、イソプロパノール、及びプロピレングリコールが挙げられる。エーテル系溶媒の例としては、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、及びテトラヒドロフラン(THF)が挙げられる。ケトン系溶媒の例としては、アセトン、及び2−ブタノンが挙げられる。エステル系溶媒の例としては、酢酸エチル、及び酢酸メチルが挙げられる。ニトリル系溶媒の例としては、アセトニトリルが挙げられる。ニトロ系溶媒の例としては、ニトロメタンが挙げられる。スルホキシド系溶媒の例としては、ジメチルスルホキシドが挙げられる。配位性有機溶媒は、アミド系溶媒であってもN,N−ジメチルホルムアミドであってもよい。
【0022】
配位性有機溶媒を含む溶媒中で遷移金属ナノ粒子が生成した後、得られた分散液から、配位性有機溶媒で保護された遷移金属ナノ粒子を取り出し、これをα−アルキル化反応のための触媒として用いることができる。あるいは、分散液をそのまま、又は必要により濃縮してから、α−アルキル化反応のための反応液に投入してもよい。
【0023】
本実施形態に係る方法によれば、ルテニウム原子及びパラジウム原子の量が比較的少量であっても、十分に反応を進行させることができる。そのため、遷移金属ナノ粒子に含まれるルテニウム原子及びパラジウム原子の合計量が、式(1)のニトリル含有基の量に対して、0.5モル%未満、0.4モル%以下、0.3モル%以下、又は0.2モル%以下であってもよく、0.01モル%以上、0.03モル%以上、又は0.05モル%以上であってもよい。
【0024】
α−アルキル化反応に用いられる塩基は、例えばアルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩、水酸化物を含んでいてもよい。塩基の例としては、炭酸セシウム、炭酸カリウム、及びカリウムtert−ブトキシドが挙げられる。塩基の量は、式(1)のニトリル含有基の量に対して、0.1〜50モル%であってもよい。
【0025】
α−アルキル化反応は、通常、ニトリル化合物、第一級アルコール化合物、遷移金属ナノ粒子、及び塩基を含む反応液中で行われる。反応液は溶媒を含んでもよい。溶媒は、例えば、ジグリム、メシチレン、トルエン、及びシクロペンチルメチルエーテルから選ばれる少なくとも一種の溶媒であることができる。反応基質の第一級アルコールを、大過剰の量で用いることにより、ニトリル化合物が溶解する溶媒として機能させてもよい。その場合、反応液に含まれる第一級アルコールの量が、反応液の質量を基準として、10〜200質量%であってもよい。
【0026】
α−アルキル化反応の反応温度(反応液の温度)は、例えば190℃以下、180℃以下、170℃以下、160℃以下、又は150℃以下であってもよく、40℃以上であってもよい。反応時間は、反応が十分に進行する範囲で調整すればよく、例えば16〜48時間であってもよい。α−アルキル化反応は、大気圧雰囲気下で行ってもよい。本実施形態に係る方法によれば、加圧を必要とすることなく、効率的に反応を進行させることができる。
【0027】
反応終了後、生成した式(3)のニトリル化合物を必要により通常の方法で精製することができる。反応終了後の反応液から遷移金属ナノ粒子を取り出し、これを再度反応に用いてもよい。
【0028】
生成した式(3)のニトリル化合物は、例えば、シアノ基を種々の官能基に変換すること等により、アミン化合物、アミド化合物又はカルボン酸化合物等の合成のために用いることができる。アミン化合物は、例えばニトリル化合物の還元反応により得ることができる。アミド化合物は、例えばニトリル化合物のリッター反応により得ることができる。カルボン酸化合物は、例えばニトリル化合物の加水分解により得ることができる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0030】
<検討1>
1−1.遷移金属ナノ粒子(M−NPs)の合成
ルテニウムナノ粒子(Ru−NPs)
サンプル管に1mmolの塩化ルテニウム(III)・n水和物、純水9mL及び塩酸1mLを加え、塩化ルテニウムが完全に溶解するまでサンプル管を静置して、前駆体溶液を得た。三口丸底フラスコに攪拌子を入れ、これらをN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)で共洗いした。共洗い後の三口丸底フラスコに、空気雰囲気下、50mLのDMFを量り入れた。フラスコ内のDMFを、140℃に加熱しながら、1500rpmで10分間攪拌した。続いて、フラスコに500μLの前駆体溶液を加え、140℃に加熱しながら、1500rpmで8時間、フラスコ内の反応液を攪拌し、DMF中に分散するルテニウムナノ粒子(Ru−NPs)を生成させた。
【0031】
その他の遷移金属ナノ粒子
塩化ルテニウムに代えて、塩化パラジウム又は塩化銅を用いたこと以外はルテニウムナノ粒子の合成と同様にして、パラジウムナノ粒子(Pd−NPs又は銅ナノ粒子(Cu−NPs)を含むM−NPs分散液を得た。
【0032】
1−2.ニトリル化合物のα−アルキル化反応
【化8】
【0033】
ルテニウムナノ粒子及びDMFを含むM−NPs分散液1mLをシュレンク管に加え、エバポレーターでDMFを留去した。ルテニウムナノ粒子が残ったシュレンク管に撹拌子を入れ、炭酸セシウム(0.05mmol)を加え、シュレンク管内をアルゴンで置換した。続いて、シュレンク管にフェニルアセトニトリル1(0.5mmоl)、ベンジルアルコール2a(1.5mmol)及びジグリム1mLを加えた。フェニルアセトニトリル1の量に対する、ルテニウムナノ粒子に含まれるルテニウム原子の割合は、0.2mol%であった。シュレンク管を再度アルゴンで置換してから密栓をした。シュレンク管内の反応液を150℃で24時間加熱した。反応液を冷却後、ジエチルエーテル(10mL)を加えて反応を停止させた。
遷移金属ナノ粒子をPd−NPs又はCu−NPsに変更したこと以外は上記と同様にして、ニトリル化合物のα−アルキル化反応を行った。
【0034】
反応液に内部基準物質としてペンタデカンを約0.04g加え、ガスクロマトグラフィーを用いた分析により、出発物質であるフェニルアセトニトリル1、ベンジルアルコール2aの消費率、及び生成物である、炭素数が増加したニトリル化合物3aの消費されたフェニルアセトニトリル1に対する収率を定量した。ガスクロマトグラフィーの分析では、各化合物について以下のα値を用いた。
ベンジルアルコール:α=1.39
フェニルアセトニトリル:α=1.13
生成物:α=1.1
【0035】
表1に、消費率及び収率の測定結果を示す。ルテニウムナノ粒子(Ru−NPs)又はパラジウムナノ粒子(Pd−NPs)を反応触媒として用いたα−アルキル化反応により、炭素数が増加したニトリル化合物が比較的高い収率で生成することが確認された。
【0036】
【表1】
【0037】
<検討2>
溶媒をジグリムからメシチレンに変更したこと以外は検討1の実施例1−1と同様の条件で反応を行った。出発物質であるフェニルアセトニトリル1、ベンジルアルコール2aの消費率、及び生成物3aの消費されたフェニルアセトニトリルに対する収率をガスクロマトグラフィーを用いた分析により求めた。結果を表2に示す。
【0038】
【表2】
【0039】
<検討3>
塩基を炭酸セシウム(CsCO)から炭酸カリウム(KCO)に変更したこと以外は検討1の実施例1−1と同様の条件で反応を行った。出発物質であるフェニルアセトニトリル1、ベンジルアルコール2aの消費率、及び生成物3aの消費されたフェニルアセトニトリルに対する収率をガスクロマトグラフィーを用いた分析により求めた。結果を表3に示す。
【0040】
【表3】
【0041】
<検討4>
フェニルアセトニトリル1及びベンジルアルコール2aの仕込み量を表4に示すように変更した以外は検討1の実施例1−1と同様の条件で反応を行った。出発物質であるフェニルアセトニトリル1、ベンジルアルコール2aの消費率、及び生成物3aの消費されたフェニルアセトニトリルに対する収率をガスクロマトグラフィーを用いた分析により求めた。結果を表4に示す。
【0042】
【表4】
【0043】
<検討5>
【化9】
【0044】
検討1と同様の手順及び仕込み量で、ルテニウムナノ粒子(Ru−NPs)及びDMFを含むRu−NPs分散液を準備した。得られたRu−NPs分散液1mLをシュレンク管に加え、エバポレーターでDMFを留去した。Ru−NPsが残ったシュレンク管に撹拌子を入れ、炭酸セシウム(0.05mmol)を加え、シュレンク管内をアルゴンで置換した。続いて、シュレンク管にフェニルアセトニトリル1(0.5mmоl)、及び1−オクタノール2b(1.5mmol)を加えた。フェニルアセトニトリル1の量に対する、Ru−NPsに含まれるルテニウム原子の割合は、0.2mol%であった。シュレンク管に撹拌子を入れ、再度アルゴンで置換してからシュレンク管を密栓した。シュレンク管内の反応液を150℃又は130℃で24時間加熱した。反応液を冷却後、ジエチルエーテル(10mL)を加えて反応を停止させた。出発物質であるフェニルアセトニトリル1の消費率、及び生成物3bの消費されたフェニルアセトニトリルに対する収率をガスクロマトグラフィーを用いた分析により求めた。結果を表5に示す。
【0045】
【表5】