特開2021-14565(P2021-14565A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-14565(P2021-14565A)
(43)【公開日】2021年2月12日
(54)【発明の名称】ポリアミド樹脂用可塑剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/02 20060101AFI20210115BHJP
   C08K 5/101 20060101ALI20210115BHJP
【FI】
   C08L77/02
   C08K5/101
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2020-11795(P2020-11795)
(22)【出願日】2020年1月28日
(31)【優先権主張番号】特願2019-129738(P2019-129738)
(32)【優先日】2019年7月12日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000191250
【氏名又は名称】新日本理化株式会社
(72)【発明者】
【氏名】辻 泰樹
(72)【発明者】
【氏名】吉近 匠生
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CL011
4J002ED037
4J002EH126
4J002FD026
4J002FD027
(57)【要約】
【課題】
成形加工性、及び耐薬品性に優れ、過酷な高温環境での使用においても耐ブリード性に優れるポリアミド樹脂用可塑剤、ポリアミド樹脂組成物、並びにポリアミド樹脂成形体を提供することを目的とする。
【解決手段】
特定のp−ヒドロキシ安息香酸エステルと特定の一価アルコールを組合せることにより、成形加工性、及び耐薬品性に優れ、過酷な高温環境での使用においても耐ブリード性に優れるポリアミド樹脂用可塑剤、ポリアミド樹脂組成物、並びにポリアミド樹脂成形体を得ることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(A)一般式(1)で表されるp−ヒドロキシ安息香酸エステル及び成分(B)特定の一価アルコールを含有してなるポリアミド樹脂用可塑剤組成物であって、
成分(B)の分子量が200〜500の範囲であり、
さらに、Fedorsの推算法による成分(B)のSP値が9.6〜11.6の範囲であり、
かつ成分(A)と成分(B)の質量比率が99.8/0.2〜90/10の範囲であることを特徴とするポリアミド樹脂用可塑剤組成物。
【化1】
[式中、Rは炭素数6〜12の直鎖状、または分岐鎖状のアルキル基を、nは1〜8の整数を示す。]
【請求項2】
ポリアミド樹脂と前記請求項1に記載の可塑剤組成物を含有することを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリアミド樹脂がナイロン11及びナイロン12からなる群から選ばれる少なくとも一種を含む請求項2に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】
前記請求項2又は3に記載のポリアミド樹脂組成物から得られるポリアミド樹脂成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド樹脂用可塑剤組成物、並びにそれを含有してなるポリアミド樹脂組成物に関し、詳しくは、特定のp−ヒドロキシ安息香酸エステル、及び特定の一価アルコールを含有することによる、成形加工性、耐ブリード性、及び耐薬品性等に優れたポリアミド樹脂用可塑剤組成物、並びにそれを含有してなるポリアミド樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ナイロン6、ナイロン6,6に代表されるポリアミド樹脂は、機械特性、耐薬品性等に優れ、衣類から工業部品まで幅広く利用されている。その中でもナイロン11、ナイロン12は、より柔軟な樹脂として知られており、さらに可塑剤を加え柔軟性を付与させたものが自動車用部品や産業用ホース・チューブ等に使用されている。これらの分野で使用されるポリアミド樹脂は、初期の柔軟性はもちろん、高温での長時間使用でも柔軟性を維持できること、可塑剤のブリードが認められないこと、例えば、自動車用燃料チューブや産業用油圧チューブなどの高温で油性の強い環境下の使用に耐え得る耐薬品性を有すること、並びに加工・成形特性が良好であること等が要求されている。
【0003】
一般にポリアミド樹脂用可塑剤としては、ブチルベンゼンスルホンアミド、p−ヒドロキシ安息香酸2−エチルヘキシルなどが知られている。しかしながら、これらの可塑剤は、添加量を増すと成形物の表面にブリードしベタつく、耐寒衝撃性などの目標の力学物性が得られなくなる等の欠点を有していた。また、高温環境での使用においては、これらの可塑剤がホースあるいはチューブから滲み出して柔軟性が失われたり、他部品に付着して汚染したりする問題もあった。
【0004】
これらの欠点を改善すべく、表面ブリード・耐熱性を改善したポリアミド樹脂用の可塑剤として、p−ヒドロキシ安息香酸、又はо−ヒドロキシ安息香酸と分岐鎖を有する炭素数12〜22のアルコールとのエステルが提案されている(特許文献1)。この可塑剤を含有したポリアミド樹脂組成物は、成形物表面へのブリード、耐熱性については少なからず改善されるものの、耐寒衝撃性などの要求力学物性を保持したまま成形性を向上させるという点については十分でなかった。それに対し、p−ヒドロキシ安息香酸2−ヘキシルデシル、及び分岐鎖を有する炭素数16〜24の1価のアルコールを含有してなるポリアミド樹脂組成物が提案されており、力学物性を保持しつつ成形性の改良が図られている(特許文献2)。一方で、分子内にアルキレンオキシドを含むp−ヒドロキシ安息香酸エステルを可塑剤として使用し、可塑剤の保留性、柔軟性、及び耐寒衝撃性等を向上させたポリアミド樹脂組成物等も提案されている(特許文献3)。
【0005】
しかし、近年金属部品の樹脂化等に伴って樹脂の高機能化が要求されており、例えば、より過酷な高温環境での使用におけるブリード抑制、耐薬品性については、上記の方法では未だ十分とは言えず、成形加工性、耐薬品性、及び高温下での耐ブリード性に優れるポリアミド樹脂用可塑剤、並びにポリアミド樹脂組成物の開発が待ち望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1−185362号公報
【特許文献2】特開平7−011131号公報
【特許文献3】国際公開WO98/38152
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記の問題が解決できる、即ち、成形加工性、耐薬品性、及び高温下での耐ブリード性に優れるポリアミド樹脂用可塑剤、ポリアミド樹脂組成物、並びにポリアミド樹脂成形体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、かかる現状に鑑み、鋭意検討した結果、特定のp−ヒドロキシ安息香酸エステル、及び特定の一価アルコールを特定の比率で含有してなるポリアミド樹脂用可塑剤組成物を用いることにより、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、以下のポリアミド樹脂用可塑剤組成物、及びそれを含有してなるポリアミド樹脂組成物、並びにポリアミド樹脂成形体を提供するものである。
【0010】
[項1]
成分(A)一般式(1)で表されるp−ヒドロキシ安息香酸エステル及び成分(B)特定の一価アルコールを含有してなるポリアミド樹脂用可塑剤組成物であって、
成分(B)の分子量が200〜500の範囲であり、
さらに、Fedorsの推算法による成分(B)のSP値が9.6〜11.6の範囲であり、
かつ成分(A)と成分(B)の質量比率が99.8/0.2〜90/10の範囲であることを特徴とするポリアミド樹脂用可塑剤組成物。
【化1】
[式中、Rは炭素数6〜12の直鎖状、または分岐鎖状のアルキル基を、nは1〜8の整数を示す。]
【0011】
[項2]
一般式(1)におけるアルキル基が、炭素数8〜10の直鎖状、または分岐鎖状のアルキル基であり、かつnが2〜4である、項1に記載の可塑剤組成物。
【0012】
[項3]
一般式(1)におけるアルキル基が、炭素数8の直鎖状、または分岐鎖状のアルキル基であり、かつnが2である、項2に記載の可塑剤組成物。
【0013】
[項4]
成分(B)が、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノオクチルエーテル、ジエチレングリコールモノデシルエーテルからなる群より選ばれる1種または2種以上の混合物である、項1〜項2のいずれかに記載の可塑剤組成物。
【0014】
[項5]
ポリアミド樹脂と項1〜項4のいずれかに記載の可塑剤組成物を含有することを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
【0015】
[項6]
ポリアミド樹脂100質量部に対して、前記可塑剤組成物として、5〜80質量部含有することを特徴とする項5に記載のポリアミド樹脂組成物。
【0016】
[項7]
前記ポリアミド樹脂がナイロン11及びナイロン12からなる群から選ばれる少なくとも一種を含む項5又は項6に記載のポリアミド樹脂組成物。
【0017】
[項8]
前記ポリアミド樹脂がナイロン12である項7に記載のポリアミド樹脂組成物。
【0018】
[項9]
前記項5〜項8のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物から得られるポリアミド樹脂成形体。
【発明の効果】
【0019】
本発明のポリアミド樹脂用可塑剤組成物は、成形加工性及び耐薬品性に優れ、且つ過酷な高温環境での使用においても耐ブリード性に優れるポリアミド用可塑剤として使用できる。また、そのポリアミド樹脂用可塑剤組成物を含むことにより、成形加工性及び耐薬品性に優れ、且つ過酷な高温環境での使用においても耐ブリード性に優れる。特に過酷な高温環境での使用において、耐熱劣化することなく使用可能なことが要求される自動車用部品用途、及び産業用ホース・チューブ用途等に好適なポリアミド樹脂組成物、並びにポリアミド成形体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<ポリアミド樹脂用可塑剤組成物>
本発明のポリアミド樹脂用可塑剤組成物は、(A)特定のp−ヒドロキシ安息香酸エステル、及び(B)特定の一価アルコールを含んでなり、成分(B)の分子量が200〜500の範囲であり、且つFedorsの推算法による成分(B)のSP値が9.6〜11.6の範囲であり、且つ成分(A)と成分(B)の質量比率が99.8/0.2〜90/10の範囲であることを最大の特徴としている。
【0021】
成分(A):p−ヒドロキシ安息香酸エステル
本発明における成分(A)p−ヒドロキシ安息香酸エステルとは、一般式(1)で表されるp−ヒドロキシ安息香酸エステル化合物であり、以下、「本エステル化合物」という。
【化1】
[式中、Rは炭素数6〜12の直鎖状、または分岐鎖状のアルキル基を、nは1〜8の整数を示す。]
【0022】
本エステル化合物は、ポリアミド樹脂との相溶性及び耐寒性等の観点より、一般式(1)で表される化合物において、Rが炭素数6〜12の直鎖状、または分岐鎖状のアルキル基であり、且つnが1〜8であることが好ましく、Rが炭素数8〜10の直鎖状、または分岐鎖状のアルキル基であり、且つnが2〜4であることが更に好ましく、Rが炭素数8の直鎖状、または分岐鎖状のアルキル基であり、且つnが2であることが最も好ましい。
【0023】
本エステル化合物において、Rが炭素数6未満の場合は、得られる成形体の低温耐衝撃性が低下し、一方でRが炭素数12より大きい場合は相溶性や柔軟性が悪化し、可塑剤のブリードや耐熱性の低下を招く原因となり、いずれも好ましくない。また、nが1未満の場合は耐寒性や耐熱性が十分でなく、一方でnが8より大きい場合は柔軟性や成形加工性が低下し、いずれも好ましくない。
【0024】
本エステル化合物は、本発明の目的とする上記性能を満たすものであれば、特にその製造方法により限定されるものではないが、例えば、炭素数6〜12のアルコールのエチレンオキシド付加体とp−ヒドロキシ安息香酸とを常法に従って、好ましくは窒素等の不活性化ガス雰囲気下において、無触媒又は触媒の存在下でエステル化することにより容易に得られる。
【0025】
上記アルコールとしては、炭素数6〜12の直鎖状、または分岐鎖状のアルコールの単独または混合物であり、より具体的には、n−ヘキサノール、n−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、n−ノナノール、イソノナノール、n−デカノール、2−プロピルヘプタノール、n−ウンデカノール、イソウンデカノール、n−ドデカノール、またはこれらの混合物が例示できる。これらアルコールの混合物としては、炭素数7、8、及び9の第一級アルコールの混合物(商品名「リネボール79」または「ネオドール79」、シェルケミカルズ社製)、炭素数9、10、及び11の第一級アルコールの混合物(商品名「リネボール911」または「ネオドール911」、シェルケミカルズ社製)、炭素数11の直鎖及び分岐鎖状第一級アルコールの混合物(商品名「LIAL111」、サソール社製)等が例示される。これらのアルコールの中でも、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、n−ノナノール、イソノナノール、n−デカノール、2−プロピルヘプタノール等が推奨される。
【0026】
上記アルコールのエチレンオキシド付加体は、常法に従って合成を行えば容易に得られ、例えば、「実験化学講座19、有機化合物の合成I」、日本化学会編、丸善株式会社、1957年7月30日発行、第196〜197頁に記載の方法に従い、エチレンオキシドと上記アルコールとを、触媒としてナトリウムメトキシド等のアルカリ金属アルコキシドの存在下で、常圧〜加圧下に、120〜180℃程度の温度下に反応させればよい。アルコールのエチレンオキシド付加体としては、具体的には、エチレングリコールモノへキシルエーテル、エチレングリコールモノヘプチルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノオクチルエーテル、エチレングリコールモノノニルエーテル、エチレングリコールモノデシルエーテル、エチレングリコールモノ−2−プロピルヘプチルエーテル、エチレングリコールモノウンデシルエーテル、エチレングリコールモノドデシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘプチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノオクチルエーテル、ジエチレングリコールモノノニルエーテル、ジエチレングリコールモノデシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−プロピルヘプチルエーテル、ジエチレングリコールモノウンデシルエーテル、ジエチレングリコールモノドデシルエーテル、トリエチレングリコールモノへキシルエーテル、トリエチレングリコールモノヘプチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノオクチルエーテル、トリエチレングリコールモノノニルエーテル、トリエチレングリコールモノデシルエーテル、トリエチレングリコールモノ−2−プロピルヘプチルエーテル、トリエチレングリコールモノウンデシルエーテル、トリエチレングリコールモノドデシルエーテル、テトラエチレングリコールモノへキシルエーテル、テトラエチレングリコールモノヘプチルエーテル、テトラエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールモノオクチルエーテル、テトラエチレングリコールモノノニルエーテル、テトラエチレングリコールモノデシルエーテル、テトラエチレングリコールモノ−2−プロピルヘプチルエーテル、テトラエチレングリコールモノウンデシルエーテル、テトラエチレングリコールモノドデシルエーテル、ペンタエチレングリコールモノへキシルエーテル、ペンタエチレングリコールモノヘプチルエーテル、ペンタエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ペンタエチレングリコールモノオクチルエーテル、ペンタエチレングリコールモノノニルエーテル、ペンタエチレングリコールモノデシルエーテル、ペンタエチレングリコールモノ−2−プロピルヘプチルエーテル、ペンタエチレングリコールモノウンデシルエーテル、ペンタエチレングリコールモノドデシルエーテル、ヘキサエチレングリコールモノへキシルエーテル、ヘキサエチレングリコールモノヘプチルエーテル、ヘキサエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ヘキサエチレングリコールモノオクチルエーテル、ヘキサエチレングリコールモノノニルエーテル、ヘキサエチレングリコールモノデシルエーテル、ヘキサエチレングリコールモノ−2−プロピルヘプチルエーテル、ヘキサエチレングリコールモノウンデシルエーテル、ヘキサエチレングリコールモノドデシルエーテル、ヘプタエチレングリコールモノへキシルエーテル、ヘプタエチレングリコールモノヘプチルエーテル、ヘプタエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ヘプタエチレングリコールモノオクチルエーテル、ヘプタエチレングリコールモノノニルエーテル、ヘプタエチレングリコールモノデシルエーテル、ヘプタエチレングリコールモノ−2−プロピルヘプチルエーテル、ヘプタエチレングリコールモノウンデシルエーテル、ヘプタエチレングリコールモノドデシルエーテル、オクタエチレングリコールモノへキシルエーテル、オクタエチレングリコールモノヘプチルエーテル、オクタエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、オクタエチレングリコールモノオクチルエーテル、オクタエチレングリコールモノノニルエーテル、オクタエチレングリコールモノデシルエーテル、オクタエチレングリコールモノ−2−プロピルヘプチルエーテル、オクタエチレングリコールモノウンデシルエーテル、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル、またはこれらの混合物等が例示され、これらの中でも好ましくは、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノオクチルエーテル、ジエチレングリコールモノノニルエーテル、ジエチレングリコールモノデシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−プロピルヘプチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノオクチルエーテル、トリエチレングリコールモノノニルエーテル、トリエチレングリコールモノデシルエーテル、トリエチレングリコール−2−プロピルヘプチルエーテル、テトラエチレングリコール−2−エチルヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールオクチルエーテル、テトラエチレングリコールノニルエーテル、テトラエチレングリコールデシルエーテル、テトラエチレングリコール−2−プロピルヘプチルエーテルが例示され、より好ましくは、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノオクチルエーテルである。
【0027】
上記アルコールのエチレンオキシド付加体を用いた本エステル化合物の具体的な例としては、p−ヒドロキシ安息香酸2−ヘキシルオキシエチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−ヘプチルオキシエチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−エチルヘキシルオキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−オクチルオキシエチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−ノニルオキシエチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−デシルオキシエチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−プロピルヘプチルオキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−ウンデシルオキシエチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−ドデシルオキシエチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−ヘキシルオキシエトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−ヘプチルオキシエトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−エチルヘキシルオキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−オクチルオキシエトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−ノニルオキシエトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−デシルオキシエトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−プロピルヘプチルオキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−ウンデシルオキシエトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−ドデシルオキシエトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−ヘキシルオキシエトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−ヘプチルオキシエトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−(2−エチルヘキシルオキシ)エトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−オクチルオキシエトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−ノニルオキシエトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−デシルオキシエトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−(2−プロピルヘプチルオキシ)エトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−ウンデシルオキシエトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−ドデシルオキシエトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−(2−ヘキシルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−(2−ヘプチルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−(2−(2−エチルヘキシルオキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−(2−オクチルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−(2−ノニルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−(2−デシルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−(2−(2−プロピルヘプチルオキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−(2−ウンデシルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−(2−ドデシルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−(2−(2−ヘキシルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−(2−(2−ヘプチルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−(2−(2−(2−エチルヘキシルオキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−(2−(2−オクチルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−(2−(2−ノニルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−(2−(2−デシルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−(2−(2−(2−プロピルヘプチルオキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−(2−(2−ウンデシルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−(2−(2−ドデシルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−(2−(2−(2−ヘキシルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−(2−(2−(2−ヘプチルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−エチルヘキシルオキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−オクチルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−(2−(2−(2−ノニルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−(2−(2−(2−デシルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−プロピルヘプチルオキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−(2−(2−(2−ウンデシルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−(2−(2−(2−ドデシルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−ヘキシルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−ヘプチルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−エチルヘキシルオキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−オクチルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−ノニルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−デシルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−プロピルヘプチルオキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−ウンデシルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−ドデシルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−ヘキシルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−ヘプチルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−エチルヘキシルオキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−オクチルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−ノニルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−デシルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−プロピルヘプチルオキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−ウンデシルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−ドデシルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸と、n−ヘキサノールのEO付加物(EO平均付加モル数=1〜8)の混合物とのエステル、p−ヒドロキシ安息香酸と、n−ヘプタノールのEO付加物(EO平均付加モル数=1〜8)の混合物とのエステル、p−ヒドロキシ安息香酸と、n−オクタノールのEO付加物(EO平均付加モル数=1〜8)の混合物とのエステル、p−ヒドロキシ安息香酸と、2−エチルヘキサノールのEO付加物(EO平均付加モル数=1〜8)の混合物とのエステル、p−ヒドロキシ安息香酸と、n−ノナノールのEO付加物(EO平均付加モル数=1〜8)の混合物とのエステル、p−ヒドロキシ安息香酸と、イソノナノールのEO付加物(EO平均付加モル数=1〜8)の混合物とのエステル、p−ヒドロキシ安息香酸と、n−デカノールのEO付加物(EO平均付加モル数=1〜8)の混合物とのエステル、p−ヒドロキシ安息香酸と、2−プロピルヘプタノールのEO付加物(EO平均付加モル数=1〜8)の混合物とのエステル、p−ヒドロキシ安息香酸と、n−ウンデカノールのEO付加物(EO平均付加モル数=1〜8)の混合物とのエステル、p−ヒドロキシ安息香酸と、イソウンデカノールのEO付加物(EO平均付加モル数=1〜8)の混合物とのエステル、p−ヒドロキシ安息香酸と、n−ドデカノールのEO付加物(EO平均付加モル数=1〜8)の混合物とのエステルやこれらのエステルの混合物等が挙げられる。その中でも、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−エチルヘキシルオキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−オクチルオキシエトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−ノニルオキシエトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−デシルオキシエトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−プロピルヘプチルオキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−(2−エチルヘキシルオキシ)エトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−オクチルオキシエトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−ノニルオキシエトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−デシルオキシエトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−(2−プロピルヘプチルオキシ)エトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−(2−(2−エチルヘキシルオキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−(2−オクチルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−(2−ノニルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−(2−デシルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−(2−(2−プロピルヘプチルオキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エチルが
好ましく、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−エチルヘキシルオキシ)エトキシ)エチル、p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−オクチルオキシエトキシ)エチルが特に好ましい。
【0028】
成分(B):アルコール
本発明における成分(B)特定の一価アルコールとは、分子量が200〜500の範囲であり、かつFedorsの推算法による成分(B)のSP値が9.6〜11.6の範囲である一価のアルコールであり、以下、「本アルコール化合物」という。
【0029】
本アルコール化合物は、耐熱性及び成形加工性の観点から、分子量が200〜500の範囲が好ましく、ポリアミドとの相溶性、耐ブリード性及び耐薬品性の観点から、Fedorsの推算法による成分(B)のSP値が9.6〜11.6の範囲であることが好ましく、成分(B)のSP値が9.8〜11.4の範囲であることが特に好ましい。
【0030】
本アルコール化合物の分子量が200未満の場合、揮発性が大きくなり、成形体の耐熱性低下の原因の一つとなるため好ましくなく、一方で分子量が500より大きい場合、成形加工性の向上効果が十分に得られない傾向にあるため好ましくない。また、SP値が9.6未満、または11.6を超えた場合、或いはアルコールが二価以上の場合は、本願発明のポリアミド用可塑剤組成物とポリアミド樹脂との相溶性が低下し、耐薬品性が悪化する、成形体を高温環境で使用した際にブリードやブルーム等を発生させ易くなるといった問題が生じるため、いずれも好ましくない。
【0031】
ここで本発明におけるSP値は、ヒルデブラント(Hildebrand)によって導入された正則溶液論により定義された値であり、溶媒(あるいは溶質)の凝集エネルギー密度の平方根で示される。2成分系溶液の溶解度の目安となる。SP値を求めるには、蒸発熱から計算する方法、化学組成から計算する方法、SP値が既知の物質との相溶性から実測する方法などが挙げられるが、本発明におけるSP値は、コーティングの基礎と工学(53ページ、原崎勇次著、加工技術研究会)記載のFedorsによる原子および原子団の蒸発エネルギーとモル体積から計算で求めた値を用いた。
【0032】
本アルコール化合物としては、具体的には、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、ペンタエチレングリコールモノブチルエーテル、ペンタエチレングリコールモノベンジルエーテル、ヘキサエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノオクチルエーテル、トリエチレングリコールモノオクチルエーテル、テトラエチレングリコールモノオクチルエーテル、ジエチレングリコールモノノニルエーテル、ジエチレングリコールモノイソノニルエーテル、ジエチレングリコールモノデシルエーテル、トリエチレングリコールモノデシルエーテル、テトラエチレングリコールモノデシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−プロピルヘプチルエーテル、ジエチレングリコールモノウンデシルエーテル、ジエチレングリコールモノドデシルエーテル、トリエチレングリコールモノドデシルエーテル、テトラエチレングリコールモノドデシルエーテル等が例示され、より好ましくは、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノオクチルエーテル、ジエチレングリコールモノデシルエーテル等のアルコールが推奨される。
【0033】
<可塑剤組成物>
本発明のポリアミド樹脂用可塑剤組成物は、上記成分(A)及び(B)を含有してなる。本発明のポリアミド樹脂用可塑剤組成物における成分(A)と成分(B)の質量比率は、加工性、及び耐熱性等の観点から、(A)/(B)=99.8/0.2〜90/10の範囲であることが好ましく、(A)/(B)=99.5/0.5〜92/8の範囲であることがより好ましい。(A)/(B)=99.8/0.2よりも(B)の比率が小さい場合、加工性の向上効果が十分に得られない傾向にあり、一方で(A)/(B)=90/10よりも(B)の比率が大きい場合、成形品表面へのブリードが生じ易くなったり、耐薬品性が低下したりする傾向があるため、いずれも好ましくない。
【0034】
<ポリアミド樹脂組成物>
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂と上述の本発明のポリアミド樹脂用可塑剤組成物を配合することにより得られ、ポリアミド樹脂100質量部に対して、前記可塑剤組成物を5〜80質量部含有することを最大の特徴としている。
【0035】
[ポリアミド樹脂]
本発明におけるポリアミド樹脂は、アミノカルボン酸の縮合重合によって得られるポリアミド樹脂、ラクタム類の開環重合によって得られるポリアミド樹脂、または、ジカルボン酸とジアミンの縮合重合によって得られるポリアミド樹脂等を使用することができる。具体的には、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12からなる群より選ばれる1種または2種以上の混合物等を使用することができ、これらの中でも、ナイロン11、またはナイロン12はより柔軟性に富むため、本発明におけるポリアミド樹脂としてより好適に使用することができる。
【0036】
[ポリアミド樹脂組成物]
本発明のポリアミド樹脂組成物の配合は、成形加工性、柔軟性、耐ブリード性、耐薬品性、耐熱性、耐寒性等の観点から、上述の本発明のポリアミド樹脂用可塑剤組成物を成分(A)と成分(B)の質量比率を満たした上で、ポリアミド樹脂100質量部に対して、5〜80質量部の範囲で配合することが好ましく、さらには、前記可塑剤組成物を10〜70質量部の範囲で配合することが特に好ましい。
【0037】
ポリアミド樹脂用可塑剤組成物の配合量が5質量部未満の場合は可塑化効果が得られにくく、かつ成形加工性の向上効果が十分に得られない傾向にあり、成形加工性が悪いと成形品であるプレスシートなどの平滑性が不十分である。配合量が80質量部を超える場合は、相分離を起こして耐寒性の低下や成形品表面へのブリードが激しくなったり、成形体を高温環境で使用した際にブリードやブルーム等を発生させ易くなったり、耐薬品性が低下したり、揮発性が大きくなって耐熱性が低下したりする傾向があるため、いずれも好ましくない。
【0038】
[その他の成分]
本発明のポリアミド樹脂組成物には、上記成分(A)、(B)以外に、必要に応じて安定化剤、安定化助剤、酸化防止剤(老化防止剤)、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン等の光安定剤、難燃剤、着色剤、加工助剤、充填剤、滑剤或いは帯電防止剤等の添加剤を適宜配合することができる。また、上記その他の添加剤は、1種で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0039】
安定化剤、安定化助剤としては、有機亜リン酸化合物等のキレーター化合物、トリフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、トリデシルフォスファイト等のホスファイト系化合物、ハイドロタルサイト化合物、ゼオライトなどが例示される。安定化、または安定化助剤を配合する場合、ポリアミド樹脂100質量部に対して、0.01〜20質量部程度が推奨される。
【0040】
酸化防止剤としては、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、テトラキス[メチレン−3−(3,5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオネート]メタン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどのフェノール系化合物、アルキルジスルフィド、チオジプロピオン酸エステル、ベンゾチアゾールなどの硫黄系化合物、トリスノニルフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトなどのリン酸系化合物、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、ジアリールジチオリン酸亜鉛などの有機金属系化合物などが例示される。また酸化防止剤を配合する場合、ポリアミド樹脂100質量部に対する酸化防止剤の配合量は0.1〜20質量部程度が推奨される。
【0041】
紫外線吸収剤としては、フェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレートなどのサリシレート系化合物、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物、5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール、1−ジオクチルアミノメチルベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系化合物の他、シアノアクリレート系化合物などが例示される。紫外線吸収剤を配合する場合、ポリアミド樹脂100質量部に対する紫外線吸収剤の配合量は0.1〜10質量部程度が推奨される。
【0042】
ヒンダードアミン系の光安定剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート及びメチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート(混合物)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドリキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ピペリジル)エステル及び1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールと高級脂肪酸のエステル混合物、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重縮合物、ポリ[{(6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル){(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}}、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N' −ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、N,N' ,N'' ,N''' −テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン等が例示される。光安定剤を配合する場合、ポリアミド樹脂100質量部に対する光安定剤の配合量は0.1〜10質量部程度が推奨される。
【0043】
難燃剤としては、水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛等の無機系化合物、クレジルジフェニルホスフェート、トリスクロロエチルフォスフェート、トリスクロロプロピルフォスフェート、トリスジクロロプロピルフォスフェート等のリン系化合物、塩素化パラフィン等のハロゲン系化合物等が例示される。難燃剤を配合する場合、ポリアミド樹脂100質量部に対する難燃剤の配合量は0.1〜30質量部程度が推奨される。
【0044】
着色剤としては、カーボンブラック、硫化鉛、ホワイトカーボン、チタン白、リトポン、べんがら、硫化アンチモン、クロム黄、クロム緑、コバルト青、モリブデン橙などが例示される。着色剤を配合する場合、ポリアミド樹脂100質量部に対する着色剤の配合量は1〜100質量部程度が推奨される。
【0045】
加工助剤としては、流動パラフィン、ポリエチレンワックス、ステアリン酸、ステアリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド、ブチルステアレート、アクリル系高分子などが例示される。加工助剤を配合する場合、ポリアミド樹脂100質量部に対する加工助剤の配合量は0.1〜20質量部程度が推奨される。
【0046】
充填剤としては、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、クレー、タルク、珪藻土、フェライト、などの金属酸化物、ガラス、炭素、金属などの繊維及び粉末、ガラス球、グラファイト、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウムなどが例示される。充填剤を配合する場合、ポリアミド樹脂100質量部に対する充填剤の配合量は1〜100質量部程度が推奨される。
【0047】
滑剤としては、シリコーン、流動パラフィン、バラフィンワックス、ステアリン酸金属塩やラウリン酸金属塩などの脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド類、脂肪酸ワックス、高級脂肪酸ワックス等が例示される。滑剤を配合する場合、その配合量は、本発明に係る効果を損なわない範囲で適宜選択され、通常、ポリアミド樹脂100質量部に対する滑剤の配合量は0.01〜10質量部程度が推奨される。
【0048】
帯電防止剤としては、アルキルスルホネート型、アルキルエーテルカルボン酸型又はジアルキルスルホサクシネート型のアニオン性帯電防止剤、ポリエチレングリコール誘導体、ソルビタン誘導体、ジエタノールアミン誘導体などのノニオン性帯電防止剤、アルキルアミドアミン型、アルキルジメチルベンジル型などの第4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム型の有機酸塩又は塩酸塩などのカチオン性帯電防止剤、アルキルベタイン型、アルキルイミダゾリン型などの両性帯電防止剤などが例示される。帯電防止剤を配合する場合、ポリアミド樹脂100質量部に対する帯電防止剤の配合量は0.1〜10質量部程度が推奨される。
【0049】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂に上記各成分及び必要に応じてその他の添加剤を加えて、例えばバンバリーミキサー、加圧ニーダー、コニカル二軸押出機、パラレル二軸押出機、単軸押出機、ロール混練機等の混練機により溶融成形することにより、塊状、あるいはペレット状のポリアミド樹脂組成物を得ることもできる。
【0050】
[ポリアミド樹脂成形体]
上記の本発明のポリアミド樹脂用可塑剤組成物を用いて得られた、本発明に係るポリアミド樹脂組成物(ペレット状等)を、真空成形、圧縮成形、押出成形、射出成形、カレンダー成形、プレス成形、ブロー成形等の従来公知の方法を用いて溶融成形加工することにより、所望の形状に成形することができる。
【0051】
成形体の形状としては、特に限定されないが、例えば、ロッド状、シート状、フィルム状、板状、円筒状、円形、楕円形等あるいは玩具、装飾品等特殊な形状のもの、例えば星形、多角形形状が例示される。
【0052】
こうして得られる成形体は、柔軟性、耐熱性、耐寒性、耐薬品性、及び成形加工性に優れ、且つ過酷な高温環境での使用においても耐ブリード性に優れており、例えば、特に高耐久性が要求される自動車用部品や産業用ホース・チューブ等、様々な用途において非常に有用である。また、上記以外の用途においても、高温下で安定的に使用できる材料として幅広く使用することができる。
【実施例】
【0053】
以下に実施例を示し、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。尚、実施例や比較例中の化合物の略号、及び各特性の測定は以下の通りである。
【0054】
(1)ポリアミド樹脂組成物の調製並びにプレスシートの作製
樹脂組成物の調製
ラボプラストミルを用い、ナイロン11(アルケマ社製:BESN O TL)又はナイロン12(宇部興産社製:UBESTA 3030U)と本発明のポリアミド樹脂用可塑剤組成物とを210℃、又は200℃で10分間混練し、塊状の本発明のポリアミド樹脂組成物を得た。
プレスシートの調製
プレス成形機を用いて、上記樹脂組成物を、210℃、又は200℃でホットプレスし、厚さ1mmのシートを形成した。
また、各実施例及び比較例における樹脂組成物から上記調製法に従い得られたプレスシートの特性は、以下の方法により測定し、評価した。
【0055】
[樹脂の物性評価]
(1)耐ブリード性:
プレスシートより切り出した試験片(25mm×60mm×1mm)を70℃90%RH(RelativeHumidity)の環境下に吊るし、それぞれ1週間後、シート表面を目視により観察し、以下の通り、2段階で評価した。
○ : ブリードがなく、良好である。
× : ブリードがあり、不良である。
【0056】
(2)耐薬品性:プレスシートより切り出した試験片(40mm×40mm×1mm)をシクロヘキサンに30℃で2時間浸漬した。その後試験片を取り出してギアーオーブンにて90℃で1時間乾燥を行い、試験片の質量減(質量%)を測定した。質量減が少ないほど、耐薬品性がよいといえる。
<ナイロン12の耐薬品性について>
◎:質量減が0.70〜1.20質量%で、耐薬品性が非常に良好である。
〇:質量減が1.21〜1.60質量%で、耐薬品性が良好である。
△:質量減が1.61〜2.00質量%で、耐薬品性が悪い。
×:質量減が2.01質量%以上で、耐薬品性が非常に悪い。

<ナイロン11の耐薬品性について>
◎:質量減が0.50〜0.99質量%で、耐薬品性が非常に良好である。
〇:質量減が1.00〜1.29質量%で、耐薬品性が良好である。
△:質量減が1.30〜1.59質量%で、耐薬品性が悪い。
×:質量減が1.60質量%以上で、耐薬品性が非常に悪い。
【0057】
(3)成形加工性:ポリアミド樹脂組成物製造時の加工10分におけるトルク値(N・m)より判断した。トルク値が小さい方が成形加工性がよいといえる。
ラボプラストミル (株)東洋精機製作所
装置:10S100
ミキサー:R60型
ブレード:ローラ形
<ナイロン12の成形加工性について>
◎:トルク値が4.0〜8.0N・mで、成形加工性が非常に良好である。
〇:トルク値が8.1〜10.0N・mで、成形加工性が良好である。
△:トルク値が10.0〜13.0N・mで、成形加工性が劣る。
×:トルク値が13.1N・m以上で、成形加工性が悪い。

<ナイロン11の成形加工性について>
◎:トルク値が2.0〜3.0N・mで、成形加工性が非常に良好である。
〇:トルク値が3.1〜5.0N・mで、成形加工性が良好である。
△:トルク値が5.1〜7.0N・mで、成形加工性が劣る。
×:トルク値が7.1N・m以上で、成形加工性が悪い。
【0058】
ポリアミド樹脂組成物の上記(1)耐ブリード性、(2)耐薬品性及び(3)成形加工性のすべてが、〇以上の評価であると、実使用に好適なポリアミド樹脂組成物であるといえる。一つでも△以下の評価があると、実使用には適さないといえる。
【0059】
[製造例1]
p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−エチルヘキシルオキシ)エトキシ)エチル(「化合物a−1」)の製造
1L(リットル)の3つ口フラスコに、p−ヒドロキシ安息香酸138g(1.0モル)、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル240g(1.1モル)(KHネオケム社製、商品名「キョーワノールOX−20」)、ジブチル錫オキサイド1.1g及びトルエン11gを仕込み、窒素ガス気流中で攪拌下加熱を行い、生成する水をトルエンと共沸させて反応系外に除去しながら、190℃まで昇温した。190℃で、反応混合物の酸価が1mgKOH/g以下になるまで8時間加熱を続けた。得られた反応粗物を5重量%燐酸水溶液で処理した後、温水洗浄して触媒を除去した。次いで5重量%水酸化ナトリウム水溶液で中和後、温水洗浄し0.67kPa以下の減圧下、200℃で過剰のアルコール分を留去し、冷却後濾過して淡黄色透明液状の成分(A)である本エステル化合物311g(収率91%)を得た。
【0060】
[実施例1]
製造例1で得られた成分(A)p−ヒドロキシ安息香酸2−(2−(2−エチルヘキシルオキシ)エトキシ)エチル(以下「化合物a−1」という。)と成分(B)ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル(以下「化合物b−1」という。)を予め成分(A)/成分(B)=99.6/0.4の質量比で混合し、本願可塑剤組成物を調製した後、該可塑剤組成物をポリアミド樹脂としてナイロン12(以下「PA12」という。)100質量部に対して、30.12質量部配合して、ポリアミド樹脂組成物を調製した。その後、該組成物からプレスシートを得て、耐ブリード試験、耐薬品性試験及び成形加工性試験を行った。得られた結果をまとめて表1に示した。
耐ブリード性は良好で、耐薬品性試験の結果、1.58質量%減であった。また、トルクは8.6N・mであった。
当該ポリアミド樹脂組成物から得られた成形品(プレスシート)は、ブリードもなく、耐薬品性も良好なものであった。
加えて、ポリアミド樹脂組成物製造時のトルク値より当該ポリアミド樹脂組成物の成形加工性が良好であることが確認された。
【0061】
[実施例2]
予め、成分(A)/成分(B)=96/4の質量比で混合し、本願可塑剤組成物を調製し、該可塑剤組成物を31.25質量部使用した以外は、実施例1と同様に実施して、プレスシートを得て、耐ブリード試験、耐薬品性試験及び成形加工性試験を行った。得られた結果をまとめて表1に示した。
耐ブリード性は良好で、耐薬品性試験の結果、1.60質量%減であった。また、トルクは8.0N・mであった。
当該ポリアミド樹脂組成物より得られたプレスシートは、ブリードもなく、耐薬品性も良好なものであった。
加えて、ポリアミド樹脂組成物製造時のトルク値より当該ポリアミド樹脂組成物の成形加工性が非常に良好であることが確認された。
【0062】
[実施例3]
予め、成分(A)/成分(B)=91/9の質量比で混合し、本願可塑剤組成物を調製し、該可塑剤組成物を16.5質量部使用した以外は、実施例1と同様に実施して、プレスシートを得て耐ブリード試験、耐薬品性試験及び成形加工性試験を行った。得られた結果をまとめて表1に示した。
耐ブリード性は良好で、耐薬品性試験の結果、0.98質量%減であった。また、トルクは10.0N・mであった。
当該ポリアミド樹脂組成物より得られたプレスシートは、ブリードもなく、耐薬品性も非常に良好なものであった。
加えて、ポリアミド樹脂組成物製造時のトルク値より当該ポリアミド樹脂組成物の成形加工性が良好であることが確認された。
【0063】
[実施例4]
成分(B)として、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(以下「化合物b−2」という。)を使用した以外は、実施例2と同様に実施して、プレスシートを得て、耐ブリード試験、耐薬品性試験及び成形加工性試験を行った。得られた結果をまとめて表1に示した。耐ブリード性は良好で、耐薬品性試験の結果、1.60質量%減であった。また、トルクは8.4N・mであった。
当該ポリアミド樹脂組成物より得られたプレスシートは、ブリードもなく、耐薬品性も良好なものであった。
加えて、ポリアミド樹脂組成物製造時のトルク値より当該ポリアミド樹脂組成物の成形加工性が良好であることが確認された。
【0064】
[実施例5]
ポリアミド樹脂として、ナイロン11(以下「PA11」という。)を100質量部用いた以外は、実施例2と同様に実施して、プレスシートを得て、耐ブリード試験、耐薬品性試験及び成形加工性試験を行った。得られた結果をまとめて表1に示した。
耐ブリード性は良好で、耐薬品性試験の結果、1.20質量%減であった。また、トルクは4.9N・mであった。
当該ポリアミド樹脂組成物より得られたプレスシートは、ブリードもなく、耐薬品性も良好なものであった。
加えて、ポリアミド樹脂組成物製造時のトルク値より当該ポリアミド樹脂組成物の成形加工性が良好であることが確認された。
【0065】
[比較例1]
成分(B)として、2−エチルヘキサノール(以下「化合物b−3」という。)を使用した以外は、実施例2と同様に実施して、プレスシートを得て、耐ブリード試験、耐薬品性試験及び成形加工性試験を行った。得られた結果をまとめて表1に示した。
耐ブリード性は良好で、耐薬品性試験の結果、1.70質量%減であった。また、トルクは8.3N・mであった。
当該ポリアミド樹脂組成物より得られたプレスシートは、耐薬品性が悪いものであった。
【0066】
[比較例2]
成分(B)として、2−ヘキシルデカノール(以下「化合物b−4」という。)を使用した以外は、実施例2と同様に実施して、プレスシートを得て、耐ブリード試験、耐薬品性試験及び成形加工性試験を行った。得られた結果をまとめて表1に示した。
耐ブリード性は良好で、耐薬品性試験の結果、1.70質量%減であった。また、トルクは8.3N・mであった。
当該ポリアミド樹脂組成物より得られたプレスシートは、耐薬品性が悪いものであった。
【0067】
[比較例3]
成分(B)として、ポリエチレングリコール400(以下「化合物b−5」という。)を使用した以外は、実施例2と同様に実施して、プレスシートを得て、耐ブリード試験、耐薬品性試験及び成形加工性試験を行った。得られた結果をまとめて表1に示した。
耐ブリード性は良好で、耐薬品性試験の結果、1.77質量%減であった。また、トルクは8.5N・mであった。
当該ポリアミド樹脂組成物により得られたプレスシートは、耐薬品性が悪く、耐ブリード試験にてブリードが見られた。
【0068】
[比較例4]
成分(A)として、N−ブチルベンゼンスルホンアミド(以下「化合物a−2」という。)を使用した以外は、実施例2と同様に実施して、プレスシートを得て、耐ブリード試験、耐薬品性試験及び成形加工性試験を行った。得られた結果をまとめて表1に示した。
耐ブリード性は良好で、耐薬品性試験の結果、2.48質量%減であった。また、トルクは7.9N・mであった。
当該ポリアミド樹脂組成物により得られたプレスシートは、耐薬品性が非常に悪く、耐ブリード試験にてブリードが見られた。
【0069】
[比較例5]
予め、成分(A)/成分(B)=83/17の質量比で混合し、本願可塑剤組成物を調製し、該可塑剤組成物を36質量部使用した以外は、実施例1と同様に実施して、プレスシートを得て、耐ブリード試験、耐薬品性試験及び成形加工性試験を行った。得られた結果をまとめて表1に示した。
耐ブリード性は良好で、耐薬品性試験の結果、2.62質量%減であった。また、トルクは6.7N・mであった。
当該ポリアミド樹脂組成物により得られたプレスシートは、耐薬品性が非常に悪かった。
【0070】
[比較例6]
成分(B)として、「化合物b−4」を使用した以外は、実施例5と同様に実施して、プレスシートを得て、耐ブリード試験、耐薬品性試験及び成形加工性試験を行った。得られた結果をまとめて表1に示した。
耐ブリード性は良好で、耐薬品性試験の結果、1.31質量%減であった。また、トルクは5.2N・mであった。
当該ポリアミド樹脂組成物により得られたプレスシートは、耐薬品性が悪かった。
【0071】
【表1】
【0072】
表1の結果より、本発明のポリアミド樹脂用可塑剤を用いたポリアミド樹脂組成物より得られた成形体(実施例1〜5)は、比較例と比べて、耐ブリード性の低下が全くなく、成形加工性が良好であり、更に耐薬品性に優れることが明確に示された。本発明のポリアミド樹脂用可塑剤を用いたポリアミド樹脂組成物は、実使用に好適な耐ブリード性、耐薬品性及び成形加工性をすべて満たしたポリアミド樹脂組成物である。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の可塑剤組成物を用いたポリアミド樹脂組成物及びその成形体は、過酷な高温環境での使用においても耐ブリード性に優れており、さらには、耐薬品性及び成形加工性が非常に良好である。例えば、特に高耐久性が要求される自動車用部品や産業用ホース・チューブ等、様々な用途において非常に有用である。また、上記以外の用途においても、高温下で安定的に使用できる材料として幅広く使用することができる。