特開2021-14799(P2021-14799A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-14799(P2021-14799A)
(43)【公開日】2021年2月12日
(54)【発明の名称】エンジンの燃焼室構造
(51)【国際特許分類】
   F02B 47/02 20060101AFI20210115BHJP
   F02B 11/00 20060101ALI20210115BHJP
   F02M 25/025 20060101ALI20210115BHJP
   F02B 23/08 20060101ALI20210115BHJP
   F02D 19/12 20060101ALI20210115BHJP
   F16J 10/00 20060101ALI20210115BHJP
   F02B 13/10 20060101ALN20210115BHJP
【FI】
   F02B47/02
   F02B11/00 B
   F02M25/025 K
   F02B23/08 E
   F02D19/12 A
   F16J10/00 Z
   F02B13/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2019-128783(P2019-128783)
(22)【出願日】2019年7月10日
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】朱 前進
(72)【発明者】
【氏名】内田 浩康
(72)【発明者】
【氏名】清末 涼
【テーマコード(参考)】
3G023
3G092
3J044
【Fターム(参考)】
3G023AA02
3G023AB06
3G023AC02
3G023AE06
3G023AG05
3G092AA01
3G092AA05
3G092AA06
3G092AB02
3G092AB14
3G092AB17
3G092BA01
3G092BA03
3G092EC10
3G092FA01
3G092HA01Z
3G092HE01Z
3G092HE03Z
3G092HF08Z
3J044AA08
3J044AA20
3J044BC15
3J044CC21
3J044CC30
3J044DA09
(57)【要約】
【課題】昇温部が加熱した水を燃焼室内に噴射することにより、エンジンのトルクを向上させる。
【解決手段】エンジン1の燃焼室構造は、燃焼室11と、燃焼室の天井部111に配置された点火装置(点火プラグ65)と、燃焼室内に臨む噴孔432を通じて、燃焼室内に水を噴射する水噴射装置4と、を備える。水噴射装置は、燃焼室が圧縮行程にあるときに水を噴射し、水噴射装置は、加熱装置(ヒートパイプ44)の熱によって水を加熱する昇温部42を有し、昇温部は、水が流れる複数の通路45を有し、複数の通路は、昇温部において、加熱装置が取り付けられた取付側に形成され、昇温部における反取付側には、通路が形成されない非形成部46が設けられている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンに設けられたシリンダと、前記シリンダ内を往復動するピストンとによって形成される燃焼室と、
前記燃焼室の天井部に配置された点火装置と、
前記燃焼室内に臨む噴孔を通じて、前記燃焼室内に水を噴射する水噴射装置と、を備え、
前記水噴射装置は、前記燃焼室が圧縮行程にあるときに水を噴射し、
前記水噴射装置は、加熱装置の熱によって水の温度を上げる昇温部を有し、
前記昇温部は、前記水が流れる複数の通路を有し、前記複数の通路は、前記昇温部において、前記加熱装置が取り付けられる取付側に形成され、
前記昇温部における反取付側には、前記通路が形成されない非形成部が設けられているエンジンの燃焼室構造。
【請求項2】
請求項1に記載のエンジンの燃焼室構造において、
前記加熱装置は、前記エンジンの排気ガスの熱を前記昇温部へ送るヒートパイプを有し、
前記水噴射装置は、水噴射弁を有し、
前記昇温部は、前記水噴射弁と前記燃焼室との間に介在し、各通路は、前記水噴射弁から前記燃焼室へ向かう方向に延び、
前記ヒートパイプは、前記昇温部の、前記通路に直交する方向の側部に取り付けられているエンジンの燃焼室構造。
【請求項3】
請求項2に記載のエンジンの燃焼室構造において、
前記昇温部は、前記通路が形成された本体部と、前記ヒートパイプが取り付けられる取付部と、前記本体部と前記取付部と接続する伝熱部とを有し、
前記伝熱部は、前記通路の長さの半分以上の幅を有しているエンジンの燃焼室構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のエンジンの燃焼室構造において、
前記水噴射装置に水を供給する水供給装置を備え、
前記水供給装置は、
前記エンジンの排気ガス中の水を凝縮する凝縮器と、
前記凝縮器が凝縮した水を溜める水タンクと、
前記水タンクの水を加圧して前記水噴射装置へ供給する水ポンプと、を有しているエンジンの燃焼室構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のエンジンの燃焼室構造において、
前記燃焼室の天井部に配置された点火装置を備え、
前記ピストンは、その上面から凹んだキャビティを有し、
前記水噴射装置は、少なくとも一部の噴孔の軸の延長線が前記キャビティと交差しているタイミングで、水を前記キャビティに向かって噴射し、
前記点火装置は、前記シリンダの軸に直交する方向に対して、前記キャビティから外れた位置に設置されているエンジンの燃焼室構造。
【請求項6】
請求項5に記載のエンジンの燃焼室構造において、
前記キャビティは、前記水噴射装置が噴射した前記水が当たる底部と、前記底部に沿って広がる水を前記水噴射装置の方へ巻き上げる巻上部とを有しているエンジンの燃焼室構造。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか1項に記載のエンジンの燃焼室構造において、
前記水噴射装置は、前記圧縮行程の前期から中期までの間に水を噴射するエンジンの燃焼室構造。
【請求項8】
請求項7に記載のエンジンの燃焼室構造において、
前記水噴射装置が噴射する水の量は、前記エンジンの負荷が低い場合は、高い場合よりも少なく、
前記水噴射装置は、水の噴射量が少ない場合は、多い場合よりも噴射の開始タイミングを遅らせるエンジンの燃焼室構造。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のエンジンの燃焼室構造において、
燃料を噴射する燃料噴射弁を備え、
前記燃料噴射弁は、前記燃焼室に連通する吸気ポートに配置されているエンジンの燃焼室構造。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のエンジンの燃焼室構造において、
前記エンジンは、混合気の少なくとも一部が圧縮着火により燃焼する圧縮着火ガソリンエンジンであるエンジンの燃焼室構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、エンジンの燃焼室構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、一部の混合気を圧縮着火により燃焼させる圧縮着火式エンジンが記載されている。このエンジンは、点火装置が混合気に点火をする。火炎伝播燃焼が開始し、その火炎伝播燃焼により発生した熱によって、未燃混合気が自着火燃焼する。
【0003】
前記のエンジンは、燃焼室内に水を噴射する水噴射装置を備えている。水噴射装置が燃焼室内に水を噴射すると燃焼室内が冷却される。このエンジンは、異常燃焼の発生を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6477849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した異常燃焼の抑制を目的とする他に、本願発明者らは、燃焼室内に水(及び水蒸気)を噴射することによる作動ガス量の増加によって、エンジンのピストン仕事を増大させ、トルクの向上を図る点に着目した。エンジンの熱効率を高く維持するためには、高温の水を燃焼室内に噴射することによって、燃焼熱を利用せずに水を気化させる方が有利である。
【0006】
そこで、本願発明者らは、水の温度を上げる昇温部をエンジンに取り付けた。この昇温部は、水が流れる多数の通路を有する本体部と、加熱装置が取り付けられる取付部と、を有しかつ、各通路を流れる水に、加熱装置の熱を伝えることによって水の温度を上げる。
【0007】
ところが、本願発明者らの検討によると、昇温部が昇温した水を燃焼室内に噴射しても、エンジンのトルク向上効果が予想よりも低かった。
【0008】
ここに開示する技術は、昇温部が昇温した水を燃焼室内に噴射することにより、エンジンのトルクを向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題に関して本願発明者らが検討を行った結果、昇温部は、一部の通路を流れる水を十分に加熱することができないことがわかった。低温の水を燃焼室に噴射すると、燃焼熱の一部が低温の水に消費されてしまう。その結果、エンジンのトルク向上効果が予想よりも低下したのである。ここに開示する技術は、本願発明者らの新たな知見に基づいて完成したものである。
【0010】
具体的にここに開示する技術は、エンジンの燃焼室構造に係る。このエンジンの燃焼室構造は、
エンジンに設けられたシリンダと、前記シリンダ内を往復動するピストンとによって形成される燃焼室と、
前記燃焼室の天井部に配置された点火装置と、
前記燃焼室内に臨む噴孔を通じて、前記燃焼室内に水を噴射する水噴射装置と、を備え、
前記水噴射装置は、前記燃焼室が圧縮行程にあるときに水を噴射し、
前記水噴射装置は、加熱装置の熱によって水の温度を上げる昇温部を有し、
前記昇温部は、前記水が流れる複数の通路を有し、前記複数の通路は、前記昇温部において、前記加熱装置が取り付けられる取付側に形成され、
前記昇温部における反取付側には、前記通路が形成されない非形成部が設けられている。
【0011】
昇温部におれる取付側は、加熱装置からの距離が短い。昇温部は、取付側に形成された通路を流れる水に、十分に熱を与えることができる。当該通路を流れる水は高温になる。
【0012】
昇温部における反取付側は、加熱装置からの距離が長い。反取付側に通路を形成しても、昇温部は、通路を流れる水に十分に熱を与えることができない場合がある。前記の構成では、反取付側に非形成部が設けられている。非形成部には、通路がない。昇温部は、十分に熱を与えることができる箇所に通路を有している。低温の水が燃焼室内に噴射されることが抑制される。
【0013】
前記の燃焼室構造では、十分に加熱された水のみが燃焼室内に噴射される。尚、この明細書において、「水」は、気体である水蒸気を含む。燃焼室内に水蒸気を噴射すれば、水が燃焼熱を消費することがない、又は、消費することが抑制されるため、燃焼室内に水蒸気を噴射することは、エンジンの熱効率の向上に有利になる。燃焼室内に高温の水を噴射すると、エンジンの熱効率が低下せず、エンジンのトルクが向上する。
【0014】
前記加熱装置は、前記エンジンの排気ガスの熱を前記昇温部へ送るヒートパイプを有し、
前記水噴射装置は、水噴射弁を有し、
前記昇温部は、前記水噴射弁と前記燃焼室との間に介在し、各通路は、前記水噴射弁から前記燃焼室へ向かう方向に延び、
前記ヒートパイプは、前記昇温部の、前記通路に直交する方向の側部に取り付けられている、としてもよい。
【0015】
こうすることで、ヒートパイプがエンジンの排熱を回収し、昇温部は、その熱によって、水噴射弁が噴射した水を、燃焼室内に供給される前に加熱することができる。エンジンの熱効率が向上する。
【0016】
前記昇温部は、前記通路が形成された本体部と、前記ヒートパイプが取り付けられる取付部と、前記本体部と前記取付部と接続する伝熱部とを有し、
前記伝熱部は、前記通路の長さの半分以上の幅を有している、としてもよい。
【0017】
こうすることで、伝熱部の熱抵抗が下がるから、昇温部は、ヒートパイプの熱によって、通路を流れる水を効率よく加熱することができる。
【0018】
前期エンジンの燃焼室構造は、前記水噴射装置に水を供給する水供給装置を備え、
前記水供給装置は、
前記エンジンの排気ガス中の水を凝縮する凝縮器と、
前記凝縮器が凝縮した水を溜める水タンクと、
前記水タンクの水を加圧して前記水噴射装置へ供給する水ポンプと、を有している、としてもよい。
【0019】
こうすることで、乗員は、燃焼室内に噴射する水を水タンクに給水しなくてもよい。また、水ポンプが水を加圧するため、圧縮行程中の高圧の燃焼室内に水を噴射することができる。噴射した水の少なくとも一部は、減圧沸騰により気化する。水の気化に必要な熱量を少なくすることができる。
【0020】
前記エンジンの燃焼室構造は、前記燃焼室の天井部に配置された点火装置を備え、
前記ピストンは、その上面から凹んだキャビティを有し、
前記水噴射装置は、少なくとも一部の噴孔の軸の延長線が前記キャビティと交差しているタイミングで、水を前記キャビティに向かって噴射し、
前記点火装置は、前記シリンダの軸に直交する方向に対して、前記キャビティから外れた位置に設置されている、としてもよい。
【0021】
本願発明者らは、エンジンの燃焼室に、トルクの向上を目的として水を噴射すると、燃焼安定性が低下してしまうことに気づいた。これは、エンジンのトルクを向上させようとすると、燃焼室内に大量の水を噴射しなければならないためである。つまり、燃焼室内に噴射する水の量が増えると、点火装置の付近の水の濃度が高くなってしまい、点火装置が混合気に点火し難くなる。
【0022】
これに対し前記の構成は、燃焼室内に水を噴射しても、点火装置は混合気に安定して点火をすることができる。
【0023】
つまり、水噴射装置が、キャビティに向かって水を噴射することにより、水がキャビティ内の領域に収まる、又は、ほぼ収まる。燃焼室内において、水が拡散することを抑制することができる。
【0024】
点火装置は、キャビティから外れた位置に設置されている。燃焼室内に噴射した水の拡散が抑制されるため、点火装置の付近の水の濃度は低く保たれる。その結果、点火装置は、混合気に、安定して点火をすることが可能になる。エンジンの燃焼安定性が高まる。
【0025】
尚、本明細書において「キャビティ内の領域」は、ピストンの上面から凹んだキャビティの中の領域と、当該キャビティの開口を燃焼室の天井部へシリンダの軸の方向に投影した投影面から、キャビティの開口までの領域と、を合わせた領域を意味する。本明細書において「キャビティ外の領域」は、前記の「キャビティ内の領域」以外の領域を意味する。
【0026】
前記キャビティは、前記水噴射装置が噴射した前記水が当たる底部と、前記底部に沿って広がる水を前記水噴射装置の方へ巻き上げる巻上部とを有している、としてもよい。
【0027】
本願発明者らの検討によると、巻上部を有するキャビティに向かって水を噴射することにより、キャビティ外の領域への水の広がりが抑制されることがわかった。水がキャビティ内の領域に収まる、又は、ほぼ収まるから、点火装置の付近は、水の濃度が低く保たれる。燃焼室内に水を噴射しても、点火装置は混合気に点火することが可能になる。
【0028】
前記水噴射装置は、前記圧縮行程の前期から中期までの間に水を噴射する、としてもよい。
【0029】
前述したように、燃焼室内に噴射する水の温度を高くすれば、燃焼熱を用いずに水を気化させることができ、エンジンの熱効率の向上に有利になる。圧縮行程の前期から中期までの期間は、燃焼室内の圧力が相対的に低い。燃焼室内の圧力が低いと水の沸点温度が下がるため、水の温度が低くても、気化した水を燃焼室内に噴射することができる。つまり、圧縮行程の前期から中期までの期間に水を噴射することによって、水の加熱に必要な熱量を節約することができる。この構成は、当該エンジンを搭載した自動車の燃費性能の向上に有利である。
【0030】
尚、圧縮行程の「前期」及び「中期」はそれぞれ、圧縮行程の期間を、「前期」「中期」及び「後期」に三等分した場合の、「前期」及び「中期」としてもよい。
【0031】
前記水噴射装置が噴射する水の量は、前記エンジンの負荷が低い場合は、高い場合よりも少なく、
前記水噴射装置は、水の噴射量が少ない場合は、多い場合よりも噴射の開始タイミングを遅らせる、としてもよい。
【0032】
圧縮行程の早い時点で燃焼室内に水を噴射すると、ピストンの圧縮抵抗が増大する。水を噴射するタイミングは遅い方が、エンジンの熱効率の向上に有利である。水の噴射量が少なくて水の噴射期間が短い場合に、水噴射装置は、噴射の開始タイミングを遅らせる。ピストンの圧縮抵抗が低下するから、エンジンの熱効率の向上に有利になる。
【0033】
また、水の噴射量が増えると、水噴射装置が水を噴射する期間が長くなる。水の噴射量が多いと、水噴射装置は、水噴射の開始タイミングを早める。水噴射装置は、圧縮行程の中期までに水噴射を終了することができる。その結果、前述したように、水の加熱に必要な熱量を節約することができる。
【0034】
前記エンジンの燃焼室構造は、燃料を噴射する燃料噴射弁を備え、
前記燃料噴射弁は、前記燃焼室に連通する吸気ポートに配置されている、としてもよい。
【0035】
こうすることで、燃焼室内に均質な混合気を形成することができる。燃焼室内に水を噴射しても、点火装置は混合気に安定して点火をすることができる。
【0036】
前記エンジンは、混合気の少なくとも一部が圧縮着火により燃焼する圧縮着火ガソリンエンジンである、としてもよい。
【0037】
燃焼室内に水が存在しても、混合気は、圧縮着火により安定して燃焼することができる。
【発明の効果】
【0038】
以上説明したように、前記のエンジンの燃焼室構造は、昇温部を使って加熱した水を燃焼室内に噴射することにより、エンジンのトルクを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1図1は、ここに開示する燃焼室構造が適用されたエンジンを例示する図である。
図2図2は、燃焼室の平面図である。
図3図3は、燃焼室を拡大して示す断面図である。
図4図4は、水供給装置と水噴射弁との構成例を示す図である。
図5図5は、図3のV−V断面図である。
図6図6は、図3のVI−VI端面図である。
図7図7の上図は、噴孔の密度が低い場合の水の噴流を例示する図であり、下図は、噴孔の密度が高い場合の水の噴流を例示する図である。
図8図8は、燃焼室内の水の濃度分布の変化を例示する図である。
図9図9は、燃焼室内に水を噴射した場合と噴射しない場合の、筒内圧力の変化(上図)及び筒内温度の変化(下図)を例示する図である。
図10図10は、エンジンの制御装置の構成を例示するブロック図である。
図11図11は、水の噴射量に関する制御マップを例示する図である。
図12図12は、エンジンが高負荷の場合(上図)と、中負荷の場合(中図)及び低負荷の場合(下図)のそれぞれにおいて、燃料の噴射時期、水の噴射時期及び点火時期を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、エンジンの燃焼室構造の実施形態について、図面を参照しながら説明する。ここで説明する燃焼室構造は例示である。
【0041】
図1は、ここに開示する燃焼室構造が適用されたエンジン1を例示している。エンジン1は、燃焼室11が吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程を繰り返すことにより運転する4ストロークのレシプロエンジンである。エンジン1は、四輪の自動車に搭載されている。エンジン1が運転することによって、自動車は走行する。エンジン1の燃料は、この構成例においてはガソリンである。燃料は、少なくともガソリンを含む液体燃料であればよい。燃料は、例えばバイオエタノール等を含むガソリンであってもよい。
【0042】
エンジン1は、シリンダブロック12と、シリンダブロック12の上に載置されるシリンダヘッド13とを備えている。シリンダブロック12の内部に複数のシリンダ14が形成されている。エンジン1は、多気筒エンジンである。図1及び図3では、一つのシリンダ14のみを示す。
【0043】
各シリンダ14には、ピストン3が内挿されている。ピストン3は、シリンダ14の内部を往復動する。ピストン3は、図示は省略するが、コネクティングロッドを介してクランクシャフトに連結されている。
【0044】
ピストン3は、シリンダ14及びシリンダヘッド13と共に燃焼室11を形成する。尚、「燃焼室」は広義で用いる。つまり、「燃焼室」は、ピストン3の位置に関わらず、ピストン3、シリンダ14及びシリンダヘッド13によって形成される空間を意味する。
【0045】
シリンダヘッド13には、シリンダ14毎に、吸気ポート15が形成されている。吸気ポート15は、燃焼室11に連通している。吸気ポート15には、吸気弁21が配設されている。吸気弁21は、吸気ポート15を開閉する。吸気弁21は、カム23の回転によって開閉する。尚、吸気弁21を開閉する動弁装置は、図例では直動式である。吸気弁21の動弁装置の構成は、特定の形式に限定されない。
【0046】
シリンダヘッド13にはまた、シリンダ14毎に、排気ポート16が形成されている。排気ポート16も、燃焼室11に連通している。排気ポート16には、排気弁22が配設されている。排気弁22は、排気ポート16を開閉する。排気弁22は、カム24の回転によって開閉する。尚、排気弁22を開閉する動弁装置は、図例では直動式である。排気弁22の動弁装置の構成は、特定の形式に限定されない。
【0047】
エンジン1の一側部(図1における左側部)には吸気管61が接続されている。吸気管61は、吸気ポート15に連通している。燃焼室11に導入するガスは、吸気管61の中を流れる。図示は省略するが、吸気管61にはスロットル弁66(図10参照)が配設されている。尚、以下の説明において、エンジン1において吸気管61が接続された側を、「吸気側」と呼ぶ場合がある。
【0048】
エンジン1の他側部(図1における右側部)には排気管62が接続されている。排気管62は、排気ポート16に連通している。燃焼室11から排出された排気ガスは、排気管62の中を流れる。排気管62には、触媒コンバーター63が配設されている。触媒コンバーター63は、例えば三元触媒を有している。触媒コンバーター63は、排気ガスを清浄化する。尚、以下の説明において、エンジン1において排気管62が接続された側を、「排気側」と呼ぶ場合がある。
【0049】
シリンダヘッド13には、シリンダ14毎に、インジェクタ64が取り付けられている。インジェクタ64は、吸気ポート15に配設されている。インジェクタ64は、吸気ポート15内へ燃料を噴射する。詳細な図示は省略するが、インジェクタ64は、例えば複数の噴口を有する多噴口型の燃料噴射弁である。尚、図1に示すインジェクタ64の取り付け位置は、一例である。インジェクタ64は、吸気ポート15に配設する代わりに、燃焼室11に配設してもよい。インジェクタ64は、燃料を燃焼室11内に直接噴射してもよい。
【0050】
シリンダヘッド13には、図3に示すように、点火プラグ65が取り付けられている。点火プラグ65は、シリンダ14毎に取り付けられている。点火プラグ65は、燃焼室11の天井部111に取り付けられている。点火プラグ65は、詳細な図示は省略するが、燃焼室11内に臨む電極を有している。電極間の火花放電によって、点火プラグ65は、燃焼室11の中の混合気に強制的に点火をする。点火プラグ65は、プラズマ放電を行ってもよい。点火プラグ65は、点火装置の一例である。点火プラグ65は、図2に一点鎖線で示すように、エンジン1の吸気側と排気側との中間位置に配置されている。点火プラグ65はまた、図3にも示すように、シリンダ14の中心軸Xよりも、エンジン1のフロント側に配置されている。点火プラグ65は、シリンダ14の中心軸Xに近い位置に位置している。点火プラグ65は、一例として、シリンダ14の軸に沿うように真っ直ぐに配設されている。
【0051】
点火プラグ65が混合気に強制的に点火をすると、混合気が火炎伝播によるSI(Spark Ignition)燃焼を開始する。そのSI燃焼の発熱によって燃焼室11内の温度が高くなること、及び/又は、火炎伝播により燃焼室11の中の圧力が高くなること、によって、未燃混合気が自己着火によるCI(Compression Ignition)燃焼をする。このエンジン1は、混合気の少なくとも一部が圧縮着火により燃焼する圧縮着火ガソリンエンジンである。
【0052】
(燃焼室内に水を噴射する構成)
このエンジン1は、水噴射装置4と、水供給装置5とを備えている。水噴射装置4は、燃焼室11内に水を噴射する。水供給装置5は、水噴射装置4に水を供給する。このエンジン1は、燃焼室11内に水を噴射することによって作動ガスを増加させ、エンジン1のピストン仕事の増加を図る。また、このエンジン1は、燃焼室11内に水を噴射することにより燃焼室11内を冷却して、異常燃焼の発生を抑制する。
【0053】
エンジン1のトルク向上を図るためには、燃焼室11内に大量の水を噴射しなければならない。ところが、本願発明者らの検討によると、燃焼室11内に大量の水を噴射すると、燃焼安定性が低下することがわかった。これは、燃焼室11内に噴射する水の量が増えると、点火プラグ65の付近の水の濃度が高くなってしまい、点火プラグ65が混合気に点火し難くなるためである。
【0054】
そこで、水噴射装置4は、大量の水を燃焼室11内に噴射しても、点火プラグ65が混合気に安定して点火をすることができるよう、構成されている。
【0055】
水噴射装置4は、図3に示すように、シリンダヘッド13に取り付けられている。水噴射装置4は、シリンダ14毎に取り付けられている。水噴射装置4は、燃焼室11の天井部111に取り付けられている。水噴射装置4は、図2に一点鎖線で示すように、エンジン1の吸気側と排気側との中間位置に配置されている。水噴射装置4はまた、シリンダ14の中心軸Xよりも、エンジン1のリヤ側に配置されている。水噴射装置4は、燃焼室11の中心から離れた位置に位置している。水噴射装置4は、点火プラグ65から離れている。水噴射装置4は、シリンダ14の軸に対して傾いている。より詳細に、水噴射装置4は、上方から下方に向かって、シリンダ14の中心軸Xに近づく方向に傾いている。尚、水噴射装置4は、シリンダ14の軸に沿うように真っ直ぐに、シリンダヘッド13に取り付けてもよい。水噴射装置4の構成の詳細は、後述する。
【0056】
水供給装置5は、水噴射装置4に接続されている。水供給装置5は、排気ガス中の水を凝縮し、その凝縮水を水噴射装置4に供給する。水供給装置5は、図1及び図4に示すように、凝縮器51と、水タンク52と、水ポンプ53と、熱交換器54と、を有している。水供給装置5は、水を加熱する加熱装置を含んでいる。
【0057】
凝縮器51は、排気管62から取り出した排気ガス中の水を凝縮する。凝縮器51は、取出管55に接続されている。取出管55は、排気管62と凝縮器51とをつないでいる。水タンク52は、凝縮器51が凝縮した水を溜める。水タンク52は、第1供給管56を通じて水噴射装置4に接続されている。水ポンプ53及び熱交換器54は、第1供給管56の途中に介設している。水ポンプ53は、水タンク52内の水を吸い込んで、熱交換器54へ吐き出す。
【0058】
熱交換器54は、排気管62に取り付けられている。熱交換器54は、排気ガスと水との間で熱交換を行う。水は、エンジン1の排熱によって加熱される。水ポンプ53が加圧しかつ、熱交換器54が加熱した高温高圧の水が、水噴射装置4に送られる。
【0059】
水噴射装置4は、図3に例示するように、水噴射弁41と、昇温部42と、ノズル部43と、ヒートパイプ44を有している。尚、図3は、水噴射弁41の先端部のみを図示している。水噴射装置4も、水を加熱する加熱装置を含んでいる。
【0060】
水噴射弁41は、図4に示すように、後述するECU(Engine Control Unit)10の信号を受けて、燃焼室11内に水を噴射する。水噴射弁41は、高温室411と、低温室412とを有している。高温室411と低温室412との間は仕切られている。高温室411には、前述した第1供給管56が接続されている。高温室411には、水ポンプ53が加圧しかつ、熱交換器54が加熱した高温高圧の水が供給される。低温室412には、第2供給管57が接続されている。第2供給管57は、水ポンプ53と熱交換器54との間において第1供給管56から分岐している。第2供給管57は、熱交換器54をバイパスしている。低温室412には、水ポンプ53が加圧しかつ、熱交換器54をバイパスした低温高圧の水が供給される。低温高圧の水は、後述するように、針弁413を開閉させるための制御流体である。
【0061】
針弁413は、高温室411に設けられた噴射口414を塞いでいる。針弁413の先端は、噴射口414を開閉する。針弁413の基端は、低温室412内の水の圧力を受けている。針弁413は、背圧を受けることによって、噴射口414を閉じている。低温室412には、制御弁415が設けられている。制御弁415は、例えばソレノイド弁である。制御弁415は、ECU10の制御信号を受けて開閉する。制御弁415が開くと、低温室412内の水が大気に放出される。低温室412内の圧力が下がって、針弁413は、噴射口414を開けるように持ち上がる(図4の白抜きの矢印参照)。針弁413が噴射口414を開けると、高温室411内の高温高圧の水が、噴射口414から噴射される。噴射口414から噴射された水の一部は、減圧沸騰により気化する。
【0062】
ソレノイド弁は、耐熱温度が比較的低い。前述したように、低温室412に供給する制御流体を加熱しないことで、制御弁415の信頼性が向上する。また、大気に放出する制御流体を加熱しないことにより、エンジン1の熱エネルギの損失を低くすることができる。
【0063】
水噴射装置4の昇温部42は、図3に例示するように、水噴射弁41と燃焼室11との間に介在している。昇温部42は、水噴射弁41が噴射した水の温度を、燃焼室11へ供給する前に上げる。前述した減圧沸騰と、昇温部42の昇温とによって、水噴射装置4は、気化した水のみを燃焼室11へ供給することができる。燃焼室11へ気化した水を供給することにより、混合気の燃焼時に発生する燃焼熱を消費せずに、水を気化膨張させることができる。この構成は、エンジン1の熱効率の向上に有利になる。
【0064】
昇温部42は、取付部421と、本体部422と、伝熱部423と、を有している。本体部422は、水噴射弁41の先端に取り付けられる。伝熱部423は、本体部422の側部に連続する。取付部421は、伝熱部423を挟んで、本体部422に接続される。
【0065】
取付部421には、ヒートパイプ44の先端部が取り付けられる。ヒートパイプ44の基端部は、図示は省略するが、排気管62に取り付けられている。ヒートパイプ44は、排気ガスの熱を昇温部42へ送る。
【0066】
本体部422は、略円柱状のブロックである。本体部422は、ヒートパイプ44の熱を蓄熱する。図5に例示するように、本体部422の中央部には、多数の通路45が形成されている。水は各通路45内を流れる。本体部422は、通路45内を流れる水を加熱する。図3に示すように、各通路45は、本体部422の上端面及び下端面のそれぞれに開口している。各通路45は、本体部422の上端面から下端面へと、本体部422の軸方向に真っ直ぐに伸びている。前述したように、水噴射装置4はシリンダ14の軸に対して傾いているため、各通路45も、シリンダ14の軸に対して傾いている。
【0067】
複数の通路45は等間隔に並んでいる。ここで、複数の通路45は、本体部422の中心に対して対称に配置されていない。本体部422は、通路45が形成されない非形成部46を有している。非形成部46は、本体部422を、伝熱部423を介してヒートパイプ44が取り付けられる側(取付側)と、その反対側(反取付側)とに二等分したときの反取付側の一部に設けられている。非形成部46は、図5の構成例では、略扇形である。通路45は、本体部422における取付側と、反取付側の一部と、に設けられている。
【0068】
非形成部46は、ヒートパイプ44から離れている。非形成部46には、ヒートパイプ44の熱が伝わりにくい。仮に非形成部46に通路45を形成しても、本体部422は、そこを流れる水に十分な熱を与えることができず、水が気化しない恐れがある。気化していない水が燃焼室11内に噴射されると、水が燃焼熱を奪ってしまう。この場合、エンジン1の熱効率が低下する。
【0069】
これに対し、本体部422に、通路45を形成しない非形成部46を設けると、本体部422は、通路45を通過する水に熱を十分に与えることができ、水を全て、気化させることが可能になる。気化していない水が燃焼室11内に噴射されることが抑制される。エンジン1の熱効率の低下が抑制されると共に、エンジン1のトルクが向上する。
【0070】
伝熱部423は、本体部422と取付部421とを接続している。伝熱部423は、本体部422と取付部421とを最短でつなぐように形成されている。伝熱部423の長さLは短い。また、伝熱部423は、本体部422の通路45が延びる方向に、所定の幅Wを有している。幅Wは、通路45の長さの半分以上である。伝熱部423の長さLが短くかつ、幅Wが広いことによって、伝熱部423の熱抵抗は低い。伝熱部423は、ヒートパイプ44の熱を、本体部422に効率良く伝えることができる。
【0071】
尚、水噴射弁41は、接続部47を介して昇温部42の本体部422に接続されている。接続部47には、その下端(つまり、図3における下端)から凹んだ凹部471が形成されている。水噴射弁41の先端は、凹部471につながっている。また、本体部422の上端面は、凹部471内に位置している。本体部422の上端面には、前述したように、通路45が開口している。凹部471は、水噴射弁41から噴射された水を、複数の噴孔432に分配する分配部として機能する。
【0072】
水噴射装置4のノズル部43は、昇温部42の本体部422の下端に取り付けられている。ノズル部43は、その上端から凹んだ凹部431と、複数の噴孔432とを有している。各噴孔432は、凹部431につながっていると共に、ノズル部43の下端面に開口している。本体部422の通路45から出た水は全て、一旦、凹部431内に入り、複数の噴孔432に分配される。
【0073】
ノズル部43の下端面は、水噴射装置4の噴射面433に相当する。噴射面433には、前述したように、複数の噴孔432が開口している。噴射面433は、燃焼室11の天井部111において、燃焼室11内に臨んでいる。図2に示すように、噴射面433のほぼ全体が、シリンダ14の軸に直交する方向に対して、後述するキャビティ31と同じ位置に位置している。言い替えると、噴射面433は、後述するキャビティ内の領域33に含まれている。
【0074】
図6に例示するように、この構成例では、ノズル部43は、12個の噴孔432を有している。噴孔432の数は、適宜の数にすることができる。複数の噴孔432は、互いに平行である。複数の噴孔432は、ノズル部43の中心に対して対称に配置されている。複数の噴孔432は、略等間隔で配置されている。ここで、隣り合う噴孔432の中心間距離Pは、5mm以下である。一例として、各噴孔432の直径φは、φ=1.5mmで、噴孔の中心間距離Pは、P=2.5mmである。
【0075】
尚、水噴射装置4は、ノズル部43を省略し、本体部422の下端面を、燃焼室11の天井部111に臨んで配設してもよい。
【0076】
ピストン3の上面には、キャビティ31が形成されている。キャビティ31は、図2及び図3に例示するように、平面視で円形状である。キャビティ31の円の中心は、シリンダ14の吸気側と排気側とを間の中央線(図2の一点鎖線参照)上に位置している。キャビティ31は、シリンダ14の中心軸Xよりもエンジン1のリヤ側に位置している。キャビティ31は、水噴射装置4に対して、シリンダ14の軸方向に対向している。
【0077】
図例において、キャビティ31の円の直径は、ピストン3の直径の1/2以下である。尚、キャビティ31の大きさは、適宜の大きさに設定することができる。しかしながら後述のように、キャビティ31は、燃焼室11に噴射された水をキャビティ内の領域33に収めることで、水の拡散を抑制する機能を有している。キャビティ31は大きすぎない方が好ましい。
【0078】
図例のキャビティ31は、底部311と、側壁312とによって構成されている。キャビティ31は、比較的浅い。底部311は、平面視で円形状であり、シリンダ14の軸に直交する方向に広がる平らな面によって構成されている。側壁312は、底部311の周縁に連続する。底部311と側壁312とは、直交している。底部311が円形状であるため、側壁312は、円周状である。
【0079】
ピストン3の上面及びキャビティ31の表面には遮熱層32が設けられている。遮熱層32は、ピストン3よりも熱伝導率が低い。尚、ピストン3は、例えばアルミニウム又はアルミニウム合金製である。遮熱層32は、ピストン3の内部への熱の伝達を抑制する。遮熱層32を設けるとエンジン1の冷却損失を低減することができる。遮熱層32はまた、ピストン3よりも容積比熱が小さい。遮熱層32の熱容量は小さい。遮熱層32の熱容量が小さいと、遮熱層32の温度は、燃焼室11内の温度の変動に追従して変化する。燃焼室11内で混合気が燃焼する際に、燃焼温度と遮熱層32との温度差が小さくなるから、熱がピストン3へ伝わることをさらに抑制することができる。
【0080】
遮熱層32は、遮熱材料を、ピストン3の上面及びキャビティ31の表面に塗布し、加熱処理によって遮熱材料を硬化させることにより形成してもよい。遮熱材料は、例えばガラスバルーン等の中空粒子と、例えばシリコーン樹脂等のバインダとを含有する。前述したように、キャビティ31は、底部311と側壁312とからなる単純な形状であるため、ピストン3の上面及びキャビティ31の表面に遮熱材料を塗布しやすい。遮熱層32の形成は、比較的容易である。
【0081】
詳細は後述するが、水噴射装置4は、燃焼室11が圧縮行程にあるときに、燃焼室11内に水を噴射する。水噴射装置4に供給される水は、水ポンプ53によって加圧されているため、高圧の燃焼室11内に噴射することができる。図3に一点鎖線で示すように、水噴射装置4は、キャビティ31を指向して水を噴射する。水噴射装置4が噴射した水の少なくとも一部は、キャビティ31内に到達する。
【0082】
(燃焼室内に噴射した水の拡散を抑制するための構成)
前述したように、燃焼室11内に大量の水を噴射すると、燃焼室11内に水が拡散することに伴い点火プラグ65の付近の水の濃度が高くなって、点火プラグ65が安定して混合気に点火をすることができなくなる。
【0083】
この課題に対して、本願発明者らが検討した結果、燃焼室11内に噴射した水の拡散を抑制する水噴射装置4の水の噴射形態、キャビティ31の形状、及び、それらの組み合わせを見出して、ここに開示する技術を完成するに至った。
【0084】
前述したように、水噴射装置4のノズル部43は複数の噴孔432を有している。複数の噴孔432は、図3に示すように、互いに平行である。本願発明者らの検討によると、複数の噴孔432の軸が互いに平行又は略平行であれば、水噴射装置4が噴射した水の噴流は、その噴射方向に対し直交する方向に広がり難くなる。複数の噴孔432から燃焼室11内へ噴射した水がそれぞれ、同じ又はほぼ同じ方向へ進むため、当該方向に進む水の噴流の運動量が増大する。運動量が増大すると、水噴射装置4が噴射した水の噴流の周囲の流体を、その噴流へ巻き込む力が強くなるためと考えられる。図例の水噴射装置4は、12個全ての噴孔432の軸が互いに平行又は略平行である。全ての噴孔432の軸が互いに平行又は略平行であると、水の運動量がさらに増大するから、噴流の周囲の流体の巻き込み力がより強くなる。こうして、水噴射装置4は、燃焼室11内に噴射した水の拡散を抑制することができる。
【0085】
本願発明者らの検討によると、噴孔432同士の軸間の角度差が5度以内であれば、水噴射装置4が噴射した水の噴流は、その噴射方向に対し直交する方向に広がり難くなり、水の拡散を抑制することができる。尚、水噴射装置4は、全ての噴孔432の軸が互いに平行又は略平行でなくてもよい。
【0086】
また、図6に示すように、複数の噴孔432の中心間距離Pは比較的短い。中心間距離Pが短いと、水噴射装置4が噴射する水の密度が高まる。水の密度が高いと、運動量の増加により、噴流の周囲の流体の巻き込み力がより強くなる。本願発明者らの検討によると、噴孔432の中心間距離Pが5mm以下であれば、噴流の周囲の流体の巻き込み力が十分に強くなって、水の拡散をより効果的に抑制することができることがわかった。
【0087】
キャビティ31は、図3に示すように、平らな底部311と、底部311に直交する側壁312とを有している。水噴射装置4は、キャビティ31内を指向して、水を噴射する。水噴射装置4が噴射した水は、キャビティ31の底部311へ到達する。水は、底部311に沿ってシリンダ14の軸に直交する方向へ広がり、側壁312に到達する。側壁312は、底部311に直交しているため、水を水噴射装置4の方へと巻き上げる。キャビティ31が比較的浅いため、側壁312は、水を効果的に巻き上げることができる。キャビティ31の側壁312は、水がキャビティ31外の領域へと広がることを抑制する。側壁312は、巻上部の一例である。
【0088】
キャビティ31は、巻上部を有していることにより、水噴射装置4が噴射した水を、キャビティ内の領域33に収めることができる。尚、「キャビティ内の領域」は、図3に示すように、ピストン3の上面から凹んだキャビティ31の中の領域と、当該キャビティ31の開口を燃焼室11の天井部111へシリンダ14の軸方向に投影した投影面から、キャビティ31の開口までの領域と、を合わせた領域33を意味する。また、キャビティ31外の領域は、キャビティ内の領域33以外の領域である。
【0089】
そして、前述した水噴射装置4が噴射した水の噴流の巻き込み力と、キャビティ31の側壁312による水の巻き上げとが組み合わさると、側壁312が巻き上げた水が、水の噴流の巻き込み力により、噴流の方へ引き寄せられる。巻き上がった水がキャビティ31外の領域へと広がることが抑制される。その結果、燃焼室11内の水の拡散が、より効果的に、抑制される。
【0090】
点火プラグ65は、キャビティ31に対して、シリンダ14の軸に直交する方向に位置がずれている。燃焼室11内に大量の水を噴射しても、前述した水の拡散の抑制によって、点火プラグ65の付近は水の濃度が低く保たれる。点火プラグ65は、混合気に安定して点火をすることが可能になる。
【0091】
ここで、図7は、水噴射装置4の噴孔432の密度が低い比較例71と、噴孔432の密度が高い実施例72とを比較する図である。比較例71及び実施例72はそれぞれ、水噴射装置4がキャビティ31内を指向して水を噴射している例である。尚、図7の例は、図3の構成例とは異なり、水噴射装置4は、シリンダ14の軸に沿うように水を噴射し、水は、キャビティ31の底部311に直交する向きで衝突する。比較例71及び実施例72それぞれにおいて、水噴射装置4の複数の噴孔432は互いに平行である。
【0092】
比較例71は、噴孔432の中心間距離Pが5mmを超える。噴孔432の密度が低いと、水噴射装置4が噴射した水の噴流の運動量が小さくなる。前述した巻き込み力は、相対的に弱くなる。その結果、キャビティ31の側壁312が巻き上げた水は、噴流の方へ引き寄せられない。図7の上図に矢印で示すように、比較例71では、キャビティ31の側壁312が巻き上げた水が、キャビティ外の領域へと広がる。
【0093】
これに対し、実施例72は、噴孔432の中心間距離Pが5mm以下である。実施例72は、噴孔432の密度が高い。噴孔432の密度が高いと、前述のように、水噴射装置4が噴射した水の噴流の運動量が大きいため、前述した巻き込み力が強い。その結果、キャビティ31の側壁312が巻き上げた水は、噴流の方へ引き寄せられる。図7の下図に矢印で示すように、実施例72では、キャビティ31の側壁312が巻き上げた水が、キャビティ内の領域33に収まるようになる。
【0094】
こうして、水噴射装置4が、複数の噴孔432を互いに平行又は略平行にしかつ、噴孔432の密度を高めると共に、キャビティ31の側壁312が、水を巻き上げることにより、燃焼室11内で水が拡散することを抑制することができる。
【0095】
ここで、図3に一点鎖線で示すように、水噴射装置4の噴孔432の少なくとも一部は、水を噴射するタイミングで、キャビティ31の側壁312を指向している。キャビティ31の底部311の中央部に到達した水は、底部311に沿って広がる間に減速する。側壁312に到達した時点で水の流速が低いと、水は巻き上がり難くなる。
【0096】
噴孔432の少なくとも一部が側壁312を指向していると、水噴射装置4が噴射した水の少なくとも一部は、側壁312の近くに到達する。巻上部312は、水の流速が低下しない間に水を巻き上げることができる。水を噴射するタイミングで、噴孔432の少なくとも一部が側壁312を指向していると、キャビティ外の領域へ水が拡散することを、効果的に抑制することができる。
【0097】
尚、図3に示す構成例のように噴孔432の軸の方向が、シリンダ14の軸に対して傾いている場合、噴孔432の軸の延長線とキャビティ31とが交差する位置は、ピストン3の位置に応じて変わる。つまり、水噴射装置4が水を噴射するタイミングが変わると、水噴射装置4が噴射した水が到達する位置が変わる。水噴射装置4は、少なくとも一部の噴孔432の軸の延長線がキャビティ31と交差するタイミングで、水をキャビティ31に向かって噴射してもよい。
【0098】
そして、水噴射装置4が圧縮行程中に水を噴射することによっても、水の拡散を抑制することができる。圧縮行程時は、燃焼室11内の圧力が相対的に高くかつ、燃焼室11内の気体の流動が、吸気行程時よりも弱い。圧縮行程中に燃焼室11内に水を噴射すると、燃焼室11内の気体の流動による水の拡散が抑制される。
【0099】
図8は、実施例の燃焼室構造における、水の濃度分布のシミュレーション結果を例示している。図8は、クランク角の進行に伴う水の濃度分布の変化を示している。図8のP81は、水噴射装置4が圧縮行程中に水の噴射を完了した直後である60°bTDC(before Top Dead Center)での水の濃度分布を示し、P82は、45°bTDCでの水の濃度分布を示し、P83は、10°bTDCでの水の濃度分布を示し、P84は、TDCでの水の濃度分布を示している。図8は、水の濃度が濃い領域と、水の濃度が薄い領域と、水の濃度がそれらの中間の領域と、に分けている。
【0100】
P81に示すように、水の噴射が完了した直後は、キャビティ31を含む、エンジン1のリヤ側の領域の水の濃度が高くかつ、点火プラグ65を含む、エンジン1のフロント側の領域の水の濃度は低い。圧縮行程が進むに従い(P82及びP83)、水が拡散するため、水の濃度が高い領域は小さくなるが、エンジン1のフロント側の領域は水の濃度が低いままである。水が燃焼室11内で広く拡散することが抑制されている。そして、P84に示すように、点火プラグ65が点火を行うタイミング前後のTDCにおいても、点火プラグ65の付近は、水の濃度が低く保たれている。点火プラグ65は、安定的に混合気に点火をすることができる。
【0101】
図9の符号91は、燃焼室11内に水を噴射した場合の筒内圧力の変化(実線)と、燃焼室11内に水を噴射しない場合の筒内圧力(破線)の変化とを比較している。図9の符号92は、燃焼室11内に水を噴射した場合の筒内温度の変化(実線)と、燃焼室11内に水を噴射しない場合の筒内温度の変化(破線)とを比較している。図9の横軸は、クランク角である。燃焼室11内に水を噴射することにより、前述の通り、作動ガス量の増加によって、筒内圧力が高くなる。燃焼室11内に水を噴射することにより、エンジン1のトルクの向上が図られる。また、燃焼室11内に水を噴射することにより、燃焼室11内の温度が低下する。燃焼室11内に水を噴射することにより、異常燃焼の発生を抑制することができる。
【0102】
前記の構成の水噴射装置4及び水供給装置5は、エンジン1の排熱を利用して水を加熱し、気化した水を燃焼室11に噴射している。エンジン1の排気損失を低減することができるから、エンジン1の熱効率が向上する。また、燃焼室11内に供給する水は、排気ガスから抽出した水であるため、前記の構成の水噴射装置4及び水供給装置5は、乗員が噴射用の水を、水タンクに給水する必要がないという利点もある。
【0103】
(エンジンの制御装置の構成)
図10は、エンジン1の制御装置の構成を例示している。エンジン1の制御装置は、ECU10を備えている。ECU10は、周知のマイクロコンピュータをベースとするコントローラーであって、プログラムを実行する中央演算処理装置(Central Processing Unit:CPU)101と、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)により構成されてプログラム及びデータを格納するメモリ102と、電気信号の入出力をする入出力バス103と、を備えている。
【0104】
ECU10には、各種のセンサSW1〜SW3が接続されている。センサSW1〜SW3は、信号をECU10に出力する。センサには、少なくとも以下のセンサが含まれる。
【0105】
エアフローセンサSW1は、吸気管61に配置されかつ、吸気管61を流れる空気の流量を計測する。クランク角センサSW2は、エンジン1に取り付けられかつ、クランクシャフトの回転角を計測する。アクセル開度センサSW3は、アクセルペダル機構(図示省略)に取り付けられかつ、アクセルペダルの操作量に対応したアクセル開度を計測する。
【0106】
ECU10は、これらのセンサSW1〜SW3の信号に基づいて、エンジン1の運転状態を判断すると共に、予め定められている制御ロジックに従って、各デバイスの制御量を演算する。制御ロジックは、メモリ102に記憶されている。制御ロジックは、メモリ102に記憶している運転マップを用いて、目標量及び/又は制御量を演算することを含む。
【0107】
ECU10は、演算をした制御量に係る電気信号を、インジェクタ64、点火プラグ65、スロットル弁66、及び、水噴射装置4に出力する。
【0108】
図11は、水の噴射量に係る制御マップ110を例示している。制御マップ110は、例えばメモリ102に記憶されている。水の噴射量は、エンジン1の回転数と、エンジン1の負荷との関係から定まる。ECU10は、センサSW1〜SW3の信号に基づいてエンジン1の回転数及び負荷を把握しかつ、把握した回転数及び負荷と、制御マップ110とから、水の噴射量を決定する。
【0109】
より詳細に、図11に例示する制御マップ110は、エンジン1の負荷に対して、第1領域1101、第2領域1102及び第3領域1103の三つの領域に分かれている。第2領域1102は、第1領域1101よりも負荷が高い領域である。第3領域1103は、第1領域1101及び第2領域1102よりも負荷が高い領域である。第1領域1101は、おおよそ低負荷領域に対応し、第2領域1102は、おおよそ中負荷領域に対応し、第3領域1103は、おおよそ高負荷領域に対応する。ここで、低負荷領域、中負荷領域及び高負荷領域はそれぞれ、エンジン1の全運転領域を、負荷の高低について三等分したときの、低負荷領域、中負荷領域及び高負荷領域としてもよい。
【0110】
第1領域1101は、前述したように、低負荷領域に対応する。第1領域1101は、エンジン1の回転数に対しては、最低回転から最高回転まで広がっている。第1領域1101において、水の噴射量は少ない。これは、エンジン1の負荷が低いと排気エネルギが低いためである。つまり、エンジン1の負荷が低いと排熱を利用して大量の水を十分に加熱することができない。
【0111】
第2領域1102は、中負荷領域に対応する。第2領域1102は、エンジン1の回転数に対しては、最低回転から最高回転まで広がっている。第2領域1102において、水の噴射量は、第1領域1101の噴射量よりも多い。エンジン1の負荷が高くなると排気エネルギが高くなるため、エンジン1の排熱を利用して加熱することができる水の量が増える。
【0112】
第3領域1103は、高負荷領域に対応する。第3領域1103は、エンジン1の回転数に対しては、最低回転から最高回転まで広がっている。第3領域1103において、水の噴射量は、第1領域1101の噴射量及び第2領域1102の噴射量よりも多い。高負荷領域は、異常燃焼が発生しやすい。第3領域1103において、水の噴射量を増やすことにより、エンジン1のトルク向上と共に、異常燃焼の発生を抑制することができる。
【0113】
ここで、第2領域1102と第3領域1103との境界は、図11において傾いている。つまり、エンジン1の回転数が高いと、第2領域1102が、高負荷の方へ広がる。エンジン1の回転数が低いと、第3領域が低負荷の方へ広がる。これは、回転数が高くなると、燃焼室11内へ水を噴射する時間間隔が短くなるため、水を十分に加熱するだけの時間を確保することが難しくなるためである。エンジン1の回転数が高い場合は、水の噴射量が少ない第2領域1102を拡大することによって、十分に加熱した水を燃焼室11内に噴射することができ、エンジン1のトルクを向上させることができる。エンジン1の回転数が低い場合は、水の噴射量が多い第3領域を拡大することによって、燃焼室11内に噴射する水の量を増やすことができ、エンジン1のトルクを、さらに向上させることができる。当該エンジン1を搭載した自動車の燃費性能の向上に有利になる。
【0114】
図12は、ECU10の制御による、燃料噴射、水噴射及び点火の時期を例示している。図12の横軸は、クランク角である。図12の両端矢印は、噴射の期間を示している。
【0115】
このエンジン1のインジェクタ64は、吸気ポート15に配設されている。インジェクタ64は、吸気行程中に燃料を吸気ポート15に噴射する。燃料が吸気と共に燃焼室11内に導入される。燃焼室11内に均質な混合気が形成される。均質な混合気は、点火プラグ65による安定的な点火と、安定的な圧縮着火とに有利である。エンジン1の負荷が高いと、燃料の噴射量は増える。図12の例では、インジェクタ64は、高負荷時P121に、吸気行程の開始から終了までのほぼ全期間に亘って、燃料を噴射する。
【0116】
吸気行程が終了し、続く圧縮行程において、水噴射装置4は水を燃焼室11内に噴射する。エンジン1の負荷が高い場合、水の噴射量が多い(図11参照)。水噴射装置4が水を噴射する期間は長い。水噴射装置4は、圧縮行程の前期から中期の期間に、燃焼室11内に水を噴射する。圧縮行程の前期から中期は、燃焼室11内の圧力が低い。燃焼室11内に噴射する水の温度が低くても水が気化する。圧縮行程の後期は燃焼室11内の圧力が高いため、燃焼室11内に噴射する水の温度が高くないと水が気化しない。圧縮行程の前期から中期の期間に水を噴射することは、エンジン1の排熱を利用して水を気化させることを可能にする。エンジン1の熱効率の向上に有利になる。
【0117】
尚、圧縮行程の前期、中期、及び、後期はそれぞれ、圧縮行程の期間を、「前期」「中期」及び「後期」に三等分した場合の、「前期」「中期」及び「後期」としてもよい。以下に記載する吸気行程の前期、中期、及び、後期も同様である。
【0118】
エンジン1の負荷が高い場合、点火プラグ65は、点火時期を遅角する。点火プラグ65は、圧縮上死点後に点火を行う。これにより、異常燃焼の発生を抑制することができる点火プラグ65は、図12に破線の矢印で例示する期間内で、混合気に点火してもよい。
【0119】
エンジン1が中負荷の場合(P122)、燃料の噴射量は、高負荷時よりも減る。インジェクタ64の燃料の噴射期間は、相対的に短い。インジェクタ64は、吸気行程の中期を含む期間に、燃料を噴射する。吸気行程の中期はピストン3の下降速度が速い。吸気行程の中期に燃料を噴射すると、噴射した燃料が拡散して、混合気が均質又は略均質になる。尚、エンジン1が中負荷の場合の燃料の噴射時期は、適宜の時期に設定してもよい。
【0120】
吸気行程が終了し、続く圧縮行程において、水噴射装置4は水を燃焼室11内に噴射する。エンジン1が中負荷の場合、水の噴射量は、高負荷時よりも減る(図11参照)。水噴射装置4が水を噴射する期間は相対的に短い。水噴射装置4は、水の噴射開始時期を遅らせる。圧縮行程の早い時期に燃焼室11内に水を噴射すると、作動ガスの増加により圧縮抵抗が増大してしまう。水の噴射開始時期を遅らせることによって、圧縮抵抗の増大を避けることができる。エンジン1の熱効率が向上する。水噴射装置4はまた、高負荷時と同様に、圧縮行程の中期までに噴射を完了する。これにより、水の加熱に必要な熱量を節約することができる。
【0121】
エンジン1が中負荷の場合、点火プラグ65は、点火時期を、高負荷時よりも進角する。これにより、異常燃焼の発生が抑制されると共に、点火時期の最適化によってエンジン1のトルクの向上が図られる。点火プラグ65は、圧縮上死点後の、図12に破線の矢印で例示する期間内で、混合気に点火してもよい。
【0122】
エンジン1が低負荷の場合(P123)、燃料の噴射量は、中負荷時よりも減る。インジェクタ64の燃料の噴射期間は、相対的に短い。インジェクタ64は、吸気行程の中期を含む期間に、燃料を噴射する。これにより、混合気が均質又は略均質になる。尚、エンジン1が低負荷の場合の燃料の噴射時期は、適宜の時期に設定してもよい。
【0123】
吸気行程が終了し、続く圧縮行程において、水噴射装置4は水を燃焼室11内に噴射する。エンジン1が低負荷の場合、水の噴射量は、中負荷時よりも減る(図11参照)。水噴射装置4が水を噴射する期間は相対的に短い。水噴射装置4は、水の噴射開始時期をさらに遅らせる。これにより、圧縮抵抗の増大を避けることができる。水噴射装置4はまた、高負荷及び中負荷時と同様に、圧縮行程の中期までに噴射を完了する。これにより、水の加熱に必要な熱量を節約することができる。
【0124】
エンジン1が低負荷の場合、点火プラグ65は、点火時期を、中負荷時よりも進角する。図12に例示するように、点火プラグ65は、圧縮上死点前に、混合気に点火をしてもよい。点火時期の最適化により、エンジン1のトルク向上を図ることができる。
【0125】
尚、ここに開示するエンジンの燃焼室構造は、前述した構成のエンジン1に適用することに限定されない。ここに開示するエンジンの燃焼室構造は、様々な構成のエンジンに適用することが可能である。
【符号の説明】
【0126】
1 エンジン
11 燃焼室
111 天井部
14 シリンダ
15 吸気ポート
3 ピストン
31 キャビティ
311 底部
312 側壁(巻上部)
32 遮熱層
4 水噴射装置
41 水噴射弁
42 昇温部
421 取付部
422 本体部
423 伝熱部
432 噴孔
433 噴射面
44 ヒートパイプ(加熱装置)
45 通路
46 非形成部
5 水供給装置
51 凝縮器
52 水タンク
53 水ポンプ
54 熱交換器(加熱装置)
62 排気管
64 インジェクタ(燃料噴射弁)
65 点火プラグ(点火装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12