【解決手段】半導体受光素子2Aは、第1導電型の第1半導体層10と、光導波路構造80と、導波路型フォトダイオード構造19と、を備える。光導波路構造80は、光導波層81と、クラッド層82と、を含む。導波路型フォトダイオード構造19は、光導波層81と光結合された光吸収層13と、光吸収層上に、第1導電型の第2半導体層12と、第1導電型もしくはi型の増倍層11と、第2導電型の第3半導体層14と、を含む。光導波層81は、光導波コア層83と、第1半導体層10と光導波コア層83との間に設けられ、第2導電型の、第4半導体層84と、を含む。第4半導体層84は、光導波コア層83と導波路型フォトダイオード構造19との間に延在して第2半導体層12及び増倍層11と接する。
前記導波路型フォトダイオード構造は、前記第1半導体層における前記第2領域と前記光吸収層との間に設けられ、前記第1半導体層よりも低い不純物濃度の第1導電型を有する第5半導体層を含み、
前記第5半導体層は、前記第1半導体層における前記第1領域と前記第4半導体層との間に延在している、
請求項1または請求項2に記載の半導体受光素子。
前記導波路型フォトダイオード構造は、前記第1半導体層における前記第2領域と前記光吸収層との間に設けられ、前記第1半導体層よりも低い不純物濃度の第1導電型を有する第6半導体層を含む、
請求項1または請求項2に記載の半導体受光素子。
前記第4半導体層におけるバンドギャップは、前記光吸収層におけるバンドギャップよりも大きく、且つ、前記第1半導体層におけるバンドギャップと等しいか、もしくは小さい、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の半導体受光素子。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。一実施形態に係る半導体受光素子は、第1導電型を有する第1半導体層と、第1半導体層における第1領域上に設けられた光導波路構造と、第1半導体層における第1領域と隣接する第2領域上に設けられた導波路型フォトダイオード構造と、を備える。光導波路構造は、第1半導体層上に設けられた光導波層と、光導波層上に設けられたクラッド層と、を含む。導波路型フォトダイオード構造は、第1半導体層上に設けられ、第1半導体層よりも低い不純物濃度の第1導電型もしくはi型の導電型を有し、光導波層と光結合された光吸収層と、光吸収層上に設けられ、第1導電型を有する第2半導体層と、第2半導体層上に設けられ、第2半導体層よりも低い不純物濃度の第1導電型もしくはi型の導電型を有する増倍層と、増倍層上に設けられ、第2導電型を有する第3半導体層と、を含む。光導波路構造と導波路型フォトダイオード構造との界面を第1界面とし、第1半導体層と導波路型フォトダイオード構造との界面を第2界面とするとき、第1界面と第2界面との成す角が90°よりも小さい。光導波層は、第1半導体層上に設けられた光導波コア層と、第1半導体層と光導波コア層との間に設けられ、第2導電型を有する第4半導体層と、を含む。第4半導体層は、光導波コア層と導波路型フォトダイオード構造との間に延在して、第1界面において第2半導体層及び増倍層と接する。
【0012】
この半導体受光素子では、導波路型フォトダイオード構造が増倍層及び第2半導体層を含む。増倍層は、第2導電型を有する第3半導体層と光吸収層との間に設けられたキャリア増倍層であって、第2半導体層よりも低い不純物濃度の第1導電型を有するか、またはアンドープである。第2半導体層は、増倍層と光吸収層との間に設けられた電界降下層であって、第1導電型を有する。このように、導波路型フォトダイオード構造が増倍層及び第2半導体層を含むことにより、アバランシェ増倍作用を有する導波路型フォトダイオード構造を好適に実現することができる。また、この半導体受光素子では、光導波路構造と導波路型フォトダイオード構造との界面を第1界面とし、第1半導体層と導波路型フォトダイオード構造との界面を第2界面とするとき、第1界面と第2界面との成す角が90°より小さい。言い換えると、バットジョイント界面が第1半導体層の上面に垂直な方向に対して傾斜している。前述したように、増倍層の側面が同様に傾斜している場合、増倍層の側面付近においては他の部分と比較して空乏化が進まず、空乏化幅が他の部分と比較して狭くなってしまう。これに対し、この半導体受光素子では、第1半導体層と光導波コア層との間に、第2導電型を有する第4半導体層が設けられている。そして、第4半導体層は、光導波コア層と導波路型フォトダイオード構造との間に延在して、第1界面において増倍層及び第2半導体層と接する。この場合、逆バイアス印加時に、増倍層の側面付近の領域に対して第4半導体層からキャリアが補填されるので、増倍層の側面付近の空乏化幅が拡大される。すなわち、この半導体受光素子によれば、増倍層の空乏化幅を中央部分から側面付近にわたって均一に近づけることができるので、増倍層において部分的に最大電界(Emax)が大きくなることを抑制し、エッジブレークダウンを発生しにくくすることができる。
【0013】
上記の半導体受光素子において、第4半導体層における不純物濃度は、第3半導体層における不純物濃度よりも低くてもよい。この構成により、第4半導体層における不純物濃度が第3半導体における不純物濃度以上である場合と比較して、第4半導体層に起因する光学ロスを低減できる。
【0014】
上記の半導体受光素子において、導波路型フォトダイオード構造は、第1半導体層における第2領域と光吸収層との間に設けられ、第1半導体層よりも低い不純物濃度の第1導電型を有する第5半導体層を含み、第5半導体層は、第1半導体層における第1領域と第4半導体層との間に延在していてもよい。この場合、逆バイアス印加時の空乏化領域が光吸収層から第5半導体層まで広がるので、第5半導体層が設けられない場合と比較して静電容量が小さくなり、CR時定数(C:容量、R:抵抗)をより小さくすることができる。その結果、より高速(広帯域)の高周波応答特性を実現することができる。
【0015】
上記の半導体受光素子において、導波路型フォトダイオード構造は、第1半導体層における第2領域と光吸収層との間に設けられ、第1半導体層よりも低い不純物濃度の第1導電型を有する第6半導体層を含んでいてもよい。この場合、第6半導体層の厚さを調整することにより、光導波層の厚さ方向の中心位置と、光吸収層の厚さ方向の中心位置とを互いに精度よく合わせることができる。故に、光吸収層が薄膜化された場合であっても、光吸収層と光導波層とのモードフィールド不整合に起因する結合損失を低減することができる。
【0016】
上記の半導体受光素子は、導波路型フォトダイオード構造に設けられた半導体パッシベーション膜を更に備え、導波路型フォトダイオード構造において、光吸収層、第2半導体層、増倍層、及び第3半導体層は、第1領域と第2領域とが隣接する第1方向に延在するストライプメサ構造体を構成しており、ストライプメサ構造体は、第1方向に延在する一対の第1側面を有し、半導体パッシベーション膜は、一対の第1側面に接していてもよい。この場合、導波路型フォトダイオード構造のうち、ストライプメサ構造体の各第1側面には、第4半導体層が接していない。これにより、導波路伝搬光を高い結合効率で導波路型フォトダイオード構造の側面へ入射させることができる。
【0017】
上記の半導体受光素子において、第4半導体層における不純物濃度は、3×10
16cm
−3以下であってもよい。この場合、逆バイアス印加時の空乏化領域が第4半導体層へ広がり、導波路型フォトダイオード構造の側面電界の増加を抑えることができる。また、光伝搬時に生じる不純物に起因した自由キャリア吸収損失を抑えることができ、光導波路の透過率を向上させることができる。
【0018】
上記の半導体受光素子において、第4半導体層におけるバンドギャップは、光吸収層におけるバンドギャップよりも大きく、且つ、第1半導体層におけるバンドギャップと等しいかもしくは小さくてもよい。この場合、第4半導体層の屈折率は、少なくとも第1半導体層の屈折率と等しいか、それよりも大きくなるため、導波路内の伝搬光の閉じ込め効果を損なうことなく、伝搬光を導波路型フォトダイオード構造の側面へ入射させることができる。
【0019】
別の実施形態に係る半導体受光素子は、第1導電型を有する第1半導体層と、第1半導体層上に設けられ、光を入射させるための第2側面を有するフォトダイオード構造と、フォトダイオード構造に隣接して設けられた第7半導体層と、を備える。フォトダイオード構造は、第1半導体層上に設けられ、第1半導体層よりも低い不純物濃度の第1導電型もしくはi型の導電型を有する光吸収層と、光吸収層上に設けられ、第1導電型を有する第2半導体層と、第2半導体層上に設けられ、第2半導体層よりも低い不純物濃度の第1導電型もしくはi型の導電型を有する増倍層と、増倍層上に設けられ、第2導電型を有する第3半導体層と、を含む。第1半導体層及びフォトダイオード構造の界面を第3界面とするとき、第2側面と第3界面との成す角が90°よりも小さい。第7半導体層は、第2導電型を有し、第2側面において第2半導体層及び増倍層と接する。
【0020】
この半導体受光素子においても、上述した半導体受光素子における導波路型フォトダイオード構造と同様、フォトダイオード構造が増倍層及び第2半導体層を含む。これにより、アバランシェ増倍作用を有するフォトダイオード構造を好適に実現することができる。また、この半導体受光素子では、フォトダイオード構造に隣接して、第2導電型を有する第7半導体層が設けられている。そして、第7半導体層は、第2側面において増倍層及び第2半導体層と接する。この場合においても、逆バイアス印加時に、増倍層の側面付近の領域に対して第7半導体層からキャリアが補填されるので、増倍層の側面付近の空乏化幅が拡大される。すなわち、この半導体受光素子によれば、増倍層の空乏化幅を中央部分から側面付近にわたって均一に近づけることができるので、増倍層において部分的に最大電界(Emax)が大きくなることを抑制し、エッジブレークダウンを発生しにくくすることができる。
【0021】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る半導体受光素子の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明においては、同一要素または同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。なお、以下の説明においてアンドープとは、例えば不純物濃度が1×10
15cm
−3以下といった極めて低い濃度であることをいう。
【0022】
(第1実施形態)
本開示の一実施形態は、高速・大容量光通信システムで使用されるアバランシェフォトダイオード(APD)に関するものであり、導波路型構造による高速・感度性能と高信頼性実現に関するものである。また、デジタルコヒーレント光通信システムで使用される90°ハイブリッド機能がモノリシックに集積された多チャネル集積受光素子に関するものであり、APD構造集積による高感度性能と高信頼性実現に関するものである。
【0023】
図1は、第1実施形態に係る半導体受光素子としての光導波路型受光素子を備える受光デバイスの構成を示す平面図である。
図2は、
図1に示されたII−II線に沿った断面を示している。
図3は、
図2の一部を拡大して示している。
図4は、
図1に示されたIV−IV線に沿った断面を示している。
図5は、
図1に示されたV−V線に沿った断面を示している。なお、
図5では、絶縁膜16,17の図示を省略している。
【0024】
図1に示すように、本実施形態における受光デバイス1Aは、光導波路型受光素子2Aと、信号増幅部3A,3Bとを備えている。光導波路型受光素子2Aは、略矩形状といった平面形状を有しており、例えばInPといった化合物半導体から成る基板上に光導波路が形成されて成る。光導波路型受光素子2Aは、2つの入力ポート4a,4bと、光分岐部(光カプラ)5とを有する。また、光導波路型受光素子2Aは、該基板上に形成された受光素子部6a,6b,6c,6dと、キャパシタ部7a,7b,7c,7dとを更に有する。すなわち、光導波路型受光素子2Aは、光導波路と受光素子部6a,6b,6c,6dとが共通基板上にモノリシックに集積された構造を備えている。
【0025】
光導波路型受光素子2Aは、所定の方向Aに沿って延びる一対の端縁2a,2bを有する。2つの入力ポート4a,4bは、光導波路型受光素子2Aの端縁2a,2bのうち、一方の端縁2aに設けられている。2つの入力ポート4a,4bのうち一方の入力ポート4aには、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying:4位相偏移変調)方式によって変調された4つの信号成分を含む光信号Laが受光デバイス1Aの外部より入力される。また、他方の入力ポート4bには、局部発振光Lbが入力される。入力ポート4a,4bそれぞれは、光導波路部8a,8bそれぞれを介して光分岐部5と光学的に結合されている。なお、光導波路部8a,8bは、屈折率が比較的大きい材料(例えばInGaAsP)から成るコア層と、屈折率が該コア層よりも小さい材料(例えばInP)から成り該コア層を覆うクラッド層とによって好適に構成される。
【0026】
光分岐部5は、90°光ハイブリッドを構成する。すなわち、光分岐部5は、MMI(Multi−Mode Interference:多モード光干渉)カプラによって構成されており、光信号Laと局部発振光Lbとを相互に干渉させることによって、光信号Laを、QPSK方式によって変調された4つの信号成分Lc1,Lc2,Lc3,Lc4それぞれに分岐する。なお、これら4つの信号成分Lc1,Lc2,Lc3,Lc4のうち、信号成分Lc1及びLc2は偏波状態が互いに等しく、同相(In-phase)関係を有する。また、信号成分Lc3及びLc4の偏波状態は、互いに等しく且つ信号成分Lc1及びLc2の偏波状態とは異なっている。信号成分Lc3及びLc4は、直角位相(Quadrature)関係を有する。
【0027】
受光素子部6a,6b,6c,6dは、アバランシェ増倍型のPINフォトダイオードとしての構成を有しており、光導波路型受光素子2Aの端縁2bに沿って、この順で並んで配置されている。受光素子部6a,6b,6c,6dそれぞれは、光導波路部8c,8d,8e,8fそれぞれを介して光分岐部5の4つの出力端と光学的に結合されている。受光素子部6a,6b,6c,6dのカソードには、一定のバイアス電圧が供給される。受光素子部6a,6b,6c,6dそれぞれは、4つの信号成分Lc1,Lc2,Lc3,Lc4それぞれを光分岐部5から受け、これら信号成分Lc1,Lc2,Lc3,Lc4それぞれの光強度に応じた電気信号(光電流)を生成する。光導波路型受光素子2A上には、受光素子部6a,6b,6c,6dのアノードに電気的に接続された信号出力用電極パッド21a,21b,21c,21dが設けられている。信号出力用電極パッド21a,21b,21c,21dは、光導波路型受光素子2Aの端縁2bに沿って、方向Aに沿って並んで設けられている。信号出力用電極パッド21a,21b,21c,21dそれぞれは、ボンディングワイヤ20a,20b,20c,20dそれぞれを介して、信号増幅部3A,3Bの信号入力用電極パッド61a,61b,61c,61dそれぞれと電気的に接続されている。
【0028】
キャパシタ部7a,7b,7c,7dは、半導体からなる下地層、この下地層の上に積層された下部金属層及び上部金属層、及び下部金属層と上部金属層との間に挟まれた絶縁膜(
図2に示す絶縁膜17)によって構成される、いわゆるMIM(Metal−Insulator−Metal)キャパシタである。下部金属層及び上部金属層は、例えばTiW/AuもしくはTi/Au/Ptといった積層構造を有する。キャパシタ部7a,7b,7c,7dそれぞれは、光導波路型受光素子2A上において受光素子部6a,6b,6c,6dそれぞれに対し方向Aに沿って並んで(隣り合って)配置されており、受光素子部6a,6b,6c,6dそれぞれのカソードにバイアス電圧を供給するバイアス配線と、基準電位配線(GND線)との間に電気的に接続される。すなわち、上部金属層に覆われていない下部金属層の部分上には、絶縁膜17に開口が形成されている。該開口から露出した下部金属層上にはバイアス配線42(
図2を参照)が設けられており、下部金属層はバイアス配線42と電気的に接続されている。また、上部金属層上には基準電位(GND)配線が設けられており、上部金属層は基準電位配線と電気的に接続されている。これらのキャパシタ部7a,7b,7c,7dによって、受光素子部6a,6b,6c,6dのカソードと、図示しないバイパスコンデンサとの間のインダクタンス成分を設計的に揃えることができる。
【0029】
キャパシタ部7a,7b,7c,7dそれぞれは、下部金属層に接続されたバイアス電圧側電極パッド22a,22b,22c,22dそれぞれと、上記他方の金属層に接続された基準電位側電極パッド23a,23b,23c,23dそれぞれとを有する。基準電位側電極パッド23a,23b,23c,23dは、方向Aと交差する(例えば直交する)方向Bにおいて、バイアス電圧側電極パッド22a,22b,22c,22dと光導波路型受光素子2Aの端縁2bとの間に配置されている。
【0030】
バイアス電圧側電極パッド22a,22b,22c,22dそれぞれには、ボンディングワイヤ20i,20j,20k,20mそれぞれの一端が接続されている。ボンディングワイヤ20i,20j,20k,20mそれぞれの他端は、図示しないバイアス電圧源と電気的に接続されている。ボンディングワイヤ20i,20j,20k,20mは、受光素子部6a,6b,6c,6dそれぞれにバイアス電圧を供給する配線の一部を構成する。
【0031】
基準電位側電極パッド23a,23b,23c,23dそれぞれには、ボンディングワイヤ20e,20f,20g,20hそれぞれの一端が接続されている。ボンディングワイヤ20e,20f,20g,20hは、ボンディングワイヤ20a,20b,20c,20dに沿って設けられており、ボンディングワイヤ20e,20f,20g,20hそれぞれの他端は、信号増幅部3A,3Bの基準電位用電極パッド62a,62c,62d,62fそれぞれに接続されている。
【0032】
信号増幅部3A及び3Bは、受光素子部6a,6b,6c,6dから出力された電気信号(光電流)を増幅する増幅器(TIA:Trans Impedance Amplifier)である。信号増幅部3Aは、2つの信号入力用電極パッド61a及び61bを有しており、信号入力用電極パッド61a及び61bに入力された電気信号の差動増幅を行って一つの電圧信号を生成する。また、信号増幅部3Bは、2つの信号入力用電極パッド61c及び61dを有しており、信号入力用電極パッド61c及び61dに入力された電気信号の差動増幅を行って一つの電圧信号を生成する。信号入力用電極パッド61a,61b,61c,61dは、光導波路型受光素子2Aの端縁2bに沿って、方向Aにこの順で並んで配置されている。前述したように、信号入力用電極パッド61a,61b,61c,61dそれぞれは、ボンディングワイヤ20a,20b,20c,20dそれぞれを介して信号出力用電極パッド21a,21b,21c,21dそれぞれと電気的に接続されている。
【0033】
また、信号増幅部3Aは、3つの基準電位用電極パッド62a,62b,及び62cを更に有する。基準電位用電極パッド62a,62b,62cは、光導波路型受光素子2Aの端縁2bに沿って、方向Aに沿ってこの順で並んで配置されている。信号入力用電極パッド61aは基準電位用電極パッド62a及び62bの間に配置されており、信号入力用電極パッド61bは基準電位用電極パッド62b及び62cの間に配置されている。同様に、信号増幅部3Bは、3つの基準電位用電極パッド62d,62e,及び62fを更に有する。基準電位用電極パッド62d,62e,62fは、光導波路型受光素子2Aの端縁2bに沿って、方向Aに沿ってこの順で並んで配置されている。上述した信号入力用電極パッド61cは基準電位用電極パッド62d及び62eの間に配置されており、信号入力用電極パッド61dは基準電位用電極パッド62e及び62fの間に配置されている。前述したように、信号増幅部3A,3Bの基準電位用電極パッド62a、62c、62d及び62fそれぞれは、ボンディングワイヤ20e,20f,20g,20hそれぞれを介して基準電位側電極パッド23a,23b,23c,23dそれぞれと電気的に接続されている。
【0034】
図2には4つの受光素子部6a,6b,6c,6dのうち2つの受光素子部6c,6dの断面構造が示されており、
図3には受光素子部6dの断面構造が示されているが、他の受光素子部6a,6bの断面構造もこれらと同様である。
図4には6つの光導波路部8a,8b,8c,8d,8e,8fのうち1つの光導波路部8fの断面構造が示されているが、他の光導波路部8a,8b,8c,8d,8eの断面構造もこれと同様である。
図5には、受光素子部6dと光導波路部8fとの接合部分の断面構造が示されているが、他の接合部分(受光素子部6aと光導波路部8cとの接合部分、受光素子部6bと光導波路部8dとの接合部分、及び受光素子部6cと光導波路部8eとの接合部分)の断面構造もこれと同様である。
【0035】
図5に示すように、受光素子部6a,6b,6c,6d及び光導波路部8c,8d,8e,8fは、共通の基板9上に集積されている。基板9は、例えば半絶縁性のInP基板である。受光素子部6a,6b,6c,6dの断面構造について、受光素子部6dを例に説明する。
図3に示すように、受光素子部6dは、基板9上に設けられた高濃度のn型の導電型(第1導電型)を有する半導体層10と、n型半導体層10の領域D(第2領域、
図5参照)上に設けられた導波路型フォトダイオード構造19とを有する。
【0036】
導波路型フォトダイオード構造19は、n型半導体層10上に設けられた光吸収層13、光吸収層13上に設けられたp型の導電型(第2導電型)を有する半導体層14、及びp型半導体層14上に設けられたp型の導電型を有するコンタクト層15を有する。更に、導波路型フォトダイオード構造19は、光吸収層13とp型半導体層14との間に設けられた増倍層11、及び増倍層11と光吸収層13との間に設けられたn型電界制御層12を有する。n型半導体層10は本実施形態における第1半導体層であり、n型電界制御層12は本実施形態における第2半導体層であり、p型半導体層14は本実施形態における第3半導体層である。
【0037】
n型半導体層10は、n型オーミック電極41(
図3を参照)とオーミック接触を成す。n型半導体層10は、例えばSiドープInP層である。n型半導体層10のSiドーピング濃度は、例えば1×10
17cm
−3以上である。n型半導体層10の厚さは、例えば1μm以上2μm以下である。
【0038】
光吸収層13は、n型半導体層10よりも低い不純物濃度のn型、もしくはi型(アンドープ)の導電型を有する。光吸収層13は、例えばSiドーピング濃度が3×10
16cm
−3以下である低濃度n型InGaAs層、もしくはアンドープInGaAs層である。光吸収層13の厚さは、例えば0.1μm以上0.4μm以下である。p型半導体層14は、例えばZnドープInP層である。p型半導体層14のZnドーピング濃度は、例えば2×10
17cm
−3以上である。p型半導体層14の厚さは、例えば1μm以上2.5μm以下である。p型コンタクト層15は、例えばZnドープInGaAs層である。p型コンタクト層15のZnドーピング濃度は、例えば1×10
18cm
−3以上である。p型コンタクト層15の厚さは、例えば0.1μm以上0.3μm以下である。
【0039】
増倍層11は、ホール注入型のキャリア増倍層であって、n型半導体層10よりも低い不純物濃度のn型、もしくはi型(アンドープ)の導電型を有する。本実施形態において、増倍層11の不純物濃度は、p型半導体層14の不純物濃度よりも低く、且つn型電界制御層12の不純物濃度よりも低い。増倍層11は、例えばアンドープInP層である。増倍層11の厚さは、例えば0.050μm以上0.200μm以下である。
【0040】
n型電界制御層12は、光吸収層13の電界を降下するために設けられる層である。n型電界制御層12は、光吸収層13よりも高い不純物濃度のn型の導電型を有する。n型電界制御層12のバンドギャップは、光吸収層13のバンドギャップよりも大きく、且つ、n型半導体層10におけるバンドギャップと等しいか、もしくは小さい。n型電界制御層12は、例えばSiドープInP層、またはSiドープInAlGaAs層である。n型電界制御層12のSiドーピング濃度は、例えば1×10
18cm
−3以上である。n型電界制御層12の厚さは、例えば0.025μm以上0.100μm以下である。
【0041】
なお、光吸収層13とn型電界制御層12との間に、両層間のヘテロエネルギー障壁(ΔEv,ΔEc)を緩和させる組成グレーデッド(傾斜)層が設けられてもよい。この組成グレーデッド層の導電型は、アンドープか、もしくはSiドーピング濃度が1×10
17cm
−3以下のn型である。また、p型半導体層14とp型コンタクト層15との間に、p型のヘテロ障壁緩和層が設けられてもよい。このヘテロ障壁緩和層は、例えばドーピング濃度が1×10
18cm
−3以上である2層のZnドープInGaAsPからなる。2層それぞれのバンドギャップ波長は、例えば1.1μm及び1.3μmである。
【0042】
受光素子部6dは、導波路型フォトダイオード構造19に設けられた半導体パッシベーション膜18を更に有する。導波路型フォトダイオード構造19において、n型半導体層10の一部、光吸収層13、n型電界制御層12、増倍層11、p型半導体層14、及びp型コンタクト層15は、所定の光導波方向(第1方向)に延びるストライプメサ構造体を構成しており、このストライプメサ構造体は、該光導波方向に延びる一対の側面19a(第1側面)を有する。本実施形態において、光導波方向は、方向Aと交差(直交)する方向Bである(
図1参照)。半導体パッシベーション膜18は、この一対の側面19aのそれぞれにおける全面に接している。半導体パッシベーション膜18は、両側の側面19aにおいて導波路型フォトダイオード構造19を埋め込む埋込領域を構成している。半導体パッシベーション膜18は、例えばアンドープInP、もしくはドーピング濃度が1×10
16cm
−3以下であるZnドープInPといった半絶縁性材料からなる。光導波方向と直交する方向(
図1における方向A)におけるストライプメサ構造体の幅は、例えば1.5μm以上3μm以下である。ストライプメサ構造体の高さは、例えば2μm以上3.5μm以下である。
【0043】
受光素子部6dは、2層の絶縁膜16,17を更に有する。絶縁膜16,17は、ストライプメサ構造体の上面から半導体パッシベーション膜18上にかけて設けられて、これらを覆って保護している。絶縁膜16,17は、例えば絶縁性シリコン化合物(SiN、SiON、またはSiO
2)膜である。また、絶縁膜16,17は、ストライプメサ構造体の上面に開口を有しており、該開口により絶縁膜16,17から露出したp型コンタクト層15の上には、p型オーミック電極31が設けられている。
【0044】
p型オーミック電極31は、例えばAuZnもしくはPtとp型コンタクト層15との合金からなる。そして、p型オーミック電極31上には、配線32が設けられている。配線32は、光導波方向(
図1における方向B)に延びており、p型オーミック電極31と信号出力用電極パッド21dとを電気的に接続する。配線32は例えばTiW/AuもしくはTi/Pt/Auといった積層構造を有しており、信号出力用電極パッド21dは例えばAuメッキによって形成される。
【0045】
絶縁膜16,17は、受光素子部6dのメサ構造から離れたn型半導体層10の上にも、別の開口を有する。該開口により絶縁膜16,17から露出したn型半導体層10の上には、カソードとしてのn型オーミック電極41が設けられている。n型オーミック電極41は、例えばAuGeもしくはAuGeNiとn型半導体層10との合金からなる。そして、n型オーミック電極41上にはバイアス配線42が設けられている。バイアス配線42は、キャパシタ部7dの下部金属層まで延びており、下部金属層とn型オーミック電極41とを電気的に接続している。
【0046】
キャパシタ部7dは、基板9上に順に積層された、絶縁膜16、下部金属層、絶縁膜(層間膜)17、及び上部金属層を有する。キャパシタを構成する上下部の金属層は、例えばTiW/AuもしくはTi/Au/Ptといった積層構造からなる。上部金属層に覆われていない下部金属層の部分上では、絶縁膜17に開口が形成されている。該開口から露出した下部金属層上には、バイアス配線42が設けられている。バイアス配線42は、光導波方向(
図1における方向B)において光導波路型受光素子2Aの端縁2bから遠ざかる向きに延びており、下部金属層とバイアス電圧側電極パッド22dとを電気的に接続する。また、上部金属層上には、基準電位側電極パッド23dに繋がる配線が設けられている。この配線は、光導波方向において光導波路型受光素子2Aの端縁2bに近づく向きに延びており、基準電位側電極パッド23dに接続する。
【0047】
基板9にはビア51が設けられている。ビア51は、金属製の導電材であり、例えばAuメッキである。ビア51は、基板9の表(おもて)面から裏面まで貫通して設けられている。キャパシタ部7dの上部金属層は、基準電位側電極パッド23dを介して、表面側のビア51の一端と電気的に接続されている。裏面側のビア51の他端は、信号増幅部3A及び3Bと共通の基準電位線(GND電位線)に接続される。
【0048】
なお、バイアス配線42、及び基準電位側電極パッド23dに繋がる配線は、例えばTiW/AuもしくはTi/Au/Ptといった積層構造を有する。基準電位側電極パッド23d、バイアス電圧側電極パッド22d、及びビア51は、例えばAuメッキによって形成される。
【0049】
続いて、光導波路部の断面構造について説明する。
図4及び
図5に示すように、光導波路部8fは、基板9上に設けられたn型半導体層10と、n型半導体層10の領域Dと光導波方向(
図1における方向B)に隣接する領域E(第1領域)上に設けられた光導波路構造80とを含んで構成されている。光導波路構造80は、n型半導体層10上に設けられた光導波層81と、光導波層81上に設けられたクラッド層82とを含んで構成されている。
【0050】
n型半導体層10は、受光素子部6dと共通の半導体層であり、光導波路部8fにおいては下部クラッド層として機能する。n型半導体層10は、受光素子部6dにおける基板9上から、光導波路部8fにおける基板9上にわたって設けられている。光導波路部8a,8b,8c,8d,8e,8fにおけるn型半導体層10の組成、ドーピング濃度及び厚さは、受光素子部6dと同じである。
【0051】
図5に示すように、光導波路部8fと受光素子部6dとは互いにバットジョイント結合を成しており、光導波層81と光吸収層13とは互いに接している。これにより、光導波層81と光吸収層13とは互いに光学的に結合されている。バットジョイント界面は、例えばウェットエッチングにより形成される。故に、バットジョイント界面は、n型半導体層10の上面10a(すなわちn型半導体層10と光吸収層13との界面)に垂直な方向に対して傾斜している。言い換えると、光導波路構造80と導波路型フォトダイオード構造19との界面を第1界面C1とし、n型半導体層10の領域Dと導波路型フォトダイオード構造19との界面を第2界面C2とするとき、第1界面C1と第2界面C2との成す角θは90°より小さい。第1界面C1と第2界面C2との成す角θは、例えば25°以上60°以下である。
【0052】
光導波層81は、光導波コア層83と、p型の導電型を有する半導体層84(第4半導体層)とを含んで構成されている。p型半導体層84はn型半導体層10の領域E上に設けられ、光導波コア層83はp型半導体層84上に設けられている。すなわち、p型半導体層84は、n型半導体層10の領域Eと光導波コア層83との間に設けられている。
【0053】
光導波コア層83は、屈折率がn型半導体層10よりも大きく且つn型半導体層10と格子整合できる材料(例えばInGaAsP)からなる。一例では、光導波コア層83のInGaAsPのバンドギャップ波長は1.05μmである。光導波コア層83の厚さは、例えば0.3μm以上0.5μm以下である。
【0054】
p型半導体層84は、屈折率がn型半導体層10よりも大きく且つn型半導体層10と格子整合できる材料からなる。また、p型半導体層84におけるバンドギャップは、光吸収層13におけるバンドギャップよりも大きく、且つ、n型半導体層10におけるバンドギャップと等しいか、もしくは小さい。p型半導体層84の材料は、例えばInGaAsPである。一例では、p型半導体層84のInGaAsPのバンドギャップ波長は光導波コア層83と等しく、例えば1.05μmである。また、p型半導体層84の不純物濃度は、p型半導体層14の不純物濃度よりも低い。p型半導体層84は、例えばZnドーピング濃度が3×10
16cm
−3以下である低濃度p型InGaAsP層である。p型半導体層84のうち、領域E上の部分の厚さは、例えば0.050μm以上0.200μm以下である。
【0055】
p型半導体層84は、光導波コア層83と導波路型フォトダイオード構造19との間に延在している。p型半導体層84は、第1界面C1に沿って導波路型フォトダイオード構造19の側面上を這い上がっており、第1界面C1において、光吸収層13、n型電界制御層12、増倍層11、及びp型半導体層14と接している。p型半導体層84のうち、増倍層11と隣接する部分の厚さは、例えば0.05μm以上0.5μm以下である。
【0056】
クラッド層82は、屈折率が光導波層81よりも小さく且つ光導波層81と格子整合できる材料(例えばアンドープInP)からなる。クラッド層82の厚さは例えば1μm以上3μm以下であり、クラッド層82の上面の高さとp型コンタクト層15の上面の高さとは互いに揃っている。
【0057】
図4に示すように、n型半導体層10の一部、光導波層81、及びクラッド層82は、所定の光導波方向(
図1における方向B)に延びるメサ構造を構成している。n型半導体層10及びクラッド層82と光導波層81との屈折率差、並びにこのメサ構造によって、光導波層81内に光信号が閉じ込められ、光信号を受光素子部6dへ伝搬することができる。なお、このメサ構造の側面及び上面は、2層の絶縁膜16,17に覆われることによって保護されている。
【0058】
以上の構成を備える本実施形態の光導波路型受光素子2Aによって得られる効果について説明する。この光導波路型受光素子2Aでは、導波路型フォトダイオード構造19が増倍層11及びn型電界制御層12を含む。増倍層11は、p型半導体層14と光吸収層13との間に設けられたキャリア増倍層であって、n型電界制御層12よりも低い不純物濃度のp型の導電型を有するか、またはアンドープである。n型電界制御層12は、増倍層11と光吸収層13との間に設けられた電界降下層であって、n型の導電型を有する。このように、導波路型フォトダイオード構造19が増倍層11及びn型電界制御層12を含むことにより、アバランシェ増倍作用を有する導波路型フォトダイオード構造19を好適に実現することができる。
【0059】
ここで、
図6は、比較例としての光導波路型受光素子102の構造を示す断面図であって、
図1のV−V線に対応する断面を示している。
図7は、比較例における空乏化幅及び電界強度を説明するための図である。この光導波路型受光素子102は、光導波路構造80に代えて光導波路構造80Xを備える点において光導波路型受光素子2Aと相違し、その他の点において光導波路型受光素子2Aと同様に構成されている。光導波路構造80Xは、光導波層81Xとクラッド層82とを含んで構成されている。光導波層81Xは、光導波コア層のみからなり、p型半導体層84を有していない。光導波層81Xを構成する光導波コア層は、光導波コア層83と同じ材料(例えばInGaAsP)からなる。また、光導波層81Xを構成する光導波コア層のInGaAsPのバンドギャップ波長は光導波コア層83と等しい。
【0060】
多くの場合、バットジョイント界面はウェットエッチングにより形成されるので順メサ構造となり、基板9の主面に垂直な方向に対してフォトダイオード側に傾斜する。従って、増倍層11の側面もまた、同様に傾斜することとなる。
図7の(a)は、このような場合の増倍層11の側面付近を拡大して示す図である。図中の破線で囲まれた領域は、空乏化された領域を表している。増倍層11の側面11jが傾斜している場合、その傾斜角度に応じて、n型電界制御層12と増倍層11との界面の光導波方向における長さが、光吸収層13と増倍層11との界面の同方向における長さよりも短くなる。故に、逆バイアスを印加する際、増倍層11の側面11j付近の領域において負電荷が不足し、増倍層11の他の部分と比較して空乏化が進まず、当該領域の空乏化幅Wsが、他の部分の空乏化幅Wcと比較して狭くなってしまう。
【0061】
図7の(b)は、厚み方向における電界強度の変化を示す図であって、グラフG11は増倍層11の側面11j付近の電界強度の変化を表し、グラフG12は増倍層11の他の領域における電界強度の変化を表す。
図7の(b)に示すように、上記の空乏化幅Ws,Wcの関係故に、増倍層11の側面11j付近の最大電界Emax1は、増倍層11の他の部分の最大電界Emax2よりも大きくなる。従って、バットジョイント界面においてエッジブレークダウンが発生し易くなり、また、側面11j付近の領域に増倍電流が集中するため信頼性が低下するといった問題が生じる。
【0062】
このような問題に対し、本実施形態の光導波路型受光素子2Aでは、p型半導体層84が、光導波コア層83と導波路型フォトダイオード構造19との間に延在して、第1界面C1において増倍層11及びn型電界制御層12と接している。
図8は、第1実施形態における空乏化幅及び電界強度を説明するための図であり、
図8の(a)は、このような場合の増倍層11の側面付近を拡大して示す図である。図中の破線で囲まれた領域は、空乏化された領域を表している。p型半導体層84が、光導波コア層83と導波路型フォトダイオード構造19との間に延在している場合、逆バイアス印加時に、増倍層11の側面11j付近の領域に対してp型半導体層84からキャリアが補填される。これにより、同図に示されるように、増倍層11の側面11j付近の空乏化幅Wsが拡大される。故に、空乏化幅がバットジョイント界面まで均一に近づき、側面11jの傾斜に起因する空乏化幅のばらつきは低減される。すなわち、本実施形態の光導波路型受光素子2Aによれば、増倍層11の空乏化幅を均一に近づけることができる。
【0063】
図8の(b)は、増倍層11の厚み方向における電界強度の変化を示す図である。本実施形態によれば、増倍層11の側面11j付近の最大電界Emaxは、増倍層11の他の部分の最大電界と同等になる。すなわち、増倍層11において部分的に最大電界Emaxが大きくなることを抑制することができる。従って、エッジブレークダウンを発生しにくくすることができ、また増倍電流の集中による信頼性の低下を回避することができる。
【0064】
また、本実施形態のように、p型半導体層84における不純物濃度は、p型半導体層14における不純物濃度よりも低くてもよい。この構成により、p型半導体層84における不純物濃度がp型半導体層14における不純物濃度以上である場合と比較して、p型半導体層84に起因する光学ロスを低減できる。
【0065】
本実施形態のように、光導波路型受光素子2Aは、導波路型フォトダイオード構造19に設けられた半導体パッシベーション膜18を更に備えていてもよい。導波路型フォトダイオード構造19において、光吸収層13、n型電界制御層12、増倍層11、p型半導体層14は、光導波方向(
図1における方向B)に延在するストライプメサ構造体を構成しており、このストライプメサ構造体は、該光導波方向に延在する一対の側面19aを有していてもよい。半導体パッシベーション膜18は、一対の側面19aに接していてもよい。この場合、導波路型フォトダイオード構造19のうち、ストライプメサ構造体の各側面19aには、p型半導体層84が接していない。これにより、導波路伝搬光を高い結合効率で導波路型フォトダイオード構造19の側面へ入射させることができる。
【0066】
本実施形態のように、p型半導体層84における不純物濃度は、3×10
16cm
−3以下であってもよい。この構成により、逆バイアス印加時の空乏化領域がp型半導体層84へ広がり、導波路型フォトダイオード構造19の側面電界の増加を抑えることができる。また、光伝搬時に生じる不純物に起因した自由キャリア吸収損失を抑えることができ、導波路の透過率を向上させることができる。
【0067】
本実施形態のように、p型半導体層84におけるバンドギャップは、光吸収層13のバンドギャップよりも大きく、且つ、n型半導体層10におけるバンドギャップと等しいか、もしくは小さくてもよい。この構成により、p型半導体層84の屈折率は、少なくともn型半導体層10の屈折率と等しいか、それよりも大きくなるため、導波路内の伝搬光の閉じ込め効果を損なうことなく、導波路型フォトダイオード構造19の側面へ伝搬光を入射させることができる。
【0068】
(第1変形例)
図9は、上記実施形態の第1変形例に係る光導波路型受光素子2Bの構造を示す断面図であって、
図1のV−V線に対応する断面を示している。光導波路型受光素子2Bは、導波路型フォトダイオード構造19に代えて導波路型フォトダイオード構造19Bを備える点において光導波路型受光素子2Aと相違し、その他の点において光導波路型受光素子2Aと同様に構成されている。導波路型フォトダイオード構造19Bは、導波路型フォトダイオード構造19の構成に加えて、バッファ層85(第5半導体層)を更に備えている。
【0069】
バッファ層85は、n型半導体層10と光吸収層13との間に設けられており、n型半導体層10の領域D上から領域E上にわたって延在している。バッファ層85の導電型は、n型半導体層10よりも低い不純物濃度のn型か、またはアンドープである。バッファ層85は例えばSiドープInP層である。バッファ層85のSiドーピング濃度は、例えば1×10
16cm
−3以下である。バッファ層85の厚さは、例えば0.050μm以上0.300μm以下である。光導波路部8fにおいて、バッファ層85は、p型半導体層84とn型半導体層10との間に設けられ、第2の下部クラッド層として機能する。
【0070】
本変形例では、逆バイアス印加時の空乏化領域が光吸収層13からバッファ層85まで広がるので、バッファ層85が設けられない場合と比較して静電容量が小さくなり、CR時定数をより小さくすることができる。その結果、より高速(広帯域)の高周波応答特性を実現することができる。
【0071】
(第2変形例)
図10は、上記実施形態の第2変形例に係る光導波路型受光素子2Cの構造を示す断面図であって、
図1のV−V線に対応する断面を示している。光導波路型受光素子2Cは、導波路型フォトダイオード構造19に代えて導波路型フォトダイオード構造19Cを備える点において光導波路型受光素子2Aと相違し、その他の点において光導波路型受光素子2Aと同様に構成されている。導波路型フォトダイオード構造19Cは、導波路型フォトダイオード構造19の構成に加えて、ヘテロ障壁緩和層86(第6半導体層)を更に備えている。
【0072】
ヘテロ障壁緩和層86は、n型半導体層10の領域Dと光吸収層13との間に設けられており、n型半導体層10の領域E上には延在していない。ヘテロ障壁緩和層86は、n型半導体層10と光吸収層13との間のヘテロエネルギー障壁を緩和するために設けられる。
【0073】
ヘテロ障壁緩和層86の導電型は、n型半導体層10よりも低い不純物濃度のn型か、またはアンドープである。ヘテロ障壁緩和層86のバンドギャップは、光吸収層13のバンドギャップとn型半導体層10のバンドギャップとの間である。本変形例では、ヘテロ障壁緩和層86のバンドギャップは、InGaAsのバンドギャップとInPのバンドギャップとの間である。ヘテロ障壁緩和層86は、例えばSiドープInGaAsP層であり、そのバンドギャップ波長は例えば1.25μmまたは1.40μmである。或いは、ヘテロ障壁緩和層86は、バンドギャップ波長が連続的に変化する組成グレーデッド(傾斜)層であってもよい。ヘテロ障壁緩和層86のSiドーピング濃度は、例えば1×10
17cm
−3以下である。ヘテロ障壁緩和層86の厚さは、例えば0.025μm以上0.100μm以下である。
【0074】
本変形例では、ヘテロ障壁緩和層86の厚さを調整することにより、光導波層81(すなわち、光導波コア層83及びp型半導体層84)の厚さ方向の中心位置と、光吸収層13の厚さ方向の中心位置とを互いに精度よく合わせることができる。故に、光導波路型受光素子2Cの高速化のために光吸収層13が薄膜化された場合であっても、光吸収層13と光導波層81とのモードフィールド不整合に起因する結合損失を低減することができ、高感度化との両立を実現することができる。
【0075】
(第3変形例)
図11は、上記実施形態の第3変形例に係る光導波路型受光素子2Dの構造を示す断面図であって、
図1のV−V線に対応する断面を示している。光導波路型受光素子2Dは、上記実施形態のホール注入型の増倍層11を、電子注入型の増倍層111に変更した構成を備える。なお、以下に説明する点を除いて、光導波路型受光素子2Dの構成は、上記実施形態の光導波路型受光素子2Aと同様である。
【0076】
具体的に説明すると、光導波路型受光素子2Dの受光素子部6dは、基板9上に設けられた高濃度のp型の導電型(第1導電型)を有する半導体層101と、p型半導体層101の領域F(第2領域)上に設けられた導波路型フォトダイオード構造119とを有する。導波路型フォトダイオード構造119は、p型半導体層101上に設けられた光吸収層113、光吸収層113上に設けられたn型の導電型(第2導電型)を有する半導体層114、及びn型半導体層114上に設けられたn型コンタクト層115を有する。更に、導波路型フォトダイオード構造119は、光吸収層113とn型半導体層114との間に設けられた増倍層111、及び増倍層111と光吸収層113との間に設けられたp型電界制御層112を有する。p型半導体層101は本実施形態における第1半導体層であり、p型電界制御層112は本実施形態における第2半導体層であり、n型半導体層114は本実施形態における第3半導体層である。
【0077】
p型半導体層101は、p型オーミック電極(不図示)とオーミック接触を成す。p型半導体層101は、例えばZnドープInP層である。p型半導体層101のZnドーピング濃度は、例えば1×10
18cm
−3以上である。p型半導体層101の厚さは、例えば1μm以上2μm以下である。
【0078】
光吸収層113は、p型半導体層101よりも低い不純物濃度のp型、もしくはi型(アンドープ)の導電型を有する。光吸収層113は、例えばZnドーピング濃度が3×10
16cm
−3以下である低濃度p型InGaAs層、もしくはアンドープInGaAs層である。光吸収層113の厚さは、例えば0.1μm以上0.4μm以下である。n型半導体層114は、例えばSiドープInP層である。n型半導体層114のSiドーピング濃度は、例えば2×10
17cm
−3以上である。n型半導体層114の厚さは、例えば1μm以上2.5μm以下である。n型コンタクト層115は、例えばSiドープInGaAs層である。n型コンタクト層115のSiドーピング濃度は、例えば1×10
18cm
−3以上である。n型コンタクト層115の厚さは、例えば0.1μm以上0.3μm以下である。n型コンタクト層115の上には、n型オーミック電極131が設けられている。
【0079】
増倍層111は、電子注入型のキャリア増倍層であって、p型半導体層101よりも低い不純物濃度のp型、もしくはi型(アンドープ)の導電型を有する。本実施形態において、増倍層111の不純物濃度は、n型半導体層114の不純物濃度よりも低く、且つp型電界制御層112の不純物濃度よりも低い。増倍層111は、例えばZnドープInAlAs層である。増倍層111のZnドーピング濃度は、例えば3×10
16cm
−3以下である。増倍層111の厚さは、例えば0.050μm以上0.200μm以下である。
【0080】
p型電界制御層112は、光吸収層113の電界を降下するために設けられる層である。p型電界制御層112は、光吸収層113よりも高い不純物濃度のp型の導電型を有する。p型電界制御層112のバンドギャップは、光吸収層113のバンドギャップよりも大きく、且つ、p型半導体層101におけるバンドギャップと等しいか、もしくは小さい。p型電界制御層112は、例えばZnドープInP層、またはZnドープInAlGaAs層である。p型電界制御層112のZnドーピング濃度は、例えば1×10
18cm
−3以上である。p型電界制御層112の厚さは、例えば0.025μm以上0.100μm以下である。
【0081】
なお、光吸収層113とp型電界制御層112との間に、両層間のヘテロエネルギー障壁(ΔEv,ΔEc)を緩和させる組成グレーデッド(傾斜)層が設けられてもよい。この組成グレーデッド層の導電型は、アンドープか、もしくはZnドーピング濃度が1×10
17cm
−3以下のp型である。また、n型半導体層114とn型コンタクト層115との間に、n型のヘテロ障壁緩和層が設けられてもよい。このヘテロ障壁緩和層は、例えばドーピング濃度が1×10
18cm
−3以上である2層のSiドープInGaAsPからなる。2層それぞれのバンドギャップ波長は、例えば1.1μm及び1.3μmである。
【0082】
本変形例においても、受光素子部6dは、導波路型フォトダイオード構造119上に設けられた半導体パッシベーション膜18(
図3参照)を更に有する。導波路型フォトダイオード構造119において、p型半導体層101の一部、光吸収層113、p型電界制御層112、増倍層111、n型半導体層114、及びn型コンタクト層115は、所定の光導波方向(第1方向)に延びるストライプメサ構造体を構成しており、このストライプメサ構造体は、該光導波方向に延びる一対の側面(第1側面)を有する。本変形例においても、光導波方向は、方向Aと交差(直交)する方向Bである(
図1参照)。半導体パッシベーション膜18は、この一対の側面のそれぞれにおける全面に接している。つまり、この一対の側面は、側面19aと同様に、半導体パッシベーション膜18からなる埋込領域によって埋め込まれている。
【0083】
n型オーミック電極131は、例えばAuZnもしくはPtとn型コンタクト層115との合金からなる。そして、n型オーミック電極131上には、配線132が設けられている。配線132は、光導波方向に沿って延びており、n型オーミック電極131と信号出力用電極パッド21dとを電気的に接続する。配線132は例えばTiW/AuもしくはTi/Pt/Auといった積層構造を有する。
【0084】
光導波路型受光素子2Dの光導波路部8fは、p型半導体層101と、p型半導体層101の領域Fと光導波方向(
図1における方向B)に隣接する領域G(第2領域)上に設けられた光導波路構造180とを含んで構成されている。p型半導体層101は、受光素子部6dにおける基板9上から、光導波路部8fにおける基板9上にわたって設けられている。p型半導体層101は、光導波路部8fと共通の半導体層であり、光導波路部8fにおいては下部クラッド層として機能する。本変形例においても、光導波路部8a,8b,8c,8d,8e,8fにおけるp型半導体層101の組成、ドーピング濃度及び厚さは、受光素子部6dと同じである。
【0085】
光導波路構造180は、光導波路構造80における光導波層81を光導波層181に変更した構成を備える。光導波層181は、光導波層81におけるp型半導体層84を、n型の導電型を有する半導体層184(第4半導体層)に変更した構成を備える。n型半導体層184は、p型半導体層101の領域G上に設けられ、光導波コア層83はn型半導体層184上に設けられている。すなわち、n型半導体層184は、光導波層81におけるp型半導体層84と同様に、p型半導体層101の領域Gと光導波コア層83との間に設けられている。
【0086】
n型半導体層184は、屈折率がp型半導体層101よりも大きく且つp型半導体層101と格子整合できる材料からなる。また、n型半導体層184におけるバンドギャップは、光吸収層113におけるバンドギャップよりも大きく、且つ、p型半導体層101におけるバンドギャップと等しいか、もしくは小さい。n型半導体層184の材料は、例えばInGaAsPである。一例では、n型半導体層184のInGaAsPのバンドギャップ波長は光導波コア層83と等しく、例えば1.05μmである。また、n型半導体層184の不純物濃度は、n型半導体層114の不純物濃度よりも低い。n型半導体層184は、例えばSiドーピング濃度が3×10
16cm
−3以下である低濃度n型InGaAsP層である。n型半導体層184のうち、領域G上の部分の厚さは、例えば0.050μm以上0.200μm以下である。
【0087】
n型半導体層184は、本実施形態においても、光導波コア層83と導波路型フォトダイオード構造119との間に延在している。n型半導体層184は、第1界面C1に沿って導波路型フォトダイオード構造119の側面上を這い上がっており、第1界面C1において、光吸収層113、p型電界制御層112、増倍層111、及びn型半導体層114と接している。n型半導体層184のうち、増倍層111と隣接する部分の厚さは、例えば0.05μm以上0.5μm以下である。
【0088】
上記実施形態では、ホールのイオン化率(β)が電子のイオン化率(α)よりも大きいホール注入型の増倍層11を例示したが、本変形例のように、αがβよりも大きい電子注入型の増倍層111を備える構成であっても、上記実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0089】
以上、本発明を実施例に基づいて具体的に説明したが、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において変更可能である。上記実施形態では、共通の基板9上に光導波路部8a,8b,8c,8d,8e,8f及び受光素子部6a,6b,6c,6dが集積された構成を例示したが、基板9上に、他のInP系電子デバイス(例えば、ヘテロ接合バイポーラトランジスタ)、キャパシタ及び抵抗を含む光電変換回路が更に集積されてもよい。
【0090】
また、上述した実施形態及び各変形例では、4位相偏移変調(QPSK)や直交振幅変調(QAM,Quadrature Amplitude Modulation)を用いるコヒーレント検波方式で使用される集積受光素子に本発明を適用する場合を示したが、NRZ(Non−Return to Zero)やPAM4(4値パルス振幅変調)といった強度変調信号を直接検波する光導波路型受光素子に本発明を適用してもよい。
【0091】
図12は、そのような光導波路型受光素子の例を示す平面図である。
図12に示す光導波路型受光素子2Eは、半絶縁性の基板9(
図12では不図示)と、基板9上に設けられたn型半導体層10と、n型半導体層10上に設けられた光導波路部8及び受光素子部6とを備える。光導波路部8は、上述した実施形態及び各変形例のうちいずれかの光導波路構造80を有する。受光素子部6は、上述した実施形態及び各変形例のうちいずれかの導波路型フォトダイオード構造19(19B,19C)を有する。更に、この光導波路型受光素子2Eは、上述した増倍層11及びn型電界制御層12を備える。
【0092】
なお、この例では、基準電位側電極パッド23とp型オーミック電極上の配線とが、ワイヤ71を介して電気的に接続されている。また、n型オーミック電極上に設けられたバイアス配線は、光導波路部8及び受光素子部6の両側に設けられた一対のバイアス電圧側電極パッド22e,22fと電気的に接続されている。本変形例においても、上記実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0093】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る半導体受光素子を説明する。
図13は、第2実施形態に係る半導体受光素子2Fの構造を示す断面図である。本実施形態における半導体受光素子が用いられる受光デバイスにおいては、受光素子部が、光導波路部とは独立して、単独で基板9上に設けられている。
図13に示されるように、半導体受光素子2Fは、第1実施形態における光導波路構造80を備えていない。半導体受光素子2Fは、第1実施形態における導波路型フォトダイオード構造19を、フォトダイオード構造19Fに変更した構成を備える。また、半導体受光素子2Fは、フォトダイオード構造19Fに隣接して設けられた半導体層87(第7半導体層)を備える。なお、以下に説明する点を除いて、半導体受光素子2Fは、上記実施形態の光導波路型受光素子2Aと同様に構成されていてよい。
【0094】
フォトダイオード構造19Fは、導波路型フォトダイオード構造19と同様、n型の導電型(第1導電型)を有する半導体層10上に設けられた光吸収層13、光吸収層13上に設けられ、p型の導電型(第2導電型)を有するp型半導体層14、及びp型半導体層14上に設けられたp型コンタクト層15を有する。更に、フォトダイオード構造19Fは、光吸収層13とp型半導体層14との間に設けられた増倍層11、及び増倍層11と光吸収層13との間に設けられたn型電界制御層12を有する。n型半導体層10は本実施形態における第1半導体層であり、n型電界制御層12は本実施形態における第2半導体層であり、p型半導体層14は本実施形態における第3半導体層である。
【0095】
フォトダイオード構造19Fにおいて、光吸収層13、n型電界制御層12、増倍層11、p型半導体層14、及びp型コンタクト層15は、所定の方向(以下では、「光軸方向」という。)に延びるメサ構造を構成している。フォトダイオード構造19Fは、光を入射させるための側面19b(第2側面)を有する。側面19bは、このメサ構造において光軸方向と交差する面である。側面19bは、n型半導体層10の上面(すなわちn型半導体層10と光吸収層13との界面)に垂直な方向に対して傾斜している。言い換えると、n型半導体層10とフォトダイオード構造19Fとの界面を第3界面C3とするとき、側面19bと第3界面C3との成す角θは90°より小さい。
【0096】
半導体層87は、p型の導電型を有し、屈折率がn型半導体層10よりも大きく且つn型半導体層10と格子整合できる材料からなる。p型半導体層87におけるバンドギャップは、光吸収層13におけるバンドギャップよりも大きく、且つ、n型半導体層10におけるバンドギャップと等しいか、もしくは小さい。p型半導体層87の材料は、例えばInGaAsPである。一例では、p型半導体層87のInGaAsPのバンドギャップ波長は1.05μmである。p型半導体層87は、例えばZnドーピング濃度が3×10
16cm
−3以下である低濃度p型InGaAsP層である。p型半導体層87の不純物濃度は、p型半導体層14の不純物濃度よりも低い。
【0097】
p型半導体層87は、フォトダイオード構造19Fの側面19b上に設けられ、側面19bに沿って延在している。p型半導体層87は、導波路型フォトダイオード構造19の側面19b上を這い上がっており、側面19bにおいて、光吸収層13、n型電界制御層12、増倍層11、及びp型半導体層14と接している。p型半導体層87のうち、増倍層11と隣接する部分の厚さは、例えば0.05μm以上0.5μm以下である。
【0098】
上述した第1実施形態では、光導波路構造80と導波路型フォトダイオード構造19とが共通の基板9上に集積された光導波路型受光素子2Aを例示したが、本実施形態に係る半導体受光素子2Fのように、光導波路構造80とは独立して、単独で基板9上に設けられたフォトダイオード構造19Fを備える構成であっても、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0099】
この半導体受光素子2Fにおいても、上述した光導波路型受光素子2Aにおける導波路型フォトダイオード構造19と同様、フォトダイオード構造19Fが増倍層11及びn型電界制御層12を含む。増倍層11は、p型半導体層14と光吸収層13との間に設けられたキャリア増倍層であって、n型半導体層10よりも低い不純物濃度のn型の導電型を有するか、またはアンドープである。n型電界制御層12は、増倍層11と光吸収層13との間に設けられた電界降下層であって、n型の導電型を有する。このように、フォトダイオード構造19Fが増倍層11及びn型電界制御層12を含むことにより、アバランシェ増倍作用を有するフォトダイオード構造19Fを好適に実現することができる。
【0100】
また、この半導体受光素子2Fにおいても、フォトダイオード構造19Fの側面19bが基板9の主面に垂直な方向に対して傾斜している。従って、増倍層11の側面もまた、同様に傾斜することとなる。このため、n型電界制御層12と増倍層11との界面の光導波方向における長さが、光吸収層13と増倍層11との界面の同方向における長さよりも短くなる。故に、逆バイアスを印加する際、増倍層11の側面付近の領域において負電荷が不足し、増倍層11の他の部分と比較して空乏化が進まず、当該領域の空乏化幅Wsが、他の部分の空乏化幅Wcと比較して狭くなってしまう。従って、側面19bにおいてエッジブレークダウンが発生し易くなり、また、増倍層11の側面付近の領域に増倍電流が集中するため信頼性が低下するといった問題が生じる。
【0101】
このような問題に対し、本実施形態の半導体受光素子2Fでは、側面19b上に設けられたp型半導体層87が、側面19bにおいて増倍層11及びn型電界制御層12と接している。この場合においても、逆バイアス印加時に、増倍層11の側面付近の領域に対してp型半導体層87からキャリアが補填される。これにより、増倍層11の側面付近の空乏化幅が拡大される。故に、増倍層11において、空乏化幅が中央部分から側面付近にわたって均一となり、側面の傾斜に起因する空乏化幅のばらつきは生じない。すなわち、本実施形態の半導体受光素子2Fによれば、増倍層11の空乏化幅を均一に近づけることができる。従って、増倍層11において部分的に最大電界(Emax)が大きくなることを抑制し、エッジブレークダウンを発生しにくくすることができ、また増倍電流の集中による信頼性の低下を回避することができる。
【0102】
なお、本実施形態においては、第1導電型がn型であり、第2導電型がp型である構成を例示して説明したが、第1導電型がp型であり、第2導電型がn型であっても、本実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0103】
また、上述した各実施形態及び各変形例を、必要な目的及び効果に応じて互いに組み合わせてもよい。また、各半導体層の具体的な組成は、上記の例示に限定されない。また、上記の例示では、基板9上にn型半導体層10が設けられているが、基板がn型の半導体基板である場合には、n型半導体層10は省略されてもよい。その場合、n型の半導体基板が第1半導体層となり、上記の説明におけるn型半導体層10と他の半導体層との関係は、全てn型の半導体基板と他の半導体層との関係に読み替えられる。