(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-148832(P2021-148832A)
(43)【公開日】2021年9月27日
(54)【発明の名称】機械式デジタル数字表示板
(51)【国際特許分類】
G09F 11/00 20060101AFI20210830BHJP
【FI】
G09F11/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2020-45562(P2020-45562)
(22)【出願日】2020年3月16日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り [展示会名]第23回身近なヒント発明展 [展示日] 令和元年10月11日 [開催場所]東京都新宿区余丁町7番1号 発明学会ビル
(71)【出願人】
【識別番号】720001912
【氏名又は名称】佐藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大輔
【テーマコード(参考)】
5C095
【Fターム(参考)】
5C095AA90
5C095BA27
5C095BA40
5C095BB01
5C095BB07
5C095DA01
5C095DA12
5C095EE24
(57)【要約】
【課題】任意の場所にデジタル数字を表現し、外周のダイヤル20を回すとデジタル数字の0から9が切り替わって表現される機械式デジタル数字表示板であって、ストローク幅SWを太くした遠くからでも認識しやすいデジタル数字の表現を、コンパクトな薄型形状で実現する。
【解決手段】ダイヤル20と、ダイヤル20と連動して回転する回動盤80と、回転する回動盤80と連動して反復移動する7つの移動板40と、移動板40の位置によってデジタル数字におけるセグメントSの表示や非表示を表現する表カバー板30を有する構造とすることにより、ダイヤル20の回転と連動する回動盤80が所定の角度になる度に0から9のうちの所定のデジタル数字が表現される。また、移動板40を二層構造とし、セグメントS間の隙間を小さくし、縦画移動板に下層隠し板を設けることで、遠くからでも認識しやすいデジタル数字の表現を、コンパクトな薄型形状で実現する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周のダイヤルを回すことによりデジタル数字の0から9が切り替わって表現される表示板において、デジタル数字を切り替えるために回す前記ダイヤルと、前記ダイヤルと連動して回転する回動盤を有し、かつ回転する前記回動盤の角度に伴ってそれぞれが所定のタイミングで反復移動するように連動した7つの移動板と、所定の位置にある前記移動板のみを中空部または透明部を通して外から見えるようにする表カバー板を有する構造とすることにより、反復移動によって見え隠れする7つの前記移動板が、デジタル数字における7つのセグメントの表示と非表示に対応し、外周の前記ダイヤルを右または左に一回転させることで、連動して回転する前記回動盤が所定の角度になる度に0から9のうちの所定のデジタル数字が表現されることを特徴とする機械式デジタル数字表示板。
【請求項2】
前記移動板は、7つの前記セグメントのうちの横画セグメントに対応する横画移動板と、縦画セグメントに対応する縦画移動板に分けられ、前記横画移動板を本体の奥に配置し、前記縦画移動板を本体の手前に配置して、隣り合う前記移動板が干渉することがない二層構造を有し、前記横画セグメントのうちの中央横画セグメントに対応する中央横画移動板は上または下へ、上下横画セグメントに対応する上下横画移動板は内側へ、前記縦画移動板は外側へ向かって反復移動させる機能を持つことを特徴とする、請求項1記載の機械式デジタル数字表示板。
【請求項3】
前記セグメントの両端を先細りにして隣り合う前記セグメントの延長線上に食い込むように配置し、かつ隣り合う前記セグメント間の隙間を内側から外側にかけて一定とすることにより、遠くからでも認識しやすいデジタル数字を表現したことを特徴とする、請求項2記載の機械式デジタル数字表示板。
【請求項4】
前記縦画セグメントの領域に入り込んだ前記横画移動板の両端を、外から見えないように覆い隠すための下層隠し板を、前記縦画移動板の内側側面に設けることにより、前記縦画セグメントの領域に前記横画移動板の両端が入り込んだ状態で、前記縦画移動板が所定の位置から外側へ向かって移動した際、前記横画移動板の両端が前記縦画セグメントに対応する前記中空部または前記透明部を通して外から見えないようにすることを特徴とする、請求項3に記載の機械式デジタル数字表示板。
【請求項5】
所定の位置で内側の円軌道または外側の円軌道へと滑らかに変化する曲がった輪の軌道を持つ7つの溝道が凹設された回動盤と、裏面に設けられたスライド棒を押し動かすことで反復移動可能なように設置された7つの移動板と、所定の位置にある前記移動板のみを中空部または透明部を通して外から見えるようにする表カバー板と、一端に設けられた切替棒を対応する前記溝道に差し込み、もう一端に設けられた切替案内レールには対応する前記スライド棒を差し込み、前記切替棒の移動に伴って前記切替案内レールが旋回して前記スライド棒を押し動かすように軸着された7つの切替レバーを有する構造とすることにより、前記回動盤の回転に伴って7つの前記切替棒が対応する前記溝道内を進み、前記回動盤が所定の角度に近づくに従って所定の前記溝道の軌道が内側から外側または外側から内側へと曲がり始め、前記溝道の側面が前記切替棒を内側または外側へと押し出すことで前記切替レバーが旋回し始め、前記切替レバーの旋回に伴って前記切替案内レールが前記スライド棒を押し出すことで前記移動板が移動し始め、前記回動盤が所定の角度と一致すると、7つの前記移動板の位置が定まり、前記表カバー板を通して所定のデジタル数字が表現されることを特徴とする機械式デジタル数字表示板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、任意の場所にデジタル数字を表現し、外周のダイヤルを回すとデジタル数字の0から9が切り替わって表現される表示板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、デジタル数字の表示板における数字の切り替えには、数字が描かれたプレートを張り替える方式がある。しかし、この方式は、使用していないプレートを別途管理する必要があり、次に表現したい数字が描かれたプレートを探すのに手間がかかることがあった。
【0003】
上記の課題を改善させる方法として、数字が描かれたシートの束を捲って切り替える方式がある。しかし、この方式は、数字を切り替える際に、切り替えを実施する人の手や体によって表現している数字の一部または全部を隠してしまうことがあり、表示板を見ている人の位置によっては数字が認識できなかったり認識が遅れてしまったりすることがあった。
【0004】
また、上記の課題を改善させる方法として、円周の内側に数字を放射状に配置した回転盤を回すことで切り替える方式がある。しかし、この方式は、表現するすべての数字が放射状に並ぶほどに大きいサイズの回転盤を本体に組み込む必要があった。
【0005】
また、上記の課題を改善させる方法として、電気的にデジタル数字の7つのセグメントSの表示S(ON)と非表示S(OFF)(
図2)を切り替える方式がある。しかし、この方式は、電源を必要とするため容易に電気を届けられない場所では使用することができず、また、電池式のものは電池を交換する際に、直前まで表現されていた数字が記憶されなかった。
【0006】
更に、上記の課題を改善させる方法として、セグメントS毎の回転体を連動させてワンタッチで切り替え可能にした方式(特許文献1、特許文献2、特許文献3)が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭49−098990号公報
【特許文献2】実全昭61−092981号公報
【特許文献3】特開平08−095506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した、セグメントS毎の回転体を連動させてワンタッチで切り替え可能にした方式(特許文献1、特許文献2、特許文献3)では、表現するセグメントSのストローク幅をSW(
図2)とし、表現する数字の数をNとした際の、一辺の長さがSWである正N角形が円周に内接するサイズの回転体を、セグメントSの数だけ本体に組み込む必要がある。そのため、ストローク幅SWを太くすると本体の形状が厚くなり、逆に本体の形状を薄くするとストローク幅SWが細くなるというジレンマが存在し、ストローク幅SWを太くした遠くからでも認識しやすいデジタル数字の表現を、コンパクトな薄型形状で実現することは困難であった。
【0009】
本発明は、これらの課題を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、外周のダイヤル20を回すことによりデジタル数字の0から9が切り替わって表現される表示板において、デジタル数字を切り替えるために回すダイヤル20と、ダイヤル20と連動して回転する回動盤80を有し、かつ回転する回動盤80の角度に伴ってそれぞれが所定のタイミングで反復移動するように連動した7つの移動板40と、所定の位置にある移動板40のみを中空部31または透明部を通して外から見えるようにする表カバー板30を有する構造(
図3)とすることにより、反復移動によって見え隠れする7つの移動板40が、デジタル数字における7つのセグメントSの表示S(ON)と非表示S(OFF)(
図2)に対応し、外周のダイヤル20を右または左に一回転させることで、連動して回転する回動盤80が所定の角度になる度に0から9のうちの所定のデジタル数字が表現される(
図1)機能を持たせたものである。
【0011】
また、本発明の更なる好ましい形態としては、7つのセグメントSのうちの横画セグメントSHに対応する横画移動版40H(
図5)と、縦画セグメントSVに対応する縦画移動版40V(
図5)に分けられ、横画移動板40Hを本体の奥に配置し、縦画移動板40Vを本体の手前に配置して、隣り合う移動板40が干渉することがない二層構造を有し、横画セグメントSHのうちの中央横画セグメントSH2に対応する中央横画移動板40H2は上または下へ、上下横画セグメントSHUDに対応する上下横画移動板40HUDは内側へ、縦画移動板40Vは外側へ向かって反復移動させる機能を持たせたものである。
【0012】
また、本発明の更なる好ましい形態としては、セグメントSの両端SE(
図2)を先細りにして、隣り合うセグメントSの延長線上に食い込むように配置し、かつ隣り合うセグメントS間の隙間SG(
図2)を内側から外側にかけて一定とすることにより、遠くからでも認識しやすいデジタル数字を表現する機能を持たせたものである。
【0013】
また、本発明の更なる好ましい形態としては、縦画セグメントSVの領域に入り込んだ横画移動板40Hの着色面41の両端41HE(
図5)を、外から見えないように覆い隠すための下層隠し板43を、縦画移動板40Vの内側側面に設ける(
図5)ことにより、縦画セグメントSVの領域に横画移動板40Hの着色面41の両端41HEが入り込んだ状態で、縦画移動板40Vが所定の位置から外側へ向かって移動した際、横画移動板40Hの着色面41の両端41HEが縦画セグメントSVに対応する中空部31(
図4)または透明部を通して外から見えないようにする機能を持たせたものである。
【0014】
また、本発明の更なる好ましい形態としては、所定の位置で内側の円軌道または外側の円軌道へと滑らかに変化する曲がった輪の軌道を持つ7つの溝道81を回動盤80(
図9)に凹設し、移動板40の裏面には反復移動する動力を受け取るためのスライド棒42(
図5)を設け、一端に設けられた切替棒62を対応する溝道81に差し込み、もう一端に設けられた切替案内レール63には対応するスライド棒42を差し込み、切替棒62の移動に伴って切替案内レール63が旋回してスライド棒42を押し動かすように軸着された7つの切替レバー60(
図7)を有する構造とすることにより、回動盤80の回転に伴って7つの切替棒62が対応する溝道81内を進み、回動盤80が所定の角度に近づくに従って所定の溝道81の軌道が内側から外側または外側から内側へと曲がり始め、溝道81の側面が切替棒62を内側または外側へと押し出すことで切替レバー60が旋回し始め、切替レバー60の旋回に伴って切替案内レール63がスライド棒42を押し出すことで移動板40が移動し始め、回動盤80が所定の角度と一致すると、7つの移動板40の位置が定まり、表カバー板30を通して所定のデジタル数字が表現される機能を持たせたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、表現するセグメントSのストローク幅SWが本体の厚みに影響を及ぼさないため、ストローク幅SWが太く、かつセグメントSの両端SEが先細りで隣り合うセグメントSの延長線上に食い込むように配置され、かつセグメントS間の隙間SGが内側から外側にかけて一定となっており、遠くからでも認識しやすいデジタル数字の表現を、薄型形状かつ上下方向にコンパクトな本体で実現することができている。
【0016】
また、数字を切り替える際に手間がかかることはなく、ダイヤル20を側面から操作すれば表現する数字を隠してしまうこともなく、表現する数字に対して何倍も大きな回転盤を本体に組み込む必要もなく、電源も不要であり、片手でダイヤル20を回すという単純な操作だけで0から9のデジタル数字を手軽に切り替えて表現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】デジタル数字の3を表現した際の斜視図である。
【
図2】一般的なデジタル数字を構成する7つのセグメントSを示した図であり、(a)はデジタル数字の8を表現し、(b)はデジタル数字の2を表現している。
【
図5】移動板40における、(a)は横画移動板40Hの正面図であり、(b)は下横画移動板40H3の下面図であり、(c)は縦画移動板40Vの正面図であり、(d)は下縦画移動板(40V2、40V4)の下面図である。
【
図7】(a)は切替レバー60の正面図であり、(b)は下横画切替レバー60H3と右下縦画切替レバー60V2の下面図である。
【
図12】溝道81を作成する際の手順1を示した図であり、回動盤の原型80TMPを回転する際の切替位置となる切替点(D0からD9)と、溝道81を配置する領域となる7つの円帯Cを表している。
【
図13】溝道81を作成する際の手順2を示した図であり、7つの円帯Cへそれぞれの切替レバー60を割り当てて配置することで、(c)は切替レバー60の切替棒62が対応する円帯Cの内側と外側を反復旋回する様子62Rを表し、(b)は切替棒62の反復旋回62Rに伴って切替レバー60が反復旋回する様子60Rを表し、(a)は切替レバー60の反復旋回60Rに連動して移動板40が反復移動する様子40Rを表している。
【
図14】溝道81を作成する際の手順3を示した図であり、回動盤の原型80TMPを切替点D0に切り替えた状態で、デジタル数字の0を表現するために必要な溝道81の軌道位置をプロットした様子を示しており、移動板40がデジタル数字の0を表現するように7つの切替レバー60を切り替え、その状態における(a)は移動板の様子40S0を表し、(b)は切替レバー60の様子60S0を表し、(c)は切替棒62の位置をP0としてプロットした様子を表している。
【
図15】溝道81を作成する際の手順4を示した図であり、回動盤の原型80TMPを切替点D1に切り替えた状態で、
図14と同様に、デジタル数字の1を表現するために必要な溝道81の軌道位置をP1としてプロットした様子を表している。
【
図16】溝道81を作成する際の手順5を示した図であり、
図14および
図15と同様に、デジタル数字の2から9を表現するために必要な溝道81の軌道位置をプロット(P2からP9)した様子を表している。
【
図17】溝道81を作成する際の手順6を示した図であり、同一の円帯C内に存在するプロット(P1からP9のうちのそれぞれから一つずつ抽出された10個の点)どうしを結んで滑らかな輪になるようにした7つの道Wを表しており、道Wを溝になるように切削したものが回動盤80の溝道81(
図9)となるものである。
【
図18】(a)は横画移動板40Hと縦画移動板40Vが衝突する際のイメージ図であり、(b)は下横画移動板40H3と右下縦画移動板40V2の下面図であり、移動板40の二層構造を表しており、(c)は移動板40の二層構造によって7つの移動板40が衝突することなく反復移動を行う様子を表した図である。
【
図19】(a)は横画移動板40Hの着色面41の両端41HEが、表カバー板30の中空部31を通して外から見えるイメージを示した図であり、(b)は横画移動板40Hの着色面41の両端41HEが下層隠し板43によって隠されることで、表カバー板30の中空部31を通して外から見えていない様子を表しており、(c)はその状態における移動板40と下層隠し板43の状態を表している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0019】
[外観と特徴]
最初に、
図1を参照し、本発明の一実施形態における外観構成と操作の特徴について説明する。
図1は本発明による表示板でデジタル数字の3を表現した際の斜視図である。表示板1は、ダイヤル20、表カバー板30、裏カバー板90およびデジタル数字における7つのセグメントS(
図2)に対応した7つの移動板40を有している。ダイヤル20は中空円柱の形状をしており、矢印R20で示すように右回りおよび左回りといったように回動自在に本体内部の回動盤80(
図3)に嵌着されており、表面には表示板1で表現する0から9までの数字に対応した10個の印21が半球体の突起物として印21P0の位置を基点として放射状に左回りに配設(印21P0から印21P9)されている。表カバー板30は円板形状をしており、所定の位置にある移動板40のみを外から見えるようにするために、デジタル数字における7つのセグメントSの筆画の形状通りに7つの中空部31が貫設され、本体内部の切替部底板70(
図3)に冠着されている。7つの移動板40は、
図5を用いて後述する着色面41をそれぞれ有しており、それぞれの着色面41が対応する中空部31を通して見え隠れするように反復移動することで、デジタル数字における各セグメントSの表示S(ON)と非表示S(OFF)が切り替わって見えるように、本体内部の表現部底板50(
図3)に設置されている。
【0020】
ダイヤル20の指定位置P(表示板1の最上部)に印X(印21P0から印21P9の何れか)が合うようにダイヤル20を回転させることを「ダイヤル20を印Xに切り替える」と表現するものとし、例えば表示板1のダイヤル20を印Xから印Yに切り替えた際の7つの移動板40は、印Xに対応する数字を表現していた位置から印Yに対応する数字を表現する位置に移動する、といったように本体内部の構造が構築されている。従って、ダイヤル20を印21P0に切り替えた状態からダイヤル20を右回りに一回転させた際の表示板1によって表現される数字は、0が表現されている状態から、1、2、3、4、5、6、7、8、9、0の順序で切り替わり、ダイヤル20を左回りに一回転させた場合は、0が表現されている状態から、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0の順序で切り替わるものである。
図1は、ダイヤル20を印21P3に切り替えて、数字の3を表現している様子である。
【0021】
[内部構造]
次に、表示板1の分解図(
図3)および各部品図(
図4から
図11)を参照し、内部構造と各部品どうしの関わり合いについて説明する。
【0022】
(表現部)
表示板1における表現部3の構造は、上述した表カバー板30(
図4)、移動板40(
図5)に加えて、移動板40を配置するための表現部底板50(
図6)によって構成されている。移動板40は、対応するデジタル数字のセグメントSにおける筆画の形状通りに着色された着色面41を主体として、裏面には動力を受け取るためのスライド棒42が突設されている。表現部底板50は、反復移動する移動板の軌道に沿って貫設されたスライド孔51を有している。移動板40は、スライド棒42を対応するスライド孔51に差し込んだ状態で、反復移動可能なように表現部底板50に係合されている。
【0023】
(切替部)
表示板1における切替部4の構造は、スライド棒42を押し出すことで移動板40の位置を変化させるための7つの切替レバー60(
図7)と、切替レバー60を配置するための切替部底板70(
図8)によって構成されている。切替レバー60の根本側には先端側を旋回させる際の支点となる切替軸孔61を有し、裏面には旋回させる動力を受け取るための切替棒62を有し、先端側には旋回に伴ってスライド棒42を押し動かすための切替案内レール63を有することにより、旋回に伴うてこの原理によって切替棒62の小さい動きがスライド棒42を大きく動かす仕組みとなっている。切替部底板70は、切替レバー60の切替軸孔61を軸着させるための切替軸71と、裏面から切替レバー60が操作できるように切替棒62の旋回軌道に沿って貫設した切替孔72を有している。切替レバー60は、切替棒62を対応する切替孔72に差し込んだ状態で、旋回可能なように切替軸71に軸着されている。また、上述した表現部2は、表現部底板50の裏面から突出している7つのスライド棒42が、対応する切替レバー60の切替案内レール63に差し込まれた状態で、表カバー板30が移動板40を覆いかぶせるようにして切替部底板70に嵌着されている。
【0024】
(回動部)
表示板1における回動部5の構造は、切替レバー60を切り替えるタイミングおよび動力を切替棒62に与えるための回動盤80(
図9)と、全体の構造を支持し保護するための裏カバー板90(
図10)によって構成されている。回動盤80の表面には、所定の角度で所定の切替レバーを切り替えるための7つの溝道81(作成方法は
図12から
図17を用いて後述する)を有しており、回動自在なように裏カバー板90に軸着されている。また、上述した切替部4は、切替部底板70の裏面から突出している7つの切替棒62が、対応する回動盤80の溝道81に差し込まれた状態で、切替部底板70が回動盤80を覆いかぶせるようにして裏カバー板90に嵌着されている。
【0025】
(操作部)
表示板1における操作部2を構成するダイヤル20(
図11)は、中空円柱の形状をしており、本体の側面方向から回転操作できるように手前部の外周が裏カバー板90の外周よりも外側に迫り出した側面をしており、印21P0から印21P9が
図12を用いて後述する回動盤の原型80TMPの切替点D0から切替点D9の位置と一致するようにして、回動盤80に嵌着されている。
【0026】
(全体の動き)
表示板1では、上述した内部構造と各部品どうしの関わり合いによって、ダイヤル20を右または左に回転させると、回動盤80も連動して同一方向に回転し、回動盤80の回転に伴って7つの切替棒62が対応する溝道81(作成方法は
図12から
図17を用いて後述する)内を進み、回動盤80が所定の角度に近づくに従って所定の溝道81の軌道が内側から外側(または外側から内側)へと曲がり始め、溝道81の側面が切替棒62を内側(または外側)へと押し出すことで切替レバー60が旋回し始め、切替レバー60の旋回に伴って切替案内レール63がスライド棒42を押し出すことで移動板が移動し始め、回動盤80が所定の角度と一致する頃には、7つの移動板の位置が定まり、表カバー板30を通して見ると7つのセグメントSの表示S(ON)と非表示OSFFが整って見えることで、表示板1によって所定の数字が表現されるというものである。
【0027】
[溝道81の作成方法]
表示板1における溝道81の作成方法は、まず、溝道81が未作成である状態の回動盤80を回動盤の原型80TMPとし、回動盤の原型80TMPの中心から均等に放射状に伸ばした10本の線が外周縁と交わる箇所を切替点D0から切替点D9とし、また、表面を外側から中心に向かって同一幅の7つの円帯Cに分ける(
図12)。
【0028】
次に、7つの切替レバー60をそれぞれの円帯Cに割り当て、切替棒62が対応する円帯Cの外側に向かって旋回したときに、対応する移動板40が所定の位置に移動するように、逆に切替棒62が内側に向かって旋回したときに、対応する移動板40が所定の位置から離れるように移動するように、あるいはそれらが逆の動きとなるように、7つの切替レバー60の配置と各部の形状を作成する(
図13)。
【0029】
次に、ダイヤルの指定位置Pに切替点X(D0からD9の何れか)が合うように回動盤の原型80TMPを回転させることを「回動盤の原型80TMPを点Xに切り替える」と表現するものとし、回動盤の原型80TMPを点D0に切り替えた状態で、移動板40によってデジタル数字の0を表現するるように7つの切替レバー60を切り替え、その状態における7つの切替棒75の回動盤の原型80TMP上の位置(対応する円帯Cの内側または外側)をP0としてプロットし(
図14)、次に、回動盤の原型80TMPを点D1に切り替えた状態で、移動板40によってデジタル数字の1を表現するように7つの切替レバー60を切り替え、その状態における7つの切替棒62の回動盤の原型80TMP上の位置をP1としてプロットし(
図15)、同様にしてデジタル数字の2から9における7つの切替棒62の位置を、P2からP9としてプロットする(
図16)。
【0030】
最後に、同一の円帯C内に存在する点(P0からP9のうちのそれぞれから一つずつ抽出された10個の点)どうしを結んで滑らかな輪になるようにした7つの道Wを作り(
図17)、道Wに切替棒62を差し込んで回動盤の原型80TMPを回転させたときに道Wの軌道の変化によって切替レバー60が所定のタイミングで切り替わるように道Wを切削したものが回動盤80の溝道81(
図9)となるものである。
【0031】
[二層構造]
セグメントSの両端SEを隣り合うセグメントSの延長線上に食い込むように配置した場合、中央横画移動板40H2は所定の位置から上に移動しても下に移動しても隣り合う縦画移動板40Vと衝突することになる、また、上下横画移動板40HUDの移動先を内側方向として本体をコンパクトにしようとすると、上横画移動板40H1は下に移動する際に、下横画移動板40H3は上に移動する際に、隣り合う縦画移動板40Vと衝突することになる(
図18(a))。
【0032】
そこで、表示板1では、横画移動板40Hを本体の奥に配置し、縦画移動板40Vを本体の手前に配置して、隣り合うセグメントSの移動板40が干渉することがない二層構造(
図18(b))を有し、中央横画移動板40H2は下へ、上下横画移動板40HUDは内側へ、縦画移動板40Vは外側へ向かって反復移動させる構造となっている(
図18(c))。
【0033】
[認識しやすい数字の表現]
アラビア数字の0から9は何れもすべてのストローク(画)をひとつに結合して表現している文字であり、デジタル数字においても隣り合うセグメントSどうしを近づけて表現することが、遠くからでも認識しやすいデジタル数字を表現するための重要な要素となる。
【0034】
そこで、表示板1におけるデジタル数字の表現は、セグメントSの両端SEを先細りにして隣り合うセグメントSの延長線上に食い込むように配置し、かつセグメントS間の隙間SGを内側から外側にかけて一定とすることにより、遠くからでも認識しやすいデジタル数字を表現するものとなっている。
【0035】
[下層隠し板]
7つの移動板40が所定の位置にある状態から、横画移動板40Hが所定の位置から移動すると、横画移動板40Hの着色面41の両端41HEは、隣り合う縦画移動板40Vの着色面41の裏側に入り込む。その状態のまま更に縦画移動板40Vが所定の位置から外側へ向かって移動すると、両端41HEは縦画セグメントSVに対応する中空部31を通して外から見えてしまうことになる(
図19(a))。
【0036】
そこで、表示板1における縦画移動板40Vの内側側面には、縦画セグメントSVの領域に入り込んだ横画移動板40Hの着色面41の両端41HEを、外から見えないように覆い隠すための着色されていない表カバー板30の表面と同色である下層隠し板43が設けられている(
図5(c)、
図5(d)、
図19(b)、
図19(c))。
【0037】
[別の形態]
ダイヤル20の指定位置Pは、本体の最上部に限定されるものではなく、最下部や左右部であってもよく、表カバー板30の表面に指定位置Pを示す印を設けてもよい。また、印21に対応する数字を順並びに配置しない場合においては、印21の近傍に対応する数字の文字を記載するとよい。また、印21の形状はなんら限定されるものではないが、次に表現したい数字に対応する印Xを指の腹で押さえながらそのままダイヤル20を回転させて指定位置Pに合わせるという操作を想定する場合には、印21が丸みを帯びた突起物であるほうが望ましい。
【0038】
表カバー板30の中空部31は孔を空けることに限定されるものではなく、透明な丸板の表面をセグメントSの筆画の形状を残して着色したりシールを貼ったりすることで、セグメントSの透明な領域を通して外から移動板40が見えるようにしてもよい。
【0039】
移動板40の着色面41は、色を塗ることに限定されるものではなく、シールを貼ったり材質そのものの色彩を利用するなど、表カバー板30の表面との色の差がはっきりすればよい。また、中央横画移動板40H2の移動方向は下に限定されるものではなく、上であってもよい。
【0040】
溝道81の作成方法は、溝を切削することに限定されるものではなく、道Wの軌道が変化する場所ごとに壁などの切替体を突設して設けてもよい。
【0041】
各部品の材質は、いずれも特にひとつに限定されるものではなく、部品どうしが干渉しながら動く際に大きな摩擦が生ずることのない、例えば安価なプラスチックなどでよい。
【0042】
[使用方法]
本体を手で持って使用する際には、本体側面にゴムなどの滑り止めを設けることで、表現している数字を隠すことなく本体の側面を効果的に掴むことができる。また、本体をホワイトボードや黒板などに貼りつけて使用する際には、本体裏面に磁石を設置することで、取り外し自在に使用することができる。
【0043】
印21に対応する数字がダイヤル20に記載されている場合の数字の切り替え方は、単に表現したい数字に対応する印Xを探し、ダイヤル20を印Xに切り替えるだけでよい。一方、表示板1のように、0から9までの印を順並びに配置して記載を省略している場合のダイヤル20の切り替え方においては、数字3が表現されている
図1の状態から、例えば次に数字の4を表現したい場合にはダイヤル20をひとつ左の印21に切り替えればよいし、例えば次に数字の1を表現したい場合にはダイヤル20を二つ右の印21に切り替えればよい。また、数字を切り替える際に、印21が丸みを帯びた突起物である場合は、印Xを指の腹で押さえながらそのままダイヤル20を回転させて指定位置Pに合わせるという操作が可能である。
【0044】
大観衆が見えるように大型化した本体の数字を切り替える際や、卓上ゲームなどに本体を組み込んで所定のタイミングで自動的に数字を切り替えたりする際には、ダイヤル20を回転させる操作において電気モーターなどの動力を利用してもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 表示板
2 操作部
3 表現部
4 切替部
5 回動部
20 ダイヤル
21 印
21P0〜21P9 印0〜印9
30 表カバー板
31 中空部
40 移動板
40H 横画移動板
40H1 上横画移動板
40H2 中央横画移動板
40H3 下横画移動板
40HUD 上下横画移動板
40V 縦画移動板
40V1 右上縦画移動板
40V2 右下縦画移動板
40V3 左上縦画移動板
40V4 左下縦画移動板
40EC 移動板40の両端が衝突するイメージ
40R 移動板40が反復移動する様子
40S0 移動板40がデジタル数字の0を表現する際の移動板40の状態
40S1 移動板40がデジタル数字の1を表現する際の移動板40の状態
41 着色面
41HE 横画移動板40Hの着色面41の両端
42 スライド棒
43 下層隠し板
50 表現部底板
51 スライド孔
60 切替レバー
60H3 下横画切替レバー
60V2 右下縦画切替レバー
60R 切替レバー60が反復旋回する様子
60S0 移動板40がデジタル数字の0を表現する際の切替レバー60の状態
60S1 移動板40がデジタル数字の1を表現する際の切替レバー60の状態
61 切替軸孔
62 切替棒
62R 切替棒62が対応する円帯Cの内側と外側を反復旋回する様子
63 切替案内レール
70 切替部底板
71 切替軸
72 切替孔
80 回動盤
80TMP 回動盤の原型(溝道81が未作成である状態)
81 溝道
90 裏カバー板
D0〜D9 回動盤の原型80TMPを回転する際の切替位置となる切替点
P ダイヤル20の指定位置
P0〜P9 移動板40がデジタル数字の0から9を表現する際の切替棒62の位置
R20 ダイヤル20の回転方向
S デジタル数字における7つのセグメント
SH 横画セグメント
SH1 上横画セグメント
SH2 中央横画セグメント
SH3 下横画セグメント
SHUD 上下横画セグメント
SV 縦画セグメント
SE セグメントSの両端
SW セグメントSのストローク幅
SG セグメントS間の隙間
S(ON) 表示されているセグメントS
S(OFF) 非表示となっているセグメントS
W 点(P0からP9)どうしを結んで滑らかな輪になるようにした7つの道