【実施例】
【0042】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0043】
<細胞培養とin vitro増殖抑制アッセイ>
ヒト白血病由来細胞株(CCRF−CEM、Raji、TF−1、THP1、K562)の培養は、10% fetal bovine serum(Biosera)、Penicillin-Streptomycin(Sigma)、50μMの2−メルカプトエタノール(Sigma)を含むRPMI-1640 Medium(Nacalai)を用いて、37℃−5% CO
2の条件下で行った。なお、TF−1細胞の培養には、上記の培地にhuman GM-CSF(5 ng/mL, Peprotech)を添加した。
増殖抑制アッセイでは、まず、細胞を96 well plateに3,000 cells/wellになるように入れ、それぞれの化合物を段階希釈して添加した。3日間培養した後、Cell Counting Kit-8(Dojin)を添加し4時間培養し、TriStar LB941(Berthold)を用いて450nmの吸光度を測定することで、生存細胞数を比較定量した。
【0044】
<本発明に従う化合物の合成>
(1)機器分析、測定装置
・1H核磁気共鳴スペクトル(1H-NMR)
日本電子社製 ECA 500(500 MHz)を用いて測定し、「1H-NMR(測定周波数、測定溶媒) ケミカルシフト値(水素の数、多重度、スピン結合定数)」と記載した。ケミカルシフト値(δ)は、テトラメチルシラン(δ = 0)を内部基準とし、ppmで表記した。多重度は、s(単一線)、d(二重線)、t(三重線)、q(四重線)、m(多重線あるいは複雑に重なったシグナル)で表示し、幅広いシグナルについてはbrsと付記した。スピン結合定数(J)はHzで記載した。
【0045】
・13C核磁気共鳴スペクトル(13C-NMR)
日本電子社製ECA 500(125 MHz)を用いて測定し、「13C-NMR(測定周波数、測定溶媒) ケミカルシフト値(水素の数、多重度、スピン結合定数)」と記載した。ケミカルシフト値(δ)は、テトラメチルシラン(δ = 0)を内部基準とし、ppmで表記した。多重度は、s(単一線)、d(二重線)、t(三重線)、q(四重線)、m(多重線あるいは複雑に重なったシグナル)で表示した。
【0046】
・質量スペクトル(MS):エレクトロンスプレーイオン法(ESI)
日本電子社製JMS-T100LC型TOF質量分析計AccuTOFを用い、エレクトロンスプレーイオン化法(ESI)により測定した。なお、装置の設定は、脱溶媒ガス250℃、オリフィス1電圧80℃、ニードル電圧2000 V、リングレンズ電圧10 V、オリフィス1電圧85 V、オリフィス2電圧5 Vとした。サンプル送液は、インフュージョン法で行い、流速30 mL/minとした。「ESI-MS (M + 付加イオン) m/z 質量数」と記載した。
【0047】
(2)クロマトグラフィー
・分析用薄層クロマトグラフィー(TLC)
E. Merck社製のTLCプレート、シリカゲル60F254(Art. 5715)厚さ0.25 mmを用いた。TLC上の化合物の検出は、UV照射(254 nmあるいは365 nm)および発色剤に浸した後に加熱して発色させることによって行なった。発色剤としてはp−アニスアルデヒド(9.3 mL)と酢酸(3.8 mL)をエタノール(340 mL)に溶解し、濃硫酸(12.5 mL)を添加したものを用いた。
【0048】
・シリカゲルカラムクロマトグラフィー
関東化学株式会社製のシリカゲル60N(球状、中性、63-210μm)を用いて行い、「使用したシリカゲルの重さ、展開溶媒」と記載した。
【0049】
(3)基本操作
反応後の抽出溶液の乾燥は、飽和食塩水にて洗浄後、無水硫酸ナトリウムを加えることで行った。溶液の減圧濃縮は、アスピレーターの減圧下(20〜30 mmHg)、ロータリーエバポレーターを用いて行った。痕跡量の溶媒の除去は、液体窒素浴で冷却したトラップを装着させた真空ポンプ(約1 mmHg)を用いて行った。溶媒の混合比は、すべて体積比で表した。
【0050】
(4)溶媒
・蒸留水
アドバンテック東洋株式会社製GS-200型蒸留水製造装置を用いて、蒸留、及びイオン交換処理したものを使用した。
【0051】
・トルエン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル
関東化学株式会社製の有機合成用脱水溶媒、あるいは特級溶媒を、モレキュラーシーブス(4A)を用いて乾燥させて使用した。
【0052】
・NMR測定用溶媒
以下に示すものをそのまま用いた。
CDCl
3 : ISOTEC Inc.製 99.7 ATOM%D、0.03% TMS
【0053】
(構造式(II)の化合物、構造式(V)の化合物、及び構造式(VII)の化合物の合成)
構造式(II)の化合物、構造式(V)の化合物、及び構造式(VII)の化合物の合成経路は、以下の通りである。
【化8】
【0054】
市販のp−ブロモトルエン(1)(1400 mg, 8.19 mmol)と、N−ブロモスクシンイミド(1806 mg, 10.03 mmol)と、過酸化ベンゾイル(286.0 mg, 1.22 mmol)を四塩化炭素(25 mL)に溶解させた。この混合溶液をアルゴン雰囲気下において85℃で16時間加熱還流した。反応混合物をカラムクロマトグラフィー[シリカゲル 30.0g ; ヘキサン]で精製すると、ジブロモ体(2)(1781 mg, 7.13 mmol, 87%)が得られた。
【0055】
ジブロモ体(2)(4 g, 16 mmol)、トリフェニルホスフィン(6.29 g, 24 mmol)をo−キシレン(25 mL)に溶解させた。この溶液を150℃で2時間加熱還流した。反応混合物を氷冷し、再結晶を行ない、その後、この結晶をトルエン(5 mL)で洗浄し、リンイリド体(3)(7.93 g, 15.4 mmol, 96%)が得られた。
【0056】
ピロール−2−カルボキシアルデヒド(4)(475 mg, 5 mmol)を塩化メチレン(15 mL)に溶解させ、二炭酸ジ−tert−ブチル(3.3 mL, 10 mmol)とトリエチルアミン(2.4 mL, 17.5 mmol)を加え、5時間撹拌した。その後、この反応混合物を酢酸エチルで抽出し、濃縮した。濃縮後の残渣をカラムクロマトグラフィー[シリカゲル 25.4 g ; ヘキサン]で精製すると、Boc体(5)(120.1 mg, 4.6 mmol, 92%)が得られた。
【0057】
リンイリド体(3)(1.08 mg, 2.31 mmol)をTHF(モレキュラーシーブス5Aで簡易脱水)(15 mL)に溶解した。この溶液にNaH(121.6 mg, 3.04 mmol)を溶解させ、0℃まで冷却し、Boc体(5)(300 g, 1.54 mmol)を溶解させ、25時間撹拌した。その後中和し、酢酸エチルで抽出、濃縮を行った。濃縮後の残渣をカラムクロマトグラフィー[シリカゲル 87.2 g ; H:E = (10 : 1)]で精製すると、ブロモ体(6)(59.9 mg, 0.24 mmol, 16%)が得られた。
【0058】
−構造式(II)の化合物の合成−
ブロモ体(6)(200 mg, 0.806 mmol)をアセトニトリル(7 mL)に溶解させ、この溶液に酢酸パラジウム(1.8 mg, 0.008 mmol)、トリフェニルホスフィン(4.2 mg, 0.016 mmol)、トリエチルアミン(139μL, 1.01 mmol)、市販のHeck反応試薬エチルアクリレート(105μL, 0.967 mmol)を加え、90℃で5時間半加熱還流した。この反応混合物を自動分取クロマトグラフィー(Smart Flash EPCLC AI-580S, Silica Gel 30μm 60Å, ヘキサン:酢酸エチル = 7 : 1 → 2 : 1)で精製すると、目的とする構造式(II)の化合物(18.4 mg, 0.069 mmol, 19%)が得られた。生成物の同定結果は、以下の通りである。
【0059】
1H-NMR (500 MHz, CHLOROFORM-D) δ 8.37 (s, 1H), 7.66 (d, J = 16.0 Hz,1H), 7.48 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.42 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.03 (d, J = 16.6 Hz, 1H), 6.84 (m, 1H), 6.64 (d, J = 16.6 Hz, 1H), 6.41(comp., 2H), 6.26 (dd, J = 2.3, 5.8 Hz, 1H), 2.54 (q, J = 6.9 Hz, 2H), 1.34 (t, J = 6.9 Hz, 3H)
13C-NMR (500 MHz, CHLOROFORM-D) δ 167.29 (1C), 144.26 (1C), 139.74 (1C), 133.00 (1C), 130.67 (1C), 128.62 (2C), 126.24 (2C), 122.42 (1C), 120.34 (1C), 119.83 (1C), 117.43 (1C), 110.38 (1C), 110.12 (1C), 60.58 (1C), 14.44 (1C)
ESI-MS [M+H]
+ ; m/z 268.11
p-ESI-HRMS :
12C
191H
1614N
116O
2の計算値 290.11810 ; 実測値 290.11317 (M+H
+)
【0060】
−構造式(V)の化合物の合成−
ブロモ体(6)(50.0 mg, 0.20 mmol)をトルエン(1 mL)に溶解させ、この溶液にPd(PPh
3)
4(11.6 mg, 0.01 mmol)、2M 炭酸ナトリウム水溶液(1 mL)、鈴木カップリング試薬((OH)
2BPhCOOEt、36.3 mg, 0.22 mmol)を加え、110℃で2時間加熱還流した。この反応混合物を自動分取クロマトグラフィー(Smart Flash EPCLC AI-580S, Silica Gel 30μm 60Å, ヘキサン:酢酸エチル = 24 : 1 → 4 : 1)で精製すると、目的とする構造式(V)の化合物(12.6 mg, 0.040 mmol, 20%)が得られた。生成物の同定結果は、以下の通りである。
【0061】
1H-NMR (500 MHz, CHLOROFORM-D) δ 8.39 (s, 1H), 8.13-8.10 (m, 2H), 7.69-7.66 (m, 2H), 7.61-7.59 (m, 2H), 7.52-7.47 (m, 2H), 7.04 (d, J = 16.1 Hz, 1H), 6.85-6.83 (m, 1H), 6.70 (d, J = 16.1 Hz, 1H), 6.40-6.39 (m, 1H), 6.28-6.26 (m, 1H), 4.40 (q, J = 7.45 Hz, 2H), 1.41 (t, J = 7.45 Hz, 3H)
ESI-MS [M+Na]
+; m/z 340.11
p-ESI-HRMS :
12C
211H
1914N
123Na
116O
2の計算値 340.13135 ; 実測値 340.13530 (M+Na
+)
【0062】
−構造式(VII)の化合物の合成−
ブロモ体(6)(50.0 mg, 0.20 mmol)をトルエン(1 mL)に溶解させ、この溶液にPd(PPh
3)
4(11.6 mg, 0.01 mmol)、2M 炭酸ナトリウム水溶液(1 mL)、鈴木カップリング試薬((OH)
2BPhNMe
2、36.3 mg, 0.22 mmol)を加え、110℃で3時間加熱還流した。この反応混合物を自動分取クロマトグラフィー(Smart Flash EPCLC AI-580S, Silica Gel 30μm 60Å, ヘキサン:酢酸エチル = 24 : 1 → 4 : 1)で精製し、目的とする構造式(VII)の化合物(12.6 mg, 0.040 mmol, 20%)が得られた。生成物の同定結果は、以下の通りである。
【0063】
1H-NMR (500 MHz, CHLOROFORM-D) δ 8.37 (br, 1H), 7.54-7.52 (Comp., 4H), 7.46-7.44 (Comp., 2H), 6.98 (d, J = 16.6 Hz, 1H), 6.82-6.80 (Comp., 1H), 6.35 (m, 1H), 6.26-6.25 (m, 1H), 3.00 (s, 6H)
ESI-MS [M+Na]
+ ; m/z 311.24
p-ESI-HRMS :
12C
201H
2014N
223Na
1の計算値 311.15242 ; 実測値311.15080 (M+Na
+)
【0064】
(構造式(III)の化合物の合成)
構造式(III)の化合物の合成経路は、以下の通りである。
【化9】
【0065】
4−クロロピリジン N−オキサイド(10)(30 mg, 0.230 mmol)と硫酸銅五水和物(600 mg)を蒸留水(25 mL)に溶解し、この混合溶液を110 W水銀ランプに24時間照射させた。この反応混合溶液を、クロロホルムにて500 mLで6回抽出し、濃縮を行った。濃縮後の残渣をカラムクロマトグラフィー[シリカゲル 87.2 g ; C:M= (10 : 1)]で精製すると、ホルミル体(11)(13.8 mg, 0.110 mmol, 48 %)が得られた。
【0066】
ホルミル体(11)(1.09 g, 8.42 mmol)を塩化メチレン(10 mL)に溶解させ、二炭酸ジ−tert−ブチル(3.63 g, 16.9 mmol)とトリエチルアミン(4.09 ml, 29.5 mmol)を加え、24時間撹拌した。その後、この反応混合物をクロロホルムにて300 mLで3回抽出し、濃縮した。濃縮後の残渣をカラムクロマトグラフィー[シリカゲル 32.3 g ; ヘキサン]で精製すると、Boc体(12)(2.22 g, 9.96 mmol, 115%)が得られた。
【0067】
市販の(4−ブロモベンジル)トリフェニルホスホニウムブロマイド(4.01 g, 7.84 mmol)をCH
2Cl
2(アルミナで中和後、モレキュラーシーブス4Aで簡易脱水)(30 mL)に溶解した。この溶液にNaH(22 g, 0.56 mmol)を溶解させ、0℃まで冷却し、Boc体(12)(1.20 g, 5.23 mmol)を溶解させ、20時間撹拌した。その後、EtOH 10 mLで中和し、1M NaOH10 mLを滴下し、21時間攪拌した。その後、酢酸エチルで抽出、濃縮を行った。濃縮後の残渣を自動分取クロマトグラフィー(Smart Flash EPCLC AI-580S, Silica Gel 30μm 60Å, ヘキサン:酢酸エチル = 7 : 1 → 2 : 1)で精製すると、ブロモ体(13)(352.9 mg, 1.24 mmol, 30%)が得られた。
【0068】
ブロモ体(13)(302 mg, 1.2 mmol)をアセトニトリル(15 mL)に溶解させ、この溶液に酢酸パラジウム(2.37 mg, 0.012 mmol)、トリフェニルホスフィン(5.56 mg, 0.0232 mmol)、トリエチルアミン(183μL, 1.45mmol)、Heck反応試薬(138μL, 1.4mmol)を加え、90℃で14時間加熱還流した。この反応混合物を自動分取クロマトグラフィー(Smart Flash EPCLC AI-580S, Silica Gel 30μm 60Å, ヘキサン:酢酸エチル = 7 : 1 → 2 : 1)で精製すると、目的とする構造式(III)の化合物(33.0 mg, 0.11 mmol, 22%)が得られた。生成物の同定結果は、以下の通りである。
【0069】
1H-NMR (500 MHz, CHLOROFORM-D) δ 8.30 (s, 1H), 7.66 (d, J = 16.0 Hz,1H), 7.50-7.49 (m, 2H), 7.46-7.45 (m, 2H), 7.09 (d, J = 16.6 Hz, 1H), 6.76-6.75 (m, 1H), 6.66 (d, J = 16.6 Hz, 1H), 6.42 (d, J = 15.5 Hz, 1H), 6.22-6.21 (m, 1H), 4.26 (q, J = 6.9 Hz, 2H), 1.33 (t, J = 6.9 Hz, 3H)
13C-NMR (500 MHz, CHLOROFORM-D) δ 167.19 (1C), 144.12 (1C), 139.28 (1C), 133.43 (1C), 128.63 (1C), 126.47 (2C), 126.18 (2C), 123.20 (1C), 119.04 (1C), 117.73 (1C), 116.87 (1C), 114.01 (1C), 110.68 (1C), 60.59 (1C), 14.44 (1C)
ESI-MS [M+Na]
+ ; m/z 324.05, ESI-MS [M+H]
+ ;m/z 302.07
p-ESI-HRMS :
12C
171H
1735Cl
114N
116O
2の計算値 302.09478 ; 実測値 302.09740 (M+H
+)
【0070】
(構造式(IV)の化合物の合成)
構造式(IV)の化合物の合成経路は、以下の通りである。
【化10】
【0071】
市販のピロール−2−カルボキシアルデヒド(4)(97.1 mg, 1 mmol)、(トリフェニルホスホラニリデン)アセトニトリル(621 mg, 2 mmol)をトルエン(モレキュラーシーブス4Aで簡易脱水)(5 mL)に溶解させた。この溶液を110℃で1時間加熱還流した。反応混合物をカラムクロマトグラフィー[シリカゲル 30.0 g ; ヘキサン:酢酸エチル (2 : 1)]で精製するとニトリル体(15)(120.1 mg, 1.0 mmol, 100%)が得られた。
【0072】
ニトリル体(15)(118 mg, 1 mmol)を脱水テトラヒドロフラン(14 mL)に溶解し、アルゴン雰囲気下とした。この溶液を氷浴し、1.0 M 水素化ジイソブチルアルミニウム−トルエン溶液(3 mL)を滴下し、そのまま30分間撹拌した。その後この反応混合物に十分量のアセトン、水を加え過剰の還元剤を分解した。さらにこの混合溶液に飽和酒石酸カリウムナトリウム水溶液と酢酸エチルを十分量加え、一晩攪拌した。その後、酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。その後カラムクロマトグラフィー[シリカゲル 30.0 g ; ヘキサン:酢酸エチル (2 : 1)]で精製するとこれにより、ホルミル体(16)(121 mg, 0.98 mmol, 98%)が得られた。
【0073】
ホルミル体(16)(615 mg, 5.00 mmol)を塩化メチレン(15 mL)に溶解させ、二炭酸ジ−tert−ブチル(2.18 g, 10.1 mmol)とトリエチルアミン(4.43 ml, 17.5 mmol)を加え、24時間撹拌した。その後、この反応混合物をクロロホルムにて300 mLで3回抽出し、濃縮した。濃縮後の残渣をカラムクロマトグラフィー[シリカゲル 32.3 g ; ヘキサン]で精製するとBoc体(17)(1.12 g, 4.85 mmol, 97%)が得られた。
【0074】
市販の(4−ブロモベンジル)トリフェニルホスホニウムブロマイド(1.55 g, 3.05 mmol)をCH
2Cl
2(アルミナで中和後、モレキュラーシーブス4Aで簡易脱水)(20 mL)に溶解した。この溶液にNaH(161.6 mg, 4.07 mmol)を溶解させ、0℃まで冷却し、Boc体(17)(500 mg, 2.02 mmol)を溶解させ、16時間撹拌した。その後、EtOH 10 mLで中和し、1M NaOH 2 mLを加え、21時間攪拌した。その後、酢酸エチルで抽出、濃縮を行った。濃縮後の残渣を自動分取クロマトグラフィー(Smart Flash EPCLC AI-580S, Silica Gel 30μm 60Å, ヘキサン:酢酸エチル = 100 : 0 → 81 : 19)で精製すると、ブロモ体(18)(352.9 mg, 1.28 mmol, 63%)が得られた。
【0075】
ブロモ体(18)(500 mg, 1.82 mmol)をアセトニトリル(15 mL)に溶解させ、この溶液に酢酸パラジウム(4.08 mg, 0.018 mmol)、トリフェニルホスフィン(9.55 mg, 0.036 mmol)、トリエチルアミン(314μL, 2.28 mmol)、Heck反応試薬(238μL, 2.18 mmol)を加え、90℃で24時間加熱還流した。この反応混合物を自動分取クロマトグラフィー(Smart Flash EPCLC AI-580S, Silica Gel 30μm 60Å, ヘキサン:酢酸エチル = 7 : 1 → 2 : 1)で精製すると、目的とする構造式(IV)の化合物(38.2 mg, 0.13 mmol, %)が得られた(原料回収130.7 mg, 0.47 mmol)。生成物の同定結果は、以下の通りである。
【0076】
1H-NMR (500 MHz, CHLOROFORM-D) δ 8.28 (s, 1H), 7.65 (d, J = 16.05 Hz,1H), 7.47-7.44 (m, 2H), 7.40-7.39 (m, 2H), 6.94 (dd, J = 15.5, 9.15 Hz, 1H), 6.82-6.91 (m, 1H), 6.60-6.50 (Comp., 3H), 6.41 (d, J = 16.0 Hz, 1H), 6.33 (m , 1H), 6.25-6.23 (m, 1H), 4.27 (q, J = 7.45 Hz, 2H), 1.34 (t, J = 6.9 Hz, 3H)
ESI-MS [M+H]
+ ; m/z 294.12, [M+Na]
+ ;m/z 316.09
p-ESI-HRMS :
12C
191H
1914N
123Na
116O
2の計算値 316.13135 ; 実測値 316.12994 (M+Na
+)
【0077】
(構造式(VI)の化合物の合成)
構造式(VI)の化合物の合成経路は、以下の通りである。
【化11】
【0078】
市販の2−ブロモ−5−メチルピリジン(20)(2.01 g, 12.0 mmol)と、N−ブロモスクシンイミド(2.09 g, 11.6 mmol)と、過酸化ベンゾイル(422 mg, 1.80 mmol)を四塩化炭素(30 mL)に溶解させた。この混合溶液をアルゴン雰囲気下において85℃で24時間加熱還流した。反応混合物を自動分取クロマトグラフィー(Smart Flash EPCLC AI-580S, Silica Gel 30μm 60Å, ヘキサン:酢酸エチル = 21 : 4 → 63 : 37)で精製するとジブロモ体(21)(1847 mg, 7.37 mmol, 63%)が得られた。
【0079】
ブロモ体(21)(100 mg, 0.40 mmol)、トリフェニルホスフィン(156.8 g, 0.60 mmol)をo−キシレン(10 mL)に溶解させた。この溶液を150℃で2時間加熱還流した。反応混合物を氷冷し、再結晶を行ない、その後、この結晶をトルエン(5 mL)で洗浄し、リンイリド体(22)粗生成物(118 g)が得られた。
【0080】
一方、「構造式(II)の化合物、構造式(V)の化合物、及び構造式(VII)の化合物の合成」の項に記載の方法で、ピロール−2−カルボキシアルデヒド(4)から、Boc体(5)を合成した。
【0081】
リンイリド体(22)(2.91 g, 6.75 mmol)を塩化メチレン(モレキュラーシーブス5Aで簡易脱水)(30 mL)に溶解した。この溶液にNaH(360 mg, 9.11 mmol)を溶解させ、0℃まで冷却し、Boc体(5)(880 mg, 4.50 mmol)を溶解させ、24時間撹拌した。その後、EtOH 10 mLで中和し、1M NaOH10 mLを滴下し、21時間攪拌した。そして酢酸エチルで抽出、濃縮を行った。濃縮後の残渣を自動分取クロマトグラフィー(Smart Flash EPCLC AI-580S, Silica Gel 30μm 60Å, ヘキサン:酢酸エチル = 19 : 1 → 37 : 13)で精製すると、ブロモ体(23)(218.3 mg, 0.88 mmol, 19%)が得られた。
【0082】
ブロモ体(23)(50.0 mg, 0.20 mmol)をトルエン(1 mL)に溶解させ、この溶液にPd(PPh
3)
4(11.6 mg, 0.01 mmol)、2M 炭酸ナトリウム水溶液(1 mL)、鈴木カップリング試薬(36.3 mg, 0.22 mmol)を加え、110℃で2時間加熱還流した。この反応混合物を自動分取クロマトグラフィー(Smart Flash EPCLC AI-580S, Silica Gel 30μm 60Å, ヘキサン:酢酸エチル =23 : 2 → 71 : 29)で精製すると、目的とする構造式(VI)の化合物(4.2 mg, 0.0013 mmol, 11%)が得られた(原料回収 19.8 mg 0.79mmol回収)。生成物の同定結果は、以下の通りである。
【0083】
1H-NMR (500 MHz, CHLOROFORM-D) δ 8.72 (d, J = 2.3 Hz, 1H), 8.62 (s, 1H), 8.15-8.12 (m, 2H), 8.09-8.07 (m, 2H), 7.84 (dd, J = 2.3, 8.1 Hz, 1H), 7.76 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 7.09 (d, J = 16.6 Hz, 1H), 6.87-6.86 (m, 1H), 6.67 (d, J = 16.7 Hz, 1H), 6.44 (m, 1H), 6.29-6.27 (m, 1H)4.41 (q, J = 6.9 Hz, 2H), 1.42 (t, J = 7.5 Hz, 3H)
ESI-MS [M+Na]
+; m/z, 341.12, ESI-MS [M+H]
+ ;m/z 319.13
p-ESI-HRMS :
12C
201H
1814N
223Na
116O
2の計算値 341.13 ; 実測値 341.13 (M+H
+)
【0084】
(構造式(VIII)の化合物の合成)
構造式(VIII)の化合物の合成経路は、以下の通りである。
【化12】
【0085】
市販の4−シアノベンジルブロマイド(25)(4.66 g)、トリフェニルホスフィン(6.72 g, 25.6 mmol)をo−キシレン(30 mL)に溶解させた。この溶液を150℃で1時間加熱還流した。反応混合物を氷冷し、再結晶を行ない、その後この結晶をトルエン(5 mL)で洗浄し、リンイリド体(26)粗生成物(5.10 g)が得られた。
【0086】
一方、「構造式(II)の化合物、構造式(V)の化合物、及び構造式(VII)の化合物の合成」の項に記載の方法で、ピロール−2−カルボキシアルデヒド(4)から、Boc体(5)を合成した。
【0087】
リンイリド体(26)(4.11 g, 8.93 mmol)を塩化メチレン(モレキュラーシーブス5Aで簡易脱水)(30 mL)に溶解した。この溶液にNaH(464.1 mg, 11.6 mmol)を溶解させ、0℃まで冷却し、Boc体(5)(1.22 g, 5.80 mmol)を溶解させ、18時間撹拌した。その後、EtOH 20 mLで中和し、1M NaOH 2 mLを滴下し、21時間攪拌した。そして酢酸エチルで抽出、濃縮を行った。濃縮後の残渣を自動分取クロマトグラフィー(Smart Flash EPCLC AI-580S, Silica Gel 30μm 60Å, ヘキサン:酢酸エチル = 83 : 17 → 31 : 19)で精製すると、ニトリル体(27)(113.1 mg, 0.51 mmol, 9.1%)が得られた。
【0088】
ニトリル体(27)(86.2 mg, 0.39 mmol)を脱水トルエン(5 mL)に溶解し、アルゴン雰囲気下とした。この溶液を氷浴し、1.0 M 水素化ジイソブチルアルミニウム−トルエン溶液(1.1 mL)を滴下し、そのまま2時間撹拌した。その後、この反応混合物に十分量のアセトン、水を加え過剰の還元剤を分解した。さらにこの混合溶液に飽和酒石酸カリウムナトリウム水溶液と酢酸エチルを十分量加え、一晩攪拌した。その後、酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。その後カラムクロマトグラフィー[シリカゲル 58.4 g ; ヘキサン:酢酸エチル (3 : 1)]で精製することにより、ホルミル体(28)(86.0 mg, 0.38 mmol, 97.4%)が得られた。
【0089】
ホルミル体(28)(30.0 mg, 0.13 mmol)、(カルベトキシエチリデン)トリフェニルホスホラン(156.6 mg, 0.39 mmol)をトルエン(モレキュラーシーブス4Aで簡易脱水)(7 mL)に溶解させた。この溶液を110℃で26時間加熱還流した。反応混合物を自動分取クロマトグラフィー(Smart Flash EPCLC AI-580S, Silica Gel 30μm 60Å, ヘキサン:酢酸エチル = 23 : 2 → 71 : 29)で精製すると、目的とする構造式(VIII)の化合物(10.8 mg, 0.038 mmol, 25.6%)が得られた。生成物の同定結果は、以下の通りである。
【0090】
1H-NMR (500 MHz, CHLOROFORM-D) δ 8.38 (br, 1H), 7.66 (s, 1H), 7.44 (d, J= 8.6 Hz, 2H), 7.39 (d, J= 8.6 Hz, 2H), 7.03 (d, J= 16.6 Hz, 1H), 6.85-6.84 (m, 1H), 6.66 (d, J= 16.6 Hz, 1H), 6.39 (m, 1H), 6.27-6.26 (m, 1H), 4.28 (d, J= 7.5 Hz, 2H), 2.16-2.16 (m, 1H), 1.35 (d, J= 7.4 Hz, 3H)
13C-NMR (500 MHz, CHLOROFORM-D) δ 168.88 (1C), 138.40 (1C), 137.71 (1C), 134.60 (1C), 130.75 (1C), 130.36 (2C), 128.08 (1C), 125.78 (2C), 122.64 (1C), 119.85 (1C), 119.60 (1C), 110.32 (1C), 109.83 (1C), 60.96 (1C), 14.45 (1C), 14.36 (1C)
ESI-MS [M+H]
+ ; m/z 282.14070
p-ESI-HRMS :
12C
181H
2014N
116O
2の計算値 282.14940 ; 実測値 282.14492 (M+H
+)
【0091】
<結果と考察>
上記のようにして、ポリエン部分の異性化と酸化を防ぐ目的で、C=C結合の中央に各種の6員環を挿入した7種類の化合物を合成した。これらの化合物に対して、CCRF−CEM(T−ALL由来)、Raji(Bリンフォーマ由来)、TF−1(AML−M6由来)、THP1(AML−M5由来)、K562[ヒト慢性骨髄性白血病(chronic myeloid leukemia:CML)由来]細胞株を用いて、in vitro増殖抑制活性を測定した。結果を
図1〜
図7に示す。
【0092】
図1〜
図7から、構造式(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)又は(VIII)で表される化合物は、低濃度でLhx2感受性のヒトT−ALL細胞株CCRF−CEMの増殖を阻害し、同一濃度ではLhx2抵抗性のヒトBリンフォーマ細胞株Rajiの増殖に影響を与えないとの基準を満たしており、天然化合物であるAuxarconjugatin B及びRumbrinと同様の傾向を有することが分かる。
【0093】
より詳細には、構造式(II)の化合物は、CCRF−CEMとTF−1の増殖を低濃度で抑制した。IC
50値は、CCRF−CEMに対しては1.5μMであり、TF−1に対しては0.74μMであった(
図1)。また、構造式(II)の化合物は、Raji、THP1、K562の増殖も2.4〜6.7μMのIC
50値で抑制した。
【0094】
構造式(III)の化合物は、構造式(II)の化合物のピロール部分を塩素化した化合物であり、構造式(a)の化合物のC=C結合間にベンゼン環を挿入した構造を有している。構造式(III)の化合物は、CCRF−CEMとTF−1に対するIC
50値がそれぞれ2.0μMと0.36μMであり、構造式(II)の化合物とほぼ同程度であった(
図2)。
【0095】
構造式(IV)の化合物は、構造式(II)の化合物のピロール部分側のC=C結合を1個増やした化合物である。構造式(IV)の化合物は、Raji以外の白血病細胞株の増殖を1μM以下の低濃度で抑制し、特に、CCRF−CEM、TF−1、THP1に対するIC
50値が、それぞれ0.13μM、0.074μM、0.30μMと良好であった(
図3)。
【0096】
構造式(V)の化合物は、構造式(II)の化合物のC=C結合間にベンゼン環をもう1個挿入した化合物である。構造式(V)の化合物は、CCRF−CEM、TF−1、K562に対するIC
50値がそれぞれ0.77μM、0.35μM、4.9μMであり、目標基準を満たしていた(
図4)。
【0097】
構造式(VI)の化合物は、構造式(V)の化合物のベンゼン環の一方をピリジン環に置き換えた化合物である。構造式(VI)の化合物は、CCRF−CEMとTF−1に対するIC
50値がそれぞれ0.56μMと0.71μMであり、THP1とK562の増殖も3.2〜8.0μMのIC
50値で抑制した(
図5)。
【0098】
構造式(VII)の化合物は、構造式(II)の化合物のエステル末端をアミノ基と置換した化合物である。構造式(VII)の化合物は、CCRF−CEMとTF−1に対するIC
50値がそれぞれ1.4μM、0.16μMであり、目標基準を満たしていた(
図6)。
【0099】
構造式(VIII)の化合物は、構造式(II)の化合物のエステル末端にメチル基を導入した化合物である。構造式(VIII)の化合物は、CCRF−CEMとTF−1の増殖を、それぞれ0.95μMと0.46μMのIC
50値で抑制した(
図7)。
【0100】
以上のin vitro実験結果から判断すると、T−ALL/AML選択的な増殖抑制活性という点からは、構造式(III)の化合物が最も優れていた。構造式(III)の化合物は、構造式(a)の化合物より体内安定性が高いものと考えられ、T−ALL、及びM5/M6タイプのAMLに対する治療薬として有望である。