【課題】本発明の課題は、塗装建材表面の耐セロテープ(登録商標)性、及び耐汚染性に優れる塗装建材の製造方法、及び該製造方法から得られた塗装建材を提供することにある。
【解決手段】基材上に、活性エネルギー線硬化型皮膜を有する塗装建材の製造方法であって、基材上に、二重結合当量が100〜750g/mol、重量平均分子量が10,000〜100,000のアクリル(メタ)アクリレート樹脂、アクリロイル基とシロキサン骨格を有する化合物及び/又はフルオロアルキル基を有する化合物、及びシリカを含有するコーティング組成物を塗装しコーティング組成物の塗膜を作製する工程(1)と、
前記工程(1)で得た塗膜に、酸素濃度8%未満のガス雰囲気下で、80〜500mJ/cm2の活性エネルギー線を少なくとも1回照射する工程(2)とを有することを特長とする塗装建材の製造方法。
前記アクリル(メタ)アクリレート樹脂のガラス転移温度(Tg)が40〜130℃の範囲であり、水酸基価が5〜300mgKOH/gである請求項1に記載の塗装建材の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の塗装建材の製造方法としては、基材上に、活性エネルギー線硬化型皮膜を有する塗装建材の製造方法であって、基材上に、二重結合当量が100〜750g/mol、重量平均分子量が10,000〜100,000のアクリル(メタ)アクリレート樹脂、アクリロイル基とシロキサン骨格を有する化合物及び/又はフルオロアルキル基を有する化合物、及びシリカを含有するコーティング組成物を塗装しコーティング組成物の塗膜を作製する工程(1)と、前記工程(1)で得た塗膜に、酸素濃度8%未満のガス雰囲気下で、30〜1000mJ/cm
2の活性エネルギー線を少なくとも1回照射する工程(2)とを有することを特長とする。
まず、前記コーティング組成物について説明する。
【0015】
前記コーティング組成物で使用するアクリル(メタ)アクリレート樹脂を構成するモノマー成分としては、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルプロリドン等の単官能モノマー並びに多官能モノマー、例えば、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0016】
前記アクリル(メタ)アクリレート樹脂の二重結合当量は、100〜750g/molの範囲を必須とする。前記アクリル(メタ)アクリレートの二重結合当量が100g/molを下回ると硬化時の体積収縮が大きく、塗膜の湾曲や歪みによる割れが生じる可能性と、密な架橋による加工性の低下が発生する。また750g/molを上回ると反応性基が足りず反応後の硬度等の物性が十分にでない傾向にあり、200〜400g/molの範囲であればより好ましく、200〜300g/molの範囲であれば更に好ましい。
尚、前記アクリル(メタ)アクリレート樹脂の二重結合当量は、下記式で定義される。
「二重結合当量」=「アクリル(メタ)アクリレート樹脂1分子の分子量」/「二重結合の数」
また、前記アクリル(メタ)アクリレートの重量平均分子量は、10,000〜100,000の範囲であることを必須とする。前記アクリル(メタ)アクリレートの重量平均分子量が10,000以上であれば、塗膜にタックが残り難く、乾燥工程のみでのタックフリー化が容易になり、また100,000を以下であれば組成物の粘度が高くなり過ぎる事もなく、塗工時の希釈が効きすぎて十分な塗布量が得られない問題も回避する事ができる。また、作業性の観点から10,000〜50,000であればより好ましく、10,000〜30,000の範囲であれば更に好ましい。
前記重量平均分子量とは、GPCによるポリスチレン換算の測定によるものである。
【0017】
更に、前記アクリル(メタ)アクリレートのガラス転移温度(Tg)は、40〜130℃の範囲である事が好ましく、40℃以上であれば塗膜にした際に硬化後十分な強度が得る事ができ、また130℃以下であれば塗膜にした際に脆さが現れ加工性が低下する傾向も抑制できる。また前記アクリル(メタ)アクリレートの水酸基価は5〜300mgKOH/gの範囲である事が好ましく、5mgKOH/g以上であれば湿式シリカ等の艶消し剤の分散が低下する事なく低光沢化が保持し易い傾向となり、また300mgKOH/g以下であれば耐汚染性が低下する傾向が抑制できる。
前記ガラス転移温度(Tg)の測定は、示差走査熱量計を用い、窒素雰囲気下、冷却装置を用い温度範囲−80〜450℃、昇温温度10℃/分の条件で走査を行う事で行ったものである。
【0018】
尚、前記アクリル(メタ)アクリレートの含有量は、コーティング組成物中の固形分全量の20〜85質量%である事が塗布面の好適な被覆性、硬化性の点から好ましく、25〜80質量%の範囲であればより好ましい。
【0019】
次に、本発明の塗装建材の製造方法において、前記コーティング組成物で使用するアクリロイル基とシロキサン骨格を有する化合物及び/又はフルオロアルキル基を有する化合物について説明する。
【0020】
前記アクリロイル基とシロキサン骨格を有する化合物として代表的なものは、シリコーン骨格を有する(メタ)アクリレートであるシリコーン(メタ)アクリレートを挙げる事ができる。
以下、シリコーン(メタ)アクリレートについていくつか例を挙げて具体的に説明する
。
【0021】
シリコーン(メタ)アクリレートとしては、例えば、下記一般式(1)で表わされる、両末端または片末端にプロピル(メタ)アクリレート構造を有するシリコーン(メタ)アクリレート、下記一般式(2)で表わされるシリコーンエポキシ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0024】
上記一般式(1)中、R1は(メタ)アクリロイル基であり、R2は(メタ)アクリロイル基またはメチル基であり、pは0以上の整数である。
上記一般式(2)中、lは0以上の整数であり、mは1以上の整数であり、nは0以上の整数であり、R3、R4、R5はそれぞれ独立して水素またはメチル基である。
【0025】
上記一般式(1)で表わされるシリコーン(メタ)アクリレートは、分子量が大きすぎると他の重合性成分との相溶性が低下する。一方、分子量が小さすぎると撥水性や耐擦傷性向上の効果が得られにくくなる。そのため、上記一般式(1)で表されるシリコーン(メタ)アクリレートの重量平均分子量は500〜2000程度が好ましい。
このようなシリコーン(メタ)アクリレートの市販品としては、例えば、JNC社製の「サイラプレーン(登録商標)」シリーズのFM−0711、FM−0721、FM−0725、FM−7711、FM−7721、FM−7725;信越化学工業社製のX−22−2445、X−22−174ASX、X−22−174BX、X−22−174DX、KF−2012、X−22−2426、X−22−2475、X−22−164、X−22−164AS、X−22−164A、X−22−164B、X−22−164C、X−22−164E;東レ・ダウコーニング社製のBY16−152Cなどが挙げられる。
【0026】
上記一般式(2)で表わされるシリコーンエポキシ(メタ)アクリレートの市販品としては、例えば、エボニック・ジャパン社製の「Tego(登録商標)」シリーズのRad2011、Rad2100(ポリシロキサンアクリレート Cas番号:125445−52−9)、Rad2500(ポリジメチルシロキサンアクリレート Cas番号:125445−52−9)、Rad2700(アクリル変性ポリシロキサン Cas番号:157811−87−5)などが挙げられる。
【0027】
シリコーン(メタ)アクリレートとしては、上述した以外にも、例えば、ポリジメチルシロキサンの両末端をエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの少なくとも一方で変性した(メタ)アクリレートを用いてもよい。その市販品としては、例えば、信越化学工業社製のX−22−1602;ビックケミー・ジャパン社製のBYK−UV3500、BYK−UV3530;エボニック・ジャパン社製の「Tego(登録商標)」シリーズのRad2200N、Rad2250、Rad2300;ダイセル・オルネクス社製のEBECRYL 350などが挙げられる。
【0028】
また、シリコーン(メタ)アクリレートとしては、ウレタン(メタ)アクリレートおよびポリエステル(メタ)アクリレートの少なくとも一方であり、かつシリコーン骨格を有するものを用いてもよい。その市販品としては、例えば、ビックケミー・ジャパン社製のBYK−UV3570;Miwon Speciality Chemical社製の「Miramer(登録商標)」シリーズのSIU100,SIU1000、SIU2400、SIP900などが挙げられる。
【0029】
また、上述した以外のシリコーン(メタ)アクリレートの市販品としては、例えば、ビックケミー・ジャパン社製のBYK−UV3505、3530、3575、3576;ダイセル・オルネクス社製のEBECRYL 1360などが挙げられる。
【0030】
シリコーン(メタ)アクリレートとしては、上述した中でも、塗装建材表面の耐汚染性の観点から、上記一般式(1)で表わされるシリコーン(メタ)アクリレート、上記一般式(2)で表わされるシリコーンエポキシ(メタ)アクリレートであるエボニック・ジャパン社製の「Tego(登録商標)」のRad2011、Rad2100、Rad2500、Rad2700が好ましく、中でもRad2700(アクリル変性ポリシロキサン Cas番号:157811−87−5)が特に好ましい。
【0031】
また、前記コーティング組成物では、前記アクリロイル基とシロキサン骨格を有する化合物の代わりにフルオロアルキル基を有する化合物を使用しても良いし、アクリロイル基とシロキサン骨格を有する化合物と、フルオロアルキル基を有する化合物を混合して使用しても良い。前記フルオロアルキル基を有する化合物としては、化学式3で示される化合物である。
【0033】
ここでR
fはフッ素化合物セグメント、R
6はアルカンジイル基、アルカントリイル基、およびそれらから導出されるエステル構造、ウレタン構造、エーテル構造、トリアジン構造を、Aは反応性部位を示し、nは1または2である。
【0034】
この反応性部位とは、熱または光などの外部エネルギーにより他の成分と反応する部位を指す。このような反応性部位として、反応性の観点からアルコキシシリル基およびアルコキシシリル基が加水分解されたシラノール基や、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などが挙げられる。なかでも、反応性、ハンドリング性の観点から、ビニル基、アリル基、アルコキシシリル基、シリルエーテル基あるいはシラノール基や、エポキシ基、アクリロイル(メタクリロイル)基が好ましい。
【0035】
前記フルオロアルキル基を有する化合物の一例は次に示される化合物である。3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリイソプロポキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリクロロシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリイソシアネートシラン、2−パーフルオロオクチルトリメトキシシラン、2−パーフルオロオクチルエチルトリエトキシシラン、2−パーフルオロオクチルエチルトリイソプロポキシシラン、2−パーフルオロオクチルエチルトリクロロシラン、2−パーフルオロオクチルイソシアネートシラン、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフロオロプロピルアクリレート、2−パーフルオロブチルエチルアクリレート、3−パーフルオロブチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロヘキシルエチルアクリレート、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルアクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロデシルエチルアクリレート、2−パーフルオロ−3−メチルブチルエチルアクリレート、3−パーフルオロ−3−メトキシブチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロ−5−メチルヘキシルエチルアクリレート、3−パーフルオロ−5−メチルヘキシル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロ−7−メチルオクチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラフルオロプロピルアクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、ドデカフルオロヘプチルアクリレート、ヘキサデカフルオロノニルアクリレート、ヘキサフルオロブチルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメタクリレート、2−パーフルオロブチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロブチル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロデシルエチルメタクリレート、2−パーフルオロ−3−メチルブチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロ−3−メチルブチル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロ−5−メチルヘキシルエチルメタクリレート、3−パーフルオロ−5−メチルヘキシル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロ−7−メチルオクチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロ−6−メチルオクチルメタクリレート、テトラフルオロプロピルメタクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、ドデカフルオロヘプチルメタクリレート、ヘキサデカフルオロノニルメタクリレート、1−トリフルオロメチルトリフルオロエチルメタクリレート、ヘキサフルオロブチルメタクリレート、トリアクリロイル−ヘプタデカフルオロノネニル−ペンタエリスリトールなどが挙げられる。
尚、フッ素化合物は1分子あたり複数のフルオロポリエーテル部位を有していてもよい。
【0036】
前記フルオロアルキル基を有する化合物の市販されている例としては、RS−75(DIC株式会社製)、C10GACRY、C8HGOL(油脂製品株式会社製)、オプツールDAC−HP(ダイキン工業株式会社製)等を挙げることができ、これらの中でも、塗装建材表面の耐汚染性が良好である事からRS−75(DIC株式会社製)が特に好ましい。
【0037】
前記アクリロイル基とシロキサン骨格を有する化合物、及び又はフルオロアルキル基を有する化合物の添加量としては、コーティング組成物の固形分全量の0.1〜10質量%の範囲が好ましく、より好ましく0.3〜8質量%の範囲である。0.1質量%以上であればコーティング組成物の塗装建材表面への密着性、耐セロテープ(登録商標)性を保持しつつ、耐汚染性をも兼備する事ができる。10質量%以下であれば裏移りし易い傾向を抑制する事ができる。
【0038】
前記コーティング組成物で使用するシリカとしては、非晶性シリカがより好ましい。前記非晶性シリカとしては、珪藻土、活性白土等が挙げられ、非晶性シリカの中でも合成非晶性シリカとしては乾式シリカ、湿式シリカ、シリカゲル等が使用できる。
前記コーティング組成物で使用する艶消し剤として用いるシリカとしては、ケイ酸ソーダ水溶液の酸またはアルカリ金属塩による中和、分解反応によって製造された湿式シリカが好ましい。
【0039】
前記合成非晶質シリカは、物質の最小構成単位である5〜55nmの一次粒子が融着あるいは化学結合し一次粒子凝集体(二次粒子構造)となる。さらに一次粒子凝集体が物理的に凝集し二次凝集体として存在しているが、二次凝集体は各種媒体中で物理的なせん断力を与えることで一次粒子凝集体(二次粒子構造)まで分散することが可能である。本発明の平均粒子径とは、一次粒子凝集体(二次粒子構造)である平均二次粒子系のことを指す。
【0040】
前記艶消し剤として用いる湿式シリカの平均粒子径としては、0.1〜25μm、好ましくは0.3〜20μm、さらに好ましくは0.5〜15μm、さらに好ましくは1〜10μmであることが望ましい。平均粒子径が0.05μm未満であると、より粒径の小さい一次粒子の強い結合から成り立っており、比表面積も大きくなるため、高い吸油性能を有し、コーティング組成物とした際に十分な流動性が得られない上、艶消し効果の低下によりマット感に伴う高級感が得られない。また、平均粒子径が25μmより大きいと、表面の凹凸に汚れが入り込むことによる汚染性の悪化や、粒子の脱落・埋没による艶変化・傷付が発生し易くなる。
湿式シリカの細孔容積としては0.1〜2.0mL/g、好ましくは1.5〜2.0mL/gであることが望ましい。見かけ比重としては0.1〜1.5g/mL、好ましくは0.1〜0.5g/mLであることが望ましい。吸油量としては50〜400mL/100g、好ましくは200〜400 mL/100gであることが望ましい。細孔容積0.1mL/g、見かけ比重0.1g/mL、吸油量としては50mL/100gを下回ると十分な艶消し効果を得ることが困難となる。反対に、細孔容積2.0mL/g、見かけ比重1.5g/mL、吸油量としては400mL/100gを上回ると、艶消し効果は大きい反面、増粘作用も必要以上に増し、コーティング剤としての流動性が損なわれる傾向にあり好ましくない。
【0041】
本発明で艶消し剤として使用する湿式シリカの含有率は、コーティング組成物全量の0.01〜10質量%、好ましくは、0.05〜8質量%、さらに好ましくは0.1〜7質量%が望ましい。シリカ含有率が0.01質量%未満であると充分な艶消し効果が見られず、10質量%を超えるとコーティング剤としての流動性、転移性が損なわれる傾向となり好ましくない。中でも、BET法による比表面積が50〜500m
2/gの湿式シリカが好ましい。
【0042】
更に、耐傷性を付与する耐傷性向上添加剤としてシリカを添加してもよい。耐傷性を付与させるために添加するシリカとしては、四塩化ケイ素ガスなどを気相中で燃焼させて製造された乾式シリカが好ましい。前記艶消し剤としての湿式シリカに、更に耐傷性向上添加剤として乾式シリカを添加すれば、適度な低艶に加えて塗工表面の耐傷付き性を向上させる事が出来る。
【0043】
前記耐傷性向上添加剤としての乾式シリカの平均粒子径は、0.1〜3μmであり、好ましくは0.1〜0.5μm、さらに好ましくは0.1〜0.25μmである。
【0044】
前記耐傷性向上添加剤として使用した場合の乾式シリカの含有率は、コーティング組成物全量の10〜30質量%が好ましくは、15〜20質量%であればより好ましい。シリカ含有率が10質量%未満であると充分な耐傷効果が見られず、30質量%を超えるとコーティング剤としての鮮明性、汚染性が損なわれる傾向にあり好ましくない。
中でも、BET法による比表面積が50〜500m
2/gの乾式シリカが好ましい。
また、耐傷性向上添加剤としてアクリル樹脂ビーズや、シリコーンビーズ等で代用する事が出来る。アクリル樹脂ビーズ、及びシリコーンビーズの平均粒子径は1〜50μm、好ましくは1〜30μm、さらに好ましくは1〜10μmであり、その含有率は、コーティング組成物全量の3〜15質量%が好ましく、5〜12質量%であればより好ましい。
【0045】
本発明で使用する艶消し剤として用いる湿式シリカ、耐傷性向上添加剤としての乾式シリカは共に、表面修飾されたものを使用することができる。
シリカ粒子を表面処理する方法は、特に制限は無く公知の方法であれば良い。ワックスやシランカップリング剤で表面差処理されたものが挙げられる。
【0046】
本発明の塗装建材の製造方法において用いられる基材として化粧シート向けとしての紙や各種フィルムの他、木材、不燃材等が挙げられる。
【0047】
前記化粧シートとは、紙等の基材に対し公知の例えばアクリル系、セルロース系、ビニル系、塩素化ポリオレフィン系、塩化ゴム系、ウレタン系印刷インキや塗料を印刷あるいは塗布することによって絵柄層を形成した上で、この絵柄層を被覆させるトップコート層を設ける構成とするものであり、前記コーティング組成物は前記トップコート層を形成するものである。
前記化粧シート向け基材の種類としては、例えば、薄葉紙、普通紙、強化紙、樹脂含浸紙等の紙質シート、チタン紙、ポリエチレンテレフタレートシート、グリコール変性ポリエチレンテレフタレートシート(PETGシート)、ポリ塩化ビニルシート、ポリエチレンシート、アクリルニトリルブタジエンスチレンシート、ポリプロピレンシート等の樹脂シート、及びこれらの複合シート等を使用できる。
また、木質化粧板の木質基材としては、従来から化粧板や家具、建築部材等の木質基材として使用されている合板、パーティクルボード、ハードボード、MDF等の公知のものが挙げられる。またこれらの公知基材はどのような製法で得られたものであるかは問わない。
【0048】
更に、基材として使用できる不燃材としては、石膏ボード、石膏板、珪酸カルシウム板等を素材とした開孔ボード建材等を挙げることができる。
【0049】
本発明の塗装建材の製造方法においては、前記基材上に、二重結合当量が100〜750g/mol、重量平均分子量が10,000〜100,000のアクリル(メタ)アクリレート樹脂、アクリロイル基とシロキサン骨格を有する化合物及び/又はフルオロアルキル基を有する化合物、及びシリカを含有するコーティング組成物を塗装し、まず最初に該コーティング組成物の塗膜を作製する工程(1)の過程を経て塗装建材を製造する。
【0050】
前記コーティング組成物の塗膜を作製する工程(1)において、前記塗膜を作製するに当たり、コーティング組成物の塗布・印刷方式の具体的な例としては、コーティング方法としては、たとえばロールコーター、グラビアコーター、フレキソコーター、エアドクターコーター、ブレードコーター、エアナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、トランスファロールコーター、キスコーター、カーテンコーター、キャストコーター、スプレイコーター、ダイコーター、オフセット印刷機、スクリーン印刷機等を適宜採用することができる。
【0051】
次に前記工程(1)で得た塗膜に、酸素濃度8%未満のガス雰囲気下で、30〜1000mJ/cm
2の活性エネルギー線を少なくとも1回照射する工程(2)とを有することで塗装建材表面のセロテープ(登録商標)性、及び耐汚染性に優れる塗装建材を提供する事が出来る。
前記酸素濃度8%未満のガス雰囲気とは、空気と共に又は単独で窒素ガス、二酸化
炭素ガス、アルゴンガスから選ばれる1種、または2種以上の混合ガスを反応容器に注入することで実現されるものである。
【0052】
前記30〜1000mJ/cm
2の活性エネルギー線を少なくとも1回照射する工程(2)の過程での活性エネルギー線とは紫外線、電子線、γ線の如き、電離性放射線や電磁波などであり、中でも紫外線又は電子線が好ましい。
【0053】
酸素濃度8%未満のガス雰囲気下にて紫外線を照射する場合は、高圧水銀灯、エキシマランプ、メタルハライドランプ等を備えた公知の紫外線照射装置を使用することができる。硬化の際の紫外線光量は、80mJ/cm
2以上であれば硬化効率がよく、1000mJ/cm
2以下であれば、熱による基材の損傷などを防ぐ観点で好ましい。
【0054】
本発明の活性エネルギー線硬化型皮膜を有する塗装建材の製造方法においては、基材に塗布後、活性エネルギー線を照射することで硬化皮膜とすることができる。この活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、α線、β線、γ線のような電離放射線であるが、具体的なエネルギー源又は硬化装置としては、例えば、殺菌灯、紫外線用蛍光灯、紫外線発光ダイオード(UV−LED)、カーボンアーク、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、低圧水銀ランプ、複写用高圧水銀灯、中圧又は高圧水銀灯、超高圧水銀灯、無電極ランプ、メタルハライドランプ、自然光等を光源とする紫外線、又は走査型、カーテン型電子線加速器による電子線等が挙げられる。
本発明で使用するコーティング組成物 では、前記の如く活性エネルギー線、好ましくは紫外線等の光照射をすることにより、2液硬化型でなくとも仕上がりにベタ付きを残すことなく硬化反応を行う事ができる。例えばFusion System社製のHランプ、Dランプ、Vランプ等の市販されているものを用いて行うことができる。
【0055】
不活性ガス中の硬化では、酸素による硬化阻害が少なく、前記したアクリル(メタ)
アクリレート樹脂等、主剤のラジカル重合性二重結合の反応がより進行し、硬化が十分行われる上、紫外線反応性基を持つアクリロイル基とシロキサン骨格を有する化合物の例えばトリメチルシリル基等のシロキサン骨格や、フルオロアルキル基を有する化合物のフッ素部分が塗膜表面に十分固定され、時間が経過しても長期に表層に留まる事にから化粧シートの塗膜表面の耐性が増し、耐セロテープ(登録商標)性、及び耐汚染性をより向上させる事ができる。十分固定された添加剤成分は、例えばグラビア印刷におけるロールの巻き取りにおいて原反の裏面と接触しても外れにくい。
【0056】
本発明の塗装建材の製造方法において活性エネルギー線として紫外線を用いる場合には、使用するコーティング組成物の硬化剤として公知公用の光重合開始剤を利用することが可能であり、中でもラジカル重合タイプの光重合開始剤が好ましく、活性エネルギー線硬化性化合物溶解時に溶解液の着色が無く、経時による黄変の少ないα-ヒドロキシアルキルケトン系光重合開始剤が挙げられる。α-ヒドロキシアルキルケトン系光重合開始剤としては例えば、1−フェニル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−i−プロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられる。更にフェニルグリオキソレート系光重合開始剤も好ましい。フェニルグリオキソレート系光重合開始剤としては例えばメチルベンゾイルフォルマート等を挙げることができる。中でも、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが好ましい。
【0057】
また、その他のラジカル重合タイプの光重合開始剤としては紫外線の中でも長波長領域に吸収波長を有するモノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤を適宜、組合わせて使用してもよい。モノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤としては活性エネルギー線硬化性化合物への溶解時に着色するビスアシルフォスフィンオキサイド類は除き、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6−ジクロロベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−フェニルフォスフィン酸メチルエステル、2−メチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、ピバロイルフェニルフォスフィン酸イソプロピルエステル等のモノアシルフォスフィンオキサイド類等が挙げられ、特に、これらの中でも、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイドは、385nmや395nmに発光波長を有するUV−LEDの発光波長領域に合致するUV吸収波長を有することで、好適な硬化性が得られ、且つ、硬化皮膜の黄変が少ない点でより好ましい。
【0058】
前記した光重合開始剤はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。前記光重合開始剤の総計のコーティング組成物中の含有率は、有機溶剤を含む組成物全量に対し0.1〜10質量%の範囲にあることが好ましい。0.1質量%未満の添加量では良好な硬化性を得ることが困難であり、また10質量%を超える添加量では、開始剤量が過剰となり、コーティング剤としての流動性を損ない加工性、作業性が低下することから好ましくない。
【0059】
更に、脂肪族アミン誘導体及び/又は安息香酸アミン誘導体から選ばれる3級アミン化合物を増感剤として添加することによって、硬化速度を速めることもできる。3級アミン化合物は、反応性を高め、酸素による反応阻害を阻止することで知られている。好適な3級アミン化合物としては、例えば、トリエチルアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの遊離アルキルアミン、2−エチルヘキシル−4−ジメチルアミノベンゾエート、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエートなどの芳香族アミン、およびポリアリルアミンとその誘導体としての高分子アミンなどが挙げられる。エチレン2重結合性不飽和アミン(例えば、(メタ)アクリレート化アミン類)などの活性エネルギー線重合性化合物は、低臭気性、低揮発性、および硬化によってポリマーマトリックス中に組み込むことができる能力によって黄ばみが抑制される性質があることから、好ましいとされる。
【0060】
前記3級アミン化合物は、有機溶剤を含むコーティング組成物全量に対して、好ましくは、0.1〜10質量%、より好ましくは、0.3〜3質量%の量で用いる事ができる。
【0061】
また本発明の塗装建材の製造方法において使用するコーティング組成物は、該組成物を用いた塗工表面の耐傷性の向上を目的に、更にアクリル(メタ)オリゴマー、及び/又はウレタン(メタ)アクリレート樹脂を添加してもよい。これらのアクリル(メタ)オリゴマー、及び/又はウレタン(メタ)アクリレート樹脂を添加する際の組成比は、アクリル(メタ)アクリレート/アクリル(メタ)オリゴマー/ウレタン(メタ)アクリレートを併用した時の『3者同士の固形分の質量比の範囲』を示せば、アクリル(メタ)アクリレート樹脂50〜99質量%、アクリル(メタ)オリゴマー、及び/又はウレタン(メタ)アクリレート樹脂1〜50質量%であることが好ましい。より好ましくは、アクリル(メタ)アクリレート樹脂60〜90質量%、アクリル(メタ)オリゴマー、及び/又はウレタン(メタ)アクリレート樹脂10〜40質量%である。アクリル(メタ)オリゴマー、及び/又はウレタン(メタ)アクリレート樹脂の配合量が50質量%を超すと塗膜に粘性が生じ、乾燥工程のみでのタックフリー化が発現しない。
【0062】
前記アクリル(メタ)オリゴマーとしては例えばトリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0063】
前記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂を構成する成分としては、多官能アルコール成分、分子中に一個以上のアルコール性水酸基と一個以上の(メタ)アクリル酸エステル又は(メタ)アクリルアミドを有する化合物、ポリイソシアネート化合物が挙げられる。
ウレタン(メタ)アクリレート樹脂を構成する多官能アルコール成分としては、以下に例示した化合物から選ばれる一種類以上の化合物を単独又は必要に応じて任意の比率で二種類以上を混合して使用することができる。
【0064】
エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、ジ(1,2−プロピレングリコール)、トリ(1,2−プロピレングリコール)、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,2−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロデカン、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)アダマンタン、2,3−ビス(ヒドロキシメチル)ノルボルナン、2,5−ビス(ヒドロキシメチル)ノルボルナン、2,6−ビス(ヒドロキシメチル)ノルボルナン、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、 ネオペンチルグリコールモノヒドロキシピバリン酸エステル、スピログリコール(3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキソスピロ[5.5]ウンデカン)、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパン、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸、グリセリン、エチレンオキサイド変性グリセリン、プロピレンオキサイド変性グリセリン、ペンタエリスリトール、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトール、プロピレンオキサイド変性ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、エチレンオキサイド変性ジトリメチロールプロパン、プロピレンオキサイド変性ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトール、プロピレンオキサイド変性ジペンタエリスリトール、精製ヒマシ油等が挙げられる。
【0065】
ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の構成成分で、末端ラジカル重合性不飽和結合を付与するための化合物としては以下に挙げる、分子中に一個以上のアルコール性水酸基と一個以上の(メタ)アクリル酸エステル又は(メタ)アクリルアミドを有する化合物が挙げられる。
アルコール性水酸基を分子内に一個有する(メタ)アクリル酸エステル類又は(メタ)アクリルアミド類としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸エチル、ε−カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、γ−ブチロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリン(メタ)アクリレートステアレート、グリセリン(メタ)アクリレートオレエート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、ビス[(メタ)アクリロイルオキシエチル]イソシアヌル酸、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。又、二個以上のアルコール性水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル類としてはグリセリン(メタ)アクリレートの他、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルビス(ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸等が挙げられる。その他、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル、ポリ(プロピレングリコール)ジグリシジルエーテル等の脂肪族ジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸の反応により得られ、一般的にはエポキシアクリレートと称される化合物群を用いることができる。ここから選ばれる一種類以上の化合物を、両末端に2−ヒドロキシル(メタ)アクリル酸エステル構造を有する化合物として利用してウレタン樹脂骨格にラジカル重合性不飽和結合を導入することもできる。
【0066】
更に任意の成分として、ワックス、可塑剤、分散剤、泡消剤等を含有させることが出来る。
【0067】
本発明の塗装建材の製造方法において使用するコーティング組成物で用いる溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族または脂環式炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル等のエステル類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテルを挙げることができる。
【0068】
また、本発明の塗装建材の製造方法においては、建材用途のみならず、家具、楽器、事務用品、スポーツ用品、玩具等の表面塗装用途に幅広く展開され得る。
【実施例】
【0069】
以下、実施例により、本発明をさらに詳しく説明する。尚、以下実施例中にある部、質量部とは、質量%を表す。
尚、本発明におけるGPCによる重量平均分子量(ポリスチレン換算)の測定は東ソー(株)社製HLC8220システムを用い以下の条件で行った。
分離カラム:東ソー(株)製TSKgelGMHHR−Nを4本使用。カラム温度:40℃。移動層:和光純薬工業(株)製テトラヒドロフラン。流速:1.0ml/分。試料濃度:1.0重量%。試料注入量:100マイクロリットル。検出器:示差屈折計。
また、ガラス転移温度(Tg)の測定は、示差走査熱量計(株式会社TAインスツルメント製「DSC Q100」)を用い、窒素雰囲気下、冷却装置を用い温度範囲−80〜450℃、昇温温度10℃/分の条件で走査を行う事で行った。
また、各アクリルアクリレート樹脂の水酸基価は、樹脂中の水酸基を過剰のアセチル試薬にてアセチル化した際の、残存する酸をアルカリで逆滴定して算出した樹脂1g中の水酸基量を、水酸化カリウム(KOH)のmg数で示したものであり、JISK0070に準じたものである。
また、シリカの平均粒子径は日機装株式会社製ナノ粒子粒度分布測定器Nanotrac UPA EX−150を使って測定した。
【0070】
〔調整例1 コーティング組成物1の調整〕
アクリルアクリレート樹脂A(二重結合当量250g/mol品、重量平均分子量25,000、Tg56℃、水酸基価113mgKOH/g)固形分35質量部、IGM社製1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル-ケトン「Omnirad 184」5質量部、重合禁止剤であるジブチルヒドロキシトルエン(BHT) 固形分0.05質量部、艶消し剤湿式シリカ「サイリシア350 平均粒子径3.9μm、見かけ比重0.49g/mL、吸油量310mL/100g、細孔容積1.7mL/g」7質量部、アクリロイル基とシロキサン骨格を有する化合物(アクリロイルポリシロキサン)であるTEGO RAD2700(アクリル変性ポリシロキサン Cas番号:157811−87−5)2.4質量部、メチルエチルケトン15.5質量部を添加し、攪拌機で1時間撹拌混合し、更に酢酸エチルと酢酸ブチルの質量比7:3の混合溶剤を30質量部加え攪拌し、総計94.95質量部(固形分49.45質量部)のコーティング組成物1を作製した。得られたコーティング組成物1の25℃での粘度をザーンカップ#4(離合社製)にて9.00秒である事を確認した。
【0071】
〔調整例2 コーティング組成物2の調整〕
調整例1のアクリロイル基とシロキサン骨格を有する化合物(アクリロイルポリシロキサン)であるTEGO RAD2700(アクリル変性ポリシロキサン Cas番号:157811−87−5)を1.2質量部に変更した以外は、調整例1と同じ配合にて攪拌機で1時間撹拌混合し、更に酢酸エチルと酢酸ブチルの質量比7:3の混合溶剤を28質量部加え攪拌し、総計91.75質量部(固形分48.25質量部)のコーティング組成物2を作製した。得られたコーティング組成物2の25℃での粘度をザーンカップ#4(離合社製)にて9.51秒である事を確認した。
【0072】
〔調整例3 コーティング組成物3の調整〕
調整例1の艶消し剤湿式シリカ「サイリシア350 平均粒子径3.9μm、見かけ比重0.49g/mL、吸油量310mL/100g、細孔容積1.7mL/g」7質量部を、艶消し剤湿式シリカ「ニップジェルAZ−204 平均粒子径1.3μm、見かけ比重0.12g/mL、吸油量355mL/100g、細孔容積2.0mL/g」7質量部に変更した以外は、調整例1と同じ配合にて攪拌機で1時間撹拌混合し、更に酢酸エチルと酢酸ブチルの質量比7:3の混合溶剤を38質量部加え攪拌し、総計102.95質量部(固形分49.45質量部)のコーティング組成物3を作製した。得られたコーティング組成物3の25℃での粘度をザーンカップ#4(離合社製)にて9.64秒である事を確認した。
【0073】
〔調整例4 コーティング組成物4の調整〕
調整例1の艶消し剤湿式シリカ「サイリシア350 平均粒子径3.9μm、見かけ比重0.49g/mL、吸油量310mL/100g、細孔容積1.7mL/g」7質量部を、更に耐傷性向上添加剤として乾式シリカ日本アエロジル社製「AEROSIL R972(ジメチルジクロロシランで表面処理したのち、構造を変化させた疎水性乾式シリカ)、平均粒子径0.25μm」7質量部添加し、メチルエチルケトン27.5部に変更した以外は、調整例1と同じ配合にて攪拌機で1時間撹拌混合し、更に酢酸エチルと酢酸ブチルの質量比7:3の混合溶剤を46質量部加え攪拌し、総計122.95質量部(固形分49.45質量部)のコーティング組成物4を作製した。得られたコーティング組成物4の25℃での粘度をザーンカップ#4(離合社製)にて9.29秒である事を確認した。
【0074】
〔調整例5 コーティング組成物5の調整〕
調整例1のアクリルアクリレート樹脂A(二重結合当量250g/mol品、重量平均分子量25,000、Tg56℃、水酸基価113mgKOH/g)28質量部に変更し、更にウレタンアクリレートMiramerPU610(脂肪族ウレタンアクリレート平均官能基数6、重量平均分子量1800)を7質量部加え、メチルエチルケトン22.5部に変更した以外は、調整例1と同じ配合にて攪拌機で1時間撹拌混合し、更に酢酸エチルと酢酸ブチルの質量比7:3の混合溶剤を16質量部加え攪拌し、総計87.95質量部(固形分49.45質量部)のコーティング組成物5を作製した。得られたコーティング組成物5の25℃での粘度をザーンカップ#4(離合社製)にて9.25秒である事を確認した。
【0075】
〔調整例6 コーティング組成物6の調整〕
調整例1のアクリルアクリレート樹脂A(二重結合当量250g/mol品、重量平均分子量25,000、Tg56℃、水酸基価113mgKOH/g)35質量部の代わりに、アクリルアクリレート樹脂B(二重結合当量550品g/mol品、重量平均分子量25,000、Tg85℃、水酸基価50mgKOH/g)固形分35.7質量部に変更した他は、調整例1と同じ配合にて攪拌機で1時間撹拌混合し、更に酢酸エチルと酢酸ブチルの質量比7:3の混合溶剤を42質量部加え攪拌し、総計107.65質量部(固形分50.15質量部)のコーティング組成物6を作製した。得られたコーティング組成物6の25℃での粘度をザーンカップ#4(離合社製)にて9.92秒である事を確認した。
【0076】
〔調整例7 コーティング組成物7の調整〕
調整例1のアクリルアクリレート樹脂A(二重結合当量250g/mol品、重量平均分子量25,000、Tg56℃、水酸基価113mgKOH/g)35質量部を28質量部へ減量し、更に東亞合成(株)製「アロニックスM−402(5官能の重合性アクリレートモノマーであるジペンタエリスリトール及び6官能の重合性アクリレートモノマーであるヘキサアクリレートの混合物、製品中のペンタアクリレートの割合が30〜40質量%)」7質量部を加えた他は、調整例1と同じ配合にて攪拌機で1時間撹拌混合し、更に酢酸エチルと酢酸ブチルの質量比7:3の混合溶剤を16質量部加え攪拌し、総計87.95質量部(固形分49.45質量部)のコーティング組成物7を作製した。得られたコーティング組成物7の25℃での粘度をザーンカップ#4(離合社製)にて9.25秒である事を確認した。
【0077】
〔調整例8 コーティング組成物8の調整〕
調整例1のアクリロイル基とシロキサン骨格を有する化合物(アクリロイルポリシロキサン)であるTEGO RAD2700(アクリル変性ポリシロキサン Cas番号:157811−87−5)2.4質量部の代わりに、フルオロアルキル基を有する化合物であるメガファックRS−75(DIC株式会社製)固形分0.48質量部に変更した以外は、調整例1と同じ配合にて攪拌機で1時間撹拌混合し、更に酢酸エチルと酢酸ブチルの質量比7:3の混合溶剤を22質量部加え攪拌し、総計85.03質量部(固形分47.53質量部)のコーティング組成物8を作製した。得られたコーティング組成物8の25℃での粘度をザーンカップ#4(離合社製)にて9.74秒である事を確認した。
【0078】
〔調整例9 コーティング組成物9の調整〕
調整例8のフルオロアルキル基を有する化合物であるメガファックRS−75(DIC株式会社製)0.48質量部を0.24質量部に変更した以外は、調整例1と同じ配合にて攪拌機で1時間撹拌混合し、更に酢酸エチルと酢酸ブチルの質量比7:3の混合溶剤を22質量部加え攪拌し、総計84.79質量部(固形分47.29質量部)のコーティング組成物9を作製した。得られたコーティング組成物9の25℃での粘度をザーンカップ#4(離合社製)にて9.82秒である事を確認した。
【0079】
〔調整例10 コーティング組成物10の調整〕
調整例1のBASF社製1−ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン「Omnirad 184」5質量部を2.5質量部に変更した以外は、調整例1と同じ配合にて攪拌機で1時間撹拌混合し、更に酢酸エチルと酢酸ブチルの質量比7:3の混合溶剤を30質量部加え攪拌し、総計92.45質量部(固形分46.95質量部)のコーティング組成物10を作製した。得られたコーティング組成物10の25℃での粘度をザーンカップ#4(離合社製)にて9.99秒である事を確認した。
【0080】
〔調整例11 コーティング組成物11の調整〕
調整例1の配合にてアクリロイル基とシロキサン骨格を有する化合物(アクリロイルポリシロキサン)であるTEGO RAD2700(アクリル変性ポリシロキサン Cas番号:157811−87−5)を添加せずに、攪拌機で1時間撹拌混合し、更に酢酸エチルと酢酸ブチルの質量比7:3の混合溶剤を30質量部加え攪拌し、総計92.55質量部(固形分47.05質量部)のコーティング組成物11を作製した。得られたコーティング組成物11の25℃での粘度をザーンカップ#4(離合社製)にて9.00秒である事を確認した。
【0081】
〔調整例12 コーティング組成物12の調整〕
調整例5の配合にてアクリロイル基とシロキサン骨格を有する化合物(アクリロイルポリシロキサン)であるTEGO RAD2700(アクリル変性ポリシロキサン Cas番号:157811−87−5)を添加せずに、攪拌機で1時間撹拌混合し、更に酢酸エチルと酢酸ブチルの質量比7:3の混合溶剤を40質量部加え攪拌し、総計102.25質量部(固形分47.75質量部)のコーティング組成物12を作製した。得られたコーティング組成物12の25℃での粘度をザーンカップ#4(離合社製)にて9.82秒である事を確認した。
【0082】
〔調整例13 コーティング組成物13の調整〕
調整例6の配合にてアクリロイル基とシロキサン骨格を有する化合物(アクリロイルポリシロキサン)であるTEGO RAD2700(アクリル変性ポリシロキサン Cas番号:157811−87−5)を添加せずに、攪拌機で1時間撹拌混合し、更に酢酸エチルと酢酸ブチルの質量比7:3の混合溶剤を42質量部加え攪拌し、総計105.25質量部(固形分47.75質量部)のコーティング組成物13を作製した。得られたコーティング組成物13の25℃での粘度をザーンカップ#4(離合社製)にて9.92秒である事を確認した。
【0083】
〔調整例14 コーティング組成物14の調整〕
調整例7の配合にてアクリロイル基とシロキサン骨格を有する化合物(アクリロイルポリシロキサン)であるTEGO RAD2700(アクリル変性ポリシロキサン Cas番号:157811−87−5)を添加せずに、攪拌機で1時間撹拌混合し、更に酢酸エチルと酢酸ブチルの質量比7:3の混合溶剤を16質量部加え攪拌し、総計85.55質量部(固形分47.05質量部)のコーティング組成物14を作製した。得られたコーティング組成物14の25℃での粘度をザーンカップ#4(離合社製)にて9.25秒である事を確認した。
【0084】
<化粧シートの作製>
〔実施例1〜10〕
基材として墨ベタ用紙、易接着処理ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルム、東洋紡績株式会社製 A4300 厚さ100μm)を用意し、バーコーター(4μm)を使用して前記調整例1〜10で作製したコーティング組成物1〜10を其々塗布した後、高圧水銀灯による紫外線照射を1回行い、コーティング組成物皮膜を硬化させた。空冷高圧水銀灯(出力120W/cm1灯)およびベルトコンベアを搭載したUV照射装置(株式会社ジーエス・ユアサ コーポレーション)を使用し、展色物をコンベア上に載せ、予め紫外線照射するチャンバー内の雰囲気中の酸素濃度が1%以下で残留するように、窒素ガスを導入した後、ランプ直下(照射距離11cm)を分速25メートルの速度で通過させることにより、コーティング組成物皮膜を硬化させた。
紫外線照射量は紫外線積算光量計(株式会社ジーエス・ユアサ コーポレーション製 工業用UVチェッカー UVR−N1)を用いて40mJ/cm
2である事を確認した。
【0085】
〔比較例1〜10〕
実施例1〜10と同様に基材として墨ベタ用紙、及び易接着処理ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルム、東洋紡績株式会社製 A4300 厚さ100μm)を用意し、コーティング組成物1〜10をバーコーター(4μm)にて其々塗布した後、窒素ガスを一切導入しない他は、全て同じ条件にて高圧水銀灯源にて紫外線照射を行った。
紫外線照射量は紫外線積算光量計(株式会社ジーエス・ユアサ コーポレーション製 工業用UVチェッカー UVR−N1)を用いて40mJ/cm
2である事を確認した。
【0086】
〔比較例11〜14〕
実施例1〜10と同様に基材として墨ベタ用紙、及び易接着処理ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルム、東洋紡績株式会社製 A4300 厚さ100μm)を用意し、コーティング組成物11〜14をバーコーター(4μm)にて其々塗布した後、実施例1〜10と同様に予め紫外線照射するチャンバー内の雰囲気中の酸素濃度が1%以下で残留するように、窒素ガスを導入した後、ランプ直下(照射距離11cm)を分速25メートルの速度で通過させることにより、コーティング組成物皮膜を硬化させた。
紫外線照射量は紫外線積算光量計(株式会社ジーエス・ユアサ コーポレーション製 工業用UVチェッカー UVR−N1)を用いて40mJ/cm
2である事を確認した。
【0087】
〔評価方法〕
本発明の塗装建材の製造方法による化粧シートの評価方法を示す。
【0088】
〔評価項目1:耐セロテープ(登録商標)性〕
基材として墨ベタ用紙を使用した化粧シート表面のコーティング組成物硬化被膜にセロハンテープを貼り付け、これを急速に剥がす行為を10回行い、印刷皮膜の外観の状態を目視にて判定基準を次の7段階で評価した。
(評価基準)
7:印刷皮膜の剥離は全く見られなかった。
6:面積比率で印刷皮膜の95%以上が黒ベタ用紙に残った
5:面積比率で印刷皮膜の80%以上〜95%未満が黒ベタ用紙に残った。
4:面積比率で印刷皮膜の60%以上〜80%未満が黒ベタ用紙に残った。
3:面積比率で印刷皮膜の40%以上〜60%未満が黒ベタ用紙に残った。
2:面積比率で印刷皮膜の20%以上〜40%未満が黒ベタ用紙に残った。
1:面積比率で印刷皮膜の20%未満しか黒ベタ用紙に残らなかった。
【0089】
〔評価項目2:耐汚染性〕
基材としてPETフィルムを使用した化粧シート表面の耐汚染性についてJAS汚染性Aに従って、作成した化粧シートサンプルを水平に置いた後、サンプルの表面に一般市販品である油性黒マジック(極太)を使用し線を3往復引き、10分放置乾燥後、イソプロピルアルコールを布に含ませてふき取る作業を4回繰り返し、その汚染痕を次の7段階で目視評価した。
(評価基準)
7:印刷被膜にまったく汚染痕が見られない。
6:極僅かに汚染痕が確認できる。
5:薄く汚染痕が確認できる。
4:5と3の中程度の汚染痕が確認できる。
3:汚染痕が確認できる。
2:1と3の中程度の汚染痕が確認できる。
1:鮮明に印刷皮膜が確認できる。
【0090】
コーティング組成物1〜14の調整例を表1に、これを用いた化粧シートの評価結果を表2〜4に示す。
尚、表1中の数値は、有機溶剤を除いて全て固形分で記載した。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
【表3】
【0094】
【表4】
【0095】
本発明の塗装建材の製造方法による化粧シートは、塗装建材表面の耐セロテープ(登録商標)性、及び耐汚染性に優れる。
前記アクリル(メタ)アクリレート樹脂のガラス転移温度(Tg)が40〜130℃の範囲であり、水酸基価が5〜300mgKOH/gである請求項1に記載の塗装建材の製造方法。