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特開2021-147324ジフェニルスルホン化合物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-147324(P2021-147324A)
(43)【公開日】2021年9月27日
(54)【発明の名称】ジフェニルスルホン化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 315/00 20060101AFI20210830BHJP
   C07C 317/22 20060101ALI20210830BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20210830BHJP
【FI】
   C07C315/00
   C07C317/22
   C07B61/00 300
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2020-45585(P2020-45585)
(22)【出願日】2020年3月16日
(71)【出願人】
【識別番号】391010895
【氏名又は名称】小西化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】飯田 紀士
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC62
4H006BA66
4H006BA91
4H006BB11
4H006BB12
4H006BC31
4H006BC35
4H006BE03
4H039CA80
4H039CL25
(57)【要約】
【課題】短時間かつ比較的低温において、収率よく4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを含むジフェニルスルホン化合物を製造する。
【解決手段】式(1)
【化1】

で表される化合物とスルホン化剤とにマイクロ波を照射して、脱水縮合反応を行うことにより、式(2)
【化2】

で表されるジフェニルスルホン化合物を製造する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
【化1】
(式中、Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基又は炭素数7〜10のアラルキル基であり、mは0〜4の整数である。)で表される化合物とスルホン化剤とにマイクロ波を照射して、脱水縮合反応を行うことにより、式(2)
【化2】
(式中、Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基又は炭素数7〜10のアラルキル基であり、mは0〜4の整数である。)
で表されるジフェニルスルホン化合物を製造することを特徴とする、ジフェニルスルホン化合物の製造方法。
【請求項2】
前記脱水縮合反応は、溶媒の存在下で行うことを特徴とする、請求項1に記載のジフェニルスルホン化合物の製造方法。
【請求項3】
前記溶媒の使用量が、前記スルホン化剤1質量部に対して、1.0〜2.5質量部であることを特徴とする、請求項2に記載のジフェニルスルホン化合物の製造方法。
【請求項4】
前記式(1)で表される化合物の使用量が、前記スルホン化剤1.0モルに対して、2.0〜3.0モルであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のジフェニルスルホン化合物の製造方法。
【請求項5】
前記脱水縮合反応は、ホウ素化合物の存在下で行うことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のジフェニルスルホン化合物の製造方法。
【請求項6】
前記ホウ素化合物の使用量が、前記スルホン化剤1.0モルに対して、0.001〜0.5モルであることを特徴とする、請求項5に記載のジフェニルスルホン化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジフェニルスルホン化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンは、染色助剤、感熱紙用顕色剤として古くから使用されてきた化合物である。近年、環境ホルモンの疑いがあるビスフェノールAの代替品として、また、スーパーエンジニアプラスチックモノマーとして、当該ジフェニルスルホン化合物の需要が拡大している。
【0003】
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの従来の合成法としては、フェノールとスルホン化剤(例えば、濃硫酸、無水硫酸、発煙硫酸、クロロスルホン酸等)とを高温で加熱処理することにより脱水縮合させる方法がある。しかし、当該方法は、反応の進行が遅く、高温、長時間を要し、結果として不純物の増加、収率の低下を招いてしまうため、改良された方法が種々検討されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、フェノールとスルホン化剤とを、亜鉛化合物、鉄化合物、マグネシウム化合物、ホウ素化合物およびリン化合物からなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物の存在下で、高温で加熱処理することにより、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを製造する方法が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、フェノールと硫酸とを、不活性溶剤の不存在下、高温で加熱処理することにより、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭57−35559号公報
【特許文献2】特開平2−235857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のような従来技術は、反応温度および反応時間の観点から未だ改善の余地がある。
【0008】
本発明の一態様は、短時間かつ比較的低温において、収率よく4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを含むジフェニルスルホン化合物を製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、フェノール類とスルホン化剤とにマイクロ波を照射することにより、従来技術よりも低温かつ短時間で、脱水縮合反応が進行することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明に係るジフェニルスルホン化合物の製造方法は、以下の構成からなる。
【0011】
〔1〕式(1)
【0012】
【化1】
【0013】
(式中、Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基又は炭素数7〜10のアラルキル基であり、mは0〜4の整数である。)で表される化合物とスルホン化剤とにマイクロ波を照射して、脱水縮合反応を行うことにより、式(2)
【0014】
【化2】
【0015】
(式中、Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基又は炭素数7〜10のアラルキル基であり、mは0〜4の整数である。)で表されるジフェニルスルホン化合物を製造することを特徴とする、ジフェニルスルホン化合物の製造方法。
【0016】
〔2〕前記脱水縮合反応は、溶媒の存在下で行うことを特徴とする、〔1〕に記載のジフェニルスルホン化合物の製造方法。
【0017】
〔3〕前記溶媒の使用量が、前記スルホン化剤1質量部に対して、1.0〜2.5質量部であることを特徴とする、〔2〕に記載のジフェニルスルホン化合物の製造方法。
【0018】
〔4〕前記式(1)で表される化合物の使用量が、前記スルホン化剤1.0モルに対して、2.0〜3.0モルであることを特徴とする、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のジフェニルスルホン化合物の製造方法。
【0019】
〔5〕前記脱水縮合反応は、ホウ素化合物の存在下で行うことを特徴とする、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のジフェニルスルホン化合物の製造方法。
【0020】
〔6〕前記ホウ素化合物の使用量が、前記スルホン化剤1.0モルに対して、0.001〜0.5モルであることを特徴とする、〔5〕に記載のジフェニルスルホン化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一態様によれば、短時間かつ比較的低温において、収率よく4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを含むジフェニルスルホン化合物を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】脱水縮合反応の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、記述した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。なお、本明細書においては特記しない限り、数値範囲を表す「A〜B」は、「A以上、B以下」を意味する。
【0024】
本発明の一実施形態に係るジフェニルスルホン化合物の製造方法は、式(1)
【0025】
【化3】
【0026】
で表される化合物とスルホン化剤とにマイクロ波を照射して、脱水縮合反応を行うことにより、式(2)
【0027】
【化4】
【0028】
で表されるジフェニルスルホン化合物を製造する。
【0029】
上記式(1)において、Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基又は炭素数7〜10のアラルキル基である。
【0030】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、およびヨウ素原子等が挙げられる。これらのなかでも、塩素、臭素、およびヨウ素が好ましく、塩素がより好ましい。
【0031】
炭素数1〜5のアルキル基としては、直鎖状であっても分枝状であってもよく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、およびネオペンチル基等が挙げられる。これらのなかでも、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、およびn−ペンチル基が好ましく、メチル基、およびエチル基がより好ましい。
【0032】
炭素数6〜10のアリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、およびナフチル基等が挙げられる。これらのなかでも、フェニル基、およびトリル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
【0033】
炭素数7〜10のアラルキル基としては、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、およびフェニルブチル基等が挙げられる。これらのなかでも、ベンジル基、フェニルエチル基、およびフェニルプロピル基が好ましく、ベンジル基、およびフェニルエチル基がより好ましい。
【0034】
mは、0〜4の整数であり、好ましくは0〜3の整数であり、より好ましくは0〜2の整数である。
【0035】
式(1)で表される化合物としては、フェノールおよびフェノール誘導体が挙げられる。フェノール誘導体としては、具体的には、フルオロフェノール、クロロフェノール、ブロモフェノール、ヨードフェノール、メチルフェノール、エチルフェノール、n−プロピルフェノール、イソプロピルフェノール、n−ブチルフェノール、イソブチルフェノール、sec―ブチルフェノール、tert−ブチルフェノール、n−ペンチルフェノール、1−メチルブチルフェノール、2−メチルブチルフェノール、1−エチルプロピルフェノール、ネオペンチルフェノール、フェニルフェノール、トリルフェノール、キシリルフェノール、メシチルフェノール、ナフチルフェノール、ベンジルフェノール、フェニルエチルフェノール、フェニルプロピルフェノール、およびフェニルブチルフェノール等が挙げられる。これらの中でも、フェノール、クロロフェノール、ブロモフェノール、ヨードフェノール、メチルフェノール、エチルフェノール、n−プロピルフェノール、n−ブチルフェノール、ペンチルフェノール、フェニルフェノール、トリルフェノール、ベンジルフェノール、フェニルエチルフェノール、およびフェニルプロピルフェノールが好ましく、フェノール、クロロフェノール、メチルフェノール、エチルフェノール、フェニルフェノール、ベンジルフェノール、およびフェニルエチルフェノールがより好ましい。
【0036】
上記式(1)で表される化合物と反応させるスルホン化剤としては、硫酸、無水硫酸、発煙硫酸、クロロスルホン酸、ビス(二酸化硫黄)−1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン付加物、二酸化硫黄1−メチルピロリジン付加物、二亜硫酸二ナトリウム、および二亜硫酸二カリウム等が挙げられる。これらのなかでも、硫酸、無水硫酸、発煙硫酸、およびクロロスルホン酸が好ましく、硫酸、および発煙硫酸がより好ましい。これらのスルホン化剤は、1種を単独で使用してもよいし、同時に2種以上を使用してもよい。
【0037】
上記式(2)において、Rおよびmは、上記式(1)において定義されたとおりである。
【0038】
式(2)で表される化合物としては、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン誘導体が挙げられる。4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン誘導体としては、具体的には、ジフルオロ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ジクロロ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ジブロモ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ジヨード−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ジメチルジヒドロキシジフェニルスルホン、ジエチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ジ−n−プロピル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ジイソプロピル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ジ−n−ブチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ジイソブチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ジ−sec―ブチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ジ−tert−ブチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ジ−n−ペンチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ジ−1−メチルブチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ジ−2−メチルブチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ジ−1−エチルプロピル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ジネオペンチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ジフェニル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ジトリル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ジキシリル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ジメシチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ジナフチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ジベンジル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ジフェニルエチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ジフェニルプロピル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、およびジフェニルブチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン等が挙げられる。
【0039】
脱水縮合反応において、式(1)で表される化合物の使用量は、これに限定されるものではないが、スルホン化剤1.0モルに対して、2.0モル以上であることが好ましい。また、式(1)で表される化合物の使用量は、スルホン化剤1.0モルに対して、3.0モル以下であることが好ましく、2.5モル以下であることがより好ましく、2.2モル以下であることが更に好ましい。スルホン化剤1.0モルに対して、式(1)で表される化合物の使用量が2.0モル以上、3.0モル以下であれば、反応系内のスルホン化剤および式(1)の化合物がバランスよく消費され、未反応のまま残存する化合物の量が少なく、ジフェニルスルホン化合物の収率が向上するため、好ましい。
【0040】
上記式(1)で表される化合物とスルホン化剤とに、マイクロ波を照射することにより、脱水縮合反応が進行する。
【0041】
図1は、脱水縮合反応の一例を示す図である。図1に示すように、式(1)で表される化合物とスルホン化剤(図1においてはフェノールと硫酸)とが脱水反応を起こし、フェニルスルホン化合物(図1においてはp−フェノールスルホン酸(PSA))と水とが生成する。次いで、このフェニルスルホン化合物と式(1)で表される化合物とが縮合反応を起こし、式(2)で表される4,4’体のジフェニルスルホン化合物(図1においては4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン)、異性体である2,4’体(図1においては、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン)、副生成物であるtri体(図1においてはトリヒドロキシトリフェニルジスルホン)、および水が生成される。
【0042】
上記の反応系は、常温においていくらかの粘性を有する。そのため、オイルバスまたはヒーター等の従来の伝熱加熱により脱水縮合反応を進行させる場合、混合を行っても、系内の温度を均一にすることは困難である。したがって、反応容器の壁面付近においては、高温で反応が進行するが、反応容器の中心部は温度が低いままであり、反応が進行しにくい。反応容器の中心部が十分な温度に達するまで加熱を続けると、反応容器の壁面付近においては、高温で長時間の反応が進行する結果、多量の副生成物が生成しやすい。
【0043】
これに対し、マイクロ波を照射することにより、従来の伝熱加熱に比べて、反応系の全体を効率的に短時間で加熱することができ、加熱ムラが生じにくい。特に、式(1)で表される化合物とスルホン化剤との脱水縮合反応において生じる水は、マイクロ波を優先的に吸収するため、速やかに気化する。したがって、気化した水を液相から除去することにより、脱水縮合反応を推し進めることができる。その結果、式(1)で表される化合物の沸点付近まで高温にする必要なしに、良好な反応速度で、反応を進行させることができる。これにより、比較的低温かつ短時間で、所望の収量のジフェニルスルホン化合物を得ることができ、また、副生成物の生成を抑えることができる。
【0044】
本発明の一実施形態に係るジフェニルスルホン化合物の製造方法において、脱水縮合反応における反応系の温度は、良好な速度で反応を進行させるために、115℃以上となるように加熱されることが好ましく、125℃以上となるように加熱されることがより好ましい。また、脱水縮合反応における反応系の温度は、副生成物の生成を抑制するために、190℃以下であることが好ましく、180℃以下であることがより好ましい。
【0045】
反応系を昇温させてから、反応系の温度を一定時間、上記の好ましい温度範囲に保持することが好ましい。上記保持時間は、反応系のスケール等に応じて適宜に設定することができるが、収率を高めるために、例えば、120分以上であることが好ましく、200分以上であることがより好ましい。また、副生成物の生成を抑制し、生産性を高めるために、700分以下であることが好ましく、670分以下であることがより好ましい。
【0046】
マイクロ波の周波数は、特に限定されず、300MHzから300GHzの任意の周波数であってよく、例えば、2.45GHzであってもよく、5.8GHzであってもよく、24GHzであってもよく、915MHzであってもよく、896MHzであってもよく、434MHzであってもよい。また単一の周波数のマイクロ波が照射されてもよいし、複数の周波数のマイクロ波が照射されてもよい。複数の周波数を照射する場合、異なる時間に複数の周波数を照射してもよいし、同じ時間に複数の周波数を照射してもよい。マイクロ波の照射は、シングルモードで行なわれてもよいし、マルチモードで行なわれてもよい。
【0047】
マイクロ波の出力は、反応系の温度が上記の好ましい温度範囲に速やかに到達し、その温度が維持することができれば、特に限定されるものではない。
【0048】
反応系の温度を昇温後、所望の温度範囲に保持するために、マイクロ波の照射方法および出力を適宜に変化させてもよい。例えば、マイクロ波は、連続的に照射してもよく、断続的に照射してもよい。また、所望の昇温速度に応じて、マイクロ波の出力を変化させてもよい。
【0049】
反応系の温度均一性を高めるために、脱水縮合反応は、式(1)で表される化合物とスルホン化剤とを混合しながら行うことが好ましい。これにより、反応系の温度均一性が一層高まるとともに、式(1)で表される化合物とスルホン化剤との接触機会を増大させて、反応速度を高めることができる。
【0050】
本発明の一実施形態に係るジフェニルスルホン化合物の製造方法において、脱水縮合反応を、ホウ素化合物の存在下で行うことにより、反応速度をさらに高めることができる。
【0051】
本発明において好適に使用されるホウ素化合物としては、ホウ酸;ホウ酸塩、例えば、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸アンモニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸マグネシウム、四ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸カリウム、四ホウ酸リチウム、四ホウ酸アンモニウム、四ホウ酸リチウム、メタホウ酸ナトリウム、メタホウ酸カルシウム、メタホウ酸リチウム、メタホウ酸カリウム、およびホウ砂;酸化ホウ素;並びに、水素化ホウ素塩、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、および水素化ホウ素カリウム等が挙げられる。これらの中でホウ酸、および酸化ホウ素が好ましく、ホウ酸がより好ましい。これらのホウ素化合物は、1種を単独で使用してもよいし、同時に2種以上を使用してもよい。
【0052】
上記ホウ素化合物の使用量は、反応速度の向上効果を十分に発揮するために、スルホン化剤1.0モルに対して、0.001モル以上であることが好ましく、0.005モル以上であることがより好ましい。また、ホウ素化合物の使用量は、ホウ素化合物自体の分解反応により反応速度の向上効果が得られにくくなることから、スルホン化剤1.0モルに対して、0.5モル以下であることが好ましく、0.1モル以下であることがより好ましい。
【0053】
また、上述の特許文献1および2に開示される従来の方法においては、過剰量のフェノールが、反応溶媒としての作用を実質的に果たしている。そのため、これらの方法において反応を確実に進行させるには、フェノールの沸点(約182℃)付近またはそれ以上の温度に加熱する必要がある。しかしながら、このような高温で反応させた場合も、反応速度は緩やかであるため、所望の収量を得るためには長時間を要する。したがって、高温で長時間反応させることにより、副生成物が増加し、収率が低下するという問題がある。
【0054】
これに対し、本発明の一実施形態において、脱水縮合反応を、原料化合物および生成物との反応性を有しない溶媒の存在下で行うことにより、従来の方法ほど高温にする必要なしに、脱水反応により生じる水の気化を促し、反応速度をさらに高めることができる。
【0055】
さらに、反応系に溶媒が存在することにより、反応系の温度が好ましい範囲となるように制御しやすい。またさらに、反応系に溶媒が存在することにより、反応系内の原料化合物および生成物の分離および再利用が容易になる。
【0056】
本発明において好適に使用される溶媒としては、反応系内の式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物およびスルホン化剤との反応性官能基を有しない非極性溶媒が挙げられる。また、上記溶媒は、脱水縮合反応の好ましい温度範囲内に沸点を有することが好ましい。
【0057】
このような溶媒としては、芳香族炭化水素溶媒、例えば、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、およびメシチレン等、芳香族ハロゲン化炭化水素溶媒、例えばクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、p−ジクロロベンゼン、ブロモベンゼン、およびヨードベンゼン等、並びに、脂肪族または脂環式炭化水素溶媒、例えば、オクタン、ノナン、デカン、エチルシクロヘキサン、n−プロピルシクロヘキサン、イソプロピルシクロヘキサン、ブチルシクロヘキサン、イソブチルシクロヘキサン、およびtert−ブチルシクロヘキサン等が挙げられる。
【0058】
上記溶媒の使用量は、水の気化を促し、反応速度の向上効果を十分に発揮するために、スルホン化剤1質量部に対して、1.0質量部以上であることが好ましく、1.2質量部以上であることがより好ましい。また、溶媒の使用量は、生産性を高めるために、スルホン化剤1質量部に対して、2.5質量部以下であることが好ましく、2.4質量部以下であることがより好ましい。
【0059】
特に好ましい実施形態において、脱水縮合反応を、溶媒およびホウ素化合物の存在下で行うことが好ましい。これにより、反応系の温度をより低温にすることが可能であり、また、反応速度を一層高めることができる。
【0060】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0061】
以下、実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、これらの実施例により本発明の範囲が限定されるものではない。実施例中の「%」は特に断りのない限り質量%を意味する。
【0062】
<実施例1>
反応容器として、攪拌装置、ディーン・スターク管および冷却管を備えた500mLの四つ口フラスコを用意した。
【0063】
フェノール58.3g(0.62mol)、メシチレン51.9g、および98%硫酸30.6g(0.31mol)を上記反応容器に仕込み、撹拌回転数250rpmで撹拌しながらマイクロ波(周波数2.45GHz、出力230W、マルチモード)を照射することにより、反応系内の温度が150℃になるまで加熱した。反応系内の温度が150℃に達した後で、ディーン・スターク管によって脱水を行ないつつ、反応系内の温度を150℃〜164℃に保ち、5時間40分の間還流を行ない、粗生成物を得た。
【0064】
得られた粗生成物を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(NexeraXR、株式会社島津製作所製)を用いて、下記分析条件により分析した。
【0065】
[分析条件]
カラム:YMC−Pack ODS−A(5μm、6.0mmφ×30cm;株式会社ワイエムシィ製)
カラム温度:40℃
移動相:アセトニトリル/0.05Mリン酸二水素一カリウム緩衝溶液=30/70(v/v)
流量:1.0mL/分
検出波長:225nm
分析の結果、生成物として4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(4,4’体)、異性体として2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(2,4’体)、副生成物としてトリヒドロキシトリフェニルジスルホン(tri体)、p−フェノールスルホン酸(PSA)、および、未反応の化合物としてフェノール(PhOH)を検出した。これらの質量比は、4,4’体/2,4’体/tri体/PSA/PhOH=87.4/8.4/2.1/1.8/0.2であった。また、硫酸の使用量に対する4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの収量(対硫酸収率)は、76.8%であった。反応条件を以下の表1に示す。また、結果を以下の表2に示す。
【0066】
<実施例2>
実施例1と同様にして、フェノール58.3g(0.62mol)、クロロベンゼン66.6g、および98%硫酸30.6g(0.31mol)を反応容器に仕込み、撹拌回転数250rpmで撹拌しながらマイクロ波(周波数2.45GHz、出力200W、マルチモード)を照射することにより、反応系内の温度が128℃になるまで加熱した。反応系内の温度が128℃に達した後で、ディーン・スターク管によって脱水を行ないつつ、反応系内の温度を128℃〜132℃に保ち、10時間30分の間還流を行ない、粗生成物を得た。
【0067】
得られた粗生成物を、実施例1と同様にしてHPLCにより分析した。分析の結果、生成物として4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(4,4’体)、異性体として2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(2,4’体)、副生成物としてトリヒドロキシトリフェニルジスルホン(tri体)、p−フェノールスルホン酸(PSA)、および、未反応の化合物としてフェノール(PhOH)を検出した。これらの質量比は、4,4’体/2,4’体/tri体/PSA/PhOH=63.6/20.7/0.7/9.7/5.4であった。また、硫酸の使用量に対する4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの収量(対硫酸収率)は、63.2%であった。反応条件を以下の表1に示す。また、結果を以下の表2に示す。
【0068】
<実施例3>
実施例1と同様にして、フェノール58.3g(0.62mol)、デカン43.8g、および98%硫酸30.6g(0.31mol)を反応容器に仕込み、撹拌回転数250rpmで撹拌しながらマイクロ波(周波数2.45GHz、出力230W、マルチモード)を照射することにより、反応系内の温度が147℃になるまで加熱した。反応系内の温度が147℃に達した後で、ディーン・スターク管によって脱水を行ないつつ、反応系内の温度を147℃〜174℃に保ち、6時間還流を行ない、粗生成物を得た。
【0069】
得られた粗生成物を、実施例1と同様にしてHPLCにより分析した。分析の結果、生成物として4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(4,4’体)、異性体として2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(2,4’体)、副生成物としてトリヒドロキシトリフェニルジスルホン(tri体)、p−フェノールスルホン酸(PSA)、および、未反応の化合物としてフェノール(PhOH)を検出した。これらの質量比は、4,4’体/2,4’体/tri体/PSA/PhOH=81.9/7.6/6.0/2.6/1.9であった。また、硫酸の使用量に対する4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの収量(対硫酸収率)は、75.8%であった。反応条件を以下の表1に示す。また、結果を以下の表2に示す。
【0070】
<実施例4>
実施例1と同様にして、フェノール58.3g(0.62mol)、メシチレン51.9g、ホウ酸1.0g(0.02mol)、および98%硫酸30.6g(0.31mol)を反応容器に仕込み、撹拌回転数250rpmで撹拌しながらマイクロ波(周波数2.45GHz、出力230W、マルチモード)を照射することにより、反応系内の温度が150℃になるまで加熱した。反応系内の温度が150℃に達した後で、ディーン・スターク管によって脱水を行ないつつ、反応系内の温度を150℃〜164℃に保ち、5時間還流を行ない、粗生成物を得た。
【0071】
得られた粗生成物を、実施例1と同様にしてHPLCにより分析した。分析の結果、生成物として4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(4,4’体)、異性体として2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(2,4’体)、副生成物としてトリヒドロキシトリフェニルジスルホン(tri体)、p−フェノールスルホン酸(PSA)、および、未反応の化合物としてフェノール(PhOH)を検出した。これらの質量比は、4,4’体/2,4’体/tri体/PSA/PhOH=91.4/4.6/1.6/0.5/1.9であった。また、硫酸の使用量に対する4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの収量(対硫酸収率)は、87.6%であった。反応条件を以下の表1に示す。また、結果を以下の表2に示す。
【0072】
<実施例5>
実施例1と同様にして、フェノール58.3g(0.62mol)、メシチレン51.9g、ホウ酸0.2g(0.0032mol)、および98%硫酸30.6g(0.31mol)を反応容器に仕込み、撹拌回転数250rpmで撹拌しながらマイクロ波(周波数2.45GHz、出力230W、マルチモード)を照射することにより、反応系内の温度が150℃になるまで加熱した。反応系内の温度が150℃に達した後で、ディーン・スターク管によって脱水を行ないつつ、反応系内の温度を150℃〜164℃に保ち、5時間10分の間還流を行ない、粗生成物を得た。
【0073】
得られた粗生成物を、実施例1と同様にしてHPLCにより分析した。分析の結果、生成物として4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(4,4’体)、異性体として2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(2,4’体)、副生成物としてトリヒドロキシトリフェニルジスルホン(tri体)、p−フェノールスルホン酸(PSA)、および、未反応の化合物としてフェノール(PhOH)を検出した。これらの質量比は、4,4’体/2,4’体/tri体/PSA/PhOH=92.5/4.1/1.9/0.8/0.8であった。また、硫酸の使用量に対する4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの収量(対硫酸収率)は、91.4%であった。反応条件を以下の表1に示す。また、結果を以下の表2に示す。
【0074】
<実施例6>
実施例1と同様にして、フェノール58.3g(0.62mol)、クロロベンゼン66.6g、ホウ酸1.0g(0.02mol)、および98%硫酸30.6g(0.31mol)を反応容器に仕込み、撹拌回転数250rpmで撹拌しながらマイクロ波(周波数2.45GHz、出力200W、マルチモード)を照射することにより、反応系内の温度が128℃になるまで加熱した。反応系内の温度が128℃に達した後で、ディーン・スターク管によって脱水を行ないつつ、反応系内の温度を128℃〜132℃に保ち、7時間30分の間還流を行ない、粗生成物を得た。
【0075】
得られた粗生成物を、実施例1と同様にしてHPLCにより分析した。分析の結果、生成物として4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(4,4’体)、異性体として2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(2,4’体)、副生成物としてトリヒドロキシトリフェニルジスルホン(tri体)、p−フェノールスルホン酸(PSA)、および、未反応の化合物としてフェノール(PhOH)を検出した。これらの質量比は、4,4’体/2,4’体/tri体/PSA/PhOH=87.4/9.1/1.6/0.2/1.7であった。また、硫酸の使用量に対する4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの収量(対硫酸収率)は、83.4%であった。反応条件を以下の表1に示す。また、結果を以下の表2に示す。
【0076】
<実施例7>
実施例1と同様にして、フェノール58.3g(0.62mol)、デカン43.8g、ホウ酸1.0g(0.02mol)、および98%硫酸30.6g(0.31mol)を反応容器に仕込み、撹拌回転数250rpmで撹拌しながらマイクロ波(周波数2.45GHz、出力230W、マルチモード)を照射することにより、反応系内の温度が147℃になるまで加熱した。反応系内の温度が147℃に達した後で、ディーン・スターク管によって脱水を行ないつつ、反応系内の温度を147℃〜174℃に保ち、6時間還流を行ない、粗生成物を得た。
【0077】
得られた粗生成物を、実施例1と同様にしてHPLCにより分析した。分析の結果、生成物として4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(4,4’体)、異性体として2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(2,4’体)、副生成物としてトリヒドロキシトリフェニルジスルホン(tri体)、p−フェノールスルホン酸(PSA)、および、未反応の化合物としてフェノール(PhOH)を検出した。これらの質量比は、4,4’体/2,4’体/tri体/PSA/PhOH=88.5/3.5/6.5/1.3/0.1であった。また、硫酸の使用量に対する4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの収量(対硫酸収率)は、77.4%であった。反応条件を以下の表1に示す。また、結果を以下の表2に示す。
【0078】
<比較例1>
フェノール58.3g(0.62mol)、メシチレン51.9g、および98%硫酸30.6g(0.31mol)を、実施例1と同様の反応容器に仕込み、撹拌回転数250rpmで撹拌しながら、180℃のオイルバスにより、反応容器の中心部の温度が150℃になるまで加熱した。上記温度が150℃に達した後で、ディーン・スターク管によって脱水を行ないつつ、上記温度を150℃〜164℃に保ち、5時間40分の間還流を行ない、粗生成物を得た。
【0079】
得られた粗生成物を、実施例1と同様にしてHPLCにより分析した。分析の結果、生成物として4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(4,4’体)、異性体として2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(2,4’体)、副生成物としてトリヒドロキシトリフェニルジスルホン(tri体)、p−フェノールスルホン酸(PSA)、および、未反応の化合物としてフェノール(PhOH)を検出した。これらの質量比は、4,4’体/2,4’体/tri体/PSA/PhOH=67.8/13.8/1.4/11.5/5.5であった。また、硫酸の使用量に対する4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの収量(対硫酸収率)は、67.6%であった。反応条件を以下の表1に示す。また、結果を以下の表2に示す。
【0080】
<比較例2>
フェノール58.3g(0.62mol)、クロロベンゼン66.6g、および98%硫酸30.6g(0.31mol)を、実施例1と同様の反応容器に仕込み、撹拌回転数250rpmで撹拌しながら、170℃のオイルバスにより、反応容器の中心部の温度が128℃になるまで加熱した。上記温度が128℃に達した後で、ディーン・スターク管によって脱水を行ないつつ、上記温度を128℃〜132℃に保ち、10時間30分の間還流を行ない、粗生成物を得た。
【0081】
得られた粗生成物を、実施例1と同様にしてHPLCにより分析した。分析の結果、生成物として4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(4,4’体)、異性体として2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(2,4’体)、副生成物としてトリヒドロキシトリフェニルジスルホン(tri体)、p−フェノールスルホン酸(PSA)、および、未反応の化合物としてフェノール(PhOH)を検出した。これらの質量比は、4,4’体/2,4’体/tri体/PSA/PhOH=52.8/23.5/0.5/16.3/7.0であった。また、硫酸の使用量に対する4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの収量(対硫酸収率)は、55.9%であった。反応条件を以下の表1に示す。また、結果を以下の表2に示す。
【0082】
<比較例3>
フェノール58.3g(0.62mol)、デカン43.8g、および98%硫酸30.6g(0.31mol)を、実施例1と同様の反応容器に仕込み、撹拌回転数250rpmで撹拌しながら、190℃のオイルバスにより、反応容器の中心部の温度が147℃になるまで加熱した。上記温度が147℃に達した後で、ディーン・スターク管によって脱水を行ないつつ、上記温度を147℃〜174℃に保ち、6時間還流を行ない、粗生成物を得た。
【0083】
得られた粗生成物を、実施例1と同様にしてHPLCにより分析した。分析の結果、生成物として4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(4,4’体)、異性体として2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(2,4’体)、副生成物としてトリヒドロキシトリフェニルジスルホン(tri体)、p−フェノールスルホン酸(PSA)、および、未反応の化合物としてフェノール(PhOH)を検出した。これらの質量比は、4,4’体/2,4’体/tri体/PSA/PhOH=79.5/7.6/3.0/8.5/1.5であった。また、硫酸の使用量に対する4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの収量(対硫酸収率)は、71.5%であった。反応条件を以下の表1に示す。また、結果を以下の表2に示す。
【0084】
<比較例4>
反応容器として、攪拌装置、および冷却管を備えた500mLの四つ口フラスコを用意した。
【0085】
フェノール58.3g(0.62mol)、メシチレン51.9g、および98%硫酸30.6g(0.31mol)を、上記反応容器に仕込み、撹拌回転数250rpmで撹拌しながら、マイクロ波(周波数2.45GHz、出力230W、マルチモード)を照射することにより、反応系内の温度が150℃になるまで加熱した。反応系内の温度が150℃に達した後で、脱水を行わずに、5時間40分の間還流を行ない、粗生成物を得た。
【0086】
得られた粗生成物を、実施例1と同様にしてHPLCにより分析した。分析の結果、生成物として4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(4,4’体)、異性体として2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(2,4’体)、副生成物としてトリヒドロキシトリフェニルジスルホン(tri体)、p−フェノールスルホン酸(PSA)、および、未反応の化合物としてフェノール(PhOH)を検出した。これらの質量比は、4,4’体/2,4’体/tri体/PSA/PhOH=5.8/3.7/1.3/69.8/19.3であった。また、硫酸の使用量に対する4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの収量(対硫酸収率)は、4.8%であった。反応条件を以下の表1に示す。また、結果を以下の表2に示す。
【0087】
<比較例5>
フェノール58.3g(0.62mol)、クロロベンゼン66.6g、および98%硫酸30.6g(0.31mol)を、比較例4と同様の反応容器に仕込み、撹拌回転数250rpmで撹拌しながら、マイクロ波(周波数2.45GHz、出力200W、マルチモード)を照射することにより、反応系内の温度が128℃になるまで加熱した。反応系内の温度が128℃に達した後で、脱水を行わずに、10時間30分の間還流を行ない、粗生成物を得た。
【0088】
得られた粗生成物を、実施例1と同様にしてHPLCにより分析した。分析の結果、生成物として4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(4,4’体)、異性体として2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(2,4’体)、副生成物としてトリヒドロキシトリフェニルジスルホン(tri体)、p−フェノールスルホン酸(PSA)、および、未反応の化合物としてフェノール(PhOH)を検出した。これらの質量比は、4,4’体/2,4’体/tri体/PSA/PhOH=3.8/2.4/0.1/74.7/19.0であった。また、硫酸の使用量に対する4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの収量(対硫酸収率)は、3.1%であった。反応条件を以下の表1に示す。また、結果を以下の表2に示す。
【0089】
<比較例6>
フェノール58.3g(0.62mol)、デカン43.8g、および98%硫酸30.6g(0.31mol)を、比較例4と同様の反応容器に仕込み、撹拌回転数250rpmで撹拌しながら、マイクロ波(周波数2.45GHz、出力230W、マルチモード)を照射することにより、反応系内の温度が147℃になるまで加熱した。反応系内の温度が147℃に達した後で、脱水を行わずに、6時間還流を行ない、粗生成物を得た。
【0090】
得られた粗生成物を、実施例1と同様にしてHPLCにより分析した。分析の結果、生成物として4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(4,4’体)、異性体として2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(2,4’体)、副生成物としてトリヒドロキシトリフェニルジスルホン(tri体)、p−フェノールスルホン酸(PSA)、および、未反応の化合物としてフェノール(PhOH)を検出した。これらの質量比は、4,4’体/2,4’体/tri体/PSA/PhOH=10.0/5.5/0.05/57.8/26.5であった。また、硫酸の使用量に対する4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの収量(対硫酸収率)は、10.0%であった。反応条件を以下の表1に示す。また、結果を以下の表2に示す。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
溶媒としてメシチレンを使用した実施例1と比較例1との対比から、加熱手段としてマイクロ波を使用することにより、オイルバスを使用する場合に比べて、脱水縮合反応の反応速度が高まり、同じ反応時間で、4,4’体の収率が向上することが示された。溶媒としてクロロベンゼンを使用した実施例2と比較例2との対比、および、溶媒としてデカンを使用した実施例3と比較例3との対比からも、同様の結果が得られた。
【0094】
溶媒としてメシチレンを使用した実施例1と実施例4、5との対比から、ホウ酸を使用することにより反応速度が一層高まり、短い反応時間で4,4’体を高収率で得られることが示された。溶媒としてクロロベンゼンを使用した実施例2と実施例6との対比からも、同様の結果が得られた。また、溶媒としてデカンを使用した実施例3と実施例7との対比からも、ホウ酸を使用することにより、4,4’体を高収率で得られることが示された。
【0095】
また、実施例5の結果から、ホウ酸の使用量は、硫酸に対して僅か1モル%であっても、良好な触媒効果が得られることが示された。
【0096】
実施例1と比較例4との対比から、反応により生成した水を除去しない場合は、脱水縮合反応の反応速度が低下し、4,4’体の収率が著しく低下することが分かった。溶媒としてクロロベンゼンを使用した実施例2と比較例5との対比、および、溶媒としてデカンを使用した実施例3と比較例6との対比からも、同様の結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、染色助剤および感熱紙用顕色剤等の材料、ビスフェノールAの代替品、スーパーエンジニアプラスチックモノマー、その他これらに限定されない様々な用途に利用することができるジフェニルスルホン化合物の製造に好適に利用することができる。
図1
【手続補正書】
【提出日】2021年5月7日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
【化1】
(式中、Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基又は炭素数7〜10のアラルキル基であり、mは0〜4の整数である。)で表される化合物とスルホン化剤とにマイクロ波を照射して、反応により生成した水を除去しつつ、脱水縮合反応を行うことにより、式(2)
【化2】
(式中、Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基又は炭素数7〜10のアラルキル基であり、mは0〜4の整数である。)
で表されるジフェニルスルホン化合物を製造することを特徴とする、ジフェニルスルホン化合物の製造方法。
【請求項2】
前記脱水縮合反応は、溶媒の存在下で行うことを特徴とする、請求項1に記載のジフェニルスルホン化合物の製造方法。
【請求項3】
前記溶媒の使用量が、前記スルホン化剤1質量部に対して、1.0〜2.5質量部であることを特徴とする、請求項2に記載のジフェニルスルホン化合物の製造方法。
【請求項4】
前記式(1)で表される化合物の使用量が、前記スルホン化剤1.0モルに対して、2.0〜3.0モルであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のジフェニルスルホン化合物の製造方法。
【請求項5】
前記脱水縮合反応は、ホウ素化合物の存在下で行うことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のジフェニルスルホン化合物の製造方法。
【請求項6】
前記ホウ素化合物の使用量が、前記スルホン化剤1.0モルに対して、0.001〜0.5モルであることを特徴とする、請求項5に記載のジフェニルスルホン化合物の製造方法。