特開2021-138672(P2021-138672A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新日本理化株式会社の特許一覧

特開2021-138672樹脂中での分散性の改良されたポリオレフィン系樹脂用の結晶核剤、及び該結晶核剤を含むポリオレフィン系樹脂組成物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-138672(P2021-138672A)
(43)【公開日】2021年9月16日
(54)【発明の名称】樹脂中での分散性の改良されたポリオレフィン系樹脂用の結晶核剤、及び該結晶核剤を含むポリオレフィン系樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C07C 61/08 20060101AFI20210820BHJP
   C08L 23/02 20060101ALI20210820BHJP
   C08K 5/092 20060101ALI20210820BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20210820BHJP
   C07C 61/22 20060101ALI20210820BHJP
【FI】
   C07C61/08CSP
   C08L23/02
   C08K5/092
   C08K5/098
   C07C61/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2020-40389(P2020-40389)
(22)【出願日】2020年3月10日
(71)【出願人】
【識別番号】000191250
【氏名又は名称】新日本理化株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岩崎祥平
(72)【発明者】
【氏名】松本和也
(72)【発明者】
【氏名】篠田佑里恵
(72)【発明者】
【氏名】太田元博
(72)【発明者】
【氏名】宮崎謙一
【テーマコード(参考)】
4H006
4J002
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AB48
4J002BB121
4J002EG096
4J002FD206
4J002GC00
4J002GG00
4J002GM00
4J002GQ00
4J002HA09
(57)【要約】
【課題】本発明は、ポリオレフィン系樹脂用の結晶核剤としての本質的な性能である結晶性の改善効果に非常に優れた、即ち、ポリオレフィン系樹脂に配合することによりポリオレフィン系樹脂の結晶化速度を著しく向上することのできる結晶核剤の樹脂中での分散性を改善することを目的とし、更には該結晶核剤を配合してなる優れた性能を有するポリオレフィン系樹脂組成物並びに該樹脂組成物を原料とするポリオレフィン系樹脂成形体を提供することを目的とする。
【解決手段】 特定の構造からなる脂環式ジカルボン酸の金属塩を含み、更に該脂環式ジカルボン酸の金属塩中の水和物の割合が特定の範囲であり、更に特定の割合の結晶水を含むことにより、ポリオレフィン系樹脂中での分散性が大きく向上し、成形加工条件に影響されることなく、安定して上記結晶核剤としての性能を発揮させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂中での分散性の改良されたポリオレフィン系樹脂用の結晶核剤であって、
下記一般式(1)又は一般式(2)で示される脂環式ジカルボン酸の金属塩を含み、且つ、
前記脂環式ジカルボン酸の金属塩の全量又は一部が結晶水を有する水和物であることを特徴とするポリオレフィン系樹脂用の結晶核剤。
【化1】
[式中、Rは、同一又は異なって、炭素数1〜4のアルキル基を表し、aは1〜5の整数を表し、Mはカルシウムイオン、ヒドロキシアルミニウムイオン、ナトリウムイオン又はリチウムイオンを表し、Mがカルシウムイオン又はヒドロキシアルミニウムイオンの場合、bは2であり、cは1を示し、Mがナトリウムイオン又はリチウムイオンの場合、bは1であり、cは2を示す。]
【化2】
[式中、Rは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、dは1〜5の整数を表し、Mはヒドロキシアルミニウムイオン、ナトリウムイオン又はリチウムイオンを表し、Mがヒドロキシアルミニウムイオンの場合、eは2であり、fは1を示し、Mがナトリウムイオン又はリチウムイオンの場合、eは1であり、fは2を示す。]
【請求項2】
前記脂環式ジカルボン酸の金属塩中に占める水和物の割合が、脂環式ジカルボン酸の金属塩全体に対して10質量%以上であり、更に、
前記脂環式ジカルボン酸の金属塩中に含まれる結晶水の割合が、0.5質量%以上である、請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂用の結晶核剤。
【請求項3】
前記水和物が、一水和物である、請求項1又は2に記載のポリオレフィン系樹脂用の結晶核剤。
【請求項4】
脂環式ジカルボン酸の金属塩中に占める水和物の割合が、脂環式ジカルボン酸の金属塩全体に対して30質量%以上であり、且つ、
脂環式ジカルボン酸の金属塩中に含まれる結晶水の割合が、1.5質量%以上である、請求項2又は3に記載のポリオレフィン系樹脂用の結晶核剤。
【請求項5】
脂環式ジカルボン酸の金属塩が、下記一般式(1)で示される脂環式ジカルボン酸の金属塩である、請求項1〜4の何れかに記載のポリオレフィン系樹脂用の結晶核剤。
【化3】
[式中、Rは、同一又は異なって、炭素数1〜4のアルキル基を表し、aは1〜5の整数を表し、Mはカルシウムイオン、ヒドロキシアルミニウムイオン、ナトリウムイオン又はリチウムイオンを表し、Mがカルシウムイオン又はヒドロキシアルミニウムイオンの場合、bは2であり、cは1を示し、Mがナトリウムイオン又はリチウムイオンの場合、bは1であり、cは2を示す。]
【請求項6】
前項における一般式(1)中のRが、メチル基又はtert−ブチル基であり、aが1又は2であり、更に、その置換位置が3位又は4位である、請求項5に記載の結晶核剤。
【請求項7】
核磁気共鳴分光分析で測定したシクロヘキサン環を介したR基と金属塩を構成するオキシカルボニル基の立体異性体中、シス異性体の比率(モル比)が、70%以上である、請求項5又は6に記載のポリオレフィン系樹脂用の結晶核剤。
【請求項8】
脂環式ジカルボン酸の金属塩が、下記一般式(2)で示される脂環式ジカルボン酸の金属塩である、請求項1〜4の何れかに記載のポリオレフィン系樹脂用の結晶核剤。
【化4】
[式中、Rは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、dは1〜5の整数を表し、Mはヒドロキシアルミニウムイオン、ナトリウムイオン又はリチウムイオンを表し、Mがヒドロキシアルミニウムイオンの場合、eは2であり、fは1を示し、Mがナトリウムイオン又はリチウムイオンの場合、eは1であり、fは2を示す。]
【請求項9】
前項における一般式(2)中の2つのオキシカルボニル基が、シス配置である、請求項8に記載のポリオレフィン系樹脂用の結晶核剤。
【請求項10】
がヒドロキシアルミニウムイオンである、請求項8又は9に記載のポリオレフィン系樹脂用の結晶核剤。
【請求項11】
請求項1〜10の何れかに記載されたポリオレフィン系樹脂用の結晶核剤を含むことを特徴とするポリオレフィン系樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1〜11の何れかに記載されたポリオレフィン系樹脂用の結晶核剤と、分子中に少なくとも1個の水酸基を有していても良い炭素数12〜22の飽和又は不飽和脂肪酸の金属塩とを含んでなり、前記分子中に少なくとも1個の水酸基を有していても良い炭素数12〜22の飽和又は不飽和脂肪酸の金属塩を形成する金属種が、リチウム、マグネシウム、アルミニウム又は亜鉛であるポリオレフィン系樹脂用の結晶核剤組成物。
【請求項13】
請求項12に記載されたポリオレフィン系樹脂用の結晶核剤組成物を含むことを特徴とするポリオレフィン系樹脂組成物。
【請求項14】
請求項11又は13に記載されたポリオレフィン系樹脂組成物を原料とするポリオレフィン系樹脂成形体。
【請求項15】
下記一般式(1)又は一般式(2)で示される脂環式ジカルボン酸の金属塩を含んでなるポリオレフィン系樹脂用の結晶核剤の樹脂中での分散性の改良方法であって、
前記脂環式ジカルボン酸の金属塩中に占める水和物の割合が、脂環式ジカルボン酸の金属塩全体に対して10質量%以上であり、且つ、
前記脂環式ジカルボン酸の金属塩中に含まれる結晶水の割合が、0.5質量%以上であることを特徴とする樹脂中での分散性の改良方法。
【化5】
[式中、Rは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、aは1〜5の整数を表し、Mはカルシウムイオン、ヒドロキシアルミニウムイオン、ナトリウムイオン又はリチウムイオンを表し、Mがカルシウムイオン又はヒドロキシアルミニウムイオンの場合、bは2であり、cは1を示し、Mがナトリウムイオン又はリチウムイオンの場合、bは1であり、cは2を示す。]
【化6】
[式中、Rは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、dは1〜5の整数を表し、Mはヒドロキシアルミニウムイオン、ナトリウムイオン又はリチウムイオンを表し、Mがヒドロキシアルミニウムイオンの場合、eは2であり、fは1を示し、Mがナトリウムイオン又はリチウムイオンの場合、eは1であり、fは2を示す。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂中での分散性の改良されたポリオレフィン系樹脂用の結晶核剤としての本質的な性能である結晶性の改善効果に非常に優れたポリオレフィン系樹脂用の結晶核剤に関するものであり、詳しくは、結晶性の改善効果に優れた特定の構造からなる脂環式ジカルボン酸の金属塩を含み、更に該脂環式ジカルボン酸の金属塩中の水和物の割合が特定の範囲であり、更に特定の割合の結晶水を含むことにより、ポリオレフィン系樹脂中での分散性が大きく向上し、成形加工条件に影響されることなく、安定して上記結晶核剤としての性能をより一層発揮させることのできるポリオレフィン系樹脂用の結晶核剤、更には該結晶核剤を含んでなるポリオレフィン系樹脂組成物並びに該樹脂組成物を原料とするポリオレフィン系樹脂成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂は、安価でバランスの良い性能を有し、汎用のプラスチックとして様々な用途で使用されている。また、一般的に結晶性の樹脂の場合、その結晶性を改良することにより、例えば、成形加工性を改善することや得られた成形品の機械的特性や熱的特性、光学的特性を向上することが可能であることが広く知られており、ポリオレフィン系樹脂の場合も同様である。
【0003】
樹脂の結晶性を改良する方法には、樹脂の構造・組成を制御する方法も広く検討されており、実際に実用化されているが、添加剤を配合する方法が、簡易でより実用的な方法として広く用いられている。結晶核剤は、樹脂の結晶性を改良することのできる代表的な添加剤であり、これまでも様々な検討がなされ、タルク等の無機化合物、ジアセタール化合物、リン酸エステルの金属塩、カルボン酸やスルホン酸の金属塩等有機化合物などの結晶核剤が様々な結晶性の樹脂で検討され、実用化されている。
【0004】
上記結晶核剤のなかでも、カルボン酸の金属塩が優れた核剤効果を有することが古くから知られており、代表的なものとしては、安息香酸のナトリウム塩やp−tert−ブチル安息香酸のヒドロキシアルミニウム塩などが挙げられ、様々な用途で広く使われてきた(特許文献1、2、非特許文献1、2)。
【0005】
また、最近では、ヘキサヒドロフタル酸や水添ナジック酸のカルシウム塩やナトリウム塩などの脂環式カルボン酸の金属塩が、熱可塑性樹脂の結晶核剤として優れた効果を有することは報告されている(特許文献3〜7)。
【0006】
近年、様々な用途で、コスト削減や軽量化等の目的でプラスチックへの切り替えが進んでおり、なかでもポリオレフィン系樹脂は安価でかつ軽量であることより最も有用な材料として注目されている。その中でも、自動車用途は、最近の環境問題より低燃費化の要求が強く、最もポリオレフィン系樹脂の使用が進んでいる分野であり、最近では小型部材にとどまらず、大型部材にもポリオレフィン系樹脂が使われるようになっており、その様な分野では、これまでに知られている結晶核剤による結晶性の改善では、成形加工性の改善や機械的特性の改善の面で必ずしも十分とは言えず、更なる結晶性の改善が望まれている。
【0007】
また、上記自動車部材の中でもバンパー等の安全性に係る部材では、優れた剛性や強度等の機械的特性が必要であり、ポリオレフィン系樹脂単独で十分な機械的特性を得ることが難しく、タルク等の充填剤を配合する処方が一般的である。近年、上述の様に軽量化の要求が強く、充填剤の配合量を可能な限り少なくする傾向が一般的となってきている。しかし、充填剤の配合量を少なくすると機械的特性等の性能低下は避けられず、その改善が大きな課題であった。上述の通り、結晶核剤は、ポリオレフィン系樹脂の成形加工性や機械的特性を向上することが可能であり、上記の機械的特性等の性能低下を結晶核剤の配合で補うことが検討され、実際に使われている。しかし、従来の結晶核剤の多くは、充填剤との併用系では十分な効果を発揮することが難しく、近年益々厳しくなってきている軽量化の要求に対応することが難しいのが現状である。従って、タルク等の充填剤との併用系で優れた効果を発揮する結晶核剤の開発が強く望まれている。
【0008】
一方、上記カルボン酸の金属塩やリン酸エステルの金属塩などの金属塩系の結晶核剤の多くは、樹脂で溶解せず、分散状態で使われる所謂分散タイプの核剤であり、樹脂中での分散性が、結晶核剤としての性能に大きく影響することが知られている。一般的に樹脂中での分散性は結晶核剤の粒子が小さいほど、良好であると言われているが、上記結晶核剤の多くは二次凝集性を有しており、粒子が小さくなると二次凝集し易くなるため、粒子形状だけでは十分に樹脂中での分散性を改良することが困難であった。
【0009】
また、樹脂中での分散性の改良方法として、他の添加剤を併用する方法もこれまで多く検討されてきたが、結晶核剤としての本来の性能を損なう懸念があり、更に、用途によっては使うことのできる添加剤に制限があり、できれば添加剤を使わずに樹脂中での分散性を改良する方法が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第3207737号明細書
【特許文献2】米国特許第3207739号明細書
【特許文献3】特表2004−525227号公報
【特許文献4】特表2004−524417号公報
【特許文献5】特表2004−531613号公報
【特許文献6】特表2007−509196号公報
【特許文献7】特開2012−97268号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】J.Appl.Poly.Sci.,11,673−685(1967)
【非特許文献2】Polymer,11(5)、253−267(1970)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、樹脂中での分散性を改良することにより、ポリオレフィン系樹脂中での分散性が大きく向上し、成形加工条件に影響されることなく、安定して上記結晶核剤としての性能をより一層発揮させることのできるポリオレフィン系樹脂用の結晶核剤、及び該結晶核剤を含んでなるポリオレフィン系樹脂組成物並びに該樹脂組成物を原料とするポリオレフィン系樹脂成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上述の状況に鑑み、これまでにポリオレフィン系樹脂用の結晶核剤としての本質的な性能である結晶性の改善効果に非常に優れた結晶核剤の開発を続けてきた。その結果、特定の構造の脂環式ジカルボン酸の金属塩が、脂環式ジカルボン酸の金属塩を含めた従来公知の結晶核剤に比べて、結晶性の改善効果、特に結晶化速度の向上に非常に優れた効果を示すことを確認し、報告した(特願2018−149657、特願2019−165288)。
【0014】
本発明者らは、上記結果に満足することなく、更に上記課題を解決すべく、鋭意検討した結果、上記脂環式ジカルボン酸の金属塩中の水和物の割合を特定の範囲に制御し、更に特定の割合の結晶水を含ませることにより、ポリオレフィン系樹脂中での分散性が大きく向上し、結晶性の改善効果が更に向上するだけでなく、成形加工条件に影響されることなく、安定して上記結晶核剤としての性能を発揮させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
即ち、本発明は以下に示す樹脂中での分散性の改良されたポリオレフィン系樹脂用の結晶核剤としての本質的な性能である結晶性の改善効果に非常に優れたポリオレフィン系樹脂用の結晶核剤、及び該結晶核剤を含んでなるポリオレフィン系樹脂組成物並びに該樹脂組成物を原料とするポリオレフィン系樹脂成形体を提供するものである。
【0016】
[項1] 樹脂中での分散性の改良されたポリオレフィン系樹脂用の結晶核剤であって、
下記一般式(1)又は一般式(2)で示される脂環式ジカルボン酸の金属塩を含み、且つ、
前記脂環式ジカルボン酸の金属塩の全量又は一部が結晶水を有する水和物であることを特徴とするポリオレフィン系樹脂用の結晶核剤。
【化1】
[式中、Rは、同一又は異なって、炭素数1〜4のアルキル基を表し、aは1〜5の整数を表し、Mはカルシウムイオン、ヒドロキシアルミニウムイオン、ナトリウムイオン又はリチウムイオンを表し、Mがカルシウムイオン又はヒドロキシアルミニウムイオンの場合、bは2であり、cは1を示し、Mがナトリウムイオン又はリチウムイオンの場合、bは1であり、cは2を示す。]
【化2】
[式中、Rは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、dは1〜5の整数を表し、Mはヒドロキシアルミニウムイオン、ナトリウムイオン又はリチウムイオンを表し、Mがヒドロキシアルミニウムイオンの場合、eは2であり、fは1を示し、Mがナトリウムイオン又はリチウムイオンの場合、eは1であり、fは2を示す。]
【0017】
[項2] 前記脂環式ジカルボン酸の金属塩中に占める水和物の割合が、脂環式ジカルボン酸の金属塩全体に対して10質量%以上であり、更に、
前記脂環式ジカルボン酸の金属塩中に含まれる結晶水の割合が、0.5質量%以上である、[項1]に記載のポリオレフィン系樹脂用の結晶核剤。
【0018】
[項3] 脂環式ジカルボン酸の金属塩中に占める水和物の割合が、脂環式ジカルボン酸の金属塩全体に対して30質量%以上であり、且つ、脂環式ジカルボン酸の金属塩中に含まれる結晶水の割合が、1.5質量%以上である、[項1]又は[項2]に記載のポリオレフィン系樹脂用の結晶核剤。
【0019】
[項4] 脂環式ジカルボン酸の金属塩中に占める水和物の割合が、脂環式ジカルボン酸の金属塩全体に対して50質量%以上であり、且つ、脂環式ジカルボン酸の金属塩中に含まれる結晶水の割合が、2.5質量%以上である、[項2]に記載のポリオレフィン系樹脂用の結晶核剤。
【0020】
[項5] 脂環式ジカルボン酸の金属塩中に占める水和物の割合が、脂環式ジカルボン酸の金属塩全体に対して70質量%以上であり、且つ、脂環式ジカルボン酸の金属塩中に含まれる結晶水の割合が、3.5質量以上である、[項2]に記載のポリオレフィン系樹脂用の結晶核剤。
【0021】
[項6] 脂環式ジカルボン酸の金属塩中に占める水和物の割合が、脂環式ジカルボン酸の金属塩全体に対して90質量%以上であり、且つ、脂環式ジカルボン酸の金属塩中に含まれる結晶水の割合が、4.5質量%以上である、[項2]に記載のポリオレフィン系樹脂用の結晶核剤。
【0022】
[項7] 前記水和物が、一水和物である、[項1]〜[項6]の何れかに記載のポリオレフィン系樹脂用の結晶核剤。
【0023】
[項8] 脂環式ジカルボン酸の金属塩が、下記一般式(1)で示される脂環式ジカルボン酸の金属塩である、[項1]〜[項7]の何れかに記載のポリオレフィン系樹脂用の結晶核剤。
【化3】
[式中、Rは、同一又は異なって、炭素数1〜4のアルキル基を表し、aは1〜5の整数を表し、Mはカルシウムイオン、ヒドロキシアルミニウムイオン、ナトリウムイオン又はリチウムイオンを表し、Mがカルシウムイオン又はヒドロキシアルミニウムイオンの場合、bは2であり、cは1を示し、Mがナトリウムイオン又はリチウムイオンの場合、bは1であり、cは2を示す。]
【0024】
[項9] 前項における一般式(1)中のRが、メチル基又はtert−ブチル基であり、aが1又は2であり、更に、その置換位置が3位又は4位である、[項8]に記載の結晶核剤組成物。
【0025】
[項10] 核磁気共鳴分光分析で測定したシクロヘキサン環を介したR基と金属塩を構成するオキシカルボニル基の立体異性体中、シス異性体の比率(モル比)が、70%以上である[項9]又は[項10]に記載のポリオレフィン系樹脂用の結晶核剤。
【0026】
[項11] 脂環式ジカルボン酸の金属塩が、下記一般式(2)で示される脂環式ジカルボン酸の金属塩である、[項1]〜[項7]の何れかに記載のポリオレフィン系樹脂用の結晶核剤。
【化4】
[式中、Rは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、dは1〜5の整数を表し、Mはヒドロキシアルミニウムイオン、ナトリウムイオン又はリチウムイオンを表し、Mがヒドロキシアルミニウムイオンの場合、eは2であり、fは1を示し、Mがナトリウムイオン又はリチウムイオンの場合、eは1であり、fは2を示す。]
【0027】
[項12] 前項における一般式(2)中の2つのオキシカルボニル基が、シス配置である、[項11]に記載のポリオレフィン系樹脂用の結晶核剤。
【0028】
[項13] Mがヒドロキシアルミニウムイオンである、[項11]又は[項12]に記載のポリオレフィン系樹脂用の結晶核剤。
【0029】
[項14] [項1]〜[項13]の何れかに記載されたポリオレフィン系樹脂用の結晶核剤を含むことを特徴とするポリオレフィン系樹脂組成物。
【0030】
[項15] ポリオレフィン系樹脂用の結晶核剤の含有量が、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して0.001〜10質量部である、[項14]に記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
【0031】
[項16] [項1]〜[項13]の何れかに記載されたポリオレフィン系樹脂用の結晶核剤と、分子中に少なくとも1個の水酸基を有していても良い炭素数12〜22の飽和又は不飽和脂肪酸の金属塩とを含んでなり、前記分子中に少なくとも1個の水酸基を有していても良い炭素数12〜22の飽和又は不飽和脂肪酸の金属塩を形成する金属種が、リチウム、マグネシウム、アルミニウム又は亜鉛であるポリオレフィン系樹脂用の結晶核剤組成物。
【0032】
[項17] 前項におけるポリオレフィン系樹脂用の結晶核剤と脂肪酸の金属塩との比率が、結晶核剤/脂肪酸の金属塩=5/1〜1/4の範囲である、[項16]に記載のポリオレフィン系樹脂用の結晶核剤組成物。
【0033】
[項18] [項16]又は[項17]に記載されたポリオレフィン系樹脂用の結晶核剤組成物を含むことを特徴とするポリオレフィン系樹脂組成物。
【0034】
[項19] ポリオレフィン系樹脂用の結晶核剤組成物の含有量が、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して0.001〜10質量部である、[項18]に記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
【0035】
[項20] [項14]、[項15]、[項18]又は[項19]に記載されたポリオレフィン系樹脂組成物を原料とするポリオレフィン系樹脂成形体。
【0036】
[項21] 下記一般式(1)又は一般式(2)で示される脂環式ジカルボン酸の金属塩を含んでなるポリオレフィン系樹脂用の結晶核剤の樹脂中での分散性の改良方法であって、前記脂環式ジカルボン酸の金属塩中に占める水和物の割合が、脂環式ジカルボン酸の金属塩全体に対して10質量%以上であり、且つ、前記脂環式ジカルボン酸の金属塩中に含まれる結晶水の割合が、0.5質量%以上であることを特徴とする樹脂中での分散性の改良方法。
【化5】
[式中、Rは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、aは1〜5の整数を表し、Mはカルシウムイオン、ヒドロキシアルミニウムイオン、ナトリウムイオン又はリチウムイオンを表し、Mがカルシウムイオン又はヒドロキシアルミニウムイオンの場合、bは2であり、cは1を示し、Mがナトリウムイオン又はリチウムイオンの場合、bは1であり、cは2を示す。]
【化6】
[式中、Rは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、dは1〜5の整数を表し、Mはヒドロキシアルミニウムイオン、ナトリウムイオン又はリチウムイオンを表し、Mがヒドロキシアルミニウムイオンの場合、eは2であり、fは1を示し、Mがナトリウムイオン又はリチウムイオンの場合、eは1であり、fは2を示す。]
【発明の効果】
【0037】
本発明の結晶核剤又は結晶核剤組成物をポリオレフィン系樹脂に配合することにより、成形加工条件等に影響されることなく、安定してポリオレフィン系樹脂の結晶化速度、即ち結晶化温度を著しく向上することができる。その結果、特に大型部材等における成形サイクルが大きく短縮され、コストダウンや加工時のトラブル防止等に非常に有効である。更に、結晶性を改善することにより、得られた成形品の剛性等の機械的性能、透明性等の光学的性能、耐熱性等の熱的性能が向上するだけでなく、ひけやそりが少なくなり、複雑な形状の成形品も安定して製造可能となる。更に、本発明の結晶核剤はタルク等の充填剤との併用系でもその効果が低減することなく、優れた効果を発揮することが可能である。特に、本発明の結晶核剤又は結晶核剤組成物は、上述の通り成形加工条件等の影響はなく、安定して目的の性能が容易に得られるようになり、今後これまで以上に様々な用途での開発が期待される。
【発明を実施するための形態】
【0038】
<ポリオレフィン系樹脂用結晶核剤>
本発明のポリオレフィン系樹脂用結晶核剤は、特定の構造の脂環式ジカルボン酸の金属塩を含み、且つ、前記脂環式ジカルボン酸の金属塩の全量又は一部が水和物であり、且つ、前記脂環式ジカルボン酸が結晶水を含むことを特徴とし、好ましくは前記脂環式ジカルボン酸の金属塩中に占める水和物の割合、及び前記脂環式ジカルボン酸の金属塩中に含まれる結晶水の割合が、特定の範囲であることを特徴とする。
【0039】
脂環式ジカルボン酸の金属塩
本発明の脂環式ジカルボン酸の金属塩は、下記一般式(1)又は一般式(2)で示される脂環式ジカルボン酸の金属塩であることを特徴とする。
【化7】
[式中、Rは、同一又は異なって、炭素数1〜4のアルキル基を表し、aは1〜5の整数を示し、Mはカルシウムイオン、ヒドロキシアルミニウムイオン、ナトリウムイオン又はリチウムイオンを表し、Mがカルシウムイオン又はヒドロキシアルミニウムイオンの場合、bは2であり、cは1を示し、Mがナトリウムイオン又はリチウムイオンの場合、bは1であり、cは2を示す。]
【化8】
[式中、Rは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、dは1〜5の整数を表し、Mはヒドロキシアルミニウムイオン、ナトリウムイオン又はリチウムイオンを表し、Mがヒドロキシアルミニウムイオンの場合、eは2であり、fは1を示し、Mがナトリウムイオン又はリチウムイオンの場合、eは1であり、fは2を示す。]
【0040】
上記一般式(1)で示される脂環式ジカルボン酸の金属塩は、下記一般式(3)で示される脂環式ジカルボン酸又はその無水物と金属酸化物、金属水酸化物、又は金属塩化物などを水系で反応させることにより、容易に製造することができる。
【化9】
[式中、Rは、同一又は異なって、炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を表し、aは1〜5の整数を示す。]
【0041】
一般式(3)におけるRは、炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。中でも、メチル基やtert−ブチル基が、結晶化の改善効果の観点等より、特に推奨される。
【0042】
一般式(3)におけるRの置換位置は、3位又は4位であることが好ましく、どちらの位置に置換されていても良いが、特に好ましい置換位置は、置換されているアルキル基と金属塩を形成する金属種の種類により、適宜選択される。
【0043】
上記一般式(1)で示される脂環式ジカルボン酸の金属塩を形成する金属種は、カルシウム、アルミニウム、ナトリウム及びリチウムからなる群より選ばれた一種であり、中でも、結晶性改善効果の観点より、カルシウム又はナトリウムであることがより好ましい。
【0044】
上記一般式(1)で示される脂環式ジカルボン酸の金属塩の具体的な態様としては、例えば、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸の二ナトリウム塩、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸のカルシウム塩、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸のヒドロキシアルミニウム塩、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸の二リチウム塩、3−エチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸の二ナトリウム塩、3−エチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸のカルシウム塩、3−エチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸のヒドロキシアルミニウム塩、3−エチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸の二リチウム塩、3−n−プロピルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸の二ナトリウム塩、3−n−プロピルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸のカルシウム塩、3−n−プロピルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸のヒドロキシアルミニウム塩、3−n−プロピルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸の二リチウム塩、3−イソプロピルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸の二ナトリウム塩、3−イソプロピルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸のカルシウム塩、3−イソプロピルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸のヒドロキシアルミニウム塩、3−イソプロピルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸の二リチウム塩、3−n−ブチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸の二ナトリウム塩、3−n−ブチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸のカルシウム塩、3−n−ブチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸のヒドロキシアルミニウム塩、3−n−ブチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸の二リチウム塩、3−tert−ブチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸の二ナトリウムの塩、3−tert−ブチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸のカルシウム塩、3−tert−ブチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸のヒドロキシアルミニウム塩、3−tert−ブチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸の二リチウム塩、3−イソブチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸の二ナトリウム塩、3−イソブチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸のカルシウム塩、3−イソブチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸のヒドロキシアルミニウム塩、3−イソブチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸の二リチウム塩、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸の二ナトリウム塩、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸のカルシウム塩、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸のヒドロキシアルミニウム塩、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸の二リチウム塩、4−エチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸の二ナトリウム塩、4−エチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸のカルシウム塩、4−エチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸のヒドロキシアルミニウム塩、4−エチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸の二リチウム塩、4−n−プロピルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸の二ナトリウム塩、4−n−プロピルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸のカルシウム塩、4−n−プロピルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸のヒドロキシアルミニウム塩、4−n−プロピルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸の二リチウム塩、4−イソプロピルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸の二ナトリウム塩、4−イソプロピルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸のカルシウム塩、4−イソプロピルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸のヒドロキシアルミニウム塩、4−イソプロピルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸の二リチウム塩、4−n−ブチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸の二ナトリウム塩、4−n−ブチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸のカルシウム塩、4−n−ブチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸のヒドロキシアルミニウム塩、4−n−ブチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸の二リチウム塩、4−tert−ブチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸の二ナトリウム塩、4−tert−ブチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸のカルシウム塩、4−tert−ブチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸のヒドロキシアルミニウム塩、4−tert−ブチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸の二リチウム塩、4−イソブチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸の二ナトリウム塩、4−イソブチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸のカルシウム塩、4−イソブチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸のヒドロキシアルミニウム塩、4−イソブチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸の二リチウム塩などが例示され、中でも好ましい態様としては、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸の二ナトリウム塩、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸のカルシウム塩、4−tert−ブチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸のカルシウム塩などが挙げられる。
【0045】
上記一般式(1)で示される脂環式ジカルボン酸の金属塩には、シクロヘキサン環を介したアルキル置換基と金属塩を構成するオキシカルボニル基が同方向を向いているシス異性体とそれ以外の立体異性体が存在するが、本発明においては、本発明の効果を奏する限り、その異性体の構造に依存するものではないが、結晶性改善の効果の観点より、シス異性体がリッチであることが望ましく、例えば、上記立体異性体中、シス異性体の比率(モル比)が、70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上であることが推奨される。
【0046】
また、上記一般式(1)で示される脂環式ジカルボン酸の金属塩には、金属塩を構成する2つのオキシカルボニル基が同方向を向いているシス異性体と異方向を向いているトランス異性体の2種類の立体異性体が存在するが、本発明においては、本発明の効果を奏する限り、その異性体の構造に依存するものではなく、シス異性体、トランス異性体及びその混合物の何れであっても良いが、結晶性改善の効果の観点より、シス異性体がリッチであることが望ましく、例えば、上記立体異性体中、シス異性体の比率(モル比)が、70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上であることが推奨される。
【0047】
上記一般式(2)で示される脂環式ジカルボン酸の金属塩は、下記一般式(4)で示される脂環式ジカルボン酸又はその無水物と金属酸化物、金属水酸化物、又は金属塩化物などを水系で反応させることにより、容易に製造することができる。
【化10】
[式中、Rは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、dは1〜5の整数を示す。]
【0048】
上記一般式(4)で示される脂環式ジカルボン酸としては、置換基のないシクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸が実用面や性能面で好ましいが、シクロヘキセン環上に1個以上の炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が置換されていてもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等のアルキル基が置換されたシクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸などが例示される。
【0049】
また、上記一般式(4)で示される脂環式ジカルボン酸には、2つのオキシカルボニル基が同方向を向いているシス配置と異方向を向いているトランス配置の2種類の立体異性体が存在する場合があるが、本発明においては、本発明の効果を奏する限り、その異性体の構造に依存するものではなく、シス配置、トランス配置及びその混合物の何れであっても良いが、結晶化促進効果の観点より、シス配置であることが望ましい。
【0050】
上記一般式(2)で示される脂環式ジカルボン酸の金属塩を形成する金属種は、ヒドロキシアルミニウム、ナトリウム及びリチウムからなる群より選ばれた1種又は2種以上の金属種であり、中でも、結晶性改善効果の観点より、ヒドロキシアルミニウムであることが最も好ましい。
【0051】
上記一般式(2)で示される脂環式ジカルボン酸の金属塩の具体的な態様としては、例えば、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸のヒドロキシアルミニウム塩、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸の二ナトリウム塩、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸の二リチウム塩、3−メチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸の二ナトリウム塩、3−メチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸のヒドロキシアルミニウム塩、3−メチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸の二リチウム塩、3−エチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸の二ナトリウム塩、3−エチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸のヒドロキシアルミニウム塩、3−エチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸の二リチウム塩、3−n−プロピル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸の二ナトリウム塩、3−n−プロピル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸のヒドロキシアルミニウム塩、3−n−プロピル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸の二リチウム塩、3−イソプロピル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸の二ナトリウム塩、3−イソプロピル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸のヒドロキシアルミニウム塩、3−イソプロピル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸の二リチウム塩、3−n−ブチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸の二ナトリウム塩、3−n−ブチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸のヒドロキシアルミニウム塩、3−n−ブチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸の二リチウム塩、3−tert−ブチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸の二ナトリウムの塩、3−tert−ブチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸のヒドロキシアルミニウム塩、3−tert−ブチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸の二リチウム塩、3−イソブチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸の二ナトリウムの塩、3−イソブチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸のヒドロキシアルミニウム塩、3−イソブチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸の二リチウム塩、4−メチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸の二ナトリウム塩、4−メチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸のヒドロキシアルミニウム塩、4−メチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸の二リチウム塩、4−エチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸の二ナトリウム塩、4−エチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸のヒドロキシアルミニウム塩、4−エチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸の二リチウム塩、4−n−プロピル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸の二ナトリウム塩、4−n−プロピル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸のヒドロキシアルミニウム塩、4−n−プロピル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸の二リチウム塩、4−イソプロピル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸の二ナトリウム塩、4−イソプロピル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸のヒドロキシアルミニウム塩、4−イソプロピル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸の二リチウム塩、4−n−ブチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸の二ナトリウム塩、4−n−ブチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸のヒドロキシアルミニウム塩、4−n−ブチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸の二リチウム塩、4−tert−ブチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸の二ナトリウム塩、4−tert−ブチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸のヒドロキシアルミニウム塩、4−tert−ブチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸の二リチウム塩、4−イソブチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸の二ナトリウム塩、4−イソブチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸のヒドロキシアルミニウム塩、4−イソブチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸の二リチウム塩などが例示され、中でも好ましい態様としては、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸のヒドロキシアルミニウム塩、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸の二リチウム塩、3−メチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸のヒドロキシアルミニウム塩、3−メチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸の二リチウム塩などが挙げられ、特に4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸のヒドロキシアルミニウム塩が最も推奨される。
【0052】
上記一般式(1)又は一般式(2)で示される脂環式ジカルボン酸の金属塩の粒子形状は、本発明の効果を奏する限り、特に制限はないが、上記脂環式ジカルボン酸の金属塩が、分散タイプである場合、二次凝集により樹脂中での分散性が悪化しない程度に粒子の大きさが小さいほど、樹脂との接触面が広くなり、より少量で、より優れた結晶核剤としての性能を発揮できる可能性がある。従って、結晶化促進性能の観点より、レーザー回折式粒度分布測定により求めた粒径の平均値が、100μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは20μm以下、特に好ましくは10μm以下であることが推奨される。また、分散性の観点より、上述の通り、レーザー回折式粒度分布測定により求めた粒径の平均値が、0.01μm以上、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上であることが推奨される。
【0053】
前記脂環式ジカルボン酸の金属塩中に占める水和物の割合
上記の通り、本発明のポリオレフィン系樹脂用の結晶核剤は、該結晶核剤に含まれる脂環式ジカルボン酸の金属塩の全量又は一部が水和物であることを特徴とし、その脂環式ジカルボン酸の金属塩中に占める水和物の割合は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、特に好ましくは70質量%以上、最も好ましくは90質量%以上であることを大きな特徴とする。上記水和物の割合を上記範囲にすることにより、本発明の最大の特徴である樹脂中での分散性をより一層改善することが可能となる。
【0054】
本発明における水和物とは、結晶水を持つ金属塩を意味し、結晶水の数により一水和物、二水和物などが存在する。また、本発明の場合、上述の通り、水または水分を含んだ溶媒から結晶化が行われるため、結晶格子の中に水を取り込まれた状態で存在するものと推測される。また、本発明の水和物も、一般的な水和物と同様に100℃以上の温度をかけることにより徐々に消失されるものである。
【0055】
前記脂環式ジカルボン酸の金属塩中に含まれる結晶水の割合
本発明のポリオレフィン系樹脂用の結晶核剤は、該結晶核剤中に含まれる脂環式ジカルボン酸の金属塩中に結晶水を含むことを特徴とし、その脂環式ジカルボン酸中に含まれる結晶水の割合は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上、更に好ましくは2.5質量%以上、特に好ましくは3.5質量%以上、最も好ましくは4.5質量%以上であることをもう一つの大きな特徴とする。上記結晶水の割合を上記範囲にすることにより、本発明の最大の特徴である樹脂中での分散性をより一層改善することが可能となる。
【0056】
本発明のポリオレフィン系樹脂用の結晶核剤に中に含まれる脂環式ジカルボン酸の金属塩の全量又は一部が水和物であり、且つ結晶水を含むことにより樹脂中での分散性が著しく改善されるメカニズムは定かではないが、顕微鏡観察等より上記範囲の水和物及び結晶水を含むものは、ポリオレフィン系樹脂の加工温度まで加熱することにより結晶核剤を形成する脂環式ジカルボン酸の金属塩の結晶中に内包されていた結晶水に揮発しようとする強い力が働き、結果溶融樹脂中で上記脂環式ジカルボン酸の金属塩が破砕されて微細化し、樹脂中に分散される結果、結晶核剤の樹脂中での分散性が著しく改善されたものと推測されている。
【0057】
また、上記脂環式ジカルボン酸中に含まれる水和物及び結晶水の割合は、例えば、水系で金属塩を合成し、得られた湿結を乾燥する工程で、温度と圧力を適宜調整することにより容易に制御することが可能である。即ち、水系で脂環式ジカルボン酸の金属塩を合成することによりその湿結中に含まれる脂環式ジカルボン酸の金属塩は100%水和物となることが確認されており、湿結中に含まれる前記水和物中の結晶水は加熱することにより容易に蒸散して無水の脂環式ジカルボン酸の金属塩に変化することが確認されており、乾燥時に温度と圧力を適宜調整することにより目標の水和物及び結晶水の割合になるように制御することができる。
【0058】
<ポリオレフィン系樹脂用の結晶核剤組成物>
本発明のポリオレフィン系樹脂用の結晶核剤組成物は、本発明に係る上記ポリオレフィン系樹脂用の結晶核剤と、分子中に少なくとも1個の水酸基を有していても良い炭素数12〜22の飽和又は不飽和脂肪酸の金属塩とを含んでなることを特徴とする。
【0059】
脂肪酸の金属塩
上記の結晶核剤組成物に用いられる脂肪酸の金属塩としては、上記分散性の改善効果等の観点より、分子中に少なくとも1個の水酸基を有していても良い炭素数12〜22の飽和又は不飽和脂肪酸の金属塩であることが推奨される。
【0060】
上記ポリオレフィン系樹脂用の結晶核剤と、上記分子中に少なくとも1個の水酸基を有していても良い炭素数12〜22の飽和又は不飽和脂肪酸の金属塩とを含んでなるポリオレフィン系樹脂用の結晶核剤組成物もまた、本発明の一態様である。
【0061】
上記分子中に少なくとも1個の水酸基を有していても良い炭素数12〜22の飽和又は不飽和脂肪酸の金属塩を構成する脂肪酸としては、具体的には、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、エルカ酸等が挙げられる。これらの中でもラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸又はベヘン酸が推奨され、特にステアリン酸又は12−ヒドロキシステアリン酸が最も推奨される。
【0062】
また、上記分子中に少なくとも1個の水酸基を有していても良い炭素数12〜22の飽和又は不飽和脂肪酸の金属塩を形成する金属種としては、具体的に、リチウム、マグネシウム、バリウム、ナトリウム、アルミニウム、カリウム、ストロンチウム、亜鉛等が挙げられる。これらの中でもリチウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛が推奨され、特にリチウム、亜鉛が最も推奨される。
【0063】
<ポリオレフィン系樹脂組成物>
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、本発明に係る上記ポリオレフィン系樹脂用の結晶核剤又は結晶核剤組成物とポリオレフィン系樹脂とを、必要に応じてその他のポリオレフィン系樹脂用添加剤を加えて、室温にてドライブレンド後、所定の条件にて溶融混合することにより、容易に得ることができる。
【0064】
ポリオレフィン系樹脂中の本発明に係るポリオレフィン系樹脂用の結晶核剤組成物の含有量は、結晶核剤としての効果を奏する限り、特に制約はないが、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、好ましくは0.001〜10質量部、より好ましくは0.01〜5質量部であることが好ましい。
【0065】
[ポリオレフィン系樹脂]
上記ポリオレフィン系樹脂としては、本発明の効果を奏する限り特に限定されることなく、従来公知のポリオレフィン系樹脂が使用可能であり、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂などが例示される。より具体的には、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、エチレン含量50質量%以上、好ましくは70質量%以上のエチレンコポリマー、プロピレンホモポリマー、プロピレン50質量%以上、好ましくは70質量%以上のプロピレンコポリマー、ブテンホモポリマー、ブテン含量50質量%以上、好ましくは70質量%以上のブテンコポリマー、メチルペンテンホモポリマー、メチルペンテン含量50質量%以上、好ましくは70質量%以上のメチルペンテンコポリマー、ポリブタジエン等が例示される。また、上記コポリマーはランダムコポリマーであってもよく、ブロックコポリマーであってもよい。更に、これらの樹脂の立体規則性がある場合は、アイソタクチックでもシンジオタクチックでもよい。上記コポリマーを構成し得るコモノマーとして、具体的にはエチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセン等の炭素数2〜12のα−オレフィン、1,4−エンドメチレンシクロヘキセン等のビシクロ型モノマー、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル等が例示される。
【0066】
かかる重合体を製造するために適用される触媒としては、一般に使用されているチーグラー・ナッタ型触媒はもちろん、遷移金属化合物(例えば、三塩化チタン、四塩化チタン等のチタンのハロゲン化物)を塩化マグネシウム等のハロゲン化マグネシウムを主成分とする担体に担持してなる触媒と、アルキルアルミニウム化合物(トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド等)とを組み合わせてなる触媒系、メタロセン触媒等も使用できる。
【0067】
本発明に係るポリオレフィン系樹脂のメルトフローレート(以下「MFR」と略記する。JIS K 7210−1999)は、その適用する成形方法により適宜選択されるが、通常0.01〜200g/10分程度、好ましくは0.05〜100g/10分程度が推奨される。
【0068】
[その他の添加剤]
また、上述の通り、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物には、その使用目的やその用途に応じて、本発明の効果を損なわない範囲でその他のポリオレフィン系樹脂用添加剤が含まれていてもよい。
【0069】
上記ポリオレフィン系樹脂用添加剤としては、例えば、ポリオレフィン等衛生協議会編「ポジティブリストの添加剤要覧」(2004年9月)に記載されている各種添加剤が挙げられる。具体的には、蛍光増白剤(2,5−チオフェンジイル(5−t−ブチル−1,3−ベンゾキサゾール)、4,4’−ビス(ベンゾオキサゾール−2−イル)スチルベン等)、酸化防止剤、安定剤(金属化合物、エポキシ化合物、窒素化合物、燐化合物、硫黄化合物等)、紫外線吸収剤(ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物等)、界面活性剤、滑剤(パラフィン、ワックス等の脂肪族炭化水素、炭素数8〜22の高級脂肪酸、炭素数8〜22の高級脂肪酸金属(Ca等)塩、炭素数8〜22の高級脂肪族アルコール、ポリグリコール、炭素数4〜22の高級脂肪酸と炭素数4〜18の脂肪族1価アルコールとのエステル、炭素数8〜22の高級脂肪酸アマイド、シリコーン油、ロジン誘導体等)、充填剤(タルク、ハイドロタルサイト、マイカ、ゼオライト、パーライト、珪藻土、炭酸カルシウム、ガラス繊維等)、発泡剤、発泡助剤、ポリマー添加剤、可塑剤(ジアルキルフタレート、ジアルキルヘキサヒドロフタレート等)、架橋剤、架橋促進剤、帯電防止剤、難燃剤、分散剤、有機無機の顔料(インディゴ化合物、フタロシアニン系化合物、アントラキノン系化合物、ウルトラマリン化合物、アルミン酸コバルト化合物等)、加工助剤、他の核剤等の各種添加剤が例示される。
【0070】
これらの添加剤を使用する場合、その使用量は、本発明の効果を阻害しない限り、通常使用されている範囲で使用すればよいが、例えば、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、好ましくは0.0001〜100質量部程度、より好ましくは0.001〜50質量部程度で使用されるのが一般的である。
【0071】
上記酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、亜リン酸エステル系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が例示され、具体的な酸化防止剤としては、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどのフェノール系酸化防止剤、アルキルジスルフィド、チオジプロピオン酸エステル、ベンゾチアゾールなどの硫黄系酸化防止剤、トリスノニルフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、3,9−ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカンなどの亜リン酸エステル系酸化防止剤等が例示される。中でも、フェノール系酸化防止剤であるテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、亜リン酸エステル系の酸化防止剤であるトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、3,9−ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカンなどが特に推奨される。
【0072】
<ポリオレフィン系樹脂成形体>
本発明のポリオレフィン系樹脂成形体は、上記本発明のポリオレフィン系樹脂組成物を用いて、慣用されている成形方法に従って成形することにより得られる。前記成形方法としては、本発明の効果を奏する限り、特に制約はなく、射出成形、押出成形、ブロー成形、圧空成形、回転成形、フィルム成形等の従来公知の成形方法のいずれも採用できる。
【0073】
かくして得られたポリオレフィン系樹脂成形体は、結晶化温度が高く、即ち結晶化速度が速く、その結果、特に大型部材等における成形サイクルが大きく短縮され、コストダウンや加工時のトラブル防止等に非常に有効である。また、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物を用いることにより、結晶性が大きく改善され、その結果、得られた成形品の剛性等の機械的性能、透明性等の光学的性能、耐熱性等の熱的性能が向上するだけでなく、ひけやそりが少なくなり、複雑な形状の成形品も安定して製造可能となる。更に、本発明の結晶核剤及び結晶核剤組成物は、タルク等の充填剤との併用系でもその効果が低減することなく、優れた効果を発揮することが可能であり、また、成形加工条件等の影響はなく、安定して目的の性能が容易に得られるものであり、今後これまで以上に様々な用途での応用が期待される。
【実施例】
【0074】
以下に実施例を示し、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。尚、実施例中の化合物の略号、及び各特性の測定方法は以下の通りである。
【0075】
[ポリオレフィン系樹脂成形体の評価方法]
(1)結晶化温度
示差走査熱量分析装置(パーキンエルマー社製、DSC8500)を用い、JISK7121(1987)に従って測定した。評価用試料には、各実施例・比較例のポリオレフィン樹脂組成物約6mgを使用した。その試料を装置にセットし、200℃で3分間保持した後、10℃/分の冷却速度で冷却し、吸熱ピークの頂点を結晶化温度(℃)とした。
【0076】
(2)半結晶化時間(T1/2
示差走査熱量分析装置(同社製)を用い、JISK7121(1987)に従って測定した。評価用試料には、各実施例・比較例のポリオレフィン樹脂組成物約6mgを使用した。その試料を装置にセットし、200℃で3分間保持した後、750℃/分の冷却速度で140℃まで冷却し、その温度において等温結晶化を行った。等温結晶化工程開始から、時間と熱量との関係図において認められる結晶化に基づく発熱ピークの面積の 1/2 に到達するまでの所要時間を半結晶化時間(T1/2、秒)とした。
【0077】
(3)曇り度(ヘイズ値)
日本電色工業(株)のヘイズメータ(NDH 7000)を用いて、JISK7136(2000)に準じた方法でヘイズ値(%)を測定した。評価試料には、0.5mm厚み射出成形品のオレフィン系樹脂成形体を使用した。得られたヘイズ値の数値が小さい程、透明性に優れていることを示す。
【0078】
(4)曲げ弾性率
万能材料試験機(インストロン社製)を用い、JISK7171(2016)に準じた方法で曲げ弾性率を測定した。なお、試験温度は25℃、試験速度は10mm/分とした。
【0079】
実施例又は比較例で用いた脂環式ジカルボン酸の金属塩
化合物1:4−メチルシクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩(MH−Ca)、水和物の割合;100質量%、結晶水の含有量;7.44質量%、アルキル置換基とオキシカルボニル基の立体構造;シス体比率95%
化合物2:4−メチルシクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩(MH−Ca)、水和物の割合;75質量%、結晶水の含有量;5.58質量%、アルキル置換基とオキシカルボニル基の立体構造;シス体比率95%
化合物3:4-メチルシクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩(MH−Ca)、水和物の割合;50質量%、結晶水の含有量;3.72質量%、アルキル置換基とオキシカルボニル基の立体構造;シス体比率95%
化合物4:4−メチルシクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩(MH−Ca)、水和物の割合;12.5質量%、結晶水の含有量;0.93質量%、アルキル置換基とオキシカルボニル基の立体構造;シス体比率95%
化合物5:4−t−ブチルシクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩(tBuH−Ca)、水和物の割合;100質量%、結晶水の含有量;6.34質量%、アルキル置換基とオキシカルボニル基の立体構造;シス体比率100%
化合物6:シクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩(HH−Ca)、水和物の割合;100質量%、結晶水の含有量;7.89質量%、
化合物7:4−シクロヘキセンジカルボン酸のヒドロキシアルミニウム塩(TH−AlOH)、水和物の割合;100質量%、結晶水の含有量;7.83質量%、2つのオキシカルボニル基の立体構造;シス体比率100%
化合物8:4−メチルシクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩(MH−Ca)、水和物の割合;0%、結晶水の含有量;0%、アルキル置換基とオキシカルボニル基の立体構造;シス体比率95%
化合物9:4−t−ブチルシクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩(tBuH−Ca)、水和物の割合;0%、結晶水の含有量;0%、アルキル置換基とオキシカルボニル基の立体構造;シス体比率100%
化合物10:シクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩(HH−Ca)、水和物の割合;0%、結晶水の含有量;0%、
化合物11:4−シクロヘキセンジカルボン酸のヒドロキシアルミニウム塩(TH−AlOH)、水和物の割合;0%、結晶水の含有量;0%、2つのオキシカルボニル基の立体構造;シス体比率100%
【0080】
[実施例1]
ポリプロピレンホモポリマー(MFR=9g/10分(荷重2160g、温度230℃))100質量部に、結晶核剤として化合物1の4−メチルシクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩0.2質量部及びその他の添加剤としてステアリン酸カルシウム(日東化成工業(株)製)0.05質量部、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(BASFジャパン(株)製、商品名「IRGANOX1010」)0.05質量部、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト(BASFジャパン(株)製、商品名「IRGAFOS168」)0.05質量部を加えて、ドライブレンドした。得られたドライブレンド物を二軸押出機((株)テクノベル社製、L/D=45、スクリュー径15mm、ダイス径5mm)を用いてバレル温度200℃にて溶融混合後、押し出されたストランドを冷却し、ペレタイザーでカッティングして、ポリオレフィン系樹脂組成物を調製した。得られたポリオレフィン系樹脂組成物の結晶化温度及び半結晶化時間を測定し、得られた結果を合わせて表1に示した。
【0081】
続いて、得られたポリオレフィン系樹脂組成物を用いて、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製NS40−5A)にて射出成形温度(加熱温度)200℃、金型温度(冷却温度)40℃の条件下で成形して、本発明のポリオレフィン系樹脂成形体(試験片)を得た。得られた試験片の曲げ弾性率及びヘイズ値を測定し、得られた結果を合わせて表1に示した。
【0082】
[実施例2]
化合物1の4−メチルシクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩の代わりに化合物2の4−メチルシクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩を用いた以外は実施例1と同様に実施して、ポリオレフィン系樹脂組成物を調製した。得られたポリオレフィン系樹脂組成物の結晶化温度及び半結晶化時間を測定し、得られた結果を合わせて表1に示した。
続いて、得られたポリオレフィン系樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に実施して、本発明のポリオレフィン系樹脂成形体(試験片)を得た。得られた試験片の曲げ弾性率及びヘイズ値を測定し、得られた結果を合わせて表1に示した。
【0083】
[実施例3]
化合物1の4−メチルシクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩の代わりに化合物3の4−メチルシクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩を用いた以外は実施例1と同様に実施して、ポリオレフィン系樹脂組成物を調製した。得られたポリオレフィン系樹脂組成物の結晶化温度及び半結晶化時間を測定し、得られた結果を合わせて表1に示した。
続いて、得られたポリオレフィン系樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に実施して、本発明のポリオレフィン系樹脂成形体(試験片)を得た。得られた試験片の曲げ弾性率及びヘイズ値を測定し、得られた結果を合わせて表1に示した。
【0084】
[実施例4]
化合物1の4−メチルシクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩の代わりに化合物4の4−メチルシクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩を用いた以外は実施例1と同様に実施して、ポリオレフィン系樹脂組成物を調製した。得られたポリオレフィン系樹脂組成物の結晶化温度及び半結晶化時間を測定し、得られた結果を合わせて表1に示した。
続いて、得られたポリオレフィン系樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に実施して、本発明のポリオレフィン系樹脂成形体(試験片)を得た。得られた試験片の曲げ弾性率及びヘイズ値を測定し、得られた結果を合わせて表1に示した。
【0085】
[実施例5]
化合物1の4−メチルシクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩の代わりに化合物5の4−t−ブチルシクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩を用いた以外は実施例1と同様に実施して、ポリオレフィン系樹脂組成物を調製した。得られたポリオレフィン系樹脂組成物の結晶化温度及び半結晶化時間を測定し、得られた結果を合わせて表1に示した。
続いて、得られたポリオレフィン系樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に実施して、本発明のポリオレフィン系樹脂成形体(試験片)を得た。得られた試験片の曲げ弾性率及びヘイズ値を測定し、得られた結果を合わせて表1に示した。
【0086】
[実施例6]
化合物1の4−メチルシクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩の代わりに化合物6のシクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩を用いた以外は実施例1と同様に実施して、ポリオレフィン系樹脂組成物を調製した。得られたポリオレフィン系樹脂組成物の結晶化温度及び半結晶化時間を測定し、得られた結果を合わせて表1に示した。
続いて、得られたポリオレフィン系樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に実施して、本発明のポリオレフィン系樹脂成形体(試験片)を得た。得られた試験片の曲げ弾性率及びヘイズ値を測定し、得られた結果を合わせて表1に示した。
【0087】
[実施例7]
化合物1の4−メチルシクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩の代わりに化合物7の4−シクロヘキセンジカルボン酸のヒドロキシアルミニウム塩を用いた以外は実施例1と同様に実施して、ポリオレフィン系樹脂組成物を調製した。得られたポリオレフィン系樹脂組成物の結晶化温度及び半結晶化時間を測定し、得られた結果を合わせて表1に示した。
続いて、得られたポリオレフィン系樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に実施して、本発明のポリオレフィン系樹脂成形体(試験片)を得た。得られた試験片の曲げ弾性率及びヘイズ値を測定し、得られた結果を合わせて表1に示した。
【0088】
【表1】
【0089】
[比較例1]
化合物1の4−メチルシクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩の代わりに化合物8の4−メチルシクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩を用いた以外は実施例1と同様に実施して、ポリオレフィン系樹脂組成物を調製した。得られたポリオレフィン系樹脂組成物の結晶化温度及び半結晶化時間を測定し、得られた結果を合わせて表2に示した。
続いて、得られたポリオレフィン系樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に実施して、本発明のポリオレフィン系樹脂成形体(試験片)を得た。得られた試験片の曲げ弾性率及びヘイズ値を測定し、得られた結果を合わせて表2に示した。
【0090】
[比較例2]
化合物5の4−t−ブチルシクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩の代わりに化合物9の4−t−ブチルシクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩を用いた以外は実施例5と同様に実施して、ポリオレフィン系樹脂組成物を調製した。得られたポリオレフィン系樹脂組成物の結晶化温度及び半結晶化時間を測定し、得られた結果を合わせて表2に示した。
続いて、得られたポリオレフィン系樹脂組成物を用いて、実施例5と同様に実施して、本発明のポリオレフィン系樹脂成形体(試験片)を得た。得られた試験片の曲げ弾性率及びヘイズ値を測定し、得られた結果を合わせて表2に示した。
【0091】
[比較例3]
化合物6のシクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩の代わりに化合物10のシクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩を用いた以外は実施例6と同様に実施して、ポリオレフィン系樹脂組成物を調製した。得られたポリオレフィン系樹脂組成物の結晶化温度及び半結晶化時間を測定し、得られた結果を合わせて表2に示した。
続いて、得られたポリオレフィン系樹脂組成物を用いて、実施例6と同様に実施して、本発明のポリオレフィン系樹脂成形体(試験片)を得た。得られた試験片の曲げ弾性率及びヘイズ値を測定し、得られた結果を合わせて表2に示した。
【0092】
[比較例4]
化合物7の4−シクロヘキセンジカルボン酸のヒドロキアルミニウム塩の代わりに化合物11の4−シクロヘキセンジカルボン酸のヒドロキシアルミニウム塩を用いた以外は実施例7と同様に実施して、ポリオレフィン系樹脂組成物を調製した。得られたポリオレフィン系樹脂組成物の結晶化温度及び半結晶化時間を測定し、得られた結果を合わせて表2に示した。
続いて、得られたポリオレフィン系樹脂組成物を用いて、実施例7と同様に実施して、本発明のポリオレフィン系樹脂成形体(試験片)を得た。得られた試験片の曲げ弾性率及びヘイズ値を測定し、得られた結果を合わせて表2に示した。
【0093】
[比較例5]
結晶核剤を用いない以外は実施例1と同様に実施して、ポリオレフィン系樹脂組成物を調製した。得られたポリオレフィン系樹脂組成物の結晶化温度及び半結晶化時間を測定し、得られた結果を合わせて表2に示した。
続いて、得られたポリオレフィン系樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に実施して、本発明のポリオレフィン系樹脂成形体(試験片)を得た。得られた試験片の曲げ弾性率及びヘイズ値を測定し、得られた結果を合わせて表2に示した。
【0094】
【表2】
【0095】
[実施例8]
一軸押出機((株)テクノベル社製、L/D=28、スクリュー径25mm、ダイス径4mm)を用いた以外は実施例1と同様に実施して、ポリオレフィン系樹脂組成物を調製した。得られたポリオレフィン系樹脂組成物の結晶化温度及び半結晶化時間を測定し、得られた結果を合わせて表3に示した。
続いて、得られたポリオレフィン系樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に実施して、本発明のポリオレフィン系樹脂成形体(試験片)を得た。得られた試験片の曲げ弾性率及びヘイズ値を測定し、得られた結果を合わせて表3に示した。
【0096】
[実施例9]
化合物1の4−メチルシクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩の代わりに化合物2の4−メチルシクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩を用いた以外は実施例8と同様に実施して、ポリオレフィン系樹脂組成物を調製した。得られたポリオレフィン系樹脂組成物の結晶化温度及び半結晶化時間を測定し、得られた結果を合わせて表3に示した。
続いて、得られたポリオレフィン系樹脂組成物を用いて、実施例8と同様に実施して、本発明のポリオレフィン系樹脂成形体(試験片)を得た。得られた試験片の曲げ弾性率及びヘイズ値を測定し、得られた結果を合わせて表3に示した。
【0097】
[実施例10]
化合物1の4−メチルシクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩の代わりに化合物3の4−メチルシクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩を用いた以外は実施例8と同様に実施して、ポリオレフィン系樹脂組成物を調製した。得られたポリオレフィン系樹脂組成物の結晶化温度及び半結晶化時間を測定し、得られた結果を合わせて表3に示した。
続いて、得られたポリオレフィン系樹脂組成物を用いて、実施例8と同様に実施して、本発明のポリオレフィン系樹脂成形体(試験片)を得た。得られた試験片の曲げ弾性率及びヘイズ値を測定し、得られた結果を合わせて表3に示した。
【0098】
[実施例11]
化合物1の4−メチルシクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩の代わりに化合物4の4−メチルシクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩を用いた以外は実施例8と同様に実施して、ポリオレフィン系樹脂組成物を調製した。得られたポリオレフィン系樹脂組成物の結晶化温度及び半結晶化時間を測定し、得られた結果を合わせて表3に示した。
続いて、得られたポリオレフィン系樹脂組成物を用いて、実施例8と同様に実施して、本発明のポリオレフィン系樹脂成形体(試験片)を得た。得られた試験片の曲げ弾性率及びヘイズ値を測定し、得られた結果を合わせて表3に示した。
【0099】
[実施例12]
更に、12ヒドロキシステアリン酸の亜鉛塩0.2質量部を加えた以外は実施例8と同様に実施して、ポリオレフィン系樹脂組成物を調製した。得られたポリオレフィン系樹脂組成物の結晶化温度及び半結晶化時間を測定し、得られた結果を合わせて表3に示した。
続いて、得られたポリオレフィン系樹脂組成物を用いて、実施例8と同様に実施して、本発明のポリオレフィン系樹脂成形体(試験片)を得た。得られた試験片の曲げ弾性率及びヘイズ値を測定し、得られた結果を合わせて表3に示した。
【0100】
[実施例13]
化合物1の4−メチルシクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩の代わりに化合物5の4−t−ブチルシクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩を用いた以外は実施例8と同様に実施して、ポリオレフィン系樹脂組成物を調製した。得られたポリオレフィン系樹脂組成物の結晶化温度及び半結晶化時間を測定し、得られた結果を合わせて表3に示した。
続いて、得られたポリオレフィン系樹脂組成物を用いて、実施例8と同様に実施して、本発明のポリオレフィン系樹脂成形体(試験片)を得た。得られた試験片の曲げ弾性率及びヘイズ値を測定し、得られた結果を合わせて表3に示した。
【0101】
[実施例14]
化合物1の4−メチルシクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩の代わりに化合物6のシクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩を用いた以外は実施例8と同様に実施して、ポリオレフィン系樹脂組成物を調製した。得られたポリオレフィン系樹脂組成物の結晶化温度及び半結晶化時間を測定し、得られた結果を合わせて表3に示した。
続いて、得られたポリオレフィン系樹脂組成物を用いて、実施例8と同様に実施して、本発明のポリオレフィン系樹脂成形体(試験片)を得た。得られた試験片の曲げ弾性率及びヘイズ値を測定し、得られた結果を合わせて表3に示した。
【0102】
[実施例15]
化合物1の4−メチルシクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩の代わりに化合物7の4−シクロヘキセンジカルボン酸のヒドロキシアルミニウム塩を用いた以外は実施例8と同様に実施して、ポリオレフィン系樹脂組成物を調製した。得られたポリオレフィン系樹脂組成物の結晶化温度及び半結晶化時間を測定し、得られた結果を合わせて表3に示した。
続いて、得られたポリオレフィン系樹脂組成物を用いて、実施例8と同様に実施して、本発明のポリオレフィン系樹脂成形体(試験片)を得た。得られた試験片の曲げ弾性率及びヘイズ値を測定し、得られた結果を合わせて表3に示した。
【0103】
【表3】
【0104】
[比較例6]
化合物1の4−メチルシクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩の代わりに化合物8の4−メチルシクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩を用いた以外は実施例8と同様に実施して、ポリオレフィン系樹脂組成物を調製した。得られたポリオレフィン系樹脂組成物の結晶化温度及び半結晶化時間を測定し、得られた結果を合わせて表4に示した。
続いて、得られたポリオレフィン系樹脂組成物を用いて、実施例8と同様に実施して、本発明のポリオレフィン系樹脂成形体(試験片)を得た。得られた試験片の曲げ弾性率及びヘイズ値を測定し、得られた結果を合わせて表4に示した。
【0105】
[比較例7]
化合物5の4−t−ブチルシクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩の代わりに化合物9の4−t−ブチルシクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩を用いた以外は実施例13と同様に実施して、ポリオレフィン系樹脂組成物を調製した。得られたポリオレフィン系樹脂組成物の結晶化温度及び半結晶化時間を測定し、得られた結果を合わせて表4に示した。
続いて、得られたポリオレフィン系樹脂組成物を用いて、実施例13と同様に実施して、本発明のポリオレフィン系樹脂成形体(試験片)を得た。得られた試験片の曲げ弾性率及びヘイズ値を測定し、得られた結果を合わせて表4に示した。
【0106】
[比較例8]
化合物6のシクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩の代わりに化合物10のシクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩を用いた以外は実施例14と同様に実施して、ポリオレフィン系樹脂組成物を調製した。得られたポリオレフィン系樹脂組成物の結晶化温度及び半結晶化時間を測定し、得られた結果を合わせて表4に示した。
続いて、得られたポリオレフィン系樹脂組成物を用いて、実施例14と同様に実施して、本発明のポリオレフィン系樹脂成形体(試験片)を得た。得られた試験片の曲げ弾性率及びヘイズ値を測定し、得られた結果を合わせて表4に示した。
【0107】
[比較例9]
化合物7の4−シクロヘキセンジカルボン酸のヒドロキアルミニウム塩の代わりに化合物11の4−シクロヘキセンジカルボン酸のヒドロキシアルミニウム塩を用いた以外は実施例15と同様に実施して、ポリオレフィン系樹脂組成物を調製した。得られたポリオレフィン系樹脂組成物の結晶化温度及び半結晶化時間を測定し、得られた結果を合わせて表4に示した。
続いて、得られたポリオレフィン系樹脂組成物を用いて、実施例15と同様に実施して、本発明のポリオレフィン系樹脂成形体(試験片)を得た。得られた試験片の曲げ弾性率及びヘイズ値を測定し、得られた結果を合わせて表4に示した。
【0108】
[比較例10]
結晶核剤を用いない以外は実施例8と同様に実施して、ポリオレフィン系樹脂組成物を調製した。得られたポリオレフィン系樹脂組成物の結晶化温度及び半結晶化時間を測定し、得られた結果を合わせて表4に示した。
続いて、得られたポリオレフィン系樹脂組成物を用いて、実施例8と同様に実施して、本発明のポリオレフィン系樹脂成形体(試験片)を得た。得られた試験片の曲げ弾性率及びヘイズ値を測定し、得られた結果を合わせて表4に示した。
【0109】
【表4】
【0110】
表1中の実施例の結果と表2中の比較例結果の比較より、水和物並びに結晶水の存在により樹脂中での分散性が大きく改善され、その結果、結晶化促進効果だけでなく、得られた成形品の透明性や剛性との性能もより一層改善されていることがわかる。また、表3中の実施例の結果と表4中の比較例の比較より、上記効果は練り効果の少ない加工条件下でより一層発揮され、成形加工条件に影響されることなく、安定して優れた性能を得られることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明の結晶核剤及び結晶核剤組成物は、ポリオレフィン系樹脂に配合することにより成形加工条件等に影響されることなく、安定的にポリオレフィン系樹脂の結晶化速度、即ち結晶化温度を著しく向上することが可能であり、例えば、大型部材等における成形サイクルが約半分に短縮され、その結果、コストダウンや加工時のトラブル防止等に大きく貢献することができる。また、本発明の結晶核剤は、結晶性を改善することが可能であり、その結果、得られた成形品の剛性等の機械的性能、透明性等の光学的性能、耐熱性等の熱的性能が向上するだけでなく、ひけやそりが少なくなり、複雑な形状の成形品も安定して製造可能となる。更に、タルク等の充填剤との併用系でも、優れた効果を示すことが可能であり、剛性や強度等の要求される用途でも有効に使用することが可能である。従って、本発明の結晶核剤は、上記の様な特徴を活かして、自動車部材、電気部材、機械部品、日用雑貨、衣装等のケース、食品等の容器など、様々な用途で広く使うことができる。