【実施例】
【0144】
材料及び方法
<委託試験処>
1)黄斑変性動物モデルの製作及び薬動学動物実験−仁済大学校釜山白病院/眼科疾患T2B基盤構築センター
2)薬動学分析−仁済大学校薬学大学
<黄斑変性試験動物モデルの製作>
1)すべての動物は、実験室環境に適応するように約7日間の順化期間を有した。
【0145】
2)疾病や傷などの臨床症状を示さずに適切な体重を有する動物を選択して試験に使用し、一番最近に測定された体重に基づいて対照群及び投与群を無作為に配置した。
【0146】
3)すべての実験期間の間にマウスは、3匹ずつマウス用ケージ(cage)に収容して飼育した。
【0147】
4)動物室の環境は、温度19〜20℃、湿度40〜60%、照度150〜300Luxに一定にした。
【0148】
5)C57BL/6マウス(Orient Bio、Korea)を1週間に環境に適応させた後、7週齢のマウスにImage−Guided Laser(Phoenix、USA)を用いて視神経を主として3、6、9、12時方向にレーザを照射し、このときのレーザ条件は532nm、100ms/70ms、200mWであり、スポット(spot)の大きさは50μmであった。
【0149】
<黄斑変性治療効果の分析方法>
レーザ誘発性脈絡膜新生血管生成(Laser−induced choroidal neovascularization、CNV)マウスモデルに対する試験物質の脈絡膜新生血管生成阻害効果及び網膜細胞機能の回復効果を確認するために、下記の方法を行った。
【0150】
1)基底部フルオレセイン血管造影法(Fundus Fluorescein Angiography、FFA)
CNVマウスの両眼を散瞳させ、1%フルオレセイン(Sigma、USA)を腹腔に注射して血管を染色した。マウスを痲酔し、フルオレセイン注射して5分後にレーザで誘導された新生血管をMicron IV image装備を使用して撮影した。網膜損傷部位(CNV lesion)は、Image J programを用いて補正された総蛍光度(corrected total fluorescence、CTF)を算出して示し、このときCTFを求める式は、下記の通りである。
【0151】
*CTF=総濃度(Integrated Density)−[選択された損傷部位の面積(Area of selected lesion)×バックグラウンド・リーディングの平均蛍光度(Mean fluorescence of background readings)]
【0152】
2)光干渉性断層撮影技術(Optical Coherence Tomography、 OCT)
CNVマウスの両眼を散瞳させマウスを痲酔した後に、レーザで誘導された新生血管をImage guided OCT装備を使用して網膜断層を撮影した。散瞳させたマウスをOCT機械の前に位置させ、bright−field live fundus imageを見ながらガイド線をCNVの中央に位置させて形成されたそれぞれの脈絡膜新生血管をスキャンした。
【0153】
3)網膜電位図検査(Electroretinography、ERG)
試験前に暗順応を24時間の間に行い、暗室(dark room)ですべての試験を行った。網膜の機能を評価するために散瞳後にマウスをケタミン(30mg/kg)及びキシラジンヒドロクロライド(2.5mg/kg)混合物を腹腔に注射して全身痲酔し、電極をそれぞれ肌、しっぽそして角膜に接触させて網膜電位図検査を行った。単一白色光で網膜を刺激し反応値を得て、A waveの谷からB waveの頂点まで定めた振幅を測定し、これを網膜機能の指標として評価した。
【0154】
4)ウェスタンブロットの分析(Western blot analysis)
レーザ損傷15日目にマウスを安楽死した後に眼球を摘出して鞏膜、角膜及び水晶体を除去し、脈絡膜と網膜層とを分離した。脈絡膜と網膜をPBSで2回洗浄した後、Pro−PREP(iNtRON、Korea)を入れて組職を均質化しタンパク質を抽出し、抽出したタンパク質はBCA protein assay kit(Thermo scientific、USA)を用いて定量し、20μgのタンパク質をウェスタンブロット(Western blot)に用いた。5%脱脂乳(skim milk)に1時間ブロッキング(blocking)した後、1次抗体(primary antibody)は、1:1000でTBS−Tで希釈し、4℃でオーバーナイト(overnight)させた。TBS−Tで洗浄(washing)した後、3%脱脂乳で2次抗体(secondary antibody)を1:5000に希釈し、室温で1時間処理後、Chemi Image Systemを用いて検出(detection)した。
【0155】
<水可溶化されたUDCAの薬物動態学分析方法>
薬動学研究(Pharmacokinetics Study)のために試験物質YSB201−4をC57BL/6マウスモデルに経口投与した後、時間経過による薬物成分の血漿及び生体機関内で移行される薬動学的推移を分析した。
【0156】
1)試験法
(1)試験物質をマウスモデルに経口投与した後、各時間ごとに血液及び各種組職の試料を採取し、有機溶媒を用いて生体組職内の薬物成分を抽出して、その濃度をHPLC蛍光検出器を介して定量分析した。試料採取は、経口投与後の0、5、10、30分後及び1、2、4、10、24、48、72時間後に実施し、各時間ごとに4匹マウスから血液及び生体試料を採取した。試験群と同様に節食及び食餌をした対照群の場合は0、4、10、24、48、72時間後に血液及び生体試料を採取した。
【0157】
(2)有機溶媒を用いて生体試料内の試験物質成分を抽出し、その回収率(recovery、%)を計算することにより好適な抽出法を定立した。様々な生体組職においての胆汁酸系列成分を特異的に定量分析するために酵素反応及び蛍光検出を用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)機器試験法を検証した。
【0158】
(3)血液及び生体組職内の薬物成分の濃度分析結果を薬物動態分析プログラムであるWinNonLinに適用させて経口投与後の薬動学パラメータ(pharmacokinetic parameters)を計算し、YSB201−4製剤のPKプロファイルを確認した。
【0159】
(4)IACUC:仁済大学校釜山白病院インダング生命医学研究院の動物実験室は2014年食品医薬品安全処から認証を得ており、本試験計画は、仁済大学校医科大学IACUC(Institutional Animal Care and UseCommittee)審議を経て行われた(IACUC No.IJUBPH_2016−001−02)。
【0160】
2)試験試薬及び装備
(1)試験物質としてYSB201−4を用いた。
(2)標準物質として用いた様々な胆汁酸は、gUDCA、tUDCA、UDCA、GCA(Glycocholic acid hydrate)、TCA(Taurocholic acid sodium salt hydrate)、CA(Cholic acid)、GCDCA(Glycochenodeoxycholic acid)、TCDCA(Taurochenodeoxycholic acid)、GDCA(Glycodeoxycholic acid)、TDCA(Taurodeoxycholic acid)、CDCA(Chenodeoxycholic acid)、DCA(Deoxycholic acid)、GLCA(Glycolithocholic acid sodium salt)、TLCA(Taurolithocholic acid)、及びLCA(Lithocholic acid)であってアメリカシグマアルドリッチ社(Sigma−Aldrich)から購買した。
【0161】
(3)分析装備は、アメリカ Water社の2695Alliance HPLC(high performance liquid chromatography)機器であり、日本JASCO社のBilePak II column(4.6125mm、JASCO、Japan)及びEnzymePak 3α−HSD column(4.635mm、JASCO、Japan)を共に用いた。
【0162】
3)薬物投与方法−経口投与
経口投与直前の12時間節食させた後に測定した体重に基づいて個体別投与液量を換算して使い捨て注射器にゾンデを装着して経口投与し、経口投与後4時間以後からは固形飼料を再供給した。
【0163】
4)実験動物
試験系は、マウスC57BL/6の36匹(めす)を用い、体重の範囲16〜18gのマウスが分譲され、7日間順化させた後に実験に用いた。最初の投与のとき全体平均体重の±20%内外の動物を用いた。購入処は(株)コアテック(京畿道平沢、韓国)である。動物室の環境は、温度19〜25℃、湿度40〜60%、照度150−300Luxにし、動物室及び飼育ケージ(cage)の掃除は仁済大学校釜山白病院インダング生命医学研究院の標準作業指針書に従って実施した。
【0164】
5)群の構成及び投与計画
対照群及び試験群の構成及び投与計画は、表1に示す通りである。
【0165】
【表1】
【0166】
6)試料分析方法
マウスの血液及び生体試料の分析のために、日本JASCO社の胆汁酸分析システムを用いた。Waters社のAlliance HPLCシステム(Waters(登録商標)2695 Alliance HPLC システム)を構築して蛍光検出器(excitation:345nm、emission:470nm)を介して胆汁酸物質の濃度を定量分析できるようにセッティングし、HPLC実験条件は、表2の通りである。
【0167】
【表2】
【0168】
7)資料及び統計処理
試験結果をMicrosoft Excel 2010を用いて整理し、血中濃度分析結果に対してPharsight WinNonlin 7.0プログラム(Certara、USA)を用いて追加的な薬動学的分析を行った。GraphPad Prism 5.0を用いて、p<0.05値を統計的に有意値として統計処理し、グラフを作成した。
【0169】
1.水可溶化されたUDCA清浄水溶液試験物質の製造
(実施例1)UDCAに対するマルトデキストリンの含量比が1:6の清浄水溶液
自然そのままのUDCA及び低い葡萄糖当量を有した水可溶性澱粉を含む水可溶化されたUDCAの透明な清浄水溶液の原液(stock solution)を製造した。
【0170】
具体的には、水酸化ナトリウムペレット6.7gを精製水400mLに溶解させた。その後、UDCA60gを室温で攪拌下で上記水酸化ナトリウム溶液に溶解させた。次いで上記透明な溶液にマルトデキストリン360gを少しずつ添加して撹拌した。次いで高い処理量で超音波分解(750W、2OkHz)を実施しながら得られた透明な溶液に防腐剤を薬剤学的剤形に適した量で添加し、HClの滴加によりpHを調整した。精製水を添加して総1,000mLに調整した。必要によって、上記透明な溶液を適した濾過装置により濾過した。この濾過は原料からの不純物の除去や滅菌のために重要であるが、溶液が既に透明であるので、粒状物を除去するためではない。
【0171】
表3に示すように、上記製造されたウルソデオキシコール酸溶液は、pH10.3、9.2、6.7では目視で沈殿せず清浄水溶液を形成したが、pH5.4では沈殿を形成した。
【0172】
(実施例2)UDCAに対するマルトデキストリンの含量比が1:12の清浄水溶液
自然そのままのUDCA及び低い葡萄糖当量を有した水可溶性澱粉を含む水可溶化されたUDCAの透明な清浄水溶液の原液(stock solution)を製造した。
【0173】
具体的には、UDCA60g当たり高分子量水可溶性澱粉転化物の1つとしてマルトデキストリン720gを用いたことを除いては、実施例1と同様に製造した。
【0174】
表3に示すように、上記製造されたUDCA溶液は、pH9.6、7.3、6.5、6.1では目視で沈殿せず清浄水溶液を形成したが、pH5.5では沈殿を形成した。
【0175】
(実施例3)UDCAに対するマルトデキストリンの含量比が1:15の清浄水溶液
自然そのままのUDCA及び低い葡萄糖当量を有した水可溶性澱粉を含む水可溶化されたUDCAの透明な清浄水溶液の原液(stock solution)を製造した。
【0176】
具体的には、UDCA50g当たり高分子量水可溶性澱粉転化物の1つとしてマルトデキストリン750gを用いたことを除いては、実施例1と同様に製造した。このとき水酸化ナトリウムペレット5.7gを精製水400mLに溶解させた後に用いた。
【0177】
表3に示すように、上記製造されたウルソデオキシコール酸溶液は、pH9.5、8.9、7.9、7.1、6.0では目視で沈殿せず清浄水溶液を形成した。しかし、pH5.5では沈殿を形成した。
図1は、各pH値でのUDCA溶液をテストチューブに入れて清浄水溶液生成の可否を写真で示したものである。
【0178】
(実施例4)UDCAに対するマルトデキストリンの含量比が1:20の清浄水溶液
自然そのままのUDCA及び低い葡萄糖当量を有した水可溶性澱粉を含む水可溶化されたUDCAの透明な清浄水溶液の原液(stock solution)を製造した。
【0179】
具体的には、UDCA17.5g当たり高分子量水可溶性澱粉転化物の1つとしてマルトデキストリン350gを用いたことを除いては、実施例1と同様に製造した。このとき水酸化ナトリウムペレット2.0gを精製水400mLに溶解させた後に用いた。
【0180】
表3に示すように、上記製造されたUDCA溶液は、pH9.4、7.1、6.1、5.5では目視で沈殿せず清浄水溶液を形成した。しかし、pH5.1では沈殿を形成した。
【0181】
図2は、各pH値でのUDCA溶液をテストチューブに入れて清浄水溶液生成の可否を写真で示したものである。
【0182】
(実施例5)UDCAに対するマルトデキストリンの含量比が1:25の清浄水溶液
自然そのままのUDCA及び低い葡萄糖当量を有した水可溶性澱粉を含む水可溶化されたUDCAの透明な清浄水溶液の原液(stock solution)を製造した。
【0183】
具体的には、UDCA14g当たり高分子量水可溶性澱粉転化物の1つとしてマルトデキストリン350gを用いたことを除いては、実施例1と同様に製造した。このとき水酸化ナトリウムペレット1.7gを精製水400mLに溶解させた後に用いた。
【0184】
表3に示すように、上記製造されたUDCA溶液は、pH9.6、6.1、5.1では目視で沈殿せず清浄水溶液を形成した。しかし、pH4.0では沈殿を形成した。
図3は各pH値でのUDCA溶液をテストチューブに入れて清浄水溶液生成の可否を写真で示したものである。
【0185】
(実施例6)UDCAに対するマルトデキストリンの含量比が1:30の清浄水溶液
自然そのままのUDCA及び低い葡萄糖当量を有した水可溶性澱粉を含む水可溶化されたUDCAの透明な清浄水溶液の原液(stock solution)を製造した。
【0186】
具体的には、UDCA25g当たり高分子量水可溶性澱粉転化物の1つとしてマルトデキストリン750gを用いたことを除いては、実施例1と同様に製造した。このとき水酸化ナトリウムペレット2.8gを精製水400mLに溶解させた後に用いた。
【0187】
表3に示すように、上記製造されたUDCA溶液は、pH9.0、8.0、7.0、6.0、5.1、4.1、2.9では目視で沈殿せず清浄水溶液を形成した。
図4は、各pH値でのUDCA溶液をテストチューブに入れて清浄水溶液生成の可否を写真で示したものである。
【0188】
(実施例7)UDCA/tUDCA/gUDCAを含有し、マルトデキストリンに対する含量比が1:30の清浄水溶液
UDCA及びUDCA誘導体を含有し、低い葡萄糖当量を有した水可溶性澱粉を含む水可溶化されたUDCAの透明な清浄水溶液の原液(stock solution)を製造した。
【0189】
具体的には、水酸化ナトリウムペレット0.3gを精製水500mLに溶解させた。その後、UDCA1.0g、tUDCA0.5g、gUDCA0.5gを室温で攪拌下で上記水酸化ナトリウム溶液に溶解させた。次いで、上記透明な溶液にマルトデキストリン60gを少しずつ添加して撹拌した。次いで高い処理量で超音波分解(750W、2OkHz)を実施しながら得られた透明な溶液に防腐剤を薬剤学的剤形に適した量で添加し、HClの滴加によりpHを調整した。精製水を添加して総1,000mLに調整した。
【0190】
表3に示すように、上記製造されたUDCA溶液は、pH10.2、9.0、8.1、7.1、6.1、5.1、4.1、2.9では目視で沈殿せず清浄水溶液を形成した。
【0191】
図5は、各pH値での上記UDCA溶液をテストチューブに入れて清浄水溶液生成の可否を写真で示したものである。
【0192】
【表3】
【0193】
(実施例8−12)水可溶化されたUDCA清浄水溶液YSB201−1、YSB201−2、YSB201−3、YSB201−4、YSB201−5
YSB201の原液(stock solution)は、先ず400mLNaOH(2.7g)溶液中にUDCA(25g)を溶解させて準備した。その後、得られた透明な溶液に、激しい攪拌下でマルトデキストリン745gを少しずつ添加した。次いで、高い処理量で超音波分解(750W、2OkHz)を実施しながらHClの滴加によりpHを6.8に調整した。次いで、この得られた溶液に医薬用水(pharmaceutical grade water)を加えて体積を1.0Lに調整した。上記YSB201の原液(stock solution)を所望のUDCA濃度となるように医薬用水で希釈し、無菌条件下で0.2μmフィルターウェア濾過装置を用いて濾過滅菌処理してYSB201−1(実施例8)、YSB201−2(実施例9)、YSB201−3(実施例10)、YSB201−4(実施例11)、YSB201−5(実施例12)の試験物質を製造した。上記濾過は、滅菌のために重要であるが、溶液が既に透明であるので粒状物を除去するためではない。
【0194】
【表4】
【0195】
(比較例)陽性対照群アイリーア(Eylea(登録商標))の製造
眼球内投与群の陽性対照群アイリーア(Eylea(登録商標))は、PBSを用いて10mg/mlに製造した。
以下、すべての試験物質は、4℃で保管した。
【0196】
2.眼球内注射による試験物質YSB201(実施例8−実施例10)の脈絡膜新生血管阻害の有効性評価
目的:本試験は、マウスの脈絡膜にレーザを照射し、加齢性黄斑変性の特徴である脈絡膜新生血管を誘導する、Laser−induced choroidal neovascularization(CNV)mouseモデルを作り、試験物質YSB201を眼球内注射して脈絡膜新生血管阻害効能を確認するためのものである(
図6参照)。
【0197】
2−1.試験物質の眼球内注射
投与された試験物質の種類、眼球内投与量及び濃度は、表5に示した。投与に使用されたマウスは、C57BL/6めす36匹を用い、体重の範囲16〜18g/マウスが分譲され6日間順化した後に実験に用いた。最初投与時に全体平均体重の±20%内外の動物を用いた。
【0198】
散瞳剤[トロペリン点眼剤、韓美薬品(株)]を両眼に点眼し、10分間散瞳させた後にケタミン(30mg/kg)及びキシラジンヒドロクロライド(2.5mg/kg)を腹腔内注射してマウスを痲酔し、試験物質は、Ultra−Micro Pump(100μLのガラスシリンジに物質を充填し、連結された35gaugeのシリンジ)を用いてマウスの両眼にそれぞれ2μLずつ、二日に1回、総3回注射(injection)した。
【0199】
【表5】
【0200】
2−1−1.基底部フルオレセイン血管造影法(Fundus Fluorescein Angiography、FFA)
図7a〜
図7eは、レーザ損傷14日後にフルオレセイン(Fluorescein)を注射して生成された脈絡膜新生血管及び投与された物質に応じる脈絡膜新生血管阻害効果を蛍光で示したものであり、
図7fは、これを数値化し、バックグラウンド(background)を補正するためにCTFを算出して2×10
6を超える値を除いた後にグラフに示したものである。陽性対照群のアイリーア(Eylea(登録商標))は、各眼球に2μLずつ1回注射し、試験物質のYSB201は、レーザ損傷(laser injury)後の1日目、3日目、6日目に各眼球に2μLずつ注射した。
【0201】
試験結果、脈絡膜新生血管の減少効果は、YSB201及びアイリーア(Eylea(登録商標))を投与した群から示された。特に試験物質YSB201−1(実施例8、
図7c)、YSB201−2(実施例9、
図7d)及びアイリーア(Eylea(登録商標)、
図7b)は、脈絡膜新生血管を統計的に有意に阻害した(p<0001)。
【0202】
2−1−2.光干渉性断層撮影技術(Optical Coherence Tomography、OCT)
図8a〜
図8eは、脈絡膜新生血管を観察するために網膜を断層撮映した写真であり、
図8fは、網膜損傷部位(CNV lesion)の大きさを数値化したグラフである。
【0203】
試験結果、すべてのマウスから、レーザ損傷14日後に網膜断面で脈絡膜新生血管を観察でき、YSB201(実施例8〜実施例10)を眼球内に直接投与したグループでは対照群(Vehicle、PBS投与)のグループよりも小さいサイズの網膜損傷部位(CNV lesion)が観察された。特に試験物質YSB201−1(実施例8、
図8c)、YSB201−2(実施例9、
図8d)、及びアイリーア(Eylea(登録商標)、
図8b)は、脈絡膜新生血管を統計的に有意に抑制した(p<0001)。
【0204】
2−1−3.網膜電位図検査(Electroretinography、ERG)
図9a〜
図9fは、レーザ損傷15日後、眼球内投与群を暗順応させ、網膜の光に対する反応の程度を測定した試験結果である。
【0205】
実験結果、レーザ損傷15日後、CNVにより網膜の機能が低下して白色光に対する反応の程度が減少することを確認したが、YSB201(実施例8〜実施例10、
図9d〜
図9f)及びアイリーア(Eylea(登録商標)、
図9c)を眼球内に投与したグループでは網膜機能の回復によりERG反応が増加することを示した。YSB201−3の場合、ERG反応がPBS投与群に比べて高い状態を示したが、個体間の差により統計的に有意ではなかった。
【0206】
2−1−4.ウェスタンブロット分析(Western blot analysis)
図10は、レーザ損傷15日後の眼球内投与群の脈絡膜及び網膜においての血管内皮細胞成長因子(vascular endothelial growth factor、VEGF)のタンパク質の発現程度をウェスタンブロット(Western blot)により分析した結果である。
【0207】
試験結果、正常グループに比べてPBSを眼球内投与したグループでは、VEGFの発現が大きく増加したが、YSB201(実施例8〜実施例10)及びアイリーア(Eylea(登録商標))を眼球内投与したグループではVEGFの発現が減少した。詳細には、アイリーア(Eylea(登録商標))で処理したグループではVEGF発現量が正常グループのPBS投与群よりは減少したが、YSB201投与群(実施例8〜実施例10)に比べては大きく減少しなかった。これは、アイリーア(Eylea(登録商標))がタンパク質抗体の特性上脈絡膜及び網膜細胞から分泌されるVEGF活動を阻害(blocking)する役割をするだけで、これとは別に脈絡膜及び網膜細胞内のVEGF発現の増大を抑制することはできないということを意味する。すなわちアイリーア(Eylea(登録商標))は、細胞内のVEGF発現を遺伝子レベルで源泉的かつ持続的に抑制することはできないという短所がある。
【0208】
これに対して、YSB201投与群(実施例8〜実施例10)の場合は、脈絡膜及び網膜細胞内でVEGF発現量がアイリーア(Eylea(登録商標))よりも著しく減少したことが分かるが、これは、アイリーア(Eylea(登録商標))の作用機序とは異なって、YSB201(実施例8〜実施例10)の場合は脈絡膜及び網膜細胞内のVEGF発現を遺伝子レベルで下向き調節(down regulation)するので、新生血管生成を源泉的かつ持続的に阻害することができることを示す。
【0209】
3.経口投与によるYSB201(実施例11及び実施例12)の脈絡膜新生血管阻害有効性の評価
目的:本試験は、マウスの脈絡膜にレーザを照射して加齢性黄斑変性の特徴である脈絡膜新生血管を誘導するCNVマウスモデルを作り、試験物質YSB201(実施例11及び実施例12)を経口投与してUDCAが血液網膜関門を横切って眼球内まで到逹して脈絡膜新生血管の発現を抑制する効能を有するかどうかを確認するためのものである(
図11参照)。
【0210】
3−1.試験物質の経口投与
投与された試験物質の種類、投与量及び濃度を表6に示した。投与に用いられたマウスは、C57BL/6めす24匹を用い、体重の範囲16〜18gのマウスが分譲され、6日間順化した後に実験に用いた。最初投与時に全体平均体重の±20%内外の動物を用いた。
【0211】
投与直前に測定したマウスの体重に基づいて個体ごとに投与液の量を換算し、使い捨て注射器にゾンデ(sonde)を装着して経口投与した。
【0212】
レーザ損傷処理の10日前から1日1回午前11時〜午後2時の間に経口投与した。 レーザ損傷後にも10日間、1日1回、午前11時〜午後2時の間に経口投与し、15日目にマウスを安楽死して測定試料を準備した。
【0213】
【表6】
【0214】
3−1−1.基底部フルオレセイン血管造影法(Fundus Fluorescein Angiography、FFA)
図12a〜
図12cは、レーザ損傷13日後、フルオレセイン(Fluorescein)を注射し、生成された脈絡膜新生血管及び投与された物質による新生血管阻害効果を示す写真であり、
図12dは、これを数値化し、バックグラウンド(background)を補正するためにCTFを算出して2×10
6を超える値を除いてグラフに示したものである。
【0215】
試験結果、YSB201(実施例10及び実施例11)を経口投与したグループが、オリーブオイルを投与した対照群(vehicle)グループに比べて網膜損傷部位(CNV lesion)が大きく減少した状態を示し、YSB201−4(125mg/kg/day、実施例11)が最も高い効能を示した(p<0.01)。YSB201−5(250mg/Kg)は、対照群グループよりも網膜損傷部位(CNV lesion)が減少した傾向を示したが、統計的に有意ではなかった。
【0216】
3−1−2.光干渉性断層撮影技術(Optical Coherence Tomography、OCT)
図13a〜
図13cは、脈絡膜新生血管を観察するために網膜を断層撮影した写真であり、
図13dは、網膜損傷部位(CNV lesion)の大きさを数値化したグラフである。
【0217】
実験結果、すべてのマウスからは、レーザ損傷(laser injury)13日後の網膜断面で脈絡膜新生血管を観察でき、YSB201−4(実施例11)を経口投与したグループでは対照群(vehicle、olive oil投与)グループよりも著しく小さいサイズの網膜損傷部位(CNV lesion)を観察できた。
【0218】
3−1−3.網膜電位図検査(Electroretinography、ERG)
図14a〜
図14eは、レーザ損傷14日後、経口投与群を暗順応させ、網膜の光に対する反応の程度を測定した試験結果である。
【0219】
試験結果、レーザ損傷15日後、CNVにより網膜の機能が低下して白色光に対する反応の程度が減少したが、YSB201−4(実施例11、
図14c)を経口投与したグループでは、ERG反応が増加して正常対照群の約73%まで回復したことが示され、これは、統計的に有意(p<0.05)であった。YSB201−5(実施例12、
図14d)も対照群に比べてERG反応が増加したB−wave値を示したが、統計的に有意ではなかった。
【0220】
3−1−4.ウェスタンブロット分析(Western blot analysis)
図15は、レーザ損傷14日後、経口投与群の脈絡膜及び網膜においての血管内皮細胞成長因子(vascular endothelial growth factor、VEGF)の発現程度をウェスタンブロットで分析したものである。
【0221】
実験結果、経口投与しなかったCNVマウス及びオリーブオイル(olive oil)を経口投与したマウスの眼球では、VEGFタンパク質発現量が増加したが、YSB201−4(実施例11)を経口投与した群では、VEGFタンパク質の発現量が著しく減少したことが分かる。
【0222】
(脈絡膜新生血管阻害効能の分析結論及び考察)
本試験は、水可溶化されたUDCA(YSB201)清浄水溶液の黄斑変性治療剤としての可能性を確認するためのものであって、マウスの脈絡膜にレーザを照射し、湿性黄斑変性の特徴である脈絡膜新生血管を誘導するCNVマウスモデルを活用してYSB201の新生血管阻害効能を確認した。
【0223】
マウスのブルック膜(Bruch membrane)にレーザを照射して部分的に破壊させて脈絡膜新生血管を誘導した。試験は、レーザを照射する9日前から、1日にYSB201−4(実施例11)を125mg/Kg、YSB201−5(実施例12)を250mg/Kgの用量で経口投与して黄斑変性の予防及び治療効能を確認する試験と、YSB201を眼球内注射で直接投与して黄斑変性治療剤としての可能性を確認する試験とに分けて行われた。
【0224】
眼球内注射試験結果、YSB201−1(実施例8)及びYSB201−2(実施例9)は、陽性対照群であるアイリーア(Eylea(登録商標))と同程度に脈絡膜新生血管を阻害でき、眼球内注射による網膜の異常反応は観察されなかった。網膜断層撮影により実際のCNVの状態を確認したとき、PBSのみ注射したグループでは網膜浮腫が見える程度にCNVが形成された個体も観察され、部分的な網膜機能低下(retina degradation)も発見された。しかし、かえってYSB201投与群においては薬物により網膜損傷部位(CNV lesion)が減少し、ERG試験でもYSB201−1(実施例8)及びYSB201−2(実施例9)は、網膜機能の低下を抑制することが確認された。網膜から抽出したタンパク質を用いたウェスタンブロットスタディ(western blot study)では、陽性対照群であるアイリーア(Eylea(登録商標))のVEGFタンパク質発現抑制能がYSB201に比べて劣ることが観察された。
【0225】
経口投与試験の結果、YSB201−4(125mg/ml、実施例11)の場合は脈絡膜新生血管を阻害する効能を有することが確認され、YSB201−4(実施例11)はYSB201−5(実施例12)の濃度対比半分であったにもかかわらず網膜損傷部位(CNV lesion)をより強く阻害することを示した。マウス網膜機能を検査するために行った網膜電位図検査結果、CNVマウスにおいて網膜疾患の代表的な所見である振幅の減少が起こった。網膜電位図は、a波とb波とに分けられるが、a波(受容体電位)は、光の刺激により視細胞で生成される陰電位波であって視細胞の機能を反映すると考えられる。b波(ミュラー細胞電位)は、視細胞の情報伝達過程においてミュラー細胞から生成される急激な陽電位波で示された。正常の網膜においては、a波が陰電位であり、b波が陽電位で示されるので、この2つの波の電位差で網膜の機能を判断することができる。臨床的黄斑変性においては、a波及びb波が消失せず振幅が減少することに知られている。
【0226】
YSB201−4(実施例11)が最も優れた効能を示し、VEGFの発現も効果的に減少させた。レーザ損傷(Laser injury)13日目にフルオレセイン(fluorescein)を腹腔内に注射して蛍光造影法により確認した結果、網膜損傷部位(CNV lesion)は、YSB201を投与した群で有意的に減少したことが確認できた。
【0227】
結論的に、YSB201は、経口投与及び網膜に直接投与した場合に効果的にVEGF タンパク質の発現を抑制し、CNVを減少させる効果がある。
【0228】
4.水可溶化されたUDCA清浄水溶液の血漿及び眼球内薬動学分析
目的:試験物質YSB201−4(125mg/kg、実施例11)をC57BL/6 マウスモデルに経口投与した後、時間の経過に応じて薬物成分が血漿に運搬され、順次に血液網膜関門を横切って眼球内まで治療的活性量で運搬されるかどうかを、さらに他の生体組職内に移行される薬動学的推移を分析する試験である。
【0229】
4−1.薬動学分析の結果
4−1−1.血漿(plsma)サンプルの分析
YSB201−4(125mg/kg、実施例11)を経口投与した後に血漿サンプルを分析した。試験結果、試験群マウス1、2、3、4グループの血液内のUDCAの濃度は、経口投与直後の5〜10分の間に最高血中濃度[36.53±3.32(standard error value)]μg/mLに到逹した。4時間後からは血中UDCAの濃度の消失する程度が減少する傾向にあることが示された(
図16及び
図17)。
【0230】
4−1−2.血漿内薬物動態の分析(Pharmacokinetic data analysis)
YSB201−4(125mg/kg、実施例11)の経口投与薬物に対して薬動学的モデリングを行い、主な薬動パラメータを計算した(表7)。試験結果、最大血中濃度に到逹する時間が5分〜10分の間に示され、半減期が約1.5〜2時間に推定される。
【0231】
【表7】
【0232】
4−2−1.眼球組職内サンプルの分析
YSB201−4(125mg/kg、実施例11)の経口投与後に眼球組職内のサンプルを分析した。試験群マウス(1、2、3、4群)(n=4)の眼球(eyes)内の胆汁酸の薬動学分析結果、UDCAは、T
max0.1時間で眼球内の最高濃度8.05±3.66μg/gtissueを示した。
【0233】
時間の経過に応じてUDCAの生体内代謝体であって細胞保護効果のあるtUDCAも眼球内に伝達されたが、T
max1.38時間で6.51±2、47μg/gtissueを示した(表8、
図18a、18b及び
図19)。
【0234】
【表8】
【0235】
図18a、
図18b及び
図19に示された結果は、YSB201−4(実施例11)を経口投与すると、水可溶化されたUDCAが胃から迅速に血液に吸収され、血液網膜関門を横切って眼球内まで伝達され、また眼球内でも2時間にわたって留まりながら効果的に作用できることを意味する。また、UDCA濃度は、T
max以後に漸次消失するが、この生体内の代謝産物であるtUDCAが再び4時間の間に運搬され留まりながら細胞保護作用をすることになり、漸次消失して眼球内に残らないことになる。したがって、すべての胆汁酸が眼球内で4時間にわたって留まる間に、細胞保護機能(cytoprotection)をするUDCA系列胆汁酸(UDCA、TUDCA、GUDCA)の濃度の合計は界面活性剤(surfactant)の機能をする他の胆汁酸(例としてTCA、CA)の濃度の合計よりも常に高かったが、これは細胞保護機能が常に界面活性剤の機能を抑制し、網膜細胞を保護できることを示す。
【0236】
したがって、YSB201−4(実施例11)の経口投与は、UDCA及びUDCA系列の胆汁酸を高い濃度で眼球内まで伝達し、脈絡膜新生血管を阻害すると共に損傷した網膜細胞の機能を効果的に回復させることができることを示す。
【0237】
4−3−1.胃組織サンプルの分析
4−1−1と同じ分析条件下で試験群マウスの胃を均一に破砕し、抽出過程を経た後に分析した。次の結果に示すように、試験製剤を経口投与した後、試験群マウス1、2、3、4の胃でのUDCAの量が5分後から急激に増加し、4時間後に消失された(
図20及び
図21)。
【0238】
4−4−1.各組職サンプルの薬物動態分析(Pharmacokinetic data analysis)
YSB201−4(125mg/kg、実施例11)の経口投与後にマウス試験群1、2、3、4の血漿、眼球及び胃腸関係組職(肝、胃、小腸、大腸)内のUDCA濃度に対する薬動学分析をともに実施した(表9)。UDCA分布図は、血漿内のUDCAC
maxの約0.2倍程度が眼球内のC
maxであり、約1.6倍〜28倍が肝及び胃のC
maxであった。血漿内のT
maxが0.083時間で速い理由は、肝及び胃での速いT
max(0.1時間、0.71時間)によることであると判明された(表9)。
【0239】
【表9】
【0240】
4−5−1.UDCA系列胆汁酸及びそれ以外の他の胆汁酸の変化
血漿、眼球組職及び胃組織ではすべて類似にUDCA及びUDCA系列の胆汁酸、すなわちYSB201が経口投与された後、生体内代謝により生成されたtUDCA及びgUDCAの総胆汁酸量が急激に増加し、この量は他の総胆汁酸の量に比べて著しく高かった(
図22〜
図24)。
【0241】
(薬動学分析の結論及び考察)
水可溶化されたUDCA清浄水溶液(YSB201)の経口投与により、血漿にUDCAを高濃度で運搬することができ、順次に血液網膜関門を横切って眼球内まで治療的活性量のUDCAを運搬することができた。また、眼球内のUDCAもすぐ消失せず、2時間にわたって留まりながら効能を発揮し、順次にUDCAの代謝物であるtUDCAが眼球内に運搬されて4時間にわたって留まりながら効能を持続させたので、YSB201の経口投与による黄斑変性の予防及び治療に有効性のあることが判明された。
【0242】
以上の説明により、本発明が属する技術分野の当業者は本発明がその技術的思想や必須的特徴を変更することなく他の具体的な形態で実施できることを理解できよう。これに関連して、以上で説明した実施例はすべての面で例示的なものであって限定的なものではないことを理解しなければならない。本発明の範囲は、上記詳細な説明よりも後述する特許請求の範囲の意味及び範囲そしてその等価概念から導出されるすべての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれるものとして解釈されるべきである。