【解決手段】下部構造としてのプレキャスト版部材と、上部構造としての現場打ちコンクリート版部材と、からなるハーフプレキャスト構造版であって、ハーフプレキャスト構造版の幅方向に平行、且つ、2以上に分割され、ハーフプレキャスト構造版の長手方向に任意の間隔で複数配置される波型鉄筋を備え、波型鉄筋は、ハーフプレキャスト構造版の厚み方向に上下する波型形状を有し、波型鉄筋におけるハーフプレキャスト構造版の厚み方向下側の一部はプレキャスト版部材の内部に埋設され、波型鉄筋の残部は現場打ちコンクリート版部材の内部に突出して構成され、ハーフプレキャスト構造版の幅方向において隣接する一対の波型鉄筋は、突き合わされた鉄筋端部において互いに重なり合うように設けられる。
前記間隙部と、前記現場打ちコンクリート版部材の内部における当該間隙部の上部位置と、には伸縮目地材が設けられていることを特徴とする、請求項5に記載のハーフプレキャスト構造版。
前記間隙部と、前記現場打ちコンクリート版部材の内部における当該間隙部の上部位置と、には、所定形状の緩衝材が設けられ、前記ハーフプレキャスト構造版がヒンジ構造を構成することを特徴とする、請求項5に記載のハーフプレキャスト構造版。
前記プレキャスト版部材には、前記ハーフプレキャスト構造版の幅方向に平行に配置された複数の下部主鉄筋と、当該下部主鉄筋に直交し、前記ハーフプレキャスト構造版の長手方向に平行に配置された複数の下部配力筋と、が設けられ、
前記現場打ちコンクリート版部材の内部には、前記ハーフプレキャスト構造版の幅方向に平行に配置された複数の上部主鉄筋と、当該上部主鉄筋に直交し、前記ハーフプレキャスト構造版の長手方向に平行に配置された複数の上部配力筋と、が設けられ、
前記下部主鉄筋及び前記下部配力筋は、前記波型鉄筋の波形状下端部に対応する位置に配置され、
前記上部主鉄筋及び前記上部配力筋は、前記波型鉄筋の波形状上端部に対応する位置に配置されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のハーフプレキャスト構造版。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1、2に記載されているような、鉄筋コンクリート構造では、コンクリート中の鉄筋は現場打ちでの作業によって配筋されるため、作業が煩雑化しやすい。上述したように、構造物構築時にプレキャスト部材と現場打ちコンクリートを組み合わせるに際し、特に、構造物が大型化した場合には、鉄筋に製造上長さの制約があるために、必要に応じて複数の部材を複数の鉄筋を用いて接続することが求められる。同様に、プレキャスト部材の運搬性の観点から、部材個々の大きさに制約がある場合にも、複数の部材を鉄筋を用いて接続する必要がある。その際、複数の部材の接続部などにおいて強度や耐力を担保することが求められ、より強固な接続技術の実現が望まれている。
【0007】
そこで、本発明の目的は、プレキャスト部材と現場打ちコンクリートを組み合わせて構造物の頂版、底版、床版等の版部材を構築する際に、構築後の構造物の強度や耐力を担保することが可能なハーフプレキャスト構造版を提供することにある。
なお、本明細書における「版部材」あるいは「版」との記載は、少なくとも頂版、底版、床板を含み、構造物に用いられる部材において概ね平板状の形状を有するものをいう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため、本発明によれば、下部構造としてのプレキャスト版部材と、上部構造としての現場打ちコンクリート版部材と、からなるハーフプレキャスト構造版であって、前記ハーフプレキャスト構造版の幅方向に平行、且つ、2以上に分割され、当該ハーフプレキャスト構造版の長手方向に任意の間隔で複数配置される波型鉄筋を備え、前記波型鉄筋は、前記ハーフプレキャスト構造版の厚み方向に上下する波型形状を有し、前記波型鉄筋における前記ハーフプレキャスト構造版の厚み方向下側の一部は前記プレキャスト版部材の内部に埋設され、当該波型鉄筋の残部は前記現場打ちコンクリート版部材の内部に突出して構成され、前記ハーフプレキャスト構造版の幅方向において隣接する一対の波型鉄筋は、突き合わされた鉄筋端部において互いに重なり合うように設けられることを特徴とする、ハーフプレキャスト構造版が提供される。
【0009】
隣接する前記一対の波型鉄筋は、突き合わされた鉄筋端部において前記厚み方向下向きに凸の略U字形状を有し、前記ハーフプレキャスト構造版の断面視において少なくとも当該一対の波型鉄筋の一部が重なり合うように設けられ、当該一対の波型鉄筋の端部は前記現場打ちコンクリート版部材の内部に突出して構成されても良い。
【0010】
隣接する前記一対の波型鉄筋は、突き合わされた鉄筋端部において前記厚み方向上向きに凸の逆U字形状を有し、前記ハーフプレキャスト構造版の断面視において当該一対の波型鉄筋の一部が交差するように設けられ、当該一対の波型鉄筋の端部は前記現場打ちコンクリート版部材の内部に突出して構成されても良い。
【0011】
前記プレキャスト版部材は、前記ハーフプレキャスト構造版の幅方向において前記波型鉄筋が分割されている位置直下で分割されて構成され、2以上に分割された前記波型鉄筋は、分割されて構成された当該プレキャスト版部材それぞれに埋設されても良い。
【0012】
分割されて構成された前記プレキャスト版部材においては、隣接する部材間に間隙部が設けられ、前記間隙部には現場打ちコンクリートが施工されても良い。
【0013】
前記間隙部と、前記現場打ちコンクリート版部材の内部における当該間隙部の上部位置と、には伸縮目地材が設けられても良い。
【0014】
前記間隙部と、前記現場打ちコンクリート版部材の内部における当該間隙部の上部位置と、には、所定形状の緩衝材が設けられ、前記ハーフプレキャスト構造版がヒンジ構造を構成しても良い。
【0015】
前記プレキャスト版部材には、前記ハーフプレキャスト構造版の幅方向に平行に配置された複数の下部主鉄筋と、当該下部主鉄筋に直交し、前記ハーフプレキャスト構造版の長手方向に平行に配置された複数の下部配力筋と、が設けられ、前記現場打ちコンクリート版部材の内部には、前記ハーフプレキャスト構造版の幅方向に平行に配置された複数の上部主鉄筋と、当該上部主鉄筋に直交し、前記ハーフプレキャスト構造版の長手方向に平行に配置された複数の上部配力筋と、が設けられ、前記下部主鉄筋及び前記下部配力筋は、前記波型鉄筋の波形状下端部に対応する位置に配置され、前記上部主鉄筋及び前記上部配力筋は、前記波型鉄筋の波形状上端部に対応する位置に配置されても良い。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、プレキャスト部材と現場打ちコンクリートを組み合わせて構造物の頂版、底版、床版等の版部材を構築する際に、構築後の構造物の強度や耐力を担保することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する場合がある。また、本明細書の実施の形態においては、カルバート構造物1の底版や頂版として用いられるハーフプレキャスト構造版を例示して図示・説明するが、本発明に係る技術はこれに限定されるものではなく、種々の用途に用いられるハーフプレキャスト構造版に適用可能である。また、説明のために部材内部の鉄筋構造等を図示している場合がある。
【0019】
(一般的なカルバート構造物の構成)
図1は一般的なカルバート構造物1の概略説明図である。また、
図2はカルバート構造物1の概略正面図である。
図1、2に示したカルバート構造物1は、図示しない幹線道路や鉄道用に設けられるトンネル等の坑口に設置される矩形カルバート状の中空構造物であり、その内部には、例えば自動車や鉄道車両等が通過するための経路(図示せず)が敷設される。
【0020】
図1、2に示すように、一般的なカルバート構造物1は、地盤(図示せず)に敷設される底版3と、底版3の上面両端において地盤に対し鉛直方向に構築される一対の壁体構造である側壁5(5a、5b)と、側壁5の上端に天井面として設けられる頂版10からなる。これら底版3や頂版10は種々の構成・方法でもって構築されるが、一例として、下部構造と上部構造の2層構造でもって底版3や頂版10を構築する技術が知られている。例えば、頂版10は、2層構造であり、下部構造としてのプレキャスト頂版部材20と、上部構造としての現場打ち頂版部材21からなる構成でも良い。同様に、底版3は、2層構造であり、下部構造としてのプレキャスト底版部材30と、上部構造としての現場打ち底版部材31からなる構成でも良い。
【0021】
このように、底版3や頂版10を下部構造と上部構造の2層構造とするのは、構造物の一方(一部)をプレキャスト部材とし、他方を現場打ちコンクリート部材とすることで施工性の向上や工期の短縮化が図られるためである。このような構造物の構築においては、強度や耐力を担保するため、鉄筋をコンクリートに埋設することが求められる。
【0022】
(本実施の形態に係るハーフプレキャスト構造版)
本発明者らは、上述したように構成されるカルバート構造物1などの構造物において底版3や頂版10を構築するにあたり、下部構造であるプレキャスト部材(20、30)と上部構造である現場打ち部材(21、31)の接続を、構造物全体の強度や耐力が十分に担保されるような構成とすべく、その接続形態について鋭意検討を行った。以下では、構造物において強度や耐力が十分に担保されるような接続形態が実現され、上記底版3や頂版10として有用である、本発明の実施の形態に係るハーフプレキャスト構造版40の構成について図面等を参照して説明する。
【0023】
図3は、本発明の実施の形態に係るハーフプレキャスト構造版40の概略断面図である。また、
図4はハーフプレキャスト構造版40の概略斜視図である。なお、
図3、4に示した鉄筋等の各部材構成は一例であり、これらの配置や数等は任意に設計可能である。また、
図3、4では、ハーフプレキャスト構造版40における図中の左右方向を部材幅方向とし、図中の奥行き方向を部材長手方向として説明する。
【0024】
図3、4に示すように、ハーフプレキャスト構造版40は、下部構造としてのプレキャスト版部材41と、上部構造としての現場打ちコンクリート版部材42と、を有する。プレキャスト版部材41は工場などで予め製作された運搬可能な部材であり、現場打ちコンクリート版部材42は施工現場においてコンクリートを現場打ちすることで構築される部材である。
【0025】
プレキャスト版部材41には、部材幅方向(
図3中の左右方向)において、2以上に分割された構成(
図3では2分割)の波型鉄筋50が一部分にて重複するように設けられる。また、
図4のように、波型鉄筋50は部材長手方向(
図4中の奥行き方向)に平行、且つ、任意の間隔で複数配置される。本実施の形態では、波型鉄筋50の構成として、部材幅方向に2つに分割された構成の波型鉄筋50a、50bが互いに突き合わされた部分(干渉部分)において断面視で一部重複するように設けられ、このような構成の波型鉄筋50a、50bが部材長手方向に複数配される場合を図示し説明する。
【0026】
波型鉄筋50(50a、50b)は、その高さ方向下側の一部(
図3中の下側部分54)がプレキャスト版部材41に埋設され、残部(高さ方向上側の部分、
図3中の上側部分55)がプレキャスト版部材41の上方に向かって突出した構成となっている。この上側部分55は、現場打ちコンクリート版部材42が施工された際に、当該現場打ちコンクリート版部材42の内部に突出し埋め込まれるように構成される。
【0027】
また、
図3に示すように、一対の隣接する波型鉄筋50a、50bは、両者の干渉する干渉部分60(図中の破線部参照)において、端部の鉄筋の少なくとも一部が断面視において互いに重なり合うように設けられる。波型鉄筋50a、50bの端部の鉄筋形状は任意に設計されるが、本実施の形態では、
図3、4のように下方向に凸である略U字形状に構成され、当該略U字形状の一部が重なり合うように設けられる。この時、略U字形状である波型鉄筋50a、50bの端部は、現場打ちコンクリート版部材42の内部に突出して埋め込まれても良い。
【0028】
また、プレキャスト版部材41には、部材幅方向に平行に配置・延伸する複数の下部主鉄筋65と、当該下部主鉄筋65に直交し、部材長手方向に平行に配置・延伸する複数の下部配力筋66が設けられている。これらの下部主鉄筋65及び下部配力筋66は、プレキャスト版部材41の製造時に予め部材内部に埋設されても良い。また、下部主鉄筋65及び下部配力筋66の設置位置は任意であるが、波型鉄筋50の波形状下端部に対応する所定位置に設けられることが好ましい。例えば、下部配力筋66の一部は、図示のように波型鉄筋50の下端部(谷底部)の鉄筋と交差し、平行に複数配置された波型鉄筋50の下端部内側を連通するように設けられても良い。
なお、これら下部主鉄筋65及び下部配力筋66は、必ずしも1本の連続した鉄筋である必要はなく、スリーブ式鉄筋継手構造など、任意の接続手段でもって複数の鉄筋を連結させて構成されても良い。
【0029】
また、現場打ちコンクリート版部材42には、部材幅方向に平行に配置・延伸する複数の上部主鉄筋70と、当該上部主鉄筋70に直交し、部材長手方向に平行に配置・延伸する上部配力筋71が設けられている。これらの上部主鉄筋70及び上部配力筋71は、現場打ちコンクリート版部材42の部材内部に配置された状態で現場施工が進められることで埋設されても良い。また、上部主鉄筋70及び上部配力筋71の設置位置は任意であるが、波型鉄筋50の波形状上端部に対応する所定位置に設けられることが好ましい。例えば、上部配力筋71の一部は、図示のように波型鉄筋50の上端部(山頂部)の鉄筋と交差し、平行に複数配置された波型鉄筋50の上端部内側を連通するように設けられても良い。
なお、これら上部主鉄筋70及び上部配力筋71は、必ずしも1本の連続した鉄筋である必要はなく、スリーブ式鉄筋継手構造など、任意の接続手段でもって複数の鉄筋を連結させて構成されても良い。
【0030】
(作用効果)
以上、
図3、4を参照して説明した、本実施の形態に係るハーフプレキャスト構造版40は、下部構造として工場などで予め製作されたプレキャスト版部材41を用い、上部構造として現場打ちコンクリート版部材42を用いており、いわゆるハーフプレキャスト構造である。配筋構造が煩雑であり現場打ち工法が困難であるような部材(ここでは、プレキャスト版部材41)についてはプレキャスト部材とし、その他の部材を現場打ち部材とすることで、材料費の低減や工期の短縮が図られ、更には、施工時の作業効率や部材の運搬性を向上させることができる。
【0031】
また、ハーフプレキャスト構造版40の構築にあたり、部材内部に埋設された下側部分54と、部材上方に突出した上側部分55と、からなる波型鉄筋50を有する構成のプレキャスト版部材41に対し、その上面側に現場打ち部材として現場打ちコンクリート版部材42を打設させる構成と採っている。この波型鉄筋50が、ハーフプレキャスト構造版40の補強鉄筋として機能することに加え、プレキャスト版部材41と現場打ちコンクリート版部材42との間(継ぎ目位置)のずれ止めの役割も果たす。これにより、ハーフプレキャスト構造版40の部材全体としての強度や耐力が担保される。
【0032】
また、波型鉄筋50は、鉄筋を波形状に造形したものを用いており、従来のせん断補強筋といった長さの短い鉄筋に比べ、コンクリートへの定着力が高く、ハーフプレキャスト構造版40の強度や耐力の向上に有効である。また、本実施の形態に係る構成では、波型鉄筋50として、部材幅方向に2つに分割された構成の波型鉄筋50a、50bが干渉部分60において一部重複するような構成を採っている。そのため、鉄筋に製造上長さの制約がある場合であっても、直接鉄筋同士を接続させるといった煩雑な施工を行うことなく、大型のハーフプレキャスト構造版40を強度や耐力を担保した構造にて構築することができる。
【0033】
以上、本発明の実施の形態の一例を説明したが、本発明は図示の形態に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。以下では、本発明に係る変形例について図面等を参照して説明する。なお、以下の変形例に係る説明において、本実施の形態と同じ機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付して図示し、説明は省略する場合がある。
【0034】
(本発明の第1変形例)
上記実施の形態では、プレキャスト版部材41は1つの部材として構成される場合を図示・説明している。しかしながら、本発明に係るプレキャスト版部材41は2以上の部材から構成されても良い。そこで、ここでは本発明の第1変形例として、プレキャスト版部材41が2つの部材(以下、プレキャスト版部材41a、41b)に分割された構成について図示・説明する。
【0035】
また、上記実施の形態では、波型鉄筋50の構成として、一対の隣接する波型鉄筋50a、50bが、干渉部分60において下方向に凸である略U字形状において重なり合うような場合を図示しているが(
図3、4参照)、本発明はこれに限られるものではない。本変形例では、波型鉄筋50の端部の鉄筋形状の異なる構成についても図示・説明する。
【0036】
図5は、本発明の第1変形例に係るハーフプレキャスト構造版40aの概略断面図である。
図5に示すように、本変形例に係るハーフプレキャスト構造版40aにおいて、プレキャスト版部材41は部材幅方向において2つの部材に分割された構成であり、2つのプレキャスト版部材41aと41bを有している。プレキャスト版部材41aと41bの分割位置は、一対の波型鉄筋50(50a、50b)が突き合わされている位置(分割されている位置)の直下であることが好ましい。ここで、一対の波型鉄筋50a、50bは、それぞれ一対のプレキャスト版部材41a、41bに埋設されて設けられる構成となっている。
【0037】
また、干渉部分60における波型鉄筋50a、50bの端部の鉄筋形状は、図示のように、上方向に凸である逆U字形状であっても良い。本変形例に係る波型鉄筋50a、50bは、現場打ちコンクリート版部材42の内部に埋め込まれる場合に、両者が互いに交差した状態で埋め込まれても良い。
【0038】
また、本変形例において、下部主鉄筋65は、2つの部材(以下、下部主鉄筋65a、65b)として、2つのプレキャスト版部材41a、41bのそれぞれに埋設されることが好ましい。ハーフプレキャスト構造版40a構築時には、これら下部主鉄筋65a、65bは接続せずに別部材としても良く、あるいは、図示のように一方の下部主鉄筋65aと他方の下部主鉄筋65bとが連続した鉄筋となるように接続させて用いても良い。接続方法として、カプラー式やスリーブ式の継手機構を用いても良い。
【0039】
本変形例に係るハーフプレキャスト構造版40aによれば、上記実施の形態に係る構成と同様に、材料費の低減や工期の短縮が図られ、ハーフプレキャスト構造版40aの部材全体としての強度や耐力が担保される。それに加え、プレキャスト版部材41が2つのプレキャスト版部材41a、41bに分割された構成を採っているため、部材の運搬性や施工性がより向上する。
【0040】
加えて、本変形例に係る構成は、ハーフプレキャスト構造版40aを広い面積を持つ床面に適用する場合に非常に有用である。即ち、製造上寸法の限定されるプレキャスト版部材41を多数配列させ、それら多数のプレキャスト版部材41を互いに連結させて施工を行うことで、広大な面積の床面に本発明を適用させることができる。
【0041】
(本発明の第2変形例)
また、本発明の更なる変形例として、プレキャスト版部材41が2つの部材(プレキャスト版部材41a、41b)から構成される場合に、両者の間に所定の間隙部を設け、当該間隙部に現場打ちコンクリートを施工するといった構成が考えられる。以下では、かかる構成を本発明の第2変形例として図面を参照して説明する。
図6は、本発明の第2変形例に係るハーフプレキャスト構造版40bの概略断面図である。
【0042】
図6に示すように、本変形例に係るハーフプレキャスト構造版40bにおいて、プレキャスト版部材41は部材幅方向において2つの部材に分割された構成であり、2つのプレキャスト版部材41aと41bを有している。プレキャスト版部材41aと41bとは、所定の離間距離Lだけ離間し、2つの部材の間に間隙部80が形成されている。ハーフプレキャスト構造版40bを構築するにあたり、間隙部80には現場打ちコンクリートが施工され、施工された現場打ちコンクリートも含めて現場打ちコンクリート版部材42bが構成される。
【0043】
ここで、本変形例における波型鉄筋50a、50bの端部の鉄筋形状は任意であるが、図示のように、上記実施の形態と同じ略U字形状であっても良く、間隙部80に波型鉄筋50aと50bとの干渉部分60が位置するように構成しても良い。また、下部主鉄筋65は、2つの部材65a、65bとして、プレキャスト版部材41a、41bのそれぞれに埋設されることが好ましい。ハーフプレキャスト構造版40b構築時には、これら下部主鉄筋65a、65bは接続せずに別部材としても良く、あるいは、図示のように一方の下部主鉄筋65aと他方の下部主鉄筋65bとを接続させて用いても良い。
【0044】
本変形例に係るハーフプレキャスト構造版40bによれば、上記実施の形態や変形例に係る構成と同様に、材料費の低減や工期の短縮が図られ、ハーフプレキャスト構造版40bの部材全体としての強度や耐力が担保される。また、プレキャスト版部材41a、41bから突出させた鉄筋を、いわゆる重ね継手やループ継手として連結させるような構成を採る場合に、本変形例は有用である。加えて、ハーフプレキャスト構造版40b構築時に、部材の施工誤差を吸収するための調整しろとして上記間隙部80を設けることも有効である。
【0045】
(本発明の第3変形例)
また、本発明の更なる変形例として、プレキャスト版部材41を2つの部材(プレキャスト版部材41a、41b)で構成するとともに、波型鉄筋50aと50bとの干渉部分60の近傍に伸縮目地材を設ける構成が考えられる。以下では、かかる構成を本発明の第3変形例として図面を参照して説明する。
図7は、本発明の第3変形例に係るハーフプレキャスト構造版40cの概略断面図である。
【0046】
図7に示すように、本変形例に係るハーフプレキャスト構造版40cにおいては、プレキャスト版部材41は部材幅方向において2つの部材41a、41bに分割された構成であり、両者の間の間隙部には例えば伸縮目地材85が設けられている。また、ハーフプレキャスト構造版40cを構成する現場打ちコンクリート版部材42cにおいても、波型鉄筋50aと50bとの干渉部分60近傍(伸縮目地材85の上部位置)に同様の伸縮目地材86が設けられている。なお、本変形例における波型鉄筋50a、50bの端部の鉄筋形状は任意であり、図示のように、上方向に凸の逆U字形状であっても良い。
【0047】
ここで、本変形例における波型鉄筋50a、50bの端部の鉄筋形状は任意であるが、図示のように、干渉部分60における波型鉄筋50a、50bの端部の鉄筋形状は、上側部分55において上方向に凸である逆U字形状であっても良い。また、下部主鉄筋65は、2つの部材65a、65bとして、2つのプレキャスト版部材41a、41bのそれぞれに埋設されることが好ましい。ハーフプレキャスト構造版40c構築時には、これら下部主鉄筋65a、65bは接続せずに別部材とすれば良い。
【0048】
本変形例に係るハーフプレキャスト構造版40cによれば、上記実施の形態や変形例に係る構成と同様に、材料費の低減や工期の短縮が図られ、ハーフプレキャスト構造版40cの部材全体としての強度や耐力が担保される。それに加え、伸縮目地材85を設けたことにより、気温などによるコンクリートの温度変化に伴う膨張や収縮があった場合に、ハーフプレキャスト構造版40c自体の歪みを吸収し、亀裂などの発生を抑えることが可能となる。即ち、本変形例によれば、ハーフプレキャスト構造版40cに加わる応力が分散し、柔軟な構造物が実現され、局所的な破壊を抑え、破壊箇所のコントロールが図られる。
【0049】
(本発明の第4変形例)
また、本発明の更なる変形例として、プレキャスト版部材41を2つの部材(プレキャスト版部材41a、41b)で構成するとともに、波型鉄筋50aと50bとの干渉部分60の近傍に緩衝材を設け、いわゆるヒンジ構造を構成することが考えられる。以下では、かかる構成を本発明の第4変形例として図面を参照して説明する。
図8は、本発明の第4変形例に係るハーフプレキャスト構造版40dの概略断面図であり、
図8(a)、(b)はヒンジ構造上の支点が異なる構成を示している。
【0050】
図8に示すように、本変形例に係るハーフプレキャスト構造版40dにおいては、プレキャスト版部材41は部材幅方向において2つの部材41a、41bに分割された構成であり、両者の間の間隙部やその上部位置には例えば緩衝材88が設けられている。緩衝材88は伸縮目地材でも良い。また、緩衝材88の構成は任意であるが、
図8(a)のように部材上方に支点を有するようなヒンジ構造を実現させるようなテーパー形状や、
図8(b)のように部材下方に支点を有するようなヒンジ構造を実現させるようなテーパー形状とすることが好ましい。
【0051】
ここで、本変形例における波型鉄筋50a、50bの端部の鉄筋形状は任意であるが、図示のように、干渉部分60における波型鉄筋50a、50bの端部の鉄筋形状は、上側部分55において上方向に凸である逆U字形状であっても良い。また、下部主鉄筋65は、2つの部材65a、65bとして、2つのプレキャスト版部材41a、41bのそれぞれに埋設されることが好ましい。ハーフプレキャスト構造版40d構築時には、これら下部主鉄筋65a、65bは接続せずに別部材とすれば良い。
【0052】
本変形例に係るハーフプレキャスト構造版40dによれば、上記実施の形態や変形例に係る構成と同様に、材料費の低減や工期の短縮が図られ、ハーフプレキャスト構造版40dの部材全体としての強度や耐力が担保される。それに加え、ヒンジ構造を採用したことにより、気温などによるコンクリートの温度変化に伴う膨張や収縮があった場合に、ハーフプレキャスト構造版40d自体の歪みを吸収し、亀裂などの発生を抑えることが可能となる。即ち、本変形例によれば、ハーフプレキャスト構造版40cに加わる応力が分散し、柔軟な構造物が実現され、局所的な破壊を抑え、破壊箇所のコントロールが図られる。
【0053】
また、上記実施の形態や変形例では、波型鉄筋50が50aと50bの2つに分割された構成を例示して説明したが、本発明に係る構成はこれに限られるものではない。即ち、波型鉄筋50が部材幅方向において3以上に分割される構成でも良い。その場合であっても、複数の波型鉄筋を上記実施の形態で説明したように現場打ちコンクリート版部材に定着させることで、ハーフプレキャスト構造版の部材全体としての強度や耐力を担保することができる。
【0054】
なお、本明細書において、上記実施の形態や各変形例について、図示、説明した鉄筋構造は一例であり、各種鉄筋(下部主鉄筋、下部配力筋、波型鉄筋、上部主鉄筋、上部配力筋など)の具体的な本数や配置構成等は任意に設計可能である。