【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記場合において、飲料容器の飲み口から外にこぼれ出た飲料を、凹部内にとどまらせることができるといえども、その凹部は、上方に開口したものであり、こぼれ出た飲料を凹部内にとどまらせて当該蓋から外部に飲料をこぼれ散らないようにするにも限度がある。特に、不意の急激な動作等により飲料容器内の飲料に大きな揺れを生じさせた場合や、飲料容器を傾けた場合には、もはや、凹部によって飲料容器内の飲料がこぼれ散らないようにすることはできない。
【0006】
また、上記凹部は、飲料がこぼれ散らないようにする関係上、比較的大きな内部容積を有するものにしなければならず、それを天面板部の周縁部に形成するに当たり、天面板部の周縁部の一部を該天面板部の径方向内方に拡張することにより拡張部を形成することになっている。このため、飲料容器内の飲料を飲む際、その飲料を飲む者は、その下唇を側周壁部に当てつつ上唇を天面板部の拡張部上に置くだけとなり、上唇内面を、天面板部の拡張部とそれよりも径方向内方側部分との段差部に係合させることは容易ではない。このため、このような蓋が飲料容器に用いられた場合には、飲料を飲む際、飲料容器内の飲料を飲む者の口に対する飲み口の位置決め安定感が高いとは言えないため、飲料の飲み易さも高いとは言えない。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたもので、その目的は、飲料容器内の飲料を飲む者が、直接、口をつけて飲料を飲む際の飲み易さを高めることができると共に、種々の状況に対して、飲料容器内の飲料が外部にこぼれ散ることを高い確実性をもって防止できる飲料容器用蓋を提供することにある。
【0008】
前記目的を達成するために本発明にあっては、下記(1)〜(12)とした構成とされている。
【0009】
(1)飲料容器の開口を覆う天面板部と、該天面板部の外周縁から垂下して前記飲料容器の開口を前記天面板部が覆うようにしたとき該飲料容器の開口縁部に係合可能となる側周壁部と、を備える飲料容器用蓋において、
前記天面板部の周縁部が、該天面板部の周縁部よりも該天面板部の径方向内方側部分に対して相対的に高くされ、
前記天面板部における周縁部に、2つのストロー用穴が該天面板部の周縁部の周方向において並設された状態で形成され、
前記2つのストロー用穴が前記天面板部の周縁部の周方向において連なっている構成とされている。
【0010】
この構成によれば、2つのストロー用穴のいずれかにストローを差し込んで飲料容器内の飲料を飲むことができるだけでなく、その2つのストロー用穴を直接的な飲み口として利用することもできる。このとき、当該蓋においては、飲料容器内から飲み口を介してこぼれ出た飲料をとどめるために比較的大きな凹部を設けることとしていないことから、その飲み口(2つのストロー用穴)が形成される天面板部の周縁部は、その径方向内方側に大きく拡張されない状態の下で、その周縁部よりも天面板部の径方向内方側部分に対して相対的に高くされる。このため、飲料容器内の飲料を飲む者が当該蓋に口をつけて飲料を飲む際、上唇の内面を、飲み口としての2つのストロー用穴が形成された天面板部の周縁部とそれよりも径方向内方側部分との段差部分に係合させることができ、飲料を飲む者の口に対する飲み口の位置決め安定感を高めることができる。この結果、飲料の飲み易さを高めることができる。その一方で、天面板部の周縁部に2つのストロー用穴が並設されていることから、ストローを利用し、ストローの一端側と他端側とを、折り曲げた状態で、2つの各ストロー用穴に的確に差し込むことができ、2つのストロー用穴を安定した状態で塞ぐことができる。このため、当該蓋を用いた場合には、ストローを利用することにより、種々の状況に対して、外部に飲料がこぼれ散ることを高い確実性をもって防止できる。しかも、2つのストロー用穴を、直接的な飲み口として利用するだけでなく、2つのストロー用穴のいずれかにストローを的確に差し込んで飲料容器内の飲料を飲むこともでき、飲み方の多様化を図ることができる。
【0011】
(2)前記(1)の構成の下で、
前記2つのストロー用穴が、直接的に連なっている構成とされている。
【0012】
この構成によれば、一方のストロー用穴を飲料容器内への空気取り入れ孔として利用できる一方で、他方のストロー用穴にストローを差し込むことにより、そのストローを利用して、飲料容器内の飲料を容易に飲むことができる。他方、2つのストロー用穴は直接的な飲み口として、拡大された穴を形成することになり、飲料容器内の飲料を飲む者は、当該蓋に口をつけて、飲料容器内の飲料を違和感なく飲むことができる。しかも、各ストロー用穴にストローの一端側と他端側とを差し込んだときには、2つのストロー用穴はほぼ完全に塞がれることになり、種々の状況(飲料が収容された飲料容器を持ちながら歩く、走る等)に対して、外部に飲料がこぼれ散ることを確実に防止できる。
【0013】
(3)前記(1)の構成の下で、
前記天面板部における周縁部に、前記2つのストロー用穴間において、該2つのストロー用穴を連ならせる切欠きが形成され、
前記切欠きの幅が、少なくとも、前記各ストロー用穴に連なる切欠き端において、該各ストロー用穴の直径よりも小さくされている構成とされている。
【0014】
この構成によれば、天面板部における周縁部に飲み口(開口)の面積を切欠きにより拡大することができ、飲料容器内の飲料を飲む者が当該蓋に口をつけて飲むことを一層、円滑にすることができる。他方、飲料が収容された飲料容器を持ちながら歩くとき等には、2つのストロー用穴をストローの差し込みによって塞ぐことにより、外部に対する開口を切欠きだけとすることができ、その際、飲料がこぼれ散ることを極力抑制することができる。
【0015】
(4)前記(1)の構成の下で、
前記天面板部における周縁部と該天面板部における周縁部よりも該天面板部の径方向内方側部分との間に段差壁部が設けられ、
前記段差壁部の内面と前記側周壁部の内面とが、少なくとも前記2つのストロー用穴の軸線方向内方側に対して対向する領域において、該2つのストロー用穴の軸線方向内方に向かうに従って互いに近づくように傾斜されている構成とされている。
【0016】
この構成によれば、飲料容器内に飲料と氷とが混在している場合であっても、飲料容器内の飲料を飲む者が、当該蓋に口をつけて、2つのストロー用穴を直接的な飲み口として利用するときには、2つのストロー用穴の軸線方向内方に向かうに従って互いに近づく(狭まった)側周壁部の内面と段差壁部の内面とが、飲料容器内の氷が2つの各ストロー用穴に向けて移動することを抑制することになり、飲料だけを飲むようにする観点から好ましいものにできる。勿論この場合、液体としての飲料は、側周壁部、段差壁部及び天面板部の周壁部が区画する空間において、2つのストロー用穴の並設方向両側外方からもその各ストロー用穴に向けての流動が生じることになり、側周壁部内面と段差壁部内面との間が狭められた状態であっても、2つのストロー用穴に導かれる飲料量が低下することを極力、抑制することができる。
【0017】
(5)前記(4)の構成の下で、
前記天面板部のうち、該天面板部の周縁部よりも該天面板部の径方向内方側部分に、該天面板部の径方向内方側部分の表面よりも深い深さを有する凹部が形成され、
前記段差壁部が、前記凹部の区画壁部として、前記凹部内に臨みつつ該凹部の底部にまで伸びている構成とされている。
【0018】
この構成によれば、飲料容器内の飲料を飲む者が、当該蓋に口をつけて、2つのストロー用穴を直接的な飲み口として利用するときに、上唇を凹部内に置くことができ、上唇ないしは上歯と天面板部の周縁部(段差壁部)との係合関係を強めると共に確実なもののとすることができ、飲料容器内の飲料を飲む際の飲み易さの観点から、より好ましいものとすることができる。
【0019】
(6)前記(5)の構成の下で、
前記天面板部の外周縁が円形状に形成され、
前記段差壁部の外面と前記側周壁部の外周面とは、その間隔が、該段差壁部が前記2つのストロー用穴の軸線方向内方側に対向する領域において、該2つのストロー用穴の並設方向内方に向かうに従って拡がるように形成され、
前記凹部が、人の上唇を収納できる大きさに設定されている構成とされている。
【0020】
この構成によれば、飲料容器内の飲料を飲む者が、当該蓋に口をつけて、2つのストロー用穴を直接的な飲み口として利用するときには、上唇を凹部内に収めることができる。その一方で、段差壁部の外面と側周壁部の外周面との間隔が、段差壁部が2つのストロー用穴の軸線方向内方側に対向する領域においては、人の口(上唇と下唇)の開口形状に対応して、2つのストロー用穴の並設方向内方に向かうに従って拡がるように形成されていることを利用し、広い領域に亘って、側周壁部の外周面に下唇ないしは下歯を係合させることができると共に段差壁部の外面に上唇ないしは上歯を係合させることができる。このため、飲料を飲む際、その飲む者の口に対して飲み口を極めて安定した状態に維持でき、飲み易さを一層高めることができる。
【0021】
(7)前記(1)の構成の下で、
前記天面板部に、該天面板部の一部に対する切込みに基づき、該天面板部の厚み方向に揺動可能となる開閉蓋部が形成され、
前記開閉蓋部は、その揺動先端部がその揺動基端よりも前記天面板部の径方向外方に位置するようにされると共に、その揺動先端部が前記天面板部の外周縁に沿うように配置され、
前記開閉蓋部は、前記天面板部の厚み方向に揺動されたとき、前記2つのストロー用穴よりも大きい開口を形成するように設定されている構成とされている。
【0022】
この構成によれば、天面板部に対する切込みによって、飲料容器内の飲料を飲む者が当該蓋に直接、口をつける飲み口として所望の大きさのものを簡単に形成できるだけでなく、開閉蓋部の揺動先端部が揺動基端に比して天面板部の径方向外方に位置されていることから、開閉蓋部が天面板部から切り離されない状況の下で、飲料を飲む際に、開閉蓋部が障害となることを抑制できる。しかも、開閉蓋部の揺動先端部が天面板部の外周縁に沿うように配置されていることから、その天面板部の外周縁を飲む者の口内に入るように宛がって、飲料容器の底部側を上部側を中心として揺動させれば、飲料を、それを飲もうとする者の口内に円滑に流れ込ませることができる。
【0023】
(8)前記(7)の構成の下で、
前記開閉蓋部は、前記天面板部において、該天面板部の中央部を中心として、前記2つのストロー用穴が存在しない側に配置されている構成とされている。
【0024】
この構成によれば、開閉蓋部を開くことによって形成される開口を通じて飲料を飲むときには、2つのストロー用穴が最も高い位置に位置し、上記開口がその2つのストロー用穴の下側に位置することになる。このため、飲料容器内の飲料は、上記開口に向って流れる一方で、飲料容器内は、2つのストロー用穴を介して外部に連通することになり、飲料容器内の飲料を飲む者が当該蓋に口をつけて飲料を飲む際、2つのストロー用穴を飲料容に対する空気取り入れ孔として有効に利用できる。
【0025】
(9)前記(8)の構成の下で、
前記天面板部に、前記2つのストロー用穴の並設方向に伸びる直線状の薄肉部が、前記開閉蓋部の揺動基端として形成され、
前記開閉蓋部は、前記天面板部に対する切込みよって、前記薄肉部の両端から、前記2つのストロー用穴に対して遠のく方向に伸びる膨らみ形状として区画されている共に、その先端部が、揺動先端部として、前記天面板部における外周縁に沿うように形成されている構成とされている。
【0026】
この構成によれば、前述の(7)(8)の具体的且つ最適な開閉蓋部を提供できる。
【0027】
(10)前記(9)の構成の下で、
前記切込みが、断続的な複数の切込み部により形成され、
前記各切込み部が、前記天面板部の表面側と裏面側とを連通させている構成とされている。
【0028】
この構成によれば、2つのストロー用穴を、ストローの差し込み口又は直接的な飲み口として使用する場合には、各切込み部を飲料容器に対する空気取り入れ部分として有効に利用できることになり、飲料容器内の飲料の飲み易さを高めることができる。
【0029】
(11)前記(7)〜(10)のいずれかの構成の下で、
前記開閉蓋部の表面に、外部に突出する突部が設けられている構成とされている。
【0030】
この構成によれば、突部を摘まんで開閉蓋部を上方に揺動させることができ、飲み口としての開口を簡単に開くことができる。
【0031】
(12)前記(1)〜(11)のいずれかの構成の下で、
前記2つのストロー用穴のうちの一方の穴に、ストローの一端側が前記天面板部の表側から差し込まれており、
前記2つのストロー用穴のうちの他方の穴に、前記ストローの他端側が該天面板部の表側から差し込まれている構成とされている。
【0032】
この構成によれば、当該蓋として、2つのストロー用穴に対してストローの一端側と他端側とを予め差し込んだものを用意しておくことにより、飲料が収容された飲料容器を購買者に手渡す際、その蓋をもって、その飲料が収容された飲料容器の開口を直ぐに塞ぐことができ、その手渡しにおいて、飲料容器内から飲料がこぼれ出ることを防止できる。さらには、その飲料が収容された飲料容器を購入した購買者は、何もしなくても、飲料を飲料容器内からこぼれ出ることを防ぎつつ、その飲料容器を持ちながら次の場所に向けて移動することができる。