【実施例】
【0058】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0059】
(実施例1:過熱水蒸気によるたん白質の物性改質)
被験物質の原食用素材として、小麦たん白(グルテン)、エンドウたん白および小麦たん白加水分解物(いずれも粉末状)を用いた。
【0060】
(1−1:過熱水蒸気処理)
過熱水蒸気発生装置(シャープ株式会社製,ウォーターオーブンヘルシオAX−XS500)の庫内に、黒皿にキッチンペーパーを敷いた上に被験物質の粉末を均一に広げた状態で庫内に入れ、以下の表1に示す条件で過熱水蒸気処理を行った(以下、「過熱水蒸気処理」ともいう)。なお処理前に、装置の庫内を同じ処理温度および過熱水蒸気量にて予熱した。本装置では、過熱水蒸気のみで試験物質を加熱できた。庫内の酸素濃度は1%以下に抑えられた。
【0061】
【表1】
【0062】
(1−2:加熱ゲルの調製および物性測定)
水を小麦たん白(グルテン)の重量に対し1.5倍重量、エンドウたん白の重量に対し2.0倍重量、そして小麦たん白加水分解物の重量に対し1.0倍重量にてそれぞれ加え、混捏して生地を作製した。得られた生地を型に入れ、蒸し器で90℃にて90分間加熱後に5℃にて12時間保管し、加熱ゲルを得た。
【0063】
小型卓上試験機テクスチャーアナライザー(株式会社島津製作所製、Ez Test EZ-SX)にて加熱ゲルの貫入試験を行った。試験冶具として下部にφ118mmの圧盤、上部にφ10mm球状プランジャーを使用し、試験速度10mm/分にて貫入試験を行った。小麦たん白分解物の測定には上部にφ118mmの圧盤を使用し0.05mm/秒にて圧縮試験を行った。試験片は全て測定直前まで5℃で保存した。結果を表2に示す。
【0064】
(1−3:結果)
過熱水蒸気処理後の粉末の状態を確認した。処理温度100℃では、飽和水蒸気が多く、水分を吸収して部分的に硬く、固結する傾向が観察された。処理温度150℃以上では固結が無く、乾いた状態でサンプルを得ることができた。
【0065】
小麦たん白の過熱水蒸気処理では、処理温度の上昇に伴い、粉外観が褐変した。処理温度150℃のサンプルは甘い香りがした。加水生地は処理温度の上昇に伴い、まとまり性が低下しソボロ状になった。また、加熱ゲルを作製し貫入試験を行ったところ、100℃で荷重が低下し、150℃でゲルの荷重と最大荷重時の変位が大きく向上した(表2)。
【0066】
エンドウたん白の過熱水蒸気処理では、処理温度200℃で粉外観が褐変した。処理温度の上昇に伴い青臭さが増し、処理温度200℃のサンプルは醗酵したような特異な香りがした。加水生地は処理温度200℃で脆く崩壊性のある生地となった。また、加熱ゲルを作製し貫入試験を行ったところ、処理温度150℃までは、温度の上昇に伴いゲルの荷重が増加した。200℃では脆いゲルとなり、少ない変位点で崩壊した(表2)。
【0067】
小麦たん白加水分解物の過熱水蒸気処理では、処理温度の上昇に伴い、粉外観が褐変した。処理温度150℃のサンプルは醤油タレのような特異な香りがした。加水生地は処理温度150℃で硬めのペースト状となった。また、加熱ゲルを作製し貫入試験を行ったところ、過熱水蒸気処理を行うことでゲルの荷重が低下した(表2)。
【0068】
【表2】
【0069】
(実施例2:過熱水蒸気処理たん白素材の食品系試験)
(2−1.過熱水蒸気処理)
表3に示すように、小麦たん白、エンドウたん白および玄米たん白(いずれも粉末状)を被験物質の原食用素材として用いて以下の条件で行ったこと以外は、実施例1と同様にして、被験物質の粉末を過熱水蒸気処理に供した。
【0070】
【表3】
【0071】
(2−2.水分含量測定)
過熱水蒸気処理の直後に、ハロゲン水分計(METTLER TOLEDO製,HG53)を用いて105℃にて水分含量を測定した。結果を以下の表4に示す。
【0072】
(2−3.麺の作製および破断試験、官能試験)
小麦粉300gと過熱水蒸気処理後の被験物質6gとを予備混合後、万能撹拌機専用容器に入れ、麺用フックをセットして撹拌を開始した。水道水99gおよび食塩3gを予め混合し、練り水として投入した。混合した生地をパスタマシンで押出し成形した(ダイス:φ1.9mm)。麺をPE袋に入れ10℃にて12時間保管した後、沸騰したお湯で4分間茹でて試験サンプルとした。
【0073】
小型卓上試験機テクスチャーアナライザー(株式会社島津製作所製、Ez Test EZ-SX)にて麺の破断試験を行った。試験冶具として下部にφ118mmの圧盤、上部に歯形押し棒Bプランジャーを使用し、試験速度20mm/分にて破断荷重を測定した。破断荷重は茹でた麺を各5本ずつ測定し、平均値を算出した。結果を
図1〜3に示す。
図1〜3は、種々の条件下で過熱水蒸気加熱処理を行った各種たん白を配合した茹で麺の破断強度を示すグラフである(
図1:小麦たん白、
図2:エンドウたん白および
図3:玄米たん白)。
【0074】
生麺を4分間茹でて官能試験を行った。官能試験は、パネリスト10名にて茹で立ての麺を喫食した際の食感、例えば麺の硬さおよびコシ(弾力性)を評価した。
【0075】
(2−4:結果)
(小麦たん白)
過熱水蒸気処理した小麦たん白を加えた生地を押出し成形したところ、未処理品との作業性の違いはなかった。麺の外観は150℃処理品でわずかに茶褐色になった。
【0076】
テクスチャーアナライザー測定の結果、過熱水蒸気で処理することで、110℃処理品は未処理品よりも破断変位が減少し、最大荷重が増加した。130℃処理品は破断変位、破断荷重ともに増加し最大値を示した(
図1)。150℃処理品は破断変位、破断荷重が130℃処理品よりも減少した。
【0077】
官能試験の結果110℃処理品は麺の外側に硬さとハリがありモチモチとした食感であった。130℃処理品は外側の硬さに加え、腰のある硬さであった。150℃処理品は130℃に似た食感ではあるが、やや茹で溶けていた。
【0078】
(エンドウたん白)
過熱水蒸気処理したエンドウたん白を加えた生地を押出し成形したところ、未処理品との作業性、外観の違いはなかった。
【0079】
テクスチャーアナライザー測定の結果、過熱水蒸気の130℃処理品は、破断荷重が未処理品よりもわずかに増加した(
図2)。
【0080】
官能試験の結果、未処理品は弾力が弱く、噛み込むと歯に付着し、ザラツキを感じた。110℃、130℃処理品は麺の外側にわずかに硬さとハリが付与された。また、歯への付着性がわずかに改善した。150℃処理品は茹で溶けがあり、脆く崩壊性のある食感であった。未処理品はエンドウたん白の青臭さが強く感じられた。過熱水蒸気処理により青臭さを抑制する傾向を示した。
【0081】
(玄米たん白)
過熱水蒸気処理した玄米たん白を加えた生地を押出し成形したところ、未処理品との作業性の違いはなかった。麺の外観は150℃処理品でわずかに茶褐色になった。
【0082】
テクスチャーアナライザー測定の結果、過熱水蒸気110℃処理品は、破断荷重が他の温度よりもわずかに増加した(
図3)。
【0083】
官能試験の結果、未処理品は粘りがあり、表面がヌルヌルとしていた(米のオネバのようなヌルヌルした食感)。110℃処理品は麺の外側にわずかにハリがあった。130℃処理品は麺の外側にハリがあり、硬さと粘りがわずかに付与された。150℃処理品はわずかに脆さが付与された。玄米たん白を麺に加えると、わずかに糠のような風味と米の甘味が付与された。
【0084】
【表4】
【0085】
(実施例3:キサンタンガムの過熱水蒸気処理)
(3−1.過熱水蒸気処理)
キサンタンガムの粉末を被験物質として用い、以下の条件で行ったこと以外は、実施例1と同様に過熱水蒸気処理を行った。
【0086】
(3−2.粘度測定)
上記過熱水蒸気処理で得られた素材を篩過して得られたものを試料として使用した。500mLトールビーカーに300gのイオン交換水(20℃)を入れ、3枚翼のプロペラをセットした撹拌機にて1000rpmで撹拌した。試料1.5gを少量ずつ入れ、全量を投入した時点から2000rpmにて2分間撹拌した(0.5%(w/v)水溶液を作製)。TVB−10形粘度計(東機産業株式会社製)にて2分間回転後の粘度を測定した。同様の方法で調製したキサンタンガム水溶液に対して精製塩(塩化ナトリウム含有率が99.5%以上)30gを入れ、撹拌機にて2000rpmで2分間撹拌後にTVB−10形粘度計にて2分間回転後の粘度を測定した。結果を以下の表5および
図4に示す。
図4は、種々の条件下で過熱水蒸気処理を行ったキサンタンガムの粘度を示すグラフである。
図4中、精製塩が「無」であった結果を塗りつぶしの棒グラフにて表し、精製塩が「有」であった結果を斜線のハッチングが施された棒グラフにて表す。
【0087】
(3−3.結果)
過熱水蒸気処理を160℃にて15分間または180℃にて6分間行うことにより、粘度の顕著な増加が見られた。試験した中では、過熱水蒸気加熱処理を160℃にて15分間行った場合に最高粘度に達した(表5および
図4)。以上の結果から、本実施例の過熱水蒸気処理では低温にて長時間処理を行う方が粘度の増加が高くなることが考えられた。また、140℃以上で処理した場合に、焙焼糖のような甘さのある香りが発生した。過熱水蒸気温度110℃〜150℃では精製塩の添加により、未処理で精製塩を添加した場合と比較して高い粘度が発現した。
【0088】
【表5】
【0089】
(実施例4:粉末寒天の過熱水蒸気加熱処理)
(4−1:過熱水蒸気加熱処理)
被験物質として粉末寒天を用い、過熱水蒸気量をレベル3にて150℃、160℃、170℃、180℃、190℃、200℃、210℃、220℃または230℃にて6分間処理を行ったこと以外は、実施例1と同様に過熱水蒸気処理を行った。
【0090】
(4−2:加熱ゲルの調製および物性測定)
上記過熱水蒸気処理で得られた素材を篩過して得られたものを試料として使用した。100mLビーカーに70gのイオン交換水と試料0.7gとを投入し、達温95℃で3分30秒間混合溶解した。溶解液を型に流し込み、10℃にて12時間静置後にゲルを得た。
【0091】
小型卓上試験機テクスチャーアナライザー(株式会社島津製作所製、Ez Test EZ-SX)にて加熱ゲルの貫入試験を行った。試験冶具は下部にφ118mmの圧盤、上部にφ10mm球状プランジャーを使用し、試験速度10mm/分にて貫入試験を行った(n=4)。結果を表6および
図5に示す。
図5は、種々の条件下で過熱水蒸気加熱処理を行った粉末寒天のゲル強度を示すグラフであり、各処理温度の斜線の棒は荷重(N)の結果であり、白棒は、変位(mm)の結果である。
【0092】
(4−3:結果)
処理温度の上昇に伴って荷重(N)および変位(mm)が上昇して、160〜170℃で最大値を示し、180℃以上の処理で荷重(N)、変位(mm)が徐々に低下し200℃以上の処理で未処理よりも数値が低下した(表6および
図5)。200℃以上のゲルは褐色の不溶物を確認した。
【0093】
【表6】
【0094】
(実施例5〜10および比較例1:キサンタンガムの過熱水蒸気処理)
(過熱水蒸気処理)
過熱水蒸気撹拌混合式殺菌装置を用いて食用素材の過熱水蒸気処理を行った。この装置は、本体内に過熱水蒸気の供給手段を有し、容器(缶体)底部に撹拌羽根、容器側面に解砕羽根、そして容器上部に空気および過熱水蒸気の排出口を有し、容器の缶内容量は12Lである。容器上部に設けられた排気部を閉じることで加圧が可能であるが、本実施例では開放して試験を行った。蒸気流量を15kg/時間、容器缶保温ジャケット温度を150℃に設定した。過熱水蒸気温度(給気温度)を給気口の温度センサーで測定し、品温を缶体内の温度センサーで測定した。実施例5〜10および比較例1の処理条件を以下の表7に示す。
【0095】
(粘度測定)
実施例3の3−2と同様にして、過熱水蒸気処理後のキサンタンガムの粘度を測定した。結果を以下の表7および
図6に示す。
図6は、種々の条件下で過熱水蒸気処理を行ったキサンタンガムの粘度を示すグラフである。
図6中、精製塩が「無」であった結果を塗りつぶしの棒グラフにて表し、精製塩が「有」であった結果を斜線のハッチングが施された棒グラフにて表す。
【0096】
(水分含量測定)
過熱水蒸気処理の直後に、ハロゲン水分計(METTLER TOLEDO製,HG53)を用いて105℃にて水分含量を測定した。結果を以下の表8に示す。
【0097】
(結果)
実施例5〜10の過熱水蒸気処理後のキサンタンガムは、未処理の比較例1と比べて粘度が増加した(表7および
図6)。実施例5および実施例10の過熱水蒸気処理キサンタンガムは、精製塩の添加によって粘度が増加した。比較例1の水分含量が10.1%であるのに対し、実施例5〜10の過熱水蒸気処理後のキサンタンガムは水分含量が5%以下であった(表8)。また、実施例5〜10の過熱水蒸気処理キサンタンガムは、焙焼糖のような甘さのある香りが発生した。
【0098】
【表7】
【0099】
【表8】
【0100】
(実施例11〜13および比較例2:茹でうどんの製造および評価)
卓上ミキサー(株式会社品川工業所製:5DM 03r)に小麦粉(中力粉)210g、加工デンプン90g、小麦たん白6g、原キサンタンガム(過熱水蒸気未処理キサンタンガム)または過熱水蒸気処理キサンタンガム1.5g、水126g、食塩6gを配合し、8分間混捏後に複合、熟成し、麺生地を得た。得られた麺生地を圧延後に切出し(厚さ3.0mm、8番角[幅3.75mm])、麺を得た。得られた麺を沸騰水中で11分間茹でた後、1分間水で冷却し、茹でうどんを得た。茹でうどんの配合を以下の表9に示す。
【0101】
得られた各茹でうどんを10℃にて24時間保存後、官能評価および麺ほぐれ性評価を行った。
【0102】
官能評価では、茹でうどんをパネリスト10名にて麺の食感(硬さと粘弾性)、滑らかさ、および食味を評価した。麺の食感については、茹で立ての麺を喫食した際の麺の硬さおよびコシ(粘弾性)をそれぞれ評価した。滑らかさについては、茹で立ての麺を喫食した際の舌触りの滑らかさを評価した。食味については、茹で立ての麺を喫食したときの味を評価した。これらの評価は、かなり良いものを5点、やや良いものを4点、普通を3点、やや悪いものを2点、かなり悪いものを1点とし、0.5点刻みで各々採点し、10名の集計結果から得られた各々の平均点を以下の表9に示す。
【0103】
麺ほぐれ性評価は、100gの茹でうどんの塊状の麺に水40mLをかけた後、箸で麺をほぐし、そのほぐれ易さの程度をパネリスト10名による採点にて評価した。この評価は、ほぐれ易いほど良好であり、かなり良いものを5点、やや良いものを4点、普通を3点、やや悪いものを2点、かなり悪いものを1点とし、0.5点刻みで採点し、10名の集計結果から得られた平均点を以下の表9に示す。
【0104】
表9に示す評価結果から、実施例11(実施例5の過熱水蒸気処理キサンタンガムを配合)、実施例12(実施例8の過熱水蒸気処理キサンタンガムを配合)および実施例13(実施例10の過熱水蒸気処理キサンタンガムを配合)の茹でうどんはそれぞれ、比較例2(原キサンタンガムを配合)の茹でうどんに比べ、食味はほぼ同程度でありながらも食感と滑らかさが良好であった。麺ほぐれ性についても、実施例11、実施例12および実施例13の茹でうどんはそれぞれ、比較例2の茹でうどんに比べて良好であり、ほぐれ易かった。
【0105】
【表9】
【0106】
(実施例14、実施例15および比較例3:ドレッシングの製造および評価)
容器に水21.5g、和風だし1g、砂糖7g、食塩1.5g、醤油32g、酢21.5g、レモン果汁3.5gを入れ、3枚翼のプロペラをセットした撹拌機にて1000rpmで撹拌し溶解した。原キサンタンガム(過熱水蒸気未処理キサンタンガム)または過熱水蒸気処理キサンタンガム0.5gを入れ、2分間撹拌し溶解した。サラダ油12gを入れ、2分間撹拌しドレッシングを得た。
【0107】
得られた各ドレッシングの全量をメスシリンダーに移し、20℃で2日間静置後、水相および油相の容量を測定した。水相と油相の分離度を、以下の式を用いて求めた:
分離度(%)=油相(ml)/[油相(ml)+水相(ml)]×100
【0108】
ドレッシングの配合および分離度の結果を以下の表10に示す。
【0109】
表10に示す結果から、高濃度の塩、高濃度の酸の存在下でも実施例14(実施例5の過熱水蒸気処理キサンタンガムを配合)および実施例15(実施例10の過熱水蒸気処理キサンタンガムを配合)のドレッシングはそれぞれ、比較例3(原キサンタンガムを配合)のドレッシングに比べ、経時的な油相と水相の分離が少ないことを確認した。
【0110】
【表10】
【0111】
(実施例16:粉末キサンタンガムの過熱水蒸気加熱処理)
被験物質として粉末キサンタンガムを用い、過熱水蒸気量をレベル3にて160℃、15分間処理を行ったこと以外は、実施例1と同様に過熱水蒸気処理を行った。
【0112】
(比較例4:粉末キサンタンガムのスチーム加熱処理)
ガスコンベクションスチームオーブン(オザキ株式会社製、OZCSO−95)の庫内に、受け皿にオーブンペーパーを敷いた上に被験物質の粉末を均一に広げた状態で庫内に入れ、100℃、15分間のスチーム加熱処理を行った。
【0113】
(比較例5:粉末キサンタンガムのオーブン加熱処理)
ガスコンベクションスチームオーブン(オザキ株式会社製、OZCSO−95)の庫内に、受け皿にオーブンペーパーを敷いた上に被験物質の粉末を均一に広げた状態で庫内に入れ、160℃、15分間の処理を行った。
【0114】
(実施例5、実施例10、実施例16および比較例1、比較例4、比較例5:粒度分布測定、水分含量測定)
実施例5、実施例10および実施例16の過熱水蒸気処理後のキサンタンガム、ならびに比較例1の過熱水蒸気未処理のキサンタンガム、比較例4および比較例5のスチーム加熱処理後のキサンタンガムについて、以下のように粒度分布および水分含量を測定した。
【0115】
(粒度分布測定)
レーザー回折式粒子径分布測定装置(株式会社島津製作所製,SALD-2100)にて湿式条件で粒度分布を測定した。溶媒に2−プロパノールを用いた。結果を以下の表11に示す。
【0116】
(水分含量測定)
過熱水蒸気処理の直後にハロゲン水分計(METTLER TOLEDO製,HG53)を用いて105℃にて水分含量を測定した。結果を以下の表11に示す。
【0117】
(結果)
表11の結果から、実施例5、実施例10、実施例16の過熱水蒸気処理キサンタンガムは比較例1の原キサンタンガムと比べてメディアン径が大きく、かつ、水分含量が6%以下であった。比較例4のスチーム加熱処理キサンタンガムはメディアン径および水分含量の両方が大きくなった。比較例5のオーブン加熱処理キサンタンガムは、メディアン径は変わらず、水分含量が6%以下であった。また、実施例5、実施例10、実施例16は焙焼糖のような甘い香りがした。
【0118】
【表11】
【0119】
(実施例17〜20および比較例6:改質キサンタンガムの製造および評価)
容器の缶内容量が12Lまたは120Lであることを除いて実施例5と同様の過熱水蒸気撹拌混合式殺菌装置を用いて、改質キサンタンガムを調製した。容器上部に設けられた排出部を閉じることで加圧が可能であるが、本実施例では開放して試験を行った。缶内容量12L機体では蒸気流量を15kg/時間、容器缶保温ジャケット温度を150℃に設定した(実施例17〜19)。缶内容量120L機体では蒸気流量45kg/時間、容器缶保温ジャケット温度を180℃に設定した(実施例20)。過熱水蒸気温度(給気温度)を給気口の温度センサーで測定し、品温を缶体内の温度センサーで測定した。
【0120】
(キサンタンガム水溶液の粘度)
500mLのビーカーに300mLの蒸留水(20℃)を測りとり、撹拌羽(3枚羽を上下2枚配置したもの)を2,000rpmで撹拌しながら、キサンタンガムを添加し20分間撹拌した。キサンタンガムの濃度は0.2%(w/v)であった。その後、超音波洗浄機で10分間脱泡した後に粘度を測定した。粘度の測定を、B型粘度計(TVB−10M:東機産業株式会社製)を用い、液温20℃にてM2ローター(CORD No.21)で回転(回転数30rpm)させた状態で測定した。
【0121】
(キサンタンガム水溶液のT2緩和時間およびpH)
500mLのビーカーに、300mLの蒸留水(20℃)を測りとり、撹拌羽(3枚羽を上下2枚配置したもの)を2,000rpmで撹拌しながら、キサンタンガムを添加し20分間撹拌した。キサンタンガムの濃度は0.2%(w/v)であった。その後、超音波洗浄機で脱泡した後にNMRテストチューブに充填した。T
2緩和時間をパルスNMR法(NMR方式湿式比表面積測定装置/Acorn Area:XiGo Nanotools)を用いてヒーター温度25℃で測定した。
【0122】
(キサンタンガム水溶液のpH)
500mLのビーカーに300mLの蒸留水(20℃)を測りとり、撹拌羽(3枚羽を上下2枚配置したもの)を2,000rpmで撹拌しながら、キサンタンガムを添加し20分間撹拌した。キサンタンガムの濃度は0.2%(w/v)であった。得られたキサンタンガム水溶液のpHを、液温25℃にてガラス電極を用い測定した。
【0123】
結果を表12に示す。粉末状キサンタンガムに過熱水蒸気を噴射し加熱した結果、到達品温の上昇に伴ってキサンタンガム水溶液の粘度が増加し、T
2緩和時間(ms)が短くなった。また、到達品温の上昇に伴って当該水溶液のpHが低下したことを確認した。
【0124】
【表12】
【0125】
(実施例21:改質キサンタンガムのグァーガムとの反応性評価)
表13に示す比率にて実施例20の改質キサンタンガムまたは比較例6の原キサンタンガムの各粉末をグァーガム粉末と混合し、粉末混合品を得た。
【0126】
500mLのビーカーに300mLの蒸留水(20℃)を測りとり、撹拌羽(3枚羽を上下2枚配置したもの)を2,000rpmで撹拌しながら、粉末混合品を添加し20分間撹拌した。粉末混合品の濃度は0.5%(w/v)であった。その後、超音波洗浄機で10分間脱泡した後に粘度を測定した。粘度の測定を、B型粘度計(TVB−10M:東機産業株式会社製)を用い、液温20℃にてM3ローター(CORD No.22)で回転(回転数6rpm)させた状態で測定した。
【0127】
結果を表13および
図7に示す。
図7は、過熱水蒸気処理を行って得られた改質キサンタンガムのグァーガムとの反応性評価の結果を示すグラフである。
【0128】
【表13】
【0129】
比較例6のキサンタンガム原素材が、混合比率グァーガム:キサンタンガム=4:1で最も高い粘度が得られたのに対し、実施例20の改質キサンタンガムでは混合比率グァーガム:キサンタンガム=3:2で最も高い粘度となった。また、得られる粘度も改質キサンタンガムの方が高かった。このように、改質キサンタンガムは、キサンタンガム原素材とは明らかにグァーガム反応性が変化していた。