【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0013】
本発明は、
積層体を建築物内部空間の仕切りに用いて防火区画を形成する
方法であり、
上記積層体は、空間に吊り下げて設置され、
上記積層体
は、熱発泡性樹脂シート(A)の一方の面側に目付け100g/m
2以上2000g/m
2以下の無機繊維シート(B)、熱発泡性樹脂シート(A)のもう一方の面側に目付け100g/m
2未満の無機繊維シート(C)が配置されていることを特徴とするものである。なお、目付けとは、単位面積あたりの質量のことをいう。
【0014】
[熱発泡性樹脂シート(A)]
本発明の熱発泡性樹脂シート(A)とは、通常は薄膜であるが、火災等により周辺温度が所定の温度に達すると発泡し、炭化断熱層を形成するものである。本発明の熱発泡性樹脂シート(A)としては、熱可塑性樹脂、難燃剤、発泡剤、炭化剤、及び充填剤等を含むことが好ましい。これらの各成分は、火災発生時において、相互の複合作用によりシートの膨張、炭化断熱層形成、不燃性ガスの発生等の機能を発現することにより、優れた断熱性、耐熱保護性を発揮することができる。
【0015】
熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、公知のものを使用することができる。例えば、ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、酢酸ビニル樹脂等が挙げられる。また、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多加硫ゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等のゴム物質も使用することができる。これらは、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0016】
その中でも、本発明では、少なくとも熱発泡性シート製造温度が熱発泡性シートの膨張温度よりも低い温度で実施できるものを使用することが好ましい。このような熱可塑性樹脂として、具体的には、例えば、ビニルトルエン‐ブタジエン共重合体、ビニルトルエン‐アクリル酸エステル共重合体、ビニルトルエン‐メタクリル酸エステル共重合体、スチレン‐ブタジエン共重合体、エチレン‐酢酸ビニル共重合体、あるいはこれら共重合体を構成する2種のモノマーとアクリル酸モノマー、メタクリル酸モノマー等との三元共重合体等の樹脂が挙げられ、これらの1種または2種以上を含むことが好ましい。
【0017】
難燃剤は、一般に火災時に脱水冷却効果、不燃性ガス発生効果、熱可塑性樹脂の炭化促進効果等の少なくとも1つの効果を発揮し、熱可塑性樹脂の燃焼を抑制する作用を有するものである。本発明で用いる難燃剤としては、このような作用を有する限り特に制限されず、公知の難燃剤が使用できる。例えば、トリクレジルホスフェート、ジフェニルクレジルフォスフェート、ジフェニルオクチルフォスフェート、トリ(β−クロロエチル)フォスフェート、トリブチルフォスフェート、トリ(ジクロロプロピル)フォスフェート、トリフェニルフォスフェート、トリ(ジブロモプロピル)フォスフェート、クロロフォスフォネート、ブロモフォスフォネート、ジエチル−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノメチルフォスフェート、ジ(ポリオキシエチレン)ヒドロキシメチルフォスフォネート等の有機リン系化合物;塩素化ポリフェニル、塩素化ポリエチレン、塩化ジフェニル、塩化トリフェニル、五塩化脂肪酸エステル、パークロロペンタシクロデカン、塩素化ナフタレン、テトラクロル無水フタル酸等の塩素化合物;三酸化アンチモン、五塩化アンチモン等のアンチモン化合物;三塩化リン、五塩化リン、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン化合物;その他ホウ酸亜鉛、ホウ酸ソーダ等のホウ素化合物等が挙げられる。難燃剤は、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。また、これらは、未被覆品、被覆処理品のいずれであってもよい。特に、ポリリン酸アンモニウムを使用した場合には、脱水冷却効果と不燃性ガス発生効果とをより効果的に発揮することができるため好ましい。
【0018】
難燃剤の混合比率は、熱可塑性樹脂100重量部(固形分)に対し、好ましくは50〜1000重量部、より好ましくは100〜800重量部、より好ましくは200〜600重量部である。本発明では、このように難燃剤が比較的高比率で含まれることにより、耐熱保護性において良好な性能を得ることができる。
【0019】
発泡剤は、一般に、火災時に不燃性ガスを発生させて、炭化していく熱可塑性樹脂及び炭化剤を発泡させ、気孔を有する炭化断熱層を形成させる作用を有するものである。発泡剤は、かかる作用を有する限り特に制限されず、公知の発泡剤が使用できる。例えば、メラミン及びその誘導体、ジシアンジアミド及びその誘導体、アゾジカーボンアミド、尿素、チオ尿素等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用することができる。これらの中では、メラミン、ジシアンジアミド、アゾジカーボンアミド等が不燃性ガスの発生効率に優れていることから好ましい。特にメラミンがより好適である。
【0020】
発泡剤の混合比率は、熱可塑性樹脂100重量部(固形分)に対し、好ましくは5〜500重量部、より好ましくは30〜200重量部である。このような範囲であることにより、優れた発泡性を発揮し、断熱性、耐熱保護性において良好な性能を得ることができる。
【0021】
炭化剤は、一般に、火災時に熱可塑性樹脂の炭化とともにそれ自体も脱水炭化していくことにより、断熱性に優れた厚みのある炭化断熱層を形成する作用を有するものである。本発明で用いる炭化剤としては、このような作用を有する限り特に制限されず、公知の炭化剤が使用できる。例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の多価アルコール;デンプン、カゼイン等が挙げられる。炭化剤は、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。特に、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールが脱水冷却効果と炭化断熱層形成作用に優れている点で好ましい。
【0022】
炭化剤の混合比率は、熱可塑性樹脂100重量部(固形分)に対し、好ましくは5〜600重量部、より好ましくは10〜400重量部である。このような範囲であることにより、脱水冷却効果と炭化断熱層形成作用を発揮し、断熱性、耐熱保護性において良好な性能を得ることができる。
【0023】
充填剤は、一般に炭化断熱層の強度を維持する作用を有するものである。充填剤としては、このような作用を有する限り特に制限されず、公知の充填剤が使用できる。例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム等の炭酸塩;二酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物;シリカ、粘土、タルク、クレー、カオリン、ケイソウ土、シラス、マイカ、ワラストナイト、珪砂、珪石、石英、ヒル石、アルミナ、フライアッシュ等の無機粉末等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用することもできる。また、上記充填剤の形状としては、特に限定されないが、例えば、球状、粒状、板状、棒状、リン片状、針状、繊維状等が挙げられる。
【0024】
充填剤の配合比率は、熱可塑性樹脂100重量部(固形分)に対し、好ましくは10〜300重量部、より好ましくは20〜250重量部である。このような範囲であることにより、炭化断熱層の強度を維持することができ、耐熱保護性において良好な性能を得ることができる。
【0025】
また、熱発泡性樹脂シートには、上記成分に加え、さらに液状ハロゲン化合物を含むものが好適である。このような液状ハロゲン化合物は、熱発泡性シートの屈曲性、耐熱保護性等の向上に有効に作用する成分である。なお、ここに言う液状とは、常温(25℃)にて液体の性状を示すことを意味する。また、液状ハロゲン化合物には、リンを有するものは包含されない。ハロゲンの種類としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられるが、この中でも塩素が好適である。好適な液状ハロゲン化合物としては、塩素化パラフィンが挙げられる。
【0026】
さらに熱発泡性樹脂シートには、上記成分に加え、繊維物質を含むものが好適である。本発明では、このような繊維物質が含まれることにより、炭化断熱層の形状を保持する効果等が高まる。繊維物質の繊維長は、好ましくは1〜30mm、より好ましくは2〜20mmである。
【0027】
繊維物質としては、例えば、ロックウール、ガラス繊維、シリカ−アルミナ繊維、セラミック繊維、チタン酸カリウム繊維等の無機繊維、カーボン繊維、パルプ繊維、ポリプロピレン繊維、ビニル繊維、アラミド繊維等の有機繊維が挙げられる。この中でも、耐熱性を有する無機繊維やカーボン繊維が好ましく、ガラス繊維が最も好ましい。ガラス繊維を使用した場合は、加熱時の発泡性においても優れた性能が発揮され、断熱性、耐熱保護性に優れた多孔質炭化層が得られやすい。
【0028】
繊維物質の混合比率は、熱可塑性樹脂100重量部(固形分)に対し、好ましくは0.1〜30重量部、より好ましくは1〜20重量部である。
【0029】
本発明の熱発泡性シートは、各成分を均一に混合して得られる混合物を、公知の方法によって成形すればよい。各成分の混合時には、必要に応じ溶剤を混合したり、加熱したりすることも可能である。ビーズ状、ペレット状等の熱可塑性樹脂を使用する場合は、この熱可塑性樹脂の軟化温度まで加熱装置によって加熱し、ニーダー等によって混練しながら、各成分を混合すればよい。
【0030】
成形方法としては、例えば、混合物を型枠内に流し込み、乾燥後に脱型する方法、混合物を加温塗工機によって離型紙に塗付した後に巻き取る方法、ニーダー等によって混練した混合物を押し出し成型機によってシート状に加工する方法、ニーダー等によって混練した混合物を対ロールの間に供給してシート状に加工する方法、混合物をペレット状にした後に押し出し成型機によってシート状に加工する方法、バンバリーミキサーまたはミキシングロールで混練した混合物を複数の熱ロールからなるカレンダによって圧延してシート状に加工する方法、等が挙げられる。
【0031】
本発明の熱発泡性樹脂シート(A)の厚みは、適用部位等により適宜設定すれば良いが、好ましくは0.2〜10mm、より好ましくは0.5〜6mm程度である。
【0032】
[無機繊維シート(B)]
本発明の無機繊維シート(B)は、目付けが100g/m
2以上2000g/m
2以下(好ましくは200g/m
2以上1500g/m
2以下)である。このような範囲であることにより、高い遮炎性を有するとともに、高温下に晒された場合でも、形状保持性に優れ、かつ高い強度を保持することができる。また、熱発泡性樹脂シート(A)が均一な厚みの断熱層を形成することができる。その作用機構は明らかではないが、火災時等の高温下に晒された場合、優れた強度を有する無機繊維シート(B)は熱発泡性樹脂シート(A)の基材として作用するため、熱発泡性樹脂シート(A)が一定方向に均一に発泡し断熱層を形成することができると推察される。
【0033】
無機繊維シート(B)に使用される無機繊維としては、特に限定されないが、例えば、ロックウール、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカ−アルミナ繊維、カーボン繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、チタン酸カリウム繊維、金属繊維、等が挙げられる。これらは2種以上組み合わせて使用することもできる。このような無機繊維は、優れた耐熱性を有し、高温下でも溶融しにくいため、本発明の効果を発揮することができる。また、本発明では、必要に応じて、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂等の樹脂により処理された無機繊維を使用することもできる。
【0034】
本発明の無機繊維シート(B)の態様としては、上記範囲を満たすものであれば特に限定されないが、例えば、織物、不織布、組布、等いずれの態様であってもよい。また、これらは2種以上組み合わせて使用することもできる。その中でも特に、本発明では、織物を使用することが好ましい。これにより、本発明の効果をいっそう高めることができる。
【0035】
なお、本発明において、織物とは、無機繊維束を撚りなどで拘束した繊維糸群により形成されるものであり、たて糸とよこ糸がほぼ直角に上下交錯することにより構成されるものである。その構造としては、平織り、綾織り、朱子織り、たて二重織り、よこ二重織り、たてよこ二重織り、パイル織り、絡み織り、紋織り等が挙げられる。
【0036】
また、無機繊維シート(B)は、耐熱温度が500℃以上(より好ましくは700℃以上)であることが好ましい。このような無機繊維シート(B)としては、シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカ−アルミナ繊維、ステンレス鋼繊維、等の無機繊維より形成されるものが挙げられ、本発明では特に、シリカ繊維を含む繊維織物が好ましい。また、本発明では、必要に応じて、織物の片面及びまたは両面が、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂等の樹脂によりコーティング、ラミネート等されたものを使用することもできる。
【0037】
本発明の無機繊維シート(B)の厚みは、0.1〜5mm(より好ましくは0.3〜2mm)であることが好ましい。このような範囲であることにより、本発明の効果がよりいっそう得られやすい。
【0038】
[無機繊維シート(C)]
本発明の無機繊維シート(C)は、目付けが100g/m
2未満(好ましくは5g/m
2以上95g/m
2以下、より好ましくは10g/m
2以上90g/m
2以下)である。このような範囲であることにより、火災時等の高温下において、熱発泡性樹脂シート(A)の発泡を阻害することなく、均一な厚みの断熱層を形成することができる。この作用機構は明らかではないが、無機繊維シート(C)を構成する繊維の間隙に発泡性樹脂シート(A)が入り込むため、熱発泡性樹脂シート(A)の樹脂成分が溶融状態になった場合でも、タレ等を防止することができ、さらに無機繊維シート(C)は軽量であるため、発泡性樹脂シート(A)の発泡を阻害することがない。その結果、均一な断熱層を形成することができると推察される。
【0039】
無機繊維シート(C)に使用される無機繊維としては、上記無機繊維シート(B)と同様のものが挙げられる。また、本発明では、優れた耐熱性を有し、高温下でも溶融しにくい無機繊維、特にガラス繊維を含むことが好ましい。また、本発明では、必要に応じて、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂等の樹脂により処理された無機繊維を使用することもできる。
【0040】
本発明の無機繊維シート(C)の態様としては、上記範囲を満たすものであれば、織物、不織布(紙)、組布、等いずれのものであってもよい。これらは2種以上組み合わせて使用することもできる。本発明では、特に不織布、組布、あるいは不織布と組布を組み合わせたもののいずれかを使用することが好ましい。
【0041】
なお、本発明において、不織布とは、1本ずつ独立した繊維を、絡ませたり、熱や接着剤を用いて接着したりして布状(シート状)にしたもの(織らずに形成されたもの)である。また、組布とは、一向に引き揃えた繊維糸群とそれとは異なる方向に引き揃えた繊維糸群を絡み織りしたもの、または積層接着したものである。組布の構造としては、網目(メッシュ)構造を有しているものであればよく、繊維糸群の軸数に応じて、2軸組布、3軸組布、及び4軸組布等の多軸組布等が挙げられる。
【0042】
無機繊維シート(C)の厚みは、0.01〜3mm(より好ましくは0.05〜1mm)であることが好ましい。このような範囲であることにより、本発明の効果がよりいっそう得られやすい。
【0043】
また、本発明において、上記無機繊維シート(B)、上記無機繊維シート(C)は、無機繊維に加えて、本発明の効果を阻害しない限り、有機繊維を含むものであってもよい。このようなシートとしては、例えば、無機繊維と有機繊維を混合した糸群より形成されるもの、無機繊維の糸群と有機繊維の糸群により形成されるもの、あるいは、無機繊維シートと有機繊維シートが積層されたもの等が挙げられる。
【0044】
有機繊維としては、例えば、パルプ繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維、ポリエチレン繊維、ポリアリレート繊維、PBO繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、塩化ビニル繊維、セルロース繊維等が挙げられる。有機繊維は、150℃程度の温度領域で溶融して液体状態になるようなものであってもよいが、かかる温度領域で溶融しないものの方が好ましい。これらは2種以上組み合わせて使用することもできる。
【0045】
[積層体]
本発明の積層体は、空間の仕切り、中でも建築物内部空間の仕切りに好適に用いられるものであり、上記熱発泡性樹脂シート(A)、上記無機繊維シート(B)、及び上記無機繊維シート(C)が積層されたものである。具体的には、
図1に示すように、それぞれ1枚のシートで構成される場合は、熱発泡性樹脂シート(A)の一方の面側に無機繊維シート(B)、もう一方の面側に無機繊維シート(C)が配置されている態様[(B)/(A)/(C)]を有するものである。
【0046】
また、上記積層体[(B)/(A)/(C)]には、所望の耐熱保護性に合わせて、
図2に示すように、各層を2層以上重ねて使用することもできる。本発明の積層体としては、例えば、以下のような態様が挙げられる。
(1)(B)/(A)/(C)
(2)(B)/(A’)/(A)/(C)
(3)(B)/(C’)/(A)/(C)
(4)(B)/(C’)/(A’)/(A)/(C)
(5)(C’)/(B)/(A)/(C)
(6)(C’)/(A’)/(B)/(A)/(C)
(7)(A’)/(C’)/(B)/(A)/(C)
(8)(B’)/(B)/(A)/(C)
等が挙げられる。なお、上記(A’)、(B’)、(C’)は各シートの2層目を示したものである。
【0047】
本発明では特に(A)を2層以上使用することが好ましい(上記(2)、(4)、(6)、(7))。この場合、少なくとも1種の(A)が、上記(1)の条件を満たすものであればよいが、好ましくは2層以上の(A)がそれぞれ上記(1)条件を満たすことが好ましい(上記(2)、(4)、(6))。
また、(C)を2層以上使用する場合、(A)の両面に(C)を配置し、さらにその一方の面に(B)を配置することもできる(上記(3)、(4))。
さらに、(B)を2層以上使用する場合、積層体の両面が(B)となる態様(例えば、[(B’)/(A)/(B)]、[(B’)/(C)/(A)/(B)]等)は避けることが望ましい。
【0048】
熱発泡性樹脂シート(A)、無機繊維シート(B)、及び無機繊維シート(C)を積層する方法としては、
(I)接着剤を用いて積層する方法、
(II)熱発泡性樹脂シート(A)の製造時に圧着して積層する方法、
(III)上記(I)と上記(II)を組み合わせる方法、
等が挙げられる。
上記(I)、(III)の接着剤としては、公知のものを使用できるが、本発明では耐熱性接着剤を用いることが好ましい。また、上記(II)のような圧着とは、熱発泡性樹脂シート(A)と、無機繊維シート(B)及び/または無機繊維シート(C)を直接積層(隣接して積層)するものである。本発明では、特に熱発泡性樹脂シート(A)と無機繊維シート(C)は直接積層されていることが好ましい。これにより、本発明の効果をいっそう高めることができる。
【実施例】
【0049】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0050】
使用材料を以下に示す。
・熱可塑性樹脂:酢酸ビニル/エチレン共重合樹脂(軟化温度66℃)
・発泡剤:メラミン
・炭化剤:ペンタエリスリトール
・難燃剤:ポリリン酸アンモニウム
・充填材:酸化チタン
・無機繊維シート(B1):シリカ繊維織物(目付け700g/m
2、厚さ0.7mm、朱子織り、SiO
2含有量97重量%)
・無機繊維シート(B2):シリカ繊維織物(目付け500g/m
2、厚さ0.6mm、綾織り、SiO
2含有量99重量%)
・無機繊維シート(B3):シリカ繊維織物(目付け1200g/m
2、厚さ1.4mm、朱子織り、SiO
2含有量99重量%)
・無機繊維シート(B4):シリカ―アルミナ繊維織物(目付け650g/m
2、厚さ0.7mm、朱子織り、Al
2O
3含有率68%、SiO
2含有量27重量%、B
2O
3含有量5%)
・無機繊維シート(B5):カーボン繊維織物(目付け410g/m
2、厚さ0.8mm、平織り)
・無機繊維シート(C1):ガラス不織布(目付け30g/m
2、厚さ0.25mm)
・無機繊維シート(C2):ガラス不織布(目付け60g/m
2、厚さ0.4mm)
・無機繊維シート(C3):ガラス不織布(目付け85g/m
2、厚さ0.6mm)
・無機繊維シート(C4):ガラス組布(メッシュ)(目付け15g/m
2、厚さ0.2mm、目開き1〜2mm)
・有機繊維シート:ポリエステル不織布(目付け20g/m
2、厚さ0.01mm)
【0051】
[熱発泡性樹脂シート(A)の製造]
(熱発泡性樹脂シート(A))
熱可塑性樹脂100重量部、発泡剤60重量部、炭化剤60重量部、難燃剤300重量部、充填剤75重量部を120℃に加温したニーダーで混練、圧延後、室温まで放冷し、膜厚1.5mmのシート状の熱発泡性樹脂シート(A)を得た。なお、原料としては以下のものを使用した。
【0052】
[積層体の製造]
(積層体1)
熱発泡性樹脂シート(A)の一方の面に無機繊維シート(B1)、もう一方の面に無機繊維シート(C1)を、 [(B1)/(A)/(C1)]となるように、アクリル系接着剤を用いて積層し、積層体1を得た。
【0053】
(積層体2)
熱発泡性樹脂シート(A)の圧延時に、無機繊維シート(C1)を積層し、膜厚1.5mmのシート状の熱発泡性樹脂シート(A)の一方の面に無機繊維シート(C1)が圧着された積層体(P1)([(C1)/(A)])を得た。
次いで、上記積層体(P1)と無機繊維シート(B1)を、[(B1)/(A)/(C1)]となるようにアクリル系接着剤を用いて積層し、積層体2を得た。
【0054】
(積層体3)
上記積層体(P1)2枚、及び無機繊維シート(B1)1枚を用い、[(C1)/(A)/(B1)/(A)/(C1)]となるように、(A)面と(B1)面をアクリル系接着剤で積層し、積層体3を得た。
【0055】
(積層体4)
上記積層体(P1)2枚、及び無機繊維シート(B1)1枚を用い、[(B1)/(C1)/(A)/(A)/(C1)]となるように、(B1)面と(C1)面、及び(A)面どうしをアクリル系接着剤で積層し、積層体4を得た。
【0056】
(積層体5)
上記積層体(P1)2枚、及び無機繊維シート(B)1枚を用い、[(B1)/(C1)/(A)/(C1)/(A)]となるように、(B1)面と(C1)面、及び(A)面と(C1)面をアクリル系接着剤で積層し、積層体5を得た。
【0057】
(積層体6)
上記積層体(P1)と無機繊維シート(B2)を、[(B2)/(A)/(C1)]となるようにアクリル系接着剤を用いて積層し、積層体6を得た。
【0058】
(積層体7)
上記積層体(P1)と無機繊維シート(B3)を、[(B3)/(A)/(C1)]となるようにアクリル系接着剤を用いて積層し、積層体7を得た。
【0059】
(積層体8)
上記積層体(P1)と無機繊維シート(B4)を、[(B4)/(A)/(C1)]となるようにアクリル系接着剤を用いて積層し、積層体8を得た。
【0060】
(積層体9)
上記積層体(P1)と無機繊維シート(B5)を、[(B5)/(A)/(C1)]となるようにアクリル系接着剤を用いて積層し、積層体9を得た。
【0061】
(積層体10)
熱発泡性樹脂シート(A)の圧延時に、無機繊維シート(C2)を積層し、膜厚1.5mmのシート状の熱発泡性樹脂シート(A)の一方の面に無機繊維シート(C2)が圧着された積層体(P2)([(C2)/(A)])を得た。
次いで、上記積層体(P2)と無機繊維シート(B1)を、[(B1)/(A)/(C2]となるようにアクリル系接着剤を用いて積層し、積層体10を得た。
【0062】
(積層体11)
熱発泡性樹脂シート(A)の圧延時に、無機繊維シート(C3)を積層し、膜厚1.5mmのシート状の熱発泡性樹脂シート(A)の一方の面に無機繊維シート(C3)が圧着された積層体(P3)([(C3)/(A)])を得た。
次いで、上記積層体(P3)と無機繊維シート(B1)を、[(B1)/(A)/(C3]となるようにアクリル系接着剤を用いて積層し、積層体11を得た。
【0063】
(積層体12)
熱発泡性樹脂シート(A)の圧延時に、無機繊維シート(C4)を積層し、膜厚1.5mmのシート状の熱発泡性樹脂シート(A)の一方の面に無機繊維シート(C4)が圧着された積層体(P4)([(C4)/(A)])を得た。
次いで、上記積層体(P4)と無機繊維シート(B1)を、[(B1)/(A)/(C4]となるようにアクリル系接着剤を用いて積層し、積層体12を得た。
【0064】
(積層体13)
予め、無機繊維シート(C4)と有機質繊維シートを積層した無機・有機複合繊維シート(C5)を得た。
熱発泡性樹脂シート(A)の圧延時に、無機・有機複合繊維シート(C5)を無機繊維が熱発泡性樹脂シート(A)側となるように積層し、膜厚1.5mmのシート状の熱発泡性樹脂シート(A)の一方の面に無機・有機複合繊維シート(C5)が圧着された積層体(P5)([(C5)/(A)])を得た。
次いで、上記積層体(P5)と無機繊維シート(B1)を、[(B1)/(A)/(C5]となるようにアクリル系接着剤を用いて積層し、積層体13を得た。
【0065】
(積層体14)
熱発泡性樹脂シート(A)の一方の面に無機繊維シート(B1)を、アクリル系接着剤を用いて積層し、積層体14[(B1)/(A)]を得た。
【0066】
(積層体15)
熱発泡性樹脂シート(A)の一方の面に無機繊維シート(C1)を、アクリル系接着剤を用いて積層し、積層体15[(C1)/(A)]を得た。
【0067】
(積層体16)
熱発泡性樹脂シート(A)の両面に無機繊維シート(C1)を、アクリル系接着剤を用いて積層し、積層体16[(C1)/(A)/(C1)]を得た。
【0068】
(積層体17)
熱発泡性樹脂シート(A)の両面に無機繊維シート(B1)を、アクリル系接着剤を用いて積層し、積層体17[(B1)/(A)/(B1)]を得た。
【0069】
(試験例1)
(加熱試験)
得られた積層体1の上端を、鋼材に固定して吊り下げたものを試験体1とし、ISO834の標準加熱曲線に準じて一定時間(1時間)加熱し、試験体を室温に冷却した後、試験体の形状を目視にて評価した。その結果、熱発泡性樹脂シート部分ではほぼ均一な炭化断熱層を形成し、優れた遮炎性、及び断熱性を示した。
【0070】
(試験例2〜17)
試験例1の積層体1に代えて、積層体2〜17を用いた以外は、試験例1と同様にしてそれぞれ試験体2〜17を作製し、加熱試験を実施した(試験例2〜17)。
【0071】
試験体2〜試験体13のいずれも、熱発泡性シート部分ではほぼ均一な炭化断熱層を形成し、優れた遮炎性、及び断熱性を示した。試験体中でも、試験体4は、炭化断熱層のズレや脱落等もなく、よりいっそう優れた遮炎性、及び断熱性を示した。一方、試験例14は、炭化断熱層が脱落し、断熱性を保持することができなかった。また、試験例15、16は、炭化断熱層の形成が不十分となり熱発泡性シートが脱落し、試験例17は熱発泡性シートの発泡が不十分となった。