【実施例1】
【0024】
本発明の第1の実施の形態に係る帽子用衝撃吸収材について、
図1乃至
図5を用いて詳細に説明する。
図1(a)及び
図1(b)は、それぞれ実施例1に係る帽子用衝撃吸収材の正面図及び背面図である。
図2(a)は実施例1に係る帽子用衝撃吸収材を前方上方向からみた場合の斜視図であり、
図2(b)は帽子用衝撃吸収材の取付対象である帽子を同方向から見た場合の斜視図である。
図1及び
図2に示すように、実施例1に係る衝撃吸収材1は、帽子50のクラウン51に装着される帽子用衝撃吸収材である。
衝撃吸収材1は、帽子50のクラウン51のうち、帽子着用者の前頭部に対応する前頭領域51aを被覆する前方被覆部2と、クラウン51のうち、帽子着用者の後頭部に対応する後頭領域51bを被覆する後方被覆部3と、帽子着用者の両側頭部に対応する両側頭領域51c,51cを被覆する両側頭被覆部4,4を備える。
その一方で、クラウン51のうち、帽子着用者の頭頂部に対応する頭頂領域51dを開放する頭頂開放部5を有する。なお、開放とは、クラウン51を被覆するシート体1aがないという意味である。
なお、
図2(b)に示すように、帽子50は、前頭領域51a及び後頭領域51bに、それぞれつば52及び日除け53が縫着されたキャップである。また、クラウン51は、6枚はぎの布生地が2枚重ねられてなり、両側頭領域51c,51cのおもて面に、後述するスナップ6a,6bを留め付けるためのスナップ6a´,6b´を備える。
【0025】
図1(a)乃至
図2(a)に示すように、前方被覆部2は、前方上縁2aが正面視で緩やかな山型状を描いているとともに、前方下縁2bは一様な直線を描いている。また、正面視での前方被覆部2の左右の両側2c,2cは、背面視での後方被覆部3の左右の両側3c,3cとそれぞれ一体化され、面状の両側頭被覆部4,4を形成する。さらに、両側2c,2cには、衝撃吸収材1を帽子50のクラウン51に取り付けるためのスナップ6a,6aを備える。
後方被覆部3は、その後方上縁3aが前方被覆部2の前方上縁2aよりも急激に立ち上がる山型状を描いている。また、後方上縁3aは、前方上縁2aとつながって、頭頂開放部5の外縁を形成する。さらに、後方被覆部3の後方下縁3bは、一様な直線を描いて前方下縁2bとつながっており、略円形をなす衝撃吸収材1の開口部1f(2(a)参照)を形成する。そして、両側3c,3cには、衝撃吸収材1を帽子50のクラウン51に取り付けるためのスナップ6b,6bを備える。
そして、両側頭被覆部4,4は、前方上縁2aと後方上縁3aがつながってなる側方上縁4aと、前方下縁2bと後方下縁3bがつながってなる側方下縁4bを備える。
また、前方上縁2aの頂上は最上部2dであり、後方被覆部3の頂上は最上部3dである。そして、衝撃吸収材1は、最上部2dと最上部3dを結ぶ直線について、左右対称をなす。さらに、側方上縁4aから側方下縁4bまでの高さのうち、最も低い高さに対応する側方下縁4bを、最下部4cとする。
【0026】
衝撃吸収材1は、例えば、ポリエチレン発泡樹脂や、ポリスチレン発泡樹脂等からなる柔軟性や衝撃吸収性を有するシート体1aと、このシート体1aのおもて面を被覆する布生地1bからなる。なお、シート体1aの厚みは、例えば2〜4mm程度である。また、衝撃吸収材1の布生地1bは、クラウン51を構成する布生地と同一種類、かつ同色である。
詳細には、前方被覆部2と後方被覆部3を構成するシート体1aは、いずれも1枚からなり、それぞれの左右の両側において熱溶着されている。ただし、後方被覆部3のシート体1aは、3本の折り目1c〜1eが、縦方向(上縁3aと下縁3bを結ぶ方向)に沿って等間隔に形成されることで曲面状となり、帽子着用者の後頭部の表面形状にフィットし易くなっている。
【0027】
続いて、衝撃吸収材の形状を、
図3を用いてより詳細に説明する。
図3(a)及び
図3(b)は、それぞれ実施例1に係る帽子用衝撃吸収材を
図2(b)に示す帽子に取り付けた場合の左側面図及び
図3(a)におけるA−A線矢視図である。なお、
図1乃及び
図2で示した構成要素については、
図3においても同一の符号を付して、その説明を省略する。
図3(a)及び
図3(b)に示すように、衝撃吸収材1においては、前方被覆部2における前方下縁2bから前方上縁2aの最上部2dまでの高さH
1を1とした場合に、後方被覆部3における後方下縁3bから後方上縁3aの最上部3dまでの高さH
2は、例えば1.6としている。すなわち、衝撃吸収材1においては、H
1<H
2となっており、これは後方に転倒時した際における後頭部の強打を防止することを重視したものである。
また、側頭被覆部4の側方下縁4bから側頭被覆部4の側方上縁4aにおける最下部4cまでの高さH
3の、高さH
1,H
2に対する比率は、小数点第2位を四捨五入すると、それぞれH
3/H
1=0.7であり、H
3/H
2=0.4である。すなわち、高さH
3は、高さH
1より小さく、かつ高さH
2よりも小さい。このような構成にしたのは、頭頂開放部5をクラウン51の両側頭領域51c,51cにまで広げるためである。
さらに、衝撃吸収材1を側面視した場合の、前方下縁2bから後方下縁3bまでからなる底部端面の長さDに対する高さH
1〜H
3の比率は、小数点第2位を四捨五入すると、それぞれH
1/D=0.3、H
2/D=0.6、H
3/D=0.2である。なお、衝撃吸収材1を上方からみた場合、
図3(b)からわかるように略楕円形状をなしており、長さDはその長軸に相当する。
【0028】
また、頭頂開放部5の外縁は、側面視で、前方被覆部2の最上部2dがほぼ直線状に後方上縁3aに向かって下降し、最も前方下縁2bからの高さが低い最下部(側頭被覆部4の最下部4cに相当する。)から、後方上縁3aが急激に屈曲して上昇することで形成されている。そのため、衝撃吸収材1を帽子50に取り付けた際に、クラウン51の頭頂領域51dと、前頭領域51aのうちの上方部分が頭頂開放部5の中から露出する一方、前頭領域51aのうちの下方部分と、後頭領域51bのほぼ全体は前方被覆部2と後方被覆部3によって覆われている。
しかし、シート体1aの厚みは2〜4mm程度であることから、衝撃吸収材1がクラウン51に取り付けられても、衝撃吸収材1がクラウン51から大きく浮き上がった状態とはならず、衝撃吸収材1を取り付けない場合のクラウン51のシルエットを壊すものではない。
【0029】
なお、前方被覆部2と、その前方下縁2bは、クラウン51の前頭領域51aと、つば52の双方に対して隙間S
1を開けた状態に配置されている。後方被覆部3と、その後方下縁3bも、クラウン51の後頭領域51bに対して隙間S
2を開けた状態で配置されている。これらの隙間S
1,S
2により、クラウン51の前頭領域51aと前方被覆部2の間の通気性と、後頭領域51bと後方被覆部3の間の通気性が確保される。また、隙間S
1,S
2の有無及び体積は、帽子50が実際に着用される前では、衝撃吸収材1の両側頭被覆部4,4に対するスナップ6a,6bの取付位置と、クラウン51の両側頭領域51c,51cに対するスナップ6a´,6b´(
図2(b)参照)の取付位置によって、一義的に決定される。
【0030】
上記構成の衝撃吸収材1においては、衝撃吸収材1が帽子50のクラウン51に対し、スナップ6a〜6b´を介して着脱可能に取り付けられる。すると、衝撃吸収材1が前方被覆部2と、後方被覆部3と、両側頭被覆部4,4を備えることにより、帽子着用者の前頭部の下方と、後頭部のほぼ全体と、両側頭部の下方がこの部分に加えられた衝撃から保護される。しかし、H
1:H
2=1:1.6としたことにより、クラウン51の頭頂領域51dと、前頭領域51aのうちの上方部分が頭頂開放部5の中から露出するため、頭頂部付近の頭皮の温度上昇が起こらず、帽子着用者の頭部に蒸れが発生しない。
また、衝撃吸収材1は、例えば2〜4mmという薄厚の発泡樹脂材からなり、軽量であるため、衝撃吸収材1の荷重による負荷は無視できる程度に少ない。
【0031】
以上説明したように、衝撃吸収材1によれば、帽子着用者の前頭部の下方と、後頭部のほぼ全体と、両側頭部の下方が衝撃から保護されるとともに、頭頂部付近において蒸れが発生しないため、頭部に対する衝撃吸収効果と蒸れ防止の双方を十分に発揮できるという効果を有する。したがって、帽子着用者は蒸れによる不快感を生じ難いので、衝撃吸収材1が取り付けられた帽子50を長時間に亘って着用することができる。したがって、帽子着用者は、例えば通学時や散歩時、または運動時において、自身の安全を継続的に確保することができる。
【0032】
また、衝撃吸収材1を帽子50に取り付けても、クラウン51のシルエットを壊すものではないので、例えば、特許文献3に開示された従来の考案と比較して、優れたデザイン性を発揮する。詳細には、頭頂開放部5の外縁は、側面視で、前方被覆部2の最上部2dがほぼ直線状に後方上縁3aに向かって下降し、最も前方下縁2bからの高さが低い最下部から、後方被覆部3の後方上縁3aが急激に屈曲して上昇することで形成されている。このような頭頂開放部5の外縁形状は、蒸れ防止の効率やデザイン性の良好さを決定付ける重要な因子の一つである。
なお、頭部保護機能を有する帽子を購入する際に、購入者は、第一に衝撃吸収性の有無、程度を重視するが、デザイン性や価格を軽視するわけではない。すなわち、購入者は、衝撃吸収性と、デザイン性等がいずれも適切であるという、いわゆるバランスの取れた商品を選択する傾向にある。この点につき、衝撃吸収材1によれば、すでに述べたとおり、衝撃吸収性と、デザイン性のバランスは良好である。
また、衝撃吸収材1は、発泡樹脂製のシート体1aを、布生地1bで被覆してなるから、その製造価格が嵩張るものではない。したがって、衝撃吸収材1によれば、価格の点からも上記バランスの良好な商品となり得るので、購入者により衝撃吸収材1、または衝撃吸収材1を備えた帽子が多く選択されることが期待できる。
【0033】
次に、実施例1の第1乃至第3の変形例に係る帽子用衝撃吸収材について、
図4を用いながら説明する。
図4(a)乃至
図4(c)は、それぞれ実施例1の帽子用衝撃吸収材の第1乃至第3の変形例に係る帽子用衝撃吸収材である。なお、
図1乃至
図3で示した構成要素については、
図4においても同一の符号を付して、その説明を省略する。また、日除け53と布生地1bの表示を省略する。
図4(a)に示すように、実施例1の第1の変形例に係る衝撃吸収材1Aは、実施例1に係る衝撃吸収材1に、複数の通気孔7が形成されたものである。さらに、衝撃吸収材1のスナップ6a,6aの代わりに、衝撃吸収材1Aをクラウン51に対し縫着用糸で分離不能に固着する縫着部8が設けられる。この場合、クラウン51に設けられるスナップ6a´,6b´(
図2(b)参照)も省略される。
また、衝撃吸収材1では、通気孔7を、直径が例えば3mmの円形状とし、シート体1aの全体にわたって略均等に分布させている。これ以外の衝撃吸収材1Aの構成は、衝撃吸収材1と同様である。
【0034】
上記構成の衝撃吸収材1Aにおいては、この衝撃吸収材1Aが取り付けられた帽子50を着用したとき、例えば体温や日差しによって加湿、加温されたクラウン51内部の空気が、シート体1aの全体に分布された通気孔7を介し、衝撃吸収材1Aの外方にまんべんなく放出される。よって、衝撃吸収材1と比較して、帽子着用者の頭部の蒸れを一層防止できる。
また、通気孔7は、通気孔7の直径が3mmであるため、小石やゴルフボール等の小物体が通気孔7の位置に衝突しても、小物体が頭部に直接衝突する可能性は殆どない。よって、衝撃吸収材1Aは、衝撃吸収材1と比較して、頭部保護効果を低下させることのない一方で、蒸れ防止効果を向上させることができる。
【0035】
さらに、シート体1aに通気孔7を設けることにより、シート体1aの厚みを分厚くしても、シート体1aが通気孔7を中心として屈曲容易となる。そのため、シート体1aの厚みや成分比を変化させることでシート体1aの剛性を高めても、シート体1aの屈曲容易性は通気孔7によって確保できる。よって、衝撃吸収材1Aによれば、蒸れ防止効果を維持したまま頭部保護効果を間接的に高めることができる。これととともに、屈曲容易性の増したシート体1aにより、衝撃吸収材1Aが帽子着用者の頭部の形状にフィットし易いという有利な効果が依然として発揮されることから、衝撃吸収材1Aが嵩張ってデザイン性に欠けるおそれもない。
なお、通気孔7は、布生地1bによって被覆され、明確に視認されないので、通気孔7による外観の違和感は殆どない。これ以外の衝撃吸収材1Aの作用及び効果は、衝撃吸収材1の作用及び効果とそれぞれ同様である。
【0036】
続いて、
図4(b)に示すように、実施例1の第2の変形例に係る衝撃吸収材1Bは、側面視で、前方被覆部2の高さH
1(前方下縁2bから最上部2dまでの高さ)に対する後方被覆部3の高さH
2(後方下縁3bから最上部3dまでの高さ)を1.8とし、かつH
3/H
1=0.6、H
3/H
2=0.3としたものである。すなわち、衝撃吸収材1Bにおいては、衝撃吸収材1と同様にH
1<H
2となっており、後頭部の強打を防止することを重視している。これに伴い、H
1/D=0.3、H
2/D=0.5、H
3/D=0.2となった。なお、H
1〜H
3,H
3/H
1,H
3/H
2,H
1/D〜H
3/Dの値は、いずれも小数点第2位を四捨五入したものである(
図4(c)も同じ。)。
しかし、衝撃吸収材1Bでは、衝撃吸収材1の場合よりも高さH
1〜H
3をいずれも低くしたことで、頭頂開放部5の表面積をより拡張したものである。ただし、衝撃吸収材1Bによる頭部保護効果は、衝撃吸収材1Bの前方被覆部2及び後方被覆部3の各表面積が衝撃吸収材1の場合と比較してやや減少しているに過ぎないから、頭部保護効果の減少もわずかである。
さらに、衝撃吸収材1Bにおいては、衝撃吸収材1のスナップ6a,6aのいずれか1つを省略し、残りの1つを、側面視で高さH
1に対応する前方下縁2bと、高さH
2に対応する後方下縁3bとの中間点に配置している。また、クラウン51のスナップ6a´〜6c´が、実施例1の場合よりも互いの間隔を狭めて設けられる。よって、衝撃吸収材1Bのスナップ6aを、クラウン51のスナップ6a´〜6c´のいずれかに留め付けるかにより、隙間S
1,S
2の体積の比率を変更することができる。なお、
図4(b)では、衝撃吸収材1Bのスナップ6aが、クラウン51のスナップ6b´に留め付けられた様子を示している。これ以外の衝撃吸収材1Bの構成は、衝撃吸収材1と同様である。
【0037】
上記構成の衝撃吸収材1Bにおいては、衝撃吸収材1と比較して、頭頂開放部5の表面積が拡張されたことにより、帽子着用者の頭部の蒸れを一層防止できる。
また、衝撃吸収材1Bにおいては、クラウン51のスナップ6a´〜6c´に対する衝撃吸収材1Bのスナップ6aの留め付け位置を変えることで、隙間S
1,S
2の体積の比率を変化させることができるから、クラウン51の前頭領域51aと前方被覆部2の間の通気性と、後頭領域51bと後方被覆部3の間の通気性を調整できる。よって、衝撃吸収材1Bによれば、衝撃吸収材1と比較して、頭部保護作効果の低下がわずかである一方で、帽子50全体における蒸れ防止効果を向上させたり、前頭領域51aと後頭領域51b毎に蒸れ防止効果の程度を変化させたりすることができる。これ以外の衝撃吸収材1Bの作用及び効果は、衝撃吸収材1の作用及び効果とそれぞれ同様である。
【0038】
続いて、
図4(c)に示すように、実施例1の第3の変形例に係る衝撃吸収材1Cは、前方被覆部2の高さH
1に対する後方被覆部3の高さH
2を1.0とし、かつH
3/H
1=H
3/H
2=0.3としたものである。すなわち、衝撃吸収材1Cにおいては、H
1=H
2となっており、前頭部の強打と後頭部の強打を同等程度に防止することを重視している。しかし、衝撃吸収材1Cでは、高さH
3を衝撃吸収材1の高さH
3よりも低くしたため、頭頂開放部5の表面積は、衝撃吸収材1の場合と同程度に確保されている。また、これに伴い、H
1/D=0.4、H
2/D=0.4、H
3/D=0.1となった。
さらに、衝撃吸収材1Cにおいては、衝撃吸収材1のスナップ6a,6bの代わりに、略楕円形状の面ファスナー9aを備える。一方、クラウン51においては、スナップ6a´,6b´の代わりに、面ファスナー9aよりも広い面積を有する略長方形状の面ファスナー9bを両側頭領域51c,51cにそれぞれ備える。よって、衝撃吸収材1C面ファスナー9aを、クラウン51の面ファスナー9bのいずれかの位置に留め付けるかにより、隙間S
1,S
2の体積の比率を変更することができる。このうち、面ファスナー9aを面ファスナー9bの範囲のより高い位置に留め付けると、特に隙間S
1,S
2の体積を高さ方向(クラウン51から上方へ離れる方向)に増加させることができる。これ以外の衝撃吸収材1Cの構成は、衝撃吸収材1と同様である。
【0039】
上記構成の衝撃吸収材1Cにおいては、衝撃吸収材1と比較して、頭頂開放部5の表面積が維持されるとともに、前頭部と後頭部を衝撃から同程度に保護できる。よって、例えば、転倒方向に特別な傾向が見られない場合に、衝撃吸収材1Cが好適に利用できる。
また、衝撃吸収材1Cにおいては、クラウン51の面ファスナー9bに対する衝撃吸収材1Bの面ファスナー9aの留め付け位置を様々に変えることができる。そのため、隙間S
1,S
2の体積を高さ方向にも変化させることが可能になるから、クラウン51の前頭領域51aと前方被覆部2の間の通気性と、後頭領域51bと後方被覆部3の間の通気性を一層広く調整できる。これ以外の衝撃吸収材1Cの作用及び効果は、衝撃吸収材1の作用及び効果とそれぞれ同様である。
【0040】
以上、説明したように、
図4(a)乃至
図4(c)の場合では、H
1/Dの範囲は0.3〜0.4であり、H
2/Dの範囲は0.4〜0.6である。また、H
3/Dの範囲は0.1〜0.2である。このうち、
図4(a)における衝撃吸収材1Aのように、H
2/D=0.6としたとき、後方被覆部3の最上部3dがクラウン51の頂部付近に到達しているものの、H
1/Dと、H
3/DをいずれもH
2/D=0.6よりも低めとすることで、頭頂開放部5の表面積の大きさが一定以上に確保される。
【0041】
次に、実施例1の第4の変形例に係る帽子用衝撃吸収材及び衝撃吸収帽子について、
図5を用いながら説明する。
図5(a)及び
図5(b)は、それぞれ実施例1の帽子用衝撃吸収材の第4の変形例に係る帽子用衝撃吸収材を前方上方向からみた場合の斜視図であり、(b)は同帽子用衝撃吸収材を
図2(b)に示す帽子に取り付けた場合の、(a)におけるC−C線矢視図である。なお、
図1乃至
図4で示した構成要素については、
図5においても同一の符号を付して、その説明を省略する。また、
図5(b)においては、日除け53の表示を省略する。
図5(a)及び
図5(b)に示すように、実施例1の第4の変形例に係る衝撃吸収材1Dは、実施例1に係る衝撃吸収材1の内面に、複数の突起12が互いに間隔を空けて形成されたものである。
この突起12は、円柱形状をなす中実構造であって、衝撃吸収材1のシート体1aと同質の発泡樹脂材をプレス加工することで、シート体1aと一体的に形成される。または、突起12の一方の端面がシート体1aに接着剤または熱溶着により固着されても良い。
また、各突起12の高さh(
図5(b)参照)は、いずれも等しく、衝撃吸収材1Dを帽子50に取り付けたときに、隙間S
1,S
2が確保できるよう帽子50のクラウン51の大きさと、衝撃吸収材1Dの大きさを考慮して決定されると良い。
【0042】
また、突起12は、衝撃吸収材1Dの内面全体にほぼ均等に分布するが、スナップ6a,6bの周囲には設けられないことが望ましい。これは、スナップ6a,6bが帽子50のスナップ6a´,6b´に係合困難になることを避けるためである。このほか、前方被覆部2と後方被覆部3の内面に分布する突起12の高さhを、両側頭被覆部4,4の内面に分布する突起12の高さhよりも高く設計しても良い。さらに、突起12は、円柱形状をなす以外にも、高さhを有する限り、その横断面が楕円形、多角形であるほか、不定形状であっても良い。さらに、突起12の縦断面(高さ方向における断面形状)は、柱状、紡錘状あるいは台形状であってよい。つまり、突起12の高さ方向が湾曲又は屈曲しづらい形態であればよい。
【0043】
上記構成の衝撃吸収材1Dにおいては、衝撃吸収材1Dを帽子50に取り付けたときに、複数の突起12の頂部が、帽子50のクラウン51に当接する。よって、複数の突起12は、隙間S
1,S
2におけるスペーサーとして作用する。
したがって、衝撃吸収材1Dによれば、突起12がスペーサーとして作用するため、例えば、強風が吹き付ける場合に、隙間S
1,S
2が消滅することがなく、蒸れ防止効果を安定的に発揮可能である。また、突起12自体に衝撃吸収性があることから、頭部保護効果をも向上させることができる。これ以外の衝撃吸収材1Dの作用及び効果は、衝撃吸収材1の作用及び効果とそれぞれ同様である。
【実施例2】
【0044】
次に、実施例2に係る衝撃吸収帽子について、
図6を用いながら説明する。
図6(a)及び
図6(b)は、それぞれ実施例2に係る衝撃吸収帽子の
図3(b)におけるB−B線矢視断面図及び
図6(a)におけるD−D線矢視図である。なお、
図1乃至
図5で示した構成要素については、
図6においても同一の符号を付して、その説明を省略する。また、帽子50の日除け53の表示も省略する。
図6(a)及び
図6(b)に示すように、実施例2に係る衝撃吸収帽子10は、衝撃吸収材1と、衝撃吸収材1をクラウン51の外側に取り付けるための取付部材11を備える。
この取付部材11は、具体的には、
図1乃至
図2で示したスナップ6a〜6b´である。
【0045】
詳細には、前方被覆部2の両側2c,2cと、後方被覆部3の両側3c,3cがスナップ6a〜6b´を介していずれも両側頭領域51c,51cに連結される。これにより、前方被覆部2の裏面とクラウン51の前頭領域51aのおもて面との間に隙間S
1が形成され、かつ後方被覆部3の裏面と後頭領域51bのおもて面との間に、隙間S
2が形成される。
このうち、隙間S
1においては、衝撃吸収材1が、スナップ6a〜6b´を介して前方下縁2bがつば52からやや浮き上がる位置に取り付けられている。なお、クラウン51の後頭領域51bは、タック54が形成され、この後頭領域51bを左右幅方向に伸縮可能としている。
【0046】
上記構成の衝撃吸収帽子10においては、すでに述べた衝撃吸収材1を帽子50に取り付けた場合の作用を有するほか、隙間S
1,S
2の中を空気が通過可能である。
このうち、隙間S
1においては、矢印X
1で示すように、クラウン51の内部から前頭領域51aを透過して放出された空気A
1が、隙間S
1内を例えば上昇し、その内部に滞留することが防止される。
【0047】
また、衝撃吸収材1は、前方下縁2bがつば52からやや浮き上がるように取り付けられているため、衝撃吸収材1に向かって吹く風が、前方下縁2bとつば52の間の隙間を通過して、空気A
1と合流する。この合流により、外からの風は空気A
1を冷却しつつ隙間S
1内を上昇する。したがって、空気A
1の滞留を防止する作用が促進される。
さらに、隙間S
2においては、矢印X
2で示すように、クラウン51の内部から後頭領域51bを透過して放出された空気A
2が、隙間S
2内を上昇または下降し、その内部に滞留することが防止される。
加えて、隙間S
1,S
2が形成されることによれば、前方被覆部2と後方被覆部3が大きく変形し得ることで衝撃が効果的に吸収されるため、頭部保護効果を向上させることができる。
【0048】
衝撃吸収帽子10によれば、すでに述べた衝撃吸収材1を帽子50に取り付けた場合の効果を有するほか、隙間S
1,S
2が形成されることにより、空気A
1,A
2が隙間S
1,S
2の内部に滞留することが防止されるため、この隙間S
1,S
2内部に熱がこもることを防止できる。したがって、衝撃吸収帽子10によれば、隙間S
1,S
2によって、蒸れ防止効果を向上させることができる。
また、衝撃吸収帽子10によれば、クラウン51に対する衝撃吸収材1の取付位置が一義的に決定される場合であっても、前方被覆部2の横幅(両側2c,2c間の長さ)や、後方被覆部3の横幅(両側3c,3c間の長さ)をそれぞれ調整することで隙間S
1,S
2の前後方向(
図3(a)に示した高さH
1と高さH
2を結ぶ直線方向)の幅を変化させることができる。これにより、天候や季節に応じて、隙間S
1,S
2の体積を調整可能になるため、蒸れ防止効果を向上させることができる。
さらに、低気温により頭部の蒸れが発生し難い場合には、隙間を広めに形成しないようにすることで頭部の保温も可能となる。また、取付部材11を、実施例1の第2及び第3の変形例に係る衝撃吸収材1B,1Cの場合と同様に、クラウン51に対する衝撃吸収材1の取付位置を変更可能である場合にも、隙間S
1,S
2の体積を使用中に調整可能になるため、利便性をさらに向上させることができる。
【0049】
なお、本発明に係る衝撃吸収材及び衝撃吸収帽子は、実施例に示すものに限定されない。例えば、衝撃吸収材1,1A〜1Dにおいて、H
1:H
2=1:0.8〜2.5であって、H
3がH
1より小さく、かつH
2よりも小さい限り、H
1〜H
3間の比率は、
図3、
図4(a)乃至
図4(c)に示した以外の組み合わせであっても良く、両側頭被覆部4,4が例えばシート体1aを備えないベルトに置換されてもよい。また、衝撃吸収材1Aの通気孔7は、両側頭被覆部4,4においては省略されても良い。さらに、通気孔7は、略円形でなくても良く、シート体1aに不均一に分布しても良い。
そして、衝撃吸収帽子10において、衝撃吸収材1のクラウン51に対する取付位置によっては、隙間S
1,S
2のいずれかが形成されなくても良い。
このほか、前方被覆部2の前方下縁2bが一様な直線をなす代わりに、凸部が設けられることで、スナップ6a〜6b´とは無関係に、前方下縁2bがつば52から浮き上がる構造としても良い。凸部を形成するには、例えば、前方下縁2bを波形状にしたり、前方下縁2bから下方に突出する突出部を設けたりすることが考えられる。
これは、例えば強い風に前方被覆部2が押されることでその前方下縁2bがつば52に衝突した状態になると、前方下縁2bとつば52との隙間を風が通過することができなくなることを抑制するものである。前方下縁2bに凸部が設けられると、前方下縁2bがつば52に衝突してもこれらの間に隙間が残り易く、この隙間を通過する風の量を一定以上確保できると考えられる。
この場合、衝撃吸収材1に向かって吹く風が、前方下縁2bとつば52の間の隙間に流入し、蒸れ防止効果を確実に発揮可能である。また、帽子50として、クラウン51の全周につばを備えるハットを想定した場合は、前方下縁2bに加えて、後方被覆部3の後方下縁3bに上記の凸部が設けられても良い。