(54)【発明の名称】担体担持金属微粒子コロイド、担体担持白金族含有コロイド、担体担持パラジウムコロイド、担体担持白金コロイド、担体担持パラジウム―白金合金微粒子コロイド、担体担持パラジウム―白金コアシェル微粒子コロイド、およびそれらの高濃度連続製造方法ならびに触媒、センサ、電池、抗菌材料
担体担持金属ナノ粒子を連続法で高濃度において迅速に完全反応させ、担体担持高表面積金属ナノ粒子を得る方法は未だ確立されておらず、不均一な担持密度、粗大粒子成長、未反応原料残留等のような結果になりがちであった。
反応原料液に担体、金属原料、分散剤に加えて非求核強塩基を添加し、マイクロ波連続法を用いると担体を凝集させることなく迅速に反応を完結させることが可能であることを見出し、種々実験を行い、特性の安定に寄与する条件を見つけ、課題を解決した。
担体共存下で金属ナノ粒子合成と担体への担持を同時に行う担体担持金属微粒子合成方法において、担体濃度が重量パーセント濃度において1%以上であり、マイクロ波連続法による加熱で反応を開始させることを特徴とする担体担持金属微粒子製造方法。
重量パーセント濃度においてポリオール系溶媒を主な分散媒とし、白金族原料が20mM以上の濃度で、担体共存下で白金族元素含有ナノ粒子合成と担体への担持を同時に行う担体担持白金族元素含有微粒子触媒合成方法において、非求核塩基を添加剤として加え、マイクロ波連続法による加熱で反応を開始させることを特徴とする担体担持白金族元素含有微粒子製造方法。
請求項2に記載の担体担持白金族元素含有微粒子製造方法において、非求核塩基が白金族原料の白金族元素物質量の4〜12倍添加されていることを特徴とする担体担持白金族元素含有微粒子製造方法。
請求項2または3に記載の担体担持白金族元素含有微粒子製造方法において、担体に担持された白金族微粒子の透過電子顕微鏡または透過走査電子顕微鏡で測定した平均粒子径が10nm以下であることを特徴とする担体担持白金族元素含有微粒子製造方法。
請求項2〜4のいずれかに記載の担体担持白金族元素含有微粒子製造方法において、白金族元素含有微粒子が合金微粒子であることを特徴とする担体担持白金族元素含有合金微粒子製造方法。
請求項2〜5のいずれかに記載の担体担持白金族元素含有微粒子製造方法において、シェルが白金族元素で構成されていることを特徴とする担体担持白金族元素含有コアシェル微粒子製造方法。
請求項2〜6のいずれかに記載の担体担持白金族元素含有微粒子製造方法において、走査透過電子顕微鏡における500nm×500nmの視野における担体構成元素と微粒子元素の物質量の比率と原料液に含まれる担体構成元素と微粒子原料元素の物質量の比率がほぼ等しく、その差が原料に含有されている元素の物質量の比の20%以内に収まることを特徴とする担体担持白金族元素含有微粒子製造方法。
【背景技術】
【0002】
水素を燃料とする固体高分子形燃料電池( 以下、PEFCという) は、電動輸送車両が利用可能な環境に優しいエネルギー装置と考えられている。このPEFCの電気化学触媒として、白金族ナノ粒子を主体とした担体担持触媒や、白金族元素間、または白金族元素とその他の遷移金属元素を用いた合金やコアシェル構造をもつ二元金属微粒子が期待されている。例えばパラジウムコア白金シュルナノ粒子のような二元金属系金属粒子は、白金のみを使用している触媒と比べて高い酸素還元活性を示すため、また、貴重な白金の使用量の低減となるため、多大な関心を集めている。加えて、白金族元素を含む担体担持触媒は高い酸素還元活性を示すものが多く、空気中の酸素に電子を受け渡すカソード反応を利用する電池全般に応用することができる。この高い酸素還元活性は燃料電池だけでなく、空気電池等にも応用することができる。
【0003】
白金族元素を担体に担持した触媒は空気中の酸素および水素や炭化水素等の可燃性ガスに対しても高い活性を示し、燃焼触媒としても利用でき、半導体式ガスセンサや接触燃焼式ガスセンサに利用されている。白金族微粒子元素の種類、および合金やコアシェルといった二元金属系微粒子の複合構造はガスセンサの感度や選択性に関与していると考えられ、様々な応用が期待されている。また、酸化チタンをはじめとする光触媒用微粒子上に白金族元素含有微粒子を助触媒として担持し、水素の発生や水およびその他の還元剤の酸化を促進することが行われている。これらの光触媒の分野では光半導体表面の電子伝達特性や化学反応性が効率に大きくかかわり、助触媒の担持も精密に制御されていなければならない。
【0004】
白金および銀、銅微粒子等の金属微粒子はメカニズムは不明な点もあるが抗菌、抗ウイルス、消臭作用があることがわかっており、一部では実用化されている。これらの金属微粒子は担体上に担持したり繊維中に練りこんだりすることで複合化が行われている。このような抗菌製品用途においても金属微粒子は均一に高密度に複合化されることがその効果的な性能発揮に重要なことが多いと考えられている。
【0005】
また、他にも、金、錫、コバルト、モリブデン、タングステン、インジウム等の金属や合金は、液相法で合成と担持を行うことができ、触媒をはじめ、広範な用途が期待されている。
【0006】
金属ナノ粒子を含有する触媒は、触媒効果の最大化のため、活性炭、カーボンナノチューブ、グラフェン、酸化スズ、酸化チタン、アルミナのような高い表面積を有する多孔質または連珠構造材料に分散されて固定されるのが一般的である。また、担体は導電性や金属ナノ粒子の担体上での均一分散性、耐熱安定性等にも関わっており、金属ナノ粒子による触媒効果を補助し、電流や発熱等の触媒反応により生じるシグナルを効果的に受け取る役割も果たしている
【0007】
このように、担体担持白金族含有微粒子触媒は活性が高く、多様な応用が考えられるが、白金族微粒子が高密度で均一に担体に分散している構造を有する触媒を高い生産性で製造する方法はあまり確立されておらず、合金触媒やコアシェル触媒等の複合構造の効率の良い生産についてはほとんど確立されていないのが現状である。
【0008】
コアシェル型ナノ粒子は、外部と接触するシェル層を均一に形成することができれば、シェル金属のみのナノ粒子とは異なる触媒活性が付与されると期待されている。これは、コア粒子が下地になることにより、シェル層の電子的な性質や結晶構造の幾何学的配置が修飾を受け、より効果的に目的とする反応の活性化エネルギーを低下させるためと推察されている。合金ナノ粒子もまた単一金属のナノ粒子とは表面構造や電子構造が修飾を受け、触媒反応の活性や選択制に影響を与えるとされている。
【0009】
また、触媒活性を持つ金属が非常に高価な場合は、コアシェル構造にすることで反応物と接触するシェル層に高価な金属を効果的に配置できるので経済的である。加えて、化学的に安定な貴金属をシェルとして均一に被覆することで、酸化、溶解しやすい卑金属を外部と遮蔽しつつ間接的に反応に関与させることができ、新たな触媒特性を発揮させることも可能になる。
【0010】
白金族元素のなかでも特に有用なのが白金であり、少ない量の白金を効果的に使い、なるべく優れた触媒能を得ようという試みがなされており、近年では家庭用、自動車用の燃料電池の触媒のコストを下げるためにパラジウムコア白金シェル金属ナノ粒子や白金−コバルト合金ナノ粒子が有効であると考えられるようになってきている。
【0011】
しかしながら、コアシェル型金属ナノ粒子の合成において、シェル層を均一に被覆することは非常に難しいため、合成条件は実験室における限定的なものが多く、さらに、粒子径がシングルナノメーターの小さな値になると、電子顕微鏡による詳細な観察、および電子線やX線を用いた分析も難しさを増してくるため、コアシェル構造を証明するデータも不確実さが残る場合が多かった。また、合金ナノ粒子の合成においても、担体に担持されている個々の粒子の合金比率を適切に制御することは難しく、組成のばらつきが生じがちである。そのため、均一なシェル層をもつコアシェル型金属ナノ粒子や均一な組成の合金ナノ粒子を低コストで安定な品質を保ちつつ量産するプロセスはまだ実現していない。
【0012】
担体担持金属ナノ粒子の合成法としては、含浸法やPVD、CVDをはじめとする真空、気相プロセスがあるが、これらの方法は大量処理が可能な一方で、金属ナノ粒子の粒子径、結晶面の均一化、複合構造の形成等の精密な制御が要求される粒子合成にはあまり向いていない。液相合成はナノ粒子原料と担体を溶液中に分散させて金属ナノ粒子の結晶成長を行うことに特徴があり、担体への均一な担持やコアシェル構造等の複雑な構造の形成が可能となる。また、温度や添加剤の種類、濃度など結晶成長に影響を与える要素をうまく調整することで粒子径や結晶面の制御も行うことができる。制御されたナノ構造をもつ担体担持金属ナノ粒子の合成には液相合成が適していると考えられている。ただし、液相合成による精密制御は低濃度、長時間の反応が多く、工業プロセスとして採用するには問題のあるものが多い。高濃度、短時間の反応により低コストで高品質の担体担持金属ナノ粒子触媒の液相合成による製造法が望まれている。
【0013】
担体共存下で金属原料を液相合成して金属ナノ粒子の合成と担体への担持を同時に行うことは、合成と担持が同時に完了させることが可能である点で優れているが、精製工程の点でもメリットがある。一般的に液相合成法でコアシェル粒子や合金粒子等の複合粒子や結晶面を制御した粒子を合成する場合、担体共存下でなく、金属粒子のみを分散剤存在下で合成する方が制御は容易である。実験室レベルの合成においては粒子を合成してから担体と混合して担持する方法が現在でも頻繁に用いられている。しかし、大抵の金属ナノ粒子触媒においては、反応速度を高めるため、または高価な原料を有効に活用するために小さな粒子径で高い表面積のものが用いられる。10nm以下のナノ粒子は効率よく分離、濃縮をすることが容易ではなく、5nm程度に小さくなると沈降、ろ過、遠心分離等の種々の方法において簡便、安価、短時間に精製できる定番の方法は存在しない。つまり、担体が存在しない条件で金属ナノ粒子を合成すると精製工程に時間やコストがかかってしまう。担体共存下で合成と担持を同時に行うことで回収すべき生産物は流体力学的には担体のサイズまで大きくなるので、沈降、ろ過、遠心分離等の精製プロセスが格段にやりやすくなる。また、金属ナノ粒子のみを合成してから担体と混合して担持するという方法は、生産スケールの場合、超音波等を用いても、金属ナノ粒子を、均一に、全ての量を、高密度に担体に担持するのは難しく、担持されていない担体または金属ナノ粒子が余るか、全量担持されても担体上で凝集しがちである。これらのことより、合成の制御の点ではやや不利ではあるものの、生産スケールにおいては、担体共存下で金属原料を反応させて合成と担持を同時に行う方が製品のコストと品質管理の観点から有利であると思われている。
【0014】
液相合成による担体担持白金族微粒子の合成において大きな障壁となっているのが「高濃度化」「迅速化」「完全反応性」である。低濃度の原料から時間をかけて品質重視の微粒子を実験室で少量作製する手法は、現在までに様々なものが提案されている。しかし、金属微粒子の合成と担体への担持を同時に高濃度で迅速に行おうとすると種々の問題が生じる。
【0015】
高濃度化により担体間および金属微粒子間の距離が短くなり、ファンデルワールス力をはじめとした分子間引力が強くはたらくようになる。そのため担体は凝集、沈降しやすくなり金属原料との接触機会の減少および不均一化が生じ、金属微粒子同士も溶液中および担体上で凝集、異常成長しやすくなり効率的な触媒反応に必要な表面積を失ってしまう。金属原料、還元剤、添加剤、および金属原料の配位子や対イオンが電荷をもっている場合は担体表面官能基や分散剤による静電反発力が遮蔽されて弱められるとともに担体間の疎水性相互作用も強まり塩析が生じやすくなり、これによっても担体の凝集が起きる。これらの凝集による担持、粒子形状の不均一化のおこる傾向は高濃度化にしたがってより顕著になる。また、バッチ法でも連続法においても、容器内壁や反応管内壁への金属の析出が問題となることがある。担体が凝集し金属微粒子が担持されるべき表面積が失われると相対的に容器内壁や反応管内壁に金属微粒子が近接する機会が多くなり、析出が生じやすくなる。加えて、析出も高濃度化にしたがってより顕著になる現象である。析出が顕著になると生産物が均質であるとはいえなくなり、原料のロスや容器や反応管の交換、洗浄コストもかかる。析出を生じさせないようにするためにも反応進行中は担体を凝集させずに分散させておくことは非常に重要である。
【0016】
担体や金属原料の濃度がどの程度ならば高濃度なのかという問題があるが、凝集の起こりやすさを基準として考えると、エチレングリコールに分散させた疎水性カーボンブラックの場合、約1%程度で共存する電解質や水素イオン、水酸化物イオン、塩の影響を受けやすくなり、凝集が起こりやすくなる。また、工業生産をするにあたっても液相合成で濃度が1%以下の場合には取り扱う溶媒の体積が非常に大きくなりポンプやタンク等の設備に負荷がかかるようになる。また、担体濃度1%以上の担体担持連続合成反応の参考文献は非常に少ない。担体の分散性には表面化学組成、表面電荷、親水性/疎水性のバランス、溶媒と分散剤、粒子径と表面積、表面処理など様々な要因が影響を与えるため複雑ではあるが、本出願においては担体の重量濃度1%以上を高濃度とみなすことにする。原料金属化合物濃度については、高濃度の担体の表面を数ナノメートルの粒子で被覆できる程度の濃度が高濃度となる。例えば、本出願の実施例で用いられているカーボンブラックと白金の例の場合、重量パーセント濃度1%のカーボンブラックの表面を粒径数ナノメートルの粒子で覆う場合、およそ20mMの白金元素が必要となる。遷移金属とインジウム、スズの原子半径をほぼ等しいとすると、金属濃度がおよそ20mM以上の場合は液相合成における担体担持において高濃度ということができる。
【0017】
液相合成による担体担持金属微粒子は結晶成長の制御のやりやすさからバッチ法で行われる場合が多く、一部ではバッチ法による高濃度化も達成されている。しかし、バッチ法での結晶成長は数時間以上かかることが通例であるため、小さいタンクでは生産性が低く、その一方で大きなタンクでは設備投資とスケールアップ、温度、撹拌の不均一等の問題があり、加えて、高価な貴金属原料を使用する場合は、合成失敗時の不良品による損失リスクが高まる。低い初期投資かつ高い生産性で担体担持金属微粒子を合成するためには連続法が良いと考えられている。連続法では上手にプロセスを設計すれば常に同じ条件で均一性能のものを合成できる利点があり、トラブルが起きたとしてもその前後の生産物を不良品として処理すればよいので、バッチ法のように多量の不良品を作ってしまうリスクも低減できる。しかし、連続法により高生産性を達成するには、バッチ法の場合よりもはるかに迅速に反応を完結させねばならない。このことは金属ナノ粒子の精密な合成制御とは相いれない場合が多く、連続法による担体担持金属微粒子の合成例は非常に少なく、その例においても非常に低濃度の担体および原料濃度による合成にとどまっている。反応を迅速に進めるには温度を高める、原料の反応性を高める、還元力の強い還元剤を使う等の方法があるが、強すぎる反応駆動力は制御しづらい場合が多く、不均一な結晶成長、粗大粒子の成長、反応容器内壁への析出等が起こりがちである。熱力学的に進みやすい結晶成長の経路と速度論的に進みやすい結晶成長の経路が別の場合は、事態はより複雑になり、制御が困難になる。これらのような困難はあるものの、反応の制御された迅速化は連続プロセスを可能にする鍵であるため、非常に重要である。
【0018】
白金族金属原料等をはじめとした高価な貴金属原料から担体担持金属ナノ粒子触媒を合成する場合、原料を完全に反応させて、投入貴金属原料量と製品に含有される貴金属原料量をほぼ等しくすることがコストダウンにおいて重要である。投入した貴金属原料が一部しかナノ粒子にならない、または担体に吸着せず脱離してしまう等のロスが生じた場合、回収再利用をするとしてもコストがかかってしまう。コアシェル粒子のようにコアを合成してからシェルを合成する場合、なるべくワンポットで合成するのが望ましいが、コア粒子の原料が完全反応しないと、コア粒子の未反応原料を精製により除去しなければならないため、工程が増えてしまうので、複合粒子の場合も完全反応性はコストダウンのために重要である。さらに、生産量と生産性が高まり人件費や各種固定費の割合が低減してきた場合、すなわち、原料費、とりわけ貴金属材料の原料費がコストの大きな割合を占めるようになってきた場合、貴金属原料のロスはより重要な問題になる。そのため貴金属原料は完全反応させる必要があるが、既存の文献では原料が完全に反応したかどうかは明示されていない場合も多く、完全反応をさせるため一般的な方法は未だ確立されていない。貴金属原料を完全反応させるには長時間反応させるのが定番となっており、これは、前述した迅速性とほぼ対立する概念であり、両立するのが非常に困難である。
【0019】
特許文献1では、銅アンダーポテンシャル析出法によりカーボンに担持したパラジウム粒子を銅原子で被覆したものと白金原料を流路中で混合しカーボン担持パラジウムコア白金シェルを連続的に合成している。しかし、Pd/C分散液の原料濃度は0.5g/Lと非常に薄く(段落0044、0047)、40Lの原料液を処理するのに230分かかるとしている(段落0048)。非常に精密な合成を行っているものの、生産性を上げるのは容易ではないということがわかる。
【0020】
特許文献2では、反応液の加熱手段として、反応液にマイクロ波を照射することでカーボン担持パラジウムコア白金シェルの合成が行われている。半導体発振器とマイクロ波共鳴キャビティを用い、連続フロー系の反応管を電場の定在波の最も大きな位置に配置することで、急速加熱や均一性を損なうことなく化学反応のための加熱を行う試みがなされている。シングルモード加熱方式と連続フロー系を組み合わせたこの方式は、マイクロ波加熱により反応が十分に促進され、短時間で完了する場合には極めて有用である。この反応は短時間で完了しているようであるが、カーボン濃度は0.1%程度と薄く、高濃度化した場合に同様の方法が適用できるかの記載は一切無い。また、水酸化カリウムを添加することがコアシェル微粒子の効率的な製造に利用できることを可能性として記載しているが、可能性として記載しているだけで、高濃度条件における迅速化や完全反応性の詳細については全く記載がない。
【0021】
担体担持金属微粒子コロイドの連続合成法として他に様々な方法が提案されているが、いずれの方法も連続的に、安定な品質で高い生産性で製造することが困難であるというのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明の課題の1つは、高性能で安価な担体担持金属微粒子コロイドを工業レベルで提供することにある。
また、本発明の課題の1つは、高性能で安価な担体担持白金族含有コロイドを工業レベルで提供することにある。
また、本発明の課題の1つは、高性能で安価な担体担持パラジウムコロイドを工業レベルで提供することにある。
また、本発明の課題の1つは、高性能で安価な担体担持白金コロイドを工業レベルで提供することにある。
また、本発明の課題の1つは、高性能で安価な担体担持パラジウム―白金合金微粒子コロイドを工業レベルで提供することにある。
また、本発明の課題の1つは、高性能で安価な担体担持パラジウム―白金コアシェル微粒子コロイドを工業レベルで提供することにある。
そして、単体として、例えば、カーボン、アルミナ、ジルコニア等を用いたコロイドを工業レベルで提供することにある。
【0024】
本発明の課題の1つは、高性能で安価な前記各種コロイドの工業レベルでの連続合成方法を提供することにある。
【0025】
本発明の課題の1つは、高性能で安価な前記各種コロイドの工業レベルでの触媒、センサ、電池、抗菌材料等を提供することにある。
【0026】
本発明の課題の1つは、高性能で安価な担体担持白金族含有微粒子を提供することにある。例えば、酸素還元触媒としてのカーボン担持白金微粒子、カーボン担持パラジウムコア白金微粒子、アルミナ担持白金微粒子等である。
【0027】
本発明の課題の1つは、高性能で安価な担体担持白金族微粒子の合成において、高濃度の原料と担体濃度において、迅速に完全反応を達成するマイクロ波連続法プロセスを構築することである。
【課題を解決するための手段】
【0028】
上記課題を解決し、係る目的を達成するため、本発明に係る発明の実施の形態は、例えば以下の構成を備える。
【0029】
課題を解決するためになされた本発明の第1の発明(発明1という)は、
担体共存下で金属ナノ粒子合成と担体への担持を同時に行う担体担持金属微粒子合成方法において、担体濃度が重量パーセント濃度において1%以上であり、マイクロ波連続法による加熱で反応を開始させることを特徴とする担体担持金属微粒子製造方法である。
【0030】
課題を解決するためになされた本発明の第2の発明(発明2という)は、
重量パーセント濃度においてポリオール系溶媒を主な分散媒とし、白金族原料が20mM以上の濃度で、担体共存下で白金族元素含有ナノ粒子合成と担体への担持を同時に行う担体担持白金族元素含有微粒子触媒合成方法において、非求核塩基を添加剤として加え、マイクロ波連続法による加熱で反応を開始させることを特徴とする担体担持白金族元素含有微粒子製造方法である。
【0031】
発明2を展開してなされた本発明の第3の発明(発明3という)は、
発明2に記載の担体担持白金族元素含有微粒子製造方法において、非求核塩基が白金族原料の白金族元素物質量の4〜12倍添加されていることを特徴とする担体担持白金族元素含有微粒子製造方法である。
【0032】
発明2または3を展開してなされた本発明の第4の発明(発明4という)は、
2または3に記載の担体担持白金族元素含有微粒子製造方法において、担体に担持された白金族微粒子の透過電子顕微鏡または透過走査電子顕微鏡で測定した平均粒子径が10nm以下であることを特徴とする担体担持白金族元素含有微粒子製造方法である。
【0033】
発明2〜4を展開してなされた本発明の第5の発明(発明5という)は、
発明2〜4のいずれかに記載の担体担持白金族元素含有微粒子製造方法において、白金族元素含有微粒子が合金微粒子であることを特徴とする担体担持白金族元素含有合金微粒子製造方法である。
【0034】
発明2〜5を展開してなされた本発明の第6の発明(発明6という)は、
発明2〜5のいずれかに記載の担体担持白金族元素含有微粒子製造方法において、シェルが白金族元素で構成されていることを特徴とする担体担持白金族元素含有コアシェル微粒子製造方法である。
【0035】
発明2〜6を展開してなされた本発明の第7の発明(発明7という)は、
発明2〜6のいずれかに記載の担体担持白金族元素含有微粒子製造方法において、走査透過電子顕微鏡における500nm×500nmの視野における担体構成元素と微粒子元素の物質量の比率と原料液に含まれる担体構成元素と微粒子原料元素の物質量の比率がほぼ等しく、その差が原料に含有されている元素の物質量の比の20%以内に収まることを特徴とする担体担持白金族元素含有微粒子製造方法である。
【発明の効果】
【0036】
本発明の見出した方法による担体担持金属微粒子の合成に非求核塩基等の好適な添加剤を用い、担体の凝集を抑制して、マイクロ波連続法を用いることにより高濃度で迅速に原料を完全反応でき、高性能で安価な担体担持金属微粒子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、図面を参照して本発明に係る発明の実施の形態例について詳細に説明する。なお、説明に用いる各図は本発明の例を理解できる程度に各構成成分の寸法、形状、配置関係などを概略的に示してある。また、本発明の説明の都合上、部分的に拡大率を変えて図示する場合もあり、必ずしも実施例などの実物と相似形でない場合もある。また、各図において、同様の構成には同一番号を付して重複説明を省略する。さらに、以下の説明では、誤解が生じない範囲において、金属微粒子の製造方法の説明で金属微粒子や金属微粒子の製造装置の説明を兼ねる場合があり、また、その逆の場合もある。
【0040】
担体担持白金族含有微粒子触媒の代表例として、カーボン担持白金微粒子、アルミナ担持白金微粒子、アルミナ担持パラジウム−白金合金微粒子、酸化チタン担持白金微粒子、カーボン担持パラジウムコア白金微粒子、カーボン担持ニッケルコア白金シェル微粒子の合成を検討した。以下、発明を実施するにあたり重要な要素である担体、分散剤、白金族原料、マイクロ波連続法加熱と溶媒、反応時に発生する水素イオンと非求核塩基について順に説明する。
【0041】
担体共存下における液相法による白金族含有微粒子合成過程において、カーボンブラック等の担体上の官能基や欠陥において白金族微粒子の核形成が起きやすいと考えられている。そのため、担体に存在する官能基の種類、数、密度等を調整し、反応時における水素イオン濃度、水酸化物イオン濃度、白金族原料濃度、温度等の反応条件を適切に調整することで、担体上に目的とする粒子径と密度で白金族微粒子を、合成と同時に担持することができる。なお、担体の表面処理として硝酸、王水、濃硫酸、発煙硫酸、過マンガン酸カリウム等の既知の薬品を用いた既知の方法で、酸化によるカルボキシル基および水酸基等の付与、スルホン化、窒素等の異元素ドーピング等をあらかじめ行っておくことができる。
【0042】
担体としてはすでに公知の高表面積な物質を用いることができる。好適なものとしてはカーボンブラック、フラーレン、活性炭、炭素繊維、カーボンナノチューブをはじめとしたカーボン類、酸化スズ、酸化インジウム、酸化タングステン、マグネリ相酸化チタン等の導電性酸化物、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、バナジン酸ビスマス等の光半導体、窒化チタン等の窒化物、炭化チタン、炭化タングステン、炭化モリブデン等の炭化物、ホウ化チタン、ホウ化ニッケル等のボライド、アルミナ、シリカ、ジルコニア等のセラミックス化合物、および関連する酸窒化物、炭窒化物等の物質やそれらに少量の異元素をドーピングしたもの等がある。カーボンブラックの具体的な種類としてはVulcan(登録商標)XC72やKetjen Black EC300J等の市販品があり、それらを表面処理し官能基を導入したものも用いることができる。また、天然繊維、合成繊維、鉱物繊維等の繊維類も金属微粒子を担持するための担体として用いることができ、糸、布の形状においても紡績糸、中空糸、織布、不織布等様々なものがあり、金属微粒子を担持して触媒反応や抗菌作用等の機能が付与できることが知られている。具体的な繊維の種類としてはセルロース、セルロースアセテート、ナノセルロース、ケラチン、フィブロイン、ナイロン、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリオレフィン、ポリウレタン、エンジニアリングプラスチック繊維、グラスウール、ロックウール等がある。
【0043】
上記の担体は機能により様々な用途に使用される。電池として用いる場合は導電性と電解質や酸化還元反応に対する安定性が求められ、カーボン類、酸化スズ、酸素不足酸化物、窒化チタン、炭化モリブデン等が用いられる。燃焼触媒や燃焼式ガスセンサとしては絶縁性、耐熱性が必要とされ、アルミナ、ジルコニア等の熱に対して安定な酸化物を用いることができる。光触媒としては酸化チタン、酸化タングステン、チタン酸ストロンチウム、バナジン酸ビスマス、その他酸窒化物等、バンドギャップ、ドーピング、欠陥を制御した光半導体が用いられる。抗菌材料としては綿、ポリエステル等の繊維に抗菌性を発揮する金属微粒子が担持されたものが知られており、中空糸の内部に担持することもできる。これらの担体に共通な特性として、担体の機能を失わない範囲で広い表面積を有することが多くの用途で重要である。
【0044】
これらの担体に分散剤を加えて担体の分散性を高めることもできる。燃料電池用途であればNafion(登録商標)等のイオン交換樹脂、Disperbyk190、Disperbyk2015、Disperbyk194N、BYK154、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリメタクリル酸アンモニウム、カルボキシメチルセルロース、マリアリムAKM−0531、マリアリムSC−0505K等のポリカルボン酸、プルロニックTR−704等のEO/PO共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、Tween20、TritonX−100、スパン80等のノニオン系界面活性剤、ドデシル硫酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸、リン酸モノドデシルナトリウム、リン酸オレイル等のアニオン系界面活性剤、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリエチレンイミン、セチルトリメチルアンモニウムクロライド等のカチオン系界面活性剤がある。分散剤の添加量を多くすると担体の分散は良くなるが、多すぎると金属微粒子が分散剤で安定化され担体から遊離してしまい原料の損失となる。合成と担持を同時に行う場合、担体は十分に分散するが、金属微粒子の担持も損失なく起こるように分散剤の量を調整しなければならない。
【0045】
燃料電池用アイオノマーを燃料電池用カーボン担体の分散剤として使用した場合、精製、焼成等により完全除去する必要がないことも重要である。ポリビニルピロリドン等の高分子分散剤は金属ナノ粒子の合成に広く使用されているが、これらの分散剤は金属ナノ粒子とカーボンの分散性を良好にする一方で、微粒子表面に強く吸着するので完全に除去することは難しいことがわかっており、触媒表面に残存した高分子分散剤は触媒性能を著しく害するということもわかっている。燃料電池用アイオノマーは触媒表面へのプロトンの移送のために電池作製工程で添加される電池の構成成分のひとつであるので、少量が残存しても燃料電池性能にはあまり影響しない。
【0046】
白金原料として好適なものとして、塩化白金(2)(PtCl2)、テトラクロロ白金(2)酸カリウム(K2[PtCl4])、ジニトロジアンミン白金(2)(Pt(NO2)2(NH3)2)、ヘキサクロロ白金(4)酸(H2[PtCl6])、ヘキサクロロ白金(4)酸ナトリウム(Na2[PtCl6])、ヘキサクロロ白金(4)酸カリウム(K2[PtCl6])等を用いることができるが、上記の原料に特に限定されない。
ルテニウム原料としては塩化ルテニウム(3)三水和物(RuCl3・3H2O)、ルテニウム(3)アセチルアセトナート、ヘキサクロロルテニウム(4)酸塩、ロジウム原料として、塩化ロジウム(3)三水和物(RhCl3・3H2O)、ロジウム(3)アセチルアセトナート、ヘキサクロロロジウム(3)酸塩、
イリジウム原料として、塩化イリジウム(3)三水和物(IrCl3・3H2O)、イリジウム(3)アセチルアセトナート、ヘキサクロロイリジウム(3)酸塩、オスミウム原料として、塩化オスミウム(3)三水和物(OsCl3・nH2O)、ヘキサクロロオスミウム(4)酸塩、オスミウム(6)酸カリウム等を用いることができる。
【0047】
パラジウム原料として好適なものとして、塩化パラジウム(2)(PdCl2) 、テトラクロロパラジウム(2)酸ナトリウム(Na2[PdCl4])、テトラクロロパラジウム(2)酸カリウム( K2[PdCl4])、テトラクロロパラジウム(2)酸アンモニウム((NH4)[PdCl4])、酢酸パラジウム(2)(Pd(CH3COOH2)、シュウ酸パラジウム(2)(PdC2O4)、硝酸パラジウム(2)(Pd(NO3)2)、硫酸パラジウム(2)(Pd(SO4))、パラジウムアセチルアセトナート、テトラアンミンパラジウム(2)塩、ジニトロジアンミンパラジウム(2)の中から選ばれる原料を含むものを挙げることができる。
【0048】
白金族以外の金属としてニッケル、金、銀、銅、スズ、コバルト、モリブデン、タングステン、インジウム等を単独、または合金の形で液相法で合成と担持を同時に行うことができる。原料として塩化ニッケル(2)、酢酸ニッケル(2)、硝酸ニッケル(2)、硫酸ニッケル(2)、塩化金(3)酸、硝酸銀(1)、酢酸銀(1)、塩化銀(1)、硫酸銅(2)、塩化銅(2)、硝酸銅(2)、酢酸銅(2)、酸化銅(1)、酸化銅(2)、塩化スズ(2)、塩化スズ(4)、硫酸スズ(2)、メタンスルホン酸スズ(2)、塩化コバルト(2)、酢酸コバルト(2)、硝酸コバルト(2)、コバルト(2)アセチルアセトナート、モリブデンヘキサカルボニル、タングステンヘキサカルボニル、塩化インジウム(3)、硝酸インジウム(3)等の原料を使用することができる。
【0049】
液相還元法における反応液の加熱手段として、特許文献2に記載された発明のように、反応液にマイクロ波を照射することが行われている。即ち、ここでは、半導体発振器とマイクロ波共鳴キャビティを用い、連続フロー系の反応管を電場の定在波の最も強度の高い位置に配置することで、急速加熱で均一性を損なうことのない化学反応のための加熱を行っている。これに狭く限定されないが、寸法と共鳴周波数を適合させたキャビティ内において単独の電磁場のモードを発生させる方式であるシングルモード加熱方式が特に好ましく、マイクロ波加熱により反応が十分に促進され、短時間で完了させる場合には極めて有用である。加えて、バッチ法で問題となる加熱、反応の不均一も著しく改善できる。マイクロ波を使用せず水浴、オイルバス、サンドバス、ヒートブロック等で反応管の外部から加熱する連続法もありうるが、この場合は熱伝導が緩やかで時間がかかり、反応管の径が太くなるにしたがって加熱の不均一性もでてくる。このため、外部加熱による連続法では高濃度条件における均一性や反応の迅速性という要求を満たすことは難しくなってしまう。
【0050】
マイクロ波照射は、反応液に照射されるマイクロ波の周波数、反応液の材料、反応液を流通させる反応管の内径、反応管の材質などによって、照射の効果が変わってくる。マイクロ波の周波数は、日本の場合、電子レンジ(周波数帯2.4〜2.5GHz)によく使われている周波数の他に、5.8GHz、0.9GHzなど、各種使われている。本発明の検討では2.45GHzの周波数を主として、その他に、これに狭く限定されないが、5.8GHz、0.9GHzなど他の周波数帯も用いた。
【0051】
マイクロ波共振器として、2.45GHzの周波数を主とする場合、TM010モードの定在波が形成される内径92mmの円筒形キャビティとTE01モードで伝達される内径寸法109mm×55mmの方形導波管を用いた。マイクロ波発振源としては既知の半導体発振器やマグネトロン発振器を加熱に必要とされるパワーに応じて使用することができる。
【0052】
マイクロ波をよく吸収する溶媒を用いることで、ヒーターやオイルバス等の通常加熱よりも急速に且つ均一に加熱を行うことができ、短時間での反応の完結、エネルギーの有効利用等の利点を利用できる。
【0053】
グリコール系溶媒は、沸点、粘度が高く、様々な物質を溶解し、人体に対して比較的安全で、マイクロ波を吸収しやすく、弱い還元能を有するものが多く、本特許の技術に適した溶媒群である。具体的にはエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、等があるが、これらに限定されるものではない。また、上記グリコール系溶媒にグリセリン等のポリオール類や、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類、グリコールエステル類、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ホルムアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γ―ブチロラクトン等の極性溶媒を必要に応じて加えることもできる。
【0054】
これらの観点から、これに狭く限定されないが、本発明の実施の形態例の一つでは、マイクロ波をよく吸収する代表的な溶媒であり、短時間でその沸点(196℃)近くまで加熱することができるエチレングリコールを主溶媒として用いることにした。エチレングリコールは代表的なポリオールであり、ポリオールの中では還元力が強いほうであるものの、その他のポリオール溶媒も類似の還元性およびマイクロ波吸収性能を示す。ポリオールの還元力や担体との親和性、原料塩の溶解性、合成する粒子の粒子径等の合成産物の性状に応じてポリオール類は適宜選択、混合することができるので、エチレングリコールの例は各種ポリオールを用いた場合でも好適に応用することができ、エチレングリコールの例は広い一般性を有するものである。
【0055】
本出願ではエチレングリコールを還元剤として主に用いるが、その他の還元剤、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等のモノアルコール、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、グリオキサール、グリオキシル酸、グルコース、グルタルアルデヒドのようなアルデヒド化合物、シュウ酸、アスコルビン酸、グリコール酸、クエン酸等の有機酸、カテコール、ヒドロキノン、ピロガロール、硫酸p−(メチルアミノ)フェノール等のヒドロキシフェノール類、亜リン酸、ジ亜リン酸、亜硫酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜ジチオン酸ナトリウム等のオキソ酸類、ヒドラジン、カルボヒドラジド、ヒドラジノエタノール、フェニルヒドラジン等のヒドラジン、ヒドラジド、ヒドラゾン化合物、水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミンボラン等のホウ素系還元剤、一酸化炭素、水素等の還元性ガスを既知の方法及び目的の反応に適した方法で単独、または複数種類を組み合わせて用いることができる。
【0056】
上記の溶媒の他に水を反応原料液に添加することもできる。水は(1)沸点が100℃でありそれ以上の加温をするには加圧が必要なこと(2)ポリオール―水の混合溶媒系に金属原料と塩基を加えると常温で反応が開始してしまう場合があり原料液を冷やしながら調製する必要があること、等の欠点がある。さらに、(3)一般的なカーボンブラック等、表面に親水性の官能基が少ない担体は疎水性であるため水溶媒中での分散は困難という欠点があるため水とカーボンブラックのような疎水性担体は相性が悪い。しかし、(1)水を一定量混合することで水の高い誘電率により静電相互作用が弱められ、有機溶媒のみでは低かった塩の溶解度を上げることができる(2)原料液を冷やす必要があるが完全反応に必要な温度は低くできる場合がある、等の利点もある。カーボンブラックを酸等で表面処理したり分散剤を適切に選択すればカーボンブラックも水を含んだ溶媒に分散させることができるため、最終製品となる触媒の性能に影響を与えない範囲で表面処理すれば水を含有する溶媒は担体担持金属微粒子の合成に使用することができる。
【0057】
親水性の担体は水やエチレングリコールのような極性溶媒に親和性がある場合が多く、これらの溶媒と適切な分散剤を用いて分散させることができる。
【0058】
白金族原料化合物はMXn(Mは白金族金属陽イオン、Xnはn個の対となる陰イオン)の形式で表すことができ、対の陰イオンとして塩化物イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン等がある。これらの原料の反応は、Xが一価の陰イオンだとすると、模式的には、
MXn + ne−(還元剤から供給される電子)→M(金属) + nX−
となり、n個の陰イオンが放出される。これらの陰イオンは有機溶媒中での溶解度が大きくない場合が多く、反応後に別の陽イオンと結合して塩として析出したり、カーボンを塩析させたりして反応を不均一にする原因となる。例えば、ヘキサクロロ白金(4)酸が還元されると白金1モルにつき6モルの塩化物イオンが放出されることになり、対イオンが反応系に与える影響は金属原料濃度が高濃度になればなるほど顕著になる。このような高濃度の対イオンの影響は有機溶媒のみでは受け止められない場合が多いが、水を反応系にいくらか添加することで対イオンを水和させて溶解状態を保ち、カーボンの分散と反応の均一性を保つことができる。上記のような形式で表現される白金族原料化合物は水、極性有機溶媒、希塩酸に溶解させることができ、これらの化合物の還元機構はほぼ同一であることから、本発明で明らかとなった担体担持白金族微粒子製造方法は白金族一般に成立する有用な方法である。
【0059】
本発明の実施の形態例では、原料金属塩を還元することで金属ナノ粒子を合成している。この反応は、化学式で表現すると、
M+(金属イオン)+ e−(還元剤から供給される電子)
→ M0(金属) ・・・(1)
となる。
右項の0価の金属が数千個程度集まることで金属微粒子が構成される。
【0060】
上記の金属イオンの原料や、電子を供給するための還元剤に何を用いるかで様々な合成法が考えられるが、本発明の実施の形態例では、金属原料として塩化白金酸と塩化パラジウム、塩化ニッケルを、還元剤としてエチレングリコールを用いた。
【0061】
エチレングリコールは加熱されると還元力をもつようになり、化学式では、
エチレングリコール →
e − + エチレングリコール酸化産物+ 水素イオン・・・(2)
と表現される。
マイクロ波で金属原料塩を含んだエチレングリコールを急速に加熱することで、エチレングリコールから急速に電子が多量に供給され、原料金属塩が急速に還元されることによって粒子径の小さい微粒子が合成できる。
【0062】
エチレングリコールのゆるやかな加熱では、金属粒子の核形成と結晶成長が穏やかになり、粒子径の大きいナノまたはミクロン粒子が生成される傾向がある。
【0063】
(2)式ではエチレングリコールからの電子の供給とともに水素イオンが放出されるが、これが蓄積すると反応速度が減少し、粒子径の小さな微粒子が形成されづらくなる。しかし、水素イオンを受け取れる化合物または水酸化物イオンを含む化合物を添加しておくことで水素イオン濃度の増大を抑制することができ、高い反応速度を維持することが可能で、結果として粒子径の小さなナノ粒子を合成することができる。
【0064】
本発明の実施の形態例では、マイクロ波による急速加熱を用いて小さな粒子径の白金族含有微粒子を合成しているが、これらの場合において、非求核塩基を還元反応の促進剤として用いることを特徴としている。これらを添加することにより、高温での還元反応はより速くすることができ、高濃度においても迅速で、原料が完全に生産物になる連続反応系が達成される。また、非求核塩基の添加量をやや減らすことで核形成を抑制し粒子成長を促進させることもできる。この現象を利用すると、マイクロ波加熱による連続法においても、白金単独の微粒子の生成を抑制し、均一な厚みの白金シェルを形成することが可能となる。
【0065】
水素イオン濃度の増大を抑制する化合物として求核性を有する一級アミンやピリジンやイミダゾール等の複素環芳香族アミン類も考えられるが、一級アミンや複素環芳香族アミンは白金族原料と錯体を形成したり、生成した微粒子表面に吸着する傾向が強いため、これら原料の反応性や粒子成長の様子が複雑に変化してしまう。金属の水酸化物も水酸化物イオンの供給源として考えられるが、エチレングリコール中で十分に溶解するものでなければならない。本発明の発明者は多くの実験の結果、担体担持白金族含有微粒子触媒の高濃度、迅速な連続合成に非求核塩基を用いることが特に好ましく、その条件を見出した。本発明の実施の形態例では、上記の反応を担体の共存下で行っている。
【0066】
本発明者らは、反応における非求核塩基の濃度が担体担持白金族含有微粒子の形成において極めて重要であることを見出した。そして、多大な試行錯誤の結果、前記の望ましくない反応経路を抑制し、反応液を流通させながらマイクロ波を反応液に照射する連続合成法を用いて、性能の高い担体担持白金族含有微粒子触媒を得る工程を完成させることができた。
【0067】
多くの実験の結果、本発明の課題の解決のための反応を効果的に進めるためには、反応のための添加物に非求核塩基を用いることが効果的であることを見出し、その種類と触媒品質の関係を詳しく調べることにした。
【0068】
非求核塩基としては具体的に、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、N−メチルジエタノールアミン、エチレンジアミン誘導体等を使用することができる。これらは3級アミンであり、かさ高い置換基が窒素原子に結合しており、窒素上の孤立電子対がプロトンを受け取ることはできるが、求核反応や配位結合に関与しづらいようになっている。共役酸のpKa(酸解離定数)が10以上のものは塩基性が強くポリオールによる還元反応を推進する力が強いことも発明者らは見出した。
【0069】
反応に悪影響を与えない範囲で2級アミンのような塩基性物質を添加することもできる。具体的には、ジエタノールアミン、2−(メチルアミノ)エタノール、グアニジン、テトラメチルグアニジン、等がある。また、反応に関与する水酸化物イオンを増加する目的はで、望まない副反応や担体の凝集を誘導しない範囲で、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物やテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、コリン等の四級アンモニウム水酸化物を使用することができる。
【0070】
マイクロ波連続加熱法と非求核塩基を適切に用いることにより、本発明者らはロット内での品質保持、ロット間でのばらつき抑制、工程の簡便化のトレードオフを解決するに至った。マイクロ波加熱による急速加熱はオイルバスやスチーム等を用いる通常加熱と比べて急速な加熱が可能であり、各種の有機合成、無機合成プロセスに利用されている。また、被加熱物の容積をある程度小さくすれば電場のエネルギーを集中させて加熱速度をさらに高めるとともに、溶媒のみを均一に加熱することができるため、ナノ粒子など核形成と成長のタイミングが重要な反応に適している。加えて、マイクロ波による加熱工程を、流路を用いた連続法により構成することでロット間のばらつき、生産性のトレードオフを解消することができた。バッチ法でマイクロ波加熱することもできるが、生産性を高めようと被加熱物の体積を大きくすると均一性が損なわれてロット内の品質にばらつきがでてしまう。それに対してマイクロ波連続照射法では常に同じ条件で合成産物が得られるので、自動化も容易である。さらに、トラブルが生じた場合でも流路を切り替えて不良品を分ければよいだけであり、バッチ法のように貴重な貴金属原料をタンク丸ごと無駄にするというような事態は生じない。
【0071】
加えて、カーボン担持パラジウムコア白金シェル粒子等のように、担体担持複合粒子を合成する場合、パラジウム微粒子形成工程とひき続く白金シェル形成工程をひと続きの反応管でつないで連続法にすることの利点も重要である。パラジウム微粒子の表面は合成直後、共存する水酸化物イオンや塩化物イオンが吸着していると考えられるが、大気中に放置などすることによってその表面に酸化物層が形成されたり、外部から硫黄などの不純物原子が強く吸着したりして表面が汚染されてしまうと考えられる。このような表面の汚染は均一な白金被覆構造の形成を妨げると考えられており、ふたつの工程をバッチ法などで分けてしまうとバラツキが生じる原因となってしまう。そのため、パラジウム微粒子が形成されたらなるべく素早く白金原子により被覆してしまうのが理想的であり、連続法による合成はこの要件を満たしている。
【0072】
マイクロ波連続加熱法で2段の反応を行うにあたり、第二工程において第一工程の残渣が第二工程を阻害しないか、という問題がある。パラジウムまたはニッケル微粒子合成工程の残渣については、白金シェル形成工程に悪影響を与えない原料と反応条件を選定するなどの方法で克服した。
【0073】
担体共存下でマイクロ波連続加熱法を行うにあたり、スラリーを脈動無く輸送できるポンプが必要である。モーノポンプ、精密ダイヤフラムポンプ等の適切な使用は、カーボン担体、アルミナ担体、酸化チタン担体においても有用であることを見出すことができた。原料と担体スラリーをポンプにつなぎマイクロ波で連続的に加熱していくことで担持された高品質触媒スラリーが製造できるという理想的なプロセスを作り上げることができた。また、必要であればポンプおよび配管系の耐圧性能が許す範囲内で連続合成系の流路を加圧することもでき、既知の圧力タンクやニードルバルブ等を用いて連続合成系を構築することもできる。加圧することにより溶媒や添加物、微量な水分の突沸や、溶存している気体の核形成を防ぐことができ、より均一な連続合成系を実現できる。
【0074】
担体共存下においてコア粒子の形成と担持の反応を行い、次いで白金シェル層形成の反応を経ることで、白金使用量低減と生産性を大幅に改善することができた。前述したように、触媒粒子の合成後、担体に吸着させる方法は担持率の悪さと担持の不均一さから実際の生産には向いていない。しかも、本発明のように貴金属を用いた触媒の場合、コアシェル構造など工程に手間がかかる微粒子触媒が合成の最後の段階で失われるという非効率なプロセスになってしまう。本発明者らは多大な実験と検討の末、中途に精製工程をはさまず、担体上に白金族複合触媒を形成する方法を見出した。合成後に行うのは水洗により水溶性の塩と溶媒残渣を除去する過程のみである。
【0075】
マイクロ波連続加熱法においては、マイクロ波が均一加熱、急速加熱できる範囲においては反応管を太くしてスケールアップすることが可能である。バッチ法においてはスケールアップで大きなタンク等で反応を行う際は伝熱や撹拌等様々な検討項目があるが、マイクロ波連続法においては投入エネルギーと滞留時間を制御することで比較的簡単に生産量を増やすことができる。
【0076】
以上のような方法はカーボン担体だけでなく、セラミックス類をはじめとする様々な下地や、カーボンと金属、セラミックス類を複合機能化させた下地に白金族微粒子を担持させる際に応用することができる。そのため、本方法は白金微粒子、パラジウム白金合金微粒子、パラジウムコア白金シェル微粒子だけでなく、白金族元素含有複合微粒子、白金族元素含有複合構造の形成に広く応用できる点で極めて有用である。
【0077】
以上のように、本発明の、非求核塩基の添加、マイクロ波連続法、担体共存下での合成という要素技術の適切な組み合わせにより、今まで存在してきた生産にまつわる種々のトレードオフを解決することができた。本発明により、品質、コスト、生産性を両立した白金微粒子および白金族含有複合微粒子を製造することができ、固体高分子形燃料電池、各種空気電池、各種光触媒、各種ガスセンサ、各種抗菌材料等の広範な実用化に向けた大きな進展であるといえる。
【0078】
以上を踏まえた本発明の実施の形態例を以下に具体的に説明する。
【0079】
図1は、本発明の実施の形態例としてのカーボン担持白金微粒子、アルミナ担持白金微粒子、アルミナ担持パラジウム−白金合金微粒子、酸化チタン担持白金微粒子の製造装置の構成を概略的に示した図である。
【0080】
図1 において、符号1 は白金粒子またはパラジウム粒子の原料塩、カーボン担体またはアルミナ担体または酸化チタン担体、分散剤、非求核塩基を溶媒に溶解、分散させた反応原料液及び反応原料液を送液するポンプ、必要に応じて反応原料液を冷却するクールバスから構成されており、反応原料液を送液ポンプで次行程に送液する行程を示している。符号2はマイクロ波の電場を閉じ込めて反応管内の液体に照射して加熱するための共振器構造体であり、具体的には反応原料液作製行程で作製され送液されてくる反応液を、マイクロ波共振器構造体内を通る反応管に流通させ、反応管内を流通する反応原料液にマイクロ波を照射するキャビティなどの共振器構造体であり、マイクロ波照射系を構成している。符号3は生成したカーボン担持白金族含有粒子を回収するためのタンクである。なお、反応管の材質は各種フッ素樹脂、石英ガラス等各種ガラス類、各種エンジニアリングプラスチック類、各種セラミックス類、およびそれらを既知の方法で複合化したもの、表面処理したもの等、マイクロ波の吸収が少なく、耐熱性が高く、内壁へ微粒子、金属薄膜が付着しづらいものを用いることができる。反応管の内径、外径はインピーダンス整合、耐加圧性能、流速と滞留時間を考慮して適宜適切なサイズなものを用いることができる。
【0081】
図2において符号4はパラジウムコア粒子の原料塩、アイオノマー、カーボン担体、非求核塩基原料を溶媒に溶解、分散させた反応原料液及び反応原料液を送液するポンプから構成されており、具体的にはテトラクロロパラジウム(2)酸トリエチルアミンとNafion(登録商標)とKetjen Black EC300Jとトリエチルアミンおよびその塩酸塩とエチレングリコールを混合した反応原料液を送液ポンプで次工程に送液する様子を示している。
【0082】
符号5および10はマイクロ波の電場を閉じ込めて反応管内の液体に照射して加熱するための共振器構造体であり、具体的には反応原料液作製行程で作製され送液されてくる反応液を、マイクロ波共振器構造体内を通る反応管に流通させ、反応管内を流通する反応原料液にマイクロ波を照射するキャビティなどの共振器構造体であり、マイクロ波照射系を構成している。符号6は符号5により加熱された反応液を冷却や保温をする装置であり、冷媒を流通させることができる二重管やペルティエ素子を用いることができる。
【0083】
符号7は非求核塩基溶液およびそれを送液するポンプから構成されており、符号9aは符号7により送液された非求核塩基溶液と符号5により生成し符号6 によって冷却されたカーボン担持パラジウムナノ粒子分散液とをミキサーにより混合する工程を示す。
【0084】
符号8は白金シェル層形成の原料塩を溶解させた溶液およびそれを送液するポンプから構成されており、符号9b は符号8により送液された白金原料溶液と符号9aにより混合された分散液とをミキサーにより混合する工程を示す。白金原料溶液と混合されたカーボン担持パラジウム粒子分散液は符号10のキャビティにマイクロ波照射により加熱され、白金シェルが形成される。符号11は生成したカーボン担持パラジウムコア白金シェル粒子を回収するためのタンクである。
【0085】
図3は反応管をやや太くした場合のマイクロ波連続加熱法の装置の構成の模式図である。
図3は断面図であり、反応管内を流れる反応液と導波管内を伝わるマイクロ波の流れをわかりやすく示す図である。溶媒の誘電率にもよるが、反応管の内径が太くなるとTM010モードではインピーダンス整合が合わせられなくなることもある。そのような場合、方形導波管のTE01モードを利用することでやや太い反応管にも対応することができる場合がある。反応管の軸と符号14で表される導波管内の電場の方向を一致させるように配置することでマイクロ波エネルギーにより反応管内部を流れる液体を効率よく加熱することができる。符号12は導波管を貫いて配置されている反応管を表している。加熱される反応原料液はこの内部を通って流され、その様子は符号13により模式的に表現されている。
図3の場合マイクロ波は符号15で表されるマグネトロンより照射され、マイクロ波が導波管内を伝わる様子が符号16により模式的に表現されている。マグネトロンと導波管はひとつの加熱ユニットを形成しており、単独の加熱ユニットでは温度上昇が十分でない場合は二段、三段と複数段の加熱ユニットを設置してマイクロ波の総出力と加熱性能を向上させることができる。
【0086】
以下、本発明を実施例及び比較例を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれに狭く限定されない。
【0087】
(実施例1)
トリエチルアミンを添加し、カーボン担体に担持する場合。
担体カーボンとしてKetjen Black EC300Jが2グラム/100ミリリットル、分散剤としてNafion(登録商標)(DE520 CSタイプ)が0.4%になるようにエチレングリコールに混合し、超音波をかけて担体カーボンが均一な分散液になるようにする。この分散液にヘキサクロロ白金(4)酸を40mM ,トリエチルアミンを480mM になるように加えて完全に溶解させ、これを反応原料液とした。この反応原料液をカーボン分散液をよどみなく送液ことができるポンプでマイクロ波加熱部へ送液する。
【0088】
反応原料液を内径2mmのPFA(Perfluoroalcoxy alkane)反応管で流速6ml/分で送液し、80℃で加熱した。反応管は内径92mm高さ10cmの円筒状の空間を有するマイクロ波キャビティの円筒中心軸に沿って配置した。TM010モードの定在波が形成される周波数のマイクロ波をキャビティに照射することで加熱を行い、反応原料液の温度は放射温度計により反応管中央の位置にて計測を行った。また、TM010 モードの定在波が形成される周波数は反応原料液の温度により変化するが、その周波数に常に一致するよう、照射するマイクロ波の周波数を調整した。このときの周波数範囲は、2.4〜2.5GHzであった。
【0089】
(実施例2)
ジアザビシクロウンデセンを添加し、アルミナに担持する場合
担体として市販のアルミナ(粒子径約1μm)を2g/100ml、分散剤としてDisperbyk190を0.4%になるようにエチレングリコールに混合し、超音波をかけて担体アルミナが均一な分散液になるようにする。この分散液にヘキサクロロ白金(4)酸を40mM ,ジアザビシクロウンデセンを400mM になるように加えて完全に溶解させ、これを反応原料液とした。この反応原料液を実施例1と同様の条件で100℃でマイクロ波連続加熱した。
【0090】
(実施例3)
ジアザビシクロウンデセンを添加し、合金粒子をアルミナに担持する場合
担体として市販のアルミナ(粒子径約1μm)を2g/100ml、分散剤としてDisperbyk190を0.4%になるようにエチレングリコールに混合し、超音波をかけて担体アルミナが均一な分散液になるようにする。この分散液に塩化パラジウム(2)−塩酸混合水溶液(塩化パラジウムと塩酸のモル比は1対1〜3)をパラジウム金属濃度が20mM、ヘキサクロロ白金(4)酸を20mM、ジアザビシクロウンデセンを480mM になるように加えて完全に溶解させ、これを反応原料液とした。この反応原料液を実施例1と同様の条件で100℃でマイクロ波連続加熱した。
【0091】
(実施例4)
ジアザビシクロウンデセンを添加し、酸化チタンに担持する場合
担体として市販の酸化チタン(粒子径約1μm)を2g/100ml、分散剤としてDisperbyk190を0.4%になるようにエチレングリコールに混合し、超音波をかけて担体酸化チタンが均一な分散液になるようにする。この分散液にヘキサクロロ白金(4)酸を40mM、ジアザビシクロウンデセンを480mM になるように加えて完全に溶解させ、これを反応原料液とした。この反応原料液を実施例1と同様の条件で100℃でマイクロ波連続加熱した。
【0092】
本発明者らが詳細な実験を繰り返し検討を重ねた結果、添加するヘキサクロロ白金(4)酸またはテトラクロロパラジウム(2)酸の物質量の4〜12倍の非求核塩基を反応原料液に添加することが望ましいということを明らかになった。反応進行による水素イオン濃度を受け取るための共存する塩基濃度が低いと、水素イオン濃度が上昇し核形成が遅くなり粒子径が大きくなってしまい、また、未反応の白金原料が残存することもある。塩基の濃度が高いと還元速度が速すぎ担持されない遊離粒子や白金ナノ粒子の凝集体が生じてしまい均一な担持にならない。
適切な塩基の濃度は金属原料が水素イオンを含有するか否か、金属原料を還元するために必要な還元電子数によっていくらか変動するものの、迅速に完全反応させるには4〜12倍の非求核塩基が必要であり、この濃度範囲で遊離粒子や凝集体が生じない程度の非求核塩基濃度に調整すればよい。
【0093】
(実施例5)
トリエチルアミンを添加し、カーボンにパラジウムコア粒子を担持した後、白金シェルを形成する場合
担体カーボンとしてKetjen Black EC300Jが2グラム/100ミリリットル、分散剤としてNafion(登録商標)(DE520 CSタイプ)が0.4%になるようにエチレングリコールに混合し、超音波をかけて担体カーボンが均一な分散液になるようにする。この分散液に塩化パラジウム(2)−塩酸混合水溶液(塩化パラジウムと塩酸のモル比は1対1〜3)をパラジウム金属濃度が40mM ,トリエチルアミンを400mM になるように加えて完全に溶解させ、これを反応原料液とした。この反応原料液を実施例1と同様の条件で100℃でマイクロ波連続加熱した。担体担持コアシェル粒子を合成する場合の模式図を
図2に示す。
【0094】
上記方法により合成されたカーボン担持パラジウム粒子分散液には
図2の符号9aのミキサー(配管合流経路における混合器)により、符号7のトリエチルアミンエチレングリコール溶液が、濃度を調整して添加された。本実施例においてはトリエチルアミン濃度が40mM増加するように濃度、流速を調整してトリエチルアミンエチレングリコール溶液が添加、混合された。
【0095】
前期方法によりカーボン担持パラジウム粒子分散液に非求核塩基が添加された後、混合後の液のパラジウムと白金のモル比が1:1になるように、符号8の白金原料溶液から供給される塩化白金(4)酸エチレングリコール溶液が濃度と流速を調整して添加され、符号9bのミキサーにより混合された。
【0096】
符号9bのミキサーで混合されたカーボン担持パラジウム粒子分散液と塩化白金(4)酸エチレングリコール溶液は10のマイクロ波キャビティに配置された反応管を流速7ml/minで送液され、80℃になるように加熱された。合成されたカーボン担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドは11のタンクに回収された。
【0097】
(実施例6)
ジアザビシクロウンデセンを添加し、カーボンにニッケルコア粒子を担持した後、白金シェルを形成する場合
担体カーボンとしてKetjen Black EC300Jが2グラム/100ミリリットル、分散剤としてNafion(登録商標)(DE520 CSタイプ)が0.4%になるようにエチレングリコールに混合し、超音波をかけて担体カーボンが均一な分散液になるようにする。この分散液に塩化ニッケル(2)を濃度が40mM ,ジアザビシクロウンデセンを480mM になるように加えて完全に溶解させ、これを反応原料液とした。この反応原料液を実施例1と同様の条件で170℃、流速3ml/分で送液しマイクロ波連続加熱した。ニッケル原料はパラジウム原料より還元反応が進行しづらいので、完全反応のために高温とやや長いキャビティ滞留時間が必要である。ここでの滞留時間は流速と反応管容積から計算すると6.28秒である。
【0098】
上記方法により合成されたカーボン担持ニッケル粒子分散液に非求核塩基と塩化白金酸を加えて白金シェルを合成するが、その際の連続反応系の構成は実施例5および
図2と同様のものを用いた。
図2の符号9aのミキサーにより、符号7のジアザビシクロウンデセンエチレングリコール溶液が、符号9bのミキサーにより符号8の塩化白金(4)酸エチレングリコール溶液が、濃度と流速を調整して添加、混合された。本実施例においてはジアザビシクロウンデセン濃度が20mM増加するように、塩化白金(4)酸エチレングリコール溶液が混合後のニッケルと白金のモル比が1:1になるように添加、混合された。
【0099】
符号9bのミキサーで混合されたカーボン担持ニッケル粒子分散液と塩化白金(4)酸エチレングリコール溶液は10のマイクロ波キャビティに配置された反応管を流速4ml/minで送液され、80℃になるように加熱された。合成されたカーボン担持ニッケルコア白金シェル微粒子コロイドは11のタンクに回収された。
【0100】
発明者らは、詳細な実験を繰り返し検討を重ねた結果、プロトン化されていない非求核塩基濃度が白金シェルの質において重要であることを見出した。シェル形成反応における非求核塩基濃度が低いと反応速度が遅くなり白金原料が未反応となってしまい、非求核塩基濃度が高すぎると白金がシェルでなく粒子として担体やコア粒子表面で生成したり、白金の遊離粒子が副生しやすくなってしまう。白金原料が塩化白金酸を中和した塩である場合や、コア粒子を別の方法で形成した場合、コア粒子をシェル形成反応の前に精製した場合は、それに応じて非求核塩基の濃度を調整する必要がある。連続法において担体担持コア粒子の合成に引き続いて白金シェルを高濃度、迅速、高品質、完全反応の条件を満たして合成することは非常に難しい。しかし、添加する非求核塩基のpKaの大小による反応速度の調整や、反応管内径の大小による滞留時間の調整もシェル形成時の条件調整に利用することができ、これらの条件の調整でより高生産性で高品質な白金シェル合成工程を実現することができる。
【0101】
(実施例7)
反応管径を大きくした場合
実施例1と同様の反応原料液組成において、内径8mmのPFA反応管で流速96ml/分で送液し、80℃で加熱した。反応管は内径寸法109mm×55mmの方形導波管におけるTE01モードの電場の山の部分に配置し、ネットワークアナライザ(アンリツ製、MS2024B)と整合ピンによって反射波が少なくなるようにインピーダンス整合をとった。マグネトロン(日立パワーソリューションズ製、2M130)により発生させた2.45GHz付近のマイクロ波を導波管に導入することで反応管内部を流れる液体の加熱を行った。反応原料液の温度は波長2〜6.8μmの赤外光を用いた放射温度計により導波管出口に配置した反応管内部の液体の温度を測定した。フッ素樹脂は2〜6.8μmの赤外光の吸収が少ないため温度計測にこの波長を用いれば反応管表面でなく内部の温度を測定することができる。
【0102】
(実施例8)
反応溶媒に水を混合した場合
Ketjen Black EC300Jを70%硝酸で60℃、5時間撹拌加熱処理し、ろ過、乾燥を行い表面に親水性官能基を導入したカーボン粉末を得た。
担体カーボンとして前記表面処理Ketjen Black EC300Jが2グラム/100ミリリットル、分散剤としてDisperbyk194Nが0.4%になるようにエチレングリコール―水混合溶媒(重量で1:1)に混合し、トリエチルアミンを480mMになるように加え、超音波をかけて担体カーボンが均一な分散液になるようにした。この分散液をマイナス10度に設定したクールバスで冷却しておく。反応開始直前にこの担体分散液にヘキサクロロ白金(4)酸エチレングリコール溶液を40mMになるように加え冷却しながらよく混合し、これを反応原料液とした。この反応原料液を実施例1と同様の条件で80℃にマイクロ波加熱した。
【0103】
(比較例1)
バッチ法で担体担持白金粒子を合成した場合
実施例1の反応原料液の条件でオイルバス加熱により80℃で1時間加熱処理した。
【0104】
(比較例2)
塩基を用いなかった場合
実施例1の反応原料液において、トリエチルアミンを加えずに反応原料液を準備し、他は実施例1と同様のマイクロ波連続加熱処理を行った。
【0105】
(比較例3)
求核性のある塩基を用いた場合
実施例1の反応原料液において、トリエチルアミンをモノエタノールアミンに置き換えた反応原料液を準備し、他は実施例1と同様のマイクロ波連続加熱処理を行った。
【0106】
(比較例4)
アルカリ金属水酸化物を塩基として用いた場合
実施例1の反応原料液において、トリエチルアミンを水酸化カリウムに置き換えた反応原料液を準備し、他は実施例1と同様のマイクロ波連続加熱処理を行った。
【0107】
形成された担体担持白金族含有微粒子は、遠心分離により精製し、電子顕微鏡(日本電子製JEM−2200FS)用いてTEM(透過型電子顕微鏡法)、STEM(走査透過型電子顕微鏡法) による観察とEDS(エネルギー分散型X線分析)による分析を行った。EDS分析により金属微粒子とカーボン担体の元素比を定量する際は炭素元素を含まないアモルファスシリコン支持膜つきグリッドを用いた。また、遠心分離の際の上清に強い還元剤であるヒドラジンを添加して加熱し、金属原料が完全反応しているかどうかを確かめた。未反応の金属原料が残存していればヒドラジンの強い還元力により未反応原料が還元され、金属粒子が生成し上清の変色が生じるので未反応原料の存在を検知できる。
【0108】
図4は実施例1の方法で合成したカーボン担持白金触媒のSTEMによる観察像である。カーボン担体17aと、そこに担持されている白金微粒子17bが、実施例1で合成されたカーボン担持白金微粒子を構成している。符号17bで例示されているように、1〜3nmの粒子がカーボン担体上にほぼ均一に担持されている。より具体的には、個々の白金粒子はカーボン担体上で凝集しておらず個別の粒子と認識できる程度に粒子間の間隔はあるものの、カーボン担体表面全域を白金粒子が覆い、未被覆の広いカーボン表面はほとんど無いという状態である。カーボン担体の表面積が非常に大きいので、これをまんべんなく均一に覆うことは非常に難しいのであるが、達成できていることがわかった。燃料電池等の触媒用途ではこのような担持様式が高い金属触媒表面積と薄い触媒層を実現するうえで必須である。また、EDSの結果より、広い範囲にわたってカーボンと白金の分布は均一で、かつ一致しており、その比も合成時の仕込み量の比とほぼ一致した。実施例1の反応生産物の遠心上清には未反応原料が含まれていないこともわかった。このことより、本発明者らの提案する合成法は貴金属原料の無駄が大幅に少なくなるようになっており、なおかつ触媒に必要な高い表面積も達成できているといえる。
【0109】
また、実施例1の結果は未処理の疎水的な高表面積カーボンを分散させて担持することが可能であることを示しており、この高表面積カーボンより親水性が高い担体の場合は親水的なポリオールにおいてより分散が容易な傾向にあるため、既知の方法で分散させて本発明の方法を適用することができる。
【0110】
実施例2においてもSTEMの観察によると1〜3nmの白金粒子がアルミナ担体上にほぼ均一に担持されており、反応生成物の遠心上清に未反応原料が含まれていなかった。
【0111】
実施例3においても1〜3nmの粒子がアルミナ担体上にほぼ均一に担持されており、また、EDSの結果より、広い範囲にわたってパラジウムと白金の分布は均一で、かつ一致しており、その比も合成時の仕込み量の比とほぼ一致した。EDSの分解能の限界に近い領域のためやや不確かな点も残るが、パラジウムと白金の合金粒子が均一に担体に分散できているといってよいだろう。反応生成物の遠心上清に未反応原料は含まれていなかった。
【0112】
実施例4においてもSTEMの観察によると1〜3nmの白金粒子が酸化チタン担体上にほぼ均一に担持されており、反応生成物の遠心上清に未反応原料が含まれていなかった。
【0113】
実施例5においてはSTEMの観察によると2〜4nmの粒子がカーボン担体上にほぼ均一に担持されている。また、EDSの結果により広い範囲にわたってパラジウムと白金の分布は均一で、かつ、一致しており、その比も合成時の仕込み量の比とほぼ一致した。EDSの分解能の限界に近い領域のためコアシェル構造の微細構造までは分析できなかったが、特許文献2の方法で合成、活性測定したカーボン担持パラジウムコア白金シェル粒子触媒と同様の酸素還元活性を示したため、コアシェル構造が形成されていると推測される。反応生成物の遠心上清に未反応原料が含まれていなかった。
【0114】
実施例6においてはSTEMの観察によると2〜4nmの粒子がカーボン担体上にほぼ均一に担持されている。また、EDSの結果により広い範囲にわたってニッケルと白金の分布は均一で、かつ、一致しており、その比も合成時の仕込み量の比とほぼ一致した。EDSの分解能の限界に近い領域のためコアシェル構造の微細構造までは分析できなかったが、実施例5の結果も考え合わせるとカーボン担体担持ニッケルコア白金シェル粒子が形成されていると推測される。反応生成物の遠心上清に未反応原料が含まれていなかった。
【0115】
塩化ニッケルを原料とした場合に完全反応することができたので、ニッケルより還元しやすい金属(白金族金属、金、銀、銅)およびこれらの合金をコア粒子とすることも同様の方法で可能となる。また、担体担持コア金属粒子を含浸法等の別の方法で調製し、白金族シェルを上記実施例の方法で形成してもよい。
【0116】
実施例7においてはSTEMの観察によると1〜3nmの白金粒子がカーボン担体上にほぼ均一に担持されており、実施例1の場合とほぼ同様のカーボン担持白金微粒子触媒が合成できた。また、EDSの結果より、広い範囲にわたってカーボンと白金の分布は均一で、かつ一致しており、その比も合成時の仕込み量の比とほぼ一致した。反応生産物の遠心上清には未反応原料が含まれていないこともわかった。このことより、マイクロ波連続法と非求核塩基の添加によるポリオール還元を主体とする担体担持白金族含有微粒子触媒の合成は比較的容易にスケールアップが可能であることもわかった。このことから、マイクロ波の急速加熱、均一加熱が成立する限り、本発明の方法で反応管内径を太くし、反応液の流量を増大させ、生産性を高めることができる。
【0117】
実施例8においてはSTEMの観察によると1〜3nmの白金粒子がカーボン担体上にほぼ均一に担持されており、実施例1の場合とほぼ同様のカーボン担持白金微粒子触媒が合成できた。また、EDSの結果より、広い範囲にわたってカーボンと白金の分布は均一で、かつ一致しており、その比も合成時の仕込み量の比とほぼ一致した。反応生産物の遠心上清には未反応原料が含まれていないこともわかった。このことより、分散剤の種類と濃度、冷却による反応原料液のマイクロ波急速加熱前の反応抑制を注意深く検討すると水が溶媒の成分として含まれる反応系でも担体の分散を維持することができ、塩化物錯体をはじめとする多様な白金族原料の使用が可能になることがわかった。
【0118】
比較例1の方法で合成した場合、STEMの観察によると2〜15nmの粒子がカーボンに担持されていた。反応生産物の遠心上清には未反応原料が含まれていなかったが、担持されている白金微粒子の密度にムラがあり、凝集している領域や白金がまばらな領域が観察された。
【0119】
比較例2の方法で合成した場合、STEMの観察によると20nm〜50nmの粒子がまばらにカーボン上に担持されており、反応生産物の遠心上清から未反応原料も検出された。
【0120】
比較例3の方法で合成した場合、STEMの観察によると7〜12nmの粒子がカーボンに担持されていたものの、担持されている白金微粒子の密度にムラがあり、白金がまばらな領域が観察された。反応生産物の遠心上清から未反応原料が多量に検出された。
【0121】
比較例4の方法で合成した場合、目視でも識別できるほどカーボンが凝集して均一なマイクロ波連続加熱が困難となった。
【0122】
以上のように、本発明の担体担持金属微粒子または担体担持金属複合微粒子の合成反応にマイクロ波加熱連続法を効果的に使用することで、粒子性状と担体上での分布が均一な触媒微粒子を高い生産性で得ることができるようになった。
【0123】
以上、図を参照しながら、実施例、比較例を加えて本発明を説明したが、本発明はこれに狭く限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づき多くのバリエーションを可能とするものであることは明白である。例えば、マイクロ波としては、本発明ではシングルモードマイクロ波照射に関して多く説明したが、本発明はこれに限定されず、マルチモードマイクロ波照射を利用することも含み、マイクロ波照射に関しては、被照射体に当てるマイクロ波の強度分布域に関しても、また、その当て方に関しても、被照射体への当てる目的によって決められるものである。