【解決手段】補助押さえ装置200は、第2リンク部材220が「第3種てこ(逆てこ)」として形成されるので、第2リンク部材220の運動を大きくして、プラグドア20の移動量を確保できる。よって、第2リンク部材220によりプラグドア20を確実に押圧することができる。また、第2シリンダ装置210を側構体10に配置できる。よって、第2シリンダ装置210に作用する反力を受けるための骨を車内側に設けることを不要とできる。
車体側壁に開口される乗降口を開閉するドアと、前記乗降口を開放する位置および閉鎖する位置の間で前記ドアを移動可能に支持する支持機構とを備えた鉄道車両に使用される押さえ装置において、
車体長手方向に沿って第1ロッドが伸縮される第1シリンダ装置と、前記第1ロッドに連結され、前記第1ロッドの伸長に伴って回転されることで、前記ドアを車体外側へ向けて押圧する第1リンク部材と、を有する第1押さえ装置と、
前記車体長手方向に沿って第2ロッドが伸縮される第2シリンダ装置と、前記第2ロッドに連結され、前記第2ロッドの伸長に伴って回転されることで、前記ドアを前記車体外側へ向けて押圧する第2リンク部材と、を有する第2押さえ装置と、を備え、
前記第1押さえ装置は、前記ドアが前記車体外側へ最も移動された状態において、前記車体外側へ向けた力を前記ドアに付与可能とされ、
前記第1リンク部材は、回転可能に軸支される第1軸支部と前記第1ロッドが連結される第1連結部との間の寸法が、前記第1軸支部と前記ドアに当接される第1当接部との間の寸法よりも大きくされると共に、前記第1軸支部と前記第1連結部との間に前記第1当接部が位置し、
前記第2リンク部材は、回転可能に軸支される第2軸支部と前記第2ロッドが連結される第2連結部との間の寸法が、前記第2軸支部と前記ドアに当接される第2当接部との間の寸法よりも小さくされると共に、前記第2軸支部と前記第2当接部との間に前記第2連結部が位置し、
前記第1軸支部と前記第1当接部との間の寸法は、前記第2軸支部と前記第2当接部との間の寸法よりも小さくされることを特徴とする押さえ装置。
前記第2押さえ装置は、前記ドアが前記車体外側へ最も移動された状態において、前記車体外側へ向けた力を前記ドアに付与可能とされることを特徴とする請求項1記載の押さえ装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。
図1(a)は、本発明の一実施形態における鉄道車両1のプラグドア20の内面図であり、
図1(b)は、
図1(a)のIb−Ib線におけるプラグドア20の断面図である。なお、
図1(a)は、気密位置に配置されたプラグドア20を車体内側(車内側)から正面視した図に対応する。
【0019】
図1に示すように、鉄道車両1は、側構体10に開口される乗降口11(
図2及び
図3参照)を開閉するプラグドア20と、そのプラグドア20を開位置から閉位置を経て気密位置までの区間において移動可能に支持するプラグ機構30と、プラグドア20を車体外側へ向けて押圧する本押さえ装置100及び補助押さえ装置200とを備える。
【0020】
プラグドア20は、車体長手方向(
図1(a)左右方向)の寸法よりも車体上下方向(
図1(a)上下方向)の寸法が大きい正面視略矩形に形成され、そのプラグドア20の外面(車体外側の面)の周縁部には、側構体10のドア枠12に密着される気密パッキン21が配設される(
図2及び
図3参照)。
【0021】
本押さえ装置100及び補助押さえ装置200は、プラグドア20を車体長手方向に挟んだ両側において、車体上下方向に沿って所定間隔を隔てつつ複数個が並設される。本実施形態では、プラグドア20を挟んだ一側(
図1(a)左側)の列と他側(
図1(a)右側)の列とにおいて、同じ高さ位置(車体上下方向位置)に同じ種類の押さえ装置が配置される。
【0022】
なお、開位置は、側構体10の戸袋(図示せず)内にプラグドア20が収容される位置(
図1(a)に二点鎖線で示す位置)であり、閉位置は、戸袋から引き出されたプラグドア20が乗降口11を閉じると共に気密パッキン21がドア枠12との間に所定間隔を隔てる位置であり、気密位置は、閉位置にあるプラグドア20が本押さえ装置100及び補助押さえ装置200によって車体外側(
図1(a)紙面奥側)へ押圧され、気密パッキン21がドア枠12に密着された位置である。気密位置では、プラグドア20の外面が車体外面に一致される。
【0023】
乗降口11を開く場合には、本押さえ装置100及び補助押さえ装置200の第1リンク部材120及び第2リンク部材220(
図2及び
図3参照)を車体内側に回転させることで、プラグドア20を気密位置から解除し、プラグドア20をプラグ機構30により閉位置から開位置へ移動させる(戸袋に収容する)。
【0024】
一方、乗降口11を閉じる動作は、プラグドア20をプラグ機構30により開位置(戸袋内)から閉位置に引き出した後、まず、補助押さえ装置200の第2リンク部材220を車体外側へ向けて回転させることで、閉位置にあるプラグドアを車体外側へ向けて移動させ、次いで、本押さえ装置100の第1リンク部材120を車体外側へ向けて回転させることで、プラグドア20を気密位置に配置する。
【0025】
次いで、
図2を参照して、本押さえ装置100について説明する。
図2(a)は、第1リンク部材120が弛み位置に配置された状態における本押さえ装置100の模式図であり、
図2(b)は、第1リンク部材120が押さえ位置に配置された状態における本押さえ装置100の模式図である。
【0026】
なお、
図2(a)及び
図2(b)は、
図1(a)のII−II線における断面に対応する。但し、図面を簡素化して、理解を容易とするために、断面におけるハッチングの付与、及び、後述する変位部材230及びセンサ装置240等の図示が省略される。
【0027】
図2に示すように、本押さえ装置100は、車体長手方向(
図2(a)及び
図2(b)左右方向)に沿って第1ピストンロッド111が伸縮される第1シリンダ装置110と、第1ピストンロッド111の先端に一端が回転可能に連結される第1アーム112と、その第1アーム112の他端に回転可能に連結され、第1ピストンロッド111の伸長に伴って回転されることで、プラグドア20を車体外側へ向けて押圧する第1リンク部材120とを備える。
【0028】
本実施形態では、第1シリンダ装置110が圧縮空気を利用するエアシリンダとして構成される。但し、第1シリンダ装置110が油圧を利用する油圧シリンダとして構成されても良い。
【0029】
第1リンク部材120は、支持壁13に回転可能に軸支される第1支持軸121と、第1アーム112の他端が回転可能に連結される第1連結軸122と、円柱状の第1ローラ部材124を回転可能に軸支する第1ローラ軸123とを備え、第1支持軸121から車体内側へ延び、第1ローラ軸123側がプラグドア20の内面(車体内側の面)側へ向けて屈曲する形状に形成される。
【0030】
本押さえ装置100は、第1ピストンロッド111が最も縮退された状態では、
図2(a)に示すように、第1リンク部材120が弛み位置に配置される。第1ピストンロッド111が最も縮退された状態から伸長されると、第1アーム112から作用を受けて、第1リンク部材120が第1支持軸121を回転中心として回転され、第1ローラ部材124の外周面がプラグドア20の内面に当接される。
【0031】
本押さえ装置100は、第1ピストンロッド111が最も伸長された状態では、
図2(b)に示すように、第1リンク部材120が押さえ位置に配置され、プラグドア20を車体外側へ最も移動させる(即ち、プラグドア20の外面が車体外面に一致される)。
【0032】
本押さえ装置100は、
図2(b)に示すように、第1リンク部材120が押さえ位置に配置された状態において、第1シリンダ装置110の駆動力を第1リンク部材120に付与して、車体外方へ向けた力(車体内外の気圧差によりプラグドア20が気密位置から押し戻されることに耐える力)をプラグドア20に付与可能とされる。
【0033】
よって、第1リンク部材120は、第1支持軸121(支点)を中心とし第1連結軸122(力点)を通過する仮想円の半径が、第1支持軸121(支点)を中心とし、第1ローラ部材124の外周面とプラグドア20の内面との接触位置(作用点)を通過する仮想円の半径よりも大きくなる「第2種てこ(支点と力点との間に作用点が位置する形態のてこ)」として形成される。
【0034】
次いで、
図3を参照して、補助押さえ装置200について説明する。
図3(a)は、第2リンク部材220が弛み位置に配置された状態における補助押さえ装置200の模式図であり、
図3(b)は、第2リンク部材220が押さえ位置に配置された状態における補助押さえ装置200の模式図である。
【0035】
なお、
図3(a)及び
図3(b)は、
図1(a)のIII−III線における断面に対応する。但し、図面を簡素化して、理解を容易とするために、断面におけるハッチングの付与、及び、後述する変位部材230及びセンサ装置240等の図示が省略される。
【0036】
図3に示すように、補助押さえ装置200は、車体長手方向(
図3(a)及び
図3(b)左右方向)に沿って第2ピストンロッド211が伸縮される第2シリンダ装置210と、第2ピストンロッド211の先端に一端が回転可能に連結される第2アーム212と、その第2アーム212の他端に回転可能に連結され、第2ピストンロッド211の伸長に伴って回転されることで、プラグドア20を車体外側へ向けて押圧する第2リンク部材220とを備える。
【0037】
本実施形態では、第2シリンダ装置210が第1シリンダ装置110と同じ構成(即ち、ストロークや出力が同一)のシリンダ装置から形成される。よって、部品の共通化により、製品コストを低減できる。
【0038】
第2リンク部材220は、支持壁13に回転可能に軸支される第2支持軸221と、第2アーム212の他端が回転可能に連結される第2連結軸222と、円柱状の第2ローラ部材224を回転可能に軸支する第2ローラ軸223とを備え、第2支持軸221から車体内側へ延び、各軸221〜223の軸方向視において略S字状に屈曲する形状に形成される。
【0039】
詳細には、第2リンク部材220は、第2支持軸221と第2連結軸222との間を形成する第2軸側部分225と、第2連結軸222と第2ローラ軸223との間を形成する第2当接側部分226とを備え、第2連結軸222は、第2支持軸221と第2ローラ軸223とを結ぶ仮想線L1よりも第2シリンダ装置210側(
図3(a)及び
図3(b)左側)に位置する。第2軸側部分225は、第2シリンダ装置210側に中心を有する円弧状に湾曲した形状とされ、第2当接側部分226は、プラグドア20側に中心を有する円弧状に湾曲した形状とされる。
【0040】
補助押さえ装置200は、第2ピストンロッド211が最も縮退された状態では、
図3(a)に示すように、第2リンク部材220が弛み位置に配置される。第2ピストンロッド211が最も縮退された状態から伸長されると、第2アーム212から作用を受けて、第2リンク部材220が第2支持軸221を回転中心として回転され、第2ローラ部材224の外周面がプラグドア20の内面に当接される。
【0041】
補助押さえ装置200は、第2ピストンロッド211が最も伸長された状態では、
図3(b)に示すように、第2リンク部材220が押さえ位置に配置され、プラグドア20を車体外側へ最も移動させる(即ち、プラグドア20の外面が車体外面に一致される)。
【0042】
よって、第2リンク部材220は、第2支持軸221(支点)を中心とし第2連結軸222(力点)を通過する仮想円の半径が、第2支持軸221(支点)を中心とし、第2ローラ部材224の外周面とプラグドア20の内面との接触位置(作用点)を通過する仮想円の半径よりも小さくなる「第3種てこ(支点と作用点との間に力点が位置する形態のてこ)」として形成される。
【0043】
上述したように、本実施形態では、第1シリンダ装置110と第2シリンダ装置210とが同じ構成(出力が同一)とされるので、補助押さえ装置200(第2リンク部材220)がプラグドア20を車体外方へ押圧する力は、本押さえ装置100(第1リンク部材120)がプラグドア20を車体外方へ押圧する力よりも小さくされる。
【0044】
補助押さえ装置200は、第2リンク部材220が「第3種てこ」として形成されるので、第2ピストンロッド211の伸長に対する第2ローラ軸223(第2ローラ部材224)の運動を大きくして、プラグドア20を確実に押圧することができる。
【0045】
また、補助押さえ装置200は、車体長手方向に沿って第2ピストンロッド211が伸縮される向きで第2シリンダ装置210が配置されるので、第2シリンダ装置210をプラグドア20に隣接配置する(即ち、側構体10に配置する)ことができる。
【0046】
その結果、プラグドア20の閉位置から気密位置までの距離が大きい場合でも、プラグドア20を第2リンク部材220により確実に押圧することができると共に、第2シリンダ装置210に作用する反力を受けるための骨を車内側に設けることを不要とできる。
【0047】
補助押さえ装置200は、
図3(b)に示すように、第2リンク部材220が押さえ位置に配置された状態において、第2シリンダ装置210の駆動力を第2リンク部材220に付与して、車体外方へ向けた力(車体内外の気圧差によりプラグドア20が気密位置から押し戻されることに耐える力)をプラグドア20に付与可能とされる。
【0048】
よって、プラグドア20が気密位置から車体内側へ押し戻されないようにする力を、本押さえ装置100だけでなく、補助押さえ装置200にも分担させることができる。よって、その分、本押さえ装置100の配置数を抑制することができる。
【0049】
ここで、回転式(リンク式)の押さえ装置では、プラグドア20の閉位置から気密位置までの距離が大きい場合、プラグドア20の外縁(ドアリーフ)と第2リンク部材220との干渉を避けるために、第2支持軸221を車体内側(
図3(a)及び
図3(b)上側)に配置する必要がある。第2支持軸221が車体内側に配置されるほど、弛み位置(
図3(a)参照)における第2リンク部材220の車体内側への張り出し量が大きくなるため、車内空間の減少を招く。
【0050】
これに対し、本実施形態では、第2リンク部材220の第2当接側部分226の湾曲を利用して、プラグドア20の外縁(ドアリーフ)と第2リンク部材220との干渉を抑制できる。これにより、第2支持軸221をより車体外側(
図3(a)及び
図3(b)下側)に配置できるので、その分、弛み位置(
図3(a)参照)における第2リンク部材220の車体内側への張り出し量を小さくして、車内空間を確保できる。
【0051】
なお、「第3種てこ(第2リンク部材220)」では、支点(第2支持軸221)と作用点(第2ローラ部材224とプラグドア20との当接位置)との間に力点(第2連結軸222)が配置されるので、支点から作用点までの距離がリンク部材の全長となるところ、「第1種てこ(力点と作用点との間に支点が配置される形態のてこ)」及び上述した「第2種てこ」では、支点と作用点の外側に力点が配置されるため、支点と作用点との間の距離に、支点または作用点と力点との間の距離を加えた寸法がリンク部材の全長となる。
【0052】
そのため、同じストローク(プラグドア20の閉位置から気密位置までの距離)を確保する場合、「第1種てこ」又は「第2種てこ」では、「第3種てこ」と比較して、全長が大きくなる分、弛み位置におけるリンク部材の車体内側への張り出し量が大きくなる。その結果、車内空間が狭くなる。
【0053】
また、プラグドア20の閉位置から気密位置までの距離が大きい場合、第2リンク部材220の全長(第2支持軸221から第2ローラ軸223までの距離)が大きくなるため、プラグドア20を車体外側へ押圧する場合、或いは、車体内外の気圧差によりプラグドア20を気密位置から押し戻す力を受けた場合に、第2リンク部材220が変形しやすくなる。剛性を高めるために、横断面を大きくしたのでは、プラグドア20の外縁(ドアリーフ)との干渉が生じやすくなると共に、第2リンク部材220の重量の増加を招く。
【0054】
これに対し、本実施形態では、上述したように、第2軸側部分225が、第2シリンダ装置210側に中心を有する円弧状に湾曲した形状とされ、第2当接側部分226が、プラグドア20側に中心を有する円弧状に湾曲した形状とされるので、プラグドア20を車体外側へ押圧する場合、或いは、車体内外の気圧差によりプラグドア20を押し戻す力を受けた場合に、第2リンク部材220が変形することを抑制できる。
【0055】
図1に戻って、本押さえ装置100と補助押さえ装置200との配置について説明する。上述したように、本押さえ装置100及び補助押さえ装置200は、プラグドア20を車体長手方向に挟んだ両側において、車体上下方向(
図1(a)上下方向)に沿って所定間隔を隔てつつ複数個が並設される。
【0056】
ここで、プラグドア20は、完全な剛体ではないため、外力を受けると変形される。特に、車体上下方向が長手方向となる長尺形状に形成されるため、車体内外に大きな気圧差が発生すると、車体上下方向の上端側および下端側が車体内側へ押し戻されやすい。
【0057】
本実施形態では、車体上下方向に沿って並設される押さえ装置の内の最上方および最下方に本押さえ装置100が配置され、それら上下(最上方および最下方)の本押さえ装置100の間に2個の補助押さえ装置200が配置される。
【0058】
よって、プラグドア20を車体外側へ向けて押圧する力を車体上下方向における上方側または下方側ほど大きくすることができるので、プラグドア20の変形の抑制を、より少ない個数の押さえ装置により、効果的に行うことができる。
【0059】
補助押さえ装置200どうしの間の車体上下方向における第1の間隔は、本押さえ装置100と補助押さえ装置200との間の車体上下方向における第2の間隔、及び、本押さえ装置100とプラグドア20の車体上下方向における上端または下端との間の車体上下方向における第3の間隔よりも大きく(広く)される。
【0060】
これにより、補助押さえ装置200(第2リンク部材220)がプラグドア20を車体外方へ押圧する位置が、プラグドア20の車体上下方向における中央側に偏り、閉位置から気密位置まで気密パッキン21を圧縮させつつ補助押さえ装置200(第2リンク部材220)により押圧されるプラグドア20が、第2リンク部材220により押圧される位置で屈曲されて側面視くの字状に変形することを抑制できる。
【0061】
プラグドア20には、
図1(b)に示すように、横断面視において、車体内側に中心を有する円弧状に湾曲した部分が、車体上下方向の上方側および下方側にそれぞれ形成され、これら湾曲した部分どうしの間が直線状の部分として形成される。これにより、プラグドア20の横断面形状は、全体として車体外側へ向けて突出する形状に形成される。
【0062】
ここで、車体上下方向の下方側における湾曲した部分は、車体上下方向の上方側における湾曲した部分よりも広い範囲にわたって形成される。
【0063】
そのため、プラグドア20の車体上下方向における上端側の所定範囲(プラグドア20の上端から上側の補助押さえ装置200までの範囲)は、直線状の横断面形状とされる一方、プラグドア20の車体上下方向における下端側の所定範囲(プラグドア20の下端から下側の補助押さえ装置200までの範囲)は、湾曲した横断面形状とされ、上端側の所定範囲が下端側の所定範囲よりも比較的剛性が低くされる。
【0064】
そこで、本実施形態では、プラグドア20の車体上下方向における上端と上方側の本押さえ装置100との間の距離が、プラグドア20の車体上下方向における下端と下方側の本押さえ装置100との間の距離よりも小さくされる。これにより、本押さえ装置100の配置を適切として、その本押さえ装置100(第1シリンダ装置110)に要求される出力の抑制と、気圧差により車体上下方向における上端側および下端側が気密位置から車体内側へ押し戻されることの抑制との両立を図ることができる。
【0065】
次いで、
図4から
図6を参照して、補助押さえ装置200の弛み検知および押さえ検知を検知するための検知機構について説明する。なお、本押さえ装置100の検知機構は、弛み検知のみを行う。本押さえ装置100の検知機構は公知のものと同一の構成であるため、その説明は省略する。
【0066】
図4(a)は、第2リンク部材220が弛み位置に配置された状態における補助押さえ装置200の部分断面模式図であり、
図4(b)は、第2リンク部材220が押さえ位置に配置された状態における補助押さえ装置200の部分断面模式図である。
【0067】
図5(a)は、
図4(a)に示す状態から第2ピストンロッド211が伸長時当接位置まで伸長された状態における補助押さえ装置200の部分断面模式図であり、
図5(b)は、
図4(b)に示す状態から第2ピストンロッド211が縮退時当接位置まで縮退された状態における補助押さえ装置200の部分断面模式図である。
【0068】
図6(a)は、
図4(a)の矢印VIa方向視における検知機構の模式図であり、
図6(b)は、
図6(a)のVIb−VIb線における検知機構の断面模式図であり、
図6(c)は、
図4(b)の矢印VIc方向視における検知機構の模式図であり、
図6(d)は、
図6(c)のVId−VId線における検知機構の断面模式図である。
【0069】
図4から
図6に示すように、第2シリンダ装置210は、第2ピストンロッド211のピストンが摺動可能に配置される円筒状の第2チューブ213と、その第2チューブ213の後端を封止する第2後壁部214と、第2チューブ213の前端を封止すると共に第2ピストンロッド211のロッドが挿通される第2前壁部215と、コイルばねとして形成され、第2前壁部215及びピストンの間に配置される第2ばね部材216と、第2チューブ213の外周面にスライド変位可能に配置される変位部材230、その変位部材230を検知するセンサ装置240と、変位部材230のスライド変位を第2ピストンロッド211の伸縮方向と平行な方向に案内(規制)する案内部材250とを備え、変位部材230、センサ装置240及び案内部材250により検知機構が構成される。
【0070】
変位部材230は、スライド体231と、そのスライド体231に一端側が挿通されると共に第2前壁部215に挿通された他端側が第2シリンダ装置210(第2チューブ213)内に突出される突出棒232とを備え、第2ピストンロッド211から作用を受けることで遮光位置(第1位置または第2位置の一方)と受光位置(第1位置または第2位置の他方)との間でスライド変位される。
なお、突出棒232は、スライド体231及び第2前壁部215に対して、第2ピストンロッド211の伸縮方向に平行な方向に沿って相対変位(スライド変位)可能とされる。また、突出棒232には、一端側および他端側よりも大径に形成される大径部が一端側および他端側の間に形成され、大径部がスライド体231又は第2前壁部215に当接されることで、相対変位(スライド変位)が規制可能とされる。
【0071】
このように、変位部材230は、第2ピストンロッド211の伸縮方向に平行な方向にスライド変位されるので、例えば、変位部材230が所定の回転軸を中心に回転される構造と比較して、変位部材230の変位に必要なスペースを抑制して、第2チューブ213の外周面側のスペースを有効に活用できると共に、回転軸を不要として、構造を簡素化できる。
【0072】
なお、第2ピストンロッド211には、伸長時に変位部材230の一側(突出棒232の他端側の端部(突出端))に当接されるピストン側当接部211aがピストンに形成されると共に、ピストン側当接部211aと所定間隔を隔てて対向され、縮退時に変位部材230の一側とは反対側となる他側(スライド体231の側面)に当接されるロッド側当接部211bがロッドに形成される。
【0073】
スライド体231の底面(第2チューブ213及び第2前壁部215の外周面に対向する面)には、第2ピストンロッド211の伸縮方向に沿って所定間隔を隔てた2箇所に第1凹部231a及び第2凹部231bが凹設され(
図6(b)及び
図6(d)参照)、第2前壁部215の外周面に設けられたボールプランジャのボールBが第1凹部231a又は第2凹部231bに受け入れ可能とされる。
【0074】
なお、第1凹部231aにボールBが受け入れられた状態では、変位部材230が遮光位置に位置決め(維持)され、第2凹部231bにボールBが受け入れられた状態では、変位部材230が受光位置に位置決め(維持)される。
【0075】
センサ装置240は、略コ字状に形成されるベース体241と、そのベース体241の所定間隔を隔てて対向する対向面の一方に配置される発光部242と、対向面の他方に配置され、発光部242から発光された光を受光する受光部243とを備えた光学式センサである。
【0076】
センサ装置240は、変位部材230が遮光位置に配置された状態では、発光部242から発光された光がスライド体231に遮光され、受光部243による受光が不能とされる。一方、センサ装置240は、変位部材230が受光位置に配置された状態では、発光部242から発光された光の受光部243による受光が可能とされる。
【0077】
なお、検知機構は、変位部材230及びセンサ装置240を覆う遮光板(図示せず)を備え、発光部242以外の外部からの光が受光部243に受光されることが抑制可能とされる。
【0078】
次いで、検知機構の動作(弛み検知および押さえ検知)について説明する。
【0079】
第2ピストンロッド211が最も縮退された状態では、
図4(a)に示すように、第2リンク部材220が弛み位置に配置されると共に、変位部材230が遮光位置に配置される。この状態から第2ピストンロッド211が伸長され、第2ピストンロッド211が伸長時当接位置に配置(到達)されると、
図5(a)に示すように、遮光位置に配置されている変位部材230の一側(突出棒232の他端側の端部(突出端))にピストン側当接部211aが当接される。
【0080】
よって、第2ピストンロッド211が伸長時当接位置から更に伸長されると、ピストン側当接部211aが変位部材230を押圧することで、伸長される第2ピストンロッド211と共に変位部材230が同方向(伸長方向)へスライド変位され、第2ピストンロッド211が最も伸長されると、
図4(b)に示すように、第2リンク部材220が押さえ位置に配置されると共に、変位部材230が受光位置に配置される。
【0081】
即ち、第2ピストンロッド211が最も縮退された状態から伸長時当接位置に配置(到達)されるまでの間は、変位部材230が遮光位置に配置された状態(発光部242から発光された光が受光部243により受光されない状態)が維持され、第2ピストンロッド211が最も伸長される直前において、変位部材230がスライド変位され、変位部材230が受光位置に配置される(発光部242から発光された光が受光部243により受光される状態に切り替わる)。これにより、第2リンク部材220が押さえ位置に配置されたことを検知(押さえ検知)できる。
【0082】
一方、第2ピストンロッド211が最も伸長された状態では、
図4(b)に示すように、第2リンク部材220が押さえ位置に配置されると共に、変位部材230が受光位置に配置される。この状態から第2ピストンロッド211が縮退され、第2ピストンロッド211が縮退時当接位置に配置(到達)されると、
図5(b)に示すように、受光位置に配置されている変位部材230の他側(スライド体231の側面)にロッド側当接部211bが当接される。
【0083】
よって、第2ピストンロッド211が縮退時当接位置から更に縮退されると、ロッド側当接部211bが変位部材230を押圧することで、縮退される第2ピストンロッド211と共に変位部材230が同方向(縮退方向)へスライド変位され、第2ピストンロッド211が最も縮退されると、
図4(a)に示すように、第2リンク部材220が弛み位置に配置されると共に、変位部材230が遮光位置に配置される。
【0084】
即ち、第2ピストンロッド211が最も伸長された状態から縮退時当接位置に配置(到達)されるまでの間は、変位部材230が受光位置に配置された状態(発光部242から発光された光が受光部243により受光される状態)が維持され、第2ピストンロッド211が最も縮退される直前において、変位部材230がスライド変位され、変位部材230が遮光位置に配置される(発光部242から発光された光が受光部243により受光さえる状態に切り替わる)。これにより、第2リンク部材220が弛み位置に配置されたことを検知(弛み検知)できる。
ここで、
図4(b)に示すように、最も伸長された状態(
図4(b)参照)にある第2ピストンロッド211が第2ばね部材216の弾性回復力を受けて縮退時当接位置(
図5(b)参照)へ縮退される際には、第2ばね部材216が配設される側の空間(第2前壁部215及びピストンとの間の空間、以下「負圧空間」と称す)が負圧となり、その負圧空間へ突出棒232が吸い込まれる虞がある。
本実施形態では、上述したように、突出棒232がスライド体231に対して相対変位(スライド変位)可能とされるので、突出棒232が負圧空間に吸い込まれたとしても、スライド体231は元の位置(受光位置)に維持しておくことができる。即ち、第2ピストンロッド211が最も伸長された状態(
図4(b)参照)から縮退時当接位置(
図5(b)参照)に到達(配置)されるまでの間に変位部材230(スライド体231)がスライド変位することを抑制できる。
また、このように、突出棒232がスライド体231に対して相対変位(スライド変位)可能とされていることで、ピストンと突出棒232とが例えばグリスにより粘性固着していても、上述した負圧により吸い込まれる場合と同様に、第2ピストンロッド211が最も伸長された状態(
図4(b)参照)から縮退される際には、突出棒232のみをスライド変位させ、スライド体231は元の位置(受光位置)に維持しておくことができる。
【0085】
以上のように、本実施形態における検知機構によれば、変位部材230が遮光位置(又は受光位置)にあるかを検知することで、第2リンク部材220が押さえ位置にあるか弛み位置にあるかを判断することができる。即ち、押さえ検知と弛み検知とを1のセンサ(センサ装置240)により行うことができる。
【0086】
本実施形態では、第2ピストンロッド211が最も伸長(又は、最も縮退)された状態から全ストロークの約90%を縮退(又は、伸長)されると、スライド体231の受光位置から遮光位置(又はその逆)へのスライド変位が開始される。なお、スライド体231のスライド変位が開始されるタイミングは、全ストロークの約85%から約95%の範囲で設定されることが好ましい。95%よりも大きな値では、部品の寸法公差や組み付け公差、スライド変位のばらつき等の影響が大きくなり、センサ装置240の受光状態の切り替え精度が低下する虞がある一方、85%よりも小さい値では、第2リンク部材220の押さえ位置または弛み位置への配置とセンサ装置240の受光状態の切り替えとのタイムラグが大きくなり、押さえ検知と弛み検知との検知精度が低下する虞があるからである。
【0087】
本実施形態における検知機構によれば、ボールプランジャのボールBが第1凹部231a又は第2凹部231bに受け入れられることで、変位部材230を受光位置に維持することができる。よって、上述したように、負圧による吸い込み又は粘性固着により突出棒232がスライド体231に対して相対変位(スライド変位)される場合でも、スライド体231を元の位置(受光位置)に維持することができる。
【0088】
また、第1凹部231a又は第2凹部231bに受け入れられたボールBは、変位部材230のスライド変位に伴い容易に内部に沈み込ませることができる。即ち、遮光位置または受光位置に変位部材230が維持された状態の解除は、変位部材230が第2ピストンロッド211から作用を受けてスライド変位されることで行うことができ、解除するための駆動源や機構を別途設ける必要がない。よって、構造を簡素化できる。
ここで、第2ピストンロッド211の縮退終端では、第2ばね部材216の弾性回復力が最も小さくなる。本実施形態では、ボールプランジャを採用し、その解除に要する力を小さくできるので、縮退終端において、第2ピストンロッド211の動きが阻害されることを抑制できる。よって、変位部材230の受光状態から遮光状態への切り替えを確実に行うことができる。
【0089】
また、本実施形態における検知機構によれば、変位部材230の一部(突出棒232の他側)が第2シリンダ装置210の内部に配置され、第2ピストンロッド211のピストンに伸長時当接部が形成される(即ち、伸長時当接部が第2シリンダ装置210の内部に配置されるので、第2シリンダ装置210の内部のデッドスペースを有効に活用できる。よって、例えば、第2ピストンロッド211のロッドに伸長時当接部および縮退時当接部の両者が形成される(即ち、伸長時当接部および縮退時当接部の両者が第2シリンダ装置210の外部に配置される)場合と比較して、変位部材230(スライド体231)を小型化でき、補助押さえ装置200の小型化を図ることができる。
【0090】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0091】
上記実施形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。例えば、各軸121〜123,221〜223の間の寸法や各ローラ部材124,224の直径は、それぞれ任意に変更することが可能である。同様に、各構成の配置数は任意である。例えば、本押さえ装置100及び補助押さえ装置200をプラグドア20の一側に各2個ずつ配置する場合を説明したが、本押さえ装置100は3個以上でも良く、補助押さえ装置200は、1個でも良く、2個以上でも良い。
【0092】
上記実施形態では、第2ピストンロッド211が最も伸長(縮退)された状態で、変位部材230が受光位置(遮光位置)に配置される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、第2ピストンロッド211が最も縮退(伸長)された状態で、変位部材230が遮光位置(受光位置)に配置されるようにしても良い。
【0093】
上記実施形態では、センサ装置240を光センサから構成する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、変位部材230が上記実施形態における遮光位置または受光位置に配置されることに伴い、検知状態が切り替えられるセンサであれば、他の種類のセンサを採用しても良い。他の種類のセンサとしては、変位部材230が、上記実施形態における遮光位置に配置されることに伴いオン(又はオフ)され、上記実施形態における受光位置に配置されることに伴いオフ(又はオン)される、リミットスイッチや近接スイッチが例示される。
【0094】
上記実施形態では、変位部材230の一部(突出棒232の他側)が第2シリンダ装置210の内部に配置され、その突出棒232の他側に当接される部位(ピストン側当接部211a)が第2ピストンロッド211のピストンに形成される(ピストン側当接部211aが第2シリンダ装置210の内部に配置される)場合を説明したが、
図7に第1の変形例として示す補助押さえ装置2200のように構成しても良い。なお、上記実施形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0095】
即ち、補助押さえ装置2200は、変位部材2230の全体が第2シリンダ装置210の外部に配置される。また、第2ピストンロッド211のロッドには、所定間隔を隔てた2箇所にロッド側当接部211b,2211aが互いに反対側を向く面として形成される。第2ピストンロッド211が縮退される場合にはロッド側当接部211bが、第2ピストンロッド211が伸長される場合にはロッド側当接部2211aが、それぞれ変位部材2230の互いに対向する面の一方または他方に当接される。この変形例によれば、突出棒232を第2前壁部215に挿通させる必要がないので、構造を簡素化して、製造を容易とすることができる。
上記実施形態では、第2ピストンロッド211の伸縮に伴い回転する第2リンク部材220によりプラグドア20を押圧する回転式の押さえ装置(補助押さえ装置200)に検知機構を設ける場合を説明したが、
図8に第2の変形例として示す補助押さえ装置3200のように構成しても良い。なお、上記実施形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
即ち、補助押さえ装置3200は、第2ピストンロッド211の伸縮方向が車体幅方向となる姿勢でプラグドア20の内面に対向配置され、第2ピストンロッド211の先端に連結された押圧部材3217によりプラグドア20を車体外側へ向けて押圧する直動式の押さえ装置として構成される。この変形例によっても、第2ピストンロッド211が最も伸長(又は短縮)される直前において、変位部材230をスライド変位させ、センサ装置240の受光状態を切り替えられる。よって、1の検知機構で押さえ検知および弛み検知を行うことができる。
【0096】
上記実施形態では、第1シリンダ装置110と第2シリンダ装置210とが同一に構成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、両者を異なる構成(異なる特性や寸法)としても良い。但し、本押さえ装置100(第1リンク部材120)によるプラグドア20の押圧力よりも補助押さえ装置200(第2リンク部材220)のプラグドア20の押圧力の方が小さくなることが好ましい。
【0097】
上記実施形態では、第2シリンダ装置210に上述した検知機構(変位部材230、センサ装置240及び案内部材250)を設ける場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、第1シリンダ装置110及び第2シリンダ装置210の両者に上述した検知機構を設けても良い。
【0098】
上記実施形態では、補助押さえ装置200(第2リンク部材220)がプラグドア20を気密位置まで押圧する(移動させる)場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、閉位置と気密位置との間の所定位置までプラグドア20を押圧する(移動させる)ものであっても良い。なお、所定位置は、本押さえ装置100の第1リンク部材120を弛み位置から押さえ位置へ向けて回転させる際に、その第1リンク部材120(第1ローラ部材124)をプラグドア20の内面に当接させることができる位置であれば、任意の位置を採用できる。
前記実施形態では、乗降口11をプラグドア20により開閉する構造を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、乗降口11を引戸により開閉する構造(引戸式)を採用しても良い。引戸式においても、上記実施形態の場合と同様に、引戸(ドア)は、閉位置と開位置との間を移動可能に支持機構により支持され、閉位置にある引戸(ドア)が本押さえ装置100及び補助押さえ装置200によって車体外側へ押圧され、引戸(ドア)のドア枠12に気密パッキン21が密着される。