【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の電子装置について、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。
【0011】
[実施の形態]
図1は、実施の形態の電子装置10の概略構成図である。
【0012】
電子装置10は、それは例えば工作機械を制御するために提供される数値制御装置であって、複数の電子部品12
Nと、検出部14と、を備える。
【0013】
複数の電子部品12
Nは、その総数はN(Nは自然数)であって、CPU(Central Processing Memory)12
1を含む。電子装置10は、CPU12
1がメイン処理とサブ処理とを制御周期(ITP)内に完了させることを繰り返すことにより動作する。
【0014】
CPU12
1のメイン処理とは、本実施の形態では工作機械の制御処理のことであり、サブ処理とはメイン処理以外の処理のことである。サブ処理には、電子部品12
Nから検出される物理情報に基づいて、電子部品12
Nの異常を察知する予知保全(以下、分析処理とも呼ぶ)が含まれる。
【0015】
複数の電子部品12
Nのうち、CPU12
1以外のものとしては、限定されないが、本実施の形態ではDSP(Digital Signal Processor)12
2、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)12
3およびメモリ12
4が含まれる。これらはCPU12
1とシリアルバスを介して接続される。
【0016】
メモリ12
4は、それは例えばROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のハードウェアである。メモリ12
4には、図示しないが、CPU12
1が読み取って実行可能な所定の制御プログラムが記憶される。CPU12
1は、この所定の制御プログラムを実行することにより、前述のメイン処理およびサブ処理を実現する。
【0017】
検出部14は、複数の電子部品12
Nの各々から複数の物理情報を検出するものであって、それは例えば複数のセンサを有するセンサ群として構成される。
【0018】
本実施の形態では、CPU12
1を含む複数の電子部品12
Nの各々に、電圧センサ、電流センサおよび温度センサを有する検出部14を設ける。これにより、CPU12
1を含む複数の電子部品12
Nの各々の電圧V、電流Iおよび温度Tが検出されるようになる。
【0019】
図2は、実施の形態の検出部14による物理情報の検出制御について説明するためのタイムチャートである。
【0020】
検出部14は、自己の最小の制御周期として設定される検出周期Cに従って物理情報を検出する。検出部14は、
図2に示すように、ある時点P
1で、自身が設けられた電子部品12
Nの電圧V(V
N、P1)、電流I(I
N、P1)および温度T(T
N、P1)を検出する。そしてその後、時点P
1から検出周期C後の時点P
2で電圧V(V
N、P2)、電流I(I
N、P2)および温度T(T
N、P2)を再び検出する。
【0021】
検出部14が出力する物理情報の値は、直前の検出時点における検出値である。つまり、P
m−P
m+1間の時間帯(時点P
mを含み、時点P
m+1を除く。以下同じ)における検出部14の出力値は、該時間帯内である限り、時点P
mで検出された物理情報となる。検出周期Cは検出部14の最小の制御周期であるため、検出周期Cおきに訪れる各時点P
1、P
2、…、P
m、…以外で検出部14が物理情報を検出することはない。
【0022】
なお、
図2では電圧V、電流Iおよび温度Tの各々の検出タイミング(時点P
1…P
m、…)が統一されているが、電圧V、電流Iおよび温度Tの各々の検出タイミングは互いに異なってもよい。また、電圧Vを検出する検出周期C、電流Iを検出する検出周期Cおよび温度Tを検出する検出周期Cは、時間長が互いに異なっていてもよい。
【0023】
電子部品12
Nから検出される複数の物理情報は、分析処理を実行するためにCPU12
1が取得する。以下、物理情報を取得するためにCPU12
1が行う処理を取得処理とも呼ぶ。取得処理には、複数の物理情報をメモリ12
4に記憶させることも含まれる。
【0024】
分析処理、すなわち予知保全は、取得処理によって取得した物理情報を統計学的処理や機械学習などを用いて分析し、異常判定や残存寿命の推定を行うことで実現される処理である。なお、前述の通り本実施の形態ではこれらの処理を含む分析処理をCPU12
1が行うこととして説明しているが、これに限定されるものではない。例えば、複数の電子部品12
NのうちのCPU12
1以外のものが分析処理を行ってもよいし、電子装置10の外部装置に必要な情報を適宜出力することで、当該外部装置に分析処理を行わせてもよい。
【0025】
取得処理は、CPU12
1のサブ処理に該当する。したがって、取得処理の実行には、他処理も含めて1ITP内に完了しなければならない。そこで、本実施の形態では、CPU12
1が1ITPのうちに取得する物理情報の数を1つに制限する。これにより、1ITP内において取得処理に要する処理時間を最小限にすることができる。
【0026】
また、本実施の形態では、複数の電子部品12
Nの各々について電圧V、電流Iの取得後に温度Tが取得される順序で、CPU12
1に物理情報を取得させる。この順序の指定は、前述の制御プログラムにより指定できる。
【0027】
本実施の形態では、CPU12
1が物理情報を取得する順序を、具体的に次の通りに例示する。すなわち、CPU12
1は、まず自己の電圧Vおよび電流Iを取得する。次いで、DSP12
2の電圧Vおよび電流I、ASIC12
3の電圧Vおよび電流I、メモリ12
4の電圧Vおよび電流Iを、この順序で取得する。そして、これらを取得した後、CPU12
1の温度T、DSP12
2の温度T、ASIC12
3の温度T、およびメモリ12
4の温度Tを取得する。
【0028】
このように、CPU12
1は、まずは電子部品12
Nの電圧Vおよび電流Iを取得してから別の電子部品12
Nの電圧Vおよび電流Iを取得することを繰り返すことにより、複数の電子部品12
Nの電圧Vおよび電流Iを取得する。そしてその後、複数の電子部品12
Nの温度Tを取得する。取得処理はこれを1セットとして、電子装置10の稼働中周期的に繰り返される。
【0029】
これにより、CPU12
1は、複数の電子部品12
Nの各々について時間経過による変動幅が比較的大きい電圧Vおよび電流Iをお互いに近いタイミングで取得しやすくなる。なお、以上の順序において、電圧Vと電流Iとの取得の順番は特に限定されない。また、電圧Vならびに電流Iを取得するときの複数の電子部品12
Nの順番、および温度Tを取得するときの複数の電子部品12
Nの順番も、特に限定されない。
【0030】
図3は、実施の形態のCPU12
1による物理情報の取得処理について説明するための第1のタイムチャートである。なお、
図3に示した情報のうち、V、IおよびTは、いずれもCPU12
1の電圧V、電流Iおよび温度Tである(後で説明する
図4−
図7も同様)。
【0031】
前述の順序に基づくCPU12
1の取得処理について、例を挙げながら説明する。前述の通り、CPU12
1は、まずは自己の電圧Vを取得した後、1ITP後に電流Iを取得する。ここで、CPU12
1の電圧Vは、
図3では時間長が検出周期CであるP
1−P
2の時間帯内で取得される。つまり、ここで取得されるCPU12
1の電圧Vは、時点P
1で検出された電圧V
1、P1である。同様に、P
1−P
2の時間帯内で取得されるCPU12
1の電流Iは、時点P
1で検出された電流I
1、P1である。
【0032】
CPU12
1は、同様の取得処理をDSP12
2、ASIC12
3およびメモリ12
4についても順番に行うことにより、DSP12
2、ASIC12
3およびメモリ12
4の各々の電圧Vおよび電流Iを順々に取得していく。
【0033】
図4は、実施の形態のCPU12
1による物理情報の取得処理について
図3に引き続き説明するための第2のタイムチャートである。なお、
図4のタイムチャート中のV
1、P1、I
1、P1、…、V
4、P2およびI
4、P2は、CPU12
1の電圧V
1、P1、電流I
1、P1、…、メモリ12
4の電圧V
4、P2およびメモリ12
4のI
4、P2が取得されたタイミングをそれぞれ示す。
【0034】
CPU12
1は、複数の電子部品12
Nの電圧Vおよび電流Iを一通り取得した後は、続いてCPU12
1の温度Tを取得する。また、それに続いて、DSP12
2、ASIC12
3およびメモリ12
4の各々の温度Tを順番に取得する。
【0035】
以上の通りに取得されるCPU12
1の温度Tは、
図4の例示ではP
3−P
4の時間帯内で取得されている。つまり、
図4の例示で取得されるCPU12
1の温度Tは、電圧V
1、P1および電流I
1、P1の検出タイミングであった時点P
1(
図3参照)とは異なる時点P
3を検出タイミングとする温度T
1、P3である。これと同様に、
図4の例示ではDSP12
2の温度Tとして温度T
2、P3が、
ASIC12
3の温度として温度T
3、P3が、メモリ12
4の温度として温度T
4、P4が、それぞれCPU12
1により取得される。
【0036】
以上の順序で複数の電子部品12
Nの電圧V、電流Iおよび温度Tを取得することにより、分析処理を精度よく行うことが可能となる。すなわち、電圧Vおよび電流Iは温度Tと比較して時間経過による変動幅が大きいため、検出時刻が異なればその検出値も全く異なってしまう。そのため、検出時刻が互いに大きく異なる電圧Vと電流Iとに基づいて精度よく分析処理を行うことは難しい。しかしながら、本実施の形態の順序に基づいて取得すれば、複数の電子部品12
Nの各々について、検出時刻が互いに近い電圧Vと電流Iとを取得しやすくなる。このため、電圧Vと電流Iとの互いの検出時刻の相違によって分析処理の精度が悪化するおそれを最小限にすることができる。また、温度Tは電圧Vや電流Iと比較して時間経過による変動幅が小さいため、取得される温度Tの検出時刻が電圧Vや電流Iと異なったとしても、分析処理の精度に悪影響をおよぼすことはほとんどない。したがって、時点P
1で検出された電圧V
1、P1および電流I
1、P1と、時点P
3で検出された温度T
1、P3と、に基づくことにより、CPU12
1は自己についての分析処理を精度よく行うことが可能である。これは、DSP12
2、ASIC12
3およびメモリ12
4に対する分析処理についても同様である。
【0037】
ここで、本実施の形態のCPU12
1と、本実施の形態が適用されないCPU12’
1との相違点について説明する。CPU12’
1は、CPU12
1とは異なる順序(便宜的に「従来順序」と呼ぶ)で物理情報を取得するものである。その従来順序は、例えば、複数の電子部品12
Nの電圧Vを取得した後、次に複数の電子部品12
Nの電流Iを取得し、最後に複数の電子部品12
Nの温度Tを取得するものである。
【0038】
図5は、本実施の形態が適用されないCPU12’
1による取得処理を例示するタイムチャートである。
【0039】
図5に、従来順序に従って取得された複数の物理情報と、例としてCPU12’
1の電圧Vおよび電流Iと、を時系列で対応付けて例示する。
図5のうち、例えばCPU12’
1の物理情報に注目すると、取得される電圧V
1、P1は検出タイミングが時点P
1であるのに対し、取得される電流I
1、P2は検出タイミングが時点P
2である。このように、本実施の形態が適用されないCPU12’
1では、同一の電子部品12
Nについて取得する電圧Vと電流Iとの検出時刻が互いに異なりやすい。
【0040】
これに対し、前述したように、本実施の形態の場合では、複数の電子部品12
Nの各々について、時間経過による変動幅が比較的大きい電圧Vおよび電流Iをお互いに近い検出時刻のもの同士を取得しやすくなっている。このため、本実施の形態の電子装置10では、予知保全のような分析処理を精度よく行うことが容易である。
【0041】
なお、検出部14について、電圧V、電流Iおよび温度Tの各々の検出タイミングが互いに異なってもよいことを前述した。また、電圧Vを検出する検出周期C、電流Iを検出する検出周期Cおよび温度Tを検出する検出周期Cは、時間長が互いに異なっていてもよいことを前述した。その場合は複数の電子部品12
Nの各々について検出時刻が互いに全く同じ電圧Vと電流Iとを取得できるとは限らないが、検出時刻が近い電圧Vと電流Iとを取得しやすくはなる。したがって、本実施の形態が適用されないCPU12’
1が用いられる場合よりも予知保全のような分析処理を精度よく行うことが本実施の形態によって容易になることに変わりはない。
【0042】
このように、本実施の形態によれば、電子部品12
Nから検出される物理情報に基づいて該電子部品12
Nの状態を精度よく分析することが容易な電子装置10が提供される。
【0043】
[変形例]
以上、本発明の一例として実施の形態が説明された。実施の形態には、多様な変更または改良を加えることが可能である。また、その様な変更または改良を加えた形態が本発明の技術的範囲に含まれ得ることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0044】
(変形例1)
CPU12
1が複数の電子部品12
Nの各々の電圧V、電流Iおよび温度Tを取得する際の順序は、実施の形態に限定されない。以下、その一例を開示する。
【0045】
CPU12
1は、複数の電子部品12
Nの各々について、電圧V、電流Iの取得後に温度Tが取得される順序で、電圧V、電流Iおよび温度Tを検出部14から周期的に取得すればよい。したがって、該順序は、例えば複数の電子部品12
Nの電圧Vおよび電流Iの取得を予め決められた回数だけ繰り返した後、複数の電子部品12
Nの温度Tを取得するものであってもよい。
【0046】
図6は、変形例1のCPU12
1による物理情報の取得処理について説明するためのタイムチャートである。
【0047】
本変形例のCPU12
1が物理情報を取得する順序を、
図6に例示する。この例示において、CPU12
1は、複数の電子部品12
Nの各々の電圧Vおよび電流Iを順番に取得することを複数回繰り返した後、複数の電子部品12
Nの各々の温度Tを取得する。CPU12
1は、これを大きな1セットとして、電子装置10の稼働中周期的に繰り返す。
【0048】
これにより、ハードウェアの変更や追加コストなしに、時間経過による変動幅が比較的大きい物理情報(電圧Vおよび電流I)の取得間隔を短くすることができる。その結果、電子部品12
Nが故障に至る前の振る舞いを捉えやすくなり、電子部品12
Nの分析処理の、特に予知保全の信頼性が向上する。
【0049】
(変形例2)
CPU12
1が複数の電子部品12
Nの各々の電圧V、電流Iおよび温度Tを取得する際の順序について、さらに別の変形例を開示する。すなわち、該順序は、電子部品12
Nの電圧V、電流Iおよび温度Tを取得してから別の電子部品12
Nの電圧V、電流Iおよび温度Tを取得することを繰り返すものであってもよい。
【0050】
図7は、変形例2のCPU12
1による物理情報の取得処理について説明するためのタイムチャートである。なお、
図3と同様に、CPU12
1、DSP12
2、ASIC12
3およびメモリ12
4以外の電子部品12
Nについては省略した。
【0051】
本変形例のCPU12
1が物理情報を取得する順序を、
図7に例示する。この例示において、CPU12
1は、まずは自己の電圧V
1、P1、電流I
1、P1および温度T
1、P1を取得する。その後、DSP12
2の電圧V
2、P1、電流I
2、P1および温度T
2、P1、ASIC12
3の電圧V
3、P1、電流I
3、P1および温度T
3、P1、メモリ12
4の電圧V
4、P1、電流I
4、P1、温度T
4、P1を順々に取得する。CPU12
1は、これを大きな1セットとして、電子装置10の稼働中周期的に繰り返す。
【0052】
本変形例においても、複数の電子部品12
Nの各々について、電圧Vおよび電流Iがお互いに近い時刻で取得される。これにより、電子部品12
Nの分析処理を精度よく行うことが可能となる。また、本変形例においては、温度Tについても電圧Vおよび電流Iに近い時刻で取得される。
【0053】
本変形例は、検出部14が電圧V、電流Iおよび温度Tを検出する検出周期Cの時間長が、1つの電子部品12
Nの分析処理に必要な物理情報の数(電圧V、電流I、温度Tであれば、3)にITPを乗じた時間長以上である場合に適用されることが好ましい。
【0054】
[実施の形態から得られる発明]
上記実施の形態および変形例から把握しうる発明について、以下に記載する。
【0055】
電子装置(10)であって、CPU(12
1)を含む複数の電子部品(12
N)と、前記複数の電子部品(12
N)の各々の電圧(V)、電流(I)および温度(T)を検出する検出部(14)と、を備え、前記CPU(12
1)は、前記複数の電子部品(12
N)の各々について、前記電圧(V)、前記電流(I)の取得後に前記温度(T)が取得される順序で、前記電圧(V)、前記電流(I)および前記温度(T)を前記検出部(14)から周期的に取得する。
【0056】
これにより、電子部品(12
N)から検出される物理情報に基づいて該電子部品(12
N)の状態を精度よく分析することが容易な電子装置(10)が提供される。
【0057】
前記順序は、前記電子部品(12
N)の前記電圧(V)および前記電流(I)を取得してから別の前記電子部品(12
N)の前記電圧(V)および前記電流(I)を取得することを繰り返すことにより前記複数の電子部品(12
N)の前記電圧(V)および前記電流(I)を取得した後、前記複数の電子部品(12
N)の前記温度(T)を取得するものであってもよい。これにより、時間経過による変動幅が比較的大きい物理情報(電圧(V)および電流(I))の取得間隔を短くすることができる。
【0058】
前記順序は、前記複数の電子部品(12
N)の前記電圧(V)および前記電流(I)の取得を予め決められた回数だけ繰り返した後、前記複数の電子部品(12
N)の前記温度(T)を取得するものであってもよい。これにより、分析処理の信頼性が向上する。
【0059】
前記順序は、前記電子部品(12
N)の前記電圧(V)、前記電流(I)および前記温度(T)を取得してから別の前記電子部品(12
N)の前記電圧(V)、前記電流(I)および前記温度(T)を取得することを繰り返すものであってもよい。これにより、分析処理の信頼性がよりいっそう向上する。
【0060】
前記CPU(12
1)が前記電圧(V)、前記電流(I)および前記温度(T)のいずれか1つを取得する取得周期(ITP)の時間長は、前記検出部(14)が前記電圧(V)、前記電流(I)および前記温度(T)を検出する検出周期(C)の時間長以下であってもよい。