特開2021-145425(P2021-145425A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-145425(P2021-145425A)
(43)【公開日】2021年9月24日
(54)【発明の名称】電動機の回転子組立
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/22 20060101AFI20210827BHJP
【FI】
   H02K1/22 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2020-41431(P2020-41431)
(22)【出願日】2020年3月11日
(71)【出願人】
【識別番号】595078116
【氏名又は名称】ムライ機器株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松葉 清
(72)【発明者】
【氏名】森 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】樋口 芳則
【テーマコード(参考)】
5H601
【Fターム(参考)】
5H601AA08
5H601CC01
5H601DD09
5H601DD22
5H601GA23
5H601GA33
5H601KK03
5H601KK13
(57)【要約】
【課題】薄板を積層した回転子1に回転軸4を圧入する回転軸と回転子の構成に関するもので適正圧入力にて回転子1に回転軸4を圧入でき、回転軸4の曲がりが少なく、安価な回転子組立5を提供するものである。
【解決手段】回転子1と接する回転軸4の外径部を22と25に2分割し、回転子の両端近辺に配置する。回転軸4の回転子1を挿入する側はゆるやかなテーパ部21と24として回転子挿入時の案内とする。また、回転子1と接する回転軸外径部28と29の表面粗さをRz12以上とする。また、回転軸の外径部の2分割をやめ、回転子の内径孔を33と35に2分割し両端近辺に配置したものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板を積層した回転子に回転軸を圧入する回転軸の構成に関するもので、回転子の内径孔と接する回転軸の外径部を軸方向に2分割し、前記2つの外径部の幅の合計を回転子幅の40%以下とし、この回転軸の2つの外径部を回転子の両端近辺に配置することを特徴とする電動機の回転子組立。
【請求項2】
前記回転軸において、回転子の内径孔と接する回転軸の2つの外径部の回転子挿入側にテーパ1/5以上のテーパ部を設けることを特徴とする請求項1に記載する電動機の回転子組立。
【請求項3】
前記回転軸において、回転子の内径孔と接する回転軸の2つの外径部の表面粗さはRz12より荒いことを特徴とする請求項1あるいは2に記載する電動機の回転子組立。
【請求項4】
薄板を積層した回転子に回転軸を圧入する回転子と回転軸の構成に関するもので、回転軸と接する回転子の内径孔を軸方向に複数に分割し回転子の両端近辺に配置、回転軸と接する内径孔の合計を回転子幅の40%以下とし、回転軸外径部の回転子挿入側にテーパ1/5以上のテーパ部を設けることを特徴とする電動機の回転子組立。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機の回転子に関し、回転子の内径孔に回転軸を圧入結合した回転子組立に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転子の内径孔に回転軸を挿入する工程には回転子を電気炉で熱して内径孔を膨張させ回転軸を挿入する焼嵌め方式と回転軸の回転子と接する表面にローレット加工を行い常温で回転子に圧入するローレット方式がある。今回の方法は回転軸や回転子の構成を工夫してローレット加工を行わずに常温で圧入するものである。
【0003】
焼嵌め方式は500℃相当に回転子を加熱するために電気炉が必要となり、加熱するための電気代がかかる。回転子を加熱するためと焼嵌め後熱い回転子組立を冷却させる時間が必要になるなど連続作業ができなく生産タクトが長くなる。特に回転子を過熱する電気炉は最近の環境性への配慮から使用を中止したい。また、ローレット方式はローレット加工時間がかかりローレット加工のため回転子に回転軸が平行に挿入されずに軸振れが発生する。
【0004】
例えば焼嵌め用の回転軸をそのまま常温(約20℃)で圧入すると圧入力が大きくなり、この圧入力により回転軸が曲がりロータ外径や軸端の振れが発生する。この軸曲がりは回転機や回転機が組み込まれる装置の振動・騒音の増大につながるため、修正が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開 平02−246749号公報
【特許文献2】特開 昭58−89041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
焼嵌め方式は回転子を加熱・冷却する時間や電気炉の電気代がかかり、またローレット方式はローレットの加工時間がかかり高価になっていた。回転子の内径孔は薄板をプレス工程で打ち抜きこれを積層するため、例えば内径寸法はC=φ17±0.010mmにしている。また、回転軸は機械加工にて製作するため外径寸法はD=φ17+0.035〜+0.020mmにしている。この両者は勘合すると締め代0.010〜0.045mmの締り嵌めで結合される。回転子の幅(軸方向長さ)は回転機の仕様により30〜100mmと変動している。回転子の内径に回転軸を挿入して図1のH方向に力を加え、この両者を圧入方式により押込むと100kN以上と大きな圧入力が必要となり、この押込み圧入力により回転軸が曲がり、2個の軸受で支え回転子中央部Fや回転軸の軸端Gの振れを測ると大きな値となる。これの修正作業は特に振れが大きいと作業者の熟練と大きな時間が必要となる。
課題は押込み圧入力を低下し変動幅を少なくして、回転軸の曲がりを低下することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従来、回転子の内径孔と接する回転軸の外径部寸法Dの長さは回転子幅に合わせて変動させ、回転子幅の大部分が回転軸の外径部と接するようにしていた。両者の圧入力は回転子内径孔と回転軸外径の接する長さにほぼ比例し、回転子幅の変動による押込み圧入力の変動を低下するために、この回転軸の外径部寸法Dの長さを回転子幅に合わせず、2分割して短くすることで両者の接する長さを低下して押込み圧入力を低下し、回転子幅毎の圧入力の変動を小さくした。単に長さを低下すると回転子が回転軸に対して並行にならないため、2分割した回転軸の外径部は一方を回転子の挿入側に他方を出口側にと両端近辺に配置したものである。
【0008】
次に、押込み圧入力そのものを低下するための改善策は回転軸の寸法Dは研磨機で表面粗さG Rz6.3に研削加工されている。このため前工程で旋盤による切削加工で図9のようにバイトの例えばノーズR 0.2mmで立上げ、その後外径を0.1mm程度の研削代で研削している。仕上がりでは図9の急激な立上がりの形状となる。回転軸を回転子に押し込む際、ここで急激な回転軸の拡大のため、回転子内径孔と引っ掛かりを起こし大きな圧入力が必要になる。そこで前工程の切削加工で図2と3のように、ここを大きなテーパ1/30のテーパ加工を行う。
これにより、このテーパが回転子内径孔の案内となり、引っ掛かりが起きずスムーズに押込みでき圧入力を大幅に低下できる。
【0009】
従来、回転軸の表面は研削加工しているので、図7Aに示すように砥石の表面の凹凸により削られなだらかな表面になり、多くの面が回転子内径と接して大きな押込み圧入力となる。これに対して切削加工の表面はBの初期時バイトの送り速度に相対するピッチの波状となる。また、Cの押込み時の強い押込み圧入力により最大径部が変形し、外径が少し小さくなった状態となるため適度な押込み圧入力となる。これらの対策により、合計の押込み圧入力は8〜14kNで回転軸の圧入が可能となった。回転子の軸方向幅違いを含めて平均11kNと90%の大幅な低下が可能となった。
【発明の効果】
【0010】
大幅に押込み圧入力が低下できたので、回転軸の曲がりが低下し押込み後の回転子組立の精度が安定し、その後の回転軸の修正が不要になった。焼嵌め方式の電気代が不要で短い生産タクトとなり、ローレット方式のローレット加工時間の必要がなく、簡単な常温の圧入方式で高精度な回転子組立ができ、安価で精度の良い回転機が提供可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】は、本発明を実施した回転軸を使用した回転子を断面した回転子組立図である。(実施例1と2)
図2】は、図1のA部を拡大した研削加工の回転子圧入開始時の回転子組立図である。(実施例1と2)
図3】は、図1のA部を拡大した切削加工の回転子圧入開始時の回転子組立図である。(実施例3)
図4】は、本発明の他の実施例を示し、回転子の内径孔の径を変化させた回転子を断面した回転子組立図である。(実施例4)
図5】は、本発明の回転軸の圧入工程を示した図である。
図6】は、本発明と従来を比較した押込み寸法と圧入力の関係を示したグラフである。
図7】は、回転子と接する回転軸外径部表面の拡大断面図である。
図8】は、従来の実施例の回転軸を使用した回転子を切断した回転子組立図である。
図9】は、図8のB部を拡大した回転子圧入開始時の回転子組立図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態にかかる製作方法で製作された回転子組立を図面に基づき詳細に説明する。なお、この実施形態にこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明を実施した回転軸を使用した回転子組立図である。1は薄板を積層した回転子、2はその内径Cの内径孔、3は回転子にダイカストした回転子導体、4は回転軸、5は回転子1に回転軸4を圧入した回転子組立である。6は遊び側軸受、7は負荷側軸受、この図のA部を拡大したのが図2及び図3である。
【0014】
図1において、まず回転軸4は回転子内径孔2と接しない外径E=φ17−0.1〜−0.3の案内部20があり、次にテーパ1/30の第1のテーパ部21があり、圧入時このテーパ部21で回転子内径孔2と回転軸の中心を同心に揃える働きをする。次に第1の回転子内径孔と接する外径D=φ17+0.035〜+0.020の外径部22、回転子内径孔と接しない外径Eのつなぎ部23、第2のテーパ部24、第2の回転子内径孔2と接する外径Dの外径部25、次に外径Eのヌスミ部26、最後に最大径部27がある。図4の回転軸圧入寸法Lを押し込み最大径部27の段差端面に回転子1の出口側端面を当て回転子1と回転軸4の軸方向位置決めをしている。回転軸外径部22と25の軸方向長さを変化させ、回転子内径孔2と接する長さを調整して、適正な圧入力を得ている。圧入力が小さ過ぎると、輸送時の電動機の落下などがあった場合、回転子1が回転軸4に対して移動する不具合を発生する。
【0015】
第1図の回転子内径孔2と接する回転軸外径部22と25の合計は破線で示す2か所の長さであり回転子の幅の変化に対してつなぎ部23の長さを短く調整することで適正な圧入力を確保できる。回転子1の挿入側に第1の外径部22、出口側に第2の外径部25と両端近辺に配置することで回転軸4に対する回転子1の平行度を確保している。
【実施例2】
【0016】
図2は回転軸8の回転子内径孔2と接する外径部22と25は研削加工G Rz6.3を実施した回転子1の挿入開始時を示す。回転軸の挿入側にゆるやかなテーパ1/30の案内部21と24を設けることで回転子内径孔2が引っかからずにスムーズに入る。
【実施例3】
【0017】
図3は回転軸9の回転子内径孔2と接する外径部28と29はバイトの送り0.25mm/回転の切削加工L Rz25を実施した例を示している。この外径部28と29の研削工程が不要となる。
【実施例4】
【0018】
図4は回転軸30の回転子と接する外径部31を2分割せずに、回転軸の外径部31と接する回転子の内径孔を分割し、寸法C=φ17±0.010の第1の内径孔33、外径部31と接しない寸法F=φ18±0.1の逃げ部34、寸法C=φ17±0.010の第2の内径孔35、回転子内径孔33と35は回転子の両端側に配置し、中心部は回転子の逃げ部34としたものであり、実施例1と同様の効果が得られる。
【0019】
図5は回転軸圧入工程を示した図であり、プレス機のテーブルに下治具36を置き、その上に回転子1を乗せ、回転子内径孔に回転軸4を入れ、さらに上治具37を乗せて、上治具にプレス機で圧入力Pを加え、回転子1に回転軸4を圧入するものである。ここで主に薄板を積層した回転子1の精度が悪いため、回転軸4に圧入力Pによる曲げモーメントが作用してこの工程において回転軸4が曲がり変形するものである。
【0020】
図6は回転子1に回転軸4を圧入する時において、横軸に回転子への回転軸の押込み寸法を、縦軸に押込み圧入力Pを表したグラフであり、破線が従来の軸の圧入力線を、実線が本発明の軸の圧入力線を示す。
【0021】
破線の従来軸の圧入力線は図9の回転軸40に案内部50と回転子1と接する外径部51の間の切削加工のバイトのノーズRによる急激な立上げ部52により初期に大きな上昇となり、図8の長い破線が回転子内径と回転軸の外径部51の接触長さを示し、その後両者の接触長さが増えるに従い徐々に増加し、最終的に100kNと大きな圧入力になっている。
【0022】
実線が本発明軸の圧入力線を示し圧入力は図1の回転軸4の案内部20の後にテーパ部21があり初期の立上がりはなく、その後幅が短い第1の外径部22で上昇し、つなぎ部23の間は一定となり、第2の外径部25で再び上昇する。2つの短い破線の合計長さが回転子1と回転軸4の接触長さであり、圧入力は最終的に8〜14kNと小さくなっている。
【産業上の利用可能性】
【0023】
以上のように、本発明にかかわる電動機の回転子組立は、回転子に圧入する回転軸、あるいは回転子の構成に関するものでる。
【符号の説明】
【0024】
1 回転子、2 回転子の内径孔、4と8と9 本発明の回転軸、5 回転子組立、20 回転軸の案内部、21 第1のテーパ部、22と28 第1の外径部、23 つなぎ部、24 第2のテーパ部、25と29 第2の外径部、26ヌスミ部、27 最大径部、30 本発明の他の実施例の回転軸、31 外径部、32 その回転子、33 第1の回転子の回転軸と接する内径部、34 逃げ部、35 第2の回転子の回転軸と接する内径部、40 従来の回転軸、41 回転子組立、50 回転軸の案内部、51 外径部、52 立上げ部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9