【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、箱を製造するための紙基材に関し、本発明に係る紙基材は、片面または両面に防水性塗工層を有する。本発明に係る紙基材は、熱可塑性樹脂を含むホットメルト接着剤によって貼合すると強力に接着される。
【0011】
紙基材
本発明においては、基材として紙基材を用いる。紙基材に用いるパルプは特に制限されず、用途に応じて種々のパルプを使用することができる。原料パルプとしては、例えば、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、砕木パルプ(GP)、リファイナーグラウンドパルプ(RGP)、ケミカルパルプ(CP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等の木材繊維由来の各種パルプ、ケナフ、バガス、竹、麻、ワラなどから得られた非木材パルプを挙げることができる。
【0012】
好ましい態様において紙基材は、古紙パルプを含有する。古紙パルプを含有する場合、例えば、全パルプに占める古紙パルプの配合率は10重量%以上が好ましく、25重量%以上がより好ましく、50重量%以上がさらに好ましく、70重量%以上が最も好ましい。好ましい態様において、紙基材に用いるパルプのすべてを古紙由来のパルプとすることができ、また、古紙パルプ以外のパルプとしてクラフトパルプを配合してもよく、全量クラフトパルプとしてもよい。また、紙基材が2層以上の紙層を有する多層抄き板紙である場合、1層あたりの古紙パルプ配合率を上記の通りとすることができ、各層における古紙パルプ配合率が異なるものであってもよい。
【0013】
古紙パルプとしては、段ボール古紙、上白、特白、中白、白損等の未印刷古紙を離解した古紙パルプ、上質紙、上質コート紙、中質紙、中質コート紙、更紙等に印刷された古紙、および筆記された古紙、廃棄機密文書等の紙類、雑誌古紙、新聞古紙を離解後脱墨したパルプ(DIP)等を使用することができる。
【0014】
紙基材には公知の填料および内添薬品を添加できる。填料としては、例えば、カオリン、焼成カオリン、デラミネーティッドカオリン、クレー、焼成クレー、デラミネーティッドクレー、イライト、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、シリカ、軽質炭酸カルシウム−シリカ複合物、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、酸化珪素、非晶質シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、酸化亜鉛、酸化チタン、ケイ酸ナトリウムの鉱酸による中和で製造される非晶質シリカ等の無機填料や、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン系樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂等の有機填料等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし併用してもよい。また内添薬品として、歩留剤、嵩高剤、乾燥紙力向上剤、湿潤紙力向上剤、濾水性向上剤、保水剤、染料、サイズ剤、各種塩等を必要に応じて使用してもよい。
【0015】
紙基材は、公知の抄紙方法で製造される。例えば、長網抄紙機、ギャップフォーマー型抄紙機、ハイブリッドフォーマー型抄紙機、オントップフォーマー型抄紙機、丸網抄紙機等を用いて行うことができるが、これらに限定されない。
【0016】
紙基材の坪量は特に制限されず、用途に応じて調整すればよいが、単層の紙の場合、例えば、40〜750g/m
2とすることができ、70〜600g/m
2としたり、100〜500g/m
2としたり、150〜400g/m
2としたりしてもよい。また、紙基材は、2層以上の紙層を有する多層抄き板紙であってよく、例えば、2〜7層の紙層を有することが好ましく、3〜5層の紙層を有することがより好ましい。紙基材が2層以上の紙層を有する多層抄き板紙である場合、その全層合計の坪量は、例えば、70〜750g/m
2とすることができ、100〜600g/m
2としたり、150〜500g/m
2としたりしてもよい。
【0017】
また、紙基材は単層の紙もしくは多層抄き板紙を貼合等により加工したものを用いても良い。本発明の好ましい態様において、紙基材として板紙を用い、より好ましくは段ボールを用いる。段ボールとは、平らな紙(ライナ)と波型の紙(中しん)を接着剤で貼り合わせて作られ、商品の包装や緩衝材、荷物の運送、物品を保管するときなどの様々な用途に好適に使用される。
【0018】
段ボールのライナについては特に制限されず、用途に応じてクラフトライナ、ジュートライナなどを使用することができる。ライナの坪量も特に制限されず、例えば、ライナ全体の坪量を70〜550g/m
2とすることができ、100〜500g/m
2としたり、150〜450g/m
2としたりしてもよい。
【0019】
段ボールを構成する中しんについては特に制限されず、Aフルート、Bフルート、Cフルート、Wフルート、Eフルートなどを使用することができる。中しんの坪量も特に制限されず、120g/m
2、160g/m
2、180g/m
2、強化180g/m
2、強化200g/m
2などを好適に使用することができる。
【0020】
防水性塗工層
本発明に係る紙基材は、その少なくとも片面に、防水性塗工層が設けられており、紙基材が水に接しても水が浸透しにくく、紙基材の強度が維持される。防水性塗工層は、合成樹脂を含有することが好適である。合成樹脂は、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ブタジエン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエチレン系樹脂の少なくとも1種類を含有することが好適である。合成樹脂がスチレン系樹脂および/またはアクリル系樹脂を含むことが好適であり、スチレン・アクリル系樹脂を含むと特に好適である。
【0021】
本発明を構成する防水性塗工層が含有することのできるスチレン系樹脂とは、構造中にスチレン骨格を有するスチレン系単量体の共重合割合が50質量%以上である樹脂であり、スチレン系単量体の重合体のみからなるものであってもよい。
【0022】
スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン等が挙げられる。
【0023】
また、スチレン単量体と共重合可能な単量体として、例えば、メチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、メチルフェニルメタクリレート等のアルキルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート等のアルキルアクリレート、メタクリル酸、アクリル酸等の不飽和カルボン酸、マレイン酸、イタコン酸等の無水物である不飽和ジカルボン酸無水物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン等の共役ジエン等が挙げられる。これらは1種単独、あるいは、2種以上の組み合わせで用いることができる。
【0024】
本発明を構成する防水性塗工層が含有することのできるアクリル系樹脂とは、アクリル酸、メタクリル酸及びこれらの誘導体であるアクリル系単量体の共重合割合が50質量%以上である樹脂であり、アクリル系単量体の重合体のみからなるものであってもよい。
【0025】
アクリル系単量体としては、例えば、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、メタクリル酸メチル等のメタクリル酸エステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソプロピル等のアクリル酸エステル等を挙げることができ、アクリル系樹脂は、これらのアクリル系単量体から選ばれる1種以上の単量体を重合したものであってよい。
【0026】
また、アクリル系単量体と共重合可能な単量体としては、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド、無水マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸無水物、メタクリル酸、アクリル酸等の不飽和カルボン酸等が挙げられる。これらは1種単独、あるいは、2種以上の組み合わせで用いることができる。
【0027】
スチレン・アクリル系樹脂とは、構成単位にアクリルモノマー及びスチレンモノマーを交互に、又はランダムに含んでなるポリマーである。好ましい態様において、スチレン・アクリル系樹脂は、スチレン/アクリル=10/90〜90/10で共重合された樹脂である。また、好ましい態様において、防水性塗工層に含まれる合成樹脂の50重量%以上がスチレン・アクリル系樹脂である。スチレン・アクリル系樹脂を構成するアクリルのモノマー成分としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリルアミド、メタアクリルアミド、アクリロニトリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリルなどを例示することができるが、必要に応じて他のモノマー、ポリマーを導入することもできる。
【0028】
紙表面における防水性をより向上させる効果があることから、防水性塗工層は、ワックスを含有していていることが好ましい。ワックスとしては、例えば、ポリエチレン系ワックス、フィッシャートロプシュワックス、油脂系合成ワックス(脂肪酸エステル系、脂肪酸アミド、ケトン・アミン類)、水素硬化油等の合成ワックス、蜜蝋、木蝋、パラフィン系ワックス、マイクロクリスタリンワックス等の天然ワックス等を挙げることができる。これらのワックスは、1種単独、あるいは、2種以上の組み合わせで使用することができ、特に、パラフィンを含む炭化水素系ワックスが好適である。
【0029】
本発明に係る紙基材に設けられている防水性塗工層には、防水性能を損なわない限り他の助剤が入っていてもよく、顔料、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、染料、蛍光染料等の通常使用される各種助剤を使用することができる。
【0030】
防水性塗工層の形成は、公知の塗工方式を使用して塗工剤を塗工することにより設けることができ、例えば、エアナイフ塗工、カーテン塗工、ブレード塗工、ゲートロール塗工、ダイ塗工等の塗工方式を用いることができる。また、単層塗工であってよく、多層塗工を行ってもよい。多層塗工の場合、下塗り層を塗工し、乾燥後に上塗り層の塗工を行うドライオンウェット、下層塗工部を乾燥せずに上層塗工を行なうウェットオンウェットのいずれの塗工方式を用いてもよく、同一の塗工装置を用いても、異種の塗工装置を組み合わせて塗工を行ってもよい。塗工量も特に限定されず、塗工量の合計が4〜30g/m
2としてもよいが、経済性と防水機能とを両立させる観点から5〜20g/m
2とすることが好ましい。
【0031】
接着剤による貼合
本発明に係る紙基材は、ホットメルト接着剤によって貼合される。接着剤の種類については特に限定されず、水系、水分散系、溶液系、無溶剤系、固体系等が挙げられ、接着面となる紙基材の表面の状態および紙基材に設けられた防水性塗工層の成分に応じて適宜選択することができる。
【0032】
好ましい態様において、本発明に係る接着剤は熱可塑性樹脂を含むホットメルト接着剤であり、70℃以上の軟化点を有し、加熱によって軟化する。好ましい態様において、本発明に係るホットメルト接着剤の軟化点は70〜150℃である。
【0033】
ホットメルト接着剤は、タンク内などで加熱溶融して、ポンプで圧送し、圧送したホットメルト接着剤をアプリケーターによって塗布することができる。接着剤の塗布方法は特に制限されないが、例えば、点塗布、線塗布、面塗布、スパイラル塗布、スロット塗布、スプレー塗布、ロール塗布など、多種多様な塗布方法が可能であり、グラビア方式で網点状に凹凸を付けて塗布してもよい。本発明においては、1穴ノズルを用いて接着剤を線状に連続塗布する線塗布方式が好ましい。 本発明に係る接着剤に含まれる熱可塑性樹脂としては特に限定されず、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリオキシメチレン、ポリメチルメタアクリレート、メタクリル・スチレン共重合体、酢酸セルロース、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、熱可塑性ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレンや4フッ化エチレン・6フッ化プロピレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂、エチレン・4フッ化エチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系樹脂などを挙げることができる。好ましい態様において、紙基材を接着する際に接着剤として使用する熱可塑性樹脂は、防水性塗工層にスチレン・アクリル系樹脂を用いる場合、エチレン酢酸ビニル共重合体および/またはポリオレフィン系重合体を含む。この防水性塗工層と熱可塑性樹脂との組み合わせを採用することにより、紙基材の接着を行う際、非塗工面同士の接着はもとより、塗工面同士の接着、非塗工面と塗工面との接着のいずれにおいても十分な強度で接着することが可能となる。
本発明に係る接着剤には、接着性能を損なわない範囲であれば、公知の可塑剤や粘着付与樹脂、酸化防止剤、紫外線吸収剤、液状ゴム、微粒子充填剤等の添加剤が含有されていてもよい。可塑剤としては特に限定されず、例えば、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、流動パラフィン、炭化水素系合成オイル等が挙げられる。粘着付与樹脂としては、天然ロジン、変性ロジン、天然ロジンのグリセロールエステル、変性ロジンのグリセロールエステル、天然ロジンのペンタエリスリトールエステル、変性ロジンのペンタエリスリトールエステル、天然テルペンのコポリマー、天然テルペンの三次元ポリマー、天然テルペンのコポリマーの水素化誘導体、テルペン樹脂、フェノール系変性テルペン樹脂の水素化誘導体;C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5C9系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂等の石油樹脂、また、それら石油樹脂に水素を添加した部分水添石油樹脂、完全水添石油樹脂等が挙げられる。酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(4'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,4−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルべンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−〔1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル〕フェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ぺンチルフェニル)]アクリレート、テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン等のヒンダードフェノール系酸化防止剤;ジラウリルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)等のイオウ系酸化防止剤;トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等のリン系酸化防止剤等が挙げられる。紫外線吸収剤としては、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;サリチル酸エステル系紫外線吸収剤;シアノアクリレート系紫外線吸収剤;ヒンダードアミン系光安定剤が挙げられる。液状ゴムとしては、液状ポリブテン、液状ポリブタジエン、液状ポリイソプレン及びこれらの水添樹脂が挙げられる。微粒子充填剤としては、特に限定されず、例えば、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、酸化チタン、雲母、スチレンビーズ等が挙げられる。これらの可塑剤や添加剤は、1種単独で含有されていてもよく、2種以上を含有されていてもよい。本発明の好ましい態様において、本発明に用いられる接着剤には、防水性塗工層に用いられるスチレン・アクリル系樹脂との接着性をより向上させる目的で、粘着付与樹脂が接着剤に含まれる全固形分のうち25%以下の割合で含有されている。
【0034】
接着剤の使用量は、充分な接着強度を有すれば特に限定されないが、面塗布の場合は0.5〜2000g/m
2としてもよく、5〜1500g/m
2としてもよく、10〜1000g/m
2としてもよい。また線塗布の場合は、アプリケーターのノズル径、ノズルもしくは紙基材の移動速度、塗布時の接着剤粘度、接着する紙基材の幅等に応じて塗布幅を適宜変更することができ、また単位長さあたりの塗布量も特に限定されないが、例えば0.1〜30g/mとしてもよく、0.5〜20g/mとしてもよく、1〜15g/mとしてもよい。 紙基材を製函して箱を製造する場合、製函機を用いることができる。使用する製函機は特に制限されず、例えば、垂直式や水平式の製函機を用いることができる。
【実施例】
【0035】
以下、具体例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の具体例に限定されるものではない。また、本明細書において特に記載しない限り、濃度や部等は重量基準であり、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
【0036】
実験1.板紙の貼合
3層を抄き合わせた坪量280g/m
2の板紙を使用した。表層:中層:裏層の重量比は15:60:25であり、各層のパルプ構成は下記のとおりである。
(表層)未晒クラフトパルプ70%および古紙パルプ30%
(中層)古紙パルプ100%
(裏層)古紙パルプ100%
上記板紙の表層側にエアナイフコーターを用いてスチレン・アクリル系防水剤(Michelman社、VaporCoat2200)を10g/m
2塗布し、防水性塗工層を設けた製函用ライナを製造した。
【0037】
次いで、製函用ライナを所定の大きさに切断した試験片に、熱可塑性樹脂(ホットメルト)を塗布して貼合した。具体的には、同一寸法の試験片を2枚1組で用意し、下記の熱可塑性樹脂を下表に示す塗布量および塗布長で製函用ライナの表層側にグルーガンを用いて線状に塗布後、製函用ライナの裏層を接着剤が試験片からはみ出さないように貼合した。
(ホットメルトA)エチレン酢酸ビニル共重合体(軟化点:約80℃、大響製、アイメルトA−30)
(ホットメルトB)ポリオレフィン重合体(軟化点:75〜95℃、積水フーラー製、アドバントラPHC−9255)
(ホットメルトC)熱可塑性樹脂(軟化点:108〜118℃、東洋アドレ製、トヨメルトP−907YB−5)
また参考例として、製函用ライナを所定の大きさに切断した試験片に、ホットメルト接着剤ではない、下記の接着剤を線状に塗布し同様に貼合した。
(工作用接着剤)酢酸ビニルエステル(コニシ製、ボンド 木工用)
(液状糊)ポリビニルアルコール(ヤマト製、アラビックヤマト)
貼合したサンプルを5℃または23℃の環境に24時間放置してから、サンプルを人力にて強制的に剥離させ、表層側の剥離面の様子から接着の強さを評価した。評価基準は下記のとおりである。
◎:強力に接着されている(強制剥離すると貼合部分全体が材破、
図1左)
○:よく接着されている(強制剥離すると貼合部分の一部が材破、
図1中)
△:接着性が弱い(強制剥離しても貼合部分が材破しない、
図1右)
下表に示す結果から明らかなように、本発明によれば、紙基材を十分な接着力にて接着することができた。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
実験2.段ボールの製函
実験1で製造した板紙および製函用ライナから、製函用段ボールシートを作製した。具体的には、板紙の表層側に防水性塗工層を設けた製函用ライナを表ライナ、防水性塗工層を設けていない板紙を裏ライナとして用い、防水性塗工層が段ボールの外側になるように、Aフルートの中しんを介して表ライナと裏ライナを接着した。
【0041】
次いで、製函用段ボールシートから、製函機を用いてA式段ボール箱を製造した(外寸:583×383×190mm)。具体的には、グルーガンを用いてホットメルト接着剤を箱側面に設けた継ぎ代部に線状に塗布し(塗布量:10g/m、塗布長190mm)、製函用段ボールシートの表ライナと裏ライナを継ぎ代部で接着した。
【0042】
得られた段ボール箱について、実験1と同様にして接着部分の接着強度を評価した。すなわち、段ボール箱の継ぎ代部を人力にて強制的に剥離させ、剥離面の様子から接着の強さを評価した。
【0043】
また、段ボール箱に、氷16kgを入れた防水袋を収容し、5℃の環境下に24時間放置後、箱圧縮強度を測定した。なお、箱圧縮強度は、内容物を箱に入れたままJIS Z 0212に準拠し、下記の手順により測定した。
1)サンプルとなる箱を圧縮試験機の中央にセットする。
2)圧縮試験機を起動し、箱上面全体に満遍なく徐々に下方向へ力を加えていく。
3)箱側面が変形、もしくは箱側面に設けた継ぎ代部が剥離した際の加重を読み取り、箱圧縮強度とする。
【0044】
評価結果を下表に示すが、本発明に基づいて製造した段ボール箱は、継ぎ代部が強力に接着されていた。すなわち、強制的に継ぎ代部を剥離した場合、材破が確認された(
図2:ホットメルトA、
図3:ホットメルトB)。
【0045】
また、箱圧縮強度についても、いずれのサンプルでも十分に高く、本発明に基づいて製造した段ボール箱は、実輸送において多段で棒積みした場合でも十分な強度を有していた。
【0046】
【表3】