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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-144251(P2021-144251A)
(43)【公開日】2021年9月24日
(54)【発明の名称】眼鏡装着者用保護具
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/00 20060101AFI20210827BHJP
   G02B 1/118 20150101ALI20210827BHJP
   G02C 9/00 20060101ALI20210827BHJP
【FI】
   G02C7/00
   G02B1/118
   G02C9/00
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2021-103849(P2021-103849)
(22)【出願日】2021年6月23日
(62)【分割の表示】特願2018-223395(P2018-223395)の分割
【原出願日】2014年5月7日
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113424
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 信博
(74)【代理人】
【識別番号】100185845
【弁理士】
【氏名又は名称】穂谷野 聡
(72)【発明者】
【氏名】西村 公孝
(72)【発明者】
【氏名】川村 智
【テーマコード(参考)】
2H006
2K009
【Fターム(参考)】
2H006BA01
2H006BA03
2K009AA01
2K009BB12
2K009BB24
2K009CC24
2K009DD02
2K009DD05
2K009DD06
2K009DD15
(57)【要約】
【課題】可撓性を有する透明基材の少なくとも一方の面に可視光の波長以下のピッチで複数の構造体を設けたシートを用い、装着性、視認性に優れた眼鏡装着者用保護具を提供する。
【解決手段】可撓性を有する透明基材11の少なくとも一方の面に可視光の波長以下のピ
ッチで複数の構造体12を設けたシート2を用いた眼鏡用保護具1において、眼鏡4のテ
ンプル5への装着位置に、複数の切込み溝からなる左右一対の装着部3A,3Bが形成さ
れている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する透明基材の少なくとも一方の面に可視光の波長以下のピッチで複数の構造体を設けたシートを用いた眼鏡装着者用保護具において、
眼鏡のテンプルへの装着位置に、複数の切込み溝からなる左右一対の装着部が形成された眼鏡装着者用保護具。
【請求項2】
上記眼鏡のテンプルとレンズ位置との境に応じて折曲げ線が形成されている請求項1に記載の眼鏡装着者用保護具。
【請求項3】
上記シートの上記眼鏡の上側に沿って折曲げ線が形成されている請求項1又は2に記載の眼鏡装着者用保護具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性を有する透明基材の少なくとも一方の面に可視光の波長以下のピッチで複数の構造体を設けたシートを用いた眼鏡装着者用保護具に関する。
【背景技術】
【0002】
医療従事者の職業感染の防止手段として個人用保護具が多く使用されている。特に血液や体液の暴露を防ぐための眼用保護具は検査や手術時に使用され、血液媒介病原体(HIV、HBV、HCV)による職業感染の予防に役立っている。
【0003】
特許文献1(特許第2939627号公報)では透明なバイザーをマスクに連結した顔面マスクおよびバイザーが開示されている。特許文献2(実用新案登録第3160039号公報)ではマスクに着脱可能に取り付けられるアイシールドが開示されている。特許文献3(特開平3−500497号公報)では眼鏡のテンプルを通すための溝穴があけられた顔面プロテクタが開示されている。
【0004】
最近の手術では低侵襲な鏡視下手術が増加しており、平面的な内視鏡像の欠点を補う立体観察が可能な3D内視鏡が開発され、実際の手術に採用されてきている。3Dの方式は大きく3方式があり、赤と青のカラーフィルターを用いるアナグリフ方式、左右の偏光方向を変える偏光方式、液晶のシャッターを用いる方式に分類される。アナグリフは色再現性の理由から採用例は無く、長時間の手術での術者の負担の考慮から、使用眼鏡が軽量な偏光眼鏡方式が採用されることが多い。偏光眼鏡方式の中でも、術者の顔の傾きや姿勢による影響が出づらい円偏光方式が多く採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2939627号公報
【特許文献2】実用新案登録第3160039号公報
【特許文献3】特開平3−500497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
手術に従事する者や体液に暴露する恐れのある検査を行う看護師らは、職業感染防止の観点から、すべての者がアイシールドなどの眼用保護具を装着すべきであるが、普段から矯正用眼鏡をかけている者や、手術用ルーペを装着する医師、3D内視鏡を使用するために偏光眼鏡をかける場合などはそれらを保護具として流用することが多い。
【0007】
しかし、矯正用眼鏡や手術用ルーペ、偏光眼鏡は一般的に、それぞれの機能は十分に満たすが、感染防止の観点からは、メガネの上部や側面から血液や体液などの液体の飛散物が接触する可能性があり、感染防止対策としては不十分である。
【0008】
そのため、十分な保護を得るためには、メガネをかけた上にさらにアイシールドを装着する必要があり、その際には例えば眼鏡タイプのアイシールドなどは、眼鏡のテンプルが二重となり非常に装着感が悪い。マスクにアイシールドを固着したものや、マスクから着脱可能に取り付け可能なアイシールドなどが提案されているが、眼鏡を装着した状態ではアイシールドの位置調整が難しいことや、マスクからの呼気の影響で曇り易いなどの問題があった。また眼鏡と顔面の間にアイシールドを設置できるようにアイシールドに溝穴が設けられているものが提案されているが、顔面に近い位置にフィルムがあることから、顔面に接触しやすく装着感が悪く、また曇り易いなどの問題があった。
【0009】
また、従来上市されている保護具は、延伸されたPETフィルムが使用されることが多いが、PETフィルムを用いた保護具は偏光を乱し、3D観察ができないという欠点がある。
【0010】
さらに、前記のいずれの場合もアイシールドの界面での反射が増えることになり、無影灯下の高光度の環境では反射光による幻惑や、眼精疲労が起こりやすいなどの問題もあった。
【0011】
そこで、本発明は、可撓性を有する透明基材の少なくとも一方の面に可視光の波長以下のピッチで複数の構造体を設けたシートを用い、装着性、視認性に優れた眼鏡装着者用保護具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するために、本発明に係る眼鏡装着者用保護具は、可撓性を有する透明基材の少なくとも一方の面に可視光の波長以下のピッチで複数の構造体を設けたシートを用いた眼鏡装着者用保護具において、眼鏡のテンプルへの装着位置に、複数の切込み溝からなる左右一対の装着部が形成されたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、装着部によって眼鏡の一方のテンプルを挿通保持するとともに他方のテンプルを挟持することにより、容易に眼鏡に装着することができるとともに、眼鏡からの脱落を防止することができる。したがって、例えば矯正用眼鏡や鏡視下手術等に用いる偏光眼鏡をかけた状態においても、血液や体液等の液体が飛散することによる感染防止用のアイシールドとして眼鏡装着者用保護具を用いることにより、使用者の視認性や作業性を損なうことなく、効果的に感染を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明が適用された眼鏡装着者用保護具を示す正面図である。
図2図2は、本発明が適用された眼鏡装着者用保護具を眼鏡に装着した状態を示す斜視図である。
図3図3は、本発明が適用された眼鏡装着者用保護具を構成するシートの断面図である。
図4図4は、本発明が適用された眼鏡装着者用保護具を構成する他のシートの断面図である。
図5図5は、本発明が適用された眼鏡装着者用保護具を構成する他のシートの斜視図である。
図6図6は、モスアイ構造体からなる防反射層のパターンが形成された転写用ロール原盤の斜視図である。
図7図7は、モスアイ構造体からなる防反射層を形成する工程を示す断面図であり、(A)はロール原盤に基材の転写材料が塗布された面を密着させた状態、(B)は片面にモスアイ構造体が転写されたシート、(C)は片面にモスアイ構造体が転写されたシートの他方の面に転写材料を塗布し、ロール原盤に密着させた状態、(D)は両面にモスアイ構造体が転写されたシートを示す。
図8図8は、両面にモスアイ構造体が形成されたシートを積層したシート積層体を示す断面図である。
図9図9は、破断防止部が形成された切込み溝を示す図であり、(A)は破断防止溝を示し、(B)は破断防止孔を示す。
図10図10は、眼鏡のテンプルとレンズ位置との境に応じてハーフカットを施し、折曲げ線を形成した眼鏡装着者用保護具を示す正面図である。
図11図11は、眼鏡の上側に沿ってハーフカットを施し、折曲げ線を形成した眼鏡装着者用保護具を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明が適用された眼鏡装着者用保護具について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがある。具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0016】
本発明が適用された眼鏡装着者用保護具1は、図1に示すように、可撓性を有する透明基材の少なくとも一方の面に可視光の波長以下のピッチで複数の構造体を設けたシート2を用いた眼鏡装着者用保護具において、眼鏡のテンプルへの装着位置に、複数の切込み溝からなる左右一対の装着部3A,3Bが形成されたものである。
【0017】
眼鏡装着者用保護具1は、普段から矯正用眼鏡や、テンプルを備えた手術用ルーペ、3D内視鏡を使用するための偏光眼鏡等の各種眼鏡4をかけた場合においても、図2に示すように、左右一対の装着部3A,3Bが眼鏡4のテンプル5へ装着されることにより、眼鏡4の上部や側面から血液や体液などの液体の飛散物の接触を防止することができる。
【0018】
[シート]
眼鏡装着者用保護具1を構成するシート2は、可撓性を有する透明基材の少なくとも一方の面に可視光の波長以下のピッチで複数の構造体が設けられ、これにより反射防止機能を備える光学素子である。以下では、この反射防止機能を有する微細な凹凸構造体を「モスアイ構造体」という。なお、眼鏡装着者用保護具1は、モスアイ構造体を備えたシート2を用いることにより、このシート2を積層させることによっても視認性を損なうことがない。したがって、眼鏡装着者用保護具1は、シート2が剥離可能に積層されたシート積層体を用いることにより、シート2の表面が汚れるなど視認性が低下した場合に、必要に応じてシート2を剥離することで低下要因ごと取り除くことができ、利便性をも高めることもできる。
【0019】
図3に示すように、シート2は、基体11の両面に基底層13を介して可視光の波長以下のピッチで構造体12が設けられ、これにより、対向する表面及び裏面の両面に反射防止機能を有している。複数の構造体12は、基体11の表面及び裏面において、基底層13の上に複数の列をなすように規則的に配置されている。すなわち、シート2の表面及び裏面は複数の構造体12からなるモスアイ構造体による凹凸形状を有する。なお、シート2は、基体11の表面のみに構造体12を設けてもよい。
【0020】
シート2は、このような凹凸形状をシート2の表面及び裏面に設けることで、波長依存性が少なく、視認性の優れた光学調整機能を、眼鏡装着者用保護具1が装着された被着体の表面に付与することができる。即ち、視認性に優れた被着体を実現することに寄与することができる。
【0021】
ここで、「光学調整機能」とは、透過特性や反射特性の光学調整機能を示す。光学素子としてのシート2は、例えば可視光に対して透明性を有しており、その屈折率nは、好ましくは1.30以上2.00以下、より好ましくは1.34以上2.00以下の範囲内であることが好ましい。但し、これには限定されない。
【0022】
なお、構造体12の屈折率は、基体11の屈折率と同様又は略同様であることが好ましい。内部反射を抑制し、コントラストを向上できるからである。
【0023】
図3では、構造体12が基底層13を介して基体11の表裏面に形成される例を示したが、この基底層13は、基体11に対する構造体12の密着性を向上させる役割を担っている。この場合、基底層13は、構造体12の底面側に当該構造体12と一体成形される光学層であって、透明性を有しており、構造体12と同様のエネルギー線硬化性樹脂組成物などを硬化することにより形成されてよい。
【0024】
また、眼鏡装着者用保護具1は、図4に示すように、基底層13を有せず、基体11の上に複数の構造体12によるモスアイ構造が直接形成されたシート2を用いてもよい。
【0025】
さらに、眼鏡装着者用保護具1は、図5に示すように、基体と構造体とが、一体成形されたシート2を用いてもよい。図5に示すシート2は、基体11の両面に構造体12が一体成形されている。
【0026】
[基材]
ここで、基体11について更に説明する。基体11は、例えば、透明性を有する透明基体である。基体11の材料としては、例えば、透明性を有するプラスチック材料を主成分とするものが挙げられるが、これらの材料に特に限定されるものではない。
【0027】
基体11としてプラスチック材料を用いる場合、プラスチック材料の表面の表面エネルギー、塗布性、すべり性、平面性などをより改善するために、表面処理により図示しない下塗り層を更に設けるようにしてもよい。この下塗り層としては、例えば、オルガノアルコキシメタル化合物、ポリエステル、アクリル変性ポリエステル、ポリウレタンなどが挙げられる。また、下塗り層を設けるのと同等の効果を得るために、基体11の表面に対してコロナ放電処理、UV照射処理などを行うようにしてもよい。
【0028】
基体11がプラスチックフィルムである場合、当該基体11は、例えば、上述の樹脂を伸延、あるいは溶剤に希釈後フィルム状に成膜して乾燥するなどの方法で得ることができる。基体11の厚さは、シート2の用途に応じて適宜選択することが好ましく、例えば10μm以上500μm以下程度であってよい。基体11の形状としては、例えば、フィルム状、プレート状等を挙げることができるが、特にこれら形状に限定されるものではない。なお、フィルムにはシートが含まれるものとする。
【0029】
基体11の材料としては、例えば、メチルメタクリレート(共)重合体、ポリカーボネート、スチレン(共)重合体、メチルメタクリレート−スチレン共重合体、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリエーテルケトン、ポリウレタン、ガラス等が挙げられるが、これらには限定されない。
【0030】
ここで、眼鏡装着者用保護具1を偏光眼鏡方式の3D内視鏡眼鏡に装着する場合等においては、基材11は、偏光の乱れを防止するため、分子配向性や配向ムラの少ない無延伸の透明基材を使用する。
【0031】
3D画像の劣化度合いの尺度としてクロストーク値がある。クロストーク値は、本来右目に入るべき画像が左目に、また左目に入るべき画像が右目に入る、といった画像の混入(クロストーク)を数値化したものであり、3D画像として許容される限度としては5〜10%と言われている。
【0032】
医療用の3D内視鏡で使用されている偏光方式では、ディスプレイ上の走査線ごとに右目用、左目用の画像を交互に表示し、それぞれ回転方向の違う円偏光に変換している。偏光眼鏡は円偏光の画像を1/4波長板で直線偏光に変換し、右目用、左目用でそれぞれ違う角度に設定された偏光板を通すことにより、左右それぞれの眼で、右目用又は左目用の画像を観察することができる。
【0033】
この時にディスプレイと偏光眼鏡の間に妨げるものが無い場合は、偏光の乱れは発生しないが、例えば血液や体液などの暴露から目を保護するためのアイシールドなどがある場合、アイシールドの材料として多く用いられている延伸PETフィルムが持つリタデーションにより円偏光が乱され、楕円偏光となる。楕円偏光は1/4波長板を通った後、本来よりずれた角度の直線偏光となり、クロストークの原因となる。
【0034】
クロストークによる3D画像の劣化を防止する観点から、アイシールド等に用いられる透明基材の面内リタデーション値は、100nm以下であることが好ましく、より好ましくは30nm以下、さらに好ましくは20nm以下である。
【0035】
無延伸の透明基材としては、例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、ポリエステル、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、シクロオレフィン、ポリプロピレン、ポリエチレンなどが挙げられる。これらの無延伸透明基材の中で、耐衝撃性や汎用性の観点から、基材11として、ポリカーボネートが好適に用いられる。
【0036】
[構造体]
次に、構造体12について説明する。一般に、可視光の波長帯域は360nm〜830nmであるが、この実施形態では、構造体12を可視光の波長帯域以下のサイズで規則配列している。かかる観点から、構造体12の配置ピッチは350nmを超えないものとする。構造体12は、錐体状、柱状、針状など、種々の形状でよい。
【0037】
構造体12は、後述するように、基体11に塗布されたエネルギー線硬化性樹脂組成物などの転写材料36に、モスアイ構造体に応じたパターンが形成されたロール原盤露光装置を用いてパターンが転写された後、硬化されることにより形成される。
【0038】
転写材料36の硬化物は、親水性を有していても良い。転写材料36は、親水性を有する官能基を1種以上含んでいることが好ましい。このような親水性を有する官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、およびカルボニル基などがあげられる。
【0039】
また、構造体12を形成するエネルギー線硬化性樹脂生成物は、基体11の両面で異なる物性を持っても良い。例えば、使用の用途によって、撥水性、親水性を使い分けることにより、防曇などの機能を特定の面に持たせることができる。
【0040】
エネルギー線硬化性樹脂組成物としては、紫外線硬化性樹脂組成物を用いることが好ましい。また、エネルギー線硬化性樹脂組成物が、必要に応じてフィラーや機能性添加剤などを含んでいてもよい。
【0041】
紫外線硬化性樹脂組成物は、例えばアクリレート及び開始剤を含んでいる。
【0042】
そして、紫外線硬化性樹脂組成物は、例えば単官能モノマー、二官能モノマー、多官能モノマー等を含み、具体的には、以下に示す材料を単独又は複数混合したものである。
【0043】
即ち「単官能モノマー」としては、例えば、カルボン酸類(アクリル酸)、ヒドロキシ類(2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート)、アルキル又は脂環類のモノマー(イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソボニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート)、その他機能性モノマー(2−メトキシエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、2−(パーフルオロオクチル)エチルアクリレート、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピル−アクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチル−アクリレート、2−(パーフルオロ−3−メチルブチル)エチルアクリレート)、2,4,6−トリブロモフェノールアクリレート、2,4,6−トリブロモフェノールメタクリレート、2−(2,4,6−トリブロモフェノキシ)エチルアクリレート)、2−エチルヘキシルアクリレートなどを挙げることができる。
【0044】
「二官能モノマー」としては、例えば、トリ(プロピレングリコール)ジアクリレート、トリメチロールプロパン−ジアリルエーテル、ウレタンアクリレートなどを挙げることができる。
【0045】
「多官能モノマー」としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレートなどを挙げることができる。
【0046】
なかでも、転写材料36を構成する好ましい樹脂組成物としては、2−ヒドロキシエチ
ルアクリレート、アクリルモルフォリン、グリセロールアクリレート、ポリエーテル系アクリレート、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクトン、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、EO変性ビスフェノールAジアクリレート、脂肪族ウレタンオリゴマー、ポリエステルオリゴマーなどを挙げることができる。
【0047】
「開始剤」としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンなどを挙げることができる。
【0048】
「フィラー」としては、例えば、無機微粒子および有機微粒子のいずれも用いることができる。無機微粒子としては、例えば、SiO、TiO、ZrO、SnO、Alなどの金属酸化物微粒子を挙げることができる。
【0049】
「機能性添加剤」としては、例えば、レベリング剤、表面調整剤、消泡剤などを挙げることができる。
【0050】
構造体12として、微細な凹凸構造体からなるモスアイ構造体を形成することにより、眼鏡装着者用保護具1は、高度な反射防止機能を有する。ここで、眼鏡装着者用保護具1の防反射性能は、表裏面を合わせて5%以下、好ましくは1%以下、更に好ましくは0.5%以下である。手術時の光源の無影灯は100000lx以上の照度があり、これらの反射光は数%でも眩しく感じられるため、できるだけ反射を抑えることが求められる。そして、構造体12として透明の基材11に可視光の波長以下のピッチで複数の構造体を構成したモスアイ構造体からなる防反射層を備えた眼鏡装着者用保護具1は、波長依存や角度依存が少なく、防反射性能が高いことから、医療用のアイシールドとして好適に用いることができる。
【0051】
また、眼鏡装着者用保護具1は、モスアイ構造体からなる防反射層を構成する可視光の波長以下のピッチの複数の構造体を、親水性を有する樹脂で構成することにより、防曇性を付加することができる。
【0052】
さらに、眼鏡装着者用保護具1は、透明の基材11の両面にモスアイ構造体からなる防反射層を構成することにより、さらに優れた防反射性能を付与することができる。
【0053】
[シートの製造工程]
次いで、モスアイ構造体が形成されたシート2の製造工程について説明する。シート2は、モスアイ構造体に応じたパターンが形成されたロール原盤露光装置を用いてパターンが転写されることによりモスアイ構造体が形成される。
【0054】
[ロール原盤]
図6に示すように、ロール原盤41は、例えば、円柱状または円筒状の形状を有し、その円柱面または円筒面が基体表面に複数の構造体12を成形するための成形面とされる。この成形面には、例えば、ドライエッチング、ウエットエッチング等により所定の構造体42が2次元配列されている。構造体32は、例えば、成形面に対して凹状または凸状を有している。ロール原盤31の材料としては、例えばガラスを用いることができるが、この材料に特に限定されるものではない。
【0055】
ロール原盤41の成形面に配置された複数の構造体42と、上述の基体11の表面に配置された複数の構造体12とは、反転した凹凸関係にある。すなわち、ロール原盤41の構造体42の形状、配列、配置ピッチなどは、基体11の構造体12と同様である。
【0056】
[転写工程1]
図7(A)に示すように、基体11は一面に転写材料36が塗布された後、この転写材料36が塗布された面が、モスアイ構造体に応じたパターンが形成されたロール原盤41に密着される。次いで、紫外線などのエネルギー線をエネルギー線源37から転写材料36に照射して転写材料36を硬化させた後、硬化した転写材料36と一体となった基体11を剥離する。これにより、図7(B)に示すように、複数の構造体12が基体11の片面に形成されたシート2が得られる。この際、必要に応じて、構造体12と基体11との間に基底層13をさらに形成するようにしてもよい。
【0057】
エネルギー線源37としては、電子線、紫外線、赤外線、レーザー光線、可視光線、電離放射線(X線、α線、β線、γ線など)、マイクロ波、または高周波などエネルギー線を放出可能なものであればよく、特に限定されるものではない。
【0058】
[転写工程2]
複数の構造体12が基体11の両面に形成されたシート2を得る場合は、さらに、図7(C)に示すように、モスアイ構造体用のロール原盤41と、片面に構造体が形成された基体11の反対側の表面上に塗布された転写材料36とを密着させた後、紫外線などのエネルギー線をエネルギー線源37から転写材料36に照射して転写材料36を硬化させる。次いで、硬化した転写材料36と一体となった基体11を剥離する。これにより、図7(D)に示すように、複数の構造体12が基体11の両面に形成されたシート2が得られる。この際、必要に応じて、構造体12と基体11との間に基底層13をさらに形成するようにしてもよい。
【0059】
この転写工程2で転写材料36として使用する樹脂組成物は前述の転写工程1と同様とすることができる。
【0060】
なお、転写工程1、または転写工程2までで得たシート2の表面に保護フィルムを貼合しても良い。これにより、シート2は、構造体12を、以降の工程や輸送などで破壊することを防ぐことが出来る。
【0061】
[形状形成工程]
上記で得られたシート2は、装着する眼鏡に応じて所定の形状に裁断するとともに、後述する装着部3を構成する切込み溝を加工されることにより、眼鏡装着者用保護具1が形成される。切込み溝や所定の形状への裁断は数値制御された切削加工機やレーザー加工装置、打ち抜きプレス装置などが使用可能である。打ち抜きプレスを使用すると切込み溝と所定のサイズへの裁断が一つの工程で行えることから好適である。
【0062】
[シート積層体]
なお、本発明が適用された眼鏡装着者用保護具1は、図8に示すように、粘着層51を介して複数のシート2を剥離可能に積層させたシート積層体50を用いてもよい。眼鏡装着者用保護具1は、シート2を剥離可能に積層させたシート積層体50を用いることにより、汚染物を拭き取る時間的余裕がない場合や、そもそも汚染物が危険物であることから接触することが好ましくない場合でも、汚染されたシート2を1枚ずつ剥離すればよいので、即時に視界の回復を図ることができ、更に危険物に接触しなくても済む。
【0063】
しかも、シート2の両面に複数の構造体12の規則配列によるモスアイ構造体を設けることで、シート2が複数枚積層され、接着剤等の粘着層51で接合されたときに、モスアイ構造体間に空隙ができても、透過性の低下を防止し、界面での反射を低減し反射防止性能を実現することができる。
【0064】
また、このようなモスアイ構造体は、液晶ディスプレイ等に用いられる特定波長に対応したARフィルムとは異なり、基本的には全波長対応なので、当該モスアイ構造体を介して被写体を見たとき、その色味が変わらない等といった利点もある。また、モスアイ構造体の特性から、照度が急激に跳ね上がるような環境、人間の目が照度差に慣れるまでに時間がかかるような環境での使用にも好適であるといえる。
【0065】
ここで、この実施形態に係るシート積層体50は、可視光波長以下のピッチからなる凹凸による構造体12からなるモスアイ構造体が基体11の表裏面に設けられた複数のシート2を備え、当該シート2の少なくとも端部が接着剤などの粘着層51によって積層されている。シート積層体50は、積層されたシート2の構造体12間に空隙52がある。空隙52としては、種々のパターンが考えられ、例えば、接着剤など樹脂で設けられる場合も含む。つまり空隙52は、空気層でもよく、樹脂層でもよい。
【0066】
また、重畳する構造体12同士は、空隙52を介して、接触せずに離間していてもよく、構造体12の先端同士が点接触していてもよく、構造体12の先端が対向する構造体12の凹部に一部入り込んでいてもよい。
【0067】
なお、実施形態では、構造体12は、規則配列となっているので、縦方向、横方向いずれで見た場合でも規則性を有しているので、積層性も良好である。
【0068】
シート積層体50は、各シートを接着剤等の粘着層51によって積層する。粘着層51は、眼鏡装着者用保護具1として使用される際に、使用者の視野外となるような積層体の外周部、つまり、視認部以外に設けられる。例えば、シート2の四隅に、あるいは左右の端部において短手方向に所定幅、所定長で延びる領域で、構造体12同士を粘着層51により部分的に接合するようにしてもよい。
【0069】
このように、シート2の全面には粘着層51としての接着剤を設けないようにすることで、シート2自体の剥離性が向上し、粘着層51としての接着剤の離形性(残渣による視認性低減回避)も向上し、粘着層51としての接着剤の厚みによる歪みの発生も回避することができるようになる。なお、透過性能を最優先とする場合には、接着剤等による全面貼り付けとしてもよいことは勿論である。この場合、視認性向上のため屈折率等も好適となるように樹脂組成が適宜選択される。
【0070】
[装着部]
上述したように、シート2あるいはシート積層体50には、眼鏡4のテンプル5への装着位置に応じて、複数の切込み溝からなる左右一対の装着部3A,3Bが形成される。以下では、図1図2を参照しながら、シート2を例に装着部3の構成について説明する。
【0071】
装着部3は、上記眼鏡のテンプルを挿通させる挿通口からなる装着部3Aと、眼鏡のテンプルを挟持する一対の挟持片20A,20Bからなる装着部3Bとを有する。
【0072】
装着部3Aは、眼鏡4のテンプル5の挿通方向と交差する方向に設けられた第1、第2の切込み溝15,16が並列されることにより挿通口を形成する。第1、第2の切込み溝15,16は、略平行に形成され、眼鏡4のテンプル5が挿通可能な長さを有する。図2に示すように、装着部3Aは、テンプル5を、シート2の裏側からシート2の表側へ第1の切込み溝15に挿通させ、次いで、シート2の表側から第2の切込み溝16に挿通させることにより、眼鏡4の一方のテンプル5が移動可能に装着される。
【0073】
装着部3Bは、並列する第3、第4の切込み溝21,22と、第3、第4の切込み溝2
1,22間にわたる第5の切込み溝23を有する。第3、第4の切込み溝21,22は、眼鏡4のテンプル5と交差する方向に設けられるとともに、略平行に形成されている。また、第5の切込み溝23は、第3の切込み溝21の一端から若干他端側へ戻った位置と、第4の切込み溝22の他端から若干一端側へ戻った位置との間にわたって、第3、第4の切込み溝21,22間を斜めに横断するように形成されている。
【0074】
これにより、装着部3Bは、第3の切込み溝21と第5の切込み溝23の2辺からなる第1の挟持片20Aと、第4の切込み溝22と第5の切込み溝23の2辺からなる第2の挟持片20Bが形成される。第1、第2の挟持片20A,20Bは、それぞれ第3、第4の切込み溝21,22の各一端側、又は他端側を支点に回動可能とされ、図2に示すように、眼鏡4のテンプル5が間に挿通されると、シート2のコシによる弾性復帰する力でテンプル5を上下方向から挟持する。
【0075】
眼鏡装着者用保護具1を眼鏡4に装着する際には、先ず装着部3Aに一方のテンプル5を挿通させる。次いで、装着部3Aを眼鏡4のレンズ側に寄せて、眼鏡装着者用保護具1を眼鏡レンズに沿わせる形に変形させる。そして、装着部3Bの一対の挟持片20A,20Bによって他方のテンプル5を上下方向から挟持することにより、眼鏡装着者用保護具1が眼鏡4に装着することができる。なお、一対の挟持片20A,20Bの弾性力のみでは眼鏡装着者用保護具1の変形した状態を保持できない恐れがある場合は、一対の挟持片20A,20Bを接着テープ等で貼り合わせてもよい。
【0076】
このように、眼鏡装着者用保護具1は、装着部3Aによって眼鏡4の一方のテンプル5を挿通保持し、装着部3Bによって他方のテンプル5を挟持することにより、容易に眼鏡4に装着することができるとともに、眼鏡4からの脱落を防止することができる。したがって、例えば矯正用眼鏡や鏡視下手術等に用いる偏光眼鏡をかけた状態においても、血液や体液等の液体が飛散することによる感染防止用のアイシールドとして眼鏡装着者用保護具1を用いることにより、使用者の視認性や作業性を損なうことなく、効果的に感染を防止することができる。また、眼鏡装着者用保護具1は、装着部3Aに眼鏡4のテンプル5が挿通されているため、万が一装着部3Bの一対の挟持片20A,20B間からテンプル5が外れた場合にも、術野に落下するなどのインシデントを回避することができる。
【0077】
また、眼鏡装着者用保護具1は、モスアイ構造体が形成されたシート2を用いて形成されているため、偏光を乱すことなく、偏光眼鏡方式の3D内視鏡眼鏡に装着した場合も良好な視認性を維持することができる。さらに、眼鏡装着者用保護具1は、モスアイ構造体が形成されたシート2を用いて形成されているため、無影灯下の高光度の環境では反射光による幻惑や、眼精疲労が起こりやすいなどの問題も生じないため、使用者の作業性を損なうこともない。
【0078】
なお、眼鏡装着者用保護具1は、医療用のアイシールドとして用いる他にも、シート2を眼鏡に取り付ける各種用途に用いることができ、いずれの用途においても眼鏡4のテンプル5へ容易に着脱でき、また、装着した際の視認性、作業性を損なうこともない。
【0079】
[補助切込み溝]
なお、装着部3Aは、第1、第2の切込み溝15,16の一方又は両方に、補助切込み溝17を設けてもよい。補助切込み溝17は、第1、第2の切込み溝15,16に沿って、第1、第2の切込み溝15,16と直交する方向に1又は複数形成される。補助切込み溝17を設けることにより、眼鏡装着者用保護具1は、挿通口をなす装着部3Aにテンプル5が挿通されたときに、テンプル5に係止する係止片18が形成される。したがって、眼鏡装着者用保護具1は、第1、第2の切込み溝15,16がテンプル5の高さよりも長く形成されたときにも、係止片18がテンプル5に係止することにより、ズレやがたつきを防止するこ
とができる。
【0080】
同様に装着部3Bも、第3、第4の切込み溝21,22の一方又は両方に、補助切込み溝24を設けてもよい。補助切込み溝24は、第3、第4の切込み溝21,22に沿って、第3、第4の切込み溝21,22と直交する方向に1又は複数形成される。補助切込み溝24を設けることにより、眼鏡装着者用保護具1は、テンプル5を第1、第2の挟持片20A,20Bによって上下方向から挟持する際に、テンプル5を水平方向から係止する係止片25が形成される。したがって、眼鏡装着者用保護具1は、テンプル5を上下方向から挟持するとともに、水平方向から係止することができ、ズレやがたつきを防止することができる。
【0081】
[破断防止部]
また、装着部3A,3Bは、第1〜第4の切込み溝15,16,21,22の各一端及び他端に破断を防止する破断防止部26を設けてもよい。破断防止部26は、第1〜第4の切込み溝15,16,21,22の各一端及び他端を端緒に、テンプル5の着脱時等に掛かる負荷によってシート2が破断することを防止するものである。
【0082】
例えば、破断防止部26は、図9(A)に示すように、第1〜第4の切込み溝15,16,21,22の各一端及び他端に、第1〜第4の切込み溝15,16,21,22と交差する方向に設けられた破断防止溝26Aとして形成される。あるいは、破断防止部26は、図9(B)に示すように、第1〜第4の切込み溝15,16,21,22の各一端及び他端に設けられ、第1〜第4の切込み溝15,16,21,22の線幅よりも広い径を有する破断防止孔26Bとして形成される。
【0083】
[ハーフカット]
なお、眼鏡装着者用保護具1は、図10に示すように、装着する眼鏡4のテンプル5とレンズ位置との境に応じてハーフカットを施し、折曲げ線30を形成してもよい。折曲げ線30を形成することにより、シート2を変形させやすくすることができ、シート2のコシの強さによって一対の挟持片20A,20Bがテンプル5から外れる事態を防止することができる。
【0084】
また眼鏡装着者用保護具1は、図11に示すように、シート2の眼鏡4の上側に沿ってハーフカットを施し、折曲げ線31を形成してもよい。眼鏡装着者用保護具1は、折曲げ線31に沿ってシート2を変形することにより、眼鏡4の上部を覆い血液や体液などの液体の飛散物から効果的に保護することができる。
【実施例】
【0085】
次いで、本発明の実施例について説明する。本実施例では、透明基材、及び透明基材のモスアイ構造体からなる防反射層の形成面(片面/両面)を変えたシートサンプルを用意し、それぞれ以下の通り、リタデーション値(λ=550nm)、反射率(%)、及び3D性能(クロストークの発生度合)を測定、評価した。
【0086】
[リタデーション値]
位相差測定装置(RETS−100:大塚電子株式会社)を用いて、測定波長(λ)550nmのリタデーション値を測定した。
【0087】
[反射率]
紫外可視分光光度計(V−500:日本分光株式会社)を用いて、入射角5°での反射値を測定した。
【0088】
[3D画像観察試験]
偏光方式3Dモニター(D2342P:LGエレクトロニクス社)に3D画像を表示し、付属偏光メガネに下記実施例及び比較例に係る眼鏡装着者用保護具を装着した状態で観察し、立体視の状態を目視で観察、評価した。
【0089】
3D性能としての評価基準は、
○:立体視に問題無し
△:クロストークが発生しているが、立体視は可能
×:立体視が不可能
とした。
【0090】
[実施例1]
実施例1では、モスアイ構造体がパターン形成された露光原盤上に紫外線硬化樹脂を滴下し、無延伸ポリカーボネイトフィルム(150μm厚)をその上に被せ、一定の厚みの膜厚になるようにゴムローラーでフィルムを介してしごき、その後紫外線を照射し同フィルム上にモスアイ型防反射層を形成し、サンプルを得た。
【0091】
各種評価を行った結果、リタデーション値は16nm、反射率は4.7%であった。また、3D画像観察試験において問題無く立体視ができた(○)。
【0092】
[実施例2]
実施例2では、モスアイ構造体がパターン形成された露光原盤上に紫外線硬化樹脂を滴下し、無延伸シクロオレフィンコポリマーフィルム(100μm厚)をその上に被せ、一定の厚みの膜厚になるようにゴムローラーでフィルムを介してしごき、その後紫外線を照射し同フィルム上にモスアイ型防反射層を形成し、サンプルを得た。
【0093】
各種評価を行った結果、リタデーション値は3nm、反射率は4.5%であった。また、3D画像観察試験において問題無く立体視ができた(○)。
【0094】
[実施例3]
実施例3では、モスアイ構造体がパターン形成された露光原盤上に紫外線硬化樹脂を滴下し、無延伸ポリカーボネイトフィルム(150μm厚)をその上に被せ、一定の厚みの膜厚になるようにゴムローラーでフィルムを介してしごき、その後紫外線を照射し同フィルム上にモスアイ型防反射層を形成した。反対側の面も同様にモスアイ型防反射層の転写を行い、サンプルを得た。
【0095】
各種評価を行った結果、リタデーション値は16nm、反射率は0.4%であった。また、3D画像観察試験において問題無く立体視ができた(○)。
【0096】
[実施例4]
実施例4では、モスアイ構造体がパターン形成された露光原盤上に紫外線硬化樹脂を滴下し、無延伸シクロオレフィンコポリマーフィルム(100μm厚)をその上に被せ、一定の厚みの膜厚になるようにゴムローラーでフィルムを介してしごき、その後紫外線を照射し同フィルム上にモスアイ型防反射層を形成した。反対側の面も同様にモスアイ型防反射層の転写を行い、サンプルを得た。
【0097】
各種評価を行った結果、リタデーション値は3nm、反射率は0.8%であった。また、3D画像観察試験において問題無く立体視ができた(○)。
【0098】
[実施例5]
実施例5では、モスアイ構造体がパターン形成された露光原盤上に紫外線硬化樹脂を滴
下し、無延伸ポリカーボネイトフィルム(300μm厚)をその上に被せ、一定の厚みの膜厚になるようにゴムローラーでフィルムを介してしごき、その後紫外線を照射し同フィルム上にモスアイ型防反射層を形成した。反対側の面も同様にモスアイ型防反射層の転写を行い、サンプルを得た。
【0099】
各種評価を行った結果、リタデーション値は100nm、反射率は0.5%であった。また、3D画像観察試験においてクロストークが発生しているが、立体視は可能であった(△)。
【0100】
[比較例1]
比較例1では、モスアイ構造体がパターン形成された露光原盤上に紫外線硬化樹脂を滴下し、延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(125μm厚)をその上に被せ、一定の厚みの膜厚になるようにゴムローラーでフィルムを介してしごき、その後紫外線を照射し同フィルム上にモスアイ型防反射層を形成し、サンプルを得た。
【0101】
各種評価を行った結果、リタデーション値は5500nm、反射率は5.1%であった。また、3D画像観察試験において立体視が全くできなかった(×)。
【0102】
[比較例2]
比較例2では、モスアイ構造体がパターン形成された露光原盤上に紫外線硬化樹脂を滴下し、延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(100μm厚)をその上に被せ、一定の厚みの膜厚になるようにゴムローラーでフィルムを介してしごき、その後紫外線を照射し同フィルム上にモスアイ型防反射層を形成した。反対側の面も同様にモスアイ型防反射層の転写を行い、サンプルを得た。
【0103】
各種評価を行った結果、リタデーション値は5500nm、反射率は0.6%であった。また、3D画像観察試験において立体視が全くできなかった(×)。
【0104】
[比較例3]
比較例3では、無延伸ポリカーボネイトフィルム(150μm厚)をサンプルとした。
【0105】
各種評価を行った結果、リタデーション値は18nm、反射率は10.9%であった。また、3D画像観察試験において問題無く立体視ができた(○)。
【0106】
[比較例4]
比較例4では、無延伸シクロオレフィンコポリマーフィルム(100μm厚)をサンプルとした。
【0107】
各種評価を行った結果、リタデーション値は3nm、反射率は8.8%であった。また、3D画像観察試験において問題無く立体視ができた(○)。
【0108】
[比較例5]
比較例5では、延伸シクロオレフィンコポリマーフィルム(75μm厚)をサンプルとした。
【0109】
各種評価を行った結果、リタデーション値は100nm、反射率は8.8%であった。また、3D画像観察試験においてクロストークが発生しているが、立体視は可能であった(△)。
【0110】
[比較例6]
比較例6では、延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(125μm厚)をサンプルとした。
【0111】
各種評価を行った結果、リタデーション値は5500nm、反射率は11.2%であった。また、3D画像観察試験において立体視が全くできなかった(×)。
【0112】
【表1】
【0113】
表1に示すように、眼鏡装着者用保護具1の透明基材として無延伸ポリカーボネートフィルムや無延伸シクロオレフィンコポリマーフィルムを用いた実施例1〜5においては、面内リタデーションが100nm以下と低く、クロストークが抑えられ立体視が可能な3D性能を有する。一方、延伸PETフィルムを用いた比較例1では、面内リタデーションが大きく、クロストークが発生し立体視が全くできなかった。これより、眼鏡装着者用保護具1の用途として、3D内視鏡眼鏡等の3D眼鏡に装着する場合には、基材として無延伸の透明基材が好適に用いることができることが分かる。
【0114】
また、比較例3〜6では、モスアイ構造体からなる防反射層を備えていないことから、反射率が高くなり、視認性を損ない、また眩惑や眼精疲労を招く等、使用者にとって作業性を損なうものとなった。
【0115】
実施例1〜5において、モスアイ構造体からなる防反射層を片面のみ形成した実施例1,2に対し、両面に形成した実施例3〜5では、いずれも反射率が低くなった。これより、防反射層を基材の両面に設けることが反射を抑える点で有利となることが分かる。
【0116】
このように、実施例1〜5に係るモスアイ型防反射層を形成したフィルムを備えた眼鏡装着者用保護具を医療用のアイシールドとして用いることにより、面内リタデーションが低く抑えられているため、偏光方式の3D内視鏡眼鏡に装着した場合にも3D画像が崩れず、明瞭な観察像を見ながら出術を行うことができる。また、実施例1〜5に係るフィルムは、基材上に可視光の波長以下のピッチで複数の構造体が設けられているため、界面での反射を防ぐことができ、高照度の無影灯下での手術でも安全に行うことができる。
【符号の説明】
【0117】
1 眼鏡装着者用保護具、2 シート、3 装着部、4 眼鏡、5 テンプル、11 基体、12 構造体、13 基底層、15 第1の切込み溝、16 第2の切込み溝、17 補助切込み溝、20 挟持片、21 第3の切込み溝、22 第4の切込み溝、23 第5の切込み溝、24 補助切込み溝、30,31 折曲げ線、36 転写材料、37 エネルギー線源、41 ロール原盤、42 構造体、50 シート積層体、51 粘着層、52 空隙
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11