【解決手段】ピストンロッド211が最も伸長される直前において、変位部材230が受光位置に配置される。これにより、押圧部材217が押さえ位置に配置されたことを検知(押さえ検知)できる。一方、ピストンロッド211が最も縮退される直前において、変位部材230が遮光位置に配置される。これにより、押圧部材217が弛み位置に配置されたことを検知(弛み検知)できる。よって、押さえ検知と弛み検知とを1のセンサ(センサ装置240)により行うことができる。
車体側壁に開口される乗降口を開閉するドアと、前記乗降口を開放する位置および閉鎖する位置の間で前記ドアを移動可能に支持する支持機構とを備えた鉄道車両に使用される押さえ装置において、
ロッドが伸縮されるシリンダ装置と、
前記ロッドに連結され、前記ロッドの伸長に伴って前記ドアを車体外側へ向けて押圧する押圧部材と、
前記ロッドから作用を受けて第1位置と第2位置との間で変位される変位部材と、
前記変位部材が前記第1位置にあるかを検知する検知手段と、を備え、
前記押圧部材は、前記ロッドが最も縮退された状態において、弛み位置に配置されると共に、前記ロッドが最も伸長された状態において、前記ドアを前記車体外側へ最も移動させる押さえ位置に配置され、
前記ロッドは、伸長時に前記変位部材の一側に当接される伸長時当接部と、その伸長時当接部と所定間隔を隔てて配置され、縮退時に前記変位部材の前記一側とは反対側となる他側に当接される縮退時当接部と、を備え、
前記ロッドが最も縮退された状態から伸長される際には、前記ロッドが最も伸長される直前において、前記第1位置または前記第2位置の一方に配置されている前記変位部材の一側に前記伸長時当接部が当接され、伸長される前記ロッドと共に前記変位部材が変位されることで、前記ロッドが最も伸長された状態において、前記変位部材が前記第1位置または前記第2位置の他方に配置され、
前記ロッドが最も伸長された状態から縮退される際には、前記ロッドが最も縮退される直前において、前記第1位置または前記第2位置の他方に配置されている前記変位部材の前記他側に前記縮退時当接部が当接され、縮退される前記ロッドと共に前記変位部材が変位されることで、前記ロッドが最も縮退された状態において、前記変位部材が前記第1位置または前記第2位置の一方に配置されることを特徴とする押さえ装置。
前記変位部材は、前記第1位置と前記第2位置との間を前記ロッドの伸縮方向と平行な方向に沿ってスライド変位されることを特徴とする請求項1又は2に記載の押さえ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の技術では、押さえ検知と弛み検知とを行うためには、複数のセンサが必要となり、コストが嵩むという問題点があった。
【0007】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、押さえ検知と弛み検知とを1のセンサで行うことができる押さえ装置および鉄道車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために本発明の押さえ装置は、車体側壁に開口される乗降口を開閉するドアと、前記乗降口を開放する位置および閉鎖する位置の間で前記ドアを移動可能に支持する支持機構とを備えた鉄道車両に使用されるものであり、ロッドが伸縮されるシリンダ装置と、前記ロッドに連結され、前記ロッドの伸長に伴って前記ドアを車体外側へ向けて押圧する押圧部材と、前記ロッドから作用を受けて第1位置と第2位置との間で変位される変位部材と、前記変位部材が前記第1位置にあるかを検知する検知手段と、を備え、前記押圧部材は、前記ロッドが最も縮退された状態において、弛み位置に配置されると共に、前記ロッドが最も伸長された状態において、前記ドアを前記車体外側へ最も移動させる押さえ位置に配置され、前記ロッドは、伸長時に前記変位部材の一側に当接される伸長時当接部と、その伸長時当接部と所定間隔を隔てて配置され、縮退時に前記変位部材の前記一側とは反対側となる他側に当接される縮退時当接部と、を備え、前記ロッドが最も縮退された状態から伸長される際には、前記ロッドが最も伸長される直前において、前記第1位置または前記第2位置の一方に配置されている前記変位部材の一側に前記伸長時当接部が当接され、伸長される前記ロッドと共に前記変位部材が変位されることで、前記ロッドが最も伸長された状態において、前記変位部材が前記第1位置または前記第2位置の他方に配置され、前記ロッドが最も伸長された状態から縮退される際には、前記ロッドが最も縮退される直前において、前記第1位置または前記第2位置の他方に配置されている前記変位部材の前記他側に前記縮退時当接部が当接され、縮退される前記ロッドと共に前記変位部材が変位されることで、前記ロッドが最も縮退された状態において、前記変位部材が前記第1位置または前記第2位置の一方に配置される。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の押さえ装置によれば、押圧部材は、ロッドが最も縮退された状態において、弛み位置に配置されると共に、ロッドが最も伸長された状態において、ドアを車体外側へ最も移動させる押さえ位置に配置され、ロッドが最も縮退された状態から伸長される際には、ロッドが最も伸長される直前において、第1位置または第2位置の一方に配置されている変位部材の一側に伸長時当接部が当接され、伸長されるロッドと共に変位部材が変位されることで、ロッドが最も伸長された状態において、変位部材が第1位置または第2位置の他方に配置され、ロッドが最も伸長された状態から縮退される際には、ロッドが最も縮退される直前において、第1位置または第2位置の他方に配置されている変位部材の他側に縮退時当接部が当接され、縮退されるロッドと共に変位部材が変位されることで、ロッドが最も縮退された状態において、変位部材が第1位置または第2位置の一方に配置されるので、変位部材が第1位置にあるかを検知手段により検知することで、押圧部材が押さえ位置にあるか弛み位置にあるかを判断することができる。即ち、押さえ検知と弛み検知とを1のセンサで行うことができる。
【0010】
請求項2記載の押さえ装置によれば、請求項1記載の押さえ装置の奏する効果に加え、第1位置に配置された変位部材を第1位置に維持する第1維持手段と、第2位置に配置された変位部材を第2位置に維持する第2維持手段と、を備えるので、変位部材が外乱によって、第1位置または第2位置の一方にある変位部材が第1位置または第2位置の他方へ変位されることを抑制できる。よって、押さえ検知と弛み検知とを正確に行うことができる。
【0011】
また、第1位置または第2位置に変位部材が維持された状態は、変位部材がロッドから作用を受けることにより解除されるので、解除するための駆動源を別途設ける必要がない。よって、構造を簡素化できる。
【0012】
請求項3記載の押さえ装置によれば、請求項1又は2に記載の押さえ装置の奏する効果に加え、変位部材は、第1位置と第2位置との間をロッドと平行な方向に沿ってスライド変位されるので、例えば、変位部材が所定の回転軸を中心に回転される構造と比較して、変位部材の変位を確保するために必要なスペースを抑制できる。即ち、シリンダ装置のチューブの外面側のスペースを有効に活用できる。
【0013】
請求項4記載の押さえ装置によれば、請求項3記載の押さえ装置の奏する効果に加え、変位部材は、シリンダ装置の外部に配置されるスライド体と、シリンダ装置の内部に一部が突出される突出部とを備え、伸長時当接部は、シリンダ装置の内部に配置され、ロッドの伸長時に突出部に当接され、縮退時当接部は、シリンダ装置の外部に配置され、ロッドの縮退時にスライド体に当接されるので、シリンダ装置の内部のデッドスペースを有効に活用できる。よって、例えば、伸長時当接部および縮退時当接部の両者がシリンダ装置の外部に配置される場合と比較して、押さえ装置の小型化を図ることができる。
【0014】
請求項5記載の押さえ装置によれば、請求項4記載の押さえ装置の奏する効果に加え、変位部材は、スライド体と突出部とがロッドの伸縮方向に沿って相対変位可能に形成されるので、突出部が外乱を受けた(例えば、負圧となったシリンダ内の空間に突出部が吸い込まれる、或いは、突出部が伸長時当接部に粘性固着される)場合でも、スライド体を元の位置に維持しておくことができる。
【0015】
請求項6記載の鉄道車両によれば、車体側壁に開口される乗降口を開閉するドアと、
前記乗降口を開放する位置および閉鎖する位置の間で前記ドアを移動可能に支持する支持機構と、請求項1から5のいずれかに記載の押さえ装置と、を備えるので、請求項1から5のいずれかに記載の押さえ装置と同様の効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態における押さえ装置200の模式図であり、
図1(a)は、押圧部材217が弛み位置に配置された状態における押さえ装置200の模式図であり、
図1(b)は、押圧部材217が押さえ位置に配置された状態における押さえ装置200の模式図である。
【0018】
鉄道車両は、側構体10に開口される乗降口11を開閉するプラグドア20と、そのプラグドア20を開位置から閉位置を経て気密位置までの区間において移動可能に支持するプラグ機構(図示せず)と、プラグドア20を車体外側へ向けて押圧する押さえ装置200とを備える。
【0019】
プラグドア20の外面(車体外側の面)の周縁部には、側構体10のドア枠に密着される気密パッキン21が配設される。また、押さえ装置200は、ピストンロッド211の伸縮方向が車体幅方向(
図1(a)及び
図1(b)左右方向)となる姿勢でプラグドア20に対向配置される。
【0020】
図1に示すように、押さえ装置200は、車体幅方向(
図1(a)及び
図1(b)左右方向)に沿ってピストンロッド211が伸縮されるシリンダ装置210と、ピストンロッド211の先端に連結され、ピストンロッド211の伸長に伴ってプラグドア20を車体外側へ向けて押圧する押圧部材217とを備える。即ち、押さえ装置200は、直動式の押さえ装置として構成される。
【0021】
押さえ装置200は、ピストンロッド211が最も縮退された状態では、
図1(a)に示すように、押圧部材217が弛み位置に配置される。ピストンロッド211が最も縮退された状態から伸長されると、押圧部材217がプラグドア20の内面に当接される。
【0022】
押さえ装置200は、ピストンロッド211が最も伸長された状態では、
図1(b)に示すように、押圧部材217が押さえ位置に配置され、プラグドア20を車体外側へ最も移動させる(即ち、プラグドア20の外面が車体外面に一致される)。
【0023】
但し、押圧部材217が押さえ位置に配置された状態において、プラグドア20が最も車体外側となる位置に到達していなくても良く、この場合には、他の押さえ装置(図示せず)がプラグドア20を車体外側へ最も移動させる構成であっても良い。なお、他の押さえ装置としては、回転式の押さえ装置(ピストンロッド211の伸縮に伴い回転するリンク部材によりプラグドア20を押圧するもの)が例示される。
【0024】
押さえ装置200は、
図1(b)に示すように、押圧部材217が押さえ位置に配置された状態において、シリンダ装置210の駆動力を押圧部材217に付与して、車体外方へ向けた力(車体内外の気圧差によりプラグドア20が気密位置から押し戻されることに耐える力)をプラグドア20に付与可能とされる。
【0025】
但し、押圧部材217が押さえ位置に配置された状態において、車体外方へ向けた力をプラグドア20に付与しない構成であっても良く、この場合には、上述した他の押さえ装置が車体外方へ向けた力をプラグドア20に付与する構成であっても良い。
【0026】
次いで、
図2から
図4を参照して、押さえ装置200の弛み検知および押さえ検知を検知するための検知機構について説明する。
【0027】
図2(a)は、押圧部材217が弛み位置に配置された状態における押さえ装置200の部分断面模式図であり、
図2(b)は、押圧部材217が押さえ位置に配置された状態における押さえ装置200の部分断面模式図である。
【0028】
図3(a)は、
図2(a)に示す状態からピストンロッド211が伸長時当接位置まで伸長された状態における押さえ装置200の部分断面模式図であり、
図3(b)は、
図2(b)に示す状態からピストンロッド211が縮退時当接位置まで縮退された状態における押さえ装置200の部分断面模式図である。
【0029】
図4(a)は、
図2(a)の矢印IVa方向視における検知機構の模式図であり、
図4(b)は、
図4(a)のIVb−IVb線における検知機構の断面模式図であり、
図4(c)は、
図2(b)の矢印IVc方向視における検知機構の模式図であり、
図4(d)は、
図4(c)のIVd−IVd線における検知機構の断面模式図である。
【0030】
図2から
図4に示すように、シリンダ装置210は、ピストンロッド211のピストンが摺動可能に配置される円筒状のチューブ213と、そのチューブ213の後端を封止する後壁部214と、チューブ213の前端を封止すると共にピストンロッド211のロッドが挿通される前壁部215と、コイルばねとして形成され、前壁部215及びピストンの間に配置されるばね部材216と、チューブ213の外周面にスライド変位可能に配置される変位部材230、その変位部材230を検知するセンサ装置240と、変位部材230のスライド変位をピストンロッド211の伸縮方向と平行な方向に案内(規制)する案内部材250とを備え、変位部材230、センサ装置240及び案内部材250により検知機構が構成される。
【0031】
変位部材230は、スライド体231と、そのスライド体231に一端側が挿通されると共に前壁部215に挿通された他端側がシリンダ装置210(チューブ213)内に突出される突出棒232とを備え、ピストンロッド211から作用を受けることで遮光位置(第1位置または第2位置の一方)と受光位置(第1位置または第2位置の他方)との間でスライド変位される。
【0032】
なお、突出棒232は、スライド体231及び前壁部215に対して、ピストンロッド211の伸縮方向に平行な方向に沿って、相対変位(スライド変位)可能とされる。また、突出棒232には、一端側および他端側よりも大径に形成される大径部が一端側および他端側の間に形成され、大径部がスライド体231又は前壁部215に当接されることで、相対変位(スライド変位)が規制可能とされる。
【0033】
このように、変位部材230は、ピストンロッド211の伸縮方向に平行な方向にスライド変位されるので、例えば、変位部材230が所定の回転軸を中心に回転される構造と比較して、変位部材230の変位に必要なスペースを抑制して、チューブ213の外周面側のスペースを有効に活用できると共に、回転軸を不要として、構造を簡素化できる。
【0034】
なお、ピストンロッド211には、伸長時に変位部材230の一側(突出棒232の他端側の端部(突出端))に当接されるピストン側当接部211aがピストンに形成されると共に、ピストン側当接部211aと所定間隔を隔てて対向され、縮退時に変位部材230の一側とは反対側となる他側(スライド体231の側面)に当接されるロッド側当接部211bがロッドに形成される。
【0035】
スライド体231の底面(チューブ213及び前壁部215の外周面に対向する面)には、ピストンロッド211の伸縮方向に沿って所定間隔を隔てた2箇所に第1凹部231a及び第2凹部231bが凹設され(
図4(b)及び
図4(d)参照)、前壁部215の外周面に設けられたボールプランジャのボールBが第1凹部231a又は第2凹部231bに受け入れ可能とされる。
【0036】
なお、第1凹部231aにボールBが受け入れられた状態では、変位部材230が遮光位置に位置決め(維持)され、第2凹部231bにボールBが受け入れられた状態では、変位部材230が受光位置に位置決め(維持)される。
【0037】
センサ装置240は、略コ字状に形成されるベース体241と、そのベース体241の所定間隔を隔てて対向する対向面の一方に配置される発光部242と、対向面の他方に配置され、発光部242から発光された光を受光する受光部243とを備えた光学式センサである。
【0038】
センサ装置240は、変位部材230が遮光位置に配置された状態では、発光部242から発光された光がスライド体231に遮光され、受光部243による受光が不能とされる。一方、センサ装置240は、変位部材230が受光位置に配置された状態では、発光部242から発光された光の受光部243による受光が可能とされる。
【0039】
なお、検知機構は、変位部材230及びセンサ装置240を覆う遮光板(図示せず)を備え、発光部242以外の外部からの光が受光部243に受光されることが抑制可能とされる。
【0040】
次いで、検知機構の動作(弛み検知および押さえ検知)について説明する。
【0041】
ピストンロッド211が最も縮退された状態では、
図2(a)に示すように、押圧部材217が弛み位置に配置されると共に、変位部材230が遮光位置に配置される。この状態からピストンロッド211が伸長され、ピストンロッド211が伸長時当接位置に配置(到達)されると、
図3(a)に示すように、遮光位置に配置されている変位部材230の一側(突出棒232の他端側の端部(突出端))にピストン側当接部211aが当接される。
【0042】
よって、ピストンロッド211が伸長時当接位置から更に伸長されると、ピストン側当接部211aが変位部材230を押圧することで、伸長されるピストンロッド211と共に変位部材230が同方向(伸長方向)へスライド変位され、ピストンロッド211が最も伸長されると、
図2(b)に示すように、押圧部材217が押さえ位置に配置されると共に、変位部材230が受光位置に配置される。
【0043】
即ち、ピストンロッド211が最も縮退された状態から伸長時当接位置に配置(到達)されるまでの間は、変位部材230が遮光位置に配置された状態(発光部242から発光された光が受光部243により受光されない状態)が維持され、ピストンロッド211が最も伸長される直前において、変位部材230がスライド変位され、変位部材230が受光位置に配置される(発光部242から発光された光が受光部243により受光される状態に切り替わる)。これにより、押圧部材217が押さえ位置に配置されたことを検知(押さえ検知)できる。
【0044】
一方、ピストンロッド211が最も伸長された状態では、
図2(b)に示すように、押圧部材217が押さえ位置に配置されると共に、変位部材230が受光位置に配置される。この状態からピストンロッド211が縮退され、ピストンロッド211が縮退時当接位置に配置(到達)されると、
図3(b)に示すように、受光位置に配置されている変位部材230の他側(スライド体231の側面)にロッド側当接部211bが当接される。
【0045】
よって、ピストンロッド211が縮退時当接位置から更に縮退されると、ロッド側当接部211bが変位部材230を押圧することで、縮退されるピストンロッド211と共に変位部材230が同方向(縮退方向)へスライド変位され、ピストンロッド211が最も縮退されると、
図2(a)に示すように、押圧部材217が弛み位置に配置されると共に、変位部材230が遮光位置に配置される。
【0046】
即ち、ピストンロッド211が最も伸長された状態から縮退時当接位置に配置(到達)されるまでの間は、変位部材230が受光位置に配置された状態(発光部242から発光された光が受光部243により受光される状態)が維持され、ピストンロッド211が最も縮退される直前において、変位部材230がスライド変位され、変位部材230が遮光位置に配置される(発光部242から発光された光が受光部243により受光さえる状態に切り替わる)。これにより、押圧部材217が弛み位置に配置されたことを検知(弛み検知)できる。
【0047】
ここで、
図2(b)に示すように、最も伸長された状態(
図2(b)参照)にあるピストンロッド211がばね部材216の弾性回復力を受けて縮退時当接位置(
図3(b)参照)へ縮退される際には、ばね部材216が配設される側の空間(前壁部215及びピストンとの間の空間、以下「負圧空間」と称す)が負圧となり、その負圧空間へ突出棒232が吸い込まれる虞がある。
【0048】
本実施形態では、上述したように、突出棒232がスライド体231に対して相対変位(スライド変位)可能とされるので、突出棒232が負圧空間に吸い込まれたとしても、スライド体231は元の位置(受光位置)に維持しておくことができる。即ち、ピストンロッド211が最も伸長された状態(
図2(b)参照)から縮退時当接位置(
図3(b)参照)に到達(配置)されるまでの間に変位部材230(スライド体231)がスライド変位することを抑制できる。
【0049】
また、このように、突出棒232がスライド体231に対して相対変位(スライド変位)可能とされていることで、ピストンと突出棒232とが例えばグリスにより粘性固着していても、負圧による場合と同様に、ピストンロッド211が最も伸長された状態(
図2(b)参照)から縮退される際には、突出棒232のみをスライド変位させ、スライド体231は元の位置(受光位置)に維持しておくことができる。
【0050】
以上のように、本実施形態における検知機構によれば、変位部材230が遮光位置(又は受光位置)にあるかを検知することで、押圧部材217が押さえ位置にあるか弛み位置にあるかを判断することができる。即ち、押さえ検知と弛み検知とを1のセンサ(センサ装置240)により行うことができる。
【0051】
本実施形態では、ピストンロッド211が最も伸長(又は、最も縮退)された状態から全ストロークの約90%を縮退(又は、伸長)されると、スライド体231の受光位置から遮光位置(又はその逆)へのスライド変位が開始される。なお、スライド体231のスライド変位が開始されるタイミングは、全ストロークの約85%から約95%の範囲で設定されることが好ましい。95%よりも大きな値では、部品の寸法公差や組み付け公差、スライド変位のばらつき等の影響が大きくなり、センサ装置240の受光状態の切り替え精度が低下する虞がある一方、85%よりも小さい値では、押圧部材217の押さえ位置または弛み位置への配置とセンサ装置240の受光状態の切り替えとのタイムラグが大きくなり、押さえ検知と弛み検知との検知精度が低下する虞があるからである。
【0052】
本実施形態における検知機構によれば、ボールプランジャのボールBが第1凹部231a又は第2凹部231bに受け入れられることで、変位部材230を受光位置に維持することができる。よって、上述したように、負圧または粘性固着により突出棒232がスライド体231に対して相対変位(スライド変位)される場合でも、スライド体231を元の位置(受光位置)に維持することができる。
【0053】
また、第1凹部231a又は第2凹部231bに受け入れられたボールBは、変位部材230のスライド変位に伴い容易に内部に沈み込ませることができる。即ち、遮光位置または受光位置に変位部材230が維持された状態の解除は、変位部材230がピストンロッド211から作用を受けてスライド変位されることで行うことができ、解除するための駆動源や機構を別途設ける必要がない。よって、構造を簡素化できる。
【0054】
また、解除に要する力を比較的小さくすることができるので、ばね部材216の弾性回復力でピストンロッド211が縮退される際に、その縮退終端において、ピストンロッド211の縮退がボールプランジャ(変位部材230の受光状態から遮光状態への切り替え)によって阻害されることを抑制できる。
【0055】
また、本実施形態における検知機構によれば、変位部材230の一部(突出棒232の他側)がシリンダ装置210の内部に配置され、ピストンロッド211のピストンに伸長時当接部が形成される(即ち、伸長時当接部がシリンダ装置210の内部に配置されるので、シリンダ装置210の内部のデッドスペースを有効に活用できる。よって、例えば、ピストンロッド211のロッドに伸長時当接部および縮退時当接部の両者が形成される(即ち、伸長時当接部および縮退時当接部の両者がシリンダ装置210の外部に配置される)場合と比較して、変位部材230(スライド体231)を小型化でき、押さえ装置200の小型化を図ることができる。
【0056】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0057】
上記実施形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。同様に、各構成の配置数は任意である。例えば、1のプラグドア20に対する押さえ装置200の配設数は任意の個数を設定可能である。
【0058】
上記実施形態では、ピストンロッド211が最も伸長(縮退)された状態で、変位部材230が受光位置(遮光位置)に配置される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、ピストンロッド211が最も縮退(伸長)された状態で、変位部材230が遮光位置(受光位置)に配置されるようにしても良い。
【0059】
上記実施形態では、センサ装置240を光センサから構成する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、変位部材230が上記実施形態における遮光位置または受光位置に配置されることに伴い、検知状態が切り替えられるセンサであれば、他の種類のセンサを採用しても良い。他の種類のセンサとしては、変位部材230が、上記実施形態における遮光位置に配置されることに伴いオン(又はオフ)され、上記実施形態における受光位置に配置されることに伴いオフ(又はオン)される、リミットスイッチや近接スイッチが例示される。
【0060】
上記実施形態では、変位部材230の一部(突出棒232の他側)がシリンダ装置210の内部に配置され、その突出棒232の他側に当接される部位(ピストン側当接部211a)がピストンロッド211のピストンに形成される(ピストン側当接部211aがシリンダ装置210の内部に配置される)場合を説明したが、
図5に第1の変形例として示す押さえ装置2200のように構成しても良い。なお、上記実施形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0061】
即ち、押さえ装置2200は、変位部材2230の全体がシリンダ装置210の外部に配置される。また、ピストンロッド211のロッドには、所定間隔を隔てた2箇所にロッド側当接部211b,2211aが互いに反対側を向く面として形成される。ピストンロッド211が縮退される場合にはロッド側当接部211bが、ピストンロッド211が伸長される場合にはロッド側当接部2211aが、それぞれ変位部材2230の互いに対向する面の一方または他方に当接される。この変形例によれば、突出棒232を前壁部215に挿通させる必要がないので、構造を簡素化して、製造を容易とすることができる。
【0062】
上記実施形態では、ピストンロッド211の先端に連結された押圧部材217によりプラグドア20を押圧する直動式の押さえ装置(押さえ装置200)に検知機構を設ける場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、ピストンロッド211の車体長手方向に沿った伸縮に伴い回転するリンク部材(押圧部材)によりプラグドア20を押圧する回転式の押さえ装置に検知機構を設けても良い。なお、直動式または回転式のどちらの押さえ装置においても、ピストンロッド211の伸縮方向は、車体長手方向または車体幅方向に限られず、任意の方向に設定が可能である。
【0063】
上記実施形態では、押さえ装置200(押圧部材217)がプラグドア20を閉位置から気密位置まで押圧する(移動させる)場合(即ち、ピストンロッド211が最も縮退され、押圧部材217が弛み位置に配置された状態では、プラグドア20が閉位置に配置され、ピストンロッド211が最も伸長され、押圧部材217が押さえ位置に配置された状態では、プラグドア20が気密位置に配置される場合)を説明したが必ずしもこれに限られるものではなく、閉位置と気密位置との間の所定位置までプラグドア20を押圧する(移動させる)もの(即ち、ピストンロッド211が最も伸長され、押圧部材217が押さえ位置に配置された状態では、プラグドア20が所定位置に配置されるもの)であっても良い。なお、所定位置は、プラグドア20のドア枠が気密パッキン21に当接される位置または当接されない位置のどちらの位置でも良い。
【0064】
前記実施形態では、乗降口11をプラグドア20により開閉する構造を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、乗降口11を引戸により開閉する構造(引戸式)を採用しても良い。引戸式においても、上記実施形態の場合と同様に、引戸(ドア)は、閉位置と開位置との間を移動可能に支持機構により支持され、閉位置にある引戸(ドア)が押さえ装置200によって車体外側へ押圧され、引戸(ドア)のドア枠に気密パッキン21が密着される。