前記テトラカルボン酸二無水物に対する前記疎水性ポリオールを含むポリオールのモル比(全ポリオール/テトラカルボン酸二無水物)が1.1以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載のカルボキシル基含有ポリエステル樹脂。
請求項1〜4のいずれか1項に記載のカルボキシル基含有ポリエステル樹脂、又は、請求項5〜7のいずれか1項に記載のカルボキシル基含有エステルウレタン樹脂を含む樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態(本実施形態)について詳細に説明する。
[カルボキシル基含有ポリエステル樹脂]
本実施形態に係るカルボキシル基含有ポリエステル樹脂は、下記式(X)で表される構造を含む。
【0012】
上記式(X)中、R
1はテトラカルボン酸二無水物から酸無水物基を除いた有機基を表し、R
2は疎水性ポリオールから水酸基を除いた有機基を表す。上記のテトラカルボン酸二無水物及び疎水性ポリオールについては後述するが、当該有機基としては、芳香族炭化水素基、脂環族炭化水素基、脂肪族基、及び複素環基等が挙げられ、これらは適宜置換基を有していてもよい。
【0013】
本実施形態に係るカルボキシル基含有ポリエステル樹脂においては、テトラカルボン酸二無水物とポリマーポリオールである疎水性ポリオールとの反応により式(X)で表される構造が形成される。式(X)で示されるように、当該樹脂にはエステル結合を有するため、優れた耐熱性が発揮される。また、疎水性ポリオールに由来する構造(式(X中のR
2))を含むことで、エステル結合のそばに疎水性ポリオール成分の残基が配置されるので、エステル結合部分が水の攻撃を受けにくくなる。その結果、加水分解が抑えられて、優れた耐加水分解性が発揮されると推察される。
【0014】
また、本実施形態に係るカルボキシル基含有ポリエステル樹脂は、式(Y)で表される構造をさらに含むことが好ましい。式(Y)で表される構造をさらに含むことで、機械物性、耐熱性、柔軟性、溶剤への溶解性、接着剤とした際の接着力等をより向上させることができる。
【0016】
上記式(Y)中、R
1は式(X)と同様でテトラカルボン酸二無水物から酸無水物基を除いた有機基を表し、R
3は疎水性ポリオール以外のポリマーポリオールから水酸基を除いた有機基を表す。上記の疎水性ポリオール以外のポリマーポリオールについては後述する。また、上記の有機基は式(X)と同様である。
【0017】
(テトラカルボン酸二無水物)
テトラカルボン酸二無水物としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物(3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物)、3,3',4,4'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物(ODPA)、2,2',3,3'−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,2−[ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)]ヘキサフルオロプロパン二無水物、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、4,4’−[(イソプロピリデン)ビス(p−フェニレンオキシ)]ジフタル酸二無水物、p−フェニレンビス(トリメリテート無水物)(TAHQ)、非芳香族系酸二無水物(シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、メチルシクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、エタンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビシクロへキシルテトラカルボン酸二無水物)が挙げられる。
なかでも、耐熱性、耐加水分解性の観点から芳香族系テトラカルボン酸二無水物が好ましく、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、4,4’−オキシジフタル酸無水物、4,4’−[(イソプロピリデン)ビス(p−フェニレンオキシ)]ジフタル酸二無水物、p−フェニレンビス(トリメリテート無水物)(TAHQ)からなる群より選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。なお、これらテトラカルボン酸二無水物は、複数組み合わせることもできる。
【0018】
(疎水性ポリオール)
疎水性ポリオールは、好ましくはSP値が10.0未満であり、ダイマーポリオール;ポリイソプレンポリオール、ポリブタジエンポリオール、シリコーンポリオール、ポリオレフィンポリオール、あるいはこれらとスチレン若しくはアクリロニトリルとの共重合体、並びに、これらの水添物;フッ素ポリオール;ヒマシ油系ポリオール;等が挙げられる。なかでも、隣接するエステル結合の耐加水分解性の観点から、ダイマーポリオール(特に、ダイマージオール)、ポリブタジエンポリオールが好ましい。
【0019】
ここで、ダイマーポリオールとしては、ダイマージオール、トリマートリオール又はそれらの混合物が使用できる。ダイマージオールはダイマー酸のカルボキシ基を水酸基に還元して得られるポリオールであり、その分子中に不飽和結合を有しても有しなくてもよい。トリマートリオールも、ダイマージオールと同様にトリマー酸を還元して得られるポリオールであり、その分子中に不飽和結合を有しても有しなくてもよい。市販のダイマージオールは、通常、ダイマージオールとトリマートリオールを含む混合物である。ダイマーポリオールの水酸基価は、2mgKOH/g以上であることが好ましく、30mgKOH/g以上であることがより好ましい。また、ダイマーポリオールの水酸基価は、800mgKOH/g以下であることが好ましく、500mgKOH/g以下であることがより好ましく、300mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。
【0020】
また、ポリブタジエンポリオールとしては、1,2−ビニル構造を有するもの、1,2−ビニル構造と1,4−トランス構造とを有するもの、及び1,4−トランス構造を有するものが挙げられる。また、水添ポリブタジエンポリオールであってもよく、さらに、これらの変性体であってもよい。ポリブタジエンポリオールの重量平均分子量は300〜5000であることが好ましい。
【0021】
シリコーンポリオールとしては、ジメチルポリシロキサンの末端及び/又は側鎖に、ヒドロキシ基及び/又はヒドロキシ基を有する有機基を2個以上導入したものが挙げられ、例えば、カルビノール変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、シラノール末端シリコーンオイル等が挙げられる。
ポリオレフィンポリオールとしては、ポリブタジエングリコールおよびポリイソプレングリコール、または、その水素化物などが挙げられる。
【0022】
なお、既述のSP値は、ポリオールの水酸基を除いた構造についてFedors法で算出した溶解性パラメータ(SP値)を意味する。Fedors法によるSP値の算出方法については、例えば、R.F.Fedors:Polym.Eng.Sci.,14[2],147−154(1974)や、関西ペイント社発行の「塗料の研究 152号(2010年10月発行)」中の論文「添加剤の溶解性パラメータに関する考察」に記載されている。
【0023】
(疎水性ポリオール以外のポリマーポリオール)
疎水性ポリオール以外のポリマーポリオール(非疎水性ポリオール)としては、好ましくはSP値が10.0以上の非疎水性ポリオールであることが好ましい。非疎水性ポリオールの数平均分子量は300〜4000であることが好ましく、400〜1500であることがより好ましい。また、具体的には、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールからなる群より選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
上記のポリマーポリオールとしては、例えば、以下のものが挙げられる。
【0024】
(1)ポリカーボネートポリオール
ポリカーボネートポリオールとしては、ポリテトラメチレンカーボネートジオール、ポリペンタメチレンカーボネートジオール、ポリネオペンチルカーボネートジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンカーボネート)ジオール、及びこれらのランダム/ブロック共重合体などが挙げられる。
ポリカーボネートポリオールは、耐加水分解性、耐熱性に優れるので、ポリオールとして好適に用いることができる。
【0025】
(2)ポリエーテルポリオール
ポリエーテルポリオールとしては、アルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)および複素環式エーテル(テトラヒドロフランなど)のいずれかを重合または共重合して得られるものが挙げられる。具体的にはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリテトラメチレングリコール(ブロックまたはランダム)、ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよびポリヘキサメチレングリコールなどが挙げられる。
【0026】
(3)ポリエステルポリオール
ポリエステルポリオールとしては、脂肪族系ジカルボン酸類(例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸およびアゼライン酸など)、及び芳香族系ジカルボン酸(例えば、イソフタル酸およびテレフタル酸など)の少なくともいずれかと、低分子量グリコール類(例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコールおよび1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサンなど)と、を縮重合したものが挙げられる。
具体的にはポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンアジペートジオール、ポリネオペンチルアジペートジオール、ポリエチレン/ブチレンアジペートジオール、ポリネオペンチル/ヘキシルアジペートジオール、ポリ−3−メチルペンタンアジペートジオールおよびポリブチレンイソフタレートジオールなどが挙げられる。
【0027】
(4)ポリラクトンポリオール
ポリラクトンポリオールとしては、ポリカプロラクトンジオール及びポリ−3−メチルバレロラクトンジオールなどが挙げられる。
(5)ポリメタクリレートジオール
ポリメタクリレートジオールとしては、α,ω−ポリメチルメタクリレートジオールおよびα,ω−ポリブチルメタクリレートジオールなどが挙げられる。
【0028】
これらのポリオールは単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができるが、長期耐久性の観点からポリカーボネートポリオールを含むことが好ましい。
【0029】
なお、本明細書において、数平均分子量及び重量平均分子量は、それぞれポリスチレン換算の平均分子量であり、通常ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定により求めることができる。
【0030】
本実施形態に係るカルボキシル基含有ポリエステル樹脂は、既述のテトラカルボン酸無水物と、疎水性ポリオールと、必要に応じて疎水性ポリオール以外のポリマーポリオール等とを混合して、40〜150℃で1〜7時間程度反応させることで得られる。
なお、製造時には良好な溶解性を示す有機溶剤を使用してもよい。当該有機溶剤としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ニトロベンゼン、シクロヘキサン、イソホロン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、メトキシプロピオン酸メチル、メトキシプロピオン酸エチル、エトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソアミル、乳酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、クロロホルム及び塩化メチレン等が挙げられる。
特にトルエン、メチルエチルケトンが溶解性、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂を用いた組成物の乾燥性等から好ましい。
【0031】
カルボキシル基含有ポリエステル樹脂におけるカルボキシル基の量は、酸価で2〜200mgKOH/gであることが好ましく、5〜60mgKOH/gであることが好ましい。
酸価が小さすぎると、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂とエポキシ樹脂とが反応した後での架橋密度が低くなり、硬化物の耐熱性が優れたものとなり難い。一方で、酸価が大きすぎると架橋密度が高くなりすぎて歪を発生し易くなり、柔軟性に優れたものとなり難い。
なお、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂の酸価は、カルボキシル基含有エステル樹脂をメチルエチルケトン(MEK)などで溶液化して、JIS K1557−5:2007の方法に従って測定したものを意味する。
また、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、500〜100,000であることが好ましく、600〜50,000であることがより好ましい。
なお、重量平均分子量及び数平均分子量は、既述のとおりゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定した値を意味する。例えば、以下の装置、条件にて測定することができる。
(1)機器装置:商品名「HLC−8020」(東ソー社製)
(2)カラム:商品名「TSKgel G2000HXL」、「G3000HXL」、「G4000GXL」(東ソー社製)
(3)溶媒:THF
(4)流速:1.0ml/min
(5)試料濃度:2g/L
(6)注入量:100μL
(7)温度:40℃
(8)検出器:型番「RI−8020」(東ソー社製)
(9)標準物質:TSK標準ポリスチレン(東ソー社製)
【0032】
テトラカルボン酸二無水物に対する疎水性ポリオールを含むポリオール(全ポリオール)のモル比(全ポリオール/テトラカルボン酸二無水物)は1.1以上が好ましく、1.1〜50.0であることがより好ましく、1.1〜10.0であることがさらに好ましい。当該モル比が1.1以上であることで、カルボキシル基含有ポリエステルの末端を水酸基にすることができる。
【0033】
また、非疎水性ポリオールを使用する場合の非疎水性ポリオールと疎水性ポリオールの合計に対する疎水性ポリオールの含有量は、エステル結合の耐加水分解性の観点から10質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。より金属密着性を求める用途では、非疎水性ポリオールを20質量%以上(すなわち、疎水性ポリオールを50〜80質量%)含有することが好ましい。
【0034】
以上のような本実施形態に係るカルボキシル基含有ポリエステル樹脂は、種々の用途に利用できるが、例えば、後述のカルボキシル基含有エステルウレタン樹脂の原料として、あるいはエポキシ樹脂等とともに接着剤等として用いることができる。
【0035】
[カルボキシル基含有エステルウレタン樹脂]
本実施形態に係るカルボキシル基含有エステルウレタン樹脂は、本発明のカルボキシル基含有ポリエステル樹脂とジイソシアネートとの反応生成物である。具体的には、本発明のカルボキシル基含有ポリエステル樹脂とジイソシアネート等とを常温〜150℃程度で1〜8時間程度反応させて得ることができる。このような方法によれば、本発明のカルボキシル基含有ポリエステル樹脂の構造を保った状態でウレタン化することができるため効率的である。
なお、製造時には良好な溶解性を示す有機溶剤を使用してもよい。当該有機溶剤としては、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂を製造する際に使用するものが挙げられる。有機溶剤を使用した場合は、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂の樹脂溶液が得られる。
【0036】
(ジイソシアネート)
ここで、ジイソシアネートとしては、トルエンジイソシアネート、4−メトキシ−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−イソプロピル−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−クロル−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−ブトキシ−1,3−フェニレンジイソシアネート、2,4−ジイソシアネートジフェニルエーテル、4,4’−メチレンビス(フェニレンイソシアネート)(MDI:ジフェニルメタンジイソシアネートともいう)、ジュリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ベンジジンジイソシアネート、o−ニトロベンジジンジイソシアネートおよび4,4’−ジイソシアネートジベンジルなどの芳香族ジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートおよび1,10−デカメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加MDIおよび水素添加XDIなどの脂環式ジイソシアネートなどが挙げられる。
これらジイソシアネートのうち、優れた耐熱性が得られるという観点から、芳香族イソシアネートが好ましく、特に好ましいのは、トルエン−2,4−ジイソシアネート、トルエン−2,6−ジイソシアネート、それらの混合体、4,4’−メチレンビス(フェニレンイソシアネート)(MDI)である。これらのジイソシアネートは、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
(鎖伸長剤)
反応に際しては、下記のような鎖伸長剤を適宜混合してもよい。
(1)短鎖ジオール
短鎖ジオールとしては、数平均分子量が500未満の化合物であり、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサメチレングリコールおよびネオペンチルグリコールなどの脂肪族グリコール類およびそのアルキレンオキサイド低モル付加物(数平均分子量500未満)、1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサンおよび2−メチル−1,1−シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式系グリコール類およびそのアルキレンオキサイド低モル付加物(数平均分子量500未満)、キシリレングリコールなどの芳香族グリコール類およびそのアルキレンオキサイド低モル付加物(数平均分子量500未満)、ビスフェノールA、チオビスフェノールおよびスルホンビスフェノールなどのビスフェノール類およびそのアルキレンオキサイド低モル付加物(数平均分子量500未満)、およびC1〜C18のアルキルジエタノールアミンなどのアルキルジアルカノールアミン類などの化合物が挙げられる。また、カルボキシル基、スルホ基、燐酸基、アミノ基などのイオン性基を含むジオールを使用することができる。
【0038】
(2)短鎖ジアミン
短鎖ジアミンとしては、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンおよびオクタメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン化合物、フェニレンジアミン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−メチレンビス(フェニルアミン)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルおよび4,4’−ジアミノジフェニルスルホンなどの芳香族ジアミン化合物、シクロペンタンジアミン、シクロヘキシルジアミン、4,4−ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,4−ジアミノシクロヘキサンおよびイソホロンジアミンなどの脂環式ジアミン化合物、ヒドラジン、カルボジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジドなどのヒドラジン類などが挙げられる。
【0039】
本実施形態に係るカルボキシル基含有エステルウレタン樹脂の重量平均分子量は、柔軟性、接着性、耐熱性等の観点から、2,000〜1,000,000であることが好ましく、70,000〜600,000であることがより好ましく、100,000〜400,000であることがさらに好ましい。
【0040】
また、カルボキシル基含有エステルウレタン樹脂の酸価は、耐熱性、柔軟性の観点から、2〜200mgKOH/gであることが好ましく、5〜100mgKOH/gであることがより好ましく、5〜60mgKOH/gであることがさらに好ましい。
【0041】
[樹脂組成物]
本実施形態に係る樹脂組成物は、本発明のカルボキシル基含有ポリエステル樹脂、又は、本発明のカルボキシル基含有エステルウレタン樹脂を含む。
【0042】
さらに、本実施形態に係る樹脂組成物はエポキシ樹脂を含有することが好ましい。また、熱硬化に関わるエポキシ基とカルボキシル基の比率を調整することにより、特性を所望の範囲に設定することができる。具体的には、エポキシ基とカルボキシル基の比率は、エポキシ基/カルボキシル基(モル比)=10/1〜1/1が好ましく、より好ましくは、3/1〜1/1である。前記範囲を超えると、架橋性が悪くなる傾向にあり、耐熱性が低下する。
エポキシ樹脂の含有量は、本発明のカルボキシル基含有エステルウレタン樹脂100質量部に対して、2〜100質量部の範囲が好ましく、3〜60質量部の範囲がさらに好ましい。エポキシ樹脂の含有量が2質量部以上であると、架橋性は良好となり、また、100質量部以下であると架橋性が低下しにくくなるため、耐熱性や接着性等を良好にすることができる。
【0043】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、可撓性エポキシ樹脂、エポキシ化ポリブタジエン、アミン型エポキシ樹脂、複素環含有エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、ビキシレノール型エポキシ樹脂、グリシジル基を有する化合物などが挙げられる。これらは一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、特に限定されず、硬化物の機械的強度、密着性の観点点から、100〜10,000g/eqであることが好ましく、100〜400g/eqがより好ましい。
【0045】
エポキシ樹脂を含有する場合の樹脂組成物は、上記のエポキシ樹脂と、本発明のカルボキシル基含有ポリエステル樹脂、又は、本発明のカルボキシル基含有エステルウレタン樹脂とを混合することで作製することができる。作製する際には、既述のような有機溶剤などを用いることができる。
【0046】
本実施形態に係る樹脂組成物においては、必要に応じて、硬化促進剤、イソシアネート系架橋剤、熱可塑性ポリマー、粘着付与樹脂、顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、充填剤等を適量配合してもよい。
【0047】
本実施形態に係る樹脂組成物は、後述の接着剤をはじめ、加飾フィルム用樹脂組成物、ソルダーレジスト、電磁波シールドフィルム、塗料や表皮材といった用途に使用することができる。
【0048】
[接着剤]
本実施形態に係る接着剤は、本発明の樹脂組成物を含む。本実施形態の接着剤においては、必要に応じて、硬化促進剤、イソシアネート系架橋剤、熱可塑性ポリマー、粘着付与樹脂、顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、充填剤等を適量配合してもよい。
【0049】
本実施形態に係る接着剤は、被接着物に塗布後、好ましくは60〜170℃、より好ましくは120〜150℃の範囲で硬化して使用することが好ましい。
【0050】
本実施形態に係る接着剤としては、樹脂組成物を含むフレキシブルプリント基板用接着剤、カルボキシル基含有エステルウレタン樹脂を含む導電性接着剤、カルボキシル基含有エステルウレタン樹脂を含む放熱接着剤、カルボキシル基含有エステルウレタン樹脂を含む構造材料用接着剤等が挙げられる。
【実施例】
【0051】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、以下にある「部」は質量部、「%」は質量%を示す。
【0052】
使用した材料は下記のとおりである。
(1)ポリオール
・ダイマージオール(数平均分子量500、CRODA社製、商品名:PP2033)
・ポリブタジエンポリオール(数平均分子量1500、日本曹達(株)製、商品名:GI−1000)
・ポリカーボネートポリオールA(数平均分子量500、宇部興産(株)製、商品名:エタナコールUH50)
・ポリカーボネートポリオールB(数平均分子量1000、宇部興産(株)製、商品名:エタナコールUH100)
(2)酸無水物
・ピロメリット酸無水物(PMDA)
(3)イソシアネート
・ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)
(4)エポキシ樹脂
・エポキシ樹脂A(エポキシ当量184〜194g/eq 重量平均分子量370、三菱ケミカル(株)社製、商品名:jER828)
・エポキシ樹脂B(エポキシ当量450〜500g/eq 重量平均分子量900、三菱ケミカル(株)社製、商品名:jER1001)
【0053】
[製造例1]
<カルボキシル基含有ポリエステル樹脂及びカルボキシル基含有エステルウレタン樹脂>
撹拌機を備えたセパラブルフラスコに、表1に示す配合で、ポリオール、酸無水物、及びトルエン(TOL)を仕込み、100℃で5時間撹拌して、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂を作製した。酸価及び重量平均分子量について表1に示す。
【0054】
作製したカルボキシル基含有ポリエステル樹脂に溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)を仕込み、系内を撹拌した。系内が均一となった後、50℃で4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を仕込み、80℃で反応させて反応液を得た。反応液を溶剤たるメチルエチルケトン(MEK)で希釈することにより反応液の粘度を調整し、赤外吸収スペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基による2,270cm−1の吸収が消失するまで反応を進行させることで、カルボキシル基含有エステルウレタン樹脂溶液を得た。
【0055】
得られたカルボキシル基含有エステルウレタン樹脂Aの樹脂溶液について、下記の耐熱性試験及び耐加水分解性試験を行った。結果を下記表1に示す。
【0056】
(耐熱性試験)
得られたカルボキシル基含有エステルウレタン樹脂Aの樹脂溶液を離型紙の一面側全面上に塗布し、その後、100℃で10分間乾燥させた。なお、塗工は、乾燥後のカルボキシル基含有エステルウレタン樹脂の厚みが30μmとなる様に行った。その後、離型紙を剥離して、カルボキシル基含有エステルウレタン樹脂の膜からなる試験片を得た。
次に、TG−DTA((株)リガク製、TG8120)を用い、空気100ml/分の雰囲気下、常温から5℃/分で昇温を行ってTG−DTA曲線を得た。そして、50質量%の重量が減少した温度(50%減少温度)に注目し、耐熱性を判断した。
◎:50%減温度が400℃以上である。
○:50%減温度が380℃以上400℃未満である。
×:50%減温度が380℃未満である。
【0057】
(耐加水分解性試験)
耐熱性試験で得た試験片を6×8cmの大きさに切り出し、この試験片をPETフィルムの枠(枠の幅:1cm)に両面テープで貼り付けた。この状態で40℃の水中に全体を沈め、3日後の試験片の外観と分子量から耐加水分解性を評価した。評価指標は下記のようにした。
・外観
◎:目視での変化(穴やしわ、たるみ)が全く確認されない
〇:目視できる穴は無いが、しわやたるみが存在
×:目視できる穴空き有り
・分子量(Mp変化)
試験片を水中に沈める前のピークトップ分子量(Mp1)に対して、3日後の試験片のピークトップ分子量(Mp2)の変化率を下記式で求めた。
ピークトップ分子量の変化率(%)=Mp2/Mp1×100
なお、試験片のピークトップ分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC) によって測定した。
◎:変化率が98%以上
〇:変化率が90以上98%未満
×:変化率が90%未満
【0058】
<樹脂組成物>
表2に示す配合で、作製したカルボキシル基含有エステルウレタン樹脂の樹脂溶液にエポキシ樹脂を配合して樹脂組成物を作製した。
得られた樹脂組成物について、下記の金属密着性試験、耐熱性試験、耐湿熱性試験及び接着力試験を行った。結果を下記表2に示す。
【0059】
(金属密着性)
離型紙の一面側全面上に作製した樹脂組成物を塗布し、100℃℃で10分間加熱して乾燥させた後、離型紙を剥離して、厚さ15μmのフィルムを作製した。このフィルムをCu箔(寸法:50×50mm)に貼り付け、150℃で1分、1MPaで熱プレスした。その後、150℃、5時間で硬化させて試験片を作製した。金属密着性試験は、JIS K 5600−5−6に準拠し、カット間隔1mmで100マスのクロスカットを形成し、セロハンテープ剥離後の外観を観察して評価した。
◎:剥離無し
〇:剥離したマスが、50マス以上100マス未満
×:剥離したマスが、50マス未満
【0060】
(耐熱性:耐ハンダリフロー)
離型紙の一面側全面上に作製した樹脂組成物を塗布し、100℃で10分間加熱して乾燥させた後、離型紙を剥離して、厚さ30μmのフィルムを作製した。
フィルムを銅張積層板のCu面に貼り付け、さらにフィルム上に別の銅張積層板のCu面を重ね合わせ、150℃で1分間、1MPaで熱プレスした。その後、150℃、5時間で硬化させて試験片を作製した。この試験片を288℃のハンダ浴に30秒間浮かべた後の外観異常(浮き、剥がれ)を確認した。
◎:30秒間経過時点で異常無し
〇:20秒間経過時点で異常は無かったが、30秒間経過時点で異常発生
×:20秒間経過前に異常発生
【0061】
(耐湿熱性試験)
(1)フィルム破断強度
離型紙の一面側全面上に作製した樹脂組成物を塗布し、100℃℃で10分間加熱して乾燥させた後、離型紙を剥離して、厚さ30μmのフィルムを作製した後、150℃、5時間で硬化させて試験片を作成した。試験片を金属枠(寸法:5×8cm、枠の幅:1cm)に貼り付けて、70℃95%RHの湿熱槽に入れ、2週間後の物性(フィルム破断強度)を測定した。
フィルム破断強度はJIS K―7127に準拠して、オートグラフ(島津製作所製、AGS−J)を使用した測定法によって、室温(25℃)で測定して評価した。
試験片を湿熱槽に入れる前のフィルム破断強度(F1)に対して、2週間後の試験片のフィルム破断強度(F2)の変化率を下記式で求めた。
フィルム破断強度の変化率(%)=F2/F1×100
◎:変化率が90%以上
〇:変化率が80%以上90%未満
×:変化率が80%未満
【0062】
(2)接着力試験
離型紙の一面側全面上に作製した樹脂組成物を塗布し、100℃で10分間加熱して乾燥させた後、離型紙を剥離して、厚さ30μmのフィルムを作製した。このフィルムをCu箔(寸法:50×70mm)に貼り付けた。さらにポリイミドフィルムを重ね、150℃で1分、1MPaでプレスした。その後、150℃、5時間で硬化させて試験片を作製した。湿熱槽に入れ、2週間後の接着強度変化を測定した。
接着力試験は、オートグラフ(島津製作所製、AGS−J)を用いて幅10mm長さ70mmに切り出して、引張速度100mm/min、180度剥離することで強度を測定した。
試験片を湿熱槽に入れる前の接着強度(T1)に対して、2週間後の試験片の接着強度(T2)の変化率を下記式で求めた。
接着強度の変化率(%)=T2/T1×100
◎:変化率が80%以上
〇:変化率が50%以上80%未満
×:変化率が50%未満
【0063】
[製造例2〜9、製造比較例1〜3]
<カルボキシル基含有ポリエステル樹脂及びカルボキシル基含有エステルウレタン樹脂>
表1に示す配合とした以外は製造例1と同様にしてカルボキシル基含有エステルウレタン樹脂B〜Lの樹脂溶液を得た。得られたカルボキシル基含有エステルウレタン樹脂B〜Lの樹脂溶液について、製造例1と同様の耐熱性試験及び耐加水分解性試験を行った。結果を下記表1に示す。
【0064】
<樹脂組成物>
カルボキシル基含有エステルウレタン樹脂B〜Lの樹脂溶液について、下記表2に示す配合とした以外は実施例1と同様にして、実施例2〜9、比較例1〜3の樹脂組成物を得た。得られた各樹脂組成物について、実施例1と同様の耐熱性試験及び耐湿熱性試験を行った。結果を下記表2に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】