【実施例】
【0132】
化合物(3S)−3−({4−メチル−N−[(2R)−テトラヒドロフラン−2−イルカルボニル]−L−ロイシル}アミノ)−2−オキソ−4−[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]ブチル2,6−ジクロロベンゾエートは、国際公開第2005/113580号の実施例39に記載され、以下に再生される通り調製することができる。化合物(3S)−3−({N−[(4−メトキシ−1H−インドール−2−イル)カルボニル]−L−ロイシル}アミノ)−2−オキソ−4−[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]ブチルシクロプロパンカルボキシレートは、国際公開第2005/113580号の実施例37に記載され、以下に再生される通り調製することができる。化合物N−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3,3−ジメチルブチル)−1H−インドール−2−カルボキサミドは、国際公開第2005/113580号の実施例16に記載され、以下に再生される通り調製することができる。化合物N−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}ペンチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドは、国際公開第2005/113580号の実施例8に記載され、以下に再生される通り調製することができる。化合物N−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドは、国際公開第2005/113580号の実施例2に記載され、以下に再生される通り調製することができる。これらの化合物は、以下に再生されている場合、参照実施例と呼ばれる。
【0133】
下記の実施例では、別段指定されない限り、すべての温度は、摂氏で記載され、すべての部およびパーセンテージは、重量による。試薬は、商業的供給社、例えばSigma−Aldrich Chemical Company、またはLancaster Synthesis Ltd.から購入することができ、別段指定されない限りさらなる精製なしに使用することができる。テトラヒドロフラン(THF)およびN、N−ジメチルホルムアミド(DMF)は、AldrichからSure Sealボトルで購入し、受け取ったまま使用することができる。すべての溶媒を、別段指定されない限り、当業者に公知の標準法を使用して精製することができる。
【0134】
以下の実施例の化合物の構造は、以下の、プロトン磁気共鳴分光法、微量元素解析および融点の1つまたは複数によって確認される。プロトン磁気共鳴(
1H NMR)スペクトルは、Bruker分光計を使用し、300〜400メガヘルツ(MHz)の場の強度で操作して決定される。化学シフトは、標準内部テトラメチルシランから百万分率(ppm、δ)低磁場側で記録される。あるいは、
1H NMRスペクトルを、以下の通り、CHCl
3=7.26ppm、DMSO=2.49ppm、C
6HD
5=7.15ppmの残留プロトン性溶媒シグナルを参照した。ピーク多重度は、以下の通り、sは一重線、dは二重線、ddは二重線の二重線、tは三重線、qは四重線、brはブロード共鳴、mは多重線と指定される。結合定数は、ヘルツで与えられる。微量元素解析は、Atlantic Microlab Inc.、Norcross、GAによって実施され、理論値の±0.4%で記載される元素についての結果をもたらした。フラッシュカラムクロマトグラフィーは、Silica gel 60(Merck Art 9385)または様々なMPLC系を使用して実施される。解析用薄層クロマトグラフィー(TLC)を、Silica 60F
254(Merck Art 5719)のプレコートシートを使用して実施した。すべての反応を、別段の注記がない限り、セプタム封止フラスコ中で、わずかなアルゴン陽圧または乾燥窒素下で実施する。
【0135】
本発明の方法において使用される他の好ましい化合物は、以下に具体的に記載されるものに類似の方式で調製することができる。
【0136】
以下に提供される実施例および調製物は、本発明の化合物およびこのような化合物を調製する方法をさらに例示し、例証する。本発明の範囲は、以下の実施例および調製物の範囲によって決して制限されないと理解されるべきである。以下の実施例では、別段の注記がない限り、単一のキラル中心を有する分子は、ラセミ混合物として存在する。2つまたはそれよりも多いキラル中心を有する分子は、別段の注記がない限り、ジアステレオマーのラセミ混合物として存在する。単一のエナンチオマー/ジアステレオマーは、当業者に公知の方法によって得ることができる。
【0137】
HPLCクロマトグラフィーが、以下の調製物および実施例において言及される場合、使用される一般条件は、別段指定されない限り、以下の通りである。使用されるカラムは、距離150mmおよび内径4.6mmのZORBAXμ RXC18カラム(Hewlett Packardによって製造された)である。試料を、Hewlett Packard−1100系で分析する。グラジエント溶媒法を使用し、100パーセント酢酸アンモニウム/酢酸緩衝液(0.2M)から100パーセントアセトニトリルに10分にわたって分析する。次にその系は、100パーセントアセトニトリルで1.5分間、次に100パーセント緩衝溶液で3分間の洗浄サイクルに進行する。この期間にわたる流速は、一定の3mL/分である。
【0138】
実施例および明細書では、「Et」は、エチルを意味し、「Ac」は、アセチルを意味し、「Me」は、メチルを意味し、「ETOAC」または「ETOAc」は、酢酸エチルを意味し、「THF」は、テトラヒドロフランを意味し、「Bu」は、ブチルを意味し、Et
2Oは、ジエチルエーテルを指し、DMFは、N,N−ジメチルホルムアミドを指す。DMSOは、ジメチルスルホキシドを指す。MTBEは、tert−ブチル(butly)メチルエーテルを指す。他の略語には、CH
3OH(メタノール)、EtOH(エタノール)、EtOAc(酢酸エチル)、DEM(エチレングリコールジメチルエーテル)が含まれる。DCMは、ジクロロメタンを指し、1,2DCEは、1,2ジクロロエタンを指す。Ph(フェニル)、Tr(トリフェニルメチル)、Cbz(ベンジルオキシカルボニル)、Boc(tert−ブトキシカルボニル)、TFA(トリフルオロ酢酸)、DIEA(N,N−ジイソプロピルエチルアミン)、TMEDA(N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン)、AcOH(酢酸)、Ac
2O(無水酢酸)、NMM(4−メチルモルホリン)、HOBt(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物)、HATU [O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート]、EDC [1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩]、TEA トリエチルアミン、LDA リチウムジイソプロピルアミド、DCC(ジシクロヘキシル−カルボジイミド)、DDQ(2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン)、DMAP(4−ジメチルアミノピリジン)、Gln(グルタミン)、Leu(ロイシン)、Phe(フェニルアラニン)、Phe(4−F)(4−フルオロフェニルアラニン)、Val(バリン)、アミノ−Ala(2,3−ジアミノプロピオン酸)、および(S)−ピロール−Ala[(2S,3’S)−2−アミノ−3−(2’−オキソピロリジン−3’−イル)−プロピオン酸]。さらに、「L」は、自然に存在するアミノ酸の立体配置を表す。
【0139】
以下は、本発明の方法において使用される化合物であり、国際公開第2005/113580号の実施例、2、8、16、23、37および39は、参照実施例と呼ばれる。
【0140】
参照実施例2:N−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミド
N−((1S)−1{[((1S)−3−クロロ−2−オキソ−1−{[3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミド(488mg、0.99mmol)およびベンゾイルギ酸(195mg、1.3mmol)のDMR(6.5mL)溶液を、N
2雰囲気下に置いた。この透明な薄黄色の溶液を、フッ化セシウム(350mg、2.3mmol)で処理し、その後、65℃に加熱した。4時間後に、ここで黄色になった懸濁液をRTに冷却し、酢酸エチル(60mL)で希釈し、水(30mL)で3回洗浄し、ブライン(30mL)で1回洗浄し、MgSO
4上で乾燥させ、濾過し、濃縮して、(3S)−3−({N−[(4−メトキシ−1H−インドール−2−イル)カルボニル]−L−ロイシル}アミノ−2−オキソ−4−[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]ブチルオキソ(フェニル)アセテートを黄色の粗製泡状物として得た。C
32H
36N4O
8についてのMS(ESI+)m/z 605.2(M+H)
+。粗製(3S)−3−({N−[(4−メトキシ−1H−インドール−2−イル)カルボニル]−L−ロイシル}アミノ−2−オキソ−4−[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]ブチルオキソ(フェニル)アセテートのメタノール(40mL)溶液を、N
2雰囲気下に置き、激しく撹拌しながら炭酸カリウム(7mg、0.05mmol)で処理した。1時間後に、揮発物を真空中で除去して(<30℃の浴)、黄色の粗製ガラス状物を得た。この材料を、Biotage MPLC(25Mカラム、6%メタノール/クロロホルム)によって精製して、標題化合物346mg(73%)を濁った白色の固体として得た。
1H NMR (DMSO-d
6) δ 11.56 (s, 1 H), 8.44 (d, J = 8 Hz, 1 H), 8.39
(d, J = 8 Hz, 1 H), 7.61 (s, 1 H), 7.35 (s, 1 H), 7.08 (t, J = 8 Hz, 1 H), 6.99
(d, J = 8 Hz, 1 H), 6.49 (d, J = 8 Hz, 1 H), 5.04 (t, J = 8
Hz, 1 H), 4.46 (m, 2 H), 4.25 (dd, J = 8, 20 Hz, 1 H), 4.13 (dd, J
= 8, 20 Hz, 1 H), 3.87 (s, 3 H), 3.10 (m, 2 H), 2.28 (m, 1 H), 2.08 (m, 1
H), 1.92 (m, 1 H), 1.70 - 1.53 (m, 5 H), 0.93 (d, J = 8 Hz, 3 H), .89 (d, J = 8
Hz, 3 H); C
24H
32N
4O
6のMS (ESI+) m/z 473.2 (M+H)
+.
【0141】
以下は、本発明の固体形態の実施例である。
【0142】
N−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドの固体形態の実施例
N−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドの形態1および形態2
材料の調製:N−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドの試料の延長貯蔵により、PXRDによって試験した後に形態2として示される結晶形態が生じた(
図8に示される)。このロットおよそ9mgを、一定分量100μLを添加し、それぞれ添加した後に試料をボルテックスすることによって、THF:トルエン(3:7vol/vol)1mLに懸濁させた。材料の溶解は観察されず、バイアルを40℃のローラーミキサー上に置いた。30分間の平衡化の後に、固体を、遠心分離フィルターチューブを使用して濾過し、PXRDによって解析し、形態1と示した(
図7に示される)。
【0143】
N−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミド、水和物(形態3)の調製
【0144】
【化2】
【0145】
播種しない結晶化プロセスによる形態3の実施例は、上に図示される。20℃のジャケット付き反応器に、PF−00835231(1.0当量、2.0g)、アセトン(9.2mL、4.6mL/g)および水(1.6mL、0.81mL/g)を充填した。混合物を20℃で撹拌して、透明な溶液を得た。追加の水(4.1mL、2mL/g)をゆっくり添加すると、まだ透明な溶液が生じていた。溶媒を真空下で除去して、ガム状の固体を提供した。アセトン(9mL、4.5mL/g)を添加し、スラリーを加熱還流させた。水(20mL、10mL/g)をゆっくり添加して、生成物を結晶化させ、その後、さらなる水(30mL、15mL/g)を1時間にわたって添加する。生じたスラリーを、1時間にわたって10℃に冷却し、最小で1時間粒状化させた後に、濾過し、洗浄した。固体を20℃で1時間乾燥させて、PF−00835231水和物(形態3)を収率85%で提供した。
【0146】
播種プロセスによる形態3の実施例:予め調製した水/アセトン(15:85、v/v)溶液2.8mLを、8ドラムバイアル中、1.85gのPF−00835231に添加した。撹拌棒を加え、バイアルを撹拌装置プレート上に置いた(約500rpm)。形態3の種結晶およそ5mgを添加し、固体が数分にわたって沈殿して、スラリーを生成することを観察した。水3.8mLを、撹拌したスラリーに約5分にわたって滴下添加し、次にバイアルを封止し、周囲条件で約5時間撹拌した。スラリーを濾過し、固体残留物を、水およそ6mLで洗浄した。固体残留物を、清潔な4ドラムバイアルに移し、50℃の真空オーブン中に置いた。固体生成物を、PXRDによって特徴付け(characterisation)、形態3と一致することを確認した。この特徴付けは、ピーク表を作成し、特徴的なピークを選択するために使用した。単結晶の研究では、結晶形態3は、1:1化学量論量の水:N−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドを有しているが、ある特定の貯蔵条件では、その化学量論量は、1.2:1の水:N−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドとなり得ることが示されている。
【0147】
粉末X線回折
N−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドの形態1、2および3についての粉末X線回折パターンを、Cu放射線源を備えたBruker AXS D8 Endeavor回折計を使用して作製した。管電圧およびアンペア数は、それぞれ40kVおよび40mAに設定した。電動発散スリットは、11mmの連続照明に設定した。回折放射線を、位置感知検出器(PSD)開口部を4.00°に設定して、LYNXEYE XE−Tエネルギー分散X線検出器を使用して検出した。データを、シータ−シータ角度計で、CuKアルファ波長2.0〜55.0 2シータ度(°2θ)においてステップサイズ0.019°2θおよびステップ当たりの時間0.1秒を使用して収集した。試料を、解析のために、ケイ素の低バックグラウンドフラットホルダーに入れることによって調製し、データ収集中、15rpmで回転させた。データを、DIFFRAC.EVA v4.2ソフトウェアで解析した。ピークリストを、それぞれの各回折パターンにおける最も強烈なバンドの≧5%の相対的強度を有する反射を使用して調製した。ピーク位置における±0.2°2θの典型的誤差(USP−941)を、このデータに適用する。この測定と関連する小さい誤差は、(a)試料の調製(例えば、試料の高さ)、(b)機器の特徴、(c)機器の較正、(d)操作者による入力(例えば、ピーク位置の決定における)、および(e)材料の性質(例えば、好ましい配向および透過性効果)を含めた様々な因子が原因で生じ得る。
【0148】
絶対的ピーク位置を得るために、粉末パターンは参照に対して整列されるべきである。参照は、室温で溶解した同じ形態の結晶構造または内部標準(例えば、シリカまたはコランダム)からシミュレートした粉末パターンのいずれかとなり得る。収集した形態3の粉末パターンを、シミュレートした粉末パターンに対して整列させた。
【0149】
N−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミド、水和物(形態3)のPXRDプロファイルは、
図6に提供され、対応するピークリストは、表PXRD1に提供される。形態3に特徴的なピークは、8.6、11.9、14.6、18.7、19.7°2θ位置におけるピークであり、各ピーク±0.2°2θである。形態1および形態2の参照PXRDパターンは、それぞれ
図7および8に提供される。
【0150】
【表1】
【0151】
固体状態のNMR
固体状態のNMR(ssNMR)解析を、Bruker−BioSpin Avance Neo 400MHz(
1H周波数)NMR分光計で実施した。
13C ssNMRスペクトルを、4mmのMASプローブ上で、マジック角回転速度15kHzにおいて収集し、温度を25℃に調節した。
13C交差分極(CP)スペクトルを、CP接触時間2.5msおよび繰り返し遅延(recycle delay)30秒で記録した。スペクトル獲得中、約100kHzの位相変調プロトンデカップリング磁場を印加した。炭素スペクトルの参照は、純粋なテトラメチルシランに対するものであり、α−グリシンの外部試料からの高周波信号を176.5ppmに設定することによって行われる。
【0152】
自動ピークピッキングを、ACD Labs 2019 Spectrus Processorソフトウェアを使用して、予備的なピーク選択のために3%相対的強度の閾値を使用して実施した。自動化ピークピッキングの出力を、妥当性を確保するために目視でチェックし、必要ならば手動で調整を行った。本明細書では特定の
13C ssNMRピーク値が記録されているが、装置、試料、および試料の調製の差異に起因して、これらのピーク値にはある範囲が実際に存在する。
13C化学シフトのx軸値の典型的なばらつきは、結晶固体についてプラスまたはマイナス0.2ppmほどである。本明細書で記録されたssNMRピーク高さは、相対的強度である。ssNMR強度は、実験パラメーターの実際の設定および試料の熱履歴に応じて変わり得る。
【0153】
【表2】
【0154】
N−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドの製剤実施例
N−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミド(以下、PF−00835231と呼ばれる)は、中程度の親油性であり、水溶性が限られる。PF−00835231は、生理的に関連するpH範囲全体にわたって中性であり、したがって、pHに依存しない溶解度挙動を有する。PF−00835231の物理化学的特性は、非経口投与のためにその溶解度を改善するのに適用できる手法を制限する。
【0155】
PF−00835231は、限られた水溶性、低透過性、および短い半減期に起因して、水溶液として静脈内(IV)注入によって非経口投与するのに最も適している。注入のための水溶液の代表例として、5%w/vブドウ糖および乳酸リンゲル溶液中、注射のためのUSP水、0.9%w/v塩化ナトリウム、5%w/vブドウ糖、0.9%w/v塩化ナトリウムを含む医薬組成物が挙げられる。持続IV注入によるPF−00835231の予測有効1日用量は、およそ300mg〜3300mgの範囲になると予測される。多くの病院で使用される最小限の注入速度に関する「静脈確保」(KVO)の習慣に留まるためには、約250mL〜約500mLの1日持続注入体積が典型的に好ましい。約1000mLまでの1日持続IV注入体積を考慮することができるが、このような多量の流体は、追加の流体の併用投与を制限するおそれがある。予測された用量範囲および好ましいIV注入体積に基づいて、標的IV注入濃度は、IV注入体積250mLについては約1.2mg/mL〜約13.2mg/mL、IV注入体積500mLについては約0.6mg/mL〜約6.6mg/mL、およびIV注入体積1000mLについては約0.3mg/mL〜約3.3mg/mLであった。
【0156】
約0.3mg/mL〜約13.2mg/mLのIV注入濃度を達成するために、複数の可溶化手法を考慮した。IV医薬組成物に典型的な可溶化手法には、水性系のpH調整、塩形態の修飾、共溶媒の可溶化、界面活性剤の可溶化、および複合体化が含まれる。PF−00835231の場合、中性電荷は、pH調整または塩形態の修飾の機会を制限し、したがって可溶化賦形剤を評価した。可溶化賦形剤は、患者に起こり得る任意の有害効果を最小限に抑えるために、安全な、理想的には同じ投与経路によって先例となっているレベルで製剤化されるべきである。
【0157】
水溶性が低い化合物の溶解度を改善するために、しばしば溶媒の混合物が使用される。本明細書で使用される場合、共溶媒は、非経口投与による薬学的使用に適用できる非水性の水混和性溶媒として定義することができる。共溶媒の代表例として、それに限定されるものではないが、ベンジルアルコール(BA)、ジメチルアクリルアミド(DMA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エタノール、N−メチルピロリドン(NMP)、ポリエチレングリコール(例えば、PEG200、PEG300、PEG400、PEG600)、およびプロピレングリコール(PG)が挙げられる。可溶化の共溶媒法は、溶解度を何桁も改善することができ、複数の投与経路にわたる商業製品への使用に成功して、より高い用量レベルが達成されてきた。しかし、可溶化の共溶媒法は、IV投与にはいくつかの制限がある。まず、使用される溶媒は、局所的刺激、全身毒性、または他の有害効果を引き起こさないレベルで投与されなければならない。これらの安全上の考慮は、特にすぐに使用できる(RTU)IV製剤で投与することができる上限濃度をしばしば制限する。第2には、溶媒は、薬物生成物パッケージングおよび投与セットと適合性があるべきであり、任意の望ましくない化合物と反応する、それを分解する、または抽出するべきではない。第3には、共溶媒含量と薬物溶解度の間に、指数関数的関係が予測される。その結果として、薬物生成物が粉末またはすぐに希釈できる(RTD)濃縮製剤として調製される場合には、IV投与のための希釈は、薬物を沈殿させる溶解度の指数関数的低下を引き起こすおそれがある。したがって、希釈製剤の物理的安定性には、細心の注意が払われなければならない。
【0158】
親油性化合物の溶解度を改善するための代替のまたは追加の手法は、界面活性剤またはポリマー賦形剤の使用を伴う。界面活性剤の代表例として、それに限定されるものではないが、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポロキサマー407、ポロキサマー188、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリエトキシ化ヒマシ油、レシチン、ポリソルベート80(PS80)、ポリソルベート20(PS20)およびポリエチレングリコール(15)−ヒドロキシステアリン酸が挙げられる。界面活性剤は、典型的に、臨界ミセル濃度(CMC)を上回ると自己組織化してミセルを形成する両親媒性分子であり、ここでCMCおよび形成される構造は、製剤の組成に依存する。ミセルは、水溶液中では典型的に、分子の親水性領域を外の水溶液に向かわせ、分子の親油性領域をミセルの内腔内に向かわせて、水との相互作用を制限する。このようなミセルにおいて、両親媒性および親油性化合物は、それぞれミセルの壁または内腔において可溶化して、薬物溶解度を改善することができる。共溶媒または油の存在下では、共溶媒は、界面活性剤によって安定化される水中油エマルションを形成することができる。界面活性剤ベースの製剤は、共溶媒だけの製剤のように、同じ安全性および適合性の制約の多くを有する。界面活性剤ベースの製剤は、共溶媒だけの系とは対照的に、界面活性剤濃度と薬物溶解度の間に同じ指数関数的関係を有していない。その代わりに、薬物溶解度は、典型的に界面活性剤濃度がCMCを上回るように維持される。その結果として、界面活性剤ベースの製剤は、典型的にIV投与のための希釈時に沈殿の低減を示す。
【0159】
複合体化剤は、基質(すなわち薬物)が、1つまたは複数のリガンド(すなわち複合体化剤)と好ましい非共有結合性の相互作用を形成する、代替の可溶化手法である。複合体化剤の代表例として、それに限定されるものではないが、シクロデキストリン(CD)、ハイドロトロープ、アミノ酸、またはポリマーが挙げられる。最も一般的なクラスの複合体化剤は、シクロデキストリン(CD)である。CDは、特に、可変数のD−グルコース単位(例えば、α−CDについては6個、β−CDについては7個、またはγ−CDについては8個)、およびヒドロキシ基における可変置換(例えば、ヒドロキシプロピル、HP、またはスルホブチルエーテル、SBE)を有する環式オリゴ糖である。CDの形状は、親油性薬物を収容することができる親油性の円錐形内腔を提供し、ここでD−グルコース単位の数は、内腔サイズを改変し、置換は、複合体の溶解度および複合体化の好ましさを改変する。CDは、共溶媒または界面活性剤ベースの可溶化手法を上回るいくつかの利点を有しており、それには典型的に、毒性の低減、容器栓の適合性の懸念の低下、および製造可能性の改善が含まれる。CDを用いる複合体化は、しばしば、共溶媒ベースの可溶化よりも希釈に対してロバストであり、物理的安定性を改善する。しかし、CD複合体化は、CD内腔に収まり、好ましい複合体を形成することができる親油性分子に限られる。さらにCD複合体化は、しばしば、著しい溶解度増強を可能にするために多量のCDを必要とする場合があり、それによって有害効果が生じ得る。さらに、初期CD複合体の形成は、薬物の溶解によって制限されることがあり、それによって、薬物を可溶化する能力が最終的に制限され得る。
【0160】
CDを用いて薬物可溶化を増強するために、研究者らは、ポリマー賦形剤を添加して、三元複合体を形成することについて調査した。特に、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、および高分子量ポリエチレングリコール(PEG)を含めた水溶性ポリマーは、薬物の薬物溶解速度を増強し、CDを用いる複合体化の改善を可能にすることが示されている。
【0161】
ポリマー賦形剤とは対照的に、共溶媒とCDの使用は、CD単独と比較して薬物溶解度をしばしば低減する。以下のテキスト、Water−Insoluble Drug Formulation、Tong and Wen summarized the primary issue:「One major problem with using organic co−solvents is that most organic co−solvents will compete for inclusion in the CD cavity,and thus inhibit complex formation.」Tong,W.−Q.;Wen,H;Application of Complexation in Drug Development for Insoluble Compounds in Liu,R.(Ed.)Water Insoluble Drug Formulation、CRC Press、Boca Raton、2018、pp149〜176。共溶媒の存在下でCD可溶化が低減することについての代替の仮説は、共溶媒が水性媒体の極性を低減し、したがって親油性薬物が親油性CD内腔に入るための駆動力を低減するというものである。複数の研究文献が、この結論を裏付けている。例えば、P.Li、L.Zhao、S.H.Yalkowsky、Combined effect of cosolvent and cyclodextrin on solubilization of nonpolar drugs、Journal of Pharmaceutical Sciences、88(1999)1107〜1111;H.Viernstein、P.Weiss−Greiler、P.Wolschann、Solubility enhancement of low soluble biologically active compounds−temperature and cosolvent dependent inclusion complexation、International journal of pharmaceutics、256(2003)85〜94;Y.He、P.Li、S.H.Yalkowsky、Solubilization of Fluasterone in cosolvent/cyclodextrin combinations、International journal of pharmaceutics、264(2003)25〜34;T.Loftsson、B.J.Olafsdottir、H.Fridriksdottir、S.Jonsdottir、Cyclodextrin complexation of NSAIDSs:physicochemical characteristics、European Journal of Pharmaceutical Sciences、1(1993)95〜101;およびJ.Pitha、T.Hoshino、Effects of ethanol on formation of inclusion complexes of hydroxypropylcyclodextrins with testosterone or with methyl orange、International journal of pharmaceutics、80(1992)243〜251を参照されたい。例えば、Viernsteinらは、低水溶性化合物である殺真菌剤トリフルミゾールを研究し、「一般に、共溶媒およびβ−シクロデキストリンの組合せは、共溶媒が包接複合体を不安定化するので、化合物の溶解度を増大しない」ことを見出した。Loftssonらは、低水溶性の複数の非ステロイド系抗炎症薬物(NSAID)を研究し、「試験したすべてのNSAIDが、CDと包接複合体を形成したが、CD水溶液にエタノールまたはプロピレングリコールを添加すると、それらの複合体化度が低減した」ことを見出した。
【0162】
驚くべきことに、本発明者らは、複合体化剤を使用してPF−00835231の水溶性を改善して、非経口的に適した組成物の標的溶解度範囲の下端を有効にし得ることを見出している。好ましい複合体化剤には、CD、アミノ酸およびハイドロトロープが含まれ、より好ましい複合体化剤には、β−CD、γ−CD、ニコチンアミド、安息香酸ナトリウムおよびサリチル酸ナトリウムが含まれ、最も好ましい複合体化剤には、HP−β−CDおよびSBE−β−CDが含まれる。驚くべきことに、β−CDは、薬物が中程度の親油性であるにもかかわらず、PF−00835231と複合体を形成することができる。PF−00835231の複合体化剤ベースの医薬組成物の好ましい実施形態は、溶液として製剤化し、次にそれを滅菌濾過し、適切な容器栓系に充填し、溶液として供給できることである。その溶液は、IV投与の前にさらなる希釈を必要としないRTU溶液として、またはIV投与の前に希釈を必要とするRTD溶液として供給することができる。PF−00835231の複合体化剤ベースの医薬組成物のさらなる好ましい実施形態は、溶液として製剤化し、次にそれを滅菌濾過し、適切な容器栓系に充填し、フリーズドライして、凍結乾燥物を製造できることである。凍結乾燥生成物は、IV投与の前に再構成および/または希釈することができる。
【0163】
さらにより驚くべきことには、PF−00835231の溶解度は、1種または複数の複合体化剤および1種または複数の共溶媒を含有する製剤において増大し、それによって、標的用量範囲をより大きく網羅することが可能になる。この知見は、多くの共溶媒が、前述の通り複合体化に対して不安定化効果を有する場合があるという過去の報告によると、驚くべきことである。好ましい複合体化剤には、CDおよびハイドロトロープが含まれ、より好ましい複合体化剤には、β−CD、γ−CD、ニコチンアミド、安息香酸ナトリウムおよびサリチル酸ナトリウムが含まれ、最も好ましい複合体化剤には、HP−β−CDおよびSBE−β−CDが含まれる。PF−00835231に対するCDのモル比に基づく、最終的な薬物生成物(およびIV投与のための水性液体組成物)におけるCDの量は、好ましくは約1.5:1〜約25:1の範囲、より好ましくは約1.5:1〜約8:1の範囲、最も好ましくは約2:1〜6:1の範囲である。好ましい共溶媒には、1種または複数の水混和性の極性プロトン性および非プロトン性溶媒が含まれていてもよく、より好ましい共溶媒には、ジメチルアクリルアミド(DMA)、N−メチルピロリドン(NMP)、およびベンジルアルコール(BA)が含まれていてもよく、最も好ましい共溶媒には、エタノール、プロピレングリコール(PG)、ジメチルスルホキシド(DMSO)およびポリエチレングリコール(例えば、PEG200、PEG300、PEG400、PEG600)が含まれる。いくつかの製剤において、溶液の粘度を低減し、溶媒相互作用と関連する任意の物理的不安定性を制限するには、共溶媒の組合せが好ましい。最終的な薬物生成物(およびIV投与のための水性液体組成物)において最も好ましい2種の共溶媒は、エタノールおよびジメチルスルホキシド(DMSO)の一方であり、他方の共溶媒は、PEG300、PEG400およびプロピレングリコールからなる群から選択され、ここでエタノールまたはDMSOとPEG300、PEG400またはPGの比は、好ましくは約1:1〜約1:9の範囲、最も好ましくは約1:2〜約1:4の範囲である。最終製剤(およびIV投与のための水性液体組成物)における全共溶媒の量は、体積分率に基づいて、好ましくは約15%v/vまで、最も好ましくは約6%v/vまでである。複合体化剤および共溶媒ベースのPF−00835231の製剤の好ましい実施形態は、溶液として製剤化し、まず、PF−00835231を1種または複数の共溶媒に可溶化し、その後、好ましくは複合体化剤を含有する水性混合物と合わせることである。驚くべきことに、溶解度改善の規模は、この順序で賦形剤を添加することによって影響を受ける。複合体化剤および共溶媒ベースのPF−00835231の製剤の好ましい実施形態は、溶液として製剤化し、次にそれを滅菌濾過し、適切な容器栓系に充填し、溶液として供給できることである。その溶液は、IV投与の前にさらなる希釈を必要としないRTU溶液として、またはIV投与の前に希釈を必要とするRTD溶液として供給することができる。複合体化剤および共溶媒ベースのPF−00835231の製剤の代替の好ましい実施形態は、溶液として製剤化し、次にそれを滅菌濾過し、適切な容器栓系に充填し、フリーズドライして、凍結乾燥物を製造できることである。凍結乾燥生成物は、IV投与の前に再構成および/または希釈することができる。複合体化剤および共溶媒ベースのPF−00835231の製剤の代替の実施形態は、それぞれ所望の共溶媒および所望の界面活性剤を含有する少なくとも2種の特殊希釈剤を含む適切な容器栓系に、PF−00835231を粉末として供給することである。PF−00835231粉末の例は、滅菌結晶化材料であるか、またはフリーズドライによって調製することができる。この実施形態では、粉末および希釈剤は、RTUまたはRTD生成物を生成するために適切な順序で混合することができ、その生成物は、他の実施形態と同様にさらに希釈することができる。複合体化剤および共溶媒ベースのPF−00835231の製剤の代替の実施形態は、濃縮共溶媒溶液として製剤し、それを滅菌濾過し、適切な容器栓系に充填し、所望の可溶化剤を含有する特殊希釈剤を含むRTD溶液として供給できることである。
【0164】
本発明者らはまた、PF−00835231の溶解度が、1種または複数の界面活性剤および1種または複数の共溶媒を含有する製剤において増大することもでき、それによって、複合体化剤単独よりも標的用量範囲をより大きく網羅することが可能になるが、複合体化剤および共溶媒よりは網羅範囲が小さいことを見出している。好ましい共溶媒には、水混和性極性プロトン性および非プロトン性溶媒が含まれていてもよく、より好ましい共溶媒には、PG、DMAが含まれていてもよく、最も好ましい共溶媒には、BA、DMSO、エタノール、NMPおよびポリエチレングリコール(例えば、PEG300、PEG400)が含まれる。IV投与のための水性液体組成物における共溶媒の好ましい量は、約30%v/vまでであり、共溶媒のより好ましい量は、約20%v/vまでであり、共溶媒の最も好ましい量は、約10%v/vまでである。好ましい界面活性剤には、非イオン性ポリマー、イオン性ポリマーおよび脂質が含まれ、より好ましい界面活性剤には、PVP、ポロキサマー407、ポロキサマー188、HPMC、ポリエトキシ化ヒマシ油、レシチンが含まれ、最も好ましい界面活性剤には、ポリソルベート80(PS80)、ポリソルベート20(PS20)、およびポリエチレングリコール(15)−ヒドロキシステアリン酸が含まれる。IV投与のための水性液体組成物における界面活性剤の好ましい量は、約100mg/mLまでであり、界面活性剤の最も好ましい量は、約12.5mg/mLまでである。界面活性剤および共溶媒ベースのPF−00835231の医薬組成物の好ましい実施形態は、溶液として製剤化し、次にそれを滅菌濾過し、適切な容器栓系に充填し、溶液として供給できることである。その溶液は、IV注入の前にさらなる希釈を必要としないRTU溶液として、またはIV注入の前に希釈を必要とするRTD溶液として供給することができる。界面活性剤および共溶媒ベースのPF−00835231の医薬組成物のさらなる好ましい実施形態は、溶液として製剤化し、次にそれを滅菌濾過し、適切な容器栓系に充填し、フリーズドライして、凍結乾燥物を製造できることである。凍結乾燥生成物は、IV注入の前に再構成および/または希釈することができる。界面活性剤および共溶媒ベースのPF−00835231の医薬組成物のさらなる好ましい実施形態は、所望の共溶媒および所望の界面活性剤を含有する特殊希釈剤を含む適切な容器栓系に、PF−00835231を粉末として供給することである。この実施形態では、粉末および希釈剤は、RTUまたはRTD生成物を生成するために適切な順序で混合することができ、その生成物は、他の実施形態と同様にさらに希釈することができる。その粉末は、PF−00835231の形態3の水和物を含むことができる。
【0165】
薬物生成物が溶液として製剤化される前述の好ましい実施形態のそれぞれにおいて、pH依存性分解が観察される。薬物安定性を最大限にするために、最終的な医薬組成物は、好ましくは、約2〜約6、最も好ましくは約3〜約5の範囲の見かけのpHを有する。必要なpHを維持するために、医薬組成物は緩衝化され、好ましい緩衝液は、酢酸、乳酸、リン酸および酒石酸であり、最も好ましい緩衝液は、クエン酸である。驚くべきことに、pH調整およびCDの組合せは、最も好ましい化学的安定性をもたらす。
【0166】
薬物生成物が凍結乾燥される前述の好ましい実施形態のそれぞれにおいて、増量剤、浸透圧改変剤、または捕水用(water scavenging)賦形剤が含まれていてもよい。好ましい賦形剤には、糖、多価アルコール、ポリマー、およびアミノ酸が含まれ、より好ましい賦形剤には、PVP、スクロース、マンニトール、ラクトース、およびグリシンが含まれ、最も好ましい賦形剤には、トレハロース、デキストラン、および低または高分子量PEGが含まれる。
【0167】
実施例の一般法
超高性能液体クロマトグラフィー(UPLC)アッセイ法
Quaternary Solvent Manager、Sample Manager、Column Mangerおよび解析用フローセル検出器(検出波長292nm)を伴うTUV検出器を備えたWaters Acquity UPLC系。Cortecs T3、1.6μm、2.1mm×100mmのカラムを、40±2℃の温度に設定した。注入体積1μLを設定して、流速0.3mL/分で分析した。移動相A(10mMギ酸アンモニウム、pH3.0)および移動相B(メタノール)グラジエントを使用して、所望の分離を達成した。0〜1分については95:5の移動相A:移動相B比を設定し、次にその比を15分の時点で5:95に設定し、16分まで同じ比を維持し、その後、16.10分において95:5に設定し、同じ比で20分間分析した。
【0168】
超高性能液体クロマトグラフィー(UPLC)純度方法
Quaternary Solvent Manager、Sample Manager、Column MangerおよびPDA検出器(検出波長292nm)を備えたWaters Acquity UPLC系。Kinetex F5、1.7μm、2.1mm×150mmのカラムを、60±2℃の温度に設定した。注入体積5μLを設定して、流速0.4mL/分で分析した。移動相A(20mMギ酸アンモニウム、pH3.0)および移動相B(メタノール中20mMギ酸アンモニウム)グラジエントを使用して、所望の分離を達成した。0〜1分については65:35の移動相A:移動相B比を設定し、次にその比を31分の時点で45:55に設定し、その後、46分において5:95に設定し、46.5分において65:35に設定し、56分間分析した。
【0169】
粉末X線回折法1
粉末X線回折(PXRD)を、ホルダーにPF−00835231試料およそ20mgをロードすることによって実施した。測定は、Miniflex−600で、10mm×0.2mmウェル試料ホルダーを備えたRigaku 906163を使用して実施した。その系では、Rigaku PDXL2ソフトウェア(V2.8.4.0)およびMiniflex Guidance(V3.2.20)を使用した。その系を、ステップモードに設定し、2°2θ度の出発角度および40°2θ度の停止角度から、1秒間に0.019°2θのステップで、電圧40Vおよび電流15mAを用いて分析した。
【0170】
粉末X線回折法2
粉末X線回折パターンは、Cu放射線源を備えたBruker AXS D8 Endeavor回折計を使用して作製した。管電圧およびアンペア数を、それぞれ40kVおよび40mAに設定した。電動発散スリットを、11mmの一定照明に設定した。回折放射線を、LYNXEYE XE−Tエネルギー分散X線検出器を使用し、位置感知検出器(PSD)の開口部を4.00°に設定して検出した。データを、シータ−シータ角度計で、Cu波長2.0〜55.0°2θにおいてステップサイズ0.019°2θおよびステップ当たりの時間0.1秒を使用して収集した。試料を、解析のためにそれらをケイ素の低バックグラウンドホルダーに入れることによって調製し、データ収集中、15rpmで回転させた。データを、DIFFRAC.EVAソフトウェアで解析した。
【0171】
クエン酸緩衝液の調製
50mMクエン酸緩衝溶液100mLを、3.0、5.0、および7.0のpH値を標的にするために、メスフラスコ中で精製水、無水クエン酸、およびクエン酸ナトリウム二水和物から調製した。緩衝溶液を、標的pHに達するために1N水酸化ナトリウムまたは1N塩酸で調整した。
【0172】
例えば、pH5の50mMクエン酸緩衝液を、まず、精製水およそ25mLを100mLメスフラスコに添加することによって調製した。このフラスコに、無水クエン酸(Sigma Aldrich、Ph.Eur/USP)およそ331mgおよびクエン酸三ナトリウム二水和物(Sigma Aldrich、Ph.Eur./USP)およそ963mgを添加した。精製水を、メスフラスコに標的体積まで添加し、均質になるまで反転して混合した。pHを測定すると、さらなるpH調整は必要なかった。
【0173】
製剤実施例F1:PF−00835321の水溶性
飽和溶解度測定
クエン酸緩衝溶液を調製した後、必要なpHの緩衝溶液1000μLを、透明エッペンドルフ管に添加した。次に、PF−00835231の水和物形態およそ7mgを、エッペンドルフ管中、クエン酸緩衝溶液に添加した。このプロセスを、各pH値において合計3回反復して繰り返した。溶液を観察して、PF−00835321が完全に溶解していなかった(すなわち、溶液は飽和していた)ことを保証した。次に、管をパラフィルムで封止し、ドラムバイアルの内側に入れ、およそ4℃の温度制御環境においてローラーミキサー上に置いた。
【0174】
48時間後に、製剤をローラーミキサーから取り出し、pHをチェックし、本来の値と一致していることが見出された。次に試料を、遠心分離フィルターを有する新しいエッペンドルフ管に移した。次に製剤を、13,000毎分回転数(rpm)で、およそ4℃で3分間遠心分離した。フィルターに収集された固体残余分である試料を、PXRDによって解析し、フィルターを通過した濾液試料を、UPLCによって解析した(先を参照)。これらの飽和溶解度実験からの結果は、平均値として記録された以下の製剤の表F1に見出される。
【0175】
【表3】
【0176】
これらの飽和溶解度データにより、PF−00835231が、3.0〜7.0のpHとは独立に低い水溶性を有し、したがって、約1000mLまでの体積で適切な用量を達成するためには、溶解を可能にする製剤化手法の使用が必要になることが確認される。
【0177】
製剤実施例F2:共溶媒/水の混合物へのPF−00835231の溶解度
飽和溶解度測定
共溶媒/水の混合物へのPF−00835231の飽和水溶解度を、水中25%v/v共溶媒(co-co-solvent)含量まで研究した。
【0178】
製剤ごとに、共溶媒ストック溶液を、まず2.5%v/v、10%v/v、または25%v/vの濃度で調製した。25%v/vの共溶媒ストック溶液を調製するために、共溶媒5mLを20mLメスフラスコに添加し、その後、pH5の50mMクエン酸緩衝液1mLを添加し、その後、水を添加して嵩を増した。10%v/vの共溶媒ストック溶液を調製するために、共溶媒1mLを10mLメスフラスコに添加し、その後、pH5.0の50mMクエン酸緩衝液1mLを添加し、その後、水を添加して嵩を増した。2.5%v/vの共溶媒ストック溶液を調製するために、25%v/vの共溶媒ストック溶液1mLを10mLメスフラスコに添加し、その後、pH5.0の50mMクエン酸緩衝液0.9mLを添加し、その後、水を添加して嵩を増した。
【0179】
次に、緩衝化共溶媒ストック溶液2000μLをHPLCバイアルに添加した。次に、PF−00835231の水和物形態およそ10mgを、HPLCバイアル中の溶液に添加した。その溶液を、およそ1分間ボルテックスすることによって混合し、製剤を観察して、PF−00835231が完全に溶解していなかった(すなわち、溶液は飽和していた)ことを保証した。次に、管をパラフィルムで封止し、温度制御されたインキュベーターに入れ、回転させて混合した。温度制御されたインキュベーターを、40℃に8時間、15℃に5時間、および25℃に12時間制御した。実験の最後に、製剤をインキュベーターから取り出し、0.2μmのPVDF遠心分離フィルターを有する新しいエッペンドルフ管に移した。次に、溶液を13,000rcfで3分間遠心分離した。フィルターを通過した濾液試料を、HPLCによって解析した。溶解度データは、表2に示される。
【0180】
【表4】
【0181】
これらの溶解度データは、共溶媒の濃度と飽和溶解度の間の指数関数的関係を実証している。試験した共溶媒の中でも、PG<DMSO、エタノール、PEG300、PEG400<NMP<BAとして、順番にランク付けすることができる。これらの結果の最も驚くべき態様は、PGが、溶解度を最も改善せず(10%および25%v/vのDMSO、エタノール、PEG300、およびPEG400の約50%)、NMPおよびBAが、溶解度を最も改善する(10%v/vのDMSO、エタノール、PEG300、およびPEG400と比較して、それぞれ約3倍および約10倍)ということである。NMPは、優先順位が限られており、この投与経路を介する毒性が報告されていることに起因して、静脈内投与に適していない場合があるが、化合物が別の投与経路(すなわち、皮下)で投与されるならば適している場合がある。同等に挙動した4種の共溶媒について、25%v/vの共溶媒を添加すると、約1.5mg/mLまでの中程度の溶解度の改善が観察された。PF−00835231についての0.3mg/mL〜13.2mg/mLの標的注入濃度範囲と比較すると、このデータは、25%v/vまでの単一共溶媒だけが、標的用量範囲の下端をカバーできることを示している。その結果として、異なる共溶媒の混合物が、溶解度をさらに改善すると同時に、必要とされる賦形剤レベルを低減できるかどうかを見るために研究した。
【0182】
製剤実施例F3:共溶媒/共溶媒/水の混合物へのPF−00835231の溶解度
飽和溶解度測定
共溶媒/共溶媒/水の混合物へのPF−00835231の飽和水溶解度を、pH5に調整され、5mMクエン酸緩衝液を有していた水中で、50%v/vの全共溶媒含量まで研究した。エタノール、PEG400、およびPGは、IV投与生成物におけるそれらの使用の先例があることに起因して、共溶媒として最終候補に残った。ストック溶液10mLを、1%v/v〜25%v/vの各共溶媒の濃度で調製し、10%v/vの50mMクエン酸緩衝液をpH5.0に調整し、水で標的体積に希釈した。
【0183】
水和物形態(PF−00835231水和物、形態3)およそ10mgを、試料ごとに秤量してHPLCバイアルに入れ、体積1mLの目的の共溶媒ビヒクルを添加した。そのプロセスは、2回の反復で完了した。試料をボルテックスし、25℃のオーブン中のローラーミキサー上に48時間置いた。48時間後に、試料を目視で評価して、PF−00835321が完全に溶解していなかった(すなわち、溶液は飽和していた)ことを保証した。試料を、0.2μmのPVDF遠心分離フィルターを有する遠心分離プラスチック管に移した。溶液のpHを測定して、PF−00835231を添加した後にpHが変化していなかったことを確認した。試料を、13,000rcfで3分間遠心分離した。上清を収集し、HPLCによって解析した。溶解度データは、製剤の表F3に示される。
【0184】
【表5】
【0185】
これらの溶解度データは、全共溶媒含量と溶解度の間の相関を実証しており、ここでPEG400およびエタノールは同等の可溶化を達成しており、これはPGよりも高い。25%v/vのPEG400および25%v/vのエタノールを含有する製剤において、7.7mg/mLまでの中程度の溶解度の改善が観察される。PF−00835231についての0.3〜13.2mg/mLの標的注入濃度範囲と比較すると、このデータは、それぞれ25%v/vまでの2種の共溶媒が、標的用量範囲のすべてではないが、より大きい部分をカバーできることを示している。その結果として、共溶媒および界面活性剤の混合物が、溶解度をさらに改善すると同時に、必要とされる賦形剤レベルを低減できるかどうかを見るために研究した。
【0186】
製剤実施例F4:共溶媒/共溶媒/界面活性剤の混合物へのPF−00835231の溶解度
PF−00835231の溶解度を低減された共溶媒レベルで改善し、希釈時の沈殿リスクを低減するための、共溶媒と界面活性剤の混合物を研究した。
【0187】
飽和溶解度測定
共溶媒/共溶媒/界面活性剤の混合物へのPF−00835231の飽和水溶解度を研究した。DMSO、エタノール、PEG400、およびPGを、共溶媒として使用した。ポリソルベート80、ポリソルベート20、およびポリエチレングリコール(15)−ヒドロキシステアリン酸を、界面活性剤として使用した。
【0188】
製剤ごとに、共溶媒/共溶媒/界面活性剤のストック溶液を、まず、以下のいずれかを用いてメスフラスコ中で調製した。
・25%v/vの共溶媒1、25%v/vの共溶媒2、および12.5mg/mLの界面活性剤
・10%v/vの共溶媒1、10%v/vの共溶媒2、および5mg/mLの界面活性剤
・5%v/vの共溶媒1、5%v/vの共溶媒2、および2.5mg/mLの界面活性剤
【0189】
すべての製剤を、およそpH5.0の5mMクエン酸緩衝液の最終濃度で調製した。選択された濃度は、可能なRTUおよびRTD製剤をひとまとめに扱い、可能な製剤設計空間をマッピングする一助になる。
【0190】
PF−00835231の水和物形態およそ20mgを、各HPLCバイアルに添加した。次に、緩衝化共溶媒/共溶媒/界面活性剤のストック溶液1.5mLを、HPLCバイアルに添加した。溶液を、およそ1分間ボルテックスすることによって混合し、製剤を観察して、PF−00835231が完全に溶解していなかった(すなわち、溶液は飽和していた)ことを保証した。次に、管をパラフィルムで封止し、温度制御されたインキュベーターに入れ、回転させて混合した。温度制御されたインキュベーターを、回転数12rpmで、40℃に8時間、15℃に5時間、および25℃に12時間制御した。実験の最後に、製剤をインキュベーターから取り出し、0.2μmのPVDF遠心分離フィルターを有する新しいエッペンドルフ管に移した。次に、溶液を13,000rcfで3分間遠心分離した。フィルターを通過した濾液試料を、HPLCによって解析した。溶解度データは、製剤の表F4に示される。
【0191】
【表6】
【0192】
これらの溶解度データは、2種の共溶媒単独(製剤実施例F3)と比較して、2種の共溶媒および界面活性剤を含有する混合物について溶解度の改善を実証している。共溶媒の溶解度の傾向は、先の例と一致していた。使用した3種すべての界面活性剤(PS20、PS80、およびKolliphor HS−15)は、同等の溶解度を達成した。これらの結果から、25%v/vのエタノール、25%v/vのPEG400、および12.5mg/mLのPS80を添加すると、約16.6mg/mLの溶解度を達成することができ、これはPS80なしの同じ製剤よりも約9mg/mL高い。PF−00835231についての0.3mg/mL〜13.2mg/mLの標的注入濃度範囲と比較すると、このデータは、この組成物が、全標的用量範囲をカバーできることを示している。しかし、高い共溶媒レベルを有する製剤は、標的用量範囲の上端をカバーするためにこれらの製剤を臨床的に使用することを妨げるおそれがある、安全性リスクを示し得る。その結果として、低レベルの共溶媒を含む製剤は、標的用量範囲の下端をカバーすることを必要とされる場合があり、またはより高いレベルの共溶媒を含む製剤は、投与前に希釈されなければならない場合がある。
【0193】
純粋な共溶媒および界面活性剤の混合物における溶解度および安定性
共溶媒および界面活性剤を含有する製剤について最も集中的な選択肢を研究するために、製剤を、純粋な共溶媒および界面活性剤を用いて調製した。目的のビヒクルは、必要量のエタノール(Merck)、PEG400(Sigma Aldrich)、およびポリソルベート80 super refined(Croda)を、25mLメスフラスコに添加し、エタノールを補って嵩を増すことによって調製した。組成は、製剤の表に示される。PF−00835231の水和物形態およそ30mgをHPLCバイアルに添加し、その後、目的のビヒクルおよそ0.5mLを添加した。次に試料を、25℃のオーブン中のローラーミキサー上に置いた。48時間後に、すべての溶液が透明になり、飽和溶解度が達成されていなかったことを示した。次に、溶液を13,000rcfで3分間、2回遠心分離した。上清を収集し、HPLCによって解析した。飽和溶解度が達成されていなかったので、HPLCデータは、製剤の表F5に示される通り、達成された最小溶解度であった。
【0194】
【表7】
【0195】
製剤の表F5のデータは、純粋な共溶媒および界面活性剤の混合物が、0.3mg/mL〜13.2mg/mLの標的注入濃度範囲を上回ってPF−00835231を可溶化できることを示している。しかし、製剤の表F5に示される濃縮共溶媒混合物は、存在する共溶媒および界面活性剤の量に起因して、250mL〜500mLの標的注入体積ではIV投与に適していない可能性が高い。その結果として、これらの製剤は、関連する希釈剤(すなわち、0.9%w/v生理食塩水)で希釈しなければならず、得られた混合物は、物理的安定性(すなわち、薬物が溶液のままであるか、または沈殿するか)についてモニタリングされなければならない。
【0196】
【表8】
【0197】
製剤の表F6に示される必要量の賦形剤を秤量して、50mLメスフラスコに入れた。最終pHを制御するために、エタノール中0.1M無水クエン酸245μLをビヒクル1に添加し、エタノール中0.1M無水クエン酸288μLをビヒクル2に添加した。ビヒクル1には、精製水を補って嵩を増し、ビヒクル2には、エタノールを補って嵩を増し、混合するまで撹拌した。
【0198】
PF−00835231の水和物形態およそ800mgを、20mLメスフラスコに添加し、ビヒクル1またはビヒクル2のいずれかを補って嵩を増した。小型磁気撹拌子を添加し、メスフラスコを磁気撹拌機プレート上に移した。およそ40mg/mLの均質な溶液が達成されるまで、混合物を撹拌した。次に、希釈研究のために製剤を準備し、ビヒクル1とPF−00835231を、製剤1と記載し、ビヒクル2とPF−00835231を、製剤2と記載する。HPLC測定に基づくと、PF−00835231の濃度は、製剤1ではおよそ36mg/mLであり、製剤2ではおよそ37mg/mLであることが見出された。
【0199】
希釈は、外因性粒子を最小限に抑えるために層流エアフローフード内で、滅菌条件下で実施した。ガラス製品を予洗し、濾過水で10回すすいで、目に見えるおよび目に見えない微粒子を低減した。ガラス製品を、実験前に層流エアフローキャビネット内で一晩乾燥させた。希釈を実施するために、製剤1および製剤2を、0.50μmのPVDFシリンジフィルターを介して濾過して、別個の保持容器に入れた。製剤1では、およそ5.56mLを、0.9%w/v生理食塩水を含有する100mLのフラスコに添加した(およそ2mg/mLに18倍希釈)。全体積5.56mLの製剤1を、一度に添加し、次にフラスコにキャップし、反転により混合した。このプロセスを、合計3つの試料について繰り返した。製剤2では、およそ4.17mLを、100mLのフラスコに添加し、生理食塩水で100mLに希釈した(およそ1.5mg/mLに24倍希釈)。全体積4.17mLの製剤2を、一度に添加し、次にフラスコにキャップし、反転により混合した。このプロセスを、合計3つの試料について繰り返した。
【0200】
フラスコを室温で静置した。目視による外観アセスメントを、およそ5分、10分、30分、1時間、2時間、3時間、16時間、20時間、および24時間においてメスフラスコで完了し、プラセボ対照と比較した(プラセボ対照は、前述の通り、生理食塩水で希釈したPF−00835231を含まない製剤1および2であった)。すべての場合において、PF−00835231を含有するメスフラスコ中で16時間目の時点で粒子が観察され、3時間〜16時間の間に沈殿が生じていたことが示された。プラセボ対照は、透明であることが観察された。
【0201】
これらのデータは、純粋な共溶媒および界面活性剤の混合物が、PF−00835231の溶解度を著しく改善して、標的用量範囲の下端を有効にし得ることを示している。しかし希釈時には、より高濃度の製剤の物理的安定性が制限されることに起因して、用量範囲を完全に網羅することは不可能である。その結果として、代替の製剤を評価した。
【0202】
製剤実施例F5:CD/水の混合物へのPF−00835231の溶解度
共溶媒および界面活性剤ベースの可溶化手法による成功が限られていることに起因して、代替の手法を評価した。具体的には、SBE−β−CDおよびHP−β−CDを、複合体化剤として研究した。
【0203】
飽和溶解度実験
PF−00835231の飽和溶解度を、5mMクエン酸緩衝液でpH5に調整した溶液中で、15mg/mL〜100mg/mLで変わるCD濃度により評価した。CD溶液を、pH5.0の50mMクエン酸緩衝液2.5mLを25mLメスフラスコに添加することによって調製した。含水量について補正した、必要量のSBE−β−CD(Carbonate、医薬グレード)およびHP−β−CD(Roquette、非経口グレード、EP−USP/NF)を秤量して、メスフラスコに入れた。メスフラスコを、精製水を補って嵩を増し、次に完全に溶解し、混合するまで撹拌した。
【0204】
PF−00835231の水和物形態およそ5mgを秤量し、2mLのエッペンドルフ管に移した。CD溶液1mLを添加し、試料をボルテックスした。懸濁液を得、試料を5分間超音波処理した。超音波処理した後、試料を適切にラベリングされたドラムバイアルに入れ、次に25℃のオーブン中のローラーミキサー上で48時間維持した。このプロセスを、2種の試料がCD溶液ごとに作製されるように繰り返した。試料を48時間後に観察した。試料を、遠心濾過デバイス(0.22μmのPVDFフィルター)内で、13,000rpmで3分間遠心分離した。濾液を収集し、pHを測定して変化がないことを確認し、試料を効力についてHPLCによって解析した。
【0205】
【表9】
【0206】
製剤の表F7のデータに基づくと、CDは、100mg/mLのCD濃度においてPF−00835231の溶解度を、SBE−β−CDについては1.5mg/mLに、HP−β−CDについては1.9mg/mLに改善することができた。PF−00835231についての0.3mg/mL〜13.2mg/mLの標的注入濃度範囲と比較すると、このデータは、100mg/mLまでのCDが、標的用量範囲のより下端をカバーできることを示している。
【0207】
室温でのローラー混合実験のための方法
5mMクエン酸緩衝液中、HP−β−CDの100mg/mL溶液を調製した。PF−00835231の水和物形態およそ5mgを秤量して、2mLのエッペンドルフ管に入れた。5mMクエン酸緩衝溶液中CD1mLを、2mLのエッペンドルフ管に添加した。試料をボルテックスし、次に適切にラベリングされたドラムバイアルに入れ、25℃のオーブン中のローラーミキサー上で48時間維持した。このプロセスを、2種の試料がCD溶液ごとに作製されるように繰り返した。試料を48時間後に観察すると、固体が残っていた。次に試料を、遠心濾過デバイス(0.22μmのPVDFフィルター)内で、13,000rpmで3分間遠心分離した。上清を収集した。pHを測定し、残留固体の固体形態を、PXRDによって試験した。固体形態の変化は検出されなかった。試料を、効力についてHPLCによって解析し、その結果は製剤の表F8に示される(対照は、超音波処理なし、25℃で48時間のローラーミキサー)。
【0208】
延長超音波処理実験
5mMクエン酸緩衝液中、HP−β−CDの100mg/mL溶液を調製した。PF−00835231の水和物形態およそ5mgを秤量して、2mLのエッペンドルフ管に入れた。5mMクエン酸緩衝溶液中CD1mLを、2mLのエッペンドルフ管に添加した。試料をボルテックスし、次に20分間超音波処理した。次に、試料をドラムバイアルに入れ、25℃のオーブン中のローラーミキサー上に48時間置いた。このプロセスを、2種の試料がCD溶液ごとに作製されるように繰り返した。試料を48時間後に観察すると、固体が存在していた。次に試料を、遠心濾過デバイス(0.22μmのPVDFフィルター)内で、13,000rpmで3分間遠心分離した。濾液を収集し、pHを測定して変化がないことを確認し、濾液を効力についてHPLCによって解析した。結果は、製剤の表F8に示される(20分間の超音波処理、次に25℃で48時間のローラーミキサー)。
【0209】
【表10】
【0210】
加熱し、次にローラーミキサーを用いる実験のための方法
SBE−β−CDおよびHP−β−CDの100mg/mL溶液を、5mMクエン酸緩衝液中で調製した。PF−00835231の水和物形態およそ5mgを秤量して、2mLのエッペンドルフ管に入れた。5mMクエン酸緩衝溶液中CD1mLを、2mLのエッペンドルフ管に添加した。試料をボルテックスし、次にドラムバイアルに入れ、40℃のオーブン中のローラーミキサー上で24時間維持した。次に試料を、25℃のオーブン中のローラーミキサー上に48時間置いた。このプロセスを、2種の試料がCD溶液ごとに作製されるように繰り返した。次に試料を、遠心濾過デバイス(0.22μmのPVDFフィルター)内で、13,000rpmで3分間遠心分離した。濾液を収集し、pHを測定して変化がないことを確認し、濾液を効力についてHPLCによって解析した。結果は、製剤の表F8に示される(40℃で24時間の加熱、次に25℃で48時間のローラーミキサー)。製剤の表F7に対して、製剤の表F8における溶解度データに基づくと、PF−00835231の溶解度は、加熱または超音波処理によって実質的な影響を受けなかった。
【0211】
PF−00835231についての0.3mg/mL〜13.2mg/mLの標的注入濃度範囲と比較すると、このデータは、100mg/mLまでの濃度のCDを含有する製剤だけが、標的用量範囲のより低い部分をカバーできることを示している。その結果として、CDと他の賦形剤の混合物が、溶解度をさらに改善すると同時に、必要とされる賦形剤レベルを低減できるかどうかを見るために研究した。
【0212】
製剤実施例F6:ポリマー賦形剤を含むCD/水の混合物へのPF−00835231の溶解度
飽和溶解度実験
PF−00835231の飽和溶解度を、5mMクエン酸緩衝液でpH5に調整した溶液中で、CD濃度を15mg/mLに固定して評価した。異なるポリマー賦形剤の効果を、一緒に研究した場合の溶解度の増強についての文献報告に基づいて研究した。
【0213】
表8に列挙した製剤ごとに、ストック溶液10mLを、50mMクエン酸緩衝液1mL、150mg/mLのHP−β−CDストック溶液1mL、および標的量のポリマー賦形剤を10mLメスフラスコ中で混合することによって調製した。ストック溶液を、精製水で標的体積に希釈した。以下のポリマー賦形剤を使用した。PEG400(Fisher Chemical、NF)、PEG3350(Spectrum Chemical、USP)、HPMC(Sigma、粘度2600〜5600cP)、およびPVP(Alfa Aesar、分子量8000Da)。
【0214】
次に、PF−00835231の水和物形態およそ2.5mgを、製剤ごとにHPLCバイアルに添加し、ストック溶液およそ0.5mLを添加して、およそ5mg/mのPF−00835231の飽和溶液を作成した。製剤を5分間超音波処理し、次に周囲条件でおよそ24時間、シェーカー上に置いた。次に、製剤を、0.1μmのPVDF遠心フィルターを有する遠心管に移し、13,000rcfで3分間遠心分離した。濾液を収集し、PF−00835231標準に対してHPLCによって解析して、PF−00835231についてのアッセイ値を提供した。
【0215】
【表11】
【0216】
製剤の表F9の溶解度データに基づくと、PF−00835231の溶解度は、研究した追加の賦形剤によって実質的に影響を受けなかった。その結果として、CDベースの製剤の臨床適用は、研究した添加物質では改善されない。
【0217】
製剤実施例F7:異なる添加順で調製したCD/共溶媒/水の混合物へのPF−00835231の溶解度
溶解度実験
PF−00835231の溶解度を、エタノールおよびHP−β−CDを含有する水溶液中で研究した。およそ300mg/mLのHP−β−CDストック溶液を、HP−β−CD(Ashland、医薬グレード)粉末およそ6.00gを秤量して20mLメスフラスコに入れ、精製水で希釈して嵩を増すことによって調製した。フラスコにキャップし、透明になるまで反転して混合した。その後、およそ15mg/mLのHP−β−CDストック溶液を、およそ300mg/mLのHP−β−CDストック溶液0.5mLおよびpH5.0に調整したおよそ50mMクエン酸緩衝液1mLを10mLメスフラスコに添加し、精製水で希釈して嵩を増すことによって調製した。
【0218】
PF−00835231製剤を、4mLのバイアル中、まずPF−00835231の水和物形態およそ8mgをバイアルに添加することによって調製した。一例として、エタノール(Pharmco−AAPER、ACS/USPグレード)およそ100μLを、PF−00835231に添加し、溶液を溶解するまでボルテックスし、その後、およそ15mg/mLのHP−β−CDストック溶液3.9mLを添加した。得られた製剤は、およそ15mg/mLのHP−β−CDおよび2mg/mLのPF−00835231、ならびに2.5%v/vの共溶媒の最終組成を有しており、PF−00835231に対するCDのモル比はおよそ2.5になる。別の例として、エタノール100μLをPF−00835231に添加し、溶液を溶解するまでボルテックスし、pH5.0の5mMクエン酸緩衝溶液3.9mLを添加した。別の例では、15mg/mLのHP−β−CDストック溶液3.9mLをPF−00835231に添加し、溶液を溶解するまでボルテックスし、エタノール100μLを添加した。
【0219】
製剤を、およそ3分間超音波処理し、次に周囲条件でおよそ24時間、シェーカー上に置いた。次に、製剤を、0.1μmのPVDF遠心フィルターを有する遠心管に移し、13,000rcfで3分間遠心分離した。濾液を収集し、PF−00835231標準に対してHPLCによって解析して、PF−00835231についてのアッセイ値を提供した。
【0220】
【表12】
【0221】
製剤の表F10の溶解度データに基づくと、PF−00835231の溶解度は、CDに対するエタノールの添加順を逆にすると、0.4mg/mLからおよそ5倍の1.9mg/mLに改善された。具体的には、まずPF−00835231をエタノールに溶解させ、その後、CD含有溶液で希釈すると、これによって溶解度が改善される。溶解度データの改善は、目視による観察によってさらに裏付けられ、その観察は、より低い溶解度を有する溶液が、24時間後に目に見える微粒子を有しており、一方、より高い溶解度を有する溶液が、24時間後に透明であることを示している。最初にPF−00835231をエタノールに溶解し、その後、CDなしで希釈する対照実験は、標的溶解度を達成し、物理的に安定な製剤を生成するのにCDが必要であることを示している。
【0222】
製剤の表F10の溶解度データを、PF−00835231についての0.3mg/mL〜13.2mg/mLの標的注入濃度範囲と比較する場合、このデータは、およそ15mg/mLのHP−β−CDとおよそ2.5%v/vのエタノールが、標的用量範囲のより下端をカバーすることができたが、全標的用量範囲をカバーするには不十分であることを示している。
【0223】
凍結解凍実験
溶解度実験の後に、溶液を−20℃の冷凍庫に約24時間入れ、取り出し、室温に置き、解凍させた。次に、その製剤を目視検査によって解析した。いずれの試料にも微粒子は観察されず、これらの製剤が凍結に対して物理的に安定であることが実証された。
【0224】
製剤実施例F8:様々な組成物を用いて調製したCD/共溶媒/水の混合物へのPF−00835231の溶解度
PF−00835231の代替の共溶媒の組合せが、同等の結果をもたらし得るかどうかを研究するために、追加の製剤を調製した。PF−00835231を、まず固定体積の1種または2種の共溶媒に可溶化させた。その後、共溶媒混合物を、およそ80mg/mLのSBE−β−CD、5mMクエン酸緩衝液、それぞれおよそ3.0%v/vおよびおよそ4mg/mLの濃度のPF−00835231を有する水溶液と合わせて、医薬組成物を生成した。標的組成物は、およそ4.2:1のCD:PF−00835231モル比を有している。これらの製剤は、250mL、500mL、または1000mLの投与体積で、1gまで、2gまで、または4gまでの用量のPF−00835231を送達可能にすると思われる。
【0225】
具体的には、製剤の表Fにおける各共溶媒の組合せのストック溶液10mLを、10mLメスフラスコ中、2.5mLの共溶媒1を測定し、その後、共溶媒2で希釈して嵩を増して、体積でおよそ75%の共溶媒1/25%の共溶媒2のストック溶液を調製することによって調製した。フラスコを、数回反転して混合し、40℃のオーブンにおよそ30分間入れた後、実験した。およそ300mg/mLのSBE−β−CDストック溶液を、SBE−β−CD粉末およそ3.00gを秤量して10mLメスフラスコに入れ、精製水で希釈して嵩を増すことによって調製した。フラスコにキャップし、透明になるまで反転して混合した。
【0226】
PF−00835231ストック溶液を、2mLのHPLCバイアル中、まずPF−00835231の水和物形態およそ20mgをバイアルに添加し、その後、加熱した共溶媒ストック混合物およそ150μLを添加することによって調製した。次に、溶液をボルテックスして約1分間混合した。得られたPF−00835231ストック溶液を、40℃で温度制御されたインキュベーターに入れ、そこで試料を回転させて混合した。溶液を、完全に溶解した20分後に取り出した。
【0227】
別個の2mLのHPLCバイアル中、pH5.0に調整したおよそ50mMクエン酸塩溶液0.15mLおよび300mg/mLのSBE−β−CDストック溶液0.4mLを混合した。その後、精製水0.905mLをバイアルに添加した。この添加の後、次にPF−00835231溶液45mLを、CD含有溶液に移して、およそ4mg/mLのPF−00835231溶液1.5mLを作成した。次に、溶液にキャップし、ボルテックスして混合した。次に、溶液を周囲条件でシェーカー上に置いた。
【0228】
一定分量の各製剤を、HPLCによるアッセイ決定のためにおよそ1日後および5日後に取り出した。具体的には、一定分量150μLを、0.1μmのPVDFフィルターを有する遠心フィルターに添加し、13,000rcfで3分間遠心分離した。濾液を収集し、PF−00835231標準に対してHPLCによって解析して、PF−00835231についてのアッセイ値を提供し、それを製剤の表F11に記録する。
【0229】
【表13】
【0230】
製剤の表F11は、1種または複数の共溶媒を使用して、PF−00835231を可溶化することができ、その後、共溶媒混合物をCD含有水溶液と合わせて、物理的に安定な製剤を作成できることを実証している。すべての溶液が、25℃で5日間混合した後、透明なままであった。さらに、1〜5日の間に、測定誤差内で一貫したPF−00835231アッセイ値が観察された。製剤の表F11のデータは、以下の共溶媒:DMSO単独、PG単独、エタノールとDMSO、PG、PEG300もしくはPEG400の組合せ、またはDMSOおよびPEG400の組合せを用いて調製した製剤の同等の物理的安定性を示している。
【0231】
製剤実施例F9:沈殿を最小限に抑え、溶解度および安定性を最大限にするための組成物の最適化
製剤実施例F8において、共溶媒へのPF−00835231の溶解、その後のCD含有溶液との混合により、溶解度および物理的安定性が改善されたことが見出された。この実験手法をさらに調査すると、PF−00835231は、エタノールの添加時に(CDを添加する前)、一貫性なく溶液から沈殿した。この実験手法を用いてより一貫した結果を可能し、PF−00835231の沈殿の可能性を低減するために、追加の共溶媒(PEG400)をエタノールに添加した。およそ10mg/mL〜240mg/mLの範囲のPF−00835231の濃度およびエタノールに対して0%〜100%の範囲のPEG400の体積分率について、50種を超える異なる製剤からのデータを収集した。
【0232】
製剤の調製
代表的な実験では、共溶媒混合物のストック溶液20mLを、20mLメスフラスコ中、0mL、2mL、4mL、5mL、10mL、15mL、または20mLのエタノール(Pharmco−AAPER、ACS/USPグレード)を測定し、その後、PEG400(Fisher Chemical、Carbowax、NFグレード)で希釈して嵩を増して、およそ100%、90%、80%、75%、50%、25%、または0%のPEG400のストック溶液を調製することによって調製した。
【0233】
代表的な実験では、およそ300mg/mLのSBE−β−CDまたはHP−β−CDストック溶液を、20mLメスフラスコ中、SBE−β−CDまたはHP−β−CD粉末およそ6.00gを秤量し、精製水で希釈して嵩を増すことによって調製した。フラスコにキャップし、透明になるまで反転して混合した。
【0234】
代表的な実験では、PF−00835231製剤を、2mLのHPLCバイアル中、まず定義された量のPF−00835231の水和物形態をバイアルに添加し、その後、少量の共溶媒ストック混合物、典型的に100μL〜500μLを添加することによって調製した。次に溶液を、溶液が目視で透明になるまでボルテックスすることによって、および/または溶液を40℃に加熱することによって溶解させた。沈殿が観察されたら、試料をそれ以上進展させなかった。
【0235】
別個の2mLのHPLCバイアル中、pH5.0に調整した50mMクエン酸塩溶液100μL、定義された量の300mg/mLのSBE−β−CDまたはHP−β−CDストック溶液、および定義された量の精製水を混合した。次に、共溶媒中PF−00835231溶液を、CD含有溶液と混合した。次に、合わせた溶液にキャップし、ボルテックスして混合した。次に、溶液を周囲条件でシェーカー上におよそ24時間置いた。次に、製剤を、0.1μmのPVDF遠心フィルターを有する遠心管に移し、13,000rcfで3分間遠心分離した。濾液を収集し、PF−00835231標準に対してHPLCによって解析して、PF−00835231についてのアッセイ値を提供した。0のデータに基づくと、高体積分率のエタノール(50%またはそれを超える)および高濃度のPF−00835321(100mg/mLを上回る)を有する溶液は、沈殿しやすい傾向があると結論付けることができる。その結果として、沈殿の可能性を制限し、共溶媒混合物へのPF−00835231の完全な可溶化を可能にするためには、少なくとも50%の体積分率のPEG400、好ましくは少なくとも75%のPEG400が利用されるべきである。これらの条件下では、少なくとも200mg/mLのPF−00835231の溶解度を達成することができる。さらに、100%体積分率のPEG400では、溶液は粘性が非常に高くなり、溶解はゆっくり進行し、潜在的な処理上の困難が生じることを示している。
【0236】
様々な共溶媒およびCD含量を有する製剤の溶解度および安定性
PF−00835231の溶解度および物理的安定性に対する共溶媒およびCD含量の影響をさらに理解するために、様々な濃度の溶液を、前述の通り調製した。PF−00835231は、25%のエタノールに対して75%のPEG400の固定体積分率で、固定体積の共溶媒に可溶化した。その後、溶液を、およそ5mMクエン酸緩衝液および様々な濃度のSBE−β−CDまたはHP−β−CDを有する水溶液と混合して、医薬組成物を生成した。次に、すべての溶液をおよそ48時間混合して、室温ですべての平衡化を可能にし、その後、溶液を前述の通り濾過し、PF−00835231アッセイのためにPF−00835231標準に対してHPLCによって解析した。このデータは、製剤がアッセイ標的の90%以内であったかどうかに基づいて、
図11に記録される。
【0237】
図11に図示されるデータに基づくと、PF−00835321に対してより高いCDのモル比およびより低い全共溶媒含量を有する製剤について、より大きい物理的安定性が観察される。PF−00835231に対してCDをより多くすると、複合体化しやすくし、したがって可溶化しやすくする助けになる可能性が高いが、一方、共溶媒をより多くすると、複合体化が妨害され、可溶化が阻害される。
【0238】
製剤実施例F10:80mg/mLのSBE−β−CD、様々な共溶媒レベルのPEG400およびエタノール、ならびに様々なPF−00835231の濃度を有する製剤の溶解度および安定性
より高濃度のPF−00835231で安定な溶液を調製できるかどうかを研究するために、溶液を、製剤実施例F7よりも高いCD濃度で調製した。PF−00835231を、およそ3:1のPEG400:エタノールの固定体積分率で、固定体積の共溶媒に可溶化させた。その後、溶液を、およそ80mg/mLのSBE−β−CDおよび5mMクエン酸緩衝液の最終濃度まで、水溶液と混合した。これらの希釈により、およそ1.5%、3.0%、4.5%、および6.0%v/vの全共溶媒の濃度をもたらした。標的組成物は、2mg/mL、4mg/mL、6mg/mL、および8mg/mLのPF−00835231の濃度について、それぞれ、およそ8.4:1、4.2:1、2.8:1、および2.1:1のCD:PF−0083231モル比を有している。最高濃度の製剤は、250mL、500mL、または1000mLの投与体積で、2g、4g、または8gまでの用量のPF−00835231を送達可能にすると思われるが、より高い投与体積は、先例のある賦形剤レベルによって制限され得る。
【0239】
具体的には、共溶媒のストック溶液10mLを、10mLメスフラスコ中、エタノール(Pharmco−AAPER、ACS/USPグレード)2.5mLを測定し、その後、PEG400(Fisher Chemical、Carbowax、NFグレード)で希釈して嵩を増して、体積でおよそ75%のPEG400/25%のエタノールのストック溶液を調製することによって調製した。フラスコを数回反転して混合し、50℃のオーブンにおよそ30分間入れた後、実験した。およそ300mg/mLのSBE−β−CDストック溶液を、SBE−β−CD(Carbosynth、医薬グレード)粉末およそ3.00gを秤量して10mLメスフラスコに入れ、精製水で希釈して嵩を増すことによって調製した。フラスコにキャップし、透明になるまで反転して混合した。
【0240】
PF−00835231ストック溶液を、2mLのHPLCバイアル中、まずPF−00835231の水和物形態およそ40mgをバイアルに添加し、その後、加熱した共溶媒ストック混合物およそ300μLを添加することによって調製した。次に溶液を、ボルテックスして約1分間混合した。得られたPF−00835231ストック溶液を、50℃のオーブンに入れ、5分ごとに取り出して完全に溶解するまでボルテックスした。
【0241】
別個の2mLのHPLCバイアル中、pH5.0に調整したおよそ50mMクエン酸塩溶液100μLおよび300mg/mLのSBE−β−CDストック溶液267μLを混合した。その後、精製水618μL、603μL、588μL、または573μLを、2mg/mL、4mg/mL、6mg/mL、または8mg/mLのPF−00835231に対応するバイアルに添加した。この添加の後、次にPF−00835231溶液15mL、30mL、45mL、または60mLを、CD含有溶液に移して、それぞれおよそ2mg/mL、4mg/mL、6mg/mL、または8mg/mLのPF−00835231溶液1mLを作成した。次に、溶液にキャップし、ボルテックスして混合した。次に、溶液を周囲条件でシェーカー上に置いた。
【0242】
一定分量の各製剤を、HPLCによるアッセイ決定のためにおよそ1日後、3日後、および7日後に取り出した。具体的には、一定分量150μLを、0.1μmのPVDFフィルターを有する遠心フィルターに添加し、13,000rcfで3分間遠心分離した。濾液を収集し、PF−00835231標準に対してHPLCによって解析して、PF−00835231についてのアッセイ値を提供し、それを
図12に記録する。
図12は、2mg/mL、4mg/mL、6mg/mLおよび8mg/mLの4つの異なるPF−00835231濃度における、エタノール、PEG400、およびSBE−β−CDを含有する濾過したPF−00835231製剤の7日間にわたるアッセイ値を図示している。アッセイ値は、7日間にわたって変化せず、これは製剤の物理的安定性を反映している。効力は、不純物および含水量については補正されず、それによって標的未満のアッセイ値につながった。
【0243】
図12の溶解度データ(8mg/mLまでのPF−00835231)を、PF−00835231についての0.2〜13.2mg/mLの標的注入濃度範囲と比較すると、このデータは、およそ80mg/mLのSBE−β−CDとエタノールおよびPEG400により、ほぼ全標的濃度範囲をカバーできたことを示している。賦形剤を含有すると思われるこれらの医薬組成物は、標的注入体積で調製される場合、IV投与された薬物生成物について先例のある1日用量レベル以内である。
【0244】
製剤実施例F11:80mg/mLのSBE−β−CD、1.1%v/vのエタノール、3.4%v/vのPEG400、および6mg/mLのPF−00835231を有する製剤のスケールアップ、化学的安定性、および物理的安定性
製剤の調製
製剤実施例F10において調製した製剤のロバスト性をさらに評価するために、単一製剤を、安定性研究において使用するのにスケールアップするために選択した。具体的には、80mg/mLのSBE−β−CD、4.5%v/vの全共溶媒(1.1%v/vのエタノール、3.4%v/vのPEG400)、および6mg/mLのPF−00835231を有する製剤を調製した。標的組成物は、PF−00835231に対するCDのモル比がおよそ2.8である。この製剤は、250mL、500mL、または1000mLの投与体積で、1.5g、3g、または6gの用量のPF−00835231を送達可能にすると思われるが、より高い投与体積は、先例のある賦形剤レベルによって制限され得る。
【0245】
この製剤を調製するために、共溶媒のストック溶液10mLを、10mLメスフラスコ中、エタノール(Pharmco−AAPER、ACS/USPグレード)2.5mLを測定し、その後、PEG400(Fisher Chemical、Carbowax、NFグレード)で希釈して嵩を増して、体積でおよそ75%のPEG400/25%のエタノールのストック溶液を調製することによって調製した。フラスコを数回反転して混合し、50℃のオーブンにおよそ30分間入れた後、実験した。およそ300mg/mLのSBE−β−CDストック溶液を、SBE−β−CD粉末およそ3.00gを秤量して10mLメスフラスコに入れ、精製水で希釈して嵩を増すことによって調製した。フラスコにキャップし、透明になるまで反転して混合した。300mg/mLのSBE−β−CDの追加の溶液20mLも同様に調製した。
【0246】
100mLメスフラスコ中、pH5に調整したおよそ50mMのクエン酸塩溶液10.5mLおよび300mg/mLのSBE−β−CDストック溶液28mLを混合し、その後、精製水で標的体積に希釈した。フラスコにキャップし、反転して混合した。これにより、最終濃度5mMのクエン酸緩衝液および80mg/mLのSBE−β−CDを有する製剤を調製する水溶液が得られる。
【0247】
PF−00835231ストック溶液を、2mLのHPLCバイアル中、まずPF−00835231の水和物形態およそ200mgをバイアルに添加し、その後、加熱した共溶媒ストック混合物およそ1.5mLを添加することによって調製した。次に、溶液をボルテックスして約1分間混合した。得られたPF−00835231ストック溶液を、50℃のオーブンに入れ、5分ごとに取り出して完全に溶解するまでボルテックスした。
【0248】
次に、クエン酸緩衝液およびSBE−β−CDストック溶液14.29mLを、2つの別個の20mLシンチレーションバイアルに添加した。この添加の後、次にPF−00835231ストック溶液0.71mLをバイアルに移して、15mLのおよそ6mg/mLのPF−00835231を作成した。次に、溶液にキャップし、ボルテックスして混合した。薬物生成物溶液を一晩混合し、0.2μmのPVDFフィルターを介して濾過した。次に、一定分量0.5mLの薬物生成物溶液を、4mLのバイアルに充填し、ストッパー、クリンプを嵌め、−20℃、4℃、および25℃の温度制御チャンバに入れた。
【0249】
物理的安定性
一定分量の各製剤を、HPLCによるアッセイおよび純度決定のために1日後、3日後、7日後、16日後、または30日後のいずれかに取り出した。具体的には、一定分量0.2mLを、0.1μmのPVDFフィルターを有する遠心フィルターに添加し、13,000rcfで3分間遠心分離した。濾液を収集し、PF−00835231標準に対してHPLCによって解析して、PF−00835231についてのアッセイ値を提供した。
【0250】
調製した薬物生成物溶液が過飽和になるか、またはそうでなければ物理的に不安定になった場合には、HPLC試料調製中の濾過ステップにより、任意の沈殿したPF−00835231が除去されるはずなので、アッセイ値の経時的な低下が予測されると思われる。さらに、溶液が室温で過飽和になった場合には、冷蔵または冷凍貯蔵温度への曝露により、沈殿が誘導され、アッセイの低下が引き起こされるはずである。図に示される通り、−20℃におけるアッセイ値は、7日間にわたって一貫しているように見え、4℃および25℃におけるアッセイ値は、試験した30日間にわたって一貫しているように見える。その結果として、このデータは、研究した期間にわたって溶液が物理的に安定であることを示唆している。
図13は、−20℃(上)、4℃(中央)、および25℃(下)の3種の温度について、日数の時間関数としてプロットされた、mg/mLによるPF−00835231アッセイ値を図示している。条件ごとに、2つの別個の試料からのデータをプロットし、データへの線形フィットを用いて示す。データは、すべての試料について、研究した期間にわたって一貫したアッセイ値を示している。
【0251】
混合物の物理的安定性
物理的安定性をさらに評価するために、薬物生成物溶液を、0.9%w/v塩化ナトリウムで、それぞれ2.4mg/mLおよび0.6mg/mLの濃度に2.5倍および10倍希釈した。これらの希釈は、薬物生成物が、投与前に希釈されるすぐに希釈できる濃縮物として調製され得る、可能なIV投与条件を模倣している。希釈実験によっても、製剤の物理的および化学的安定性をさらに評価する。
【0252】
2.5倍希釈物を調製するために、濾過した製剤1.6mLを、4mLのバイアル中、0.9%w/v塩化ナトリウム2.4mLに添加した。10倍希釈物を調製するために、濾過した製剤0.4mLを、4mLのバイアル中、0.9%w/v塩化ナトリウム3.6mLに添加した。一定分量の各製剤を、HPLCによるアッセイおよび純度決定のために25℃で0日後および3日後に取り出した。具体的には、一定分量0.2mLを、0.1μmのPVDFフィルターを有する遠心フィルターに添加し、13,000rcfで3分間遠心分離した。濾液を収集し、PF−00835231標準に対してHPLCによって解析して、PF−00835231についてのアッセイ値を提供した。
【0253】
希釈なし、2.5倍希釈、および10倍希釈の試料を比較すると、アッセイ値は、製剤の表F12に示される通り、3日間にわたって一貫しており、これは物理的安定性を示している。さらに、PF−00835231の化学的安定性は、各希釈にわたって同等である。
【0254】
【表14】
【0255】
製剤実施例F12:CDを含むおよび含まないPF−00835231製剤の化学的安定性
PF−00835231の化学的安定性に対するCDの影響を研究するために、CDを含むおよび含まない溶液を調製した。具体的には、溶液10mLを、およそ1mg/mLのPF−00835231、5%v/vの全共溶媒(2.5%v/vのPEG400、2.5%v/vのエタノール)、5mMクエン酸緩衝液、および場合により15mg/mLのSBE−β−CDの最終組成を用いて調製した。CDを含むおよび含まない溶液についてpHの影響を理解するために、2種の製剤をpH4で調製し、2種の製剤をpH5で調製した。CDを含む製剤では、標的組成物は、PF−00835231に対するCDのモル比がおよそ3.2である。この製剤は、250mL、500mL、または1000mLの投与体積で、0.25g、0.5g、または1gの用量のPF−00835231を送達可能にすると思われる。
【0256】
具体的には、およそ75mg/mLのSBE−β−CDストック溶液を、SBE−β−CD粉末およそ3.75gを秤量して50mLメスフラスコに入れ、精製水で希釈して嵩を増すことによって調製した。フラスコにキャップし、溶液が透明になるまで数回反転して混合した。その後、およそ75mg/mLのSBE−β−CDストック溶液20mLを、100mLメスフラスコ中、pH4または5のいずれかのおよそ50mM緩衝液10mLと混合した。次に、得られた溶液を、精製水で標的体積に希釈し、透明になるまで反転して混合した。得られた溶液は、およそ15mg/mLのSBE−β−CDおよびpH4または5のいずれかの5mMクエン酸緩衝液の最終組成を有していた。pH4および5の5mMクエン酸緩衝液も同様に、SBE−β−CDなしに調製した。
【0257】
2mLのHPLCバイアルに、PF−00835231の水和物形態およそ10mgを添加し、その後、PEG400(Fisher Chemical、Carbowax、NFグレード)250mLおよびエタノール(Pharmco−AAPER、ACS/USPグレード)250mLを添加した。PF−00835231製剤を、溶解するまで超音波処理した。
【0258】
10mLのシンチレーションバイアルに、およそ15mg/mLのSBE−β−CDストック溶液9.5mLまたはクエン酸緩衝液9.5mLを添加し、その後、共溶媒に溶解したPF−00835231を添加した。次に、製剤を分割し、4℃、22℃、または40℃で安定状態にした。一定分量を、およそ0日後、1日後、3日後、および7日後に取り出し、純度プロファイルをHPLCによって調べた。
【0259】
この実験から、4℃では、すべての試料について分解は観察されなかった。CDを含む試料は、複数回の凍結および解凍に対して物理的に安定であった(すなわち、微粒子は形成されなかった)が、一方、CDを含まない試料は、解凍後に沈殿を示した。22℃では、すべての試料についてクロマトグラフィー純度の0.5%未満の低下が観察され、pH4においてSBE−β−CDの存在下で分解が最も少なかった。40℃でも同じ傾向が観察される。その結果として、この実験は、驚くべきことに、CDがPF−00835231の化学的および物理的安定性の両方について保護効果を提供することを実証している。
図14は、40℃(上)および22℃(下)におけるpH4(黒色、白丸)およびpH5(灰色、黒丸)のCDを含む(破線)およびCDを含まない(実線)溶液中の、PF−00835231の化学的安定性を図示する。
【0260】
参照実施例8:N−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}ペンチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミド
N−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドの調製について記載される手順に従って、ただしN−((1S)−1−{[((1S)−3−クロロ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}ペンチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドを代用し、重要でない変更を加えることにより、黄色の粗製泡状物を提供した。この材料を、Biotage MPLC(25Mカラム、5〜6%メタノール/クロロホルム)によって精製して、標題化合物82mg(35%)を濁った白色の固体として得た。
1H NMR (DMSO-d
6) δ 11.57 (s, 1 H), 8.42 (d, J = 8 Hz, 1 H),
8.38 (d, J = 4 Hz, 1 H), 7.62 (s, 1 H), 7.35 (s, 1 H), 7.09 (t, J = 8 Hz, 1 H),
6.99 (d, J = 8 Hz, 1 H), 6.49 (d, J = 8 Hz, 1 H), 5.06 (t, J = 8
Hz, 1 H), 4.44 (m, 2 H), 4.25 (dd, J = 8, 20 Hz, 1 H), 4.14 (dd, J = 8, 20 Hz,
1 H), 3.87 (s, 3 H), 3.08 (m, 2 H), 2.28 (m, 1 H), 2.10 (m, 1 H), 1.91 (m, 1
H), 1.74 - 1.54 (m, 4 H), 1.32 (m, 4 H), 0.87 (t, J = 8 Hz, 3 H); C
24H
32N
4O
8のMS (ESI+) m/z 473.2 (M+H)
+; 元素分析 C
24H
32N
4O
6・0.6 H
2Oおよび・0.2酢酸エチルの計算値: C,
59.46; H, 7.01; N, 11.18. 実測値:
C, 53.37; H, 6.94; N, 11.23: HRMS (ESI+) C
24H
32N
4O
6+H1の計算値473.2395, 実測値473.2382.
【0261】
中間体の調製:メチルN−[(9H−フルオレン−9−イルメトキシ)カルボニル]−5−メチル−L−ノルロイシネート
N−[(9H−フルオレン−9−イルメトキシ)カルボニル]−5−メチル−L−ノルロイシン(2.14g、5.8mmol)のメタノール(15mL)溶液に、トルエン(30mL)を添加し、その後、TMS−ジアゾメタン(2.9mL、ヘキサン中2M、5.8mmol)を滴下添加した。TLC解析により、不完全反応が示され、黄色が持続されるまで、TMS−ジアゾメタンを滴下添加した。この時、AcOH(1mL)を添加することによって反応をクエンチし、その後、真空中で濃縮した。残留物を、Biotageフラッシュクロマトグラフィーによって酢酸エチル/ヘキサンで溶離して精製して、標題化合物を白色の固体2.18g、98%として得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 7.76 (2 H, d, J = 7.6 Hz), 7.60 (2 H, dd,
J = 7.2, 3.9 Hz), 7.40 (2 H, t, J = 7.2 Hz), 7.31 (2 H, t, J = 7.5 Hz), 5.26 (1
H, d J = 8.6 Hz), 4.31 - 4.51 (3 H, m), 4.23 (1H, t, J = 7.1. Hz), 3.75 (3 H,
s), 1.78 - 1.93 (1 H, m), 1.6- - 1.76 (1 H, m), 1.45 - 1.60 (1 H, m), 1.05 -
1.34 (2 H, m), 0.88 (d, J = 4 Hz, 3 H), 0.86 (d, J = 4 Hz, 3 H), C
23H
27NO
4のMS (APCI+) m/z 160.1 (M-Fmoc+H)
+.
【0262】
中間体の調製:メチルN−(tert−ブトキシカルボニル)−5−メチル−L−ノルロイシネート
N−[(9H−フルオレン−9−イルメトキシ)カルボニル]−5−メチル−L−ノルロイシン(2.18g、5.72mmol)のDMF(50mL)溶液に、KF(2.33g、40.04mmol)を添加し、その後、トリエチルアミン(1.70mL、12.24mmol)および二炭酸(decarbonate)ジ−tert−ブチル(7.39mmol)を添加し、混合物を周囲温度で撹拌した。4時間後に、TLC解析により不完全反応が示され、反応混合物を、一部のKF(2.7g、46.55mmol)およびBOC
2O(800mg、3.67mmol)で処理した。16時間後に、混合物をジエチルエーテル(300mL)で希釈し、飽和NaHCO
3(2×50mL)、1M塩酸(2×50mL)、NaHCO
3(50mL)、ブライン(50mL)で洗浄し、MgSO
4上で乾燥させ、濾過し、溶媒を真空中で蒸発させて、粗製生成物を得、それをBiotageフラッシュクロマトグラフィーによってジクロロメタン/ヘキサンで溶離して精製して、標題化合物を透明な油状物980mg、66%として得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 4.96 (1 H, d, J = 6.8 Hz), 4.21 - 4.32
(1H, m), 3.72 (3 H, s) 1.72 - 1.85 (1 H, m), 1.46 - 166 (2 H, m) 1.43 (9 H, s),
1.11 - 1.29 (2 H, m) 0.99 (d, J = 4 Hz, 3 H), 0.86, (d, J = 4 Hz, 3 H); C
13H
25NO
4のMS (API-ES+) m/z 282.2 (M+Na)
+.
【0263】
中間体の調製:N−(tert−ブトキシカルボニル)−5−メチル−L−ノルロイシネート
N−(tert−ブトキシカルボニル)−5−メチル−L−ノルロイシネート(980mg、3.78mmol)のTHF(30mL)溶液に、0℃でLiOH溶液(1M、11.3mL、11.33mmol)(5℃に予冷した)を添加し、生じた混合物を0℃で1時間撹拌し、次に周囲温度に加温した。反応物を、1M塩酸でpH2の酸性にし、酢酸エチル(3×60mL)で抽出した。合わせた有機物を、ブライン(100mL)で洗浄し、MgSO
4上で乾燥させ、濾過し、溶媒を真空中で除去して、標題化合物を透明な油状物990mg、99%として得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 4.96 (1 H, d, J = 7.8 Hz), 4.23 - 4.34 (1
H, m), 1.75 - 1.93 (2 H, m), 1.60 - 1.72 (1 H, m), 1.50 - 1.59 (1 H, m), 1.44
(9 H, s), 1.19 - 1.30 (1 H, m), 0.88 (d, J = 4 Hz, 3 H), 0.86 (d, J = 4 Hz, 3
H); C
12H
23NO
4のMS (API-ES+)
m/z 268.1 (M+Na)
+.
【0264】
中間体の調製:N
2−(tert−ブトキシカルボニル)−N
1−((1S)−3−クロロ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)−5−メチル−L−ノルロイシンアミド
N
2−(tert−ブトキシカルボニル)−N
1−((1S)−3−クロロ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)−L−ロイシンアミドの調製について記載される手順に従って、ただしN−(tert−ブトキシカルボニル)−5−メチル−L−ノルロイシンを代用し、重要でない変更を加えることにより、黄金色の粗製油状物を提供した。この材料を、Biotageフラッシュクロマトグラフィーによってメタノール/ジクロロメタンで溶離して精製して、標題化合物を濁った白色の固体360mg、41%として得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ 8.45 (1 H, d, J = 8.1 Hz), 7.62 (1 H, s),
7.02 (1 H, d, J = 7.1 Hz), 4.49 - 4.62 (2 H, m), 4.33 - 4.44 (1 H, m), 3.78 (1
H, m), 3.15 (1 H, t, J = 8.7 Hz), 3.00 - 3.10 (1 H, M), 2.18 - 2.30 (1 H, m),
2.04 - 2.14 (1 H, m), 1.92 - 2.02 (1 H, M), 1.40 - 1.68 (5 H, m), 1.36 (9 H,
s), 1.05 - 1.25 (2 H, m, J = 7.3 Hz), 0.83 (3 H, d, J = 1.52 Hz), 0.82 (3 H, d,
J = 1.52 Hz); C
20H
34N
3O
5ClのMS (API-ES+) m/z 454.2 (M+Na)
+.
【0265】
参照実施例16:N−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3,3−ジメチルブチル)−1H−インドール−2−カルボキサミド
N−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドの調製について記載される手順に従って、ただしN−((1S)−1−{[((1S)−3−クロロ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3,3−ジメチルブチル)−1H−インドール−2−カルボキサミドを代用し、重要でない変更を加えることにより、黄色の粗製泡状物を提供した。この材料を、Biotage MPLC(40Mカラム、4.5〜5.5%メタノール/クロロホルム)によって精製して、標題化合物730mg(72%)を白色の固体として得た。
1H NMR (DMSO-d
6) δ 11.59 (s, 1 H), 8.49 (d, J = 8 Hz, 1 H),
8.43 (d, J = 8 Hz, 1 H), 7.62 (s, 1 H), 7.60 (s, 1 H), 7.41 (d, J = 8 Hz, 1 H),
7.23 (s, 1 H), 7.17 (t, J = 8 Hz, 1 H), 7.02 (t, J = 8 Hz, 1 H), 5.05 (t, J = 8
Hz,, 1 H), 4.56 (m, 1 H), 4.43 (m, 1 H), 4.25 (dd, J = 8, 20 Hz, 1 H), 4.13
(dd, J = 8, 20 Hz, 1 H), 3.10 (m, 2 H), 2.25 (m, 1 H), 2.07 (m, 1 H), 1.93 (m,
1 H), 1.80 (m, 1 H), 1.64 (m, 3 H), 0.94 (s, 9 H); C
24H
32N
4O
5のMS (ESI+) m/z 457.1 (M+H)
+; 元素分析 C
24H
32N
4O
5・0.2 CHCl
3・0.2酢酸エチル・0.25 H
2Oの計算値: C, 59.75; H,6.88; N, 11.15. 実測値C, 59.67; H, 6.72; N, 11.03; HRMS (ESI+) C
24H
32N
4O
5の計算値457.2446, 実測値457.2439.
【0266】
参照実施例23:N−((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)−N−[(4−メトキシ−1H−インドール−2−イル)カルボニル]−L−フェニルアラニンアミド
N−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドの調製について記載される手順に従って、ただしN−((1S)−3−クロロ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)−N−[(4−メトキシ−1H−インドール−2−イル)カルボニル]−L−フェニルアラニンアミドを代用し、重要でない変更を加えることにより、緑色がかった粗製ガム状物を提供した。その材料を、Biotageフラッシュクロマトグラフィーによってメタノール/ジクロロメタンで溶離して精製して、標題化合物を濁った白色の固体123mg、44%として得た。
1H NMR (400 MHz DMSO-d
6) δ 11.50 (1 H, d, J = 2.0 Hz), 8.58 (2 H, dd,
J = 8.2, 3.9 Hz), 7.63 (1 H, s), 7.35 - 7.43 (2 H, m), 7.31 (1 H, d, J = 1.8
Hz), 7.27 (2 H, t, J = 7.6 Hz), 7.17 (1 H, t, J = 7.3 Hz), 7.08 (1 H, t, J =
8.0 Hz), 6.98 (1 H, d, J = 8.1 Hz), 6.48 (1 H, d, J = 7.8 Hz), 5.06 (1 H, d, J
= 6.1 Hz), 4.72 (1 H, m), 4.48 (1 H, m), 4.16 (2 H, m), 3.89 (3 H, s), 2.97 -
3.18 (4 H, m), 2.24 - 2.36 (1 H, m), 2.04 - 2.18 (1 H, m), 1.88 - 2.01 (1 H,
m), 1.55 - 1.76 (2 H, m); C
27H
30N
4O
6のMS (APCI+) m/z 507.1 (M+H)
+.
【0267】
中間体の調製:N
2−(tert−ブトキシカルボニル)−N
1−((1S)−3−クロロ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)−N
2−メチル−L−ロイシンアミド
N
2−(tert−ブトキシカルボニル)−N
1−((1S)−3−クロロ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)−L−ロイシンアミドの調製について記載される手順に従って、ただしBoc−N−メチル−Leu−OHを代用し、重要でない変更を加えることにより、緑色の粗製ガム状物を提供した。この材料を、Biotageフラッシュクロマトグラフィーによってメタノール/ジクロロメタンで溶離して精製して、標題化合物をオレンジ色の泡状物2.08g、46%として得た。
1H NMR (400 MHz DMSO-d
6) δ 8.54 (1 H, d, J = 7.1 Hz), 7.69 (1 H, d, J
= 11.1 Hz), 4.58 (2 H, s), 4.48 (1 H, d, J = 11.9 Hz), 4.40 (1 H, s), 3.02 -
3.22 (2 H, m), 2.69 - 2.79 (3 H, m), 2.14 - 2.27 (1 H, m), 2.03 - 2.14 (1 H,
m), 1.87 - 2.00 (1 H, m), 1.48 - 1.76 (4 H, m), 1.38 (9 H, brd, J = 5.8 Hz),
0.79 - 0.97 (6 H, m).
【0268】
参照実施例36:(3S)−3−({N−[(4−メトキシ−1H−インドール−2−イル)カルボニル]−L−ロイシル}アミノ)−2−オキソ−4−[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]ブチルアセテート
オーブンで乾燥させたspinbarを備えた40mLのシンチレーションバイアルに、酢酸(27mg、0.46mmol)を充填し、その後、N−((1S)−1−{[((1S)−3−クロロ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミド(172mg、0.35mmol)のDMF(3.5mL)溶液を充填し、N
2でパージした。次に、この薄黄色の溶液を、CsF(122mg、0.81mmol)で処理し、Teflon加工のスクリューキャップで封止し、激しく撹拌しながら反応ブロック上で65℃において加熱した。3時間後に、反応物をRTに冷却し、水(30mL)で希釈し、ジクロロメタン(4×7mL)で抽出した。合わせた有機層を、水(2×20mL)、ブライン(20mL)で洗浄し、真空中で濃縮した。この材料を、Biotage MPLC(25M、2.5〜4.5%メタノール/ジクロロメタン)によって精製して、標題化合物78mg(45%)を白色の固体として得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ 11.57 (s, 1 H), 8.57 (d, J = 7.8 Hz, 1 H),
8.43 (d, J = 7.6 Hz, 1 H), 7.64 (s, 1 H), 7.36 (d, J = 1.8 Hz, 1 H), 7.08 (t, J
= 8.0 Hz, 1 H), 6.99 (d, J = 8.1 Hz, 1 H), 6.49 (d, J = 7.6 Hz, 1 H), 4.83 (d,
J = 3.0 Hz, 1 H), 4.76 - 4.95 (m, 1 H), 4.35 - 4.50 (m, 2 H), 3.87 (s, 3 H),
3.03 - 3.17 (m, 2 H), 2.22 - 2.35 (m, 1 H), 2.09 - 2.22 (m, 1 H), 2.07 (s, 3
H), 1.90 - 2.04 (m, 1 H), 1.65 - 1.77 (m, 2 H), 1.48 - 1.65 (m, 3 H), 0.94 (d,
J = 6.3 Hz, 3 H), 0.89 (d, J = 6.3 Hz, 3 H); C
26H
34N
4O
7のMS (ESI+) m/z 515.2 (M+H)
+.
【0269】
参照実施例37:(3S)−3−({N−[(4−メトキシ−1H−インドール−2−イル)カルボニル]−L−ロイシル}アミノ)−2−オキソ−4−[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]ブチルシクロプロパンカルボキシレート
(3S)−3−({N−[(4−メトキシ−1H−インドール−2−イル)カルボニル]−L−ロイシル}アミノ)−2−オキソ−4−[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]ブチルアセテートの調製について記載される手順に従って、ただしシクロプロパンカルボン酸を代用し、重要でない変更を加えることにより、粗製生成物を提供した。この材料を、Biotage MPLC(25M、2.5〜4.5%メタノール/ジクロロメタン)によって精製して、標題化合物82mg(43%)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ 11.57 (d, J = 2.0 Hz, 1 H), 8.56 (d, J =
7.8 Hz, 1 H), 8.43 (d, J = 7.6 Hz, 1 H), 7.63 (s, 1 H), 7.36 (d, J = 1.5 Hz, 1
H), 7.08 (t, J = 8.0 Hz, 1 H), 6.97 - 7.02 (m, 1 H), 6.49 (d, J = 7.6 Hz, 1 H),
4.85 (d, 1 H), 4.78 - 4.96 (m, 1 H), 4.33 - 4.51 (m, 2 H), 3.87 (s, 3 H), 3.02
- 3.16 (m, 2 H), 2.22 - 2.35 (m, 1 H), 2.01 - 2.11 (m, 1 H), 1.89 - 2.00 (m, 1
H), 1.65 - 1.77 (m, 3 H), 1.46 - 1.65 (m, 3 H), 0.81 - 0.98 (m, 10 H); C
28H
36N
4O
7のMS (ESI+) m/z 541.2 (M+H)
+.
【0270】
参照実施例39:(3S)−3−({4−メチル−N−[(2R)−テトラヒドロフラン−2−イルカルボニル]−L−ロイシル}アミノ)−2−オキソ−4−[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]ブチル2,6−ジクロロベンゾエート
(3S)−3−({N−[(4−メトキシ−1H−インドール−2−イル)カルボニル]−L−ロイシル}アミノ)−2−オキソ−4−[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]ブチルアセテートの調製について記載される手順に従って、ただしN
1−((1S)−3−クロロ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)−4−メチル(methyt)−N
2−[(2R)−テトラヒドロフラン−2−イルカルボニル]−L−ロイシンアミドおよび2,6−ジクロロ安息香酸を代用し、重要でない変更を加えることにより、薄琥珀色の残留物を提供した。その残留物を、分取HPLC(Luna 10μ C18)によって0.1%AcOHを含有する水中0.1%AcOHを含有するMeCNのグラジエントで溶離して精製して、標題化合物0.155g(54%)をクリーム色の固体として得た。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d
6) δ 8.52 (d, J = 8 Hz, 1 H), 7.79 (d, J = 8
Hz, 1 H), 7.71 (s, 1 H), 7.66 - 7.55 (m, 3H), 5.18 (s, 2H), 4.54 - 4.40 (m, 1
H), 4.37 - 4.35 (m, 1 H), 4.25 (m, 1 H), 3.98 - 3.91 (m, 1 H), 3.84 - 3.72 (m,
1 H), 3.23 - 3.07 (m, 2H), 2.33 - 2.23 (m, 1 H), 2.16 - 2.05 (m, 2 H), 1.86 -
1.74 (m, 3H),1.72 - 1.62 (m, 5 H), 0.89 (s, 9 H); C
27H
35Cl
2N
3O
7のMS (ESI+) m/z 584 (M+H). 元素分析 C
27H
35Cl
2N
3O
7・0.5 H
2Oの計算値: C, 54.64; H, 6.11; N, 7.08. 実測値: C, 54.26; H, 6.00; N, 6.87. HRMS (ESI+) C
27H
35Cl
2N
3O
7+H1の計算値584.1925, 実測値584.1921.
【0271】
化合物N−((S)−1−(((S)−1−(ベンゾ[d]チアゾール−2−イル)−1−オキソ−3−((S)−2−オキソピロリジン−3−イル)プロパン−2−イル)アミノ)−3−シクロプロピル−1−オキソプロパン−2−イル)ピコリンアミド、N−((S)−1−(((S)−1−(ベンゾ[d]チアゾール−2−イル)−1−オキソ−3−((S)−2−オキソピロリジン−3−イル)プロパン−2−イル)アミノ)−3−シクロペンチル−1−オキソプロパン−2−イル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミド、およびN−((S)−2−(((S)−1−(ベンゾ[d]チアゾール−2−イル)−1−オキソ−3−((S)−2−オキソピロリジン−3−イル)プロパン−2−イル)アミノ)−1−シクロペンチル−2−オキソエチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドを、前述のものおよび国際公開第2005/113580号に記載される下記の通りの他の化合物に類似の方式で調製した。
【0272】
N−(tert−ブトキシカルボニル)−3−[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]−L−アラニンの調製
0℃に冷却したメチルN−(tert−ブトキシカルボニル)−3−[(3S)−2−オキソピロリジン(oxopyrrolisin)−3−イル]−L−アラニネート(国際公開01/14329A1、化合物3、そのスキーム9に従って調製した)(20g、70mmol)のメタノール(100mL)溶液に、NaOH(14g、350mmol)の水(120mL)溶液をゆっくり添加した。混合物を、0℃で1時間撹拌し、生成物のナトリウム塩が沈殿するまで、温度を25℃未満に維持して真空中で濃縮した。混合物を、氷浴冷却を用いて濃HCl水溶液でpH5に中和し、さらに1NのHCl水溶液でpH1の酸性にした。混合物を、酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機相をブラインで洗浄し、MgSO
4上で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮し、高真空下でさらに一晩乾燥させて、所望の酸(19g、収率100%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CD
3OD) δ 4.12 (m, 1H), 3.33 (m, 2H), 2.48 (m, 1H),
2.35 (m, 1H), 2.08 (m, 1H), 1.81 (m, 2H), 1.44 (s, 9H).
【0273】
tert−ブチル((1S)−2−[メトキシ(メチル)アミノ]−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}エチル)カルバメートの調製
N−(tert−ブトキシカルボニル)−3−[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]−L−アラニン(19g、70mmol)のジクロロメタン(150mL)溶液に、N,O−ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩(6.97g、70mmol)、N−メチルモルホリン(26.9mL、24.78g、245mmol)およびヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(9.46g、70mmol)を添加した。混合物を0℃に冷却し、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(16.1g、84mmol)を固体として添加した。混合物を0℃で4時間撹拌し、これに1NのHCl水溶液150mLを添加した。有機相を、水相から分離した。水層を、ジクロロメタン(1×200mL)で抽出した。合わせた有機相をNa
2SO
4上で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮した。残留物を、フラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製して(ジクロロメタン中6〜10%メタノールで溶離する)、所望の生成物を白色の固体として得た(17g、収率77%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 6.00 (bs, 1H), 5.41 (d, J=8.6 Hz, 1H),
4.68 (d, J=8.9 Hz, 1H), 3.78 (s, 3H), 3.35 (m, 2H), 3.21 (s, 3H), 2.50 (m, 2H),
2.11 (t, J=10.8 Hz), 1.84 (m, 1H), 1.68 (m, 1H), 1.43 (s, 9H). LCMS ESI
(M+Na
+): 338.1.
【0274】
N−{(1S)−1−シクロペンチル−2−[((1S)−2−[メトキシ(メチル)アミノ]−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}エチル)アミノ]−2−オキソエチル}−4−メトキシ−1H−インドールカルボキサミドの調製
tert−ブチル((1S)−2−[メトキシ(メチル)アミノ]−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}エチル)カルバメート(473mg、1.5mmol)の無水1,4−ジオキサン溶液に、1,4−ジオキサン(約10当量)中4.0MのHClを添加する。混合物を室温で一晩撹拌し、真空中で濃縮して、脱保護されたアミンのHCl塩を白色の泡状物として得る。アミンを、ジクロロメタンおよびN−メチルモルホリン(約4当量)に溶解させ、この溶液に、N−Boc−L−シクロペンチルグリシン(約1当量)、ヒドロキシベンゾトリアゾール(約1当量)および1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(約1.2当量)を添加する。混合物を周囲温度で1時間撹拌し、1NのHCl水溶液に注ぐ。有機相を1NのHCl水溶液で洗浄し、Na
2SO
4上で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮する。残留物を、フラッシュクロマトグラフィーによって精製して、tert−ブチル((1S)−1−シクロペンチル−2−(((2S)−1−(メトキシ(メチル)アミノ)−1−オキソ−3−(2−オキソピロリジン−3−イル)プロパン−2−イル)アミノ)−2−オキソエチル)カルバメートを提供する。次に、tert−ブチル((1S)−1−シクロペンチル−2−(((2S)−1−(メトキシ(メチル)アミノ)−1−オキソ−3−(2−オキソピロリジン−3−イル)プロパン−2−イル)アミノ)−2−オキソエチル)カルバメートのBoc保護基を、酸触媒脱保護(ジオキサン中HClなどを用いる)によって除去し、それを後処理した後に、アミンである(2S)−2−((S)−2−アミノ−2−シクロペンチルアセトアミド)−N−メトキシ−N−メチル−3−(2−オキソピロリジン−3−イル)プロパンアミドを提供する。次に、(2S)−2−((S)−2−アミノ−2−シクロペンチルアセトアミド)−N−メトキシ−N−メチル−3−(2−オキソピロリジン−3−イル)プロパンアミドを、N−メチルモルホリンおよびジクロロメタン中1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(約1.2当量)、ジメチルアミノピリジン(DMAP)の存在下で、4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボン酸と結合させる。所望の化合物であるN−{(1S)−1−シクロペンチル−2−[((1S)−2−[メトキシ(メチル)アミノ]−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}エチル)アミノ]−2−オキソエチル}−4−メトキシ−1H−インドールカルボキサミドを、白色の固体として得た(699mg、収率90%)。
1H NMR (300 MHz, CDCl
3) δ 10.79 (s, 1H), 8.53 (bs, 1H), 7.15 (t,
J=7.9 Hz, 1H), 7.09 (d, J=1.7 Hz, 1H), 7.04 (d, J=8.3 Hz, 1H), 6.94 (d, J=9 Hz,
1H), 6.48 (d, J=7.6 Hz, 1H), 6.39 (bs, 1H), 5.18-5.05 (m, 2H), 3.95 (s, 3H),
3.83 (s, 3H), 3.30 (s, 3H), 3.13 (m, 2H), 2.50-2.25 (m, 3H), 2.15 (m, 1H),
1.75-1.40 (m, 10H). LCMS ESI (M+H
+) 514.2, (M+Na
+)
536.2.
【0275】
N−{(1S)−2−[((1S)−2−(1,3−ベンゾチアゾール−2−イル)−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}エチル)アミノ]−1−シクロペンチル−2−オキソエチル}−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドの調製
ベンゾチアゾール(0.597mL、5.50mmol)の無水テトラヒドロフラン溶液に、−78℃でn−ブチルリチウム(ヘキサン中2.5M、2.20mL、5.50mmol)をゆっくり添加し、混合物を−78℃で30分間撹拌し、これに、N−{(1S)−1−シクロペンチル−2−[((1S)−2−[メトキシ(メチル)アミノ]−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}エチル)アミノ]−2−オキソエチル}−4−メトキシ−1H−インドールカルボキサミド(257mg、0.50mmol)の無水テトラヒドロフラン溶液を添加する。生じた混合物を−78℃で2時間撹拌し、飽和塩化アンモニウム水溶液でクエンチする。混合物を室温に加温し、次に酢酸エチルおよび水に注ぐ。有機層を分離し、水で洗浄し、次にブラインで洗浄し、Na
2SO
4上で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮する。残留物を、フラッシュカラムクロマトグラフィーによってジクロロメタン中1〜5%メタノールのグラジエントで溶離して精製して、所望の化合物を薄黄色の固体として得る(219mg、収率74%)。
1HNMR (300 MHz, DMSO-d
6) δ 11.57 (s, 1H), 8.75-9.02 (m, 1H),
7.53-7.80 (m, 3H), 7.35 (s, 1H), 6.83-7.20 (m, 2H), 6.38-6.59 (m, 1H),
5.39-5.66 (m, 1H), 4.14-4.64 (m, 1H), 3.87 (s, 3H), 2.91-3.26 (m, 2H),
1.96-2.37 (m, 3H), 1.65-1.99 (m, 3H), 1.13-1.66 (m, 8H). 元素分析 C
31H
33N
5O
5S・0.3 CH
2Cl
2の計算値: C, 61.31; H, 5.52; N, 11.42; 実測値: C, 61.18; H, 5.59; N, 11.29. LCMS
ESI (M+H
+): 588.20.
【0276】
3−シクロペンチル−N−[(4−メトキシ−1H−インドール−2−イル)カルボニル]−L−アラニル−N
1−メトキシ−N
1−メチル−3−[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]−L−アラニンアミドの調製
材料を、N−{(1S)−1−シクロペンチル−2−[((1S)−2−[メトキシ(メチル)アミノ]−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}エチル)アミノ]−2−オキソエチル}−4−メトキシ−1H−インドールカルボキサミドと同様に(前述の通り)、N−Boc−L−シクロペンチルグリシンの代わりにBoc−β−シクロペンチル−L−アラニン(200mg、0.777mmol)を使用したことを除いて、tert−ブチル((1S)−2−[メトキシ(メチル)アミノ]−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}エチル)カルバメート(268mg、0.85mmol)から出発して調製して、所望の化合物を白色の固体として得た(287mg、収率70%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 10.01 (bs, 1H), 8.05 (bs, 1H), 7.17 (t,
J=8.1 Hz, 1H), 7.08 (d, J=1.5 Hz, 1H), 7.03 (t, J=8.3 Hz, 1H), 6.84 (d, J=8 Hz,
1H), 6.49 (d, J=7.6 Hz, 1H), 5.95 (bs, 1H), 5.03 (m, 1H), 4.93 (m, 1H), 3.95
(s, 3H), 3.82 (s, 3H), 3.26 (s, 3H), 3.22 (m, 2H) 2.43 (m, 2H), 2.17 (m, 1H),
1.95-1.70 (m, 8H), 1.60-1.40 (m, 3H), 1.14 (m, 2H). LCMS ESI (M+H
+)
528.2, (M+Na
+) 550.2.
【0277】
N−{(1S)−2−[((1S)−2−(1,3−ベンゾチアゾール−2−イル)−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}エチル)アミノ]−1−(シクロペンチルメチル)−2−オキソエチル}−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドの調製
標題化合物を、N−{(1S)−2−[((1S)−2−(1,3−ベンゾチアゾール−2−イル)−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}エチル)アミノ]−1−シクロペンチル−2−オキソエチル}−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドについて前述の通り同様に、ベンゾチアゾール(928mg、6.86mmol)、n−ブチルリチウム(ヘキサン中2.5M、2.74mL、6.86mmol)および3−シクロペンチル−N−[(4−メトキシ−1H−インドール−2−イル)カルボニル]−L−アラニル−N
1−メトキシ−N
1−メチル−3−[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]−L−アラニンアミド(181mg、0.34mmol)から調製して、所望の標題化合物を濁った白色の固体として得た(105mg、収率51%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 9.45 (s, 1H), 8.52 (d, J=7 Hz, 1H), 8.08
(m, 1H), 7.97 (m, 1H), 7.51 (m, 2H), 7.18 (m, 1H), 7.09 (d, J=1.5 Hz, 1H), 7.00
(d, J=8.4 Hz, 1H), 6.89 (d, J=8 Hz, 1H), 6.49 (d, J=7.8 Hz, 1H), 6.00 (s,
1H), 5.73 (m, 1H), 4.84 (m, 1H), 3.94 (s, 3H), 3.33 (m, 2H), 2.66 (m, 1H), 2.51
(m, 1H), 2.22 (m, 2H), 2.05-1.80 (m, 7H), 1.60-1.45 (m, 3H), 1.17 (m,
2H). LCMS ESI (M+H
+) 602.1, (M+Na
+) 624.1.
【0278】
3−シクロプロピル−N−(ピリジン−2−イルカルボニル)−L−アラニル−N
1−メトキシ−N
1−メチル−3−[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]−L−アラニンアミドの調製
tert−ブチル((1S)−2−[メトキシ(メチル)アミノ]−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}エチル)カルバメートを、前述の通りジオキサン中HClを使用して脱保護し、生じたアミンを、前述の方法と同様に、ジクロロメタン中ヒドロキシベンゾトリアゾール(約1当量)および1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(約1.2当量)およびN−メチルモルホリンを使用してBoc−β−シクロプロピル−L−アラニンと結合させて、N−(tert−ブトキシカルボニル)−3−シクロプロピル−L−アラニル−N
1−メトキシ−N
1−メチル−3−[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]−L−アラニンアミドを提供する。N−(tert−ブトキシカルボニル)−3−シクロプロピル−L−アラニル−N
1−メトキシ−N
1−メチル−3−[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]−L−アラニンアミド(426.5mg、1.0mmol)のBoc基を除去し(ジオキサン中HCl)、生じたアミンを、ジクロロメタン(5mL)中、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(201mg、1.05mmol)、N,N−ジメチルアミノピリジン(12mg、0.1mmol)、N−メチルモルホリン(0.55mL、5.0mmol)の存在下でピリジン−2−カルボン酸(129mg、1.05mmol)と結合させて、所望の化合物を白色の固体として得た(272mg、収率63%)。1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 8.65 (d, J=8 Hz, 1H), 8.58 (d, J=1.6 Hz, 1H), 8.17 (d, J=7.8 Hz,
1H), 7.84 (td, J=7.7, 1.7 Hz, 1H), 7.45-7.41 (m, 2H), 5.70 (s, 1H), 4.97 (m,
1H), 4.74 (m, 1H), 3.81 (s, 3H), 3.30 (m, 2H), 3.20 (s, 3H), 2.46 (m, 2H), 2.18
(m, 1H), 1.88-1.73 (m, 4H), 0.85 (m, 1H), 0.50 (m, 2H), 0.17 (m, 2H).
LCMS ESI (M+H
+) 432.1, (M+Na
+) 454.1.
【0279】
N−[(1S)−2−[((1S)−2−(1,3−ベンゾチアゾール−2−イル)−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}エチル)アミノ]−1−(シクロプロピルメチル)−2−オキソエチル]ピリジン−2−カルボキサミドの調製
標題化合物を、N−{(1S)−2−[((1S)−2−(1,3−ベンゾチアゾール−2−イル)−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}エチル)アミノ]−1−シクロペンチル−2−オキソエチル}−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミド(前述)と同様に、ベンゾチアゾール(669mg、4.95mmol)、n−ブチルリチウム(ヘキサン中2.5M、1.98mL、4.95mmol)および3−シクロプロピル−N−(ピリジン−2−イルカルボニル)−L−アラニル−N
1−メトキシ−N
1−メチル−3−[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]−L−アラニンアミド(178mg、0.41mmol)から出発して調製して、所望の化合物を白色の固体として得た(123mg、収率59%)。1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 8.68 (d, J=8.3 Hz, 1H), 8.58 (d, J=4 Hz, 1H), 8.29 (d, J=6.8 Hz,
1H), 8.15 (d, J=7.8 Hz, 1H), 8.11-8.09 (m, 1H), 7.99-7.97 (m, 1H), 7.82 (td,
J=7.7,1.8 Hz, 1H), 7.54 (m, 2H), 7.42 (m, 1H), 5.77 (m, 1H), 5.71 (bs, 1H),
4.81 (m, 1H), 3.38 (m, 2H), 2.61 (m, 2H), 2.29-2.14 (m,2H), 2.04 (m,1H),
1.90-1.80 (m, 2H), 0.87 (m, 1H), 0.51 (m, 2H), 0.19 (m, 2H). LCMS ESI
(M+H
+) 506.1, (M+Na
+) 528.1.
【0280】
HCVポリメラーゼ阻害剤である化合物フィリブビル、(2R)−2−シクロペンチル−2−[2−(2,6−ジエチルピリジン−4−イル)エチル]−5−[(5,7−ジメチル−[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリミジン−2−イル)メチル]−4−ヒドロキシ−3H−ピラン−6−オンの合成は、3つの連続する論文に記載されている。パートIについては、R.A.Singerら、Org.Process Res.Dev.2014、18、26を参照されたい。パートIIについては、Z.Peng,J.A.Raganら、Org.Process Res.Dev.2014、18、36を参照されたい。フィリブビルの合成の発見については、H.Liら、J.Med.Chem.2009、52、1255を参照されたい。
【0281】
抗レトロウイルスのプロテアーゼ阻害剤であるネルフィナビル(Nelfinivir)、(3S,4aS,8aS)−N−tert−ブチル−2−[(2R,3R)−2−ヒドロキシ−3−[(3−ヒドロキシ−2−メチルベンゾイル)アミノ]−4−フェニルスルファニルブチル]−3,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロ−1H−イソキノリン−3−カルボキサミドは、B.A.Dressmanら、国際公開第9509843号および米国特許第5484926号(1995、1996、共にAgouron)に記載されている方法に従って調製することができる。
【0282】
ルピントリビル(Ruprintrivir)は、米国特許第6,995,142号の実施例17、ならびにDragovich,P.S.ら、Structure−based design,synthesis,and biological evaluation of irreversible human rhinovirus 3C protease inhibitors.3.Structure−activity studies of ketomethylene−containing peptidomimetics.J Med Chem,1999、42:1203〜1212、およびLin,D.ら、Improved synthesis of rupintrivir;Science China Chemistry、June 2012 Vol.55 No.6:1101〜1107 doi:10.1007/s11426−011−4478−5に記載されている通り調製することができる。
【0283】
(R)−3−((2S,3S)−2−ヒドロキシ−3−{[1−(3−ヒドロキシ−2−メチル−フェニル)−メタノイル]−アミノ}−4−フェニル−ブタノイル)−5,5−ジメチル−チアゾリジン−4−カルボン酸アリルアミドは、米国特許第6,953,858号および米国特許第7,169,932号、ならびに国際公開第2005/054214号および国際公開第2005/054187号に記載されている方法に従って調製することができる。
【0284】
ドッキング実験
方法
相同性モデリング。SARSおよびCOVID−19における3C様プロテイナーゼの配列は、RCSBからの参考文献
1(例えば、3IWM)およびNCBIからの参考文献
2(例えば、参照配列:YP_009725301.1NCBI)に見ることができる。
【0285】
SARSの3Cプロテアーゼ配列(PDB 3IWM):
SGFRKMAFPSGKVEGCMVQVTCGTTTLNGLWLDDTVYCPRHVICTAEDMLNPNYEDLLIRKSNHSFLVQAGNVQLRVI
GHSMQNCLLRLKVDTSNPKTPKYKFVRIQPGQTFSVLACYNGSPSGVYQCAMRPNHTIKGSFLNGSCGSVGFNIDYDCV
SFCYMHHMELPTGVHAGTDLEGKFYGPFVDRQTAQAAGTDTTITLNVLAWLYAAVINGDRWFLNRFTTTLNDFNLVA
MKYNYEPLTQDHVDILGPLSAQTGIAVLDMCAALKELLQNGMNGRTILGSTILEDEFTPFDVVRQCSGVTFQ
【0286】
新しい武漢コロナウイルスSARS−CoV−2配列(同じセクション):
SGFRKMAFPSGKVEGCMVQVTCGTTTLNGLWLDDVVYCPRHVICTSEDMLNPNYEDLLIRKSNHNFLVQAGNVQLRVI
GHSMQNCVLKLKVDTANPKTPKYKFVRIQPGQTFSVLACYNGSPSGVYQCAMRPNFTIKGSFLNGSCGSVGFNIDYDCV
SFCYMHHMELPTGVHAGTDLEGNFYGPFVDRQTAQAAGTDTTITVNVLAWLYAAVINGDRWFLNRFTTTLNDFNLVA
MKYNYEPLTQDHVDILGPLSAQTGIAVLDMCASLKELLQNGMNGRTILGSALLEDEFTPFDVVRQCSGVTFQ
【0287】
相同性モデルを、ファイザーのデータベースのSARSの3C様プロテアーゼの結晶構造から、SchrodingerのPRIMEを使用して構築した
3。ベンゾチアゾールケトンまたはベンジル側鎖を含有するリガンドによるクラッシュを除去するために、これらのリガンド部分を有する他のSARSの3C様結晶構造のタンパク質コンホメーションを調べた後に、リガンドとの複合体における相同性モデルの最小化を使用した。185〜190ループにおける残基、His41およびMet49の弛緩は、異なって最小化された3つの相同性モデルバージョンをもたらした。触媒作用的なCysは、Gly(C145G)に変異して、触媒作用的なCysによるクラッシュなしに、AGDOCK
5コアドッキングおよびその後スコアリングを促進した。
【0288】
ドッキング:9つの化合物を、AGDOCK
5とのコアドッキング
4を使用して相同性モデルにドッキングした。ドッキングは、タンパク質−リガンド共有結合を形成することなく実施された。その代わりに、ラクタム側鎖および反応性ケトンを含む共通のコアを、そのリガンドにおいて同定し、共有結合性ドッキングの模倣物として、結晶構造の方位に固定して保持した(
図2を参照されたい)。AGDOCKコアドッキングについての親和性尺度は、HTスコアであった
6。
【0289】
方法の参考文献
1.http://www.rcsb.org/structure/3IWM
2.https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/YP_009725301.1
3.Schrodinger
Release 2019-1: Prime, Schrodinger, LLC, New York, NY, 2019.
4.Daniel K.
Gehlhaar, Gennady M. Verkhivker, Paul A. Rejto, Christopher J. Sherman, David
R. Fogel, Lawrence J. Fogel, Stephan T. Freer, 「HIV−1プロテアーゼによる阻害剤AG−1343の分子認識:進化的プログラミングによるコンホメーション的に柔軟なドッキング(Molecular recognition of the inhibitor AG-1343 by HIV-1 protease:
conformationally flexible docking by evolutionary programming)」, Chemistry & Biology, Volume 2, Issue
5, 1995, Pages 317-324.
5.Daniel K.
Gehlhaar, Djamal Bouzida,およびPaul
A. Rejto, 「リガンド−タンパク質の構造予測における次元縮小:セリンプロテアーゼの共有結合阻害剤および部位特異的コンビナトリアルライブラリーの設計(Reduced Dimensionality in Ligand-Protein Structure Prediction:
Covalent Inhibitors of Serine Proteases and Design of Site-Directed
Combinatorial Libraries)」
Rational Drug Design. July 7, 1999, 292-311.
6.Tami J. Marrone,
Brock A. Luty, Peter W. Rose, 「標的に結合した低分子の計算的に予測された構造および親和性からの高親和性リガンドの発見:仮想スクリーニング手法。(Discovering high-affinity ligands from the computationally predicted
structures and affinities of small molecules bound to a target: A virtual
screening approach.)」Perspectives
in Drug Discovery and Design 20, 209-230 (2000).
【0290】
結果
相同性モデル:SARS−CoVとSARS−CoV−2の間の配列相同性は、96.1%である。306の残基のうち、異なっているのは12であり(
図1で強調されているT35V、A46S、S65N、L86V、R88K、S94A、H134F、K180N、L202V、A267S、T285AおよびI286L)、それが96.1%の同一性と解釈される。
【0291】
その相同性モデルを構築するために使用した結晶構造と関連するリガンドは、化合物B、N−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドである。SARSの3C様プロテアーゼとSARS−CoV−2の3C様プロテアーゼのモデルの間で異なっていた、化合物B、N−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドに最も近いアミノ酸残基は、A46Sであり、C
alphaからそのリガンドまでの最短距離は、8.3Åである。他の残基は、化合物Bにおける最も近い原子から、11Å〜38Åの間である。
【0292】
【表15】
【0293】
図1.
図1は、SARS−CoVとSARS−CoV−2の間の残基の差を図示している。残基の変化の位置は、SARS−CoV−2相同性モデルのこのリボンの図において灰色の球体で示されている。化合物B、N−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドの位置(左側の上)は、スティック型で示される。SARS−CoV−2アミノ酸残基のC−アルファと化合物B、N−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドにおける最も近い原子の間のおよその距離は、先の表1に示される。
【0294】
ドッキングの結果
SARS−CoV−2の3CLとSARS−CoVの3CLのおよそ96%の相同性、およびリガンド間の類似性によって、SARS−CoVにおけるxtalリガンドのペプチド骨格とSARS−CoV−2の3CLモデルにおけるドッキングしたリガンドの間のRMSDを比較することができる(
図2を参照)。コアにドッキングしたリガンドからペプチド骨格までのRMSDは、0.32Åを超えて異なっていなかった(平均0.28Å)。一例については
図2を参照されたい。化合物B、N−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドの場合、全分子のRMSDは、0.37Åであった。
【0295】
図2.存在するコアにドッキングしたリガンド(化合物B、N−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミド)を有するSARS−CoV−2の3CLの相同性モデルの結合部位。化合物B、N−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドの結晶構造の一部(ペプチド骨格、ラクタム側鎖および攻撃されたケトン)を使用して、その骨格に対する様々なリガンドのRMSDを測定した(灰色の炭素、太いスティック)。コアドッキングのために使用されたコアは、ボール表示(明るい炭素)で、挿入化学構造において11個の重原子として示される。距離はオングストロームで示される。
【0296】
以下の表2のドッキングの結果は、化合物のいくつかが、標的認識および結合と一般に釣り合う、予測親和性(ΔG
bind、kcal/mol)を有することを示している。ΔGを推定するために使用した方法は、HTSスコアリング関数であった
6。有効効力は、細胞取込み、排出、補因子競合または基質競合などのいくつかの因子に応じてΔG結合の観点とは異なる場合がある。
【0297】
【表16-1】
【0298】
【表16-2】
【0299】
図3.SARSに対するFRETベースのIC50値と比較したCOVID−19(HT)の予測されたΔG間のフィット。0.35のR−sqが存在し、そのフィットは、9種の化合物についての90%信頼水準で有意である(95%信頼水準では有意でない)。
【0300】
前述の化合物を、FRET生化学アッセイおよびインビトロウイルス学的アッセイによって、細胞培養技術を使用して解析する。
【0301】
SARS感染からの保護:ニュートラルレッドエンドポイント
SARSコロナウイルスによる感染に対して細胞を保護する化合物の能力は、Borenfreund,E.およびPuerner,J.1985.Toxicity determined in vitro by morphological alterations and neutral red absorption Toxicology Letters.24:119〜124に記載されているアッセイに類似の細胞生存率アッセイによって、ニュートラルレッド染色をエンドポイントとして利用して測定される。簡潔には、適切な濃度の化合物を含有する培地または培地だけを、ベロ細胞に添加する。細胞を、SARS随伴ウイルスに感染させるか、または培地だけで疑似感染させる。1〜7日後に、培地を除去し、ニュートラルレッドを含有する培地を、試験プレートに添加する。37℃で2時間インキュベーションした後、細胞を、PBSおよび50%EtOHで2回洗浄し、1%酢酸溶液を添加する。細胞を、1〜2分間振とうし、37℃で5〜10分間インキュベートする。ニュートラルレッドの量を、540nmで分光光度的に数量化する。データは、化合物を含まない非感染細胞のウェルにおけるニュートラルレッドと比較した、化合物で処置した細胞のウェルにおけるニュートラルレッドのパーセントとして表される。50パーセント有効濃度(EC50)は、化合物で処置した感染細胞におけるニュートラルレッドの生成パーセントを、化合物を含まない非感染細胞によって生成されたニュートラルレッドの50%に増大する化合物の濃度として計算される。50%細胞傷害性濃度(CC50)は、化合物で処置した非感染細胞において生成されたニュートラルレッドのパーセンテージを、化合物を含まない非感染細胞において生成されたニュートラルレッドの50%に低減する化合物の濃度として計算される。治療指標は、細胞傷害性(CC50)を抗ウイルス活性(EC50)で割ることによって計算される。
【0302】
SARS−CoV−2感染からの保護:Gloエンドポイント
SARS−CoV−2コロナウイルスによる感染に対して細胞を保護する化合物の能力も、細胞生存率アッセイによって、細胞内ATPを測定するためのルシフェラーゼをエンドポイントとして利用して測定することができる。簡潔には、適切な濃度の化合物を含有する培地または培地だけを、ベロ細胞に添加する。細胞を、SARS−CoV−2ウイルスに感染させるか、または培地だけで疑似感染させる。1〜7日後に、培地を除去し、細胞内ATPの量を、Promega Technical Bulletin No.288:CellTiter−Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assay(Promega、Madison、WI)に従って測定する。CellTiter−Glo(登録商標)試薬を、試験プレートに添加し、37℃で1.25時間インキュベーションした後、シグナル量を、ルミノメーターを490nmで使用して数量化する。データは、化合物を含まない非感染細胞のウェルからの発光シグナルと比較した、化合物で処置した細胞のウェルからの発光シグナルのパーセントとして表される。50パーセント有効濃度(EC50)は、化合物で処置した感染細胞からの発光シグナルのパーセントを、化合物を含まない非感染細胞からの発光シグナルの50%に増大する化合物の濃度として計算される。50%細胞傷害性濃度(CC50)は、化合物で処置した非感染細胞からの発光シグナルのパーセントを、化合物を含まない非感染細胞からの発光シグナルの50%に低減する化合物の濃度として計算される。治療指標は、細胞傷害性(CC50)を抗ウイルス活性(EC50)で割ることによって計算される。
【0303】
細胞傷害性
細胞において細胞傷害性を引き起こす化合物の能力は、Weislow,O.S.、Kiser,R.、Fine,D.L.、Bader,J.、Shoemaker,R.H.およびBoyd,M.R.1989.New Soluble−Formazan Assay for HIV−1 Cytopathic Effects:Application to High−Flux Screening of Synthetic and Natural Products for AIDS−Antiviral Activity.Journal of the National Cancer Institute 81(08):577〜586に記載されているアッセイに類似の細胞生存率アッセイによって、ホルマザンをエンドポイントとして利用して測定される。簡潔には、ベロ細胞を、適切な濃度の化合物を含有する培地または培地だけに再懸濁させる。1〜7日後に、XTTおよびPMSを試験プレートに添加し、37℃で2時間インキュベーションした後、生成されたホルマザンの量を、分光光度的に540nmで数量化する。データは、化合物を含まない細胞のウェルにおいて生成されたホルマザンと比較した、化合物で処置した細胞において生成されたホルマザンのパーセントとして表される。50%細胞傷害性濃度(CC50)は、化合物で処置した非感染細胞において生成されたホルマザンのパーセンテージを、化合物を含まない非感染細胞において生成されたホルマザンの50%に低減する化合物の濃度として計算される。
【0304】
SARS−CoV−2コロナウイルス感染からの保護
SARS−CoV−2による感染に対して細胞を保護する化合物の能力は、Weislow,O.S.、Kiser,R.、Fine,D.L.、Bader,J.、Shoemaker,R.H.およびBoyd,M.R.1989.New Soluble−Formazan Assay for HIV−1 Cytopathic Effects:Application to High−Flux Screening of Synthetic and Natural Products for AIDS−Antiviral Activity.Journal of the National Cancer Institute 81(08):577〜586に記載されているアッセイに類似の細胞生存率アッセイによって、ホルマザンをエンドポイントとして利用して測定される。簡潔には、適切な濃度の化合物を含有する培地または培地だけを、MRC−5細胞に添加する。細胞を、ヒトコロナウイルスSARS−CoV−2に感染させるか、または培地だけで疑似感染させる。1〜7日後に、XTIおよびPMSを試験プレートに添加し、37℃で2時間インキュベーションした後、生成されたホルマザンの量を、分光光度的に540nmで数量化する。データは、化合物を含まない非感染細胞のウェルにおけるホルマザンと比較した、化合物で処置した細胞におけるホルマザンのパーセントとして表される。50パーセント有効濃度(EC50)は、化合物で処置した感染細胞におけるホルマザンの生成パーセントを、化合物を含まない非感染細胞によって生成されたホルマザンの50%に増大する化合物の濃度として計算される。50%細胞傷害性濃度(CC50)は、化合物で処置した非感染細胞において生成されたホルマザンのパーセンテージを、化合物を含まない非感染細胞において生成されたホルマザンの50%に低減する化合物の濃度として計算される。治療指標は、細胞傷害性(CC50)を抗ウイルス活性(EC50)で割ることによって計算される。
【0305】
SARS−CoV−2コロナウイルス3CプロテアーゼのFRETアッセイおよび解析
SARS−CoV−2コロナウイルス3CLプロテアーゼのタンパク分解活性を、連続的蛍光共鳴エネルギー移動アッセイを使用して測定する。SARS−CoV−2の3CL
proのFRETアッセイにより、TAMRA−SITSAVLQSGFRKMK−(DABCYL)−OHからTAMRA−SITSAVLQおよびSGFRKMK(DABCYL)−OHへの、プロテアーゼによって触媒された切断を測定する。切断されたTAMRA(励起波長558nm/発光波長581nm)ペプチドの蛍光を、TECAN SAFIRE蛍光プレートリーダーを使用して10分間にわたって測定した。典型的な反応溶液は、20mMのHEPES(pH7.0)、1mMのEDTA、4.0μMのFRET基質、4%DMSOおよび0.005%Tween−20を含有していた。アッセイは、25nMのSARSの3CL
pro(SARSコロナウイルス完全ゲノム配列のUrbani株(NCBI受入番号AY278741)のヌクレオチド配列9985〜10902)を添加して惹起した。阻害パーセントを、0.001mMレベルの阻害剤を用いて二つ組で決定した。データを、非線形回帰解析プログラムKalidagraphを用いて、以下の等式を使用して解析した。
FU=offset+(limit)(1−e
−(kobs)t)
式中、offsetは、非切断ペプチド基質の蛍光シグナルに等しく、limitは、完全に切断されたペプチド基質の蛍光に等しい。kobsは、この反応の一次速度定数であり、任意の阻害剤がない状態での基質の利用を表す。不可逆的阻害剤を含有し、計算されたlimitが理論的最大限界の20%未満である酵素出発反応では、計算されたkobsは、コロナウイルス3Cプロテアーゼの不活化速度を表す。kobs対[I]のプロットの勾配(kobs/I)は、酵素に関する阻害剤の結合活性の尺度である。非常に急速な不可逆的阻害剤については、kobs/Iは、勾配というよりむしろ1つだけまたは2つの[I]における観察から計算される。
【0306】
あるいは、化合物は、以下のSARS CoV−2 FRETアッセイを使用して評価され得る。
【0307】
SARS CoV−2プロテアーゼのFRETアッセイおよび解析
SARS−CoV−2の主なプロテアーゼである3CLproのタンパク分解活性を、連続蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)アッセイを使用してモニタリングした。SARS−CoV−2の3CLproアッセイにより、コンセンサスペプチド上でモデル化された以下の配列Dabcyl−KTSAVLQ−SGFRKME−Edansを有する合成蛍光発生基質ペプチドを切断する、全長SARS−CoV−2の3CLプロテアーゼの活性を測定する。切断されたEdansペプチドの蛍光(励起340nm/発光490nm)を、蛍光強度プロトコールを使用してFlexstationリーダー(Molecular Devices)で測定する。蛍光シグナルは、SARS−CoV−2の3CLproの強力な阻害剤であるN−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドの存在下で低減する。アッセイ反応緩衝液は、20mMのTirs−HCl(pH7.3)、100nMのNaCl、1mMのEDTA、5mMのTCEPおよび25μMペプチド基質を含有していた。酵素反応を、15nMのSARS−CoV−2の3CLプロテアーゼを添加することにより惹起し、23℃で60分間進行させた。阻害または活性パーセントを、化合物を含有していない(0%阻害/100%活性)および対照化合物を含有する(100%阻害/0%活性)対照ウェルに基づいて計算した。IC
50値を、ABASEソフトウェア(IDBS)を使用し、4パラメーターフィットモデルを使用して作製した。K
i値を、Activity Baseソフトウェア(IDBS)を使用して、酵素濃度パラメーターを15nMに固定し、K
mパラメーターを14μMに固定し、基質濃度パラメーターを25μMに固定してMorrison等式にフィットさせた。
【0308】
化合物(3S)−3−({4−メチル−N−[(2R)−テトラヒドロフラン−2−イルカルボニル]−L−ロイシル}アミノ)−2−オキソ−4−[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]ブチル2,6−ジクロロベンゾエートは、先のアッセイで評価すると、17nMのIC
50(n=32で16nM〜18nMの95%信頼区間)および2.71nMのKi(n=32で2.29nM〜3.13nMの95%信頼区間)を有していた。化合物N−((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)−N−[(4−メトキシ−1H−インドール−2−イル)カルボニル]−L−フェニルアラニンアミドは、先のアッセイで評価すると、375nMのIC
50(n=4で260nM〜489nMの95%信頼区間)および139nMのKi(n=2で65.8nM〜212nMの95%信頼区間)を有していた。化合物(3S)−3−({N−[(4−メトキシ−1H−インドール−2−イル)カルボニル]−L−ロイシル}アミノ)−2−オキソ−4−[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]ブチルシクロプロパンカルボキシレートは、先のアッセイで評価すると、128nMのIC
50(n=5で107nM〜149nMの95%信頼区間)および42.7nMのKi(n=2で37.9nM〜47.5nMの95%信頼区間)を有していた。化合物N−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3,3−ジメチルブチル)−1H−インドール−2−カルボキサミドは、先のアッセイで評価すると、24nMのIC
50(n=6で16nM〜32nMの95%信頼区間)および2.81nMのKi(n=4で1.39nM〜4.22nMの95%信頼区間)を有していた。化合物N−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドは、先のアッセイで評価すると、7nMのIC
50(n=7で6nM〜8nMの95%信頼区間)および0.27nMのKi(n=6で0.17nM〜0.37nMの95%信頼区間)を有していた。化合物N−((S)−1−(((S)−1−(ベンゾ[d]チアゾール−2−イル)−1−オキソ−3−((S)−2−オキソピロリジン−3−イル)プロパン−2−イル)アミノ)−3−シクロプロピル−1−オキソプロパン−2−イル)ピコリンアミドは、先のアッセイで評価すると、8402nMのIC
50(n=3で4396nM〜12407nMの95%信頼区間)および3048nMのKi(n=1)を有していた。化合物AG−0011859、フィリブビル、ネルフィナビルおよびルピントリビル(ruprintrivir)はすべて、先のアッセイで評価すると、>30μMのIC50を有していた。
【0309】
N−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドを、生化学的蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)プロテアーゼ活性アッセイを使用して、コロナウイルス科のアルファ、ベータおよびガンマ群を代表する様々な他のコロナウイルス由来の3CLproに対して評価した。そのアッセイは、先のFRETアッセイに類似しており、示されるウイルスからの全長のプロテアーゼ配列を用いることができる。N−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドは、アルファ−コロナウイルス(NL63−CoV、PEDV−CoV−2、FIPV−CoV−2)、ベータ−コロナウイルス(HKU4−CoV、HKU5−CoV、HKU9−CoV、MHV−CoV、OC43−CoV、HKU1−CoV)、およびガンマ−コロナウイルス(IBV−CoV−2)のメンバーを含めた試験したすべてのコロナウイルス3CLproに対して、表3に含まれるKi値および試験した酵素濃度で、強力な阻害活性を実証した。この阻害活性は、N−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドがヒトプロテアーゼおよびHIVプロテアーゼのパネルに対して不活性であったので、コロナウイルス3CLプロテアーゼに制限される。N−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドは、ヒトカテプシンBに対して検出可能な活性を示したが、3CLproと比較して1000倍のマージンがあった(表4)。これらのデータは、panコロナウイルス3CLプロテアーゼ阻害剤としてのN−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドを、まとめて裏付けている。
【0310】
【表17】
【0311】
【表18】
【0312】
N−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドとSARS−CoV−2の3CLproのサーマルシフトシフト結合データは、インビトロでSARS−CoV−2の3CLとの密な特異的結合を示す。
0.27nMのKi値でSARS−CoV−2の3CLproを強力に阻害するN−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドの能力を考慮して、さらなる研究を行った。N−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドおよびSARS−CoV−2の3CLproのX線共結晶構造の研究は、活性部位の触媒作用的なシステイン残基における共有結合性の可逆的相互作用で3CL酵素に結合し、したがって3CLproの活性を阻害する化合物と一致する。N−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドと、その標的タンパク質であるSARS−CoV−2の3CLproの間の直接結合を評価するために、サーマルシフトアッセイも使用した。SARS−CoV−2の3CLproの融解温度は、N−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドの結合時に、55.9+/−0.11℃(n=16)から70.5+/−0.12℃(n=8)に、14.6℃シフトした。融解温度(Tm)は、Protein Thermal Shift Software v1.3においてボルツマンモデルを使用して、天然タンパク質から変性タンパク質への転移相の中間相として計算した。これらのデータは、SARS−CoV−2の3CLproへのN−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドの密な特異的結合を裏付けており(
図4を参照)、それによって、SARS−CoV−2の3CLproの阻害剤としてのこの化合物の分子機序についてのさらなる証拠を提供する。
【0313】
細胞のSARS−CoV−2抗ウイルス活性は、N−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドによってインビトロで阻害される。
【0314】
細胞培養におけるSARS−CoV−2に対するN−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドの抗ウイルス活性を、細胞変性作用(CPE)アッセイを用いて、ACE2が濃縮されたベロE6細胞(ベロE6−enACE2)受容体またはEGFPを構成的に発現するベロE6細胞(ベロE6−EGFP)のいずれかを使用して評価した。これらの細胞系に、それぞれ同一の3CLproアミノ酸配列を有するSARS−CoV−2 Washington株1またはベータCov GHB−03021/2020株を感染させた。N−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドは、それぞれ39.7μMおよび88.9μM(EC
50、表5)で、細胞をウイルスCPEから保護した。しかしベロ細胞は、そのN−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドが公知の基質である、高レベルの排出輸送体P−gp(MDR1またはABCB1としても公知)を発現する。したがって、そのアッセイを、P−gp排出阻害剤、CP−100356、4−(3,4−ジヒドロ−6,7−ジメトキシ−2(1H)−イソキノリニル)−N−2[2−(3,4−ジメトキシフェニル)エチル]−6,7−ジメトキシ−2−キナゾリンアミンの存在下で繰り返した。N−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドは、2μMのP−gp阻害剤の存在下で、ベロE6−enACE2細胞において0.23μMおよびベロE6−EGFP細胞において0.76μMのEC
50値で、活性の117〜173倍の増大を示した(表5)。P−gp阻害剤単独は、これらの濃度では抗ウイルスまたは細胞傷害活性を有しておらず、プロテアーゼ阻害剤の存在下では細胞傷害性を引き起こさなかった。両方の細胞型において、N−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドの用量の増大に対して急激な応答があり、EC
50とEC
90の間(すなわち、50%有効濃度と90%有効濃度の間)には約2〜3倍の差があった(P−gp阻害剤の存在下で、ベロE6−enACE2細胞においてEC
90=0.48μMおよびベロE6−EGFP細胞においてEC90=1.6μM)。肺細胞系を、P−gp阻害剤(A549−ACE2およびMRC5)の存在下および非存在下で抗ウイルス効力について試験した場合、抗ウイルス効力の有意差は観察されなかった(表5)。さらに、2μMのP−gpを伴う両方のベロE6細胞系におけるEC
50およびEC
90値は、A549−ACE2細胞におけるウイルスタンパク質を検出すること、および極性ヒト気道上皮細胞においてプラークアッセイ(Pg−p発現がより低い)を使用することを含めた、異なる細胞型を用いる異なるアッセイ法を使用して得られた値に類似している。
【0315】
【表19】
【0316】
ベロE6細胞におけるSARS−CoV−2に対する抗ウイルス活性のためにアジスロマイシンまたはレムデシビルのいずれかと組み合わされたN−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドの効力。手短には、hACE2発現が濃縮されているベロE6細胞に、BSL−3のラボにおいて感染多重度0.002でSARS−CoV−2(USA_WA1/2020)をバッチで接種させた(innoculated)。次に、ウイルスを接種させた細胞を、アッセイの準備ができた化合物プレートに、4,000細胞/ウェルの密度で添加する。3日間のインキュベーションの後、ウイルス誘導性細胞変性作用が、未処置の感染対照条件において95%になった時点で、細胞生存率を、ATPレベルを定量するCell Titer−Glo(Promega)を使用して、製造者のプロトコールに従って評価した。化合物の細胞傷害性を、並列の非感染細胞において評価した。
【0317】
組合せ処置が、相乗または相加効果を有するかどうかを調べるために、各化合物を、用量マトリックスの濃度で試験する。Chalice解析器を使用して、Loewe相加性および過剰モデルを計算した。Loewe過剰は、一般に過剰阻害パーセントを示すために使用され、過剰阻害パーセントは、経験的な阻害パーセント値から、様々なモデルにおいて非シナジー対を想定する様々な組合せの予測阻害パーセント値を引くことによって計算される。これらのデータにより、対ごとのアイソボログラム、シナジースコア、および最良の組合せ指標(CI)の計算が可能になった。一般に、>1のシナジースコアおよび<1のCIは、組合せ処置が相乗効果を有することを示し、シナジースコア1およびCI1は、組合せ処置が相加効果だけを有することを示す。Antimicrob Agents Chemother.2015 Apr;59(4):2086〜2093.doi:10.1128/AAC.04779−14。
【0318】
シナジーが、高阻害レベルで達成され得るかどうかを評価するために、アイソボログラムレベルを0.9に設定して、90%ウイルス低減(1−log
10低減に等価)を伴う有意義なシナジーを捉えた。
【0319】
N−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドにアジスロマイシンを加えた組合せは、シナジースコア3.76およびCI0.4でシナジーを生じた。試験したすべての組合せについて著しい細胞傷害性がなかったので、観察されたシナジーは、細胞傷害性に起因するものではなかった。N−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドおよびレムデシビルの組合せは、シナジースコア5.1およびCI0.21で相加性を実証した。観察されたシナジーは、用量を低減し、したがって阻害剤の安全マージンを増大してインビボでの治療濃度域を達成するために潜在的に使用することができる。さらに、組合せ治療は、薬物耐性を最小限に抑えるために利用することができる。
【0320】
N−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドをレムデシビルと組み合わせた、組合せによる抗ウイルスの利益の潜在可能性をさらに評価するために、追加の研究を行った。
【0321】
抗ウイルス剤、特にウイルス複製サイクルにおいて異なるステップを標的にする抗ウイルス剤の組合せは、ウイルス性疾患の処置において頻繁に用いられる治療戦略である。N−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドおよびヌクレオシドRNA依存性RNAポリメラーゼ阻害剤であるレムデシビルは、ウイルス複製サイクルにおいて異なるステップを標的にするので、2種の化合物の抗ウイルス活性を、単独でまたは組み合わせて、HeLa−ACE2細胞を使用して評価した。このアッセイでは、2人の異なるCOVID−19患者からの回復期ヒトポリクローナル血清を使用して、ウイルスタンパク質を検出した。N−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミド(表6中の指定化合物1)単独では、0.14μMの平均EC
50および0.40μMのEC
90でSARS−CoV−2複製を阻害し、他方で、レムデシビルは、0.074μMの平均EC
50および0.17μMのEC
90を有していた(表6)。
【0322】
【表20】
【0323】
組合せ研究を、薬物試験マトリックスを使用して実施し、薬物の組合せのデータを、参照モデル(Loewe、Bliss、HSA)を使用して解析して、薬物の組合せの効果を、相加的、相乗的または拮抗的として分類した(アイソボログラム、シナジースコア、および組合せ指標)。一般に、>1のシナジースコアおよび<1の組合せ指標は、組合せ処置が相乗効果を有していることを示している(Yeoら、2015)。シナジーが、高阻害レベルで達成され得るかどうかを評価するために、アイソボログラムレベルを0.9に設定して、90%ウイルス低減(1log
10低減に等価)を伴う有意義なシナジーを捉えた。
【0324】
表7にまとめられる通り、N−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドおよびレムデシビルの組合せは、2つの独立な実験で患者番号1の血清からはシナジーを示し、患者番号2の血清を用いる単一実験では相加性を示した(表7)。異なる分類は、検出試薬として使用した異なる回復期血清に起因する可能性が最も高い。これらの同じ抗ウイルスデータを、Synergyfinderプログラムも使用して解析し、それによって、2種の薬物が相加的から相乗的であったことも示され、代表的なグラフは
図5に示される。拮抗作用は、これらの研究においてN−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドおよびレムデシビルの組合せについては実証されなかった。N−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミド(
図5中の指定PF−00835231)およびレムデシビル(濃度は、
図5中の軸に沿って示される)の系列希釈を、マトリックス形式で組み合わせた。試験したすべての濃度にわたって、GeneDataプログラムを使用して解析した、シナジースコア(3回の反復のメジアンスコア)をプロットする3次元薬物相互作用のランドスケープを、
図5に示す。3次元グラフの平面の上のスコア領域は、シナジーを示し、一方、平面の下は拮抗作用を示す。試験したすべての組合せについて、ウイルス感染した宿主細胞において注目すべき細胞傷害性がなかったので、観察された相加性/シナジーは、細胞傷害性には起因していなかった。
【0325】
【表21】
【0326】
図5Aは、HELA−ACE2細胞アッセイにおいてレムデシビルと組み合わされたN−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドの活性のグラフ表示を提供する。このアッセイで見出されたN−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドのEC
90(nM)は、レムデシビル濃度の増大と共に低下した(すなわち、EC90は、レムデシビル濃度を0nMから48nM、95nM、190nMに増大した場合、それぞれ433nMから123nM、54.5nM、次に<0.78nMに低下した)。
【0327】
A549+ACE2細胞におけるインビトロ薬物有効性および細胞傷害性。A549+ACE2細胞を、ブラックウォール96ウェルプレートに70%集密度で播種した。翌日、感染の2時間前に培地を除去し、化合物/担体を含有する完全培地で置き換えた。次に細胞を、ベロE6力価に基づいて、0.425の感染多重度(MOI)で37℃において感染させた。ウイルス添加の1時間後に、ウイルスを除去し、化合物/担体を含有する培地を添加した。感染の24および48時間後に、細胞を、10%ホルマリン溶液に30〜45分間浸すことによって固定した。固定した後、細胞をH2Oで1回洗浄して、過剰のホルマリンを除去した。プレートを乾燥させ、1ウェルごとにPBSを添加した後、BSL−3の施設から出した。固定細胞をTriton−Xで透過処理し、SARS−CoV−2と交差反応するマウスモノクローナルSARS−CoV抗N抗体1C7、ヤギ抗−マウスAlexaFluor 647、およびDAPIを用いて染色した。プレートを、CellInsight CX7 LZR高含量スクリーニングプラットフォームで走査した。合計9つの画像を、ウェル全体にわたって4倍の拡大率で収集した。画像を、HCSナビゲーターを使用して解析して、細胞の総数/ウェル(DAPI染色細胞)およびSARS−CoV−2感染細胞(AlexaFluor 647陽性細胞)のパーセンテージを得た。正確な数量化を可能にするために、チャネルごとの曝露時間を、飽和の25%に調整し、解析では各画像の端部の細胞を除外した。SARS−CoV−2−感染細胞を、疑似感染した細胞および担体で処理した細胞の平均蛍光強度の3標準偏差を超える平均蛍光強度を有する細胞を含むようにゲーティングした。ウイルス焦点の代表的な画像を、BZ−X810を使用して、SARS−CoV−2感染の48hpiで固定したプレートの40倍拡大率で獲得した。細胞傷害性の決定のために、A549+ACE2細胞を、不透明ホワイトウォール96〜724ウェルプレートに播種した。翌日、培地を除去し、化合物/担体またはスタウロスポリンを含有する培地で置き換え、それぞれ24時間または48時間インキュベートした。これらの時点で、ATPレベルを、CellTiter−Glo 2.0(Promega、カタログ番号G9242)によって、BioTek Synergy HTXマルチモードリーダーを使用して決定した。
【0328】
PF−00835231は、A549+ACE2細胞においてSARS−CoV−2 USA−WA1/2020に対して評価すると、感染の24時間後に、0.221μMのEC50(0.137〜0.356の95%CI)、0.734μMのEC90(0.391〜1.38の95%CI)および>10μMのCC50を有しており、感染の48時間後に、0.158μMのEC50(0.0795〜0.314の95%CI)、0.439μMのEC90(0.380〜0.508の95%CI)および>10μMのCC50を有しており、SARS−CoV−2 USA−NYU−VC−003/2020に対して評価すると、感染の24時間後に、0.184μMのEC50(0.016〜0.377の95%CI)、0.591μMのEC90(0.534〜0.654の95%CI)および>10μMのCC50を有していた。
【0329】
ヒト気道上皮培養物(HAEC)。HAECを作製するために、Bci−NS1.1を、ラット尾コラーゲン1型でコーティングされた透過性トランズウェル膜支持体(6.5mm、Corning、カタログ番号3470)上に蒔き(7.5E+04細胞/ウェル)、Pneumacult Ex Plus培地(StemCell、カタログ番号05040)の頂端側および基底外側に浸漬させた。集密度に達したら、培地を頂端側から除去し(「エアリフト」)、基底外側チャンバの培地をPneumacult ALI維持培地(StemCell、カタログ番号05001)に変更した。基底外側チャンバの培地を、12〜15日間で2〜3日ごとにフレッシュなPneumacult ALI維持培地で交換して、インビボの多列線毛粘液線毛上皮に類似した分化した極性培養物を形成した。分化の4〜6週間以内に培養物を使用した。HAECを、細胞傷害性アッセイおよびSARS−688 CoV−2感染症のために使用した。
【0330】
化合物の獲得、希釈、および調製。PF−00835231、レムデシビル、およびCP−100356は、100%DMSOに可溶化され、Pfizer,Inc.によって提供されたものであった。DMSOで30mMに希釈した化合物ストックを、−20℃で貯蔵した。化合物を、完全培地またはPneumacult ALI維持培地中10μMの使用濃度に希釈した。その後のすべての化合物の希釈を、10μM化合物に等価なDMSOを含有する培地中で実施した。
【0331】
ヒト気道上皮培養物(HAEC)におけるインビトロ有効性および細胞傷害性。感染の48時間前に、2〜6週熟成させたHAECを、頂端側で、カルシウムおよびマグネシウムを含有する予め加温したPBSで2回、それぞれ30分間洗浄して、頂端表面上の粘液を除去した。感染の2時間前に、HAECを、基底チャンバのALI維持培地を、化合物または担体を含有するフレッシュな培地で交換することによって、予め処理した。レムデシビルおよびPF−00835231を、10、0.5および0.025μMで使用し、CP−100356を1μMで使用した。感染の1時間前に、培養物を、頂端側で、カルシウムおよびマグネシウムを含有する予め加温したPBSで2回、それぞれ30分間洗浄した。各培養物を、培養物当たり1.35E+05PFU(ベロE6)で、37℃で2時間感染させた。接種菌液の試料を、ベロE6細胞でプラークアッセイによって逆滴定するために、−80℃で維持し、貯蔵した。化合物の毒性アセスメントのために、追加の培養物を洗浄し、感染した培養物として予め処理した。これらの培養物は、感染させる代わりに、疑似処理としてカルシウムおよびマグネシウムだけを含有するPBSと共にインキュベートした。HAECを、ウイルス希釈物と共にまたは疑似処理により37℃で2時間インキュベートした。接種菌液を除去し、培養物を、カルシウムおよびマグネシウムを含有する予め加温したPBSで3回洗浄した。洗浄ステップごとに、緩衝液を頂端表面に添加し、培養物を37℃で30分間インキュベートした後、緩衝液を除去した。3回目の洗浄物を収集し、ベロE6細胞でプラークアッセイによって滴定するために、−80℃で貯蔵した。感染した培養物を、37℃で合計72時間インキュベートした。感染性子孫ウイルスを、カルシウムおよびマグネシウムを含有する予め加温したPBS60μLを添加し、37℃で30分間インキュベートし、頂端側洗浄物を収集することによって12時間ごとに収集して、滴定まで−80℃で貯蔵した。さらに、経上皮電気抵抗(TEER)を、未感染であるが処理したHAECにおいて測定して、化合物または担体を用いる処理に対する応答における組織完全性を数量化した。エンドポイントで、培養物を10%ホルマリン溶液に24時間浸すことによって固定し、カルシウムおよびマグネシウムを含有するPBSで3回洗浄した後に、組織学的検査のためにさらに処理した。あるいは、エンドポイントで、トランズウェル膜を切り取り、RLT緩衝液に浸して、RNAeasyキット(Qiagen、カタログ番号74104)を使用してRNAを抽出した。cDNA合成を、SuperScript(商標)III系(ThermoFisherカタログ番号18080051)、その後RT−qPCRを使用し、TaqMan universal PCRマスターミックス(ThermoFisherカタログ番号4305719)およびTaqMan遺伝子発現アッセイプローブ(ThermoFisher GAPDHカタログ番号4333764F、BAXカタログ番号Hs00180269_m1、BCL2カタログ番号Hs00608023_m1)を用いて、QuantStudio 3リアルタイムPCR系を使用して実施した。
【0332】
未分化HAEC前駆細胞における細胞傷害性をさらに決定するために、Bci−NS1.1細胞を、不透明ホワイトウォール96ウェルプレートに播種した。翌日、培地を除去し、化合物/担体またはスタウロスポリンを含有する培地で置き換え、それぞれ24時間または48時間インキュベートした。これらの時点で、ATPレベルを、CellTiter−Glo 2.0(Promega、カタログ番号G9242)によってBioTek Synergy HTXマルチモードリーダーを使用して決定した。
【0333】
HAECにおけるPF−00835231抗SARS−CoV−2活性を、HAECの基底外側チャンバに対して0.025μM、0.5μMまたは10μMのいずれかのPF−00835231もしくはレムデシビル、またはDMSO担体対照で評価する。HAECを、頂端側で、SARS−CoV−2 USA−WA1/2020でチャレンジし、ウイルス感染力価を、12時間ごとに収集した頂端側洗浄物から決定する。DMSOで処理した培養物からの頂端側洗浄物における子孫ウイルス粒子は、感染の12時間後に存在しており、このことは、HAEC細胞におけるSARS−CoV−2のライフサイクルが、その時間までには完了することを示している。PF−00835231およびレムデシビルは、共に用量依存方式でSARS−CoV−2力価を強力に阻害し、10μM用量では、ウイルス力価はほとんどの時点で366検出限界未満となる。
【0334】
N−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドの好ましい前臨床ADMEおよび薬物動態プロファイル
N−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドの代謝安定性を、プールしたヒト肝ミクロソーム(HLM)および肝細胞を使用してインビトロで評価した。薬物は、チトクロムP450酵素によって代謝され、非結合Cl
int14μl/分/mgを示すことが示された。化学的阻害剤および異種的に発現した組換え酵素を用いて、CYP3A4を、この化合物の代謝に関与する主なCYPとして同定した。多形的に発現されたCYP3A5は、N−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドを代謝することもでき、CYP3A5エクスプレッサーにおいてクリアランスがわずかにより高くなり得ることも認められた。ヒトチトクロムP450酵素(CYP1A2、2B6、2C8、2C9、2C19、2D6、および3A)を可逆的に阻害する化合物の潜在可能性を、プールしたHLMにおいてプローブ基質(補足的)を使用して評価すると、>200μMのIC
50値およびCYP3A4/5の時間依存的阻害について弱いシグナルが提供され、N−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドが、他の薬物との併用投与の際に薬物と薬物の相互反応(DDI)を引き起こすリスクが低いことが示された。ある範囲の輸送体(BCRP、Pgp、OATP1B1/1B3、OCT1/2、OAT1/3およびMATE1/2K)を阻害するN−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドの潜在可能性を、インビトロ系を使用して評価した。>20μMのIC
50値は、計画された臨床的曝露で、輸送体阻害に起因するDDIを引き起こすリスクが低いことを示している。N−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドの血漿タンパク質結合を、種にわたって平衡透析を使用して測定すると、種にわたって0.26〜0.46の血漿遊離分画で血漿タンパク質に対する中程度の結合が示された。
【0335】
N−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドを、ラット、イヌおよびサル(1mg/kgまたは2mg/kg)に静脈内投与すると、その中性の生理化学および親油性(SFLogD
7.4=1.7)に従って、種にわたって中程度の血漿クリアランス(35〜60%肝血流量)、低分布体積(<1L/Kg)および短い半減期(<1.5時間)が示された。ラット(2mg/kg)およびサル(5mg/kg)への経口投与後に、N−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドは、低バイオアベイラビリティ(<2%)を示したが、これは、その低い透過性による低い吸収(1.3×10
−6cm/secの見かけのMDCK−LE透過性
28,34)、低溶解度、P−gpおよびBCRPによる腸内の能動排出の潜在可能性、ならびに胃腸管における消化酵素によるアミド加水分解の潜在可能性の組合せに起因している可能性が高い。ラット、イヌおよびサルにおいては、N−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドのおよそ10%がそのまま尿中に排出され、ヒトにおけるN−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドのクリアランスにおいて、腎排出も小さい役割を果たし得ることが示された。
【0336】
IV投与に適したヒト薬物動態の予測。ヒトインビトロ代謝データ、ならびにラット、イヌおよびサルにおけるインビボ薬物動態(PK)データを考慮すると、N−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドは、ヒトにおいて約6mL/分/kgの血漿クリアランス(CL
p)(主にCYP、腎経路で少量)、1L/kgの定常状態の分布体積(V
dss)、およびおよそ2時間の半減期を示すと予測される。経口バイオアベイラビリティが限られること、排出半減期が短いこと、および遊離全身濃度を経時的に維持する必要性がある可能性が高いことに起因して、静脈内持続(IV)注入が、最適な投薬経路およびレジメンとして提案された。
【0337】
標的Ceffを達成するための有効標的濃度および実現可能なヒト用量の見積もり
阻害指数(IQ)は、いくつかのウイルス性疾患にわたって、前臨床抗ウイルス効力を診療所につなげるのに有用な計量になってきた。IQは、抗ウイルスアッセイにおいて、ヒトC
min,u非結合濃度をインビトロ非結合(血清を調整)EC
50,u値で割ったものとして定義される(等式1)。
【0338】
【数1】
【0339】
一部の抗ウイルス治療は、1に近いIQで著しい利益を示したが、ウイルス複製を急速に制御するには、インビトロEC
50よりも少なくとも10倍高い曝露を維持することが頻繁に必要になる。臨床的に承認されているプロテアーゼ阻害剤は、タンパク質結合および作用部位曝露を考慮する場合、1〜100のIQ値で投薬されるとウイルス負荷を有効に低減した。重要なことに、一般に抗ウイルス薬、具体的にはプロテアーゼ阻害剤は、1未満のIQで投薬されると、変異およびさらなる薬物耐性を潜在的に増大するおそれがある。
【0340】
どれほど高いIQ値が必要であるかは、用量応答曲線の勾配に応じて決まる。Hill係数(m)およびEC
50は、等式2によって、ある範囲の濃度(C)でインビトロ抗ウイルス活性に関連付けられる。
【0341】
【数2】
【0342】
N−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドは、HIVおよびHCVを標的にする臨床的プロテアーゼ阻害剤の勾配と同様に、ある範囲のインビトロ抗ウイルスアッセイにわたって高勾配(m=3)を示す。抗ウイルスEC
50およびEC
90濃度の間には、Hill係数1を有する抗ウイルス剤に典型的な9倍の差ではなく、2〜3倍の差しかない。したがって、EC
50値に対して相対的に小さい比(3〜10)の曝露は、ほぼ完全なウイルス抑制に関連付けられる。
【0343】
計画された最小有効濃度(C
eff)は、承認されているプロテアーゼ阻害剤の前臨床から臨床的への変換と一致するインビトロEC
90に合致するように選択した。N−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドは、持続注入によって投与されることが提案されたので、計画された定常状態曝露は、投薬間隔にわたって維持されたC
minに等しい。生理的に関連する細胞型であるヒト肺癌で実施した用量応答アッセイは、0.44μMの平均EC
90値をもたらした。このことは、P−gp阻害剤が、肺内の実質的なP−gp輸送体の欠如をより良好に反映するために添加された場合の、Hela−ACE2細胞(EC
90=0.4μM)およびベロ細胞系(EC
90=0.48〜1.6μM)における追加の抗ウイルスデータと一致している。さらに、抗ウイルス阻害は、一次ヒト気道上皮モデルで実施した抗ウイルス時間経過実験によって裏付けられ(予備データは、<0.5μMの非結合EC
90を示す)、異なる細胞型にわたってN−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドの一貫した内因性抗SARS−CoV−2活性を示している。したがって、提案される標的C
effは、約0.5μMである。
【0344】
肺を介する急速な血液灌流および定常状態の静脈内持続注入レジメンに起因して、遊離血漿および肺の遊離濃度は、平衡状態であると想定され、したがって、遊離血漿濃度は、疾患の主な作用部位における濃度の妥当な代替を提供する。ヒトPK予測に基づくと、この曝露を達成するのに必要なN−((1S)−1−{[((1S)−3−ヒドロキシ−2−オキソ−1−{[(3S)−2−オキソピロリジン−3−イル]メチル}プロピル)アミノ]カルボニル}−3−メチルブチル)−4−メトキシ−1H−インドール−2−カルボキサミドの最小有効用量は、静脈内持続注入として投与される320mg/日である。有効性のために必要な投薬期間は、不確定のままであり、ヒトにおいて評価する必要がある。レムデシビルからの臨床結果に基づくと、患者の転帰を改善するためには、10日までの投薬期間が必要となり得る。
【0345】
本明細書で先に記載されるすべての特許文書および論文は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本発明を、様々な好ましい実施形態および具体例に関して記載してきたが、本発明は、先の詳細な説明によって制限されず、添付の特許請求の範囲およびそれらの等価物によって定義されると理解されるべきである。