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特開2021-139080帽子用衝撃吸収材および衝撃吸収帽子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-139080(P2021-139080A)
(43)【公開日】2021年9月16日
(54)【発明の名称】帽子用衝撃吸収材および衝撃吸収帽子
(51)【国際特許分類】
   A42B 1/04 20210101AFI20210820BHJP
【FI】
   A42B1/04 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2020-40353(P2020-40353)
(22)【出願日】2020年3月9日
(11)【特許番号】特許第6807090号(P6807090)
(45)【特許公報発行日】2021年1月6日
(71)【出願人】
【識別番号】597053038
【氏名又は名称】中村被服株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】509164164
【氏名又は名称】地方独立行政法人山口県産業技術センター
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100179729
【弁理士】
【氏名又は名称】金井 一美
(72)【発明者】
【氏名】中村 大二郎
(72)【発明者】
【氏名】田村 智弘
(72)【発明者】
【氏名】藤井 謙治
(72)【発明者】
【氏名】本田 晃浩
(57)【要約】
【課題】頭部に対する衝撃吸収効果と蒸れ防止の双方を十分に発揮可能であり、優れたデザイン性を有する帽子用衝撃吸収材および衝撃吸収帽子を提供する。
【解決手段】帽子50のクラウン51に装着される衝撃吸収材1であって、クラウン51のうち、前頭部に対応する前頭領域51aを被覆する前方被覆部2と、クラウン51のうち、後頭部に対応する後頭領域51bを被覆する後方被覆部3と、両側頭部に対応する両側頭領域51c,51cを被覆する両側頭被覆部4,4を備える一方で、クラウン51のうち、頭頂部に対応する頭頂領域51dを開放する頭頂開放部5を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帽子のクラウンに装着される帽子用衝撃吸収材であって、
この帽子用衝撃吸収材は、前記クラウンのうち、前頭部に対応する前頭領域を被覆する前方被覆部と、前記クラウンのうち、後頭部に対応する後頭領域を被覆する後方被覆部を少なくとも備える一方で、
前記クラウンのうち、頭頂部に対応する頭頂領域を開放する頭頂開放部を有することを特徴とする帽子用衝撃吸収材。
【請求項2】
前記帽子用衝撃吸収材は、前記クラウンのうち、側頭部に対応する側頭領域を被覆する側頭被覆部を備え、
側面視において、前記前方被覆部の前方下縁から前記前方被覆部の最上部までの高さHを1とした場合に、前記後方被覆部の後方下縁から前記後方被覆部の最上部までの高さHは0.8〜2.5であり、
前記側頭被覆部の側方下縁から前記側頭被覆部の側方上縁における最下部までの高さHは、前記高さHより小さく、かつ前記高さHよりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の帽子用衝撃吸収材。
【請求項3】
前記帽子用衝撃吸収材は、少なくとも一部に複数の通気孔が形成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の帽子用衝撃吸収材。
【請求項4】
前記帽子用衝撃吸収材は、その内面に、突起が形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の帽子用衝撃吸収材。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の帽子用衝撃吸収材と、
この帽子用衝撃吸収材を前記クラウンの外側に取り付けるための取付部材を備え、
この取付部材は、前記クラウンのうち、側頭部に対応する側頭領域に設けられ、
前記前方被覆部の両端及び前記後方被覆部の両端のうちの少なくともいずれかが、前記取付部材を介して、前記クラウンの前記外側に取り付けられ、
前記前方被覆部と前記前頭領域との間と、前記後方被覆部と前記後頭領域との間の少なくともいずれかに、隙間が形成されることを特徴とする衝撃吸収帽子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃吸収材を備えることで頭部を衝撃から保護可能な帽子用衝撃吸収材および衝撃吸収帽子に係り、特に、頭部に対する衝撃吸収効果と蒸れ防止の双方を十分に発揮可能であり、しかも従来の衝撃吸収材を備えた帽子と比較して、優れたデザイン性を有する帽子用衝撃吸収材および衝撃吸収帽子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、頭部に加わる衝撃を吸収してこれを保護するための帽子が利用されてきた。このような帽子として、例えば、特許文献1の「交通安全用帽子」に開示されたように、クラウンの頭頂部と内周面全体に、複数の通気孔が設けられた合成発泡樹脂シートからなる衝撃吸収材を定着させたものがある。
しかし、通気孔が設けられているとはいえ、被った際に衝撃吸収材が頭部を全体的に覆うことになるため、クラウンの内部がひどく蒸れてしまう。そのため、交通安全用帽子を長時間着用し続けることができないという課題があった。
そこで、近年、蒸れ防止を考慮した衝撃吸収帽子に関する技術が開発されており、それに関して既にいくつかの発明又は考案が開示されている。
【0003】
特許文献2には「頭部プロテクタおよび保護帽」という名称で、帽子に装着して用いられる頭部プロテクタ等に関する発明が開示されている。
特許文献2に開示された発明は、合成樹脂製シェル、衝撃吸収体および頭部側生地を備えた3層構造の頭部プロテクタが、帽子に装着された状態において、着用者の前頭部および側頭部を保護することを特徴とする。
このような特徴を有する発明においては、老人が転倒した際に、転倒により損傷を受けやすい前頭部および側頭部を保護し得るとともに、頭部全体が頭部プロテクタによって覆われていないため、頭部の蒸れを防止できる。また、頭部側生地に通気性を有する素材を用いることにより、頭部プロテクタの装着感を向上させることができる。
【0004】
次に、特許文献3には「換気帽子」という名称で、帽子の中に空隙を作ることで、蒸れを防ぐとともに衝撃を緩和する帽子に関する考案が開示されている。
特許文献3に開示された考案は、帽子のクラウン部の中に設けられる縦スペーサーと、帽子と縦スペーサーの間に空隙を形成するためのホルダーを備え、帽子は、その天井部及び後部にそれぞれ天井空気窓及び後空気窓が設けられることを特徴とする。
このような特徴を有する考案においては、帽子と縦スペーサーの間の空隙により、帽子に物が衝突した際の頭部への衝撃を緩和できる。また、空気が上記空隙を通って天井空気窓及び後空気窓を介して排気されることから、頭部の蒸れが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平1−94426号公報
【特許文献2】特開2013−241687号公報
【特許文献3】実用新案登録第3031764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に開示された発明においては、頭部プロテクタが後頭部に設けられないため、転倒以外による後頭部の受傷を防止することができない。そのため、特許文献2に開示された発明では、特許文献1に開示された蒸れ防止効果は向上したものの、頭部の保護効果が低下し過ぎていると考えられる。
【0007】
次に、特許文献3に開示された考案においては、スペーサーが頭部の表面に対して点状に配置されており、その周囲は空隙となっているため、例えば歩道で転倒して頭部が縁石の角部に衝突した際に、帽子の衝突部分が凹み、衝撃が頭部にそのまま加わるおそれがある。そのため、衝突面積の小さい尖った物や小石からは頭部を十分に保護できないという課題がある。また、ホルダーによって帽子のクラウン部が持ち上げられていることから、頭部の大きさに対して帽子が嵩張っている分、外観に違和感があり、デザイン性に欠けるという課題もある。
【0008】
本発明は、このような従来の事情に対処してなされたものであり、頭部に対する衝撃吸収効果と蒸れ防止の双方を十分に発揮可能であり、しかも従来の衝撃吸収材を備えた帽子と比較して見た目の違和感がなく、優れたデザイン性を有する帽子用衝撃吸収材および衝撃吸収帽子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、第1の発明は、帽子のクラウンに装着される帽子用衝撃吸収材であって、この帽子用衝撃吸収材は、クラウンのうち、前頭部に対応する前頭領域を被覆する前方被覆部と、クラウンのうち、後頭部に対応する後頭領域を被覆する後方被覆部を少なくとも備える一方で、クラウンのうち、頭頂部に対応する頭頂領域を開放する頭頂開放部を有することを特徴とする。
このような構成の発明において、前方被覆部と、後方被覆部は、例えば、衝撃を吸収可能な合成発泡樹脂体からなる面状のシートを基材としている。これに対し、頭頂開放部は基材を有しないため、帽子用衝撃吸収材に開口部が形成されたことに相当する。
【0010】
上記構成の発明においては、帽子用衝撃吸収材を帽子のクラウンに取り付けた際に、前方被覆部と、後方被覆部を備えることにより、前頭部と、後頭部に加えられた衝撃からこの部分が保護されるという作用を有する。なお、頭頂部を開放する限りにおいて、両側頭部に対応する両側頭領域を被覆する両側頭被覆部が帽子用衝撃吸収材に形成されても良い。また、前方被覆部と、後方被覆部は、互いに一体的に構成されるほか、分離して別体的に構成されても良い。
さらに、第1の発明においては、頭頂開放部において、帽子用衝撃吸収材が頭部を覆うことによる頭皮の温度上昇が起こらず、蒸れが発生しない。
【0011】
次に、第2の発明は、第1の発明において、帽子用衝撃吸収材は、クラウンのうち、側頭部に対応する側頭領域を被覆する側頭被覆部を備え、側面視において、前方被覆部の前方下縁から前方被覆部の最上部までの高さHを1とした場合に、後方被覆部の後方下縁から後方被覆部の最上部までの高さHは0.8〜2.5であり、側頭被覆部の側方下縁から側頭被覆部の側方上縁における最下部までの高さHは、高さHより小さく、かつ高さHよりも小さいことを特徴とする。
このような構成の発明において、H:H=1:0.8〜2.5としたのは、例えば、着用者が歩行や走行をしている際に、前方にある障害物に衝突し易いことを重視する場合は、H>Hとして前方被覆部の表面積を後方被覆部の表面積よりも広めにし、一方で後方に転倒時は手で体を支え難く後頭部の強打につながることを重視する場合は、H<Hとして後方被覆部の表面積を前方被覆部の表面積よりも広めに構成できるようにしたものである。
また、高さHを、高さHより小さく、かつ高さHよりも小さいとしたのは、頭頂開放部をクラウンの側頭領域にまで広げるためである。
【0012】
また、H:Hの比率に依存して、頭頂開放部の表面積も変化する。なお、頭頂開放部の表面積とは、帽子用衝撃吸収材が表面積Mを有する半球状をなすと仮定した場合に、この表面積Mから、帽子用衝撃吸収材の前方被覆部や後方被覆部等によって衝撃が吸収される部分の合計表面積mを差し引いた値(M−m)である。
上記構成の発明においては、第1の発明の作用に加えて、前方被覆部の表面積と、後方被覆部の表面積の比率を自在に変更可能とすることで、目的毎に適応した形状を有する帽子用衝撃吸収材が形成される。また、頭頂開放部の表面積も変化するため、通気性が調整される。
【0013】
続いて、第3の発明は、第1又は第2の発明において、帽子用衝撃吸収材は、少なくとも一部に複数の通気孔が形成されることを特徴とする。
このような構成の発明において、通気孔は、帽子用衝撃吸収材の一部のほか、全部に形成されても良い。また通気孔の径は、小石やゴルフボール等の小物体が通気孔の位置に衝突しても頭部を保護できるように数ミリメートル程度以下とすることが望ましい。
上記構成の発明においては、第1又は第2の発明の作用に加えて、帽子用衝撃吸収材が取り付けられた帽子を着用したとき、例えば体温や日差しによって加湿、加温されたクラウン内部の空気が、通気孔を介して帽子用衝撃吸収材の外方に放出される。よって、頭部の蒸れが一層防止されるという作用を有する。
【0014】
続いて、第4の発明は、第1乃至第3のいずれかの発明において、帽子用衝撃吸収材は、その内面に、突起が形成されることを特徴とする。
このような構成の発明において、突起として、例えば、衝撃を吸収可能な合成発泡樹脂体や、非発泡性のゴム体が考えられる。また、突起は、帽子用衝撃吸収材の内面に均等に分布するほか、頭部保護作用を高めたい領域に、そのほかの領域よりも密に分布しても良い。
上記構成の発明においては、第1乃至第3のいずれかの発明の作用に加えて、例えば、突起が衝撃吸収性を有する場合に、頭部保護作用が高められる。また、帽子用衝撃吸収材の内面が広範囲に亘ってクラウンに密着することが防止されるので、蒸れ防止作用も高められる。
【0015】
さらに、第5の発明は、第1乃至第4の発明のいずれかの帽子用衝撃吸収材と、この帽子用衝撃吸収材を前記クラウンの外側に取り付けるための取付部材を備え、 この取付部材は、クラウンのうち、側頭部に対応する側頭領域に設けられ、前方被覆部の両端及び後方被覆部の両端のうちの少なくともいずれかが、取付部材を介して、クラウンの外側に取り付けられ、前方被覆部と前頭領域との間と、後方被覆部と後頭領域との間の少なくともいずれかに、隙間が形成されることを特徴とする。
【0016】
このような構成の発明において、取付部材としては、例えば、帽子用衝撃吸収材をクラウンの外側に分離不能に縫着する縫着糸や、帽子用衝撃吸収材とクラウンの外側の双方に固着された点ファスナーや面ファスナーが考えられる。後者では、帽子用衝撃吸収材は、クラウンに着脱可能である。
また、帽子用衝撃吸収材は、例えば、前方被覆部の両端と、後方被覆部の両端が、それぞれ取付部材を介して、クラウンの外側に取り付けられる。ただし、帽子用衝撃吸収材は、前方被覆部の両端のみ、または後方被覆部の両端のみにおいて、取付部材を介してクラウンの外側に取り付けられても良い。なお、前方被覆部の両端とは、その左右の横幅方向における両端である。よって、例えば、前方被覆部の横幅を広くするにつれ、前方被覆部と前頭領域との間に隙間が生じ、拡張するようになる。後方被覆部についても、これと同様である。
【0017】
上記構成の発明においては、第1乃至第4のいずれかに記載の発明の作用を備える衝撃吸収帽子が製造される。加えて、上記構成の発明においては、前頭領域の外側と後頭領域の外側のいずれかに隙間が形成されるので、隙間において頭部の蒸れが防止される。
また、帽子用衝撃吸収材がクラウンに着脱可能な場合では、帽子用衝撃吸収材を取り外すことで、衝撃吸収帽子を通常の帽子として使用できる。
さらに、例えば、前方被覆部の横幅や、後方被覆部の横幅をそれぞれ変更することで各隙間の幅が大小に変化するため、天候や季節により頭部の蒸れが発生し難い場合には、隙間を広めに形成しないようにすることで頭部の保温も可能となる。
【発明の効果】
【0018】
第1の発明によれば、前方被覆部と、後方被覆部により、前頭部と、後頭部が衝撃から保護されるとともに、頭頂開放部において、蒸れが発生しないため、頭部に対する衝撃吸収効果と蒸れ防止の双方を十分に発揮できるという効果を有する。したがって、帽子用衝撃吸収材を取り付けた帽子を被る際に蒸れによる不快感が生じ難いので、この帽子を長時間に亘って着用することができる。
【0019】
第2の発明によれば、第1の発明の効果に加えて、重視する効果により適応した形状を有する帽子用衝撃吸収材が形成されるため、着用者の年齢や活動性にきめ細かく対応できる。
【0020】
第3の発明によれば、第1又は第2の発明の効果に加えて、通気孔により、頭部の蒸れが一層防止されるため、着用時の快適性を向上させることができる。加えて、各通気孔を中心として帽子用衝撃吸収材がそれぞれ異なる方向に屈曲可能になるため、帽子用衝撃吸収材を帽子に取り付けた際に、帽子用衝撃吸収材がクラウンの外側形状に沿うように変形し易い。よって、剛性の高い素材に通気孔を形成することで、強度が強く、かつクラウンの外側形状にフィット可能な帽子用衝撃吸収材を形成できる。
【0021】
第4の発明によれば、第1乃至第3のいずれかの発明の効果に加えて、頭部保護作用や蒸れ防止作用が高められることから、衝撃吸収材を装着した帽子を被った際の安全性と快適性を一層向上させることができる。
【0022】
第5の発明によれば、第1乃至第4のいずれかの発明の効果を備える衝撃吸収帽子が製造される。加えて、第5の発明によれば、隙間において頭部の蒸れが防止されるから、帽子用衝撃吸収材による蒸れという不利益を確実に解消し得る。
また、前方被覆部の横幅や、後方被覆部の横幅をそれぞれ調整することで隙間の前後方向の幅を変化させることができる。よって、衝撃吸収材による頭部の保温も可能となるため、四季を通じて同じ衝撃吸収帽子を着用することが可能となる。
さらに、隙間が形成されても帽子用衝撃吸収材の厚みを薄くすることで、帽子用衝撃吸収材がクラウンからさほど盛り上がることがなく、衝撃吸収帽子の見た目に違和感を抱くおそれが少ない。よって、デザイン性を損なうことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】(a)及び(b)は、それぞれ実施例1に係る帽子用衝撃吸収材の正面図及び背面図である。
図2】(a)は実施例1に係る帽子用衝撃吸収材を前方上方向からみた場合の斜視図であり、(b)は帽子用衝撃吸収材の取付対象である帽子を同方向から見た場合の斜視図である。
図3】(a)及び(b)は、それぞれ実施例1に係る帽子用衝撃吸収材を図2(b)に示す帽子に取り付けた場合の左側面図及び(a)におけるA方向矢視図である。
図4】(a)乃至(c)は、それぞれ実施例1の帽子用衝撃吸収材の第1乃至第3の変形例に係る帽子用衝撃吸収材である。
図5】(a)及び(b)は、それぞれ実施例1の帽子用衝撃吸収材の第4の変形例に係る帽子用衝撃吸収材を前方上方向からみた場合の斜視図であり、(b)は同帽子用衝撃吸収材を図2(b)に示す帽子に取り付けた場合の、(a)におけるC−C線矢視図である。
図6】(a)及び(b)は、それぞれ実施例2に係る衝撃吸収帽子の図3(b)におけるB−B線矢視断面図及び(a)におけるD−D線矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0024】
本発明の第1の実施の形態に係る帽子用衝撃吸収材について、図1乃至図5を用いて詳細に説明する。図1(a)及び図1(b)は、それぞれ実施例1に係る帽子用衝撃吸収材の正面図及び背面図である。図2(a)は実施例1に係る帽子用衝撃吸収材を前方上方向からみた場合の斜視図であり、図2(b)は帽子用衝撃吸収材の取付対象である帽子を同方向から見た場合の斜視図である。
図1及び図2に示すように、実施例1に係る衝撃吸収材1は、帽子50のクラウン51に装着される帽子用衝撃吸収材である。
衝撃吸収材1は、帽子50のクラウン51のうち、帽子着用者の前頭部に対応する前頭領域51aを被覆する前方被覆部2と、クラウン51のうち、帽子着用者の後頭部に対応する後頭領域51bを被覆する後方被覆部3と、帽子着用者の両側頭部に対応する両側頭領域51c,51cを被覆する両側頭被覆部4,4を備える。
その一方で、クラウン51のうち、帽子着用者の頭頂部に対応する頭頂領域51dを開放する頭頂開放部5を有する。なお、開放とは、クラウン51を被覆するシート体1aがないという意味である。
なお、図2(b)に示すように、帽子50は、前頭領域51a及び後頭領域51bに、それぞれつば52及び日除け53が縫着されたキャップである。また、クラウン51は、6枚はぎの布生地が2枚重ねられてなり、両側頭領域51c,51cのおもて面に、後述するスナップ6a,6bを留め付けるためのスナップ6a´,6b´を備える。
【0025】
図1(a)乃至図2(a)に示すように、前方被覆部2は、前方上縁2aが正面視で緩やかな山型状を描いているとともに、前方下縁2bは一様な直線を描いている。また、正面視での前方被覆部2の左右の両側2c,2cは、背面視での後方被覆部3の左右の両側3c,3cとそれぞれ一体化され、面状の両側頭被覆部4,4を形成する。さらに、両側2c,2cには、衝撃吸収材1を帽子50のクラウン51に取り付けるためのスナップ6a,6aを備える。
後方被覆部3は、その後方上縁3aが前方被覆部2の前方上縁2aよりも急激に立ち上がる山型状を描いている。また、後方上縁3aは、前方上縁2aとつながって、頭頂開放部5の外縁を形成する。さらに、後方被覆部3の後方下縁3bは、一様な直線を描いて前方下縁2bとつながっており、略円形をなす衝撃吸収材1の開口部1f(2(a)参照)を形成する。そして、両側3c,3cには、衝撃吸収材1を帽子50のクラウン51に取り付けるためのスナップ6b,6bを備える。
そして、両側頭被覆部4,4は、前方上縁2aと後方上縁3aがつながってなる側方上縁4aと、前方下縁2bと後方下縁3bがつながってなる側方下縁4bを備える。
また、前方上縁2aの頂上は最上部2dであり、後方被覆部3の頂上は最上部3dである。そして、衝撃吸収材1は、最上部2dと最上部3dを結ぶ直線について、左右対称をなす。さらに、側方上縁4aから側方下縁4bまでの高さのうち、最も低い高さに対応する側方下縁4bを、最下部4cとする。
【0026】
衝撃吸収材1は、例えば、ポリエチレン発泡樹脂や、ポリスチレン発泡樹脂等からなる柔軟性や衝撃吸収性を有するシート体1aと、このシート体1aのおもて面を被覆する布生地1bからなる。なお、シート体1aの厚みは、例えば2〜4mm程度である。また、衝撃吸収材1の布生地1bは、クラウン51を構成する布生地と同一種類、かつ同色である。
詳細には、前方被覆部2と後方被覆部3を構成するシート体1aは、いずれも1枚からなり、それぞれの左右の両側において熱溶着されている。ただし、後方被覆部3のシート体1aは、3本の折り目1c〜1eが、縦方向(上縁3aと下縁3bを結ぶ方向)に沿って等間隔に形成されることで曲面状となり、帽子着用者の後頭部の表面形状にフィットし易くなっている。
【0027】
続いて、衝撃吸収材の形状を、図3を用いてより詳細に説明する。図3(a)及び図3(b)は、それぞれ実施例1に係る帽子用衝撃吸収材を図2(b)に示す帽子に取り付けた場合の左側面図及び図3(a)におけるA−A線矢視図である。なお、図1乃及び図2で示した構成要素については、図3においても同一の符号を付して、その説明を省略する。
図3(a)及び図3(b)に示すように、衝撃吸収材1においては、前方被覆部2における前方下縁2bから前方上縁2aの最上部2dまでの高さHを1とした場合に、後方被覆部3における後方下縁3bから後方上縁3aの最上部3dまでの高さHは、例えば1.6としている。すなわち、衝撃吸収材1においては、H<Hとなっており、これは後方に転倒時した際における後頭部の強打を防止することを重視したものである。
また、側頭被覆部4の側方下縁4bから側頭被覆部4の側方上縁4aにおける最下部4cまでの高さHの、高さH,Hに対する比率は、小数点第2位を四捨五入すると、それぞれH/H=0.7であり、H/H=0.4である。すなわち、高さHは、高さHより小さく、かつ高さHよりも小さい。このような構成にしたのは、頭頂開放部5をクラウン51の両側頭領域51c,51cにまで広げるためである。
さらに、衝撃吸収材1を側面視した場合の、前方下縁2bから後方下縁3bまでからなる底部端面の長さDに対する高さH〜Hの比率は、小数点第2位を四捨五入すると、それぞれH/D=0.3、H/D=0.6、H/D=0.2である。なお、衝撃吸収材1を上方からみた場合、図3(b)からわかるように略楕円形状をなしており、長さDはその長軸に相当する。
【0028】
また、頭頂開放部5の外縁は、側面視で、前方被覆部2の最上部2dがほぼ直線状に後方上縁3aに向かって下降し、最も前方下縁2bからの高さが低い最下部(側頭被覆部4の最下部4cに相当する。)から、後方上縁3aが急激に屈曲して上昇することで形成されている。そのため、衝撃吸収材1を帽子50に取り付けた際に、クラウン51の頭頂領域51dと、前頭領域51aのうちの上方部分が頭頂開放部5の中から露出する一方、前頭領域51aのうちの下方部分と、後頭領域51bのほぼ全体は前方被覆部2と後方被覆部3によって覆われている。
しかし、シート体1aの厚みは2〜4mm程度であることから、衝撃吸収材1がクラウン51に取り付けられても、衝撃吸収材1がクラウン51から大きく浮き上がった状態とはならず、衝撃吸収材1を取り付けない場合のクラウン51のシルエットを壊すものではない。
【0029】
なお、前方被覆部2と、その前方下縁2bは、クラウン51の前頭領域51aと、つば52の双方に対して隙間Sを開けた状態に配置されている。後方被覆部3と、その後方下縁3bも、クラウン51の後頭領域51bに対して隙間Sを開けた状態で配置されている。これらの隙間S,Sにより、クラウン51の前頭領域51aと前方被覆部2の間の通気性と、後頭領域51bと後方被覆部3の間の通気性が確保される。また、隙間S,Sの有無及び体積は、帽子50が実際に着用される前では、衝撃吸収材1の両側頭被覆部4,4に対するスナップ6a,6bの取付位置と、クラウン51の両側頭領域51c,51cに対するスナップ6a´,6b´(図2(b)参照)の取付位置によって、一義的に決定される。
【0030】
上記構成の衝撃吸収材1においては、衝撃吸収材1が帽子50のクラウン51に対し、スナップ6a〜6b´を介して着脱可能に取り付けられる。すると、衝撃吸収材1が前方被覆部2と、後方被覆部3と、両側頭被覆部4,4を備えることにより、帽子着用者の前頭部の下方と、後頭部のほぼ全体と、両側頭部の下方がこの部分に加えられた衝撃から保護される。しかし、H:H=1:1.6としたことにより、クラウン51の頭頂領域51dと、前頭領域51aのうちの上方部分が頭頂開放部5の中から露出するため、頭頂部付近の頭皮の温度上昇が起こらず、帽子着用者の頭部に蒸れが発生しない。
また、衝撃吸収材1は、例えば2〜4mmという薄厚の発泡樹脂材からなり、軽量であるため、衝撃吸収材1の荷重による負荷は無視できる程度に少ない。
【0031】
以上説明したように、衝撃吸収材1によれば、帽子着用者の前頭部の下方と、後頭部のほぼ全体と、両側頭部の下方が衝撃から保護されるとともに、頭頂部付近において蒸れが発生しないため、頭部に対する衝撃吸収効果と蒸れ防止の双方を十分に発揮できるという効果を有する。したがって、帽子着用者は蒸れによる不快感を生じ難いので、衝撃吸収材1が取り付けられた帽子50を長時間に亘って着用することができる。したがって、帽子着用者は、例えば通学時や散歩時、または運動時において、自身の安全を継続的に確保することができる。
【0032】
また、衝撃吸収材1を帽子50に取り付けても、クラウン51のシルエットを壊すものではないので、例えば、特許文献3に開示された従来の考案と比較して、優れたデザイン性を発揮する。詳細には、頭頂開放部5の外縁は、側面視で、前方被覆部2の最上部2dがほぼ直線状に後方上縁3aに向かって下降し、最も前方下縁2bからの高さが低い最下部から、後方被覆部3の後方上縁3aが急激に屈曲して上昇することで形成されている。このような頭頂開放部5の外縁形状は、蒸れ防止の効率やデザイン性の良好さを決定付ける重要な因子の一つである。
なお、頭部保護機能を有する帽子を購入する際に、購入者は、第一に衝撃吸収性の有無、程度を重視するが、デザイン性や価格を軽視するわけではない。すなわち、購入者は、衝撃吸収性と、デザイン性等がいずれも適切であるという、いわゆるバランスの取れた商品を選択する傾向にある。この点につき、衝撃吸収材1によれば、すでに述べたとおり、衝撃吸収性と、デザイン性のバランスは良好である。
また、衝撃吸収材1は、発泡樹脂製のシート体1aを、布生地1bで被覆してなるから、その製造価格が嵩張るものではない。したがって、衝撃吸収材1によれば、価格の点からも上記バランスの良好な商品となり得るので、購入者により衝撃吸収材1、または衝撃吸収材1を備えた帽子が多く選択されることが期待できる。
【0033】
次に、実施例1の第1乃至第3の変形例に係る帽子用衝撃吸収材について、図4を用いながら説明する。図4(a)乃至図4(c)は、それぞれ実施例1の帽子用衝撃吸収材の第1乃至第3の変形例に係る帽子用衝撃吸収材である。なお、図1乃至図3で示した構成要素については、図4においても同一の符号を付して、その説明を省略する。また、日除け53と布生地1bの表示を省略する。
図4(a)に示すように、実施例1の第1の変形例に係る衝撃吸収材1Aは、実施例1に係る衝撃吸収材1に、複数の通気孔7が形成されたものである。さらに、衝撃吸収材1のスナップ6a,6aの代わりに、衝撃吸収材1Aをクラウン51に対し縫着用糸で分離不能に固着する縫着部8が設けられる。この場合、クラウン51に設けられるスナップ6a´,6b´(図2(b)参照)も省略される。
また、衝撃吸収材1では、通気孔7を、直径が例えば3mmの円形状とし、シート体1aの全体にわたって略均等に分布させている。これ以外の衝撃吸収材1Aの構成は、衝撃吸収材1と同様である。
【0034】
上記構成の衝撃吸収材1Aにおいては、この衝撃吸収材1Aが取り付けられた帽子50を着用したとき、例えば体温や日差しによって加湿、加温されたクラウン51内部の空気が、シート体1aの全体に分布された通気孔7を介し、衝撃吸収材1Aの外方にまんべんなく放出される。よって、衝撃吸収材1と比較して、帽子着用者の頭部の蒸れを一層防止できる。
また、通気孔7は、通気孔7の直径が3mmであるため、小石やゴルフボール等の小物体が通気孔7の位置に衝突しても、小物体が頭部に直接衝突する可能性は殆どない。よって、衝撃吸収材1Aは、衝撃吸収材1と比較して、頭部保護効果を低下させることのない一方で、蒸れ防止効果を向上させることができる。
【0035】
さらに、シート体1aに通気孔7を設けることにより、シート体1aの厚みを分厚くしても、シート体1aが通気孔7を中心として屈曲容易となる。そのため、シート体1aの厚みや成分比を変化させることでシート体1aの剛性を高めても、シート体1aの屈曲容易性は通気孔7によって確保できる。よって、衝撃吸収材1Aによれば、蒸れ防止効果を維持したまま頭部保護効果を間接的に高めることができる。これととともに、屈曲容易性の増したシート体1aにより、衝撃吸収材1Aが帽子着用者の頭部の形状にフィットし易いという有利な効果が依然として発揮されることから、衝撃吸収材1Aが嵩張ってデザイン性に欠けるおそれもない。
なお、通気孔7は、布生地1bによって被覆され、明確に視認されないので、通気孔7による外観の違和感は殆どない。これ以外の衝撃吸収材1Aの作用及び効果は、衝撃吸収材1の作用及び効果とそれぞれ同様である。
【0036】
続いて、図4(b)に示すように、実施例1の第2の変形例に係る衝撃吸収材1Bは、側面視で、前方被覆部2の高さH(前方下縁2bから最上部2dまでの高さ)に対する後方被覆部3の高さH(後方下縁3bから最上部3dまでの高さ)を1.8とし、かつH/H=0.6、H/H=0.3としたものである。すなわち、衝撃吸収材1Bにおいては、衝撃吸収材1と同様にH<Hとなっており、後頭部の強打を防止することを重視している。これに伴い、H/D=0.3、H/D=0.5、H/D=0.2となった。なお、H〜H,H/H,H/H,H/D〜H/Dの値は、いずれも小数点第2位を四捨五入したものである(図4(c)も同じ。)。
しかし、衝撃吸収材1Bでは、衝撃吸収材1の場合よりも高さH〜Hをいずれも低くしたことで、頭頂開放部5の表面積をより拡張したものである。ただし、衝撃吸収材1Bによる頭部保護効果は、衝撃吸収材1Bの前方被覆部2及び後方被覆部3の各表面積が衝撃吸収材1の場合と比較してやや減少しているに過ぎないから、頭部保護効果の減少もわずかである。
さらに、衝撃吸収材1Bにおいては、衝撃吸収材1のスナップ6a,6aのいずれか1つを省略し、残りの1つを、側面視で高さHに対応する前方下縁2bと、高さHに対応する後方下縁3bとの中間点に配置している。また、クラウン51のスナップ6a´〜6c´が、実施例1の場合よりも互いの間隔を狭めて設けられる。よって、衝撃吸収材1Bのスナップ6aを、クラウン51のスナップ6a´〜6c´のいずれかに留め付けるかにより、隙間S,Sの体積の比率を変更することができる。なお、図4(b)では、衝撃吸収材1Bのスナップ6aが、クラウン51のスナップ6b´に留め付けられた様子を示している。これ以外の衝撃吸収材1Bの構成は、衝撃吸収材1と同様である。
【0037】
上記構成の衝撃吸収材1Bにおいては、衝撃吸収材1と比較して、頭頂開放部5の表面積が拡張されたことにより、帽子着用者の頭部の蒸れを一層防止できる。
また、衝撃吸収材1Bにおいては、クラウン51のスナップ6a´〜6c´に対する衝撃吸収材1Bのスナップ6aの留め付け位置を変えることで、隙間S,Sの体積の比率を変化させることができるから、クラウン51の前頭領域51aと前方被覆部2の間の通気性と、後頭領域51bと後方被覆部3の間の通気性を調整できる。よって、衝撃吸収材1Bによれば、衝撃吸収材1と比較して、頭部保護作効果の低下がわずかである一方で、帽子50全体における蒸れ防止効果を向上させたり、前頭領域51aと後頭領域51b毎に蒸れ防止効果の程度を変化させたりすることができる。これ以外の衝撃吸収材1Bの作用及び効果は、衝撃吸収材1の作用及び効果とそれぞれ同様である。
【0038】
続いて、図4(c)に示すように、実施例1の第3の変形例に係る衝撃吸収材1Cは、前方被覆部2の高さHに対する後方被覆部3の高さHを1.0とし、かつH/H=H/H=0.3としたものである。すなわち、衝撃吸収材1Cにおいては、H=Hとなっており、前頭部の強打と後頭部の強打を同等程度に防止することを重視している。しかし、衝撃吸収材1Cでは、高さHを衝撃吸収材1の高さHよりも低くしたため、頭頂開放部5の表面積は、衝撃吸収材1の場合と同程度に確保されている。また、これに伴い、H/D=0.4、H/D=0.4、H/D=0.1となった。
さらに、衝撃吸収材1Cにおいては、衝撃吸収材1のスナップ6a,6bの代わりに、略楕円形状の面ファスナー9aを備える。一方、クラウン51においては、スナップ6a´,6b´の代わりに、面ファスナー9aよりも広い面積を有する略長方形状の面ファスナー9bを両側頭領域51c,51cにそれぞれ備える。よって、衝撃吸収材1C面ファスナー9aを、クラウン51の面ファスナー9bのいずれかの位置に留め付けるかにより、隙間S,Sの体積の比率を変更することができる。このうち、面ファスナー9aを面ファスナー9bの範囲のより高い位置に留め付けると、特に隙間S,Sの体積を高さ方向(クラウン51から上方へ離れる方向)に増加させることができる。これ以外の衝撃吸収材1Cの構成は、衝撃吸収材1と同様である。
【0039】
上記構成の衝撃吸収材1Cにおいては、衝撃吸収材1と比較して、頭頂開放部5の表面積が維持されるとともに、前頭部と後頭部を衝撃から同程度に保護できる。よって、例えば、転倒方向に特別な傾向が見られない場合に、衝撃吸収材1Cが好適に利用できる。
また、衝撃吸収材1Cにおいては、クラウン51の面ファスナー9bに対する衝撃吸収材1Bの面ファスナー9aの留め付け位置を様々に変えることができる。そのため、隙間S,Sの体積を高さ方向にも変化させることが可能になるから、クラウン51の前頭領域51aと前方被覆部2の間の通気性と、後頭領域51bと後方被覆部3の間の通気性を一層広く調整できる。これ以外の衝撃吸収材1Cの作用及び効果は、衝撃吸収材1の作用及び効果とそれぞれ同様である。
【0040】
以上、説明したように、図4(a)乃至図4(c)の場合では、H/Dの範囲は0.3〜0.4であり、H/Dの範囲は0.4〜0.6である。また、H/Dの範囲は0.1〜0.2である。このうち、図4(a)における衝撃吸収材1Aのように、H/D=0.6としたとき、後方被覆部3の最上部3dがクラウン51の頂部付近に到達しているものの、H/Dと、H/DをいずれもH/D=0.6よりも低めとすることで、頭頂開放部5の表面積の大きさが一定以上に確保される。
【0041】
次に、実施例1の第4の変形例に係る帽子用衝撃吸収材及び衝撃吸収帽子について、図5を用いながら説明する。図5(a)及び図5(b)は、それぞれ実施例1の帽子用衝撃吸収材の第4の変形例に係る帽子用衝撃吸収材を前方上方向からみた場合の斜視図であり、(b)は同帽子用衝撃吸収材を図2(b)に示す帽子に取り付けた場合の、(a)におけるC−C線矢視図である。なお、図1乃至図4で示した構成要素については、図5においても同一の符号を付して、その説明を省略する。また、図5(b)においては、日除け53の表示を省略する。
図5(a)及び図5(b)に示すように、実施例1の第4の変形例に係る衝撃吸収材1Dは、実施例1に係る衝撃吸収材1の内面に、複数の突起12が互いに間隔を空けて形成されたものである。
この突起12は、円柱形状をなす中実構造であって、衝撃吸収材1のシート体1aと同質の発泡樹脂材をプレス加工することで、シート体1aと一体的に形成される。または、突起12の一方の端面がシート体1aに接着剤または熱溶着により固着されても良い。
また、各突起12の高さh(図5(b)参照)は、いずれも等しく、衝撃吸収材1Dを帽子50に取り付けたときに、隙間S,Sが確保できるよう帽子50のクラウン51の大きさと、衝撃吸収材1Dの大きさを考慮して決定されると良い。
【0042】
また、突起12は、衝撃吸収材1Dの内面全体にほぼ均等に分布するが、スナップ6a,6bの周囲には設けられないことが望ましい。これは、スナップ6a,6bが帽子50のスナップ6a´,6b´に係合困難になることを避けるためである。このほか、前方被覆部2と後方被覆部3の内面に分布する突起12の高さhを、両側頭被覆部4,4の内面に分布する突起12の高さhよりも高く設計しても良い。さらに、突起12は、円柱形状をなす以外にも、高さhを有する限り、その横断面が楕円形、多角形であるほか、不定形状であっても良い。さらに、突起12の縦断面(高さ方向における断面形状)は、柱状、紡錘状あるいは台形状であってよい。つまり、突起12の高さ方向が湾曲又は屈曲しづらい形態であればよい。
【0043】
上記構成の衝撃吸収材1Dにおいては、衝撃吸収材1Dを帽子50に取り付けたときに、複数の突起12の頂部が、帽子50のクラウン51に当接する。よって、複数の突起12は、隙間S,Sにおけるスペーサーとして作用する。
したがって、衝撃吸収材1Dによれば、突起12がスペーサーとして作用するため、例えば、強風が吹き付ける場合に、隙間S,Sが消滅することがなく、蒸れ防止効果を安定的に発揮可能である。また、突起12自体に衝撃吸収性があることから、頭部保護効果をも向上させることができる。これ以外の衝撃吸収材1Dの作用及び効果は、衝撃吸収材1の作用及び効果とそれぞれ同様である。
【実施例2】
【0044】
次に、実施例2に係る衝撃吸収帽子について、図6を用いながら説明する。図6(a)及び図6(b)は、それぞれ実施例2に係る衝撃吸収帽子の図3(b)におけるB−B線矢視断面図及び図6(a)におけるD−D線矢視図である。なお、図1乃至図5で示した構成要素については、図6においても同一の符号を付して、その説明を省略する。また、帽子50の日除け53の表示も省略する。
図6(a)及び図6(b)に示すように、実施例2に係る衝撃吸収帽子10は、衝撃吸収材1と、衝撃吸収材1をクラウン51の外側に取り付けるための取付部材11を備える。
この取付部材11は、具体的には、図1乃至図2で示したスナップ6a〜6b´である。
【0045】
詳細には、前方被覆部2の両側2c,2cと、後方被覆部3の両側3c,3cがスナップ6a〜6b´を介していずれも両側頭領域51c,51cに連結される。これにより、前方被覆部2の裏面とクラウン51の前頭領域51aのおもて面との間に隙間Sが形成され、かつ後方被覆部3の裏面と後頭領域51bのおもて面との間に、隙間Sが形成される。
このうち、隙間Sにおいては、衝撃吸収材1が、スナップ6a〜6b´を介して前方下縁2bがつば52からやや浮き上がる位置に取り付けられている。なお、クラウン51の後頭領域51bは、タック54が形成され、この後頭領域51bを左右幅方向に伸縮可能としている。
【0046】
上記構成の衝撃吸収帽子10においては、すでに述べた衝撃吸収材1を帽子50に取り付けた場合の作用を有するほか、隙間S,Sの中を空気が通過可能である。
このうち、隙間Sにおいては、矢印Xで示すように、クラウン51の内部から前頭領域51aを透過して放出された空気Aが、隙間S内を例えば上昇し、その内部に滞留することが防止される。
【0047】
また、衝撃吸収材1は、前方下縁2bがつば52からやや浮き上がるように取り付けられているため、衝撃吸収材1に向かって吹く風が、前方下縁2bとつば52の間の隙間を通過して、空気Aと合流する。この合流により、外からの風は空気Aを冷却しつつ隙間S内を上昇する。したがって、空気Aの滞留を防止する作用が促進される。
さらに、隙間Sにおいては、矢印Xで示すように、クラウン51の内部から後頭領域51bを透過して放出された空気Aが、隙間S内を上昇または下降し、その内部に滞留することが防止される。
加えて、隙間S,Sが形成されることによれば、前方被覆部2と後方被覆部3が大きく変形し得ることで衝撃が効果的に吸収されるため、頭部保護効果を向上させることができる。
【0048】
衝撃吸収帽子10によれば、すでに述べた衝撃吸収材1を帽子50に取り付けた場合の効果を有するほか、隙間S,Sが形成されることにより、空気A,Aが隙間S,Sの内部に滞留することが防止されるため、この隙間S,S内部に熱がこもることを防止できる。したがって、衝撃吸収帽子10によれば、隙間S,Sによって、蒸れ防止効果を向上させることができる。
また、衝撃吸収帽子10によれば、クラウン51に対する衝撃吸収材1の取付位置が一義的に決定される場合であっても、前方被覆部2の横幅(両側2c,2c間の長さ)や、後方被覆部3の横幅(両側3c,3c間の長さ)をそれぞれ調整することで隙間S,Sの前後方向(図3(a)に示した高さHと高さHを結ぶ直線方向)の幅を変化させることができる。これにより、天候や季節に応じて、隙間S,Sの体積を調整可能になるため、蒸れ防止効果を向上させることができる。
さらに、低気温により頭部の蒸れが発生し難い場合には、隙間を広めに形成しないようにすることで頭部の保温も可能となる。また、取付部材11を、実施例1の第2及び第3の変形例に係る衝撃吸収材1B,1Cの場合と同様に、クラウン51に対する衝撃吸収材1の取付位置を変更可能である場合にも、隙間S,Sの体積を使用中に調整可能になるため、利便性をさらに向上させることができる。
【0049】
なお、本発明に係る衝撃吸収材及び衝撃吸収帽子は、実施例に示すものに限定されない。例えば、衝撃吸収材1,1A〜1Dにおいて、H:H=1:0.8〜2.5であって、HがHより小さく、かつHよりも小さい限り、H〜H間の比率は、図3図4(a)乃至図4(c)に示した以外の組み合わせであっても良く、両側頭被覆部4,4が例えばシート体1aを備えないベルトに置換されてもよい。また、衝撃吸収材1Aの通気孔7は、両側頭被覆部4,4においては省略されても良い。さらに、通気孔7は、略円形でなくても良く、シート体1aに不均一に分布しても良い。
そして、衝撃吸収帽子10において、衝撃吸収材1のクラウン51に対する取付位置によっては、隙間S,Sのいずれかが形成されなくても良い。
このほか、前方被覆部2の前方下縁2bが一様な直線をなす代わりに、凸部が設けられることで、スナップ6a〜6b´とは無関係に、前方下縁2bがつば52から浮き上がる構造としても良い。凸部を形成するには、例えば、前方下縁2bを波形状にしたり、前方下縁2bから下方に突出する突出部を設けたりすることが考えられる。
これは、例えば強い風に前方被覆部2が押されることでその前方下縁2bがつば52に衝突した状態になると、前方下縁2bとつば52との隙間を風が通過することができなくなることを抑制するものである。前方下縁2bに凸部が設けられると、前方下縁2bがつば52に衝突してもこれらの間に隙間が残り易く、この隙間を通過する風の量を一定以上確保できると考えられる。
この場合、衝撃吸収材1に向かって吹く風が、前方下縁2bとつば52の間の隙間に流入し、蒸れ防止効果を確実に発揮可能である。また、帽子50として、クラウン51の全周につばを備えるハットを想定した場合は、前方下縁2bに加えて、後方被覆部3の後方下縁3bに上記の凸部が設けられても良い。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、頭部に対する衝撃吸収効果と蒸れ防止の双方を十分に発揮可能であり、しかも優れたデザイン性を有する衝撃吸収帽子として利用可能である。
【符号の説明】
【0051】
1,1A〜1D…衝撃吸収帽子 1a…シート体 1b…布生地 1c〜1e…折り目 1f…開口部 2…前方被覆部 2a…前方上縁 2b…前方下縁 2c…両側 2d…最上部 3…後方被覆部 3a…後方上縁 3b…後方下縁 3c…両側 3d…最上部 4…側頭被覆部 4a…側方上縁 4b…側方下縁 4c…最下部 5…頭頂開放部 6a〜6c´…スナップ 7…通気孔 8…縫着部 9a,9b…面ファスナー 10…衝撃吸収帽子 11…取付部材 12…突起 50…帽子 51…クラウン 51a…前頭領域 51b…後頭領域 51c…両側頭領域 51d…頭頂領域 52…つば 53…日除け 54…タック
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2020年8月27日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟性を有し、帽子のクラウンに装着される帽子用衝撃吸収材と、
この帽子用衝撃吸収材を前記クラウンの外側に取り付けるための取付部材と、前記クラウンのうち、少なくとも前頭部に対応する前頭領域に設けられるつばを備え、
前記帽子用衝撃吸収材は、前記前頭領域を被覆する前方被覆部と、前記クラウンのうち、後頭部に対応する後頭領域を被覆する後方被覆部を少なくとも備える一方で、
前記クラウンのうち、頭頂部に対応する頭頂領域を開放する頭頂開放部を有し、
前記取付部材は、前記クラウンのうち、側頭部に対応する側頭領域に設けられ、
前記前方被覆部の両端が、前記取付部材を介して、前記クラウンの前記外側に取り付けられ、
前記前方被覆部と前記前頭領域との間に、隙間が形成されるとともに、前記前方被覆部の前方下縁が前記つばから浮き上がるように取り付けられていることを特徴とする衝撃吸収帽子。
【請求項2】
前記後方被覆部の両端が、前記取付部材を介して、前記クラウンの前記外側に取り付けられ、
前記隙間は、前記前方被覆部と前記前頭領域との間に加えて、前記後方被覆部と前記後頭領域との間に形成されることを特徴とする請求項1に記載の衝撃吸収帽子。
【請求項3】
前記前方下縁は、凸部が設けられることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の衝撃吸収帽子。
【請求項4】
前記つばは、前記クラウンの全周に設けられ、
前記凸部は、前記前方下縁に加えて、前記後方被覆部の後方下縁に設けられることを特徴とする請求項3に記載の衝撃吸収帽子。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の衝撃吸収帽子に装着される帽子用衝撃吸収材であって、前記前方下縁に前記凸部が設けられることを特徴とする帽子用衝撃吸収材。