特開2021-146360(P2021-146360A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2021146360-アーク溶接装置 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-146360(P2021-146360A)
(43)【公開日】2021年9月27日
(54)【発明の名称】アーク溶接装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/095 20060101AFI20210830BHJP
【FI】
   B23K9/095 501A
   B23K9/095 515Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2020-47869(P2020-47869)
(22)【出願日】2020年3月18日
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(72)【発明者】
【氏名】佐野 あい
(57)【要約】      (修正有)
【課題】半自動溶接において、トーチ操作状態を所望状態に維持するように溶接作業者にガイドすることができるアーク溶接装置を提供する。
【解決手段】溶接電源PSと、ワイヤ送給機WMと、溶接トーチ4と、を備えたアーク溶接装置において、溶接電流Iwの設定値Irを出力する溶接電流設定部IRと、溶接電流Iwの平均値Iadを検出する平均溶接電流検出部IADと、溶接電流の設定値Ir及び溶接電流の平均値Iadを入力として、溶接電流の設定値Irから溶接電流の平均値Iadを減算して電流誤差値Eiを算出する電流誤差値算出部EIと、溶接トーチ4に装着されており、電流誤差値Eiに基づいて報知する報知部DPと、を備えており、報知部DPは、表示灯を含んでおり、表示灯は電流誤差値Eiが所定範囲内であるときと所定範囲外であるときとで点灯状態を変化させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接電流及び溶接電圧を出力する溶接電源と、
溶接ワイヤを送給するワイヤ送給機と、
前記溶接電流及び前記溶接電圧を前記溶接ワイヤに供給して前記溶接ワイヤと母材との間でアークを発生させる溶接トーチと、
を備えたアーク溶接装置において、
前記溶接電流の設定値を出力する溶接電流設定部と、
前記溶接電流の平均値を検出する平均溶接電流検出部と、
前記溶接電流の設定値及び前記溶接電流の平均値を入力として、前記溶接電流の設定値から前記溶接電流の平均値を減算して電流誤差値を算出する電流誤差値算出部と、
前記溶接トーチに装着されており、前記電流誤差値に基づいて報知する報知部と、
を備えており、
前記報知部は、表示灯を含んでおり、前記表示灯は前記電流誤差値が所定範囲内であるときと前記所定範囲外であるときとで点灯状態を変化させる、
ことを特徴とするアーク溶接装置。
【請求項2】
前記表示灯は前記電流誤差値が前記所定範囲内にあるときは常時点灯し、前記所定範囲外にあるときは点滅する、
ことを特徴とする請求項1に記載のアーク溶接装置。
【請求項3】
前記表示灯は、前記電流誤差値が前記所定範囲外であり、かつ、
符号がプラスのときはマイナスのときよりも前記点滅の周期を短くする、
ことを特徴とする請求項2に記載のアーク溶接装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半自動溶接において、トーチ操作状態が所望状態になるようにガイドすることができるアーク溶接装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
溶接作業者が溶接トーチを手動で操作して消耗電極式アーク溶接を行う半自動溶接においては、給電チップ・母材間距離、前進角等の溶接姿勢、溶接速度等のトーチ操作状態を所望状態に維持することが溶接品質を良好にするためには重要である。熟練作業者は、高い技量によってこれらのトーチ操作状態を安定して所望状態に維持することができる。しかし、未熟練作業者は、溶接中のトーチ操作状態を所望状態に維持することが困難であり、溶接品質が悪くなるという問題がある。
【0003】
特許文献1の発明では、溶接電流設定値と平均溶接電流値との誤差に基づいて溶接トーチを上下方向に移動させて給電チップ・母材間距離を所定値に制御するアーク溶接装置を開示している。この発明は、溶接トーチがロボット、自動走行台車等に装着されて溶接する自動機溶接の場合であり、半自動溶接には適用することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5450150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明では、半自動溶接において、トーチ操作状態を所望状態に維持するように溶接作業者にガイドすることができるアーク溶接装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、請求項1の発明は、
溶接電流及び溶接電圧を出力する溶接電源と、
溶接ワイヤを送給するワイヤ送給機と、
前記溶接電流及び前記溶接電圧を前記溶接ワイヤに供給して前記溶接ワイヤと母材との間でアークを発生させる溶接トーチと、
を備えたアーク溶接装置において、
前記溶接電流の設定値を出力する溶接電流設定部と、
前記溶接電流の平均値を検出する平均溶接電流検出部と、
前記溶接電流の設定値及び前記溶接電流の平均値を入力として、前記溶接電流の設定値から前記溶接電流の平均値を減算して電流誤差値を算出する電流誤差値算出部と、
前記溶接トーチに装着されており、前記電流誤差値に基づいて報知する報知部と、
を備えており、
前記報知部は、表示灯を含んでおり、前記表示灯は前記電流誤差値が所定範囲内であるときと前記所定範囲外であるときとで点灯状態を変化させる、
ことを特徴とするアーク溶接装置である。
【0007】
請求項2の発明は、
前記表示灯は前記電流誤差値が前記所定範囲内にあるときは常時点灯し、前記所定範囲外にあるときは点滅する、
ことを特徴とする請求項1に記載のアーク溶接装置である。
【0008】
請求項3の発明は、
前記表示灯は、前記電流誤差値が前記所定範囲外であり、かつ、
符号がプラスのときはマイナスのときよりも前記点滅の周期を短くする、
ことを特徴とする請求項2に記載のアーク溶接装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、半自動溶接において、トーチ操作状態を所望状態に維持するように溶接作業者にガイドすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態1に係るアーク溶接装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0012】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1に係るアーク溶接装置のブロック図である。以下、同図を参照して各ブロックについて説明する。
【0013】
溶接電源PSは、後述する溶接電流設定信号Irを入力として、溶接電流Iw及び溶接電圧Vwを出力し、溶接電流設定信号Irに対応した送給速度設定信号Frを出力する。給電チップ・母材間距離、溶接姿勢及び溶接速度のトーチ操作状態が基準状態にあるときに、平均溶接電流値が溶接電流設定信号Irの値と等しくなるように送給速度設定信号Frは予め定められている(いわゆる一元制御)。
【0014】
ワイヤ送給機WMは、送給モータを備えており、上記の送給速度設定信号Frを入力として、溶接ワイヤ1を溶接トーチ4内を通して母材2に送給速度設定信号Frの値で送給する。
【0015】
溶接トーチ4は、溶接ワイヤ1を母材2に導くと共に、給電チップ(図示は省略)を介して溶接ワイヤ1に上記の溶接電流Iw及び溶接電圧Vwを供給する。
【0016】
溶接ワイヤ1と母材2との間にはアーク3が発生する。アーク3中を溶接電流Iwが通電し、上記の給電チップと母材2との間に溶接電圧Vwが印加される。
【0017】
溶接電流設定回路IRは、予め定めた溶接電流設定信号Irを出力する。
【0018】
平均溶接電流検出回路IADは、予め定めた算出周期ごとに上記の溶接電流Iwの平均値を検出して平均溶接電流検出信号Iadを出力する。
【0019】
電流誤差算出回路EIは、上記の溶接電流設定信号Ir及び上記の平均溶接電流検出信号Iadを入力として、上記の算出周期ごとに溶接電流設定信号Irの値から平均溶接電流検出信号Iadの値を減算して電流誤差値信号Eiを算出する。上記の算出周期は、例えば0.5〜2秒程度に設定される。
【0020】
報知回路DPは、表示灯を含んでおり、上記の電流誤差値信号Eiを入力として、表示灯は電流誤差値信号Eiの値が所定範囲内であるときと所定範囲外であるときとで以下のように点灯状態を変化させる。報知回路DPは、溶接トーチ4に装着される。
1)表示灯は、電流誤差値信号Eiの値が所定範囲内にあるときは常時点灯し、所定範囲外にあるときは点滅する。
2)上記の1)に加えて、表示灯は、電流誤差値信号Eiの値が所定範囲外であり、かつ、符号がプラスのときはマイナスのときよりも点滅の周期を短くする。
【0021】
上記の溶接電流設定回路IR、上記の平均溶接電流検出回路IAD及び上記の電流誤差算出回路EIは、溶接トーチ4に装着しても良いし、溶接電源PSに内蔵しても良い。
【0022】
上述した実施の形態1に係るアーク溶接装置によれば、溶接電流の設定値及び溶接電流の平均値を入力として、溶接電流の設定値から溶接電流の平均値を減算して電流誤差値を算出する電流誤差値算出部と、溶接トーチに装着されており、電流誤差値に基づいて報知する報知部と、を備えており、報知部は、表示灯を含んでおり、表示灯は電流誤差値が所定範囲内であるときと所定範囲外であるときとで点灯状態を変化させる。表示灯は、電流誤差値が前記所定範囲内にあるときは常時点灯し、所定範囲外にあるときは点滅するようにしても良い。給電チップ・母材間距離、溶接姿勢及び溶接速度のトーチ操作状態が所望状態にあるときは電流誤差値は所定範囲内となり、所望状態から外れているときは所定範囲外となる。溶接作業者は、溶接中に表示灯の点灯状態を視認して、トーチ操作状態が所望状態にあるかないかを判断することができる。そして、溶接作業者は、トーチ操作状態が所望状態にないときは所望状態になるようにトーチ操作状態を修正させることができる。例えば、溶接電流の設定値を150Aとし、所定範囲を±10Aとする。溶接中の平均溶接電流値が140〜160Aにあるときはトーチ操作状態は所望状態にあり、表示灯は常時点灯する。平均溶接電流値が140A未満又は160Aを超過しているときは、トーチ操作状態は所望状態から外れており、表示灯は点滅状態となる。溶接作業者は、表示灯の点灯状態でトーチ操作状態を判断することができる。したがって、本実施の形態のアーク溶接装置を使用すれば、半自動溶接において、トーチ操作状態を所望状態に維持するように溶接作業者にガイドすることができる。この結果、未熟練作業者であっても、本実施の形態のアーク溶接装置を使用すれば、容易に良好な溶接を行うことができる。
【0023】
さらに、本実施の形態によれば、表示灯は、電流誤差値が所定範囲外であり、かつ、符号がプラスのときはマイナスのときよりも点滅の周期を短くするようにしても良い。このようにすれば、電流誤差値が所定範囲よりも上側に外れているのか下側に外れているのかを判別することができる。この結果、溶接作業者がトーチ操作状態をより迅速にかつ確実に所望状態に修正することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 溶接ワイヤ
2 母材
3 アーク
4 溶接トーチ
DP 報知回路
EI 電流誤差算出回路
Ei 電流誤差値信号
Fr 送給速度設定信号
IAD 平均溶接電流検出回路
Iad 平均溶接電流検出信号
IR 溶接電流設定回路
Ir 溶接電流設定信号
Iw 溶接電流
PS 溶接電源
Vw 溶接電圧
WM ワイヤ送給機
図1