【実施例1】
【0013】
図1を参照すると、本発明に係る実施例1の人工ポテンシャル場法に基づく船舶衝突回避方法のフローチャートである。本実施例において、改良された人工ポテンシャル場(Artificial Potential Field Algorithm)法で磁力の相互反発及び相互吸引をシミュレートし、また船舶と障害物の位置及び相対速度等の条件に基づき船舶の衝突回避規則を構築して、船舶の航行中で検出された障害物を回避する。
【0014】
まず、
図1に示すように、本実施例の人工ポテンシャル場法に基づく船舶衝突回避方法は、次のステップ(S1)〜(S6)を含む。すなわち、(S1)船舶情報、少なくとも1つの障害物情報及び目標地情報を取得するステップ、(S2)前記船舶情報、前記障害物情報及び前記目標地情報に基づいて、目標地の引力ポテンシャル場及び少なくとも1つの障害物の斥力ポテンシャル場を含む人工ポテンシャル場を確立するステップ、(S3)前記目標地の引力ポテンシャル場と前記少なくとも1つの障害物の斥力ポテンシャル場を合成して、第1の合力を得るステップ、(S4)前記船舶情報又は前記障害物情報に基づいて外力を加えるステップ、(S5)前記第1の合力と前記外力を合成して、第2の合力を得るステップ、(S6)前記船舶が前記第2の合力の方向に従って航行して、前記少なくとも1つの障害物を回避するステップ。
【0015】
ステップ(S1)において、前記船舶は、船に搭載された情報取得モジュールを介して前記船舶情報、少なくとも1つの障害物情報及び目標地情報等のデータを取得する。具体的に、前記情報取得モジュールは、画像収集装置、姿勢センサー、レーダーセンサー、ライダーセンサー、ソナーセンサー、無線測位装置或いは自動識別装置(Automatic Identification System、AIS)であり得る。前記船舶情報には、船舶のノット、位置、航行方向、垂標間距長(Length between perpendiculars、LPP)とも呼ばれる船の長さ及び船の幅を含む。前記障害物情報は、障害物の移動速度、位置、移動方向、障害物の大きさ及び前記船舶との距離を含む。前記目標地情報には、前記目標地の位置及び前記船舶との距離を含む。
【0016】
例えば船の長さ及び船の幅が船舶の既知情報である以外に、前記船舶は、姿勢センサーを介して船舶のノット、航行方向、及び前記障害物の移動速度、移動方向を検出することができる。画像収集装置、レーダーセンサー、ライダーセンサー又はソナーセンサーを介して障害物の移動速度、位置、移動方向、障害物の大きさ及び前記船舶との距離、及び目標地の位置と前記船舶との距離も検出することができる。無線測位装置を介して船舶の位置、障害物の位置及び目標地の位置を取得できる。また、前記障害物が他の航行船である場合は、自動識別装置を介して他船の船舶情報(船の速度、位置、航行方向及び船の長さ等を含む)をさらに取得できる。
【0017】
ステップ(S2)〜(S6)において、
図2を同時に参照すると、前記船舶の中央処理モジュールは人工ポテンシャル場アルゴリズムを通じて障害物Oを回避するように船Vを誘導することができる。前記アルゴリズムの概念が人工ポテンシャル場の吸力F
attと斥力F
repで障害物と衝突しない1本の航行経路を生成させることで、前記船舶を前記経路に沿って運航させる。具体的に、ステップ(S2)において前記船舶情報、前記障害物情報及び前記目標地情報に基づいて、人工ポテンシャル場を確立し、前記人工ポテンシャル場が目標地で生成する引力ポテンシャル場及び少なくとも1つの障害物で生成する斥力ポテンシャル場を含む。
【0018】
前記人工ポテンシャル場Uは、次式により定義される。
式中、U
attは、前記目標地の引力ポテンシャル場、U
repは前記目標地の引力ポテンシャル場を表す。さらに言えば、前記目標地の引力ポテンシャル場U
attは、次式により定義される。
式中、Kは、定常ゲインを表し、Xは前記船舶の位置、X
gは前記目標地の位置を表す。前記少なくとも1つの障害物の斥力ポテンシャル場U
repは、次式により定義される。
式中、kは、定常ゲイン、nは0より大きな任意の数、Xは前記船舶の位置、X
gは前記目標地の位置、ρは前記船舶から前記少なくとも1つの障害物までの最短距離、ρ
0は前記少なくとも1つの障害物で生じる斥力の最遠距離を表す。
【0019】
上記の定義から、前記目標地の引力ポテンシャル場U
att内において、船舶Vの航行が目標地Tの作用領域に入った時、目標地Tとの距離が益々短くなるにつれて、受ける引力も徐々に増大することが分かる。
【0020】
船舶Vの航行中に障害物Oが船舶Vの衝突回避範囲(ここで、船体の2〜5倍を半径として描かれる円)内に入ってきたことを検出した場合、障害物Oの斥力ポテンシャル場U
repの作用を受け、船舶Vと障害物Oとの距離が短くなるにつれて、受けた斥力F
repが徐々に増大し、船舶Vが障害物Oに無限に近づくと、船舶Vが受ける斥力F
repは無限大になる傾向があり、衝突のリスクが高いことを示している。動的障害物Oの場合、動的障害物Oの移動速度及び移動方向を考慮しなければならず、船舶Vの航行速度や方向における障害物Oの速度成分が大きいほど、船舶Vが受ける障害物Oからの斥力も大きくなる。他方、前記船舶Vと前記少なくとも1つの障害物Oとの最短距離が前記少なくとも1つの障害物で生じる斥力の最遠距離より大きい場合、船舶Vが障害物の斥力ポテンシャル場の作用範囲内にないことを示し、斥力ポテンシャル場U
repはゼロである。
【0021】
次に、ステップ(S3)において、前述の目標地引力ポテンシャル場と少なくとも1つの障害物の斥力ポテンシャル場を合成して複合ポテンシャル場を合成し、第1の合力を発生させる。前記第1の合力は、次式により定義される。
式中、F
attは、前記目標地の引力、F
repは前記少なくとも1つの障害物の斥力を表す。これまでのところ、前記障害物Oが通常状態の静的障害物である場合、船舶Vが前記第1の合力F
1によって誘導されて前記静的障害物を回避し、目標地に向かって航行し続ける。ただし、前記障害物Oが動的障害物であり、船舶Vに非常に近く突然現れた場合(水生生物が突然水面から飛び出すなど)、大すぎる斥力ポテンシャル場が発生することになる。又は障害物Oが船舶Vと目標地Tの間に位置し、船舶及び目標地と同一軸上にあり、並びに動的障害物Oの移動方向が第1の合力F
1方向と同じである場合(第1の合力F
1方向は、引き続き前記障害物に面するため)、船舶Vが障害物Oの牽制から逃れることができなくなる。
【0022】
これに着目し、ステップ(S4)〜(S6)を参照すると、ステップ(S4)〜(S6)は、合力方向が障害物位置(又は移動方向)と同じになること、目標地が近すぎて引力が不足すること、又は障礙物が近すぎて斥力が強すぎる等により船舶が目標地に正しく誘導されることができないという問題の回避に使用されることができる。その概念とは、船舶が障害物で生成される斥力ポテンシャル場を受けると同時に、目標地に向かうユーザー定義の作用力(すなわち、目標地に向かう作用力を生成)を追加して、目標地に向かう合力の強さを維持する。
【0023】
ステップ(S4)において、前記船舶情報又は前記障害物情報に基づき、前記人工ポテンシャル場に外力F
extを加える。具体的に、前記外力F
extの大きさの加重値は、船舶Vの速度、船の長さ又は幅、及び障害物Oの移動速度、障害物の大きさ及び障害物と船舶との相対距離によって決まる。ここで
図3を参照すると、障害物Oの移動速度又は船舶Vの航行速度が速いほど、又は障害物Oと船舶Vとの相対距離が短いほど、船舶Vが受ける障害物からの斥力も増大することになることを示す。言い換えれば、船舶Vが前記障害物Oの斥力F
repに牽制されないように、目標地Tに向かうより大きな外力F
extが必要である。それと対照して、障害物Oと船舶Vとの相対距離が長い場合、又は障害物Oの移動速度と船舶Vの航行速度が遅い場合、緩衝に充分な時間的余裕があることを示すため、比較的弱い外力F
extを加えると、船舶が大きく迂回して障害物を回避できる。
【0024】
次に、ステップ(S5)において、前述の引力ポテンシャル場と少なくとも1つの障害物の斥力ポテンシャル場を合成して生成される前記第1の合力F
1と加えられる前記外力F
extを合成すると、第2の合力F
2が得られる。前記第2の合力は、次式により定義される。
式中、F
1は、前記第1の合力、F
extは前記外力を表す。最後に、ステップ(S6)において、前記船舶Vが前記第2の合力F
2の誘導を通じて、前記少なくとも1つの障害物Oを回避すると共に目標地Tに向かって航行し、無人船の自動避航を完了する。
【0025】
本実施例は、障害物の静止状態と運動状態を考慮する以外に、人工ポテンシャル場アルゴリズムを通じてこれらの障害物を回避し、障害物の移動方向が第1の合力方向と同じになること、目標地が近すぎて引力が不足すること、又は障礙物が近すぎて斥力が強すぎる等により船舶が目標地に正しく誘導されることができないという問題を回避し、実務上の船舶航行中に障害物と衝突する可能性を効果的に回避できる。
【実施例2】
【0026】
また、
図4を参照すると、本発明の実施例2に係る人工ポテンシャル場法に基づく船舶衝突回避方法のフローチャートである。
図4に示すように、本実施例で提案される人工ポテンシャル場法に基づく別の船舶衝突回避方法は、次のステップ(S11)〜(S14)を含む。すなわち、(S11)障害物が船舶の衝突回避範囲に入るかどうかを検出し、入ってきた場合、ステップ(S12)を実行し、入っていない場合、前記船舶の針路を保持するステップ、(S12)前記障害物が静的障害物であるか又は動的障害物であるかを判断し、静的障害物の場合は、ステップ(S13)を実行し、動的障害物の場合は、ステップ(S14)を実行するステップ、(S13)前記船舶が第1の人工ポテンシャル場法に基づく船舶衝突回避方法に従って前記静的障害物を回避するステップ、(S14)前記船舶が前記動的障害物との最接近時間(Time to the Closest Point of Approach、TCPA)、及び前記動的障害物との最接近距離(Distance to the Closest Point of Approach、DCPA)に基づいて、前記動的障害物の回避を開始するかどうか判断するステップ、(S15)前記船舶が第2の人工ポテンシャル場法に基づく船舶衝突回避方法に従って前記動的障害物を回避するステップ。
【0027】
ステップ(S11)において、船舶情報取得モジュールは、障害物が船舶の衝突回避範囲に入ってきたかどうかを検出することができる。具体的に、情報取得モジュールは前記船舶情報、目標地情報等のデータを取得でき、並びに少なくとも1つの障害物の障害物情報を検出できる。前記情報取得モジュールは、画像収集装置、姿勢センサー、レーダーセンサー、ライダーセンサー、ソナーセンサー、無線測位装置又は自動識別装置(Automatic Identification System、AIS)であり得る。前記船舶情報には、船舶のノット、位置、航行方向、垂標間距長(Length between perpendiculars、LPP)とも呼ばれる船の長さ及び船の幅を含む。前記障害物情報は、障害物の移動速度、位置、移動方向、障害物の大きさ及び前記船舶との距離を含む。前記目標地情報には、前記目標地の位置及び前記船舶との距離を含む。
【0028】
前記ステップにおいて、情報取得モジュールは、障害物を検出した後、前記障害物の位置及び前記船舶との距離を知ると共に前記障害物の位置及び前記船舶との距離に基づき障害物が前記船舶の衝突回避範囲内に入ったかどうかを判断することができる。入っている場合、ステップ(S12)を実行して衝突回避ステップに進んで続ける。入ってきていない場合、前記船舶の航路を保持し、目標地に向かって移動し続ける。前記衝突回避範囲は、一般に半径1〜3海里で描かれる円に設定されているが、それ以外の場合は、船の大きさ、船の速度又は障害物の速度(すなわち、船舶と障害物)に基づくことがある。
【0029】
次に、ステップ(S12)において、同様に情報取得モジュールによって検出された障害物情報から前記障害物の大きさ及び運動方法(動的又は静的)を知ることができる。前記障害物が岩礁、橋脚又は流木などの静的障害物である場合、静的障害物の衝突回避ステップを実行する。前記障害物が水生生物又は他の航行船などの動的障害物である場合、動的障害物の衝突回避ステップを実行する。
【0030】
ステップ(S13)において、前記船舶の中央処理モジュールは、第1の人工ポテンシャル場法に基づいて前記静的障害物の回避経路を計算して、前記静的障害物を回避するように前記船舶を誘導できる。具体的に、前記第1の人工ポテンシャル場法は、前記船舶情報、前記障害物情報及び前記目標地情報に基づいて、人工ポテンシャル場を確立し、前記人工ポテンシャル場が目標地で生成する引力ポテンシャル場及び少なくとも1つの障害物で生成する斥力ポテンシャル場を含むことである。
【0031】
前記人工ポテンシャル場Uは、次式により定義される。
式中、U
attは、前記目標地の引力ポテンシャル場、U
repは前記目標地の引力ポテンシャル場を表す。さらに言えば、前記目標地の引力ポテンシャル場U
attは、次式により定義される。
式中、kは、定常ゲインを表し、Xは前記船舶の位置、X
gは前記目標地の位置を表す。前記少なくとも1つの障害物の斥力ポテンシャル場U
repは、次式により定義される。
式中、kは、定常ゲイン、nは0より大きな任意の数、Xは前記船舶の位置、X
gは前記目標地の位置、ρは前記船舶から前記少なくとも1つの障害物までの最短距離、ρ
0は前記少なくとも1つの障害物で生じる斥力の最遠距離を表す。
【0032】
上記の定義から、前記目標地の引力ポテンシャル場U
att内において、船舶の航行が目標地の作用領域に入った時、目標地との距離が益々短くなるにつれて、受ける引力も徐々に減少することが分かる。
【0033】
船舶Vの航行中に障害物Oが船舶Vの衝突回避範囲(ここで、船体の2〜5倍を半径として描かれる円)内に入ってきたことを検出した場合、障害物Oの斥力ポテンシャル場U
repの作用を受け、船舶Vと障害物Oとの距離が短くなるにつれて、受けた斥力F
repが徐々に増大し、船舶Vが障害物Oに無限に近づくと、船舶Vが受ける斥力F
repは無限大になる傾向があり、衝突のリスクが高いことを示している。動的障害物Oの場合、動的障害物Oの移動速度及び移動方向を考慮しなければならず、船舶Vの航行速度や方向における障害物Oの速度の成分が大きいほど、船舶Vが受けた障害物Oからの斥力も大きくなる。他方、前記船舶Vと前記少なくとも1つの障害物Oとの最短距離が前記少なくとも1つの障害物Oで生じる斥力の最遠距離より大きい場合、船舶Vが障害物Oの斥力ポテンシャル場の作用範囲内にないことを示し、斥力ポテンシャル場U
repがゼロである。
【0034】
次に、前述の目標地引力ポテンシャル場と少なくとも1つの障害物の斥力ポテンシャル場を合成して複合ポテンシャル場を合成し、第1の合力F
1を発生させる。前記第1の合力F
1は、次式により定義される。
式中、F
attは、前記目標地の引力、F
repは前記少なくとも1つの障害物の斥力を表す。これまでのところ、前記障害物が通常状態の静的障害物である場合、船舶が前記第1の合力F
1によって誘導されて前記静的障害物を回避し、目標地に向かって航行し続ける。
【0035】
ステップ(S14)において、前記船舶の中央処理モジュールは、前記動的障害物が最接近点(Time to the Closest Point of Approach、TCPA)に到達するまでの時間と、前記船舶と前記動的障害物との最接近距離(Distance to the Closest Point of Approach、DCPA)に基づいて、前記動的障害物の回避を開始するかどうかを判断する。ここで、TCPAがゼロ以上の場合は、船舶と動的障害物が接近して衝突する可能性があることを示す。TCPAがゼロ未満の場合は、船舶と動的障害物が互いに離れていることを示す。一方、
図5を同時に参照すると、DCPAは、船舶と動的障害物の最短許容範囲を判断するために用いられ、前記DCPAが安全範囲の閾値より小さい場合、衝突回避モードを有効化にさせる。前記安全範囲の閾値ρ0は、次式により定義される。
式中、衝突長さL
C(Collision Length)は衝突時2隻の船V、V’の中点間リンク長さ、L1は動的障害物としての船V’の長さ、L2は自船の船Vの長さ(ここでは幅を考慮しない)、Xcは自船の船舶Vと動的障害物としての舶V’のなす角θc、Lはクリティカルな衝突回避長さ(可変パラメータ値)であり、前記クリティカルな衝突回避長さが船舶Vの操縦性を考慮し、少なくとも船舶Vの船の長さの3倍以上とする。ここで、ρ0は、緊急衝突回避長さとも呼ばれ、人工ポテンシャル場法内の斥力場が作用し始める距離であり、前記パラメータρ0が衝突回避の成否に影響を与える重要な鍵である。TCPA>0とDCPA<ρ0かどうかを計算し、条件が満たされた場合、人工ポテンシャル場法を有効にして衝突を回避する。最後に、ステップ(S15)において、前記船舶の中央処理モジュールは、第2の人工ポテンシャル場法に基づいて前記動的障害物の回避経路を計算し、前記動的障害物を回避するように前記船舶を誘導できる。前記動的障害物が船舶に非常に近く突然現れたこと(水生生物が突然水面から飛び出すなど)により、大すぎる斥力ポテンシャル場が突然発生した場合、又は動的障害物Oの移動方向が第1の合力方向と同じである場合(第1の合力方向は、引き続き前記障害物に面するため)、船舶が障害物の牽制から逃れることができなくなる場合に着目し、本実施例によって提案される第2の人工ポテンシャル場法は前記船舶情報又は前記動的障害物情報に基づき、前記人工ポテンシャル場に外力F
extを加えることで、目標地に向かう合力の強さを維持できる。
【0036】
具体的に、前記外力F
extの大きさの加重値は、船舶Vの速度、船の長さ又は幅、及び障害物Oの移動速度、障害物の大きさ及び障害物と船舶との相対距離によって決まる。障害物Oの移動速度もしくは船舶Vの航行速度が速いほど、又は障害物Oと船舶Vとの相対距離が短いほど、船舶Vが受ける障害物からの斥力も増大することになることを示す。言い換えれば、船舶Vが前記障害物Oの斥力F
repに牽制されないように、目標地Tに向かうより大きな外力F
extが必要である。それと対照して、障害物Oと船舶Vとの相対距離が長い場合、又は障害物Oの移動速度と船舶Vの航行速度が遅い場合、緩衝に充分な時間的余裕があることを示すため、比較的弱い外力F
extを加えると、船舶が大きく迂回して障害物を回避できる。
【0037】
次に、第1の人工ポテンシャル場法内の引力ポテンシャル場と動的障害物の斥力ポテンシャル場を合成して生成される前記第1の合力F
1と加えられる前記外力F
extを合成すると、第2の合力F
2が得られる。前記第2の合力は、次式により定義される。
式中、F
1は、前記第1の合力、F
extは前記外力を表す。最後に前記船舶Vが前記第2の合力F
2の誘導を通じて、前記少なくとも1つの障害物Oを回避すると共に目標地Tに向かって航行し、無人船の自動避航を完了する。
【0038】
ステップ(S14)の後に、海上における衝突の予防のための国際規則に関する条約(Convention on the International Regulations for Preventing Collisions at Sea、COLREGS)に基づき前記動的障害物と前記船舶の相対位置を第1区域、第2区域、第3区域及び第4区域(
図6参照)に設定するステップ(S14a)をさらに含む。前記第1区域は、前記衝突回避範囲の円周345°〜15°、前記第2区域が前記衝突回避範囲の円周15°〜112.5°、前記第3区域が前記衝突回避範囲の円周112.5°〜247.5°、前記第4区域が前記衝突回避範囲の円周112.5°〜247.5°である。海上における衝突の予防のための国際規則に関する条約は、特に動的障害物が他の航行船である場合の実施形態に言及している。
【0039】
ステップ(S14a)の後に、前記動的障害物が第1区域又は第2区域に位置する場合、ステップ(S15)を実行する。前記動的障害物が第3区域又は第4区域に位置する場合、前記船舶の航路を保持するステップ(S14b)をさらに含む。具体的に、
図3を参照すると、前記動的障害物が第1区域に位置する場合、船舶の前方に障害物があることを示すため、人工ポテンシャル場に船体の航路に応じて右偏させ、かつ船体から船の長さの1倍離れた場所に確立される一時的な引力ポテンシャル場を加えることで、COLREGsの規範を満たす。前記動的障害物が第2区域に位置する場合、船舶の右側に障害物があることを示すため、同様に人工ポテンシャル場に船体の航路に応じて右偏させ、かつ船体から船の長さの1倍離れた場所に確立される一時的な引力ポテンシャル場を加える必要がる。前記動的障害物が第3、4区域に位置する場合、船舶の後方、左側に障害物があることを示し、前記障害物を無視できる。その理由は、前記動的障害物が他の航行船であるという前提において、海上における衝突の予防のための国際規則に関する条約によれば、他船が自船(相対的に言えば、自船は他船の前方、右側に位置する)を右側に回避し、自船が元の経路のままで航行できる。
【0040】
本実施例において、改良された人工ポテンシャル場アルゴリズムで磁力の相互反発及び相互吸引をシミュレートし、同時にCOLREGS海上における衝突の予防のための国際規則に関する条約を組み合わせて、船舶衝突回避方法を確立し、且つ前記方法が船舶の位置と速度、障害物の位置と速度、DCPAの許容範囲と検出距離などの条件に基づき、自律船舶が障害物を自動的に回避するように誘導する。
【0041】
図7を参照すると、本発明の好ましい実施例に係る人工ポテンシャル場法に基づく船舶衝突回避システムである。
図7に示すように、本実施例の人工ポテンシャル場法に基づく船舶衝突回避システム1は、船舶情報、少なくとも1つの障害物情報及び目標地情報を取得するための情報取得モジュール10と、前記情報取得モジュール10に接続され、人工ポテンシャル場法に基づく船舶衝突回避方法に従って、航行制御コマンドを生成するための中央処理モジュール20と、前記中央処理モジュール20に接続され、前記航行制御コマンドに基づき船舶航行を制御するための航行制御モジュール30と、を含む。
【0042】
本実施例の船舶は、有人船舶であるだけでなく、国際海事機関(International Maritime Organization、IMO)が規範する「海上自動運航船(Maritime Autonomous Surface Ships、MASS)」(本明細書では総称して「無人船」という。)でもあることを特に強調すべきである。
【0043】
以下は、本発明の人工ポテンシャル場法に基づく船舶衝突回避システムを更に説明する。まず、前記情報取得モジュール10は、船舶情報、少なくとも1つの障害物情報及び目標地情報等のデータを取得する。具体的に、前記情報取得モジュール10は、画像収集装置、姿勢センサー、レーダーセンサー、ライダーセンサー、ソナーセンサー、無線測位装置又は自動識別装置(Automatic Identification System、AIS)であり得る。前記船舶情報には、船舶のノット、位置、航行方向、垂標間距長(Length between perpendiculars、LPP)とも呼ばれる船の長さ及び船の幅を含む前記障害物情報は、障害物の移動速度、位置、移動方向、障害物の大きさ及び前記船舶との距離を含む。前記目標地情報には、前記目標地の位置及び前記船舶との距離を含む。
【0044】
例えば船の長さ及び船の幅が船舶の既知情報である以外に、前記船舶は、姿勢センサーを介して船舶のノット、航行方向、及び前記障害物の移動速度、移動方向を検出することができる。画像収集装置、レーダーセンサー、ライダーセンサー又はソナーセンサーを介して障害物の移動速度、位置、移動方向、障害物の大きさ及び前記船舶との距離、及び目標地の位置と前記船舶との距離も検出することができる。無線測位装置を介して船舶の位置、障害物の位置及び目標地の位置を取得できる。また、前記障害物が他の航行船である場合は、自動識別装置を介して他船の船舶情報(船の速度、位置、航行方向及び船の長さ等を含む)をさらに取得できる。
【0045】
前記情報取得モジュール10に接続された前記中央処理モジュール20は、前記船舶情報、少なくとも1つの障害物情報及び目標地情報に基づき、人工ポテンシャル場法に基づく船舶衝突回避方法に従って、航行制御コマンドを生成できる。ここで、人工ポテンシャル場法に基づく船舶衝突回避方法は、
図1に示す人工ポテンシャル場法に基づく船舶衝突回避方法であり得、
図4に示す人工ポテンシャル場法に基づく船舶衝突回避方法であってもよい。前記航行制御コマンドは、航行方向制御命令及び航行速度制御命令を含む。
【0046】
前記中央処理モジュール20に接続された航行制御モジュール30は、前記航行制御コマンドに従って船舶航行を制御できる。具体的に、前記航行制御モジュール30は、方向制御モジュール32と、動力推進モジュール34と、を含む。前記方向制御モジュール32は、前記航行方向制御命令を受け取り、前記動力推進モジュール34が前記航行速度制御命令を受け取る。換言すれば、前記中央処理モジュール20に接続された方向制御モジュール32は、前記航行方向制御命令に従って前記船舶の航行方向(舵角の方向を変更)を制御できる。一方、前記中央処理モジュール20に接続された動力推進モジュール34は、航行速度制御命令に従って前記船舶の航行速度を制御できる。したがって、前記船舶は、設定された衝突回避経路に追従して障害物を回避することができる。
【0047】
本実施例において、前記中央処理モジュール20としては、プログラマブルロジックコントローラ(Programmable Logic Controller、PLC)、マイクロコントローラユニット(Microcontroller Unit、MCU)又はそれらの組み合わせなどが挙げられ、各システムモジュール間の情報の伝達を受信すると共に演算処理を実行した後に制御命令を送信できる装置はこの保護範囲に含まれ、本発明はこれに限定されるものでない。
【0048】
本実施例において、前記方向制御モジュール32としては、方向舵、電子ステアリングシステム又はそれらの組み合わせなどが挙げられ、前記中央処理モジュール20の命令を受信した後で方向舵の角度を調整し、それによって船舶の航行方向を制御することを目的とする。前記動力推進モジュール34としては、発電機、エンジン、サイドスラスター(側方推進機)、スロットル、バッテリー、モータ又はそれら組み合わせなどが挙げられ、前記中央処理モジュール20の命令を受信した後で出力動力の大きさを調整し、それによって船舶航行の速度を制御することを目的とする。さらに言えば、前記バッテリーは、リチウムイオンバッテリー、リチウムポリマーバッテリー、リチウム鉄リン酸塩バッテリー、燃料バッテリー又はそれらの組み合わせなどであり得、動力推進モジュールのニーズに応じて設計することができる。前記動力推進モジュールは、ハイブリッドシステムであってもよく、船舶上に配置されたソーラーパネル、帆又は波動エネルギー駆動装置を介して太陽エネルギー、風エネルギー、波動エネルギーなどの自給エネルギーを収集し、これら自給エネルギーを電気エネルギーに変換してバッテリー内に蓄積させることで、動力推進モジュールの動力源を支援する。
【0049】
さらに言えば、本発明の人工ポテンシャル場法に基づく船舶衝突回避システムは、前記中央処理モジュール20及び/又は情報取得モジュール10に接続された情報セキュリティモジュール40をさらに含み得る。前記情報セキュリティモジュール40は、前記中央処理モジュール20が受信した情報に誤りがある場合、又は情報取得モジュール10と外部との接続(センシング情報の取得及び海岸局との通信を含む)に問題が生じた場合、前記船舶の安全防護メカニズムを提供するために用いられる。情報取得モジュール10の接続の異常により外部又はセンシング情報を配信できない場合、情報取得モジュール10の通信が妨害された場合又は第三者ユーザー(悪意のあるプログラム又はウィルスなど)が中央処理モジュール20の作動を不適切に制御した場合、前記船舶は自動的に中立位置になる。衝突事故を回避し、保守員が安全に船に乗って保守作業を行わせることができるように、前記船舶の情報取得モジュール10が外部のセンシング情報又は命令を受信することが禁止される。
【0050】
前記情報セキュリティモジュール40は、無線通信伝送を監視し、疑わしい活動又は船舶航行規則の違反をチェックし、検出された時、アラートを発し、又は自動的に対策を講じる侵入検知システム(Intrusion−detection system、IDS)、身分認証(共有キーや生物学的特徴の検証)に通過したユーザーのみに船との通信を許可する身分認証システム(Authentication)、外部装置と無線通信モジュールとの間に確立され、船舶の予め設定されている保護内容に基づきやり取りの伝送を監視し、不適切な外部情報をブロックできるファイアウォールシステム(Firewall)又はホワイトリスト(Whitelisting)システム又はアプリケーションシステムホワイトリスト(Application Whitelisting)を通じてポジティブリストを実行するモジュール又はアプリであり得、リスト実行以外のアプリケーションプログラムを許さない。言い換えれば、情報セキュリティモジュール40は、衝突回避システム内部の全てのモジュール又はアプリ間での情報の伝達及び実行のみを許可し、リスト以外のモジュール又はアプリが現れると、衝突回避システムは実行されず、直ちにアラートを発して注意を促し、船の航行を妨げる悪意のあるプログラムからの保護を確実にするために、ホワイトリストを介して最前線で隔離する。