【解決手段】センサシステム50は、計測対象が異なる第1センサおよび第2センサと、故障検出部51とを備える。故障検出部51は、第1センサおよび第2センサのいずれか一方の故障を検出する。故障検出部51は、第1センサから、温度に応じて変動する第1出力値を取得する。また、故障検出部51は、第2センサから、温度に応じて変動する第2出力値を取得する。そして、故障検出部51は、第1出力値と第2出力値との関係が、所定の正常範囲内であるか否かに基づいて、第1センサおよび第2センサのいずれか一方の故障を検出する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本願の例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本願では、動力伝達装置の中心軸と平行な方向を「軸方向」、動力伝達装置の中心軸に直交する方向を「半径方向」、動力伝達装置の中心軸を中心とする円弧に沿う方向を「周方向」、とそれぞれ称する。ただし、上記の「平行な方向」は、略平行な方向も含む。また、上記の「直交する方向」は、略直交する方向も含む。
【0010】
<1.動力伝達装置の構成>
図1は、第1実施形態に係る動力伝達装置1の縦断面図である。
図2は、
図1のA−A位置から見た動力伝達装置1の横断面図である。この動力伝達装置1は、モータから得られる第1回転数の回転運動を、第1回転数よりも低い第2回転数に減速させつつ後段へ伝達する装置である。動力伝達装置1は、例えば、ロボットの関節に、モータとともに組み込まれて使用される。ただし、本発明の動力伝達装置は、アシストスーツ、無人搬送台車などの他の装置に用いられるものであってもよい。
【0011】
図1および
図2に示すように、本実施形態の動力伝達装置1は、インタナルギア10、フレックスギア20、波動発生器30、およびセンサ基板40を備えている。
【0012】
インタナルギア10は、内周面に複数の内歯11を有する円環状のギアである。インタナルギア10は、動力伝達装置1が搭載される装置の枠体に、例えばねじ止めで固定される。インタナルギア10は、中心軸9と同軸に配置される。また、インタナルギア10は、フレックスギア20の後述する筒状部21の半径方向外側に位置する。インタナルギア10の剛性は、フレックスギア20の筒状部21の剛性よりも、はるかに高い。このため、インタナルギア10は、実質的に剛体とみなすことができる。インタナルギア10は、円筒状の内周面を有する。複数の内歯11は、当該内周面において、周方向に一定のピッチで配列されている。各内歯11は、半径方向内側へ向けて突出する。
【0013】
フレックスギア20は、可撓性を有する円環状のギアである。フレックスギア20は、中心軸9を中心として回転可能に支持される。フレックスギア20は、本発明における「ギア」の一例である。
【0014】
本実施形態のフレックスギア20は、筒状部21と平板部22とを有する。筒状部21は、中心軸9の周囲において、軸方向に筒状に延びる。筒状部21の軸方向の先端は、波動発生器30の半径方向外側、かつ、インタナルギア10の半径方向内側に位置する。筒状部21は、可撓性を有するため、半径方向に変形可能である。特に、インタナルギア10の半径方向内側に位置する筒状部21の先端部は、自由端であるため、他の部分よりも大きく半径方向に変位可能である。
【0015】
フレックスギア20は、複数の外歯23を有する。複数の外歯23は、筒状部21の軸方向の先端部付近の外周面において、周方向に一定のピッチで配列されている。各外歯23は、半径方向外側へ向けて突出する。上述したインタナルギア10が有する内歯11の数と、フレックスギア20が有する外歯23の数とは、僅かに相違する。
【0016】
平板部22は、ダイヤフラム部221と肉厚部222とを有する。ダイヤフラム部221は、筒状部21の軸方向の基端部から、半径方向外側へ向けて平板状に広がり、かつ、中心軸9を中心として円環状に広がる。ダイヤフラム部221は、軸方向に僅かに撓み変形可能である。肉厚部222は、ダイヤフラム部221の半径方向外側に位置する、円環状の部分である。肉厚部222の軸方向の厚みは、ダイヤフラム部221の軸方向の厚みよりも厚い。肉厚部222は、動力伝達装置1が搭載される装置の、駆動対象となる部品に、例えばねじ止めで固定される。
【0017】
波動発生器30は、フレックスギア20の筒状部21に、周期的な撓み変形を発生させる機構である。波動発生器30は、カム31と可撓性軸受32とを有する。カム31は、中心軸9を中心として回転可能に支持される。カム31は、軸方向に視たときに楕円形の外周面を有する。可撓性軸受32は、カム31の外周面と、フレックスギア20の筒状部21の内周面との間に介在する。したがって、カム31と筒状部21とは、異なる回転数で回転できる。
【0018】
可撓性軸受32の内輪は、カム31の外周面に接触する。可撓性軸受32の外輪は、フレックスギア20の内周面に接触する。このため、フレックスギア20の筒状部21は、カム31の外周面に沿った楕円形状に変形する。その結果、当該楕円の長軸の両端に相当する2箇所において、フレックスギア20の外歯23と、インタナルギア10の内歯11とが噛み合う。周方向の他の位置においては、外歯23と内歯11とが噛み合わない。
【0019】
カム31は、直接または他の動力伝達機構を介して、モータに接続される。モータを駆動させると、カム31は、中心軸9を中心として第1回転数で回転する。これにより、フレックスギア20の上述した楕円の長軸も、第1回転数で回転する。そうすると、外歯23と内歯11との噛み合い位置も、周方向に第1回転数で変化する。また、上述の通り、インタナルギア10の内歯11の数と、フレックスギア20の外歯23の数とは、僅かに相違する。この歯数の差によって、カム31の1回転ごとに、外歯23と内歯11との噛み合い位置が、周方向に僅かに変化する。その結果、インタナルギア10に対してフレックスギア20が、中心軸9を中心として、第1回転数よりも低い第2回転数で回転する。したがって、フレックスギア20から、減速された第2回転数の回転運動を取り出すことができる。
【0020】
<2.センサ基板について>
<2−1.センサ基板の構成>
センサ基板40は、フレックスギア20にかかるトルクを検出するためのセンサが搭載された基板である。
図1に示すように、本実施形態では、円板状のダイヤフラム部221の円形の表面に、センサ基板40が固定されている。
【0021】
図3は、センサ基板40の表裏面のうち、ダイヤフラム部221に対向する裏面を示した図である。
図4は、センサ基板40の表裏面のうち、ダイヤフラム部221に対向しない表面を示した図である。
図5は、ダイヤフラム部221およびセンサ基板40の部分断面図である。
【0022】
本実施形態のセンサ基板40は、柔軟に変形可能なフレキシブルプリント基板(FPC)である。
図3および
図4に示すように、センサ基板40は、中心軸9を中心とする円環状の本体部41と、本体部41から半径方向外側へ向けて突出したフラップ部42とを有する。また、
図5に示すように、センサ基板40は、絶縁層43と、導体層44とを有する。絶縁層43は、絶縁体である樹脂からなる。導体層44は、導体である金属からなる。導体層44の材料には、例えば、銅または銅を含む合金が用いられる。本実施形態のセンサ基板40は、絶縁層43の表面と裏面との両方に、導体層44を有する。
【0023】
また、
図5に示すように、センサ基板40は、両面接着テープ45により、フレックスギア20のダイヤフラム部221に固定される。具体的には、ダイヤフラム部221の表面と、センサ基板40の裏面とが、両面接着テープ45を介して固定される。両面接着テープ45は、接着力を有する材料がテープ状に成形されて、形状を維持できる程度に硬化されたものである。このような両面接着テープ45を用いれば、流動性を有する接着剤を用いる場合よりも、ダイヤフラム部221に対するセンサ基板40の固定作業が容易となる。また、作業者による固定作業のばらつきを低減できる。
【0024】
センサ基板40には、回転角度検出センサS1、トルク検出センサS2、および温度センサS3と、信号処理回路46とが搭載されている。回転角度検出センサS1およびトルク検出センサS2は、いずれも、ダイヤフラム部221の歪みを検出する歪みセンサであり、本発明における「第1センサ」の一例である。温度センサS3は、動力伝達装置1の温度を検出するセンサであり、本発明における「第2センサ」の一例である。
【0025】
回転角度検出センサS1は、本体部41の表裏面のうち、ダイヤフラム部221に対向する裏面に形成された抵抗線パターンを有する。すなわち、裏面側の導体層44が、回転角度検出センサS1の抵抗線パターンを含む。トルク検出センサS2および温度センサS3は、本体部41の表裏面のうち、ダイヤフラム部221に対向しない表面に形成された抵抗線パターンを有する。すなわち、表面側の導体層44が、トルク検出センサS2の抵抗線パターンおよび温度センサS3の抵抗線パターンを含む。
【0026】
信号処理回路46は、フラップ部42に配置されている。
【0027】
<2−2.回転角度検出センサについて>
回転角度検出センサS1は、ダイヤフラム部221の歪みに基づいて、フレックスギア20に入力される回転運動の回転角度を検出するセンサである。
図3に示すように、回転角度検出センサS1は、4つの第1抵抗線パターンR1と、4つの第2抵抗線パターンR2とを含む。
【0028】
4つの第1抵抗線パターンR1は、中心軸9の周囲において、周方向に等間隔に配列されている。第1抵抗線パターンR1は、それぞれ、1本の導体がジグザグに曲折しながら周方向に延びる、全体として円弧状のパターンである。本実施形態では、中心軸9の周囲の約45°の角度範囲に、1つの第1抵抗線パターンR1が広がっている。また、第1抵抗線パターンR1は、複数の第1抵抗線r1を含む。複数の第1抵抗線r1は、周方向に微小な間隔をあけて配列される。各第1抵抗線r1は、フレックスギア20の半径方向に沿って、直線状に延びる。周方向に隣り合う第1抵抗線r1の端部同士は、半径方向の内側または外側で交互に接続される。これにより、複数の第1抵抗線r1が、全体として直列に接続される。
【0029】
4つの第2抵抗線パターンR2は、中心軸9の周囲において、周方向に等間隔に配列されている。第2抵抗線パターンR2は、それぞれ、1本の導体がジグザグに曲折しながら周方向に延びる、全体として円弧状のパターンである。本実施形態では、中心軸9の周囲の約45°の角度範囲に、1つの第2抵抗線パターンR2が広がっている。また、第2抵抗線パターンR2は、複数の第2抵抗線r2を含む。複数の第2抵抗線r2は、周方向に微小な間隔をあけて配列される。各第2抵抗線r2は、フレックスギア20の半径方向に沿って、直線状に延びる。周方向に隣り合う第2抵抗線r2の端部同士は、半径方向の内側または外側で交互に接続される。これにより、複数の第2抵抗線r2が、全体として直列に接続される。
【0030】
4つの第2抵抗線パターンR2は、4つの第1抵抗線パターンR1と同心円状に、かつ、周方向において第1抵抗線パターンR1が配置されない領域に、配置される。本実施形態では、第1抵抗線パターンR1と、第2抵抗線パターンR2とが、周方向に交互に配列される。そして、4つの第1抵抗線パターンR1と、4つの第2抵抗線パターンR2とが、全体として、中心軸9を中心とする円環状に広がっている。
【0031】
図6は、4つの第1抵抗線パターンR1を含む第1ブリッジ回路C1の回路図である。
図6の例では、4つの第1抵抗線パターンR1を、Ra,Rb,Rc,Rdとして区別して示している。第1抵抗線パターンRa,Rb,Rc,Rdは、
図3においてRaを1つ目として反時計回りにこの順に配列されている。
【0032】
図6に示すように、4つの第1抵抗線パターンRa,Rb,Rc,Rdは、第1ブリッジ回路C1に組み込まれている。第1抵抗線パターンRaと第1抵抗線パターンRbとは、この順に直列に接続される。第1抵抗線パターンRdと第1抵抗線パターンRcとは、この順に直列に接続される。そして、電源電圧の+極と−極との間において、2つの第1抵抗線パターンRa,Rbの列と、2つの第1抵抗線パターンRd,Rcの列とが、並列に接続される。また、第1抵抗線パターンRaおよび第1抵抗線パターンRbの中点M11と、第1抵抗線パターンRdおよび第1抵抗線パターンRcの中点M12とが、第1電圧計V1に接続される。
【0033】
図7は、4つの第2抵抗線パターンR2を含む第2ブリッジ回路C2の回路図である。
図7の例では、4つの第2抵抗線パターンR2を、Re,Rf,Rg,Rhとして区別して示している。第2抵抗線パターンReは、
図3において、第1抵抗線パターンRaと第1抵抗線パターンRdとの間に位置する。また、第2抵抗線パターンRe,Rf,Rg,Rhは、
図3においてReを1つ目として時計回りにこの順に配列されている。
【0034】
図7に示すように、4つの第2抵抗線パターンRe、Rf、Rg、Rhは、第2ブリッジ回路C2に組み込まれている。第2抵抗線パターンReと第2抵抗線パターンRfとは、この順に直列に接続される。第2抵抗線パターンRhと第2抵抗線パターンRgとは、この順に直列に接続される。そして、電源電圧の+極と−極との間において、2つの第2抵抗線パターンRe,Rfの列と、2つの第2抵抗線パターンRh,Rgの列とが、並列に接続される。また、第2抵抗線パターンReおよび第2抵抗線パターンRfの中点M21と、第2抵抗線パターンRhおよび第2抵抗線パターンRgの中点M22とが、第2電圧計V2に接続される。
【0035】
動力伝達装置1の駆動時には、ダイヤフラム部221に、半径方向に伸長する部分(以下「伸長部」と称する)と、半径方向に収縮する部分(以下「収縮部」と称する)とが、発生する。具体的には、2つの伸長部と2つの収縮部とが、周方向に交互に発生する。すなわち、伸長部と収縮部とは、周方向に90°間隔で交互に発生する。そして、これらの伸長部および収縮部の発生する箇所が、上述した第1回転数で回転する。
【0036】
センサ基板40の裏面に設けられた第1抵抗線パターンRa,Rb,Rc,Rdおよび第2抵抗線パターンRe、Rf、Rg、Rhの各抵抗値は、ダイヤフラム部221の半径方向の歪みに応じて変化する。例えば、上述した伸長部が、ある抵抗線パターンと重なるときには、その抵抗線パターンの抵抗値が増加する。また、上述した収縮部が、ある抵抗線パターンと重なるときには、その抵抗線パターンの抵抗値が低下する。
【0037】
図3の例では、収縮部が第1抵抗線パターンRa,Rcと重なるときには、伸長部が第1抵抗線パターンRb,Rdと重なる。また、伸長部が第1抵抗線パターンRa,Rcと重なるときには、収縮部が第1抵抗線パターンRb,Rdと重なる。したがって、第1ブリッジ回路C1では、第1抵抗線パターンRa,Rcと、第1抵抗線パターンRb,Rdとが、逆向きの抵抗値変化を示す。
【0038】
また、
図3の例では、収縮部が第2抵抗線パターンRe,Rgと重なるときには、伸長部が第2抵抗線パターンRf,Rhと重なる。また、伸長部が第2抵抗線パターンRe,Rgと重なるときには、収縮部が第2抵抗線パターンRf,Rhと重なる。したがって、第2ブリッジ回路C2では、第2抵抗線パターンRe,Rgと、第2抵抗線パターンRf,Rhとが、逆向きの抵抗値変化を示す。
【0039】
図8は、第1ブリッジ回路C1の第1電圧計V1の計測値v1と、第2ブリッジ回路C2の第2電圧計V2の計測値v2とを、示したグラフである。
図8のように、第1電圧計V1および第2電圧計V2からは、それぞれ、周期的に変化する正弦波状の計測値v1,v2が出力される。この計測値の周期Tは、上述した第1回転数の周期の1/2倍に相当する。また、第1電圧計V1の計測値の位相に対して、第2電圧計V2の計測値の位相が、第1回転数の1/8周期分(計測値v1,v2の1/4周期分)進んでいるか、それとも第1回転数の1/8周期分(計測値v1,v2の1/4周期分)遅れているかにより、入力される回転運動の向きを判断できる。
【0040】
したがって、これらの2つの電圧計V1,V2の計測値v1,v2に基づいて、フレックスギア20に入力される回転運動の回転角度を検出することができる。具体的には、例えば、第1電圧計V1および第2電圧計V2の各計測値v1,v2の組み合わせと、回転角度とを対応づけた関数テーブルを予め用意し、その関数テーブルに計測値v1,v2を入力することにより、回転角度を出力すればよい。
【0041】
また、この回転角度検出センサS1は、第1電流計A1を有する。
図6に示すように、第1電流計A1は、第1ブリッジ回路C1に対して直列に接続されている。したがって、第1電流計A1は、第1ブリッジ回路C1における第1抵抗線パターンRa,Rb,Rc,Rdの合成抵抗に応じた電流値を計測する。具体的には、電源電圧をVoとし、第1抵抗線パターンRa,Rb,Rc,Rdの合成抵抗をRc1とすると、第1電流計A1の計測値I1は、I1=Vo/Rc1となる。
【0042】
第1抵抗線パターンRa,Rb,Rc,Rdの個々の抵抗値は、上述したダイヤフラム部221の伸長・収縮に応じて変化する。しかしながら、これらの合成抵抗Rc1は、ダイヤフラム部221の伸長・収縮の影響を受けにくく、温度による変化が支配的となる。したがって、第1電流計A1の計測値I1は、動力伝達装置1の温度に応じて変動する。この第1電流計A1の計測値I1は、本発明における「第1出力値」の一例である。
【0043】
また、この回転角度検出センサS1は、第2電流計A2を有する。
図7に示すように、第2電流計A2は、第2ブリッジ回路C2に対して直列に接続されている。したがって、第2電流計A2は、第2ブリッジ回路C2における第2抵抗線パターンRe,Rf,Rg,Rhの合成抵抗に応じた電流値を計測する。具体的には、電源電圧をVoとし、第2抵抗線パターンRe,Rf,Rg,Rhの合成抵抗をRc2とすると、第2電流計A2の計測値I2は、I2=Vo/Rc2となる。
【0044】
第2抵抗線パターンRe,Rf,Rg,Rhの個々の抵抗値は、上述したダイヤフラム部221の伸長・収縮に応じて変化する。しかしながら、これらの合成抵抗Rc2は、ダイヤフラム部221の伸長・収縮の影響を受けにくく、温度による変化が支配的となる。したがって、第2電流計A2の計測値I2は、動力伝達装置1の温度に応じて変動する。この第2電流計A2の計測値I2は、本発明における「第1出力値」の一例である。
【0045】
<2−3.トルク検出センサについて>
トルク検出センサS2は、ダイヤフラム部221の歪みに基づいて、フレックスギア20にかかるトルクを検出するセンサである。
図4に示すように、トルク検出センサS2は、第3抵抗線パターンR3と、第4抵抗線パターンR4とを含む。
【0046】
第3抵抗線パターンR3は、1本の導体がジグザグに曲折しながら周方向に延びる、全体として円弧状または円環状のパターンである。本実施形態では、中心軸9の周囲の約360°の範囲に、第3抵抗線パターンR3が設けられている。また、第3抵抗線パターンR3は、複数の第3抵抗線r3を含む。複数の第3抵抗線r3は、互いに略平行な姿勢で、周方向に配列される。各第3抵抗線r3は、フレックスギア20の半径方向に対して、周方向一方側に傾斜している。半径方向に対する第3抵抗線r3の傾斜角度は、例えば45°とされる。周方向に隣り合う第3抵抗線r3の端部同士は、半径方向の内側または外側で交互に接続される。これにより、複数の第3抵抗線r3が、全体として直列に接続される。
【0047】
第4抵抗線パターンR4は、1本の導体がジグザグに曲折しながら周方向に延びる、全体として円弧状または円環状のパターンである。第4抵抗線パターンR4は、第3抵抗線パターンR3よりも、半径方向内側に位置する。本実施形態では、中心軸9の周囲の約360°の範囲に、第4抵抗線パターンR4が設けられている。また、第4抵抗線パターンR4は、複数の第4抵抗線r4を含む。複数の第4抵抗線r4は、互いに略平行な姿勢で、周方向に配列される。各第4抵抗線r4は、フレックスギア20の半径方向に対して、周方向他方側に傾斜している。半径方向に対する第4抵抗線r4の傾斜角度は、例えば45°とされる。周方向に隣り合う第4抵抗線r4の端部同士は、半径方向の内側または外側で交互に接続される。これにより、複数の第4抵抗線r4が、全体として直列に接続される。
【0048】
図9は、第3抵抗線パターンR3および第4抵抗線パターンR4を含む第3ブリッジ回路C3の回路図である。
図9に示すように、本実施形態の第3ブリッジ回路C3は、第3抵抗線パターンR3、第4抵抗線パターンR4、および2つの固定抵抗Rsを含む。第3抵抗線パターンR3と第4抵抗線パターンR4とは、直列に接続される。2つ固定抵抗Rsは、直列に接続される。そして、電源電圧の+極と−極との間において、2つ抵抗線パターンR3,R4の列と、2つの固定抵抗Rsの列とが、並列に接続される。また、第3抵抗線パターンR3および第4抵抗線パターンR4の中点M1と、2つの固定抵抗Rsの中点M2とが、第3電圧計V3に接続される。
【0049】
第3抵抗線パターンR3および第4抵抗線パターンR4の各抵抗値は、フレックスギア20にかかるトルクに応じて変化する。例えば、フレックスギア20に、中心軸9を中心として、周方向の一方側へ向かうトルクがかかると、第3抵抗線パターンR3の抵抗値が低下し、第4抵抗線パターンR4の抵抗値が増加する。一方、フレックスギア20に、中心軸9を中心として、周方向の他方側へ向かうトルクがかかると、第3抵抗線パターンR3の抵抗値が増加し、第4抵抗線パターンR4の抵抗値が低下する。このように、第3抵抗線パターンR3と第4抵抗線パターンR4とは、トルクに対して互いに逆向きの抵抗値変化を示す。
【0050】
そして、第3抵抗線パターンR3および第4抵抗線パターンR4の各抵抗値が変化すると、第3抵抗線パターンR3および第4抵抗線パターンR4の中点M1と、2つの固定抵抗Rsの中点M2との間の電位差が変化するので、第3電圧計V3の計測値v3が変化する。したがって、この第3電圧計V3の計測値v3に基づいて、フレックスギア20にかかるトルクの向きおよび大きさを検出することができる。
【0051】
また、このトルク検出センサS2は、第3電流計A3を有する。
図9に示すように、第3電流計A3は、第3ブリッジ回路C3に対して直列に接続されている。したがって、第3電流計A3は、第3ブリッジ回路C3における第3抵抗線パターンR3、第4抵抗線パターンR4、および2つの固定抵抗Rsの合成抵抗に応じた電流値を計測する。具体的には、電源電圧をVoとし、第3抵抗線パターンR3、第4抵抗線パターンR4、および2つの固定抵抗Rsの合成抵抗をRc3とすると、第3電流計A3の計測値I3は、I3=Vo/Rc3となる。
【0052】
第3抵抗線パターンR3および第4抵抗線パターンR4の個々の抵抗値は、フレックスギア20にかかるトルクに応じて変化する。しかしながら、第3抵抗線パターンR3、第4抵抗線パターンR4、および2つの固定抵抗Rsの合成抵抗Rc3は、フレックスギア20にかかるトルクの影響を受けにくく、温度による変化が支配的となる。したがって、第3電流計A3の計測値I3は、動力伝達装置1の温度に応じて変動する。この第3電流計A3の計測値I3は、本発明における「第1出力値」の一例である。
【0053】
<2−4.リップル補正について>
動力伝達装置1の駆動時には、フレックスギア20に、周期的な撓み変形が生じる。したがって、上述した第3電圧計V3の計測値v3には、本来計測したいトルクを反映した成分と、フレックスギア20の周期的な撓み変形に起因する誤差成分(リップル)とが含まれる。当該誤差成分は、フレックスギア20に入力される回転運動の回転角度に応じて変化する。
【0054】
そこで、信号処理回路46は、第3電圧計V3の計測値から、上記の誤差成分をキャンセルするための補正処理を行う。
図10は、信号処理回路46の当該補正処理を、概念的に示した図である。
図10のように、信号処理回路46には、第1電圧計V1、第2電圧計V2、および第3電圧計V3の各計測値v1,v2,v3が入力される。信号処理回路46は、まず、第1電圧計V1および第2電圧計V2の計測値v1,v2に基づいて、フレックスギア20に入力される回転運動の回転角度を検出する。そして、検出された回転角度に応じて、上述した誤差成分を推定する。その後、第3電圧計V3の計測値v3を、推定された誤差成分を用いて補正する。その結果、フレックスギア20にかかるトルクを、より精度よく出力することができる。
【0055】
なお、信号処理回路46は、上述した回転角度を演算することなく、第1電圧計V1および第2電圧計V2の各計測値v1,v2に所定の係数をかけて、第3電圧計V3の計測値v3に合成してもよい。このようにすれば、回転角度の演算にかかる処理負担が削減されるため、信号処理回路46の演算速度を向上させることができる。
【0056】
<2−5.温度補正について>
上述の通り、導体層44の材料に、銅または銅を含む合金を用いると、センサ基板40の材料費を抑えることができる。ただし、他の高価な材料と比べて、銅の抵抗値は、環境温度により変化しやすい。そこで、本実施形態のセンサ基板40は、温度の影響を補正するために、温度センサS3を備えている。
図4に示すように、温度センサS3は、フレックスギア20の周方向に沿って、円弧状または円環状に延びる第5抵抗線パターンR5を有する。
【0057】
図11は、第5抵抗線パターンR5を含む検出回路C4の回路図である。
図11に示すように、第5抵抗線パターンR5の一端は、電源電圧の+極に接続されている。また、第5抵抗線パターンR5の他端は、電源電圧の−極に接続されている。また、温度センサS3は、第4電流計A4を有する。
図11に示すように、第4電流計A4は、第5抵抗線パターンR5に対して直列に接続されている。したがって、第4電流計A4は、第5抵抗線パターンR5の抵抗値に応じた電流値を計測する。具体的には、電源電圧をVoとすると、第4電流計A4の計測値I4は、I4=Vo/R5となる。
【0058】
第5抵抗線パターンR5は、円弧状または円環状であるため、第5抵抗線パターンR5の抵抗値は、フレックスギア20にかかるトルクの影響を受けにくく、温度による変化が支配的となる。したがって、第4電流計A4の計測値I4は、動力伝達装置1の温度に応じて変動する。この第4電流計A4の計測値I4は、本発明における「第2出力値」の一例である。
【0059】
信号処理回路46は、第3電圧計V3の計測値v3を、上記の回転角度だけではなく、第4電流計A4の計測値I4も考慮して、補正する。具体的には、第3電圧計V3の計測値v3を、温度による変化をキャンセルする方向に増加または減少させる。このようにすれば、安価な銅または銅合金を使用しつつ、温度変化の影響を抑制して、フレックスギア20にかかるトルクを、より精度よく検出できる。
【0060】
温度センサS3の第5抵抗線パターンR5は、中心軸9を中心とする円弧状または円環状である。このため、動力伝達装置1の駆動時に、第5抵抗線パターンR5に対して応力が掛かりにくい。したがって、第5抵抗線パターンR5は、他の抵抗線パターンR1〜R4に比べて、断線等の故障が発生しにくい。
【0061】
図13のようなフルブリッジ回路につき、電圧計の計測値に対して温度補正を行うことを考える。
図13のフルブリッジ回路と直列に接続された、第5電流計A5の計測値を、計測値I5とする。第3電圧計V3の計測値v3に対して上記のような温度補正をするために、第4電流計A4の計測値I4ではなく、第5電流計A5の計測値I5に基づいて温度補正をしてもよい。計測値I4に基づいて温度補正をする場合では、温度センサS3の検出回路C4が含んでいる第5抵抗線パターンR5の位置は、回転角度検出センサS1やトルク検出センサS2が含む抵抗線パターンの位置とは異なる。温度センサS3に比べて、回転角度検出センサS1やトルク検出センサS2の方が抵抗線が長くなり、自己発熱が高くなる。これらのことから、計測値I4に関わる抵抗線と、補正の対象である計測値v3に関わる抵抗線とで温度差が発生する。それに対し、計測値I5に基づいて温度補正をする場合では、第3電圧計V3と接続されているブリッジ回路C3の電流の計測値I5に基づき、温度を検出することができる。したがって、計測値I5に関わる抵抗線と、補正の対象である計測値v3に関わる抵抗線との温度差は、無くなる。よって、温度補正の精度をより高くすることができる。
【0062】
温度補正の方法としては、例えば、(温度補正後の電圧値)=(温度補正前の電圧値)+f(電流値)とし、温度による電圧値の変化をキャンセルする方向に増加または減少させればよい。本実施形態の場合、例えば電圧値を計測値v3、電流値を計測値I5とすればいい。f(電流値)とは、温度により変化する変数である電流値と、温度補正係数とを含む式である。温度補正係数を求めるには、例えばセンサ基板40がフレックスギア20のダイヤフラム部221に固定された状態でトルク検出センサS2を恒温槽に入れ、電源電圧を一定として、かつ動力伝達装置1の駆動による負荷がかかっていない状態でトルク検出センサS2の温度を変化させて、そのときの計測値I5と計測値v3を測定する。そして、温度ごとに測定した計測値I5、計測値v3の組を元に、計測値I5、計測値v3についての近似式を算出し、その近似式の係数を使えばよい。近似式とは、例えば、測定データの回帰分析を行い、計測値I5と計測値v3との方程式を導けばよい。回帰分析とは、例えば最小二乗法を用いて係数を求めればよい。例えば、計測値v3をy、計測値I5をx、aとbとcとを定数として、y=a(x^2)+bx+cの形で近似式を求め、aとbの値を温度補正係数とすればよい。そして、動力伝達装置1の駆動時に、yを温度補正後の計測値v3、xを計測値I5、cを温度補正前の計測値v3とすればよい。
【0063】
図12は、ブリッジ回路と直列に接続された電流計の計測値に基づいて温度補正をする方法について、温度補正の流れを示したフローチャートである。信号処理回路46は温度補正係数を取得する。温度補正係数は、例えば上述の方法により求めることができる。そして、動力伝達装置1を駆動する。次に、動力伝達装置1の駆動中に、計測値I5と計測値v3を測定する。そして、計測値v3に対し、計測値I5と温度補正係数とを元にして、計測値v3を温度補正する。そして、温度補正された計測値v3に基づいて、フレックスギア20にかかるトルクの向きおよび大きさの検出を行い、出力する。
【0064】
上記のように、ブリッジ回路と直列に接続された電流計の計測値に基づいて温度補正をする方法は、銅、アルミニウム、金、銀といった比抵抗が小さい材料で抵抗線パターンを製作した場合に好適である。また、第1電圧計V1の計測値v1に対して、第1電流計A1の計測値I1に基づいて温度補正をしてもよい。第2電圧計V2の計測値v2に対して、第2電流計A2の計測値I2に基づいて温度補正をしてもよい。また、
図9のように、ブリッジ回路C3がフルブリッジ回路ではなくハーフブリッジ回路である場合でも、ブリッジ回路と直列に電流計を接続し、上述のような温度補正をしてもよい。
【0065】
<2−6.故障検出について>
続いて、上述した回転角度検出センサS1およびトルク検出センサS2において、抵抗線パターンの断線等の故障が発生したときに、その故障を検出する機能について、説明する。
図1、
図3、および
図4に示すように、センサ基板40の信号処理回路46は、故障検出部51と電気的に接続されている。故障検出部51は、CPU等のプロセッサや各種のメモリを備えたコンピュータ、または電気回路基板により構成される。本実施形態では、センサ基板40と故障検出部51とで、故障検出機能付きのセンサシステム50が構成されている。
【0066】
図14は、故障検出部51の入出力を概念的に示した図である。
図14に示すように、故障検出部51には、センサ基板40の信号処理回路46から、上述した第1電流計A1の計測値I1、第2電流計A2の計測値I2、第3電流計A3の計測値I3、および第4電流計A4の計測値I4が入力される。故障検出部51は、これらの計測値I1,I2,I3,I4に基づいて、回転角度検出センサS1およびトルク検出センサS2が故障しているか否かの検出結果を出力する。
【0067】
図15は、故障検出部51における故障検出処理の流れを示したフローチャートである。故障検出部51は、まず、「第1出力値」である第1電流計A1の計測値I1と、「第2出力値」である第4電流計A4の計測値I4とを比較する(ステップST1)。
【0068】
図16は、計測値I1,I4の変化を示したグラフである。故障が発生していないときには、
図16中の時間T1のように、計測値I1,I4は、いずれも、動力伝達装置1の温度変化に対して、同様に変化する。したがって、故障が発生していないときには、計測値I1,I4は、相関のある変化を示す。ただし、上述の通り、温度センサS3の第5抵抗線パターンR5は、角の無い円弧状または円環状であるため、断線等の故障が発生しにくいのに対し、回転角度検出センサS1の4つの第1抵抗線パターンR1(Ra,Rb,Rc,Rd)は、複雑な形状であるため、断線等の故障が発生する可能性が比較的大きい。そのような故障が発生すると、
図16中の時間T2のように、計測値I1の値が大きく変化する。
【0069】
故障検出部51は、ステップST1において、計測値I1,I4の関係が、所定の正常範囲内である場合には(ステップST1:yes)、回転角度検出センサS1の4つの第1抵抗線パターンR1(Ra,Rb,Rc,Rd)に、断線等の故障は発生していないと判定する(ステップST2)。一方、計測値I1,I4の関係が、所定の正常範囲から外れた場合には(ステップST1:no)、回転角度検出センサS1の4つの第1抵抗線パターンR1(Ra,Rb,Rc,Rd)のいずれかに、断線等の故障が発生したと判定する(ステップST3)。計測値I1,I4の関係は、例えば、計測値I1,I4の差分または計測値I1,I4の比率とすればよい。
【0070】
次に、故障検出部51は、「第1出力値」である第2電流計A2の計測値I2と、「第2出力値」である第4電流計A4の計測値I4とを比較する(ステップST4)。そして、計測値I2,I4の関係が、所定の正常範囲内である場合には(ステップST4:yes)、回転角度検出センサS1の4つの第2抵抗線パターンR2(Re,Rf,Rg,Rh)に、断線等の故障は発生していないと判定する(ステップST5)。一方、計測値I2,I4の関係が、所定の正常範囲から外れた場合には(ステップST4:no)、回転角度検出センサS1の4つの第2抵抗線パターンR2(Re,Rf,Rg,Rh)のいずれかに、断線等の故障が発生したと判定する(ステップST6)。計測値I2,I4の関係は、例えば、計測値I2,I4の差分または計測値I2,I4の比率とすればよい。
【0071】
続いて、故障検出部51は、「第1出力値」である第3電流計A3の計測値I3と、「第2出力値」である第4電流計A4の計測値I4とを比較する(ステップST7)。そして、計測値I3,I4の関係が、所定の正常範囲内である場合には(ステップST7:yes)、トルク検出センサS2の第3抵抗線パターンR3および第4抵抗線パターンR4に、断線等の故障は発生していないと判定する(ステップST8)。一方、計測値I3,I4の関係が、所定の正常範囲から外れた場合には(ステップST7:no)、トルク検出センサS2の第3抵抗線パターンR3または第4抵抗線パターンR4に、断線等の故障が発生したと判定する(ステップST9)。計測値I3,I4の関係は、例えば、計測値I3,I4の差分または計測値I3,I4の比率とすればよい。
【0072】
その後、故障検出部51は、故障の有無に関する検出結果を出力する(ステップST10)。具体的には、故障検出部51から外部のコントローラへ、検出結果を示す信号を出力する。検出結果は、故障検出部51またはコントローラが有する表示部に表示されてもよい。
【0073】
以上のように、このセンサシステム50では、故障検出部51は、「第1センサ」である回転角度検出センサS1およびトルク検出センサS2から、温度に応じて変動する「第1出力値」である計測値I1,I2,I3を取得する。また、故障検出部51は、「第1センサ」とは計測対象が異なる「第2センサ」である温度センサS3から、温度に応じて変動する「第2出力値」である計測値I4を取得する。そして、「第1出力値」である計測値I1,I2,I3と、「第2出力値」である計測値I4との関係が、所定の正常範囲内であるか否かに基づいて、回転角度検出センサS1およびトルク検出センサS2の故障を検出する。
【0074】
このようにすれば、計測値I1,I2,I3が温度に応じた通常の変化とは異なる変化を示した場合に、その計測値に対応するセンサの故障を検出できる。したがって、同一の計測対象に対して2つのセンサを設けることなく、各センサの故障を検出できる。すなわち、フレックスギア20の同一の箇所に、2つの回転角度検出センサS1を設けることなく、回転角度検出センサS1の故障を検出できる。また、フレックスギア20の同一の箇所に、2つのトルク検出センサS2を設けることなく、トルク検出センサS2の故障を検出できる。
【0075】
<3.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態には限定されない。
【0076】
上記の実施形態では、回転角度検出センサS1の故障検出処理(ステップST1〜ST6)を実行した後に、トルク検出センサS2の故障検出処理(ステップST7〜ST9)を実行していた。しかしながら、これらの故障検出処理の順序は逆であってもよい。また、回転角度検出センサS1の故障検出処理(ステップST1〜ST6)と、トルク検出センサS2の故障検出処理(ステップST7〜ST9)とが、同時に並行して実行されてもよい。
【0077】
また、上記の実施形態のセンサ基板40は、回転角度検出センサS1およびトルク検出センサS2を備えていた。しかしながら、センサ基板40は、回転角度検出センサS1およびトルク検出センサS2のいずれか一方のみを備えていてもよい。その場合、「第1センサ」は、回転角度検出センサS1およびトルク検出センサS2のいずれか一方のみであってもよい。また、「第1センサ」は、温度に応じて変動する第1出力値を出力可能な他のセンサであってもよい。
【0078】
また、上記の実施形態では、センサ基板40に搭載された温度センサS3を「第2センサ」としていた。しかしながら、「第2センサ」は、温度に応じて変動する第2出力値を出力可能な他のセンサであってもよい。例えば、センサ基板40とは異なる位置に配置された熱電対等の温度センサを、「第2センサ」としてもよい。
【0079】
また、回転角度検出センサS1を「第1センサ」とし、トルク検出センサS2を「第2センサ」としてもよい。その場合、回転角度検出センサS1から出力される第1出力値と、トルク検出センサS2から出力される第2出力値との関係が、所定の正常範囲内であるか否かに基づいて、回転角度検出センサS1およびトルク検出センサS2のいずれか一方が故障していることを、検出できる。
【0080】
また、上記の実施形態では、「第1出力値」および「第2出力値」として、電流計の計測値を使用していた。すなわち、上記の実施形態の故障検出処理では、電源電圧Voを一定とし、温度による抵抗値の変動を反映した電流値同士を比較していた。しかしながら、電流値を一定とし、温度による抵抗値の変動を反映した電圧値同士を比較してもよい。例えば、温度センサS3の検出回路C4は、
図17のように、定電流源47に、第5抵抗線パターンR5を直列に接続し、第5抵抗線パターンに電圧計V4を並列に接続した回路であってもよい。そして、電圧計V4の計測値を「第2出力値」としてもよい。また、故障検出部51は、電流値または電圧値に所定の係数を掛けて温度推定値を算出し、算出された温度推定値同士を比較してもよい。
【0081】
また、上記の実施形態では、信号処理回路46が、センサ基板40に搭載されていた。しかしながら、信号処理回路46は、センサ基板40の外部に設けられていてもよい。例えば、故障検出部51を構成するコンピュータまたは電気回路基板に、信号処理回路46が組み込まれていてもよい。
【0082】
また、上記の実施形態では、各抵抗線パターンの材料に、銅または銅を含む合金が使用されていた。しかしながら、抵抗線パターンの材料に、SUS、アルミニウム等の他の金属を用いてもよい。また、抵抗線パターンの材料に、セラミックスや樹脂などの非金属材を用いてもよい。また、抵抗線パターンの材料に、導電性インクを用いてもよい。導電性インクを用いる場合には、センサ基板40の表面に、導電性インクで各抵抗線パターンをプリントすればよい。
【0083】
また、上記の実施形態のフレックスギア20では、ダイヤフラム部221が、筒状部21の基端部から半径方向外側へ向けて広がっていた。しかしながら、ダイヤフラム部221は、筒状部21の基端部から半径方向内側へ向けて広がるものであってもよい。
【0084】
また、上記の実施形態では、センサ基板40が、動力伝達装置1のフレックスギア20に固定されていた。しかしながら、センサ基板40は、フレックスギア20以外の部品に固定されるものであってもよい。
【0085】
その他、センサシステムおよび動力伝達装置の細部の構成については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜に変更してもよい。また、上記の各実施形態および各変形例に登場した要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。