【解決手段】ラジオ放送受信装置を、複数地域のラジオ放送サービスの中から、再生するラジオ放送サービスを選択する選択部と、ラジオ放送受信装置が属する現在地域に関する情報を取得する取得部と、取得部により取得された上記情報に基づいてラジオ放送受信装置が属する現在地域を推定する地域推定部と、選択部により選択されたラジオ放送サービスが地域推定部により推定された現在地域のラジオ放送サービスか否かを判定するサービス判定部と、サービス判定部により、選択部で選択されたラジオ放送サービスが現在地域のラジオ放送サービスでないと判定された場合、選択部で選択されたラジオ放送サービスを現在地域のラジオ放送サービスに切り替える切替部と、を備える構成とする。
複数地域のラジオ放送サービスを含むデジタルラジオ放送信号と、ラジオ放送受信装置が属する現在地域のラジオ放送信号であって、前記デジタルラジオ放送信号と放送フォーマットが異なるサイマル放送のラジオ放送信号を受信可能であり、前記デジタルラジオ放送信号の受信信号品質が劣化すると、前記デジタルラジオ放送信号から前記サイマル放送のラジオ放送信号への再生に切り替える、ラジオ放送受信装置において、
前記複数地域のラジオ放送サービスの中から、再生するラジオ放送サービスを選択する選択部と、
前記ラジオ放送受信装置が属する現在地域に関する情報を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記情報に基づいて前記ラジオ放送受信装置が属する現在地域を推定する地域推定部と、
前記選択部により選択されたラジオ放送サービスが前記地域推定部により推定された現在地域のラジオ放送サービスか否かを判定するサービス判定部と、
前記サービス判定部により、前記選択部で選択されたラジオ放送サービスが現在地域のラジオ放送サービスでないと判定された場合、前記選択部で選択されたラジオ放送サービスを現在地域のラジオ放送サービスに切り替える切替部と、
を備える、
ラジオ放送受信装置。
複数地域のラジオ放送サービスを含むデジタルラジオ放送信号と、ラジオ放送受信装置が属する現在地域のラジオ放送信号であって、前記デジタルラジオ放送信号と放送フォーマットが異なるサイマル放送のラジオ放送信号を受信可能であり、前記デジタルラジオ放送信号の受信信号品質が劣化すると、前記デジタルラジオ放送信号から前記サイマル放送のラジオ放送信号への再生に切り替える、ラジオ放送受信装置が実行するラジオ放送受信方法において、
前記複数地域のラジオ放送サービスの中から、再生するラジオ放送サービスを選択する選択ステップと、
前記ラジオ放送受信装置が属する現在地域に関する情報を取得する取得ステップと、
前記取得ステップにて取得された前記情報に基づいて前記ラジオ放送受信装置が属する現在地域を推定する地域推定ステップと、
前記選択ステップにて選択されたラジオ放送サービスが前記地域推定ステップにて推定された現在地域のラジオ放送サービスか否かを判定するサービス判定ステップと、
前記サービス判定ステップにて、前記選択ステップで選択されたラジオ放送サービスが現在地域のラジオ放送サービスでないと判定された場合、前記選択ステップで選択されたラジオ放送サービスを現在地域のラジオ放送サービスに切り替える切替ステップと、
を含む、
ラジオ放送受信方法。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下においては、本発明の一実施形態として、DABサービスとRDSサイマル放送を受信可能なラジオ放送受信装置を備えるラジオ放送受信システムを例に取り説明する。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係るラジオ放送受信システム1の構成を示すブロック図である。
図1に示されるように、本実施形態に係るラジオ放送受信システム1は、ラジオ放送受信装置10、GPS受信機20、サーバ30、オーディオアンプ40及びスピーカ50を備える。
【0025】
ラジオ放送受信装置10及びGPS受信機20は、同じ車両に設置されており、通信可能に接続される。サーバ30は、車外の遠隔地に設置された情報処理端末である。ラジオ放送受信装置10とサーバ30は、所定のプロトコルに従い、インターネット網等の通信回線網を介して無線により双方向通信可能となっている。ラジオ放送受信装置10は車載された装置に限らず、例えば、スマートフォン、フィーチャフォン、PHS(Personal Handy phone System)、タブレット端末、ノートPC、PDA(Personal Digital Assistant)、PND(Portable Navigation Device)、携帯ゲーム機等の携帯型端末に備えられるものであってもよい。
【0026】
ラジオ放送受信装置10は、DABのアンサンブル信号(複数地域のラジオ放送サービスを含むデジタルラジオ放送信号)と、ラジオ放送受信装置が属する現在地域のラジオ放送信号であって、デジタルラジオ放送信号と放送フォーマットが異なるサイマル放送のラジオ放送信号(RDS信号)を受信可能であり、デジタルラジオ放送信号の受信信号品質が劣化すると、デジタルラジオ放送信号からサイマル放送のラジオ放送信号への再生に切り替えるものである。
【0027】
図1に示されるように、ラジオ放送受信装置10は、MPU(Micro Processing Unit)110、HMI(Human Machine Interface)120、DAB信号処理回路130、RDS信号処理回路140、セレクタ150、フラッシュメモリ160及び通信インタフェース170を備える。ラジオ放送受信装置10(具体的にはセレクタ150)の後段には、オーディオアンプ40及びスピーカ50が接続される。
【0028】
なお、
図1では、本実施形態の説明に必要な主たる構成要素を図示しており、例えばラジオ放送受信装置10として必須な構成要素である筐体など、一部の構成要素については、その図示を適宜省略する。
【0029】
例えば車両にエンジンが掛けられると、図示省略されたバッテリからラジオ放送受信装置10の各回路に電源ラインを通じて電源供給が行われる。MPU110は電源供給後、内部メモリに格納された制御プログラムを読み出してワークエリアにロードし、ロードされた制御プログラムを実行することにより、ラジオ放送受信装置10全体の制御を行う。
【0030】
HMI120は、ユーザとラジオ放送受信装置10とが情報をやり取りするためのインタフェースであり、具体的には、タッチパネルディスプレイ及びその周りに配置されたメカニカルキー、リモートコントローラ等である。MPU110は、HMI120に対する選局操作に従い、DAB信号処理回路130及びRDS信号処理回路140に受信制御信号を出力する。
【0031】
DAB信号処理回路130は、DAB信号の受信処理を行う回路であり、アンテナ131、DAB_RF部132、DAB復調部133及び信号検出部134を備える。
【0032】
アンテナ131は、DAB信号を受信する。DAB_RF部132は、MPU110より入力される受信制御信号に従い、アンテナ131にて受信されたDAB信号からアンサンブル信号を抽出してDAB復調部133に出力する。
【0033】
アンサンブル信号は、概略的には、復調の際にフレーム同期に用いられる同期チャンネル、サービス構成情報等が含まれるFIC(Fast Information Channel)、音声サービスやデータサービスが含まれるMSC(Main Service Channel)で構成される。
【0034】
FICは、FIB(Fast Information Block)で構成されており、SID、EID(Ensemble Identifier)、SCIdS等の各識別子及び該識別子に関連付けられたラベルデータ(例えばラジオ放送サービス名(ラジオ放送番組名)を示すサービスラベル)を含む。FIBは、FIG(Fast Information Group)及びCRC(Cyclic Redundancy Check)を含む。FIGは、その用途によりType 0からType 7の8種類で分類される。
【0035】
FIGには、サービス・リンキング情報が含まれる。サービス・リンキング情報は、DABの何れのSIDとRDSの何れのPIとがリンクしているかを示す情報を含む。MPU110は、このサービス・リンキング情報により、SIDとPIとが一致するラジオ放送に限らず、SIDとPIとが一致しないラジオ放送であっても、現在受信しているDABの放送局と同一内容の番組を放送するRDSの放送局を把握することができる。
【0036】
DAB復調部133は、DAB_RF部132より入力されるアンサンブル信号を復調し、MPU110より入力される受信制御信号に従い、復調されたアンサンブル信号からDABサービスを選択して復調する。この復調処理によって得られた音声信号(以下、「DAB音声信号」と記す。)、表示用データ(サービスラベルを含む。)は、それぞれ、オーディオアンプ40、HMI120に出力される。
【0037】
信号検出部134は、DAB復調部133にてアンサンブル信号が復調されたことによって得られる多重化データを検出したり、エラーレートに基づいて受信信号品質に関する情報(以下、「DAB受信信号品質情報」と記す。)を検出したりする。
【0038】
RDS信号処理回路140は、RDS信号の受信処理を行う回路であり、アンテナ141、RDS_RF部142、RDS復調部143及び信号検出部144を備える。
【0039】
アンテナ141は、RDS信号を受信する。RDS_RF部142は、MPU110より入力される受信制御信号に従い、アンテナ141にて受信されたRDS信号に対する選局処理を行い、選局されたRDSサイマル放送の信号をRDS復調部143に出力する。なお、選局されるRDSサイマル放送は、DABサービスのSIDと同一PIのRDSサイマル放送又はサービス・リンキング情報によってDABサービスのSIDと関連付けられたPIのRDSサイマル放送である。
【0040】
RDS復調部143は、RDS_RF部142より入力されるRDSサイマル放送の信号を音声信号(以下、「RDS音声信号」と記す。)及び文字情報データに復調する。この復調処理によって得られたRDS音声信号、文字情報データは、それぞれ、オーディオアンプ40、HMI120に出力される。
【0041】
RDS信号には、RDSの放送局を識別するためのPI等のデータが多重化されている。信号検出部144は、RDS復調部143によりRDSサイマル放送の信号が復調されたことによって得られる多重化データを検出したり、RDSサイマル放送の受信レベル等に基づいて受信信号品質に関する情報(以下、「RDS受信信号品質情報」と記す。)を検出したりする。
【0042】
MPU110は、セレクタ信号をセレクタ150に出力する。セレクタ150は、MPU110より入力されるセレクタ信号に従い、アンサンブル信号の受信信号品質が劣化した状態にあるとき(例えばアンサンブル信号のエラーレートが所定閾値以上のとき)にはRDS音声信号を出力し、アンサンブル信号の受信信号品質が良好又は改善された状態にあるとき(例えばアンサンブル信号のエラーレートが所定閾値未満のとき)にはDAB音声信号を出力する。セレクタ150より出力される音声信号は、オーディオアンプ40にて増幅されて、スピーカ50より出力再生される。
【0043】
MPU110は、信号検出部134にて検出されたDAB受信信号品質情報に基づいてアンサンブル信号の受信信号品質をチェックするとともに、信号検出部144にて検出されたRDS受信信号品質情報に基づいてRDS信号の受信信号品質をチェックする。これらの受信信号品質は、ラジオ放送受信装置10が設置された車両が受信可能エリアから外れたり建物やトンネル等の遮蔽物の影響を受けたりした場合に劣化する。MPU110は、アンサンブル信号の受信信号品質が劣化すると、セレクタ信号をセレクタ150に出力して、再生される放送を、DABサービスと同一内容の番組を放送するRDSサイマル放送へ切り替える。
【0044】
DABのステーションリストについて説明する。ステーションリストは、アンサンブルラベル、サービスラベル、SID、SCIds、種別(Primary, Secondary)等の各情報を関連付けて保持するリストデータである。
【0045】
例えば、MPU110は、DAB信号処理回路130を制御して、DAB信号を放送する全ての周波数チャンネルをシークする。概説すると、MPU110は、DAB信号処理回路130に受信制御信号を出力して、1つの周波数チャンネルの選局を指示する。DAB信号処理回路130では、MPU110より入力される受信制御信号に従って受信処理が行われる。DAB信号処理回路130にてアンサンブル信号が検出されて復調処理が成功すると、ステーションリスト112の作成に必要なサービス構成情報が得られて、MPU110に出力される。MPU110は、DAB信号処理回路130よりサービス構成情報を取得すると、次の周波数チャンネルの選局をDAB信号処理回路130に指示して、次の周波数チャンネルについても同様にサービス構成情報の取得を試みる。MPU110は、一定時間内にDAB信号処理回路130よりサービス構成情報を取得できなかった場合にも、次の周波数チャンネルの選局をDAB信号処理回路130に指示してサービス構成情報の取得を試みる。MPU110は、このシーク処理を、DAB信号を放送する全ての周波数チャンネルについて行う。
【0046】
MPU110は、DAB信号を放送する全ての周波数チャンネルについてサービス構成情報の取得・取得失敗の結果が得られると、取得されたサービス構成情報に基づいてステーションリスト112を作成し、作成したステーションリスト112をその内部メモリに格納する。
【0047】
図2は、ステーションリスト112の一例を示す。
図2に示されるステーションリスト112は、スイス国内でシーク処理したときに作成されるステーションリストの一例である。なお、
図2では、便宜上、サービスラベルとSIDのみ抜粋して示す。
図2の例では、「SRG SSR D10」というアンサンブル信号のサービス構成情報に基づいて、各地域の系列局「SRF1」が放送するDABサービスがリストされる。例えば、サービスラベル「SRF1 AG SO+」は、アールガウ及びゾロトゥルン地域の地域局が放送するDABサービスを示し、サービスラベル「SRF1 ZH SH+」は、チューリッヒ地域の地域局が放送するDABサービスを示す。各地域の系列局「SRF1」は、全国番組の時間帯には同一内容の番組を放送し、地域番組の時間帯には地域局毎の独自の内容の番組を放送する。
【0048】
ステーションリスト112が保持するサービスラベルは、例えばHMI120のタッチパネルディスプレイ上に表示される。ユーザは、HMI120のタッチパネルディスプレイ上に表示されたステーションリスト112の中から希望するDABサービスをタッチ操作によって選択することができる。ステーションリスト112上のDABサービスが選択操作されると、MPU110は、選択されたDABサービスに関連付けられて記憶されたアンサンブル信号の周波数、EID、SID等に基づいてアンサンブル信号を受信し、受信したアンサンブル信号に含まれる選択局のDABサービスのDAB音声信号をスピーカ50より出力再生させるとともに、このDABサービスの表示用データをタッチパネルディスプレイ上に表示させる。
【0049】
ここで、ラジオ放送受信装置10(言い換えると車両)が属しない別地域のDABサービスがユーザによって選択された場合(
図8Bの事例参照)、
図8Bの事例を用いて説明したように、DABサービスからRDSサイマル放送への切替時に無音状態が発生することが懸念される。なお、
図8Bの事例は、ユーザが別地域のDABサービスをステーションリスト112から選択した場合に限らず、例えばHMI120に設けられたプリセットボタンに対する操作により別地域のDABサービスがプリセットデータから読み出された場合や、ラジオ放送受信装置10の起動時等にMPU110がデフォルトで選択するDABサービス(例えばステーションリスト112の先頭のDABサービス)が別地域のDABサービスである場合にも発生する。
【0050】
MPU110及びHMI120は、複数地域のラジオ放送サービスの中から、再生するラジオ放送サービスを選択する選択部として動作する。
【0051】
ラジオ放送受信装置10は、以下に説明する処理を実行することにより、この無音状態の発生を防ぐように構成されている。
【0052】
[第1実施形態]
図3は、本発明の第1実施形態においてMPU110により実行されるラジオ放送切替処理のフローチャートである。
図3に示されるラジオ放送切替処理は、例えば、アンサンブル信号が受信可能になった時点で開始され、ラジオ放送受信装置10の電源がオフされるまで繰り返し実行される。
【0053】
MPU110は、通信インタフェース170を介してGPS受信機20からラジオ放送受信装置10(言い換えると、車両)の現在位置情報を取得する(ステップS11)。取得される位置情報は、緯度と経度の情報よりなる。なお、ラジオ放送受信装置10とGPS受信機20は、同じ車両内に近接して設置され、且つ一体的に移動する。そのため、ステップS11にて取得される位置情報は、厳密には、GPS受信機20の現在位置を示す情報ではあるが、ラジオ放送受信装置10の現在位置(又は車両の現在位置)を示す情報とみなしても実質的に差し支えない。
【0054】
ステップS11において、MPU110は、ラジオ放送受信装置が属する現在地域に関する情報を取得する取得部として動作する。
【0055】
図4は、フラッシュメモリ160に格納されたデータベース162の一例を示す。
図4に示されるように、データベース162は、サービスラベル、SID、放送地域の各情報を関連付けたデータベースである。放送地域の情報は、例えば、緯度及び経度に基づいて国全域をメッシュで分割した地域メッシュのデータ構造を持つ。各メッシュには、そのメッシュに含まれる緯度と経度が属する放送地域と関連付けられたコードが割り当てられている。
【0056】
フラッシュメモリ160は、デジタルラジオ放送信号に含まれるラジオ放送サービスと、ラジオ放送サービスの放送地域と、を関連付けて保持する第1の保持部として動作する。
【0057】
データベース162は、例えばフラッシュメモリ160に予め格納されたものであってもよく、また、MPU110が通信インタフェース170を介してサーバ30からダウンロードしたものであってもよい。後者の場合、MPU110は、
図3に示されるラジオ放送切替処理の実行時にデータベース162をサーバ30から都度ダウンロードして一時保存してもよく、また、
図3に示されるラジオ放送切替処理の有無に拘わらずデータベース162をサーバ30から定期的にダウンロードして更新保存するようにしてもよい。
【0058】
MPU110は、ステップS11にて取得された現在位置情報を用いてデータベース162を検索し、この現在位置情報が示す位置(すなわち緯度と経度)が属する放送地域をラジオ放送受信装置10が属する現在地域として推定する(ステップS12)。具体的には、MPU110は、データベース162に保持された放送地域の情報の中から、GPS受信機20より取得される経度と緯度が含まれるメッシュに割り当てられたコードを検出し、検出されたコードと関連付けられた放送地域を、ラジオ放送受信装置10が属する現在地域として推定する。
【0059】
ステップS12において、MPU110は、取得部により取得された情報に基づいてラジオ放送受信装置が属する現在地域を推定する地域推定部として動作する。
【0060】
MPU110は、ユーザ操作等(例えばステーションリスト112に対するタッチ操作)によりDABサービスの選択が行われたか否かを判定する(ステップS13)。
【0061】
MPU110は、ステップS13において、DABサービスの選択が行われたと判定すると(ステップS13:YES)、データベース162を参照して、ステップS12にて推定された現在地域と関連付けられたDABサービスのSIDと、ユーザ操作等により選択されたDABサービスのSIDとが一致するか否かを判定する(ステップS14)。MPU110は、DABサービスの選択が行われないと判定すると(ステップS13:NO)、ステップS11の処理に戻る。
【0062】
ステップS14において、MPU110は、選択部により選択されたラジオ放送サービスが地域推定部により推定された現在地域のラジオ放送サービスか否かを判定するサービス判定部として動作する。
【0063】
MPU110は、ステップS14において、両DABサービスのSIDが一致しないと判定すると(ステップS14:NO)、受信可能となった(言い換えると、受信を開始した)アンサンブル信号に複数の放送地域のDABサービスが含まれており、かつこれらが同一内容のDABサービスであるか否かを判定する(ステップS15)。ここでは、同じ系列局のDABサービスを同一内容のDABサービスとみなす。
【0064】
図2に示されるステーションリスト112には、地域コード(すなわち2桁目)以外が共通のSID(具体的には、1桁目、3桁目、4桁目がそれぞれ「4」、「B」、「1」のSID)が割り当てられた同じ系列局のDABサービスが複数リストされる。そのため、ステーションリスト112にリストされた何れかのDABサービスが選択された場合、ステップS15ではYES判定となる。
【0065】
MPU110は、ステップS15において、受信を開始したアンサンブル信号に複数の放送地域のDABサービスが含まれており、かつこれらが同一内容のDABサービスであると判定すると(ステップS15:YES)、ユーザ操作等により選択された選択局のDABサービスを、ステップS12にて推定された現在地域と関連付けられたDABサービスへ切り替える(ステップS16)。但し、ステップS15においてYES判定になったとしても、受信を開始したアンサンブル信号に、ステップS12にて推定された現在地域のDABサービスが含まれていなければ、ステップS16の切替処理が実行されることなく、
図3に示されるラジオ放送切替処理は終了する。
【0066】
ステップS16において、MPU110は、選択部で選択されたラジオ放送サービスを現在地域のラジオ放送サービスに切り替える切替部として動作する。
【0067】
図3に示されるラジオ放送切替処理は、所定の時間間隔で繰り返し実行される。そのため、例えば車両が別地域に移動する毎に、ステップS16において、移動後の地域と関連付けられたDABサービスへの切替が行われる。
【0068】
なお、ステップS14において両DABサービスのSIDが一致すると判定された場合(ステップS14:YES)や、ステップS15において受信を開始したアンサンブル信号に複数の放送地域のDABサービスが含まれていない又はこれらが同一内容のDABサービスでないと判定された場合(ステップS15:NO)、
図3に示されるラジオ放送切替処理はその時点で終了する。
【0069】
図5は、本発明の第1実施形態においてMPU110により実行されるラジオ放送再生処理のフローチャートである。
図5に示されるラジオ放送再生処理は、例えばユーザ操作等によりDABサービスの選択が行われた後、ラジオ放送受信装置10の電源がオフされるまで繰り返し実行される。
【0070】
MPU110は、ユーザ操作等により選択されたDABサービス又は
図3のステップS16による切替後のDABサービスのDAB音声信号をスピーカ50より出力再生させるとともに、このDABサービスの表示用データをタッチパネルディスプレイ上に表示させる(ステップS21)。
【0071】
MPU110は、アンサンブル信号の受信信号品質が劣化したか(例えば、アンサンブル信号のエラーレートが第1の閾値以上であるか、アンサンブル信号のSN比が第2の閾値未満であるか、など)否かを判定する(ステップS22)。「アンサンブル信号の受信信号品質が劣化した」とは、例えば、アンサンブル信号の受信レベルがDAB音声信号を出力再生できないレベルに劣化した状態を表す。アンサンブル信号の受信信号品質が劣化していないと判定される場合は(ステップS22:NO)、本フローチャートの処理を終了する。
【0072】
MPU110は、ステップS22において、アンサンブル信号の受信信号品質が劣化したと判定すると(ステップS22:YES)、セレクタ信号をセレクタ150に出力して、再生される放送を、DABサービスと同一内容の番組を放送するRDSサイマル放送へ切り替える(ステップS23)。MPU110は、アンサンブル信号の受信信号品質が改善されるまでRDS音声信号をスピーカ50より出力再生させるとともに、このRDSサイマル放送の文字情報データをタッチパネルディスプレイ上に表示させる。
【0073】
MPU110は、アンサンブル信号の受信信号品質が改善したと判定すると(ステップS24:YES)、セレクタ信号をセレクタ150に出力して、再生される放送を、RDSサイマル放送からDABサービスに戻す(ステップS25)。
【0074】
本実施形態によれば、ラジオ放送受信装置10が属しない別地域のDABサービスがユーザ操作等によって選択された場合にも、MPU110は、この別地域のDABサービスを
図3のステップS12にて推定された現在地域と関連付けられたDABサービスに切り替えることにより、ラジオ放送受信装置10が受信可能な現在地域の地域番組のPIと同一のSIDをアンサンブル信号から取得することができる。そのため、MPU110は、地域番組が放送される時間帯であっても、現在地域とは別地域で放送されるRDS信号を受信できないことによる無音状態を生じさせることなく、再生される放送をDABサービスからRDSサイマル放送に切り替えることができる。
【0075】
図3に示されるラジオ放送切替処理及び
図5に示されるラジオ放送再生処理は、繰り返し実行される。すなわち、本実施形態において、取得部は、ラジオ放送受信装置が属する現在地域に関する情報を所定の時間間隔(例えば1秒間隔)で取得し、取得部により上記情報が取得される毎に、地域推定部が現在地域の推定を行い、サービス判定部が現在地域のラジオ放送サービスか否かの判定を行う。そして、サービス判定部により、選択部で選択されたラジオ放送サービス又は切替部による切替後のラジオ放送サービスが現在地域のラジオ放送サービスでないと判定される場合には、切替部によるラジオ放送サービスの切替が行われる。
【0076】
例えば車両が別地域に移動する毎に
図3のステップS16が実行され、移動後の地域と関連付けられたDABサービスへの切替が行われる。そのため、車両が属する地域が変わった場合にも、現在地域とは別地域で放送されるRDS信号を受信できないことによる無音状態を生じさせることなく、再生される放送をDABサービスからRDSサイマル放送に切り替えることができる。
【0077】
なお、
図3のステップS15において、受信を開始したアンサンブル信号に複数の放送地域のDABサービスが含まれていない又はこれらが同一内容のDABサービスでないと判定された場合(ステップS15:NO)、現在地域で受信可能なRDSサイマル放送が存在していたとしても、このRDSサイマル放送は、ユーザ操作等により選択されたDABサービスのサイマル放送ではない。そのため、ステップS23において、RDSサイマル放送への切替は行われず、ラジオ放送受信装置10の出力が無音状態となる。
【0078】
[第2実施形態]
図6は、本発明の第2実施形態においてMPU110により実行されるラジオ放送切替処理のフローチャートである。
図6に示されるラジオ放送切替処理は、例えば、アンサンブル信号が受信可能になった時点で開始され、ラジオ放送受信装置10の電源がオフされるまで繰り返し実行される。なお、
図6に示されるラジオ放送切替処理の実行には、GPS受信機20による位置情報の取得が不要である。そのため、ラジオ放送受信装置10がGPS受信機20と接続されない構成であっても、
図6に示されるラジオ放送切替処理は実行可能である。
【0079】
MPU110は、RDS信号処理回路140を制御して全周波数帯域をシークする(ステップS31)。概説すると、MPU110は、RDS信号処理回路140に受信制御信号を出力して、1つの周波数チャンネルの選局を指示する。RDS信号処理回路140では、MPU110より入力される受信制御信号に従って受信処理が行われる。RDS信号処理回路140にてRDS信号が検出されて復調処理が成功すると、成功したRDS信号の多重化データ(例えば放送周波数及びPI)が得られて、MPU110に出力される。MPU110は、RDS信号処理回路140より多重化データを取得すると、次の周波数チャンネルの選局をRDS信号処理回路140に指示して、次の周波数チャンネルについても同様に多重化データの取得を試みる。MPU110は、一定時間内にRDS信号処理回路140より多重化データを取得できなかった場合にも、次の周波数チャンネルの選局をRDS信号処理回路140に指示して多重化データの取得を試みる。MPU110は、このシーク処理を、RDS信号を放送する全ての周波数チャンネルについて行う。MPU110は、取得した多重化データをその内部メモリに格納する。
【0080】
ステップS31において、MPU110は、受信可能なサイマル放送のラジオ放送信号を検出する検出部として動作する。
【0081】
なお、MPU110は、
図6に示されるラジオ放送切替処理においてステップS31のシーク処理を実行せず(すなわちステップS32〜S37の処理のみ実行し)、このラジオ放送切替処理とは別に、このシーク処理(すなわち、RDS信号処理回路140を制御して、RDS信号を放送する全ての周波数チャンネルをシークする処理)を定期的に実行するようにしてもよい。この場合、MPU110の内部メモリには、取得した多重化データ(例えば現在受信可能なRDS信号の放送周波数及びPI)が定期的に更新保存される。
【0082】
第2実施形態では、データベース162に加えてデータベース164がフラッシュメモリ160に格納される。
図7は、データベース164の一例を示す。
図7に示されるように、データベース164は、PIと放送地域とを関連付けたデータベースである。
図7に示されるデータベース164には、系列局「SRF1」(PIの下二桁が「B1」)の情報と、系列局「XXX」(PIの下二桁が「A1」)の情報が保持されているものとする。
【0083】
フラッシュメモリ160は、サイマル放送のラジオ放送信号の識別情報と、サイマル放送のラジオ放送信号の放送地域とを関連付けて保持する第2の保持部として動作する。
【0084】
データベース164は、例えばフラッシュメモリ160に予め格納されたものであってもよく、また、MPU110が通信インタフェース170を介してサーバ30からダウンロードしたものであってもよい。後者の場合、MPU110は、
図6に示されるラジオ放送切替処理の実行時にデータベース164をサーバ30から都度ダウンロードして一時保存してもよく、また、
図6に示されるラジオ放送切替処理の有無に拘わらずデータベース164をサーバ30から定期的にダウンロードして更新保存するようにしてもよい。
【0085】
MPU110は、ステップS31のシーク処理の結果、受信可能なRDS信号があるか否かを判定する(ステップS32)。なお、受信可能なRDS信号がない場合(ステップS32:NO)、
図6に示されるラジオ放送切替処理はその時点で終了する。
【0086】
MPU110は、受信可能なRDS信号があると判定した場合(ステップS32:YES)、データベース164に保持されたPIの中から、ステップS31にて内部メモリに格納した多重化データに含まれるPIを検出し、検出されたPIに関連付けられた放送地域を、ラジオ放送受信装置10が属する現在地域として推定する(ステップS33)。
【0087】
なお、ステップS31において、全国番組が放送される時間帯には、全国番組のPIが取得される。この全国番組のPIは、データベース164にリストされない。そのため、この場合はエラーとなり、
図6に示されるラジオ放送切替処理は終了する。ここで、
図6に示されるラジオ放送切替処理は、所定の時間間隔で繰り返し実行される。そのため、地域番組が放送される時間帯になれば、MPU110は、受信したRDS信号から地域番組のPIを取得することができる。この地域番組のPIは、データベース164にリストされている。そのため、MPU110は、このPIを用いて現在地域の推定を行うことができる。
【0088】
ステップS31のシーク処理では、現在地域で放送される、1つの系列局のRDS信号だけでなく、現在地域で放送される、前者とは別の系列局のRDS信号が検出される場合もある。例えば
図7中、PIが「46B1」となる系列局「SRF1」のRDS信号とPIが「41A1」となる系列局「XXX」のRDS信号が検出される場合を考える。この場合、検出された何れの系列局も放送地域がアールガウ及びゾロトゥルン地域である。そのため、MPU110は、アールガウ及びゾロトゥルン地域をラジオ放送受信装置10が属する現在地域として推定する。
【0089】
なお、車両が走行する場所によっては、隣接する複数の放送地域のRDS信号が受信される場合もある。その場合、MPU110は、例えば、受信した各RDS信号のPIと関連付けられた放送地域をカウントし、最も多くカウントされた放送地域や、PIの2桁目の数字が低い方のPIに関連付けられた放送地域を、ラジオ放送受信装置10が属する現在地域として推定する。なお、PIの2桁目の数字は、十六進表記の地域コードである。
【0090】
図6のステップS34〜S37では、
図3のステップS13〜S16と同様の処理が実行される。
【0091】
すなわち、MPU110は、DABサービスの選択が行われたか否かを判定し(ステップS34)、DABサービスの選択が行われたと判定すると(ステップS34:YES)、データベース162を参照して、ステップS33にて推定された現在地域と関連付けられたDABサービスのSIDと、ユーザ操作等により選択されたDABサービスのSIDとが一致するか否かを判定する(ステップS35)。MPU110は、ステップS35において、両DABサービスのSIDが一致しないと判定すると(ステップS35:NO)、受信を開始したアンサンブル信号に複数の放送地域のDABサービスが含まれており、かつこれらが同一内容のDABサービスであるか否かを判定する(ステップS36)。MPU110は、受信を開始したアンサンブル信号に複数の放送地域のDABサービスが含まれており、かつこれらが同一内容のDABサービスであると判定すると(ステップS36:YES)、ユーザ操作等により選択された選択局のDABサービスを、ステップS33にて推定された現在地域と関連付けられたDABサービスへ切り替える(ステップS37)。第1実施形態と同様、第2実施形態においても、
図5に示されるラジオ放送再生処理が繰り返し実行される。
【0092】
図6に示されるラジオ放送切替処理は、所定の時間間隔で繰り返し実行される。そのため、例えば車両が別地域に移動する毎に、ステップS37において、移動後の地域と関連付けられたDABサービスへの切替が行われる。
【0093】
第2実施形態においても、ラジオ放送受信装置10が属しない別地域のDABサービスがユーザ操作等によって選択された場合にも、MPU110は、この別地域のDABサービスを
図6のステップS33にて推定された現在地域と関連付けられたDABサービスに切り替えることにより、ラジオ放送受信装置10が受信可能な現在地域の地域番組のPIと同一のSIDをアンサンブル信号から取得することができる。そのため、MPU110は、地域番組が放送される時間帯であっても、現在地域とは別地域で放送されるRDS信号を受信できないことによる無音状態を生じさせることなく、再生される放送をDABサービスからRDSサイマル放送に切り替えることができる。
【0094】
以上が本発明の例示的な実施形態の説明である。本発明の実施形態は、上記に説明したものに限定されず、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。例えば明細書中に例示的に明示される実施例等又は自明な実施例等を適宜組み合わせた内容も本願の実施形態に含まれる。