特開2021-142551(P2021-142551A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-142551(P2021-142551A)
(43)【公開日】2021年9月24日
(54)【発明の名称】スポット溶接装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 11/11 20060101AFI20210827BHJP
【FI】
   B23K11/11 520
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-43818(P2020-43818)
(22)【出願日】2020年3月13日
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】前川 貴哉
【テーマコード(参考)】
4E165
【Fターム(参考)】
4E165AB03
4E165AB13
4E165AC03
4E165BA01
4E165BA06
4E165BB02
4E165BB12
(57)【要約】
【課題】被溶接部材との干渉を回避して種々の箇所の高板厚比接合部をスポット溶接することが可能なスポット溶接装置を提供する。
【解決手段】加圧ピース10を端部に有するアーム部材7を溶接ガン本体4に固定すると共にアーム部材7の延在方向先端部で加圧ピース10を電極1、2の中心軸周りに回転可能に支持し、更に加圧ピース10を電極1、2の中心軸周りに回転自在に保持する回転・保持機構13を設ける。例えば、加圧ピース10が端部に設けられるアーム部材7(伸長部材9)の内部に回転部材18とプランジャ20を配設し、このプランジャ20が回転部材18の外周面に設けられたノッチ19に嵌入したりノッチ19から外れたりする構成とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の厚板の外側に該厚板よりも薄い薄板が重ねられた接合部をスポット溶接するスポット溶接装置であって、
中心軸が同軸で互いに対向する2つの電極、及び該2つの電極の少なくとも一方を他方に対して離接方向に駆動する駆動アクチュエータが備えられた溶接ガン本体と、
該溶接ガン本体に設けられ、前記薄板に当接される電極に隣接し且つ前記電極の中心軸を挟んだ互いに対向する部位で該薄板と接触される加圧ピースを端部に有するアーム部材と、
前記溶接ガン本体に設けられ、前記アーム部材を介して前記加圧ピースを前記薄板に押し付ける加圧アクチュエータと、を備えたスポット溶接装置において、
前記アーム部材は前記溶接ガン本体に固定され、前記加圧ピースは、前記アーム部材の延在方向先端部で前記電極の中心軸周りに回転可能に支持されると共に、
前記加圧ピースを前記電極の中心軸周りに回転自在に保持する回転・保持機構が備えられたことを特徴とするスポット溶接装置。
【請求項2】
前記回転・保持機構は、
前記加圧ピースが取付けられ、前記電極の中心軸を中心とする円弧状の外周面を有し、該外周面の規定部位にノッチが設けられ、前記アーム部材の内部に該電極の中心軸周りに回転可能に配設された回転部材と、
前記アーム部材の内部に配設され、規定の付勢力で前記回転部材のノッチに嵌入したり該ノッチから外れたりすることが可能なプランジャと、を備えて構成されることを特徴とする請求項1に記載のスポット溶接装置。
【請求項3】
前記溶接ガン本体が産業用ロボットに取付けられ、該産業用ロボットを制御する制御装置は、前記加圧ピースを予め設定された当接部に当接することで前記回転部材を回転させ、前記プランジャをノッチに嵌入させることで規定の回転角度で加圧ピースを保持するように産業用ロボットを制御することを特徴とする請求項2に記載のスポット溶接装置。
【請求項4】
前記回転・保持機構は、
前記加圧ピースが取付けられ、前記電極の中心軸を中心とする円周上に歯が形成され、前記アーム部材の内部に該電極の中心軸周りに回転可能に配設された回転部材と、
前記アーム部材に設けられ、前記回転部材を回転するための回転駆動力を発現するモータと、
前記アーム部材に設けられ、前記モータと回転部材とを接続し、該モータの回転駆動力によって前記回転部材を回転させた状態で前記加圧ピースを保持する動力伝達機構と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載のスポット溶接装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポット溶接装置、特に、複数の厚板の外側に該厚板よりも薄い薄板が重ねられた接合部をスポット溶接するスポット溶接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の厚板の外側に薄板が重ねられた接合部(以下、高板厚比接合部ともいう)をスポット溶接装置の対向する2つの電極で加圧すると、剛性の小さい薄板の撓みによって板材相互間に隙間が生じ、これにより薄板と電極の接触面積に比して板材相互間の接触面積が小さくなる。その結果、厚板相互間の電流密度よりも薄板と厚板との間の電流密度が小さくなることから、薄板−厚板間の発熱量が小さくなり、両者の間に十分なサイズのナゲットが形成されず、溶接強度が小さくなる。
【0003】
こうした問題を解決するために、本出願人は、下記特許文献1に記載されるスポット溶接装置を提案した。このスポット溶接装置は、薄板に当接される電極の隣接し且つ上記電極を挟んだ対向部位に加圧ピースを配置し、この加圧ピースをコ字状の揺動アームの一方の端部に取付け、その揺動アームを介して、加圧アクチュエータで加圧して加圧ピースを薄板に押し付ける。これにより、薄板の撓みが小さくなって板材相互間の接触面積が均一化され、全ての板材間の電流密度が均一化されて発熱量も均一化され、全ての板材間の溶接強度も一定となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−196703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両用パネルのスポット溶接に用いられるスポット溶接装置は、上記特許文献1にも記載されるように産業用ロボットに取付けられて用いられることが多い。この種の産業用ロボットは、マニプレータとも呼ばれ、人間の上肢に類した構造、即ち複数の関節とそれらの関節間を連結するリンクからなる可動部を有する。実際に、上記スポット溶接装置が取付けられた産業用ロボットは、複数の関節(軸ともいう)を回転させて車両用パネルの種々の高板厚比接合部をスポット溶接している。
【0006】
こうした多様な箇所の高板厚比接合部を上記加圧ピースで加圧しながらスポット溶接するために、上記特許文献1に記載されるスポット溶接装置は、上記対向する2個一対の加圧ピースを電極の中心軸周りに回転させる回転装置を備えて構成される。この回転装置は、上記加圧ピースが一方の端部に取付けられたコ字状の揺動アームを端部を中心としてモータで回転して2個一対の加圧ピースを電極の中心軸周りに回転させる。しかしながら、この構造では、揺動アームそのものが端部を中心として回転されることから、その揺動アームが回転する領域を必要とし、この回転される揺動アームとワークである車両用パネルの板材(被溶接部材)とが干渉するおそれがある。被溶接部材と揺動アームが干渉してしまう場合には、高板厚比接合部を加圧ピースで加圧しながら、その高板厚比接合部をスポット溶接することが困難なことがある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、被溶接部材との干渉を回避して種々の箇所の高板厚比接合部をスポット溶接することが可能なスポット溶接装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明のスポット溶接装置は、
複数の厚板の外側に該厚板よりも薄い薄板が重ねられた接合部をスポット溶接するスポット溶接装置であって、中心軸が同軸で互いに対向する2つの電極、及び該2つの電極の少なくとも一方を他方に対して離接方向に駆動する駆動アクチュエータが備えられた溶接ガン本体と、該溶接ガン本体に設けられ、前記薄板に当接される電極に隣接し且つ前記電極の中心軸を挟んだ互いに対向する部位で該薄板と接触される加圧ピースを端部に有するアーム部材と、前記溶接ガン本体に設けられ、前記アーム部材を介して前記加圧ピースを前記薄板に押し付ける加圧アクチュエータと、を備えたスポット溶接装置において、
前記アーム部材は前記溶接ガン本体に固定され、前記加圧ピースは、前記アーム部材の延在方向先端部で前記電極の中心軸周りに回転可能に支持されると共に、前記加圧ピースを前記電極の中心軸周りに回転自在に保持する回転・保持機構が備えられたことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、アーム部材の延在方向先端部に回転自在に支持された加圧ピースを回転・保持機構によって電極の中心軸周りに回転自在に保持することができる一方、そのアーム部材は回転することなく、溶接ガン本体に固定されているので、アーム部材と被溶接部材との干渉が回避され、種々の箇所の高板厚比接合部を確実にスポット溶接することが可能となる。
【0010】
また、本発明の他の構成では、前記回転・保持機構は、前記加圧ピースが取付けられ、前記電極の中心軸を中心とする円弧状の外周面を有し、該外周面の規定部位にノッチが設けられ、前記アーム部材の内部に該電極の中心軸周りに回転可能に配設された回転部材と、前記アーム部材の内部に配設され、規定の付勢力で前記回転部材のノッチに嵌入したり該ノッチから外れたりすることが可能なプランジャと、を備えて構成されることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、加圧ピースが端部に設けられるアーム部材の内部に回転部材とプランジャが配設され、このプランジャが回転部材の外周面に設けられたノッチに嵌入したりノッチから外れたりする。したがって、例えば、上記溶接ガン本体を産業用ロボットに取付けた場合に、この産業用ロボットが、上記加圧ピースを予め設定された当接部に当接させて回転部材を回転すると共に規定の回転角度でプランジャがノッチに嵌入するように制御すれば、加圧ピースを電極の中心軸周りに回転させた状態で保持することができる。その際、回転部材やプランジャはアーム部材の内部に配設されているので、それらがアーム部材から大きくはみ出すことがなく、被溶接部材と干渉することがない。
【0012】
本発明の更なる構成では、前記溶接ガン本体が産業用ロボットに取付けられ、該産業用ロボットを制御する制御装置は、前記加圧ピースを予め設定された当接部に当接することで前記回転部材を回転させ、前記プランジャをノッチに嵌入させることで規定の回転角度で加圧ピースを保持するように産業用ロボットを制御することを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、産業用ロボットの動作により加圧ピースを電極の中心軸周りに回転させて且つ規定の回転角度で保持することができ、その際、加圧ピースを当接させる当接部があればよいので、構成を簡素化することができる。また、上記当接部を被溶接部材の一部とすれば、更に構成を簡素化することができる。
【0014】
本発明の更なる構成では、前記回転・保持機構は、前記加圧ピースが取付けられ、前記電極の中心軸を中心とする円周上に歯が形成され、前記アーム部材の内部に該電極の中心軸周りに回転可能に配設された回転部材と、前記アーム部材に設けられ、前記回転部材を回転するための回転駆動力を発現するモータと、前記アーム部材に設けられ、前記モータと回転部材とを接続し、該モータの回転駆動力によって前記回転部材を回転させた状態で前記加圧ピースを保持する動力伝達機構と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、加圧ピースが端部に設けられるアーム部材の内部に回転部材が配設され、この回転部材がモータの回転駆動力により動力伝達機構を介して回転された状態で加圧ピースが規定の回転角度で保持される。その際、回転部材はアーム部材の内部に配設され、モータや動力伝達機構はアーム部材に設けられているので、回転部材やモータ、動力伝達機構がアーム部材から大きくはみ出すことがなく、被溶接部材との干渉が回避される。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、アーム部材の延在方向先端部に回転自在に支持された加圧ピースを回転・保持機構によって電極の中心軸周りに回転自在に保持することができる一方、そのアーム部材は溶接ガン本体に固定されているので、アーム部材と被溶接部材との干渉が回避され、種々の箇所の高板厚比接合部を確実にスポット溶接することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明のスポット溶接装置の一実施の形態を示す概略構成図である。
図2図1のスポット溶接装置の主要部を示す斜視図である。
図3図2のスポット溶接装置の回転・保持機構の詳細を示す断面図である。
図4図3の回転・保持機構の作用の説明図である。
図5図2のスポット溶接装置の使用方法の一例を示す説明図である。
図6図2のスポット溶接装置の使用方法の他の例を示す説明図である。
図7】本発明のスポット溶接装置の他の実施の形態を示す回転・保持機構の三面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明のスポット溶接装置の一実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、この実施の形態(第1の実施の形態)のスポット溶接装置の概略構成図であり、図1(A)は左側面図、図1(B)は正面図である。また、図2は、図1のスポット溶接装置の主要部を示す斜視図である。この実施の形態のスポット溶接装置は、複数、例えば2枚の厚板の外側に薄板が重ねられた高板厚比接合部をスポット溶接するものである。このスポット溶接装置も、一般的なスポット溶接装置と同様に、中心軸が同軸で、互いに対向する2つの電極1、2で高板厚比接合部を押圧挟持し、その状態で電極1、2間に電流を通電する。押圧挟持される板材には、両者の接触部において接触抵抗が存在し、電極1、2間の通電によって接触抵抗部位にジュール熱が生じ、このジュール熱によって板材自体が溶融・凝固して溶接が行われる。この溶融・凝固部分は、一般にナゲットと呼ばれている。なお、高板厚比接合部の詳細については、上記特許文献1を参照されたい。
【0019】
この実施の形態では、図1において上下に対向する2つの電極1、2のうち、図示下側の電極を固定側電極1とし、この固定側電極1に対し、図示上側の電極を離接方向に可動する可動側電極2とした。この可動側電極2は、駆動アクチュエータを構成する電極用モータ3によって固定側電極1に対して離接方向に駆動される。これら固定側電極1及び可動側電極2は、電極1、2間に挟持される板材に対して電流を通電するだけでなく、前述のように、それら板材を予め設定された加圧力で加圧する機能を併せ持つ。この電極1、2による板材の加圧力は、一般的に、通電溶接中、一定に維持される。この実施の形態では、例えば、可動側電極2を駆動する電極用モータ3のトルクを一定にすることで、板材への加圧力が一定になるように電極用モータ3の駆動力制御を行う、いわゆるサーボ制御が行われる。なお、この実施の形態では、上記高板厚比接合部のうち、薄板に可動側電極2が当接されるように構成されている。また、上記固定側電極1及び可動側電極2には、図示しない通電装置が接続されている。
【0020】
これら固定側電極1及び可動側電極2、及び上記駆動アクチュエータを構成する電極用モータ3を備えたユニットが溶接ガン本体4であり、この実施の形態では、この溶接ガン本体4は、産業用ロボット5に取付けられている。スポット溶接装置の溶接ガン本体4を産業用ロボット5に取付けて用いることは、とりわけ車両用パネルの接合工程では広く一般的であり、多軸産業ロボット5の関節(軸)を多様に駆使して、種々の接合部のスポット溶接が行われる。産業用ロボット5の動作は、周知のように、ティーチングと呼ばれる教示又は教示作業によってプログラミングされる。このティーチングによるプログラミングは制御装置6内に記憶され、以降、産業用ロボット5はプログラミングされた通りの動作を繰り返して行う。
【0021】
この溶接ガン本体4には、アーム部材7が取付けられ、その先端部に2個一対の加圧ピース10が設けられている。アーム部材7は、図1で上下方向に伸長するロッド部材8と、そのロッド部材8の下端部に取付けられて図1(B)の左方に延伸する伸長部材9とを備えて構成され、ロッド部材8の上端部には、アーム部材7を介して加圧ピース10を図1の下方、すなわち可動側電極2が当接される薄板に加圧する加圧アクチュエータとして加圧用モータ11(図1(A)参照)が連結されている。伸長部材9の突出先端部には、例えば図2に示すように、上記可動側電極2が挿通するための貫通穴12(内周面の一部が開放)が形成されており、この貫通穴12の周囲の対向する2カ所、すなわち直径方向に加圧ピース10が1つずつ配設されている。この加圧ピース10は、図の下方向きに突出するように設けられており、後述する回転・保持機構13によって電極1、2、特に可動側電極2の中心軸周りに回転自在に支持され、規定の回転角度で停止・保持されるのであるが、加圧ピース10自体の機能は、上記特許文献1にも記載されるように、高板厚比接合部の薄板を補助的に加圧して、固定側電極1及び可動側電極2による押圧挟持時の薄板の撓みを低減し、もって全ての板材間の電流密度を均一化して溶接強度を均一にするものである。なお、この実施の形態のアーム部材7は溶接ガン本体4に固定されている。
【0022】
図3は、図2のスポット溶接装置の回転・保持機構13の詳細を示す断面図、図4は、図3の回転・保持機構13の作用の説明図である。このうち、図3(A)は、この実施の形態の回転・保持機構13の一部断面正面図、図3(B)は、図3(A)のX−X断面図である。また、図4は、図4(A)、図4(B)共に、後述する蓋部材14を外した状態の平面図である。個々の加圧ピース10は、例えば肉厚の円筒体を円周方向に分割するようにして長手方向に切断した形状であるが、その上端部は、外径が小さく(小径部10a)なっていて、外周面が段付きに形成されている。伸長部材9の突出先端部は、可動側電極2の中心軸の周りに凡そ円形にザグリ加工(図4の左方側の一部が開放)されている。このザグリ加工は、伸長部材9の突出方向先端部では、径が小さく且つ深さが大きく(小径ザグリ部15)、先端部から遠ざかる部分では、径が大きく且つ深さが小さい(大径ザグリ部16)、段付きに加工されている。この大径ザグリ部16の部分が、大径ザグリ部16の深さと同じ厚さの蓋部材14で覆われている。なお、以下では、大径ザグリ部16の底面から小径ザグリ部15の底面までの深さを小径ザグリ部15の深さとする。また、小径ザグリ部15の中心部では、上記段付き形状の加圧ピース10の小径部10aが通せる大きさまで、上記可動側電極2を挿通する貫通穴12が拡径されている。
【0023】
上記小径ザグリ部15の内部には、この小径ザグリ部15とほぼ同じ形状の回転部材18が収納されている。すなわち、この回転部材18は、外周面が凡そ円形(一部が切除されている)の板部材であり、その厚さは小径ザグリ部15の深さと同等である。また、この回転部材18の中央部には、上記可動側電極2が挿通される挿通穴18aが形成されている。この回転部材18の外周面には、矩形のノッチ(窪み)19が等間隔に形成されており、この実施の形態では、ノッチ19が周方向に連続するように形成されている。一方、小径ザグリ部15の伸長部材突出先端部から最も遠い部分には、この小径ザグリ部15に連続する溝部17が大径ザグリ部16の底面に形成されている。そして、この溝部17のうち、小径ザグリ部15に近い部分にはプランジャ20が収納され、溝部17奥方にはスプリング21が内装されている。プランジャ20は、溝部17から小径ザグリ部15側に少し突出するように配置され、その突出先端部は半球形状に形成されている。したがって、プランジャ20はスプリング21の付勢力によって回転部材18のノッチ19に嵌入される。一方、例えば、加圧ピース10を介して回転部材18に周方向への回転力が作用すると、プランジャ20はスプリング21の付勢力に抗してノッチ19から外れる。したがって、この回転・保持機構13は、図4(A)、図4(B)に示すように、加圧ピース10を介して回転部材18に回転力が作用すると、回転部材18のノッチ19からプランジャ20が外れて回転部材18及び加圧ピース10が回転可能となるが、加圧ピース10を介した回転部材18への回転力が作用しない、又はその回転力が停止した状態では、回転部材18のノッチ19にプランジャ20が嵌入して所定の回転角度で回転部材18及び加圧ピース10が停止する。なお、この実施の形態では、加圧ピース10を介して上記回転部材18を回転させると、図4(B)に示すように、その一部がアーム部材7の伸長部材9の伸長方向先端部から少しだけ突き出す。
【0024】
図5は、図2のスポット溶接装置の使用方法の一例を示す説明図である。この例は、例えば、車両のセンターピラーにおけるパネルの高板厚比接合部をスポット溶接するものであり、例えば、図中の符号Jが該当する高板厚比接合部である。この例では、この高板厚比接合部Jのスポット溶接時、溶接ガン本体4が被溶接部材である車両用パネルと干渉することから、高板厚比接合部Jの板材縁部Eに対して上記アーム部材7の伸長部材9の伸長方向を斜めにした状態で接近させる必要がある。図5(A)は、図4(A)と同様に、加圧ピース10の端面が伸長部材9の突出側先端面と同じ向きで、いわゆる面一状態になっているが、このままでは2個一対の加圧ピース10を高板厚比接合部Jに同程度に当接することができず、結果として薄板を2個一対の加圧ピース10で同等に加圧することが困難である。
【0025】
そこで、当該高板厚比接合部Jのスポット溶接の前に、例えば、事前に産業用ロボット5をティーチングして、図5(B)のように、当該高板厚比接合部Jの板材縁部Eに2個一対の加圧ピース10の端面を電極中心軸直交方向から押し付け、これにより2個一対の加圧ピース10を回転部材18ごと回転させる(図4(B)参照)。車両用パネルのスポット溶接箇所は、多くの場合、板材の縁部にあり、2個一対の加圧ピース10を高板厚比接合部Jの板材縁部Eに当接させて押し付けると、2個一対の加圧ピース10は高板厚比接合部Jの延伸方向と平行な方向に並ぶ。したがって、産業用ロボット5による2個一対の加圧ピース10の板材縁部Eへの押し付けを解除すると、それら2個一対の加圧ピース10は高板厚比接合部Jの延伸方向に並んだ状態で上記プランジャ20が回転部材18の外周面のノッチ19に嵌入し、加圧ピース10は、その回転角度の状態に保持される。
【0026】
このステップを経て、産業ロボット5は、再び固定側電極1及び可動側電極2を当該高板厚比接合部Jに接近し、例えば、図5(C)に示すように、事前に加圧ピース10を薄板に押し付けて加圧し、その後に、固定側電極1と可動側電極2で高板厚比接合部を押圧挟持し、然る後に、固定側電極1及び可動側電極2間に通電してスポット溶接を行う。その際、高板厚比接合部Jの延伸方向に並ぶ2個一対の加圧ピース10により、薄板は、可動側電極2の当接位置を挟んだ対向位置で同等に加圧され、薄板に生じる撓みが適正に低減されることから、各板材間の溶接強度を均一化して高板厚比接合部Jを適正にスポット溶接することができる。
【0027】
図6は、図2のスポット溶接装置の使用方法の他の例を示す説明図である。上記図5の使用例では、加圧ピース10を回転させるために高板厚比接合部の板材縁部Eに押し付けたので、その押し付け対象となる当接部は高板厚比接合部の板材縁部Eで構成されたが、図6の使用例は、これとは個別の当接部を設定したものである。この当接部は、上記2個一対の加圧ピース10の間隔に合わせた2個一対の平行な棒状の突き当て部22を有する二股部材23からなり、この二股部材23の基部が棒状体24の上端部に上記突き当て部22が略水平に伸長するように取付けられている。例えば、図5(C)から推察されるように、高板厚比接合部における2個一対の加圧ピース10の適正な並びの方向、すなわち上記高板厚比接合部の延伸方向は予め分かっており、同時に、この高板厚比接合部に接近する際の伸長部材9の向きも分かっているので、伸長部材9の向きに対する2個一対の加圧ピース10の相対的な並び方向を予め求めることができる。
【0028】
図6(A)は、図5(A)、図4(A)と同様に、加圧ピース10の端面が伸長部材9の突出側先端面と同じ向きで、いわゆる面一になっており、この状態では、伸長部材9の向き(伸長方向)に対する2個一対の加圧ピース10の並び方向は直角である。例えば、この状態で図6(A)のように、2個一対の加圧ピース10を2個一対の突き当て部22に電極中心軸直交方向から同時に当接し、その状態で産業用ロボット5を動作させて伸長部材9の向きを変え、図6(B)に示すように、上記伸長部材9の向き(伸長方向)に対し、上記高板厚比接合部の延伸方向に応じた2個一対の加圧ピース10の相対的な並び方向を達成させるティーチングを行う。この動作を、該当する高板厚比接合部のスポット溶接の前に行うようにプログラミングすることで、高板厚比接合部の延伸方向に合わせた2個一対の加圧ピース10の並び方向が達成される。したがって、その状態で高板厚比接合部をスポット溶接すれば、高板厚比接合部の延伸方向に並ぶ2個一対の加圧ピース10により、薄板は、可動側電極2の当接位置を挟んだ対向位置で同等に加圧され、薄板に生じる撓みが適正に低減されることから、各板材間の溶接強度を均一化して高板厚比接合部を適正にスポット溶接することができる。
【0029】
以上より理解されるように、この実施の形態のスポット溶接装置では、回転・保持機構13を構成する回転部材18やプランジャ20が加圧ピース10を支持するアーム部材7(伸長部材9)の内部に配設されており、上記のように、回転・保持機構13を動作させても、それらがアーム部材7から大きくはみ出さない。したがって、回転・保持機構13が被溶接部材である車両用パネルの板材と干渉することがなく、車両用パネルのあらゆる箇所の高板厚比接合部を確実にスポット溶接することができる。もちろん、従来の揺動アームと異なり、この実施の形態のアーム部材7は溶接ガン本体4に固定されているので、このアーム部材7が被溶接部材の板材と干渉することもない。
【0030】
このように、この実施の形態のスポット溶接装置では、アーム部材7の延在方向先端部に回転自在に支持された加圧ピース10を回転・保持機構13によって電極1、2の中心軸周りに回転自在に保持することができる一方、そのアーム部材7は回転されることなく溶接ガン本体4に固定されているので、アーム部材7と被溶接部材との干渉が回避され、種々の箇所の高板厚比接合部を確実にスポット溶接することが可能となる。
【0031】
また、加圧ピース10が端部に設けられるアーム部材7の内部に回転部材18とプランジャ20が配設され、このプランジャ20が回転部材18の外周面に設けられたノッチ19に嵌入したりノッチ19から外れたりする。したがって、溶接ガン本体4を産業用ロボット5に取付け、この産業用ロボット5が、上記加圧ピース10を予め設定された板材縁部Eや突き当て部22のような当接部に当接させて回転部材18を回転すると共に規定の回転角度でプランジャ20が回転部材18のノッチ19に嵌入するように制御すれば、加圧ピース10を電極1、2の中心軸周りに回転させて且つ規定の回転角度で保持することができる。その際、回転部材18やプランジャ20はアーム部材7の内部に配設されているので、それらがアーム部材7から大きくはみ出すことがなく、被溶接部材と干渉することがない。
【0032】
また、産業用ロボット5の動作により、加圧ピース10を電極1、2の中心軸周りに回転させて且つ規定の回転角度で保持することができ、その際、加圧ピース10を当接させる板材縁部Eや突き当て部22のような当接部があればよいので、構成を簡素化することができる。また、上記当接部を車両用パネルの板材の一部とすれば、更に構成を簡素化することができる。
【0033】
次に、本発明のスポット溶接装置の第2の実施の形態について、図7を用いて説明する。この実施の形態のスポット溶接装置の概略構成は、上記第1の実施の形態の図1図2に示す構成と同じであるので、その詳細な説明を省略する。この実施の形態では、上記加圧ピース10を回転可能とし且つ規定の回転角度で停止する回転・保持機構13が異なる。図7(A)は、後述する蓋部材14を外した状態の平面図、図7(B)は、この実施の形態の回転・保持機構13を示す一部断面正面図である。この実施の形態でも、上記第1の実施の形態と同様に、アーム部材7を構成する伸長部材9の突出先端部の内部には、中央部に可動側電極2が挿通される挿通穴18aが形成された凡そ円板型の回転部材18が内装されており、この回転部材18の図示下方側に加圧ピース10が連設されている。この実施の形態の回転部材18には、その外周部において、図7(B)の上面に傘歯車の歯(不図示)が設けられている。
【0034】
一方、上記伸長部材9の伸長方向基端部に上向きに延設されている上記ロッド部材8(アーム部材7)の内部には、回転軸25aが下向きになるように回転・停止用モータ25が内装されている。この回転・停止用モータ25の回転軸25aには、駆動歯車軸26が連結されており、この駆動用歯車軸26の伸長部材9内における下端部に駆動傘歯車27が取付けられている。更に、伸長部材9の内部には、図7(B)の右端部に従動傘歯車28が取付けられ、且つ左端部に作動傘歯車29が取付けられた作動歯車軸30が回転自在に収納されており、従動傘歯車28は駆動傘歯車27と、作動傘歯車29は上記回転部材18の傘歯車の歯と、それぞれ噛合している。これら傘歯車による歯車機構(動力伝達機構)31を内装した状態で、支持部材の上面は蓋部材14で覆われている。なお、上記傘歯車の歯は、すぐばでも、まがりばでもよい。
【0035】
したがって、回転・停止用モータ25を回転すると、その回転駆動力が傘歯車群からなる歯車機構31を介して回転部材18に伝導され、上記第1の実施の形態と同様に、回転部材18が可動側電極2の中心軸周りに回転される。この回転部材18の下方には加圧ピース10が連結されているので、回転・停止用モータ25の回転駆動力によって回転部材18を回転すると加圧ピース10が可動側電極2の中心軸周りに回転される。また、回転・停止用モータ25を停止すると、加圧ピース10は規定の回転角度で停止される。したがって、例えば、上記回転・停止用モータ25をサーボモータとすることで、例えば、上記伸長部材9の向き(伸長方向)に対する2個一対の加圧ピース10の並び方向を回転させて調整することができる。その結果、上記第1の実施の形態と同様に、2個一対の加圧ピース10の並び方向を高板厚比接合部の延伸方向に合わせることができ、これにより高板厚比接合部をスポット溶接することができる。その際、回転・保持機構13を構成する回転部材18や歯車機構31、回転・停止用モータ25がアーム部材7(伸長部材9及びロッド部材8)の内部に配設されており、上記のように、回転・保持機構13を動作させても、それらがアーム部材7から大きくはみ出さない。したがって、回転・保持機構13が被溶接部材である車両用パネルの板材と干渉することがなく、車両用パネルのあらゆる箇所の高板厚比接合部を確実にスポット溶接することができる。なお、上記回転・停止用モータ25のサーボ制御は、上記産業用ロボット5の制御装置6で実行することができる。もちろん、この実施の形態でも、アーム部材7は溶接ガン本体4に固定されているので、そのアーム部材7が被溶接部材である板材に緩衝することがない。
【0036】
このように、この実施の形態のスポット溶接装置では、上記第1の実施の形態に加えて、加圧ピース10が端部に設けられるアーム部材7の内部に回転部材18が配設され、この回転部材18が回転・停止用モータ25の回転駆動力により歯車機構31を介して回転された状態で加圧ピース10が規定の回転角度で保持される。その際、回転部材18はアーム部材7の内部に配設され、回転・停止用モータ25や歯車機構31はアーム部材7に設けられているので、回転部材18や回転・停止用モータ25、歯車機構31がアーム部材7から大きくはみ出すことがなく、被溶接部材との干渉が回避される。
【0037】
以上、実施の形態に係るスポット溶接装置について説明したが、本件発明は、上記実施の形態で述べた構成に限定されるものではなく、本件発明の要旨の範囲内で種々変更が可能である。例えば、上記第2の実施の形態では、加圧ピース10が取付けられた板状の回転部材18の外周部に傘歯車の歯を形成し、アーム部材7を構成するロッド部材8に回転・停止用モータ25を内装し、このロッド部材8に連設されて加圧ピース10を保持する伸長部材9内に傘歯車機構31を内装する構成としたが、回転・停止用モータ25の回転駆動力で加圧ピース10が取付けられた回転部材18を回転する歯車機構31は、これに限定されない。例えば、図7(B)において回転軸25aが下向きになるようにして伸長部材9の上面に回転・停止用モータ25を取付け、回転部材18の外周面に平歯車又ははすば歯車の歯を形成し、上記回転・停止用モータ25の回転軸25aに取付けたピニオンの歯と上記回転部材18の外周面の歯を噛合して歯車機構31としてもよい。
【0038】
また、上記実施の形態では、動力伝達機構31として歯車機構を用いたが、回転・停止用モータ25の回転駆動力を回転部材16に伝達する動力伝達機構としては、例えばベルト・プーリなどの周知の動力伝達機構を適用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 固定側電極
2 可動側電極
3 電極用モータ(駆動アクチュエータ)
4 溶接ガン本体
5 産業用ロボット
6 制御装置
7 アーム部材
8 ロッド部材(アーム部材)
9 伸長部材(アーム部材)
10 加圧ピース
11 加圧用モータ(加圧アクチュエータ)
13 回転・保持機構
16 回転部材
19 ノッチ
20 プランジャ
22 突き当て部(当接部)
25 回転・停止用モータ(モータ)
31 歯車機構(動力伝達機構)
E 板材縁部(当接部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7