【解決手段】リアクトル(6)は、外周部鉄心(20)と、少なくとも三つの鉄心コイル(31〜34)とを含む。鉄心コイルは、鉄心(41〜44)とコイル(51〜54)とを含む。少なくとも一つのコイルの外周面または内周面には凹部(71〜74)が形成される。凹部には温度検出部(61〜64)が配置される。
前記凹部は、前記コイルの互いに隣接するコイル領域における前記線材の線材部分の前記線材の巻回位置を前記リアクトルの軸線方向に互いにずらすことにより形成されている、請求項1または3に記載のリアクトル。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。全図面に渡り、対応する構成要素には共通の参照符号を付す。
【0015】
以下の記載では、三相リアクトルを例として主に説明するが、本開示の適用は、三相リアクトルに限定されず、各相で一定のインダクタンスが求められる多相リアクトルに対して幅広く適用可能である。また、本開示に係るリアクトルは、産業用ロボットや工作機械におけるインバータの一次側および二次側に設けるものに限定されず、様々な機器に対して適用することができる。
【0016】
図1Aは本開示に基づくリアクトルの頂面図である。
図1Bは
図1Aに示されるリアクトルの部分分解斜視図である。
図1Aおよび
図1Bに示されるように、リアクトル6のコア本体5は、外周部鉄心20と、外周部鉄心20の内側に配置された三つの鉄心コイル31〜33とを含んでいる。
図1においては、略六角形の外周部鉄心20の内側に鉄心コイル31〜33が配置されている。これら鉄心コイル31〜33はコア本体5の周方向に等間隔で配置されている。
【0017】
なお、外周部鉄心20が他の回転対称形状、例えば円形であってもよい。また、鉄心コイルの数は3の倍数であればよく、その場合には、リアクトル6を三相リアクトルとして使用できる。
【0018】
図面から分かるように、それぞれの鉄心コイル31〜33は、外周部鉄心20の半径方向にのみ延びる鉄心41〜43と、該鉄心に装着されたコイル51〜53とを含んでいる。なお、他の図面においては、簡潔にする目的で、コイル51〜53の図示を省略する場合がある。
【0019】
外周部鉄心20は周方向に分割された複数、例えば三つの外周部鉄心部分24〜26より構成されている。外周部鉄心部分24〜26は、それぞれ鉄心41〜43に一体的に構成されている。外周部鉄心部分24〜26および鉄心41〜43は、複数の磁性板、例えば鉄板、炭素鋼板、電磁鋼板を積層するか、または圧粉鉄心から形成される。このように外周部鉄心20が複数の外周部鉄心部分24〜26から構成される場合には、外周部鉄心20が大型である場合であっても、そのような外周部鉄心20を容易に製造できる。なお、鉄心41〜43の数と、外周部鉄心部分24〜26の数とが必ずしも一致していなくてもよい。
【0020】
さらに、鉄心41〜43のそれぞれの半径方向内側端部は外周部鉄心20の中心近傍に位置している。図面においては鉄心41〜43のそれぞれの半径方向内側端部は外周部鉄心20の中心に向かって収斂しており、その先端角度は約120度である。そして、鉄心41〜43の半径方向内側端部は、磁気的に連結可能なギャップ101〜103を介して互いに離間している。
【0021】
言い換えれば、鉄心41の半径方向内側端部は、隣接する二つの鉄心42、43のそれぞれの半径方向内側端部とギャップ101、103を介して互いに離間している。他の鉄心42、43についても同様である。なお、ギャップ101〜103の寸法は互いに等しいものとする。
【0022】
このように、
図1Aに示される構成では、コア本体5の中心部に位置する中心部鉄心が不要であるので、コア本体5を軽量かつ簡易に構成することができる。さらに、三つの鉄心コイル31〜33が外周部鉄心20により取囲まれているので、コイル51〜53から発生した磁場が外周部鉄心20の外部に漏洩することもない。また、ギャップ101〜103を任意の厚さで低コストで設けることができるので、従来構造のリアクトルと比べて設計上有利である。
【0023】
さらに、本開示のコア本体5においては、従来構造のリアクトルに比較して、相間の磁路長の差が少なくなる。このため、本開示においては、磁路長の差に起因するインダクタンスのアンバランスを軽減することもできる。
【0024】
図1Aおよび
図1Bを参照して分かるように、コイル51〜53の外周面には、凹部71〜73がそれぞれ形成されている。そして、凹部71〜73のそれぞれには、温度検出部61〜63がそれぞれ配置されている。温度検出部61〜63は有線または無線により外部の制御装置(図示しない)、例えばCNC、コンバータ、インバータ、I/O、コンピュータに接続されているものとする。
【0025】
コイル51〜53の凹部71〜73には予め接着剤Z(
図2等を参照されたい)が塗布された状態で、温度検出部61〜63が凹部71〜73に配置されるものとする。次いで、そのようなコイル51〜53を外周部鉄心部分24〜26に一体的な鉄心41〜43に挿入する。最終的に、外周部鉄心部分24〜26を互いに組付け、それにより、リアクトル6が形成される。
【0026】
本開示では温度検出部61〜63がコイル51〜53の外周面に形成された凹部71〜73に配置されている。従って、外周部鉄心部分24〜26を組付けるときに接着剤が固化していない状態であっても、温度検出部61〜63が凹部71〜73から脱落することはない。従って、本開示では、従来技術の固定治具を排除でき、またコイルケースを使用する必要もない。それゆえ、追加部品、例えば固定治具およびコイルケースを使用することなしに、コイル51〜53の温度を正確に検出することが可能である。
【0027】
この目的のために、凹部71〜73はリアクトル6の軸線方向上端側においてコイル51〜53の外周面に形成されるのが好ましい。ただし、凹部71〜73がコイル51〜53の外周面の他の部位に形成されていてもよい。また、凹部71〜73は温度検出部61〜63を少なくとも部分的に受容する深さを有するものとする。凹部71〜73の深さは温度検出部61〜63厚み以上であるのが好ましい。
【0028】
リアクトル6の駆動時に、温度検出部61〜63はコイル51〜53の温度を所定周期で検出する。そして、コイル51〜53のうちの少なくとも一つの温度が所定値よりも大きい場合には、外部の制御装置(図示しない)によりリアクトル6を停止させる。これにより、リアクトル6が熱により劣化する前に保護することができる。
【0029】
図2は第一の実施形態におけるコイルおよび温度検出部の断面図である。
図2および後述する他の図面では、コイル51、温度検出部61および凹部71のみを図示するが、他のコイル52、53、他の温度検出部62、63および他の凹部72、73も同様であるものとする。
【0030】
図2に示されるコイル51は断面が円形の導電性線材を複数回巻回することにより形成されている。
図2においては、コイル51が互いに隣接する三つのコイル領域C1〜C3を含んでいる。コイル領域C3はコイル領域C1、C2の間に位置している。
【0031】
図2では、リアクトル6の外周面側に位置するコイル領域C1およびリアクトル6の中心側に位置するコイル領域C2における巻き数は3であり、それらの間に位置するコイル領域C3における巻き数は2である。つまり、コイル領域C1、C2における巻き数は、コイル領域C3の巻き数よりも多い。
【0032】
このように、第一の実施形態においては、互いに隣接するコイル領域C1、C3、およびコイル領域C2、C3の間の巻き数または段数を互いに変更することにより、凹部71を形成している。また、
図2ではコイル領域C1、C2に関し、リアクトル6の半径方向における線材部分の数はそれぞれ一つであるが、複数であってもよい。なお、線材部分とは、同一の線材における互いに異なる部分である。
【0033】
図2においては、外周部鉄心部分24〜26を組付けるときに接着剤が固化していない状態であっても、温度検出部61〜63が凹部71〜73から脱落することはなく、また、温度検出部61〜63がリアクトル6の半径方向に位置ズレするのを避けられる。なお、線材の断面が円以外の形状であってもよい。
【0034】
図3Aは第二の実施形態におけるリアクトルの斜視図であり、
図3Bは
図3Aに示されるコイルおよび温度検出部の部分分解斜視図であり、
図3Cは他のコイルおよび温度検出部の部分分解斜視図であり、
図3Dは
図3Cに示されるコイルおよび温度検出部の部分斜視図である。
【0035】
図3Aおよび
図3Bに示されるコイル51は断面が円形の導電性線材を複数回巻回することにより形成されている。
図3Dに示されるように、コイル51の最外方に位置するコイル領域C4の線材部分が部分的に曲げ加工されており、それにより、凹部71が形成されている。
【0036】
また、
図3Cに示されるコイル51は、断面が矩形である単一の導電性線材、つまり平角線を複数回巻回することにより形成される平角線コイルである。このようなコイル51を曲げ加工して凹部71を同様に形成してもよい。
【0037】
第二の実施形態においては、外周部鉄心部分24〜26を組付けるときに接着剤が固化していない状態であっても、温度検出部61〜63が凹部71〜73から脱落することはなく、また、温度検出部61〜63がリアクトル6の周方向に位置ズレするのを避けられる。さらに、第二の実施形態においては、様々な形状の温度検出部61に適した凹部71を容易に作成できるという効果が得られる。
【0038】
図4Aは第三の実施形態におけるリアクトルの斜視図であり、
図4Bは
図4Aに示されるコイルおよび温度検出部の部分分解斜視図であり、
図4Cは他のコイルおよび温度検出部の部分分解斜視図であり、
図4Dは
図4Aに示されるコイルの部分側面図である。
【0039】
図4A、
図4Bおよび
図4Dにおけるコイル51は平角線コイルである。
図4Dにおいては、コイル51が互いに隣接する三つのコイル領域C5〜C7を含んでいる。コイル領域C6はリアクトル6の外周面側に位置し、コイル領域C7はリアクトルの中心側に位置している。そして、コイル領域C5はコイル領域C6、C7の間に位置している。
【0040】
図4Dにおいては、コイル領域C6、C7における線材部分の位置は、これらの間に位置するコイル領域C5における線材部分の位置よりもリアクトル6の軸線方向に高くなっている。つまり、コイル領域C6、C7における線材部分とコイル領域C5における線材部分とはリアクトル6の軸線方向に互いに位置ズレしている。その結果、凹部71がコイル領域C6、C7の間に形成される。これにより、平角線コイルを用いた場合にも容易に凹部71を形成することができる。
【0041】
従って、外周部鉄心部分24〜26を組付けるときに接着剤が固化していない状態であっても、温度検出部61〜63が凹部71〜73から脱落することはなく、また、温度検出部61〜63がリアクトル6の半径方向に位置ズレするのを避けられる。
【0042】
さらに、
図4Cに示されるように、コイル51が、断面が円形の導電性線材を複数回巻回することにより形成されていてもよい。この場合にも、前述したのと同様に凹部71を形成することができ、従って、同様な効果を得ることができる。
【0043】
図5Aは第四の実施形態におけるリアクトルの斜視図であり、
図5Bは
図5Aに示されるコイルおよび温度検出部の部分分解斜視図であり、
図5Cは他のコイルおよび温度検出部の部分分解斜視図である。
【0044】
図5Aおよび
図5Bにおけるコイル51は平角線コイルである。第四の実施形態における凹部71〜73は、
図3Dを参照して説明したようにコイル51の最外方に位置するコイル領域の線材部分を部分的に曲げ加工すると共に、
図4Dを参照して説明したように隣接するコイル領域を互いに位置ズレさせることにより形成されている。
【0045】
図5Bから分かるように、凹部71に挿入されるべき温度検出部61はリアクトル6の半径方向にも周方向においてもコイル51の一部分により取り囲まれることになる。従って、外周部鉄心部分24〜26を組付けるときに接着剤が固化していない状態であっても、温度検出部61〜63が凹部71〜73から脱落することはなく、また、温度検出部61〜63がリアクトル6の半径方向および周方向に位置ズレするのを避けられる。それゆえ、より正確にコイル51の温度を検出することができる。
【0046】
図6Aは第五の実施形態におけるリアクトルの側面図であり、
図6Bは
図6Aに示されるコイルおよび温度検出部の部分分解斜視図である。これら図面におけるコイル51〜53は平角線コイルである。そして、温度検出部61〜63は、コイル51〜53の内周面に形成された凹部71〜73に配置されている。これら図面における凹部71〜73はコイル51〜53の線材を曲げ加工することにより形成されている。あるいは、前述した他の手法のうちの幾つかにより凹部71〜73をコイル51〜53の内周面に形成してもよい。さらに、コイル51〜53は断面が円形の導電性線材を複数回巻回することにより形成されていてもよい。
【0047】
温度検出部61〜63は接着剤で凹部71〜73に配置されているので、外周部鉄心部分24〜26を組付けるときに温度検出部61〜63が他の部材に接触したとしても、温度検出部61〜63がリアクトル6の半径方向および/または周方向に位置ズレすることはない。従って、従来技術の固定治具を排除でき、またコイルケースを使用する必要もない。それゆえ、追加部品、例えば固定治具およびコイルケースを使用することなしに、コイル51〜53の温度を正確に検出することが可能である。
【0048】
図7は別の実施形態におけるリアクトルの頂面図である。
図7に示されるコア本体5は、略八角形状の外周部鉄心20と、外周部鉄心20の内方に配置された、前述したのと同様な四つの鉄心コイル31〜34とを含んでいる。これら鉄心コイル31〜34はコア本体5の周方向に等間隔で配置されている。また、鉄心の数は4以上の偶数であるのが好ましく、それにより、コア本体5を備えたリアクトルを単相リアクトルとして使用できる。
【0049】
図面から分かるように、外周部鉄心20は周方向に分割された四つの外周部鉄心部分24〜27より構成されている。それぞれの鉄心コイル31〜34は、半径方向に延びる鉄心41〜44と該鉄心に装着されたコイル51〜54とを含んでいる。そして、鉄心41〜44のそれぞれの半径方向外側端部は、外周部鉄心部分24〜27のそれぞれと一体的に形成されている。なお、鉄心41〜44の数と、外周部鉄心部分24〜27の数とが必ずしも一致していなくてもよい。
【0050】
さらに、鉄心41〜44のそれぞれの半径方向内側端部は外周部鉄心20の中心近傍に位置している。
図7においては鉄心41〜44のそれぞれの半径方向内側端部は外周部鉄心20の中心に向かって収斂しており、その先端角度は約90度である。そして、鉄心41〜44の半径方向内側端部は、磁気的に連結可能なギャップ101〜104を介して互いに離間している。
【0051】
図7においても、
図1A等と同様に、凹部71〜74がコイル51〜54の外周面に形成され、温度検出部61〜64が凹部71〜74にそれぞれ挿入されている。このため、前述したのと同様の効果を得ることができるのが分かるであろう。
【0052】
図8はさらに別の実施形態におけるリアクトルの頂面図であり、
図1Aと同様の図である。
図8においては、コイル51の外周面にのみ凹部71が形成されており、他のコイル52、53には凹部72、73は形成されていない。なお、凹部71がコイル51の内周面に形成されていてもよい。この場合には、単一の温度検出部61のみが凹部71に配置される。この場合にも、本開示の範囲に含まれるのが明らかであろう。
【0053】
本開示の態様
1番目の態様によれば、外周部鉄心(20)と、前記外周部鉄心の内面に接するか、または、該内面に結合された少なくとも三つの鉄心コイル(31〜34)と、を具備し、前記少なくとも三つの鉄心コイルのそれぞれは、鉄心(41〜44)と該鉄心に装着されたコイル(51〜54)とから構成されており、前記コイルは、複数回巻回された線材より構成されており、前記少なくとも三つの鉄心のそれぞれの半径方向内側端部は前記外周部鉄心の中心に向かって収斂しており、前記少なくとも三つの鉄心のうちの一つの鉄心と該一つの鉄心に隣接する他の鉄心との間には磁気的に連結可能なギャップが形成されており、前記少なくとも三つの鉄心の前記半径方向内側端部は、磁気的に連結可能なギャップ(101〜104)を介して互いに離間しており、さらに、前記少なくとも三つのコイルのうちの少なくとも一つのコイルの外周面または内周面に形成された凹部(71〜74)と、該凹部に配置された温度検出部(61〜64)と、を具備する、リアクトル(6)が提供される。
2番目の態様によれば、1番目の態様において、前記凹部は、前記コイルの互いに隣接するコイル領域における前記線材の巻き数を互いに変更することにより形成されている。
3番目の態様によれば、1番目の態様において、前記凹部は、前記コイルの前記線材の一部分を曲げ加工することにより形成されている。
4番目の態様によれば、1番目または3番目の態様において、前記凹部は、前記コイルの互いに隣接するコイル領域における前記線材の線材部分の前記線材の巻回位置を前記リアクトルの軸線方向に互いにずらすことにより形成されている。
5番目の態様によれば、1番目から4番目のいずれかの態様において、前記少なくとも三つの鉄心コイルの数は3の倍数である。
6番目の態様によれば、1番目から4番目のいずれかの態様において、前記少なくとも三つの鉄心コイルの数は4以上の偶数である。
【0054】
態様の効果
1番目の態様においては、温度検出部がコイルの外周面に形成された凹部に配置されている場合には、コイルと温度検出部との間の接着剤が固化していない状態であっても、温度検出部はコイルの凹部から脱落することはない。また、温度検出部がコイルの内周面に形成された凹部に接着剤で配置されている場合には、リアクトルの組立時に温度検出部が位置ズレするのを避けられる。従って、固定治具を排除でき、またコイルケースを使用する必要もない。このため、追加部品、例えば固定治具およびコイルケースを使用することなしに、コイルの温度を正確に検出することが可能である。
2番目の態様においては、温度検出部がリアクトルの半径方向に位置ズレするのを避けられる。
3番目の態様においては、温度検出部がリアクトルの周方向に位置ズレするのを避けられる。
4番目の態様においては、温度検出部がリアクトルの半径方向に位置ズレするのを避けられる。
5番目の態様においては、リアクトルを三相リアクトルとして使用できる。
6番目の態様においては、リアクトルを単相リアクトルとして使用できる。
【0055】
以上、本発明の実施形態を説明したが、後述する請求の範囲の開示範囲から逸脱することなく様々な修正及び変更を為し得ることは、当業者に理解されよう。