【実施例】
【0053】
以下に実施例を示し、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。尚、実施例や比較例中の化合物の略号、及び各特性の測定は以下の通りである。
【0054】
(1)ポリアミド樹脂組成物の調製並びにプレスシートの作製
樹脂組成物の調製
ラボプラストミルを用い、ナイロン11(アルケマ社製:BESN O TL)又はナイロン12(宇部興産社製:UBESTA 3030U)と本発明のポリアミド樹脂用可塑剤組成物とを210℃、又は200℃で10分間混練し、塊状の本発明のポリアミド樹脂組成物を得た。
プレスシートの調製
プレス成形機を用いて、上記樹脂組成物を、210℃、又は200℃でホットプレスし、厚さ1mmのシートを形成した。
また、各実施例及び比較例における樹脂組成物から上記調製法に従い得られたプレスシートの特性は、以下の方法により測定し、評価した。
【0055】
[樹脂の物性評価]
(1)耐ブリード性:
プレスシートより切り出した試験片(25mm×60mm×1mm)を70℃90%RH(RelativeHumidity)の環境下に吊るし、それぞれ1週間後、シート表面を目視により観察し、以下の通り、2段階で評価した。
○ : ブリードがなく、良好である。
× : ブリードがあり、不良である。
【0056】
(2)耐薬品性:プレスシートより切り出した試験片(40mm×40mm×1mm)をシクロヘキサンに30℃で2時間浸漬した。その後試験片を取り出してギアーオーブンにて90℃で1時間乾燥を行い、試験片の質量減(質量%)を測定した。質量減が少ないほど、耐薬品性がよいといえる。
<ナイロン12の耐薬品性について>
◎:質量減が0.70〜1.20質量%で、耐薬品性が非常に良好である。
〇:質量減が1.21〜1.60質量%で、耐薬品性が良好である。
△:質量減が1.61〜2.00質量%で、耐薬品性が悪い。
×:質量減が2.01質量%以上で、耐薬品性が非常に悪い。
<ナイロン11の耐薬品性について>
◎:質量減が0.50〜0.99質量%で、耐薬品性が非常に良好である。
〇:質量減が1.00〜1.29質量%で、耐薬品性が良好である。
△:質量減が1.30〜1.59質量%で、耐薬品性が悪い。
×:質量減が1.60質量%以上で、耐薬品性が非常に悪い。
【0057】
(3)成形加工性:ポリアミド樹脂組成物製造時の加工10分におけるトルク値(N・m)より判断した。トルク値が小さい方が成形加工性がよいといえる。
ラボプラストミル (株)東洋精機製作所
装置:10S100
ミキサー:R60型
ブレード:ローラ形
<ナイロン12の成形加工性について>
◎:トルク値が4.0〜8.0N・mで、成形加工性が非常に良好である。
〇:トルク値が8.1〜10.0N・mで、成形加工性が良好である。
△:トルク値が10.0〜13.0N・mで、成形加工性が劣る。
×:トルク値が13.1N・m以上で、成形加工性が悪い。
<ナイロン11の成形加工性について>
◎:トルク値が2.0〜3.0N・mで、成形加工性が非常に良好である。
〇:トルク値が3.1〜5.0N・mで、成形加工性が良好である。
△:トルク値が5.1〜7.0N・mで、成形加工性が劣る。
×:トルク値が7.1N・m以上で、成形加工性が悪い。
【0058】
ポリアミド樹脂組成物の上記(1)耐ブリード性、(2)耐薬品性及び(3)成形加工性のすべてが、〇以上の評価であると、実使用に好適なポリアミド樹脂組成物であるといえる。一つでも△以下の評価があると、実使用には適さないといえる。
【0059】
[製造例1]
p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−エチルヘキシルオキシ)エトキシ)エチル(「化合物a−1」)の製造
1L(リットル)の3つ口フラスコに、p−ヒドロキシ安息香酸138g(1.0モル)、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル240g(1.1モル)(KHネオケム社製、商品名「キョーワノールOX−20」)、ジブチル錫オキサイド1.1g及びトルエン11gを仕込み、窒素ガス気流中で攪拌下加熱を行い、生成する水をトルエンと共沸させて反応系外に除去しながら、190℃まで昇温した。190℃で、反応混合物の酸価が1mgKOH/g以下になるまで8時間加熱を続けた。得られた反応粗物を5重量%燐酸水溶液で処理した後、温水洗浄して触媒を除去した。次いで5重量%水酸化ナトリウム水溶液で中和後、温水洗浄し0.67kPa以下の減圧下、200℃で過剰のアルコール分を留去し、冷却後濾過して淡黄色透明液状の成分(A)である本エステル化合物311g(収率91%)を得た。
【0060】
[実施例1]
製造例1で得られた成分(A)p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−エチルヘキシルオキシ)エトキシ)エチル(以下「化合物a−1」という。)と成分(B)ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル(以下「化合物b−1」という。)を予め成分(A)/成分(B)=99.6/0.4の質量比で混合し、本願可塑剤組成物を調製した後、該可塑剤組成物をポリアミド樹脂としてナイロン12(以下「PA12」という。)100質量部に対して、30.12質量部配合して、ポリアミド樹脂組成物を調製した。その後、該組成物からプレスシートを得て、耐ブリード試験、耐薬品性試験及び成形加工性試験を行った。得られた結果をまとめて表1に示した。
耐ブリード性は良好で、耐薬品性試験の結果、1.58質量%減であった。また、トルクは8.6N・mであった。
当該ポリアミド樹脂組成物から得られた成形品(プレスシート)は、ブリードもなく、耐薬品性も良好なものであった。
加えて、ポリアミド樹脂組成物製造時のトルク値より当該ポリアミド樹脂組成物の成形加工性が良好であることが確認された。
【0061】
[実施例2]
予め、成分(A)/成分(B)=96/4の質量比で混合し、本願可塑剤組成物を調製し、該可塑剤組成物を31.25質量部使用した以外は、実施例1と同様に実施して、プレスシートを得て、耐ブリード試験、耐薬品性試験及び成形加工性試験を行った。得られた結果をまとめて表1に示した。
耐ブリード性は良好で、耐薬品性試験の結果、1.60質量%減であった。また、トルクは8.0N・mであった。
当該ポリアミド樹脂組成物より得られたプレスシートは、ブリードもなく、耐薬品性も良好なものであった。
加えて、ポリアミド樹脂組成物製造時のトルク値より当該ポリアミド樹脂組成物の成形加工性が非常に良好であることが確認された。
【0062】
[実施例3]
予め、成分(A)/成分(B)=91/9の質量比で混合し、本願可塑剤組成物を調製し、該可塑剤組成物を16.5質量部使用した以外は、実施例1と同様に実施して、プレスシートを得て耐ブリード試験、耐薬品性試験及び成形加工性試験を行った。得られた結果をまとめて表1に示した。
耐ブリード性は良好で、耐薬品性試験の結果、0.98質量%減であった。また、トルクは10.0N・mであった。
当該ポリアミド樹脂組成物より得られたプレスシートは、ブリードもなく、耐薬品性も非常に良好なものであった。
加えて、ポリアミド樹脂組成物製造時のトルク値より当該ポリアミド樹脂組成物の成形加工性が良好であることが確認された。
【0063】
[実施例4]
成分(B)として、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(以下「化合物b−2」という。)を使用した以外は、実施例2と同様に実施して、プレスシートを得て、耐ブリード試験、耐薬品性試験及び成形加工性試験を行った。得られた結果をまとめて表1に示した。耐ブリード性は良好で、耐薬品性試験の結果、1.60質量%減であった。また、トルクは8.4N・mであった。
当該ポリアミド樹脂組成物より得られたプレスシートは、ブリードもなく、耐薬品性も良好なものであった。
加えて、ポリアミド樹脂組成物製造時のトルク値より当該ポリアミド樹脂組成物の成形加工性が良好であることが確認された。
【0064】
[実施例5]
ポリアミド樹脂として、ナイロン11(以下「PA11」という。)を100質量部用いた以外は、実施例2と同様に実施して、プレスシートを得て、耐ブリード試験、耐薬品性試験及び成形加工性試験を行った。得られた結果をまとめて表1に示した。
耐ブリード性は良好で、耐薬品性試験の結果、1.20質量%減であった。また、トルクは4.9N・mであった。
当該ポリアミド樹脂組成物より得られたプレスシートは、ブリードもなく、耐薬品性も良好なものであった。
加えて、ポリアミド樹脂組成物製造時のトルク値より当該ポリアミド樹脂組成物の成形加工性が良好であることが確認された。
【0065】
[比較例1]
成分(B)として、2−エチルヘキサノール(以下「化合物b−3」という。)を使用した以外は、実施例2と同様に実施して、プレスシートを得て、耐ブリード試験、耐薬品性試験及び成形加工性試験を行った。得られた結果をまとめて表1に示した。
耐ブリード性は良好で、耐薬品性試験の結果、1.70質量%減であった。また、トルクは8.3N・mであった。
当該ポリアミド樹脂組成物より得られたプレスシートは、耐薬品性が悪いものであった。
【0066】
[比較例2]
成分(B)として、2−ヘキシルデカノール(以下「化合物b−4」という。)を使用した以外は、実施例2と同様に実施して、プレスシートを得て、耐ブリード試験、耐薬品性試験及び成形加工性試験を行った。得られた結果をまとめて表1に示した。
耐ブリード性は良好で、耐薬品性試験の結果、1.70質量%減であった。また、トルクは8.3N・mであった。
当該ポリアミド樹脂組成物より得られたプレスシートは、耐薬品性が悪いものであった。
【0067】
[比較例3]
成分(B)として、ポリエチレングリコール400(以下「化合物b−5」という。)を使用した以外は、実施例2と同様に実施して、プレスシートを得て、耐ブリード試験、耐薬品性試験及び成形加工性試験を行った。得られた結果をまとめて表1に示した。
耐ブリード性は良好で、耐薬品性試験の結果、1.77質量%減であった。また、トルクは8.5N・mであった。
当該ポリアミド樹脂組成物により得られたプレスシートは、耐薬品性が悪く、耐ブリード試験にてブリードが見られた。
【0068】
[比較例4]
成分(A)として、N−ブチルベンゼンスルホンアミド(以下「化合物a−2」という。)を使用した以外は、実施例2と同様に実施して、プレスシートを得て、耐ブリード試験、耐薬品性試験及び成形加工性試験を行った。得られた結果をまとめて表1に示した。
耐ブリード性は良好で、耐薬品性試験の結果、2.48質量%減であった。また、トルクは7.9N・mであった。
当該ポリアミド樹脂組成物により得られたプレスシートは、耐薬品性が非常に悪く、耐ブリード試験にてブリードが見られた。
【0069】
[比較例5]
予め、成分(A)/成分(B)=83/17の質量比で混合し、本願可塑剤組成物を調製し、該可塑剤組成物を36質量部使用した以外は、実施例1と同様に実施して、プレスシートを得て、耐ブリード試験、耐薬品性試験及び成形加工性試験を行った。得られた結果をまとめて表1に示した。
耐ブリード性は良好で、耐薬品性試験の結果、2.62質量%減であった。また、トルクは6.7N・mであった。
当該ポリアミド樹脂組成物により得られたプレスシートは、耐薬品性が非常に悪かった。
【0070】
[比較例6]
成分(B)として、「化合物b−4」を使用した以外は、実施例5と同様に実施して、プレスシートを得て、耐ブリード試験、耐薬品性試験及び成形加工性試験を行った。得られた結果をまとめて表1に示した。
耐ブリード性は良好で、耐薬品性試験の結果、1.31質量%減であった。また、トルクは5.2N・mであった。
当該ポリアミド樹脂組成物により得られたプレスシートは、耐薬品性が悪かった。
【0071】
【表1】
【0072】
表1の結果より、本発明のポリアミド樹脂用可塑剤を用いたポリアミド樹脂組成物より得られた成形体(実施例1〜5)は、比較例と比べて、耐ブリード性の低下が全くなく、成形加工性が良好であり、更に耐薬品性に優れることが明確に示された。本発明のポリアミド樹脂用可塑剤を用いたポリアミド樹脂組成物は、実使用に好適な耐ブリード性、耐薬品性及び成形加工性をすべて満たしたポリアミド樹脂組成物である。