【解決手段】端子10は、固定ハウジングで保持される固定側被保持部12と、可動ハウジングで保持される可動側被保持部14と、固定側被保持部12と可動側被保持部14との間に位置し弾性変形可能な弾性部15と、弾性部15の全長よりも短い信号伝送経路を形成する中継部16,17とを有し、中継部16,17は、弾性部15よりも一端側に寄った位置の部分と他端側に寄った位置の部分とを短絡する。
回路基板へ接続のための接続部が一端側に、相手接続体を接触させるための接触部が他端側に形成された端子と、該端子を保持するハウジングとを有し、該ハウジングが上記端子を介した回路基板への取付けのための固定ハウジングと、該固定ハウジングに対して可動で端子の接触部を配置する可動ハウジングとを有している回路基板用電気コネクタにおいて、
上記端子は、上記固定ハウジングで保持される固定側被保持部と、上記可動ハウジングで保持される可動側被保持部と、該固定側被保持部と該可動側被保持部との間に位置し弾性変形可能な弾性部と、該弾性部の全長よりも短い信号伝送経路を形成する中継部とを有し、
上記中継部は、上記弾性部よりも上記一端側に寄った位置の部分と上記他端側に寄った位置の部分とを短絡し、あるいは上記弾性部の一部についての両端を短絡することを特徴とする回路基板用電気コネクタ。
上記中継部は、上記弾性部よりも上記一端側に寄った位置から、上記弾性部よりも上記他端側に寄った位置へ向けて延びる第一中継片と、上記弾性部よりも上記他端側に寄った位置から、上記弾性部よりも上記一端側に寄った位置へ向けて延びる第二中継片とを有し、上記第一中継片と上記第二中継片とが弾性接触しており、接触状態にある上記第一中継片および上記第二中継片の全長が弾性部の全長よりも短いこととする請求項1に記載の回路基板用電気コネクタ。
上記中継部は、上記弾性部よりも上記一端側に寄った位置から、上記弾性部よりも上記他端側に寄った位置へ向けて延びる弾性片、あるいは上記弾性部よりも上記他端側に寄った位置から、上記弾性部よりも上記一端側に寄った位置へ向けて延びる弾性片を有しており、上記中継部の全長が上記弾性部の全長よりも短いこととする請求項1に記載の回路基板用電気コネクタ。
回路基板へ接続のための接続部が一端側に、相手接続体を接触させるための接触部が他端側に形成された端子と、該端子を保持するハウジングとを有し、該ハウジングが上記端子を介した回路基板への取付けのための固定ハウジングと、該固定ハウジングに対して可動で端子の接触部を配置する可動ハウジングとを有している回路基板用電気コネクタにおいて、
上記端子は、上記固定ハウジングで保持される固定側被保持部と、上記可動ハウジングで保持される可動側被保持部と、該固定側被保持部と該可動側被保持部との間に位置し弾性変形可能な弾性部とを有し、
上記回路基板用電気コネクタは、上記端子とは別部材をなす中継部材を有し、
上記中継部材は、上記弾性部よりも上記一端側に寄った位置および上記弾性部よりも上記他端側に寄った位置の両位置で上記端子に接触することにより、該弾性部の全長よりも短い信号伝送経路を形成し、上記両位置の部分を短絡することを特徴とする回路基板用電気コネクタ。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施形態を説明する。
【0027】
<第一実施形態>
本実施形態に係るプラグコネクタ1は、回路基板(図示せず)の実装面に実装される回路基板用電気コネクタである。また、プラグコネクタ1の相手接続体(相手コネクタ)としてのレセプタクルコネクタ2は、他の回路基板(図示せず)の実装面に実装される回路基板用電気コネクタである。プラグコネクタ1およびレセプタクルコネクタ2は、回路基板の実装面同士が平行となった姿勢で、実装面に対して直角な上下方向(Z軸方向)をコネクタ嵌合接続方向として嵌合接続される。本実施形態では、プラグコネクタ1に対してレセプタクルコネクタ2が上方から嵌合接続されるようになっている。
【0028】
プラグコネクタ1は、回路基板の実装面に対して平行な一方向(本実施形態ではY軸方向)を端子配列方向として配列された複数の金属製のプラグ端子10と、複数のプラグ端子10を保持する電気絶縁材製(例えば樹脂製)のプラグハウジング20と、端子配列方向におけるプラグハウジング20の両端部で保持される金属製のプラグ固定金具50とを有している。
図2(A),(B)および
図3に見られるように、プラグ端子10は二列をなして配列されている。二列のプラグ端子10は、端子配列方向(Y軸方向)および上下方向(Z軸方向)の両方向に対して直角なコネクタ幅方向(X軸方向)で互いに対称な向きで対向している。
【0029】
図4は、プラグ端子10単体の斜視図である。プラグ端子10は、
図4に見られるように、金属板部材を板厚方向で打ち抜いて作られた屈曲部分を有する雄型の端子であり、接続部11と、固定側被保持部12と、接触部13と、可動側被保持部14と、弾性部15と、第一中継片としての固定側中継片16と、第二中継片としての可動側中継片17とを有している。
【0030】
接続部11は、プラグ端子10の一端側でコネクタ幅方向(X軸方向)に延びて形成されており、その下端で回路基板の実装面の対応回路部に半田接続される。固定側被保持部12は、接続部11から上方に延びる基部12Aと、基部12Aのコネクタ幅方向での外側(
図4でのX1側)の位置で該基部12Aから上方へ直状に延びる被保持腕部12Bと、基部12Aからコネクタ幅方向内方(
図4でのX2方向)へ突出し、弾性部15の一端に連結される固定側連結部12Cとを有している。被保持腕部12Bは、コネクタ幅方向で外側(
図4でのX1側)に位置する側縁部(上下方向に延びる縁部)から突出する二つの固定側被保持突起12B−1が形成されている。被保持腕部12Bは、固定ハウジング30の後述の固定側保持部(図示せず)に下方から圧入され、固定側被保持突起12B−1が固定側保持部の内壁面に食い込むことにより固定ハウジング30に保持される。
【0031】
接触部13は、プラグ端子10の他端側にて上下方向で直状に延びて形成されている。接触部13は、端子配列方向(Y軸方向)に対して直角な両方の板面で、後述するレセプタクル端子60の一対の接触片(図示せず)によって挟圧されて、該一対の接触片と接触するようになっている。可動側被保持部14は、接触部13の下端から下方へ向けて延びており、コネクタ幅方向で外側(
図4でのX1側)に位置する側縁部(上下方向に延びる縁部)から突出する二つの可動側被保持突起14Aが形成されている。また、可動側被保持部14は、その下部の上記側縁部からコネクタ幅方向外方(X1方向)へ延び弾性部15の他端に連結される可動側連結部14Bを有している。可動側被保持部14は、固定ハウジング30の後述の底溝部43Aに下方から圧入され、可動側被保持突起14Aが底溝部43Aの内壁面に食い込むことにより固定ハウジング30に保持される。可動側被保持部14は、端子配列方向で基部12Aおよび固定側連結部12Cと同じ位置に設けられている。換言すると、可動側被保持部14、基部12Aおよび固定側連結部12Cは、上方から見て、同一直線(X軸方向に延びる仮想線)上に位置している(
図5(A)参照)。
【0032】
弾性部15は、固定側連結部12Cと可動側連結部14Bとから立ち上がり、全体形状が略M字状をなしている。弾性部15は、固定側の被保持腕部12Bおよび可動側被保持部14よりも細い幅の帯状をなしている。弾性部15は、上部に湾曲形状の二つの屈曲部15A,15Cと下部に湾曲形状の一つの屈曲部15Bを有するとともに、屈曲部15Aと屈曲部15Bを結ぶ内側長腕部15Dそして屈曲部15Cと屈曲部15Bを結ぶ内側短腕部15E、さらには、屈曲部15Aと可動側連結部14Bとを結ぶ外側長腕部15Fそして屈曲部15Cと固定側連結部12Cとを結ぶ外側短腕部15Gを有している。本実施形態では、内側長腕部15Dと外側長腕部15Fとがほぼ同じ長さであり、内側短腕部15Eと外側短腕部15Gとがほぼ同じ長さである。また、内側長腕部15Dおよび外側長腕部15Fは、内側短腕部15Eおよび外側短腕部15Gよりも長いので、
図4に見られるように、屈曲部15Aは屈曲部15Cよりも上方に位置している。
【0033】
弾性部15は、三つの波形部、すなわち屈曲部15Aを上端とする逆U字状の波形部、屈曲部15Bを下端とするU字状の波形部、および屈曲部15Cを上端とする逆U字状の波形部が連結した略M字状をなしている。三つの波形部において、互いに隣接する腕部、すなわち内側長腕部15Dと外側長腕部15F、外側長腕部15Fと内側短腕部15E、内側短腕部15Eと外側短腕部15Gは、屈曲部15A、屈曲部15Bあるいは屈曲部15Cから遠くになるにしたがい波形の開き幅を広くするように傾斜した拡幅部分を形成している。
【0034】
弾性部15は、コネクタ幅方向で互いに隣接する腕部15D,15E,15F,15Gが、屈曲部15A,15B,15Cを支点として、互いの間隔、換言すると上記拡幅部分を広げたり狭めたりするように変位することで弾性変形可能となっている。また、弾性部15は、その板厚方向、すなわち端子配列方向(Y軸方向)においても弾性変形可能であり、また、上下方向(Z軸方向)においても、後述する中継部としての中継片16,17の幅寸法(上下方向での寸法)の範囲であれば弾性変形可能である。本実施形態では、既述したように、弾性部15が略M字状にすることで、弾性部15の全長、すなわち弾性部15を略M字状に沿った全体の長さが大きくなっており、その結果、十分なばね長のもとで弾性部15を弾性変形させることが可能となっている。
【0035】
固定側中継片16は、固定側連結部12Cから延びて後述の固定側基端部16Bへ移行する固定側移行部16Aと、固定側移行部16Aに連結されコネクタ幅方向に延びる固定側基端部16Bと、固定側基端部16Bからコネクタ幅方向内方(
図4でのX2方向)へ延びる固定側弾性片16Cとを有している。
【0036】
固定側移行部16Aは、固定側連結部12Cの下縁で屈曲されて端子配列方向で固定側基端部16B側(
図4でのY2側)へ延びており、固定側基端部16Bの下縁に連結されている。固定側基端部16Bは、上下方向に対して平行な板面をもちコネクタ幅方向に延びている。固定側弾性片16Cは、上下方向に対して平行な板面をもち、固定側基端部16Bのコネクタ幅方向での内端(
図4でのX2側の端部)から内方(
図4でのX2方向)へ向かうにつれて後述の可動側弾性片17C側(
図4でのY1側)に傾斜するように延びている。固定側弾性片16Cは、その自由端側部分(
図4でのX2側の部分)に、可動側弾性片17Cと弾性接触するための固定側接点部16C−1が、可動側弾性片17C側へ突出するように屈曲形成されている。
【0037】
可動側中継片17は、可動側連結部14Bから延びて後述の可動側基端部17Bへ移行する可動側移行部17Aと、可動側移行部17Aに連結されコネクタ幅方向に延びる可動側基端部17Bと、可動側基端部17Bからコネクタ幅方向外(
図4でのX1方向)へ延びる可動側弾性片17Cとを有している。
【0038】
可動側移行部17Aは、
図4に見られるように、可動側連結部14Bの下縁から略U字状に延びており、可動側基端部17Bの下縁に連結されている。具体的には、可動側移行部17Aは、可動側連結部14Bの下縁から下方へ真っ直ぐ延びてから可動側基端部17B側(
図4でのY1側)へ屈曲されて延び、さらに上方へ屈曲されて延びており、可動側基端部17Bの下縁に連結されている。つまり、可動側移行部17Aは、コネクタ幅方向に見て略U字状をなしている。
【0039】
可動側基端部17Bは、上下方向に対して平行な板面をもちコネクタ幅方向に延びている。可動側弾性片17Cは、上下方向に対して平行な板面をもち、可動側基端部17Bのコネクタ幅方向での外端(
図4でのX1側の端部)から外方(
図4でのX1方向)へ向かうにつれて固定側中継片16の固定側弾性片16C側(
図4でのY2側)に傾斜するように延びている。可動側弾性片17Cは、その自由端側部分(
図4でのX2側の部分)に、固定側弾性片16Cと弾性接触するための可動側接点部17C−1が、固定側弾性片16C側へ突出するように屈曲形成されている。
【0040】
本実施形態では、コネクタ幅方向(X軸方向)でX1側に位置する端子列(
図5(A),(B)にて下半部に位置する端子列)では、端子配列方向(Y軸方向)にて、固定側中継片16はY2側に位置し、可動側中継片17はY1側に位置している(
図5(A),(B)参照)。一方、コネクタ幅方向(X軸方向)でX2側に位置する端子列(
図5(A),(B)にて上半部に位置する端子列)では、端子配列方向(Y軸方向)にて、固定側中継片16はY1側に位置し、可動側中継片17はY2側に位置している(
図5(A),(B)参照)。
【0041】
本実施形態では、固定側中継片16の固定側弾性片16Cと可動側中継片17の可動側弾性片17Cとは、ほぼ同じ長さで形成されており、互いに同じ傾斜角度をもって互いに平行に延びている(
図5(A)をも参照)。固定側中継片16および可動側中継片17(以下、区別する必要がない場合、説明の便宜上、「中継片16,17」と総称する)は、上方から見たときに基部12A、固定側連結部12Cおよび可動側被保持部14を通る直線(X軸方向に延びる仮想線)を超えるようにして延びている(
図5(A)参照)。具体的には、コネクタ幅方向(X軸方向)でX1側に位置する端子列では、固定側中継片16は上記直線に対してY2側からY1側へ向けて延び、可動側中継片17は上記直線に対してY1側からY2側へ向けて延びている。一方、コネクタ幅方向(X軸方向)でX2側に位置する端子列では、固定側中継片16は上記直線に対してY1側からY2側へ向けて延び、可動側中継片17は上記直線に対してY2側からY1側へ向けて延びている。
【0042】
可動ハウジング40が正規位置にある状態、すなわちフローティングしていない状態において、固定側弾性片16Cの固定側接点部16C−1は、可動側弾性片17Cのコネクタ幅方向での内端に寄った位置(可動側基端部17Bに寄った位置)で可動側弾性片17Cの板面(
図4でのY2側の板面)に接圧をもって接触している(
図5(A)をも参照)。一方、可動側弾性片17Cの可動側接点部17C−1は、固定側弾性片16Cのコネクタ幅方向での外端に寄った位置(固定側基端部16Bに寄った位置)で固定側弾性片16Cの板面(
図4でのY1側の板面)に接圧をもって接触している(
図5(A)をも参照)。
【0043】
本実施形態では、互いに接触した状態にある中継片16,17の全長、換言すると、固定側移行部16Aと固定側連結部12Cとの連結位置から可動側移行部17Aと可動側連結部14Bとの連結位置にまでわたる範囲の長さが、弾性部15の全長よりも短くなっている。
【0044】
固定側弾性片16Cと可動側弾性片17Cとが弾性接触することにより、固定側中継片16および可動側中継片17を通る信号伝送経路が、弾性部15を通る信号伝送経路とは別個に形成される。上述したように、接触状態の中継片16,17の全長は弾性部の全長よりも短いので、この中継片16,17によって形成される信号伝送経路は弾性部15の通る信号伝送経路よりも短い。したがって、プラグ端子10で伝送される信号は、弾性部15の全長を通る信号伝送経路よりも、中継片16,17を通る信号伝送経路を流れやすくなる。つまり、中継片16,17は、プラグ端子10において、弾性部15よりも一端側に寄って位置する固定側連結部12Cと、弾性部15よりも他端側に寄って位置する可動側連結部14Bとを短絡している。
【0045】
本実施形態では、十分なばね長をもつ弾性部15によって十分なフローティング量が確保されるとともに、弾性部15とは別個に、弾性部15の全長よりも短い信号伝送経路を中継片16,17によって形成することで、信号の伝送について十分な電気的特性も確保することができる。
【0046】
プラグハウジング20は、端子配列方向(Y軸方向)を長手方向、コネクタ幅方向(X軸方向)を短手方向としており、プラグ端子10を介した回路基板への取付けのための固定ハウジング30と、固定ハウジング30とは別部材として形成され固定ハウジング30に対して可動でプラグ端子10の接触部13を配置する可動ハウジング40とを有している。
【0047】
固定ハウジング30は、端子配列方向に延びる一対の側壁31と、コネクタ幅方向に延び一対の側壁31の端部同士を連結する一対の端壁32とを有し、この一対の側壁31および一対の端壁32によって周壁を形成している。
図1(A),(B)に見られるように、側壁31は端壁32よりも高く形成されている(
図3をも参照)。一対の側壁31および一対の端壁32に囲まれて上下方向に貫通する空間は、下方から可動ハウジング40を収める中央空間33を形成している(
図3をも参照)。
【0048】
側壁31には、プラグ端子10の弾性部15の一部を収容するための固定側収容部31Aが側壁31の内壁面から没入するとともに上下方向に延びて形成されている。固定側収容部31Aは、上下方向で側壁31の上端寄り位置から下端にわたる範囲に延びており、上端が閉塞されているとともに下端が開口している。
図2(A)に見られるように、固定側収容部31Aは、プラグ端子10の弾性部15が自由状態にあるとき、弾性部15の内側短腕部15E、屈曲部15Cおよび外側短腕部15Gを収容している。また、側壁31の下半部は、端子配列方向での全域で外壁面が突出しており、突出壁31Bを形成している。突出壁31Bは、プラグ端子10に対応する位置に、プラグ端子10の被保持腕部12Bを圧入保持する固定側保持部(図示せず)が、上下方向に延びるとともに下方に開口し端子配列方向に対して直角に拡がるスリット状に形成されている。
【0049】
端壁32は、プラグ固定金具50の後述する基部51、端腕部52および中央腕部53を収容するとともに端腕部52を圧入保持する端溝部32A(
図5(A),(B)参照)が、端子配列方向に対して直角に拡がるスリット状に形成されている。
【0050】
本実施形態では、上方から見たときの固定ハウジング30の隅位置では、
図3に見られるように、側壁31の上下方向中間部と端壁32の上半部とが連結されている。この結果、側壁31と端壁32との連結部分の下方には、可動ハウジング40の後述の被規制部45を収容する隅凹部34が形成されている。隅凹部34は、
図3に見られるように、下方へ開口しているとともに、コネクタ幅方向(X軸方向)に貫通している(
図5(A),(B)参照)。隅凹部34を形成する内壁面のうち上下方向に対して直角な内壁面は、可動ハウジング40の被規制部45の上方への移動を規制する上側規制面34Aをなしている。また、隅凹部34を形成する内壁面のうち端子配列方向に対して直角な内壁面(端壁32に形成されている内壁面)は、可動ハウジング40の被規制部45の端子配列方向での移動を規制する端規制面34Bをなしている。
【0051】
可動ハウジング40は、固定ハウジング30の中央空間33の下方から挿入されて配置されており、
図1(A)に見られるように、可動ハウジング40の上端部および後述の被規制部45を除く大部分が固定ハウジング30の中央空間33内に収容されている。端子配列方向に延びる一対の長壁41と、コネクタ幅方向に延び一対の長壁41の端部同士を連結する一対の短壁42と、一対の長壁41および一対の短壁42から成る周壁に囲まれた空間を下方から閉塞する底壁43(
図2(A),(B)参照)と、底壁43から起立して端子配列方向に延びる起立壁44(
図2(A),(B)参照)と、短壁42の下部からコネクタ幅方向外方へ突出する被規制部45とを有している。上記周壁に囲まれ上方へ開口した空間は、レセプタクルコネクタ2の後述する嵌合部72を受け入れるための受入部46をなしている。受入部46は、その略下半部では、上記周壁と起立壁44との間に形成された環状空間をなしている。
【0052】
長壁41は、端子配列範囲を含む範囲で外壁面が没していて、プラグ端子10の弾性部15の一部を収容する可動側収容部41Aが形成されている。可動側収容部41Aは、上下方向で長壁41の上端寄り位置から下端にわたる範囲に延びており、上端が閉塞されているとともに下端が開口している。
図2(A)に見られるように、可動側収容部41Aは、プラグ端子10の弾性部15が自由状態にあるとき、弾性部15の外側長腕部15Fを収容している。
【0053】
短壁42は、
図3に見られるように、該短壁42の略下半部の外側面(コネクタ幅方向に対して直角な面)が突出するとともに上下方向に延びる被規制面41Bをなしている。被規制面41Bは、コネクタ幅方向で固定ハウジング30の側壁31の内壁面に対して間隔をもって対向している。可動ハウジング40は、被規制面41Bと側壁31の上記内壁面(規制面)との間隔の範囲内でコネクタ幅方向に移動可能となっているとともに、被規制面41Bが上記規制面に当接することでそれ以上の移動を規制される。
【0054】
また、
図3に見られるように、短壁42の下部におけるコネクタ幅方向での中央位置には、短壁42の外端面(端子配列方向に対して直角な面)から被規制突部42Aが突出している。被規制突部42Aは、プラグ固定金具50の後述の中央脚部55の上面に対して間隔をもって対向している。可動ハウジング40は、被規制突部42Aとプラグ固定金具50の中央脚部55の上面(規制面)との間隔の範囲内で下方へ向けて移動可能となっているとともに、被規制突部42Aが中央脚部55の上面に当接することでそれ以上の移動を規制される。
【0055】
底壁43は、プラグ端子10の後述の可動側被保持部14を収容して圧入保持する底溝部43A(
図3参照)が、端子配列方向で配列されて形成されている。底溝部43Aは、端子配列方向に対して直角に拡がるスリット状をなし上下方向に貫通するとともに、コネクタ幅方向外方にも開口して可動側収容部41Aに連通している。
【0056】
起立壁44は、
図2(A)に見られるように、プラグ端子10の接触部13の側縁部を収容する内溝部44Aが、起立壁44の側面(コネクタ幅方向に対して直角な面)から没入するとともに上下方向に延びて形成されている。内溝部44Aは、上下方向に貫通しており、その下端で底壁43の底溝部43Aと連通している。
【0057】
被規制部45は、
図3に見られるように、短壁42の下部からコネクタ幅方向外方へ向けて突出している。被規制部45は、角柱状をなし、固定ハウジング30の隅凹部34内に収容されており、上下方向では隅凹部34の上側規制面34Aに対して間隔をもって対向し、端子配列方向では隅凹部34の端規制面34Bに対して間隔をもって対向している。したがって、可動ハウジング40は、上側規制面34Aと被規制部45との間隔の範囲内で上方へ移動可能となっているとともに、被規制部45が上側規制面34Aに当接することでそれ以上の移動を規制される。また、可動ハウジング40は、端規制面34Bと被規制部45との間隔の範囲内で端子配列方向に移動可能となっているとともに、被規制部45が端規制面34Bに当接することでそれ以上の移動を規制される。
【0058】
プラグ固定金具50は、金属板部材を部分的に屈曲することで作られており、
図3に見られるように、コネクタ幅方向に延びる基部51と、コネクタ幅方向での基部51の両端部から上方へ延びる端腕部52と、コネクタ幅方向での基部51の中央部から上方へ延び、端腕部52よりも短い中央腕部53と、コネクタ幅方向での基部51の両端部の下縁で屈曲され端子配列方向外方へ延びる端脚部54と、コネクタ幅方向での基部51の中央部の下縁で屈曲され端子配列方向内方へ延びる中央脚部55とを有している。
【0059】
基部51、端腕部52および中央腕部53は、固定ハウジング30の端壁32に形成されたスリット状の端溝部32A(
図5(A)参照)へ下方から挿入されている。端腕部52の両側縁には複数の突起が形成されており、これらの突起が端溝部32Aの内壁面に喰い込むことにより、プラグ固定金具50は端壁32で圧入保持される。端脚部54はその下面で回路基板の実装面に半田により固定される。
【0060】
中央脚部55は、その先端側部分(端子配列方向での内方に位置する部分)が先細り形状となっており、この先端側部分の上面が可動ハウジング40の被規制突部42Aの下面に対面している(
図5(A),(B)参照)。しがたって、可動ハウジング40が下方へ所定量変位したときに、被規制突部42Aが中央脚部55の上面に当接し、それ以上の変位が規制される。つまり、被規制突部42Aは回路基板の実装面に直接当接することがなく、この結果、回路基板の損傷が防止される。
【0061】
次に、レセプタクルコネクタ2の構成を、
図1および
図2に基づいて説明する。レセプタクルコネクタ2は、回路基板の実装面に対して平行な一方向(
図1および
図2でのY軸方向)を端子配列方向として配列された複数の金属製のレセプタクル端子60と、複数のレセプタクル端子60を保持する電気絶縁材製(例えば樹脂製)のレセプタクルハウジング70と、端子配列方向におけるレセプタクルハウジング70の両端部で保持される金属製のレセプタクル固定金具80とを有している。
図1および
図2に見られるように、レセプタクル端子60は二列をなして配列されている。二列のレセプタクル端子60はコネクタ幅方向で互いに対称な向きで対向している。
【0062】
レセプタクル端子60は、金属板部材を板厚方向に屈曲して作られた雌型の端子であり、回路基板の実装面に対して半田により接続される接続部61が一端側に形成されており、プラグ端子10の接触部13と接触する一対の接触片(図示せず)が他端側に形成されている。接触片は、端子配列方向に対して直角な方向に拡がる板面をもつ帯状片をなしており、その板厚方向(端子配列方向)に弾性変形可能となっている。コネクタ嵌合状態において、一対の接触片は、プラグ端子10の接触部13を挟圧することで該接触部13に接触する。レセプタクル端子60は、後述の端子収容部74に上方(
図1および
図2でのZ1側)から圧入して取り付けられる。
【0063】
レセプタクルハウジング70は、回路基板側(
図1および
図2での上側)に位置するブロック部71と、ブロック部71からプラグコネクタ1への嵌合方向(
図1および
図2での下方)に突出する嵌合部72とを有している。ブロック部71および嵌合部72は端子配列方向を長手方向とする略直方体外形をなしている。
【0064】
ブロック部71には、コネクタ幅方向(X軸方向)での中央域で没入して上方(
図1および
図2でのZ1方向)に開口する没入部71Aが端子配列方向(Y軸方向)に延びて形成されている。ブロック部71の端子配列方向での両端部には、レセプタクル固定金具80を保持するための金具保持溝部(図示せず)が、端子配列方向に対して直角に拡がるスリット状に形成されている。
【0065】
嵌合部72には、コネクタ幅方向(X軸方向)での中央域で没入し下方(
図1および
図2でのZ1方向)に開口する受入部72Aが形成されている。受入部72Aは、
図2(B)に見られるように、コネクタ嵌合状態にてプラグコネクタ1の可動ハウジング40の起立壁44を下方から受け入れるようになっている。また、上下方向でのブロック部71と嵌合部72との間には、
図2(A),(B)にみられるように、両者を隔てる隔壁73が形成されている。
【0066】
レセプタクルハウジング70は、レセプタクル端子60を収容するための端子収容部74が端子配列方向で配列されて形成されている。端子収容部74は、上下方向でレセプタクルハウジング70の全範囲にわたって延びており、上下方向での没入部71Aおよび受入部72Aの範囲ではそれぞれの内壁面に沿って延びる溝部をなし、上下方向での隔壁73の範囲では該隔壁73を貫通する孔部をなしている。
【0067】
レセプタクル固定金具80は、金属板部材を屈曲することで作られており、レセプタクルハウジング70の金具保持溝部(図示せず)へ上方(
図1および
図2でのZ1側)から圧入されて保持されている。レセプタクル固定金具80は、
図1および
図2にみられるように、レセプタクルハウジング70外で、コネクタ幅方向での外方へ延びる固定部81を有しており、その上面(
図1および
図2でのZ1側の板面)で回路基板の実装面に半田により固定される。
【0068】
次に、プラグコネクタ1とレセプタクルコネクタ2との嵌合接続動作について、
図1(A),(B)および
図2(A),(B)に基づいて説明する。
【0069】
まず、プラグコネクタ1とレセプタクルコネクタ2を、それぞれ対応する回路基板(図示せず)の実装面へ半田接続により実装する。すなわち、プラグコネクタ1は、プラグ端子10の接続部11およびプラグ固定金具50の端脚部54が実装面に半田接続され、レセプタクルコネクタ2はレセプタクル端子60の接続部61およびレセプタクル固定金具80の固定部81が実装面に半田接続されることで、それぞれ回路基板へ取り付けられる。
【0070】
次に、
図1(A)および
図2(A)に見られるように、レセプタクルコネクタ2が、嵌合部72を下向きとした姿勢で、プラグコネクタ1の上方に位置するようにもたらされる。しかる後、レセプタクルコネクタ2はそのままの姿勢で降下され、嵌合部72がプラグコネクタ1の可動ハウジング40の受入部46へ進入し可動ハウジング40に嵌合される(
図1(B)、
図2(B)参照)。
【0071】
レセプタクルコネクタ2がプラグコネクタ1に嵌合されると、プラグ端子10の接触部13がレセプタクル端子60の一対の接触片の間に下方から進入する。その結果、レセプタクル端子60が一対の接触片でプラグ端子10の接触部13を挟圧して該接触部13と弾性接触して電気的に導通する。このようにして、プラグコネクタ1とレセプタクルコネクタ2との嵌合接続動作が完了する。
【0072】
本実施形態では、仮に、コネクタ嵌合が開始される直前にてプラグコネクタ1とレセプタクルコネクタ2との相対位置がずれていても、ずれが生じている方向へプラグコネクタ1の可動ハウジング40が固定ハウジング30に対して相対移動(フローティング)することにより、嵌合接続が可能となっている。
【0073】
図5(A),(B)は、プラグコネクタ1の一部(端子配列方向(Y軸方向)でのY1側の部分)について、プラグ端子10の中継片16,17の直上位置における上下方向に対して直角な面(XY平面)での断面を上方から見て示されている。また、
図5(A)は可動ハウジング40が正規位置にある状態、
図5(B)は可動ハウジング40が正規位置からフローティングした状態を示している。
【0074】
図5(A)に見られるように、可動ハウジング40がフローティングしておらず、正規位置にあるときは、既述したように、固定側中継片16の固定側接点部16C−1が、可動側弾性片17Cのコネクタ幅方向での内端に寄った位置(可動側基端部17Bに寄った位置)で可動側弾性片17Cの板面に接圧をもって接触している。一方、可動側中継片17の可動側接点部17C−1は、固定側弾性片16Cのコネクタ幅方向での外端に寄った位置(固定側基端部16Bに寄った位置)で固定側弾性片16Cの板面に接圧をもって接触している。
【0075】
仮に、
図5(A)に示される正規位置から、可動ハウジング40がコネクタ幅方向におけるX1方向かつ端子配列方向でのY2方向へフローティングした場合、X1側のプラグ端子10の端子列(
図5(A)にて下半部に位置する端子列)では、弾性部15(図示せず)が三つの波形部の拡幅部分を狭めるように弾性変形し、X2側のプラグ端子10の端子列(
図5(A)にて上半部に位置する端子列)では、弾性部15が三つの波形部の拡幅部分を拡げるように弾性変形する。
【0076】
その結果、X1側のプラグ端子10の端子列では、可動側中継片17の可動側接点部17C−1が、固定側弾性片16Cの板面に接触したままX2方向(
図5(A)での上方)へスライド移動して、
図5(B)に見られるように、固定側中継片16の固定側基端部16Bの位置に達し、該固定側基端部16Bの板面との接触状態を維持する。また、固定側中継片16の固定側接点部16C−1は、可動側中継片17の可動側基端部17Bの板面に接触した状態となる。このとき、
図5(A)と
図5(B)とを比べると判るように、中継片16,17の弾性変形量(Y軸方向での変形量)は、可動ハウジング40が正規位置にある場合よりも増加している。
【0077】
一方、X2側のプラグ端子10の端子列では、可動側中継片17の可動側接点部17C−1が、固定側弾性片16Cの板面に接触したままX1方向(
図5(A)での下方)へスライド移動して、
図5(B)に見られるように、固定側弾性片16Cの固定側接点部16C−1に寄った位置に達し、その位置で固定側弾性片16Cの板面との接触状態を維持する。また、固定側中継片16の固定側接点部16C−1は、可動側弾性片17Cの可動側接点部17C−1に寄った位置で可動側弾性片17Cの板面に接触した状態となる。このとき、
図5(A)と
図5(B)とを比べると判るように、中継片16,17の弾性変形量(Y軸方向での変形量)は、可動ハウジング40が正規位置にある場合よりも減少している。
【0078】
このように、本実施形態では、可動ハウジング40がフローティングしても、中継片16,17同士の接触状態が維持され、ひいては、中継片16,17を通る信号伝送経路が維持される。
【0079】
本実施形態では、プラグ端子10の中継部は、弾性部15よりも一端側(接続部11側)に寄った位置から、弾性部15よりも他端側(接触部13側)に寄った位置へ向けて延びる第一中継片としての固定側中継片16と、弾性部15よりも他端側に寄った位置から、弾性部15よりも一端側に寄った位置へ向けて延びる第二中継片としての可動側中継片17とを有していたが、中継部の形態はこれに限られず、種々の変形が可能である。
【0080】
プラグ端子の中継部は、変形例として、弾性部よりも一端側に寄った位置から、弾性部よりも他端側に寄った位置へ向けて延びる弾性片として形成されていてもよい。この変形例では、例えば、プラグ端子において、固定側連結部からコネクタ幅方向内方へ延び可動側連結部に弾性接触するような弾性片として形成することができる。また、他の変形例として、弾性部よりも他端側に寄った位置から、弾性部よりも一端側に寄った位置へ向けて延びる弾性片として形成されていてもよい。この変形例では、例えば、プラグ端子において、可動側連結部からコネクタ幅方向外方へ延び固定側連結部に弾性接触するような弾性片として形成することができる。いずれの変形例においても、中継部としての弾性片は、その全長が弾性部の全長よりも短くなるように形成される。
【0081】
<第二実施形態>
第一実施形態では、端子の中継部としての中継片はその板厚方向が回路基板の実装面に対して平行となっており、その板厚方向で弾性変形するようになっていた。第二実施形態では、端子の中継部としての中継片が、回路基板の実装面に対して平行な帯幅をもつ帯板状の弾性部の一部を切り起して形成されていて、その板厚方向で弾性変形するようになっており、この点で、第一実施形態と異なっている。
【0082】
図6(A)は、本実施形態に係るレセプタクルコネクタ101およびその相手接続体(相手コネクタ)としてのプラグコネクタ102について、端子配列方向に対して直角な面での断面を示す斜視断面図である。この
図6(A)では、両コネクタ101,102が嵌合接続状態で示されている。
図6(B)は、
図6(A)のレセプタクルコネクタ101のレセプタクル端子110単体の斜視図である。レセプタクルコネクタ101は回路基板P1の実装面に実装される。プラグコネクタ102は回路基板P2の実装面に実装され、レセプタクルコネクタ101に対して上方から嵌合接続される。また、レセプタクルコネクタ101のレセプタクルハウジング120は、第一実施形態のプラグコネクタ1のプラグハウジング20と同様に、固定ハウジング130と可動ハウジング140とを有しており、可動ハウジング140が固定ハウジング130に対して相対移動(フローティング)可能となっている。
【0083】
本実施形態では、レセプタクルコネクタ101に設けられた後述のレセプタクル端子110の構成を中心に説明し、他の部分については、第一実施形態での対応部分の符号に「100」を加えた符号を付し(例えば、固定ハウジングには符号「130」を付す)、説明を省略する。本実施形態のレセプタクル端子110は、
図6(B)に見られるように、帯板状の金属板部材を板厚方向に屈曲するとともに一部を切り起こして作られた雌型の端子である。レセプタクル端子110は、回路基板P1の実装面に対して平行な端子配列方向(Y軸方向)を帯幅方向として、固定ハウジング130および可動ハウジング140によって保持されている。
【0084】
レセプタクル端子110は、
図6(B)に見られるように、接続部111と、固定側被保持部112と、接触部113と、可動側被保持部114と、固定側連結部115と、可動側連結部116と、弾性部117と、中継片118とを有している。
【0085】
接続部111は、レセプタクル端子110の一端側でコネクタ幅方向(X軸方向)に延びて形成されており、その下面で回路基板P1の実装面の回路部P1A(
図6(A)参照)に半田接続される。固定側被保持部112は、接続部111のコネクタ幅方向での内側(X2側)の端部から上方へ屈曲されて延びている。固定側被保持部112の両側縁部(上下方向に延びる縁部)には上下方向での複数位置に固定側被保持突起112Aが突出して形成されている。固定側連結部115は、固定側被保持部112の上端でコネクタ幅方向での内方へ向けて屈曲して形成されており、固定側被保持部112の上端を弾性部117の一端に連結している。
【0086】
接触部113は、レセプタクル端子110の他端側にて上下方向に延びており、板厚方向(X軸方向)で弾性変形可能となっている。接触部113の上端部には、プラグコネクタ102のプラグ端子160と接触するための接触突部113Aが、コネクタ幅方向での内方(X2方向)へ向けて突出するように屈曲して形成されている。可動側被保持部114は、接触部113の下端から下方へ向けて延びており、その両側縁部(上下方向に延びる縁部)には上下方向での複数位置に可動側被保持突起114Aが突出して形成されている。可動側連結部116は、可動側被保持部114の下端でコネクタ幅方向での外方へ向けて屈曲して形成されており、可動側被保持部114の下端を弾性部117の他端に連結している。
【0087】
弾性部117は、他部よりも幅広になっており、後述の下腕部117A、中間腕部117Bおよび上腕部117Cを有し、端子配列方向に見た全体形状が略Z字状をなしている。下腕部117Aは、固定側連結部115からコネクタ幅方向内方(X2方向)へ向かうにつれて若干下方へ傾斜するように延びている。中間腕部117Bは、下腕部117Aのコネクタ幅方向での内端で折り返されてコネクタ幅方向外方(X1方向)へ向かうにつれて上方へ傾斜するように延びている。上腕部117Cは、中間腕部117Bのコネクタ幅方向での外端で折り返されてコネクタ幅方向内方へ向かうにつれて若干下方へ傾斜するように延びており、可動側連結部116に連結されている。弾性部117は、下腕部117Aと中間腕部117Bとの間隔、および中間腕部117Bと上腕部117Cとの間隔を拡げたり狭めたりして弾性変形可能となっている。
【0088】
弾性部117の長手方向に沿って下腕部117Aと中間腕部117Bとの連結部分を含む範囲には、弾性部117の帯幅方向での中央域で板厚方向に貫通する下側スリット117Dが形成されている。弾性部117の帯幅方向での下側スリット117Dの両側には幅狭の屈曲部117Eが形成されている。また、これと同様に、中間腕部117Bと上腕部117Cとの連結部分を含む範囲にも、上側スリット117Fおよびその両側に位置する二つの幅狭の屈曲部117Gが形成されている。このように、弾性部117に幅狭の屈曲部117Eおよび屈曲部117Gを形成することにより、弾性部117が弾性変形しやすくなっている。
【0089】
中継片118は、中間腕部117Bの長手方向における下側スリット117Dと上側スリット117Fとの間にて、中間腕部117Bレセプタクル端子を帯幅方向中央域で一部を切り起こして形成されている。中継片118は、コネクタ幅方向での中間腕部117Bの内端に寄った位置から、コネクタ幅方向外方へ向かうにつれて下方へ傾斜するように延びる片持ち梁状をなしている。中継片118の自由端側部分には、下方へ向けて突出するように屈曲した中継突部118Aが形成されており、下腕部117Aの上面(板面)に接圧をもって接触している。その結果、レセプタクル端子110に、中継片118を通る信号伝送経路が形成される。この中継片118を通る信号伝送経路は弾性部117の全長よりも短いので、レセプタクル端子110で伝送される信号は、弾性部117の全長を通る信号伝送経路よりも、中継片118を通る信号伝送経路を流れやすくなる。つまり、中継片118はレセプタクル端子110において、弾性部117の一部についての両端を短絡している。
【0090】
本実施形態によれば、第一実施形態と同様に、十分なばね長をもつ弾性部117によって十分なフローティング量が確保されるとともに、弾性部117とは別個に、弾性部117の全長よりも短い信号伝送経路を中継片118によって形成することで、信号の伝送について十分な電気的特性も確保することができる。
【0091】
本実施形態では、可動ハウジング140がフローティングする際、弾性部117の弾性変形により下腕部117Aと中間腕部117Bとの間隔が狭くなると、中継片118の中継突部118Aは下腕部117Aの上面に接触したままコネクタ幅方向外方、すなわち固定側連結部115側へ移動する。また、弾性部117の弾性変形により下腕部117Aと中間腕部117Bとの間隔が広くなると、中継片118の中継突部118Aは下腕部117Aの上面に接触したままコネクタ幅方向内方、すなわち下腕部117Aとの連結部分側へ移動する。このように、可動ハウジング140がフローティングしても、中継片118と下腕部117Aとの接触状態が維持され、ひいては、中継片118を通る信号伝送経路が維持される。
【0092】
本実施形態では、中継片118によって中間腕部117Bと下腕部117Aとを中継する形態について説明したが、これに替えて、例えば、中継片118によって中間腕部と下腕部とを中継するようになっていてもよい。この場合、例えば、中間腕部の一部を切り起こして形成した中継片を上腕部の下面に接触させるような形態とすることができる。
【0093】
<第三実施形態>
第一実施形態では、弾性部の全長よりも短い信号伝送経路を形成するための中継部を端子の一部に設けることとしたが、本実施形態では、弾性部の全長よりも短い信号伝送経路を形成するための中継部材を端子とは別部材として設けており、この点で、第一実施形態と異なっている。
【0094】
図7(A)は、本実施形態に係るプラグコネクタ201およびその相手接続体(相手コネクタ)としてのレセプタクルコネクタ202について、端子配列方向に対して直角な面での断面を示す斜視断面図であり、
図7(B)は、
図7(A)のプラグコネクタ1のプラグ端子210単体の斜視図である。この
図6(A)では、両コネクタ201,202が嵌合接続状態で示されている。プラグコネクタ201とレセプタクルコネクタ202はそれぞれ異なる回路基板(図示せず)の実装面に実装され、レセプタクルコネクタ202がプラグコネクタ201に対して上方から嵌合接続される。また、プラグコネクタ201のプラグハウジング220は、第一実施形態のプラグコネクタ1のプラグハウジング20と同様に、固定ハウジング230と可動ハウジング240とを有しており、可動ハウジング240が固定ハウジング230に対して相対移動(フローティング)可能となっている。
【0095】
本実施形態では、プラグコネクタ201に設けられた後述のプラグ端子210および後述の中継部材290の構成を中心に説明し、他の部分については、第一実施形態での対応部分の符号に「200」を加えた符号を付し(例えば、固定ハウジングには符号「230」を付す)、説明を省略する。
図7(B)に見られるように、本実施形態のプラグ端子210は、第一実施形態のプラグ端子10から、中継片16,17を削除したような形状をなしている。
図7(B)では、プラグ端子210において、プラグ端子10の各部に対応する部分に、プラグ端子10における符号に「200」を加えた符号が付されている。
【0096】
プラグ端子210では、固定側連結部212Cおよび可動側連結部214Bが、プラグ端子10の固定側連結部12Cおよび可動側連結部14Bよりも上下方向での寸法が大きく形成されている。固定側連結部212Cには、板厚方向に貫通する円形状の接触孔部212C−1が形成されている。一方、可動側連結部214Bには、コネクタ幅方向を長手方向とする長方形状の接触凹部214B−1が可動側連結部214Bの両板面で没して形成されている。
【0097】
プラグコネクタ201は、プラグ端子210とは別部材をなす中継部材290を有している。中継部材290は、金属板部材を屈曲して作られており、
図7(B)に見られるように、コネクタ幅方向(X軸方向)に延びる一対の中継片291と、中継片291同士を連結する連結部292とを有している。
【0098】
一対の中継片291は、端子配列方向(Y軸方向)を板厚方向とし、板厚方向に弾性変形可能となっている。各中継片291の長手方向、すなわちコネクタ幅方向での寸法は、プラグ端子210の弾性部215の全長よりも短い。一対の中継片291は、コネクタ幅方向での両端部に、端子配列方向(Y軸方向)で互いに近づくように突出する中継突部291A,291Bが、板厚方向に屈曲されて形成されている。本実施形態では、固定側連結部212C側に位置する一端部の中継突部291Aを「固定側中継突部291A」といい、可動側連結部214B側に位置する他端部の中継突部291Bを「可動側中継突部291B」という。連結部292は、コネクタ幅方向に見て略U字状に屈曲されており、中継片291の下縁同士をコネクタ幅方向での中央域で連結している。
【0099】
中継部材290は、一対の固定側中継突部291Aの間に固定側連結部212Cを進入させるとともに、一対の可動側中継突部291Bの間に可動側連結部214Bを進入させることによりプラグ端子210に取り付けられる(
図7(A)参照)。中継部材290がプラグ端子210に取り付けられた状態において、一対の固定側中継突部291Aは固定側連結部212Cの接触孔部212C−1に両側から進入する。この結果、この一対の固定側中継突部291Aは接触孔部212C−1の周縁部に係止するとともに接触する。一方、一対の可動側中継突部291Bは、可動側連結部214Bの接触凹部214B−1の板面を両側から挟圧する。この結果、この一対の可動側中継突部291Bは接触凹部214B−1の周縁に係止可能になるとともに上記板面と接触する。
【0100】
このように、一対の固定側中継突部291Aが接触孔部212C−1の周縁部と接触するとともに、一対の可動側中継突部291Bが接触凹部214B−1の板面に接触することにより、中継部材290を通る信号伝送経路が形成される。この中継部材290の一対の中継片291を通る信号伝送経路はプラグ端子210の弾性部215の全長よりも短いので、プラグ端子210で伝送される信号は、弾性部215の全長を通る信号伝送経路よりも、一対の中継片291を通る信号伝送経路を流れやすくなる。つまり、中継部材290は、プラグ端子210において、弾性部215よりも一端側に寄って位置する固定側連結部212Cと、弾性部215よりも他端側に寄って位置する可動側連結部214Bとを短絡している。
【0101】
本実施形態によれば、第一実施形態と同様に、十分なばね長をもつ弾性部215によって十分なフローティング量が確保されるとともに、弾性部215とは別個に、弾性部215の全長よりも短い信号伝送経路を中継部材290によって形成することで、信号の伝送について十分な電気的特性も確保することができる。
【0102】
本実施形態では、第一実施形態と同様に、可動ハウジング240がフローティングする際、プラグ端子210の略M字状の弾性部215がそれぞれの拡幅部分をコネクタ幅方向(X軸方向)で拡げたり狭めたりして弾性変形する。また、本実施形態では、中継部材290の可動側中継突部291Bと接触する接触凹部214B−1は、コネクタ幅方向に長い長方形状をなしており、可動側中継突部291Bは、接触凹部214B−1の板面に接触した状態を維持したまま、コネクタ幅方向で接触凹部214B−1の範囲内でスライド移動可能となっている。したがって、可動ハウジング240がフローティングしても、プラグ端子210の弾性変形に応じて可動側中継突部291Bがスライド移動することにより、可動側中継突部291Bと接触凹部214B−1との接触状態が維持され、ひいては、中継部材290を通る信号伝送経路が維持される。
【0103】
<第四実施形態>
第二実施形態では、端子の一部を切り起こして形成された中継部を端子の他部に接触させることとしたが、本実施形態では、端子の一部を切り起こして形成された中継部を回路基板の実装面上のパッドに接触させるようになっており、この点で、第二実施形態と異なっている。
【0104】
図8(A)は、本実施形態に係るレセプタクルコネクタ301およびその相手接続体(相手コネクタ)としてのプラグコネクタ302について、端子配列方向に対して直角な面での断面を示す斜視断面図であり、
図6(B)は、
図6(A)のレセプタクルコネクタ301のレセプタクル端子310単体の斜視図である。この
図6(A)では、両コネクタ301,302が嵌合接続状態で示されている。レセプタクルコネクタ301は回路基板P3の実装面に実装される。プラグコネクタ302は回路基板P4の実装面に実装され、レセプタクルコネクタ301に対して上方から嵌合接続される。また、レセプタクルコネクタ301のレセプタクルハウジング320は、第二実施形態のレセプタクルコネクタ101のレセプタクルハウジング120と同様に、固定ハウジング330と可動ハウジング340とを有しており、可動ハウジング340が固定ハウジング330に対して相対移動(フローティング)可能となっている。
【0105】
本実施形態では、レセプタクルコネクタ301に設けられた後述のレセプタクル端子310の構成を中心に説明し、他の部分については、第二実施形態での対応部分の符号に「200」を加えた符号を付し(例えば、固定ハウジングには符号「330」を付す)、説明を省略する。
図8(A)に見られるように、回路基板P3は実装面上に露呈する回路部P3Aを有している。回路部P3Aは、
図8(B)に見られるように、レセプタクル端子310の後述の接続部311に接触し該接続部311と半田接続される第一パッドP3A−1と、第一パッドP3A−1よりもコネクタ幅方向での内方に位置しレセプタクル端子310の後述の中継接点部317Aに接触する第二パッドP3A−2と、第一パッドP3A−1と第二パッドP3A−2との間でコネクタ幅方向に延び両パッドP3A−1,P3A−2同士を接続する信号伝送部P3A−3とを有している。信号伝送部P3A−3の長手方向、すなわちコネクタ幅方向での寸法は、レセプタクル端子310の後述の弾性部315の全長よりも短い。また、第二パッドP3A−2は、第一パッドP3A−1および信号伝送部P3A−3よりも幅寸法(Y軸方向での寸法)が大きい。
【0106】
図8(B)に見られるように、本実施形態のレセプタクル端子310は、帯板状の金属板部材を板厚方向に屈曲するとともに一部を切り起こして作られた雌型の端子である。レセプタクル端子310は、回路基板P3の実装面に対して平行な端子配列方向(Y軸方向)を帯幅方向として、固定ハウジング330および可動ハウジング340によって保持されている。
【0107】
レセプタクル端子310は、
図8(B)に見られるように、接続部311と、固定側被保持部312と、接触部313と、可動側被保持部314と、弾性部315と、下腕部316と、中継片317とを有している。
【0108】
接続部311は、レセプタクル端子310の一端側でコネクタ幅方向に延びて形成されている。レセプタクルコネクタ301が回路基板P3に実装される際、接続部311は、その下面で回路基板P3の実装面の第一パッドP3A−1に半田接続される。固定側被保持部312は、接続部311のコネクタ幅方向での内端で屈曲されて上方へ延びている。固定側被保持部312の両側縁部(上下方向に延びる縁部)には上下方向での複数位置に固定側被保持突起312Aが突出して形成されている。
【0109】
接触部313は、レセプタクル端子310の他端側にて上下方向に延びており、板厚方向(コネクタ幅方向)で弾性変形可能となっている。レセプタクル端子310の上端部には、プラグコネクタ302のプラグ端子360と接触するための接触突部313Aが、コネクタ幅方向での外方(
図8(B)でのX1方向)へ向けて突出するように屈曲して形成されている。可動側被保持部314は、接触部313の下端から下方へ向けて延びており、その両側縁部(上下方向に延びる縁部)には上下方向での複数位置に可動側被保持突起314Aが突出して形成されている。
【0110】
弾性部315は、固定側被保持部312から上方へ延びる外腕部315Aと、外腕部315Aの上端で屈曲されてコネクタ幅方向内方(
図8(B)でのX2方向)へ向けて延びる移行部315Bと、コネクタ幅方向での移行部315Bの内端で屈曲されて下方へ延びる内腕部315Cとを有しており、端子配列方向に見た全体形状が略逆U字状をなしている。
図8(B)に見られるように、内腕部315Cは外腕部315Aよりも長くなっている。
【0111】
下腕部316は、接続部311よりも若干上方の位置で、内腕部315Cの下端で屈曲されてコネクタ幅方向内方へ向けて延び可動側被保持部314の下端に連結されている。中継片317は、下腕部316の帯幅方向中央域で該下腕部316の一部を切り起こして形成されている。中継片317は、コネクタ幅方向での略中央位置から、コネクタ幅方向外方へ向かうにつれて若干下方へ傾斜するように延びる片持ち梁状をなしている。中継片317の自由端側部分には、下方へ向けて突出するように屈曲した中継接点部317Aが形成されている。
【0112】
レセプタクルコネクタ301が回路基板P3に実装された状態にて、中継接点部317Aは、中継片317の弾性変形状態のもとで、回路基板P3の第二パッドP3A−2に接圧をもって接触している。その結果、レセプタクル端子310に、中継片317および回路基板P3の回路部P3Aを通る信号伝送経路が形成される。この中継片317および回路部P3Aを通る信号伝送経路、すなわち、中継片317、第二パッドP3A−2、信号伝送部P3A−3および第一パッドP3A−1を通る信号伝送経路は弾性部315の全長よりも短い。したがって、レセプタクル端子310で伝送される信号は、弾性部315の全長を通る信号伝送経路よりも、中継片317および回路部P3Aを通る信号伝送経路を流れやすくなる。つまり、中継片317および回路部P3Aは、レセプタクル端子310において、弾性部315よりも他端側に寄った位置する下腕部316の内端側の部分(
図8(A),(B)でのX2側の部分)と、回路部P3Aの第二パッドP3A−2とを短絡している。
【0113】
本実施形態によれば、第二実施形態と同様に、十分なばね長をもつ弾性部315によって十分なフローティング量が確保される。また、弾性部315とは別個に、弾性部315の全長よりも短い信号伝送経路を中継片317および回路部P3Aによって形成することで、信号の伝送について十分な電気的特性も確保することができる。
【0114】
本実施形態では、可動ハウジング340がフローティングする際、弾性部315の弾性変形により弾性部315の外腕部315Aと内腕部315Cとの間隔コネクタ幅方向(X軸方向)で拡げたり狭めたりして弾性変形する。本実施形態では、中継片317の中継接点部317Aは回路基板P3の第二パッドP3A−2の上面に接触したままコネクタ幅方向でスライド移動可能となっている。したがって、可動ハウジング340がフローティングしても、中継片317と第二パッドP3A−2との接触状態が維持され、ひいては、中継片317および回路部P3Aを通る信号伝送経路が維持される。
【0115】
本実施形態では、中継接点部317Aを片持ち梁状の中継片317の自由端側部分に設けることとしたが、中継接点部の形態はこれに限られない。例えば、中継接点部を、レセプタクル端子の下腕部の下面から突出する突起として形成してもよい。
【0116】
第一ないし第四実施形態では、相手接続体としての相手コネクタが回路基板用の電気コネクタであることとしたが、相手コネクタの形態はこれに限られず、例えば、ケーブル用の電気コネクタであってもよい。また、相手接続体が電気コネクタであることは必須ではなく、例えば、本発明に係るコネクタに挿入接続される回路基板であってもよい。