【解決手段】 中空成形体である樹脂製パレット10は、接地面10bに、接地面10bの摩耗状態を把握するための凹部20(第1凹部20a、第2凹部20b)が設けられる。凹部20は、厚肉部15に形成される。
第1溶融樹脂シート及び第2溶融樹脂シートを備えて、前記第1溶融樹脂シートと前記第2溶融樹脂シートが重なる厚肉部に前記凹部が形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の中空成形体。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態を説明する。中空成形体とされる樹脂製パレット10は、
図1(a)に示すように、平面視略長方形の平板状に形成される。樹脂製パレット10は、載置面10aに荷物を載置してフォークリフトで荷物と共に運搬される。以下、樹脂製パレット10の説明において、載置面10a側を上、その反対側(後述する接地面10b側)を下とする。また、
図1(a)の上側を樹脂製パレット10の前、その反対側(
図1の下側)を後とする。さらに、
図1(a)の左側を樹脂製パレット10の左、その反対側(
図1の右側)を樹脂製パレット10の右とする。
【0011】
図1(a),(b)に示すように、樹脂製パレット10は、2枚の溶融樹脂シートである第1溶融樹脂シート11及び第2溶融樹脂シート12を備え、両者が溶着して形成される。樹脂製パレット10の第1溶融樹脂シート11は、樹脂製パレット10の下側に配置されて、その外表面は裏面10cとされる。樹脂製パレット10の第2溶融樹脂シート12は、樹脂製パレット10の上側に配置され、その外表面には載置面10aが形成される。第1溶融樹脂シート11と第2溶融樹脂シート12の間の内部は中空とされ、中空部13が形成される。
【0012】
第1溶融樹脂シート11は、樹脂製パレット10の裏面10cにおいて略四角錐台状に突出して形成される複数の脚部11aを備える。本実施形態においては、脚部11aは、3行3列の合計9個配置される。脚部11aの略平坦な頂面は、地面と接する面である接地面10bとされる。
【0013】
各脚部11aの左右方向の幅は、両端側の列の脚部11aが中央の列の脚部11aよりも大きく形成される。また、各脚部11aの前後方向の幅は同一である。中央の列の脚部11aと各両端側の列の脚部11aとの間の空間は、フォークリフトのフォークが挿入可能な程度に形成される。
【0014】
樹脂製パレット10の第2溶融樹脂シート12は、載置面10aにおいて略四角錐台状に陥没して形成される複数の陥没部12aが形成される。本実施形態においては、陥没部12aは、左右方向中央に3行1列の合計3個配置される。
【0015】
各陥没部12aは、樹脂製パレット10の左右方向中央に位置する列の3個の脚部11aにおける接地面10bを形成する肉厚部分の一部とそれぞれ重なる。この重なった部分は、厚肉部15とされる。各厚肉部15は、第1溶融樹脂シート11と第2溶融樹脂シート12が重なって溶着して形成される。各厚肉部15の厚さは、後述する型締工程において、第2溶融樹脂シート12が第1溶融樹脂シート11に対してコンプレッションされる部分である。従って、厚肉部15の厚さは、第1溶融樹脂シート11の厚さ及び第2溶融樹脂シート12の厚さを合計した厚さ以下となる。
【0016】
中央の厚肉部15に対応する接地面10bには、凹部20が形成される。凹部20は、接地面10bから樹脂製パレット10の上下方向上側に向かって凹んだ丸孔状に形成される。凹部20は貫通しない。凹部20の開口部の面積は、接地面10bの面積と比べ、十分に小さく形成される。
【0017】
本実施形態では、凹部20として、
図1(b)のA部拡大図に示すように、第1凹部20a及び第2凹部20bが形成される。第1凹部20aは、第2凹部20bの1/2の深さとして形成される。例えば、第1凹部20aの深さを0.5mm、第2凹部20bの深さを1.0mmとして形成することができる。第1凹部20aの深さ及び第2凹部20bの深さは、第1溶融樹脂シート11の厚みよりも小さく形成される。
【0018】
樹脂製パレット10は、
図2に示す成形装置60により形成される。成形装置60は、公知の構成とされる。成形装置60は、溶融樹脂シートを成形する樹脂供給装置61が対向して2台配置されて(第1樹脂供給装置61A及び第2樹脂供給装置61B)、それぞれ第1溶融樹脂シート11及び第2溶融樹脂シート12を成形する。樹脂供給装置61の下方には、金型80(第1金型81及び第2金型82)が配置される。
【0019】
樹脂供給装置61は、樹脂材料の供給口とされるホッパー65と、油圧モータ68と接続して内部に配置されるスクリューにより、ホッパー65から供給された材料を溶融、混錬する押出機66が設けられる。押出機66は、プランジャ72を備えるアキュムレータ70に接続され、溶融、混錬された樹脂材料は押出機66からアキュムレータ70に送られる。樹脂材料は、アキュムレータ70で高圧とされてTダイ71に送られて、適宜のタイミングでTダイ71のダイスリットが開かれて、ローラ79により送り出されて第1溶融樹脂シート11及び第2溶融樹脂シート12が形成される。
【0020】
ホッパー65に投入される樹脂材料は、ペレット状に形成されたポリオレフィン等からなる熱可塑性樹脂である。ポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体及びその混合物などが挙げられる。また、これらにガラス繊維、タルク、顔料などの添加物剤を配合してもよい。
【0021】
第1金型81及び第2金型82は、対向して配置される。第1金型81及び第2金型82の外周には、それぞれ型枠83及び型枠84が設けられる。第1金型81には、キャビティ81aが形成される。キャビティ81aの外周には、ピンチオフ部81bが形成される。キャビティ81a内には、前述の樹脂製パレット10の脚部11aを形成するための複数の金型凹部81a1が形成される。金型凹部81a1は、樹脂製パレット10の脚部11aに対応して、略四角錐台状に3行3列の9個形成される。そして、中央の金型凹部81a1の平坦な頂部には、凹部20を形成するためのピン81c(第1ピン81c1、第2ピン81c2)が設けられる。第1凹部20aは第1ピン81c1により形成され、第2凹部20bは第2ピン81c2により形成される。
【0022】
第2金型82には、キャビティ82aが形成される。キャビティ82a内には、樹脂製パレット10の陥没部12aを形成するための突出部82a1が形成される。キャビティ82aの外周には、ピンチオフ部82bが形成される。第1金型81には、第1金型81のキャビティ81a内に囲われた空間を減圧する真空ポンプ(不図示)が設けられる。同様に、第2金型82には、第2金型82のキャビティ82a内に囲われた空間を減圧する真空ポンプ(不図示)が設けられる。
【0023】
次に、樹脂製パレット10の製造方法について説明する。樹脂製パレット10は、材料供給工程、賦形工程、型締工程、取出工程の順に各工程を経て、製造することができる。以下に、各工程について説明する。
【0024】
まず、材料供給工程では、
図2に示すように、第1樹脂供給装置61A及び第2樹脂供給装置61Bは、それぞれ第1溶融樹脂シート11及び第2溶融樹脂シート12を、第1金型81及び第2金型82の間に垂下して配置される。なお、第1溶融樹脂シート11及び第2溶融樹脂シート12の成形は、同時である必要はない。
【0025】
賦形工程では、
図3に示すように、型枠83を第1溶融樹脂シート11に向けて移動させて第1溶融樹脂シート11のシート面に当接させる。そして、
図4に示すように、型枠83と第1金型81とを相対的に近づけると共に、第1溶融樹脂シート11、キャビティ81a及び型枠83とで形成される空間内を減圧して、第1溶融樹脂シート11をキャビティ81aに賦形させる。このとき、脚部11a、接地面10bが金型凹部81a1により形成されると共に、ピン81c(第1ピン81c1、第2ピン81c2)により、凹部20(第1凹部20a、第2凹部20b)が形成される。
【0026】
図3に示すように、第1金型81と対向する第2金型82側も同様に、型枠84を第2溶融樹脂シート12に向けて移動させて第2溶融樹脂シート12のシート面に当接させる。そして、
図4に示すように、型枠84と第2金型82とを相対的に近づけると共に、第2溶融樹脂シート12、キャビティ82a及び型枠83とで形成される空間内を減圧して、第2溶融樹脂シート12をキャビティ82aに賦形させる。
【0027】
型締工程では、
図5に示すように、第1金型81及び第2金型82を相対的に接近させて、環状のピンチオフ部81b及びピンチオフ部82b同士が当接するまで型締めする。第1溶融樹脂シート11及び第2溶融樹脂シート12は、ピンチオフ部81b及びピンチオフ部82bに沿って互いに溶着され、パーティングラインPL(
図1(b)参照)となる。また、金型凹部81a1の平坦な底部における第1溶融樹脂シート11に対して突出部82a1の第2溶融樹脂シート12が押圧(コンプレッション)して溶着し、厚肉部15が形成される。
【0028】
そして、取出工程では、第1金型81及び第2金型82を型開きさせて、第1金型81及び第2金型82内から成形された樹脂製パレット10が取り出される(不図示)。
【0029】
次に、樹脂製パレット10の使用態様について説明する。樹脂製パレット10を継続して使用すると、接地面10bと地面との摩擦により、接地面10bに摩耗が生じる。凹部20が設けられる接地面10bは、摩耗の初期の段階では、深さが浅い第1凹部20aが消失する。樹脂製パレット10の使用を継続すると、次に深さが深い第2凹部20bが消失する。
【0030】
このように、接地面10bの摩耗状態を把握するための凹部20(第1凹部20a、第2凹部20b)を樹脂製パレット10に設けることにより、例えば第1凹部20aが消失した場合には樹脂製パレット10の交換時期であり、第2凹部20bが消失した場合には樹脂製パレット10の使用が推奨されない(使用の禁止)である等となるよう凹部20を設定すれば、利用者は凹部20の有無を確認するだけで樹脂製パレット10の交換時期を容易に把握することができる。
【0031】
さらに、第1凹部20a及び第2凹部20bは、樹脂製パレット10の厚肉部15に形成される。これにより、凹部20を形成する箇所の肉厚を厚くすることができ、よって凹部20の深さの設定の自由度を高くすることができる。さらに、凹部20を厚肉部15に形成することにより、樹脂製パレット10は、第1凹部20a及び第2凹部20bを設けたことによる強度の低下が起きにくくなる。
【0032】
また、樹脂製パレット10は、荷物を載置面10aの中央に載置する場合が多く、この場合には樹脂製パレット10は中央を頂点とするすり鉢状に撓むことが考えられる。すると、樹脂製パレット10の中央が最も接地面10bの摩耗が進むと考えられる。従って、最も摩耗が進むと考えられる中央の厚肉部15の接地面10bに凹部20を設けることで、より的確に交換時期を把握することができる。
【0033】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は本実施形態により限定されることはなく、種々の形態で実施することができる。例えば、中空成形体として樹脂製パレット10を例示したが、これに限られず、物流用のトレーやコンテナ、車両等が通過し易いよう段差を解消するためのスロープ等の他の中空成形体とすることもできる。また、凹部20の形状は、丸孔状に限定されず、溝状としてもよいし、線状に形成してもよい。
【0034】
凹部20は、本実施形態のように第1凹部20a及び第2凹部20bの2つ設けることに限定されず、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。中空成形体に複数の凹部20を設けることにより、段階的に交換時期を把握することができる。
【0035】
また、凹部20の開口部近傍には、凹部20の深さの値(文字)や交換時期を示す記号等を設けることもできる。例えば、
図6(a)に示すように、接地面10bの一部に厚肉部15を形成し、この厚肉部15に対応する接地面10bに凹部20として4つの凹部20−1,20−2,20−3,20−4を2行2列で形成する。そして、各凹部20は、深さを異ならせて形成する。具体的には、凹部20−1は深さを0.5mmとし、凹部20−2は1.0mm、凹部20−3は1.5mm、凹部20−4は2.0mmで形成する。そして、凹部20の近傍である凹部20(厚肉部15)の左右側方に、それぞれ矩形凹状の孔部30を形成する。孔部30の底面には、各凹部20の深さを表示する。
図6(a)では、右側の孔部31には、凹部20−1に対応する表示(「←0.5mm」の表示)及び凹部20−2に対応する表示(「←1.0mm」の表示)を刻印により形成する。同様に、左側の孔部31には、凹部20−3に対応する表示(「1.5mm→」の表示)及び凹部20−4に対応する表示(「2.0mm→」の表示)を刻印により形成する。孔部30及び各表示も金型80に形成しておくことができる。このようにして、凹部20の近傍に深さを表す数値や、交換時期を示す文字、記号等を表示することができる。そして、当該文字等を孔部30に表示することで、摩耗による当該文字等の消失を回避することができる。
【0036】
また、凹部20は、金型にピン81cを設けて賦形工程で形成することに限定されることは無く、例えば製品取出し後の後加工で形成することもできる。さらにまた、中空成形体は、射出成形やブロー成形、板金加工や鋳物等で形成した金属部材の組合せ等他の成形・加工方法でも形成することができる。すなわち、各種の成形方法において、接地面10bに接地面10bの摩耗状態を把握するための凹部20を形成するためのピン81cを備える金型80により凹部20を形成し、中空成形体を製造することができる。