【解決手段】ショットキーバリアダイオード1は、酸化ガリウムからなる半導体基板20及びドリフト層30と、ドリフト層30の上面31とショットキー接触するアノード電極40と、半導体基板20の下面22とオーミック接触するカソード電極50とを備える。
ドリフト層30の上面31にはリング状の外周トレンチ11が設けられ、アノード電極40の一部が外周トレンチ11の内部に埋め込まれる。半導体基板20の下面22には、底部がドリフト層30に達するリング状の裏面トレンチ12が設けられている。これにより、電流経路が裏面トレンチで囲まれた領域に制限されることから、外周トレンチ11の底部近傍における電界集中が緩和される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2に記載されたショットキーバリアダイオードは、アノード電極の外周端近傍に電界が集中し、この部分において絶縁破壊が生じるおそれがあった。
【0006】
したがって、本発明は、酸化ガリウムを用いたショットキーバリアダイオードにおいて、電界の集中による絶縁破壊を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるショットキーバリアダイオードは、酸化ガリウムからなる半導体基板と、酸化ガリウムからなり、半導体基板の上面と接する下面及び下面の反対側に位置する上面を有し、上面にリング状の外周トレンチが設けられたドリフト層と、外周トレンチで囲まれたドリフト層の上面とショットキー接触するとともに、外周トレンチの内部に絶縁膜を介して埋め込まれたアノード電極と、半導体基板の上面とは反対側の下面とオーミック接触するカソード電極とを備え、半導体基板の下面には、底部がドリフト層に達するリング状の裏面トレンチが設けられており、カソード電極は、半導体基板の下面のうち、裏面トレンチで囲まれた領域の外側に設けられることなく、裏面トレンチで囲まれた領域に設けられており、ドリフト層のうち外周トレンチに囲まれた領域は、平面視で裏面トレンチに囲まれた領域と重なりを有していることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、底部がドリフト層に達するリング状の裏面トレンチが半導体基板に設けられていることから、電流経路が裏面トレンチで囲まれた領域に制限される。これにより、外周トレンチの底部近傍における電界集中が緩和されることから、絶縁破壊を防止することが可能となる。
【0009】
本発明において、裏面トレンチの内周壁は、平面視で外周トレンチの外周壁の内側に位置しても構わない。これによれば、外周トレンチの外側エッジ近傍における電界集中が大幅に緩和されることから、絶縁破壊をより効果的に防止することが可能となる。
【0010】
本発明において、裏面トレンチの内周壁は、平面視で外周トレンチの内周壁と外周壁の間に位置しても構わない。これによれば、絶縁破壊を防止しつつ、電流経路として機能するドリフト層の断面積を十分に確保することが可能となる。
【0011】
本発明によるショットキーバリアダイオードは、外周トレンチを囲むよう、ドリフト層の上面をリング状に覆うフィールド絶縁膜をさらに備え、アノード電極の外周端は、フィールド絶縁膜上に位置しても構わない。これによれば、アノード電極の外周端近傍における電界集中が緩和されることから、絶縁破壊をより効果的に防止することが可能となる。
【0012】
本発明において、裏面トレンチは絶縁材料で埋め込まれていても構わない。これによれば、全体の機械的強度を高めることが可能となる。
【0013】
本発明において、ドリフト層の上面には、外周トレンチに囲まれた領域に形成された複数の中心トレンチが設けられており、アノード電極は、中心トレンチの内部に絶縁膜を介して埋め込まれていても構わない。これによれば、アノード電極とカソード電極との間に逆方向電圧が印加されると、中心トレンチによって区画されるメサ領域が空乏層となるため、ドリフト層のチャネル領域がピンチオフされる。これにより、逆方向電圧が印加された場合のリーク電流を大幅に抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
このように、本発明によれば、酸化ガリウムを用いたショットキーバリアダイオードにおいて、電界の集中による絶縁破壊を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態によるショットキーバリアダイオード1の構成を示す模式的な平面図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態の第1の変形例によるショットキーバリアダイオード1Aの構成を示す模式的な平面図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態の第2の変形例によるショットキーバリアダイオード1Bの構成を示す模式的な平面図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態の第3の変形例によるショットキーバリアダイオード1Cの構成を示す模式的な平面図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態の第4の変形例によるショットキーバリアダイオード1Dの構成を示す模式的な平面図である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態の第5の変形例によるショットキーバリアダイオード1Eの構成を示す模式的な断面図である。
【
図8】
図8は、第1の実施形態の第6の変形例によるショットキーバリアダイオード1Fの構成を示す模式的な断面図である。
【
図9】
図9は、第1の実施形態の第7の変形例によるショットキーバリアダイオード1Gの構成を示す模式的な断面図である。
【
図10】
図10は、本発明の第2の実施形態によるショットキーバリアダイオード2の構成を示す模式的な断面図である。
【
図11】
図11は、本発明の第3の実施形態によるショットキーバリアダイオード3の構成を示す模式的な断面図である。
【
図12】
図12は、第3の実施形態の変形例によるショットキーバリアダイオード3Aの構成を示す模式的な断面図である。
【
図13】
図13は、本発明の第4の実施形態によるショットキーバリアダイオード4の構成を示す模式的な断面図である。
【
図14】
図14は、第4の実施形態の第1の変形例によるショットキーバリアダイオード4Aの構成を示す模式的な断面図である。
【
図15】
図15は、第4の実施形態の第2の変形例によるショットキーバリアダイオード4Bの構成を示す模式的な断面図である。
【
図16】
図16は、第4の実施形態の第3の変形例によるショットキーバリアダイオード4Cの構成を示す模式的な断面図である。
【
図17】
図17は、実施例3のシミュレーションモデルを示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0017】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態によるショットキーバリアダイオード1の構成を示す模式的な平面図である。また、
図2は、
図1に示すA−A線に沿った略断面図である。
【0018】
図1及び
図2に示すように、本実施形態によるショットキーバリアダイオード1は、いずれも酸化ガリウム(β−Ga
2O
3)からなる半導体基板20及びドリフト層30を備える。半導体基板20及びドリフト層30には、n型ドーパントとしてシリコン(Si)又はスズ(Sn)が導入されている。ドーパントの濃度は、ドリフト層30よりも半導体基板20の方が高く、これにより半導体基板20はn
+層、ドリフト層30はn
−層として機能する。
【0019】
半導体基板20は、融液成長法などを用いて形成されたバルク結晶を切断加工したものであり、その厚みは250μm程度である。半導体基板20の平面サイズについては特に限定されないが、一般的に素子に流す電流量に応じて選択することになり、順方向の最大電流量が20A程度であれば、平面視で2.4mm×2.4mm程度とすればよい。
【0020】
半導体基板20は、実装時において上面側に位置する上面21と、上面21の反対側であって、実装時において基板側に位置する下面22を有する。半導体基板20の上面21にはドリフト層30が形成されている。ドリフト層30は、半導体基板20の上面21に反応性スパッタリング、PLD法、MBE法、MOCVD法、HVPE法などを用いて酸化ガリウムをエピタキシャル成長させた薄膜である。ドリフト層30は、半導体基板20の上面21と接する下面32と、下面32の反対側であって、実装時において上面側に位置する上面31を有する。ドリフト層30の膜厚については特に限定されないが、一般的に素子の逆方向耐電圧に応じて選択することになり、600V程度の耐圧を確保するためには、例えば7μm程度とすればよい。
【0021】
ドリフト層30の上面31には、リング状に形成された外周トレンチ11が設けられている。外周トレンチ11の内壁は、HfO
2などからなる絶縁膜61で覆われている。絶縁膜61の材料としては、HfO
2以外にAl
2O
3などの絶縁材料を用いても構わない。
【0022】
ドリフト層30の上面31のうち、外周トレンチ11で囲まれた領域には、ドリフト層30とショットキー接触するアノード電極40が形成されている。アノード電極40は、絶縁膜61を介して外周トレンチ11の内部にも埋め込まれている。アノード電極40は、例えば白金(Pt)、パラジウム(Pd)、金(Au)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、銅(Cu)等の金属からなる。アノード電極40は、異なる金属膜を積層した多層構造、例えば、Pt/Au、Pt/Al、Pd/Au、Pd/Al、Pt/Ti/AuまたはPd/Ti/Auであっても構わない。外周トレンチ11の内部に埋め込まれている金属材料は、アノード電極40と同じ金属材料であっても構わないし、異なる金属材料であっても構わない。
【0023】
半導体基板20の下面22には、半導体基板20を貫通し底部がドリフト層30に達するリング状の裏面トレンチ12が設けられている。そして、半導体基板の下面22のうち、裏面トレンチ12で囲まれた領域には、半導体基板20とオーミック接触するカソード電極50が設けられる。カソード電極50は、例えばチタン(Ti)等の金属からなる。カソード電極50は、異なる金属膜を積層した多層構造、例えば、Ti/AuまたはTi/Alであっても構わない。
【0024】
ここで、外周トレンチ11の外周壁及び内周壁をそれぞれE1,E2とし、裏面トレンチ12の外周壁及び内周壁をそれぞれE3,E4とした場合、内周壁E2は平面視で内周壁E4の内側に位置し、内周壁E4は平面視で外周壁E1の内側に位置し、外周壁E1は平面視で外周壁E3の内側に位置する。これにより、ドリフト層30のうち外周トレンチ11に囲まれた領域は、平面視で裏面トレンチ12に囲まれた領域と重なりを有する。
【0025】
カソード電極50は、半導体基板の下面22のうち、裏面トレンチ12で囲まれた領域の外側に設けられておらず、裏面トレンチ12で囲まれた領域に選択的に設けられている。このため、アノード電極40とカソード電極50の間に逆方向電圧を印加すると、逆方向電流が流れる領域は、裏面トレンチ12で囲まれた領域に制限される。このため、電界が集中しやすい外周トレンチ11の外側エッジ近傍における電界集中が緩和される。特に、本実施形態においては、裏面トレンチの内周壁E4が、平面視で外周トレンチ11の外周壁E1の内側に位置することから、外周トレンチ11の外側エッジ近傍における電界集中が大幅に緩和される。しかも、裏面トレンチ12の内周壁E4は、平面視で外周トレンチ11の内周壁E2と外周壁E1の間に位置することから、ドリフト層30のうち電流経路として機能する部分が細くなりすぎず、十分な断面積が確保されることから、十分なオン電流を確保することが可能となる。
【0026】
但し、本発明において、外周トレンチ11と裏面トレンチ12の位置関係がこれに限定されるものではない。例えば、
図3に示す第1の変形例によるショットキーバリアダイオード1Aのように、裏面トレンチ12の外周壁E3が平面視で外周トレンチ11の外周壁E1と内周壁E2の間に位置し、裏面トレンチ12の内周壁E4が平面視で外周トレンチ11の内周壁E2よりも内側に位置しても構わない。また、
図4に示す第2の変形例によるショットキーバリアダイオード1Bのように、裏面トレンチ12の外周壁E3が平面視で外周トレンチ11の内周壁E2よりも内側に位置しても構わない。さらに、
図5に示す第3の変形例によるショットキーバリアダイオード1Cのように、外周トレンチ11の外周壁E1及び内周壁E2が平面視で裏面トレンチ12の外周壁E3と内周壁E4の間に位置しても構わない。さらに、
図6に示す第4の変形例によるショットキーバリアダイオード1Dのように、外周トレンチ11の平面形状と裏面トレンチ12の平面形状が異なっていても構わない。
【0027】
また、
図7に示す第5の変形例によるショットキーバリアダイオード1Eのように、裏面トレンチ12の内周壁E4に露出する半導体基板20の一部がカソード電極50で覆われていても構わない。さらに、
図8に示す第6の変形例によるショットキーバリアダイオード1Fのように、裏面トレンチ12のトレンチ幅が深さ方向に縮小するようなテーパー形状であっても構わない。この場合、裏面トレンチ12の外周壁E3及び内周壁E4は、底部における平面位置によって定義すれば良い。外周トレンチ11がテーパー形状である場合も同様である。
【0028】
また、
図9に示す第7の変形例によるショットキーバリアダイオード1Gのように、半導体基板20及びドリフト層30のうち、裏面トレンチ12の外周に位置する部分が除去されていても構わない。つまり、裏面トレンチ12は、内周壁E4が存在すれば足り、外周壁E3が存在しなくても構わない。
【0029】
<第2の実施形態>
図10は、本発明の第2の実施形態によるショットキーバリアダイオード2の構成を示す模式的な断面図である。
【0030】
図10に示すように、第2の実施形態によるショットキーバリアダイオード2は、外周トレンチ11の外周領域にアノード電極40が存在しており、アノード電極40とドリフト層30の上面31の間にリング状のフィールド絶縁膜70が介在している点において、第1の実施形態によるショットキーバリアダイオード1と相違している。したがって、アノード電極40の外周端は、フィールド絶縁膜70上に位置する。その他の基本的な構成は第1の実施形態によるショットキーバリアダイオード1と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0031】
本実施形態によれば、外周トレンチ11の外周領域に位置するアノード電極40とドリフト層30の間にフィールド絶縁膜70が介在していることから、アノード電極40の外周端近傍における電界の集中を緩和することができる。フィールド絶縁膜70の材料としては、SiO
2などを用いることができる。
【0032】
<第3の実施形態>
図11は、本発明の第3の実施形態によるショットキーバリアダイオード3の構成を示す模式的な断面図である。
【0033】
図11に示すように、第3の実施形態によるショットキーバリアダイオード3は、裏面トレンチ12が絶縁材料80で埋め込まれている点において、第1の実施形態によるショットキーバリアダイオード1と相違している。絶縁材料80は、半導体基板20の下面22のうち、裏面トレンチ12の外周に位置する部分にも設けられている。その他の基本的な構成は第1の実施形態によるショットキーバリアダイオード1と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0034】
本実施形態によれば、裏面トレンチ12が絶縁材料80で埋め込まれることから、全体の機械的強度が高められる。絶縁材料80としては、SiO
2、SiN、Al
2O
3、AlN、BNなどを用いることができる。また、絶縁材料80としてより熱伝導性の高い材料を用いれば、放熱性を高めることも可能である。例えば、絶縁材料80として酸化ガリウムの熱伝導率0.1〜0.3W/cm・Kより高い材料を用いれば、放熱性を高められる。
【0035】
図12は、変形例によるショットキーバリアダイオード3Aの構成を示す模式的な断面図である。変形例によるショットキーバリアダイオード3Aは、第2の実施形態によるショットキーバリアダイオード2と同様、フィールド絶縁膜70が設けられている点において、第3の実施形態によるショットキーバリアダイオード3と相違している。このように、裏面トレンチ12を絶縁材料80で埋め込むとともに、フィールド絶縁膜70を設けても構わない。
【0036】
<第4の実施形態>
図13は、本発明の第4の実施形態によるショットキーバリアダイオード4の構成を示す模式的な断面図である。
【0037】
図13に示すように、第4の実施形態によるショットキーバリアダイオード4は、ドリフト層30の上面31に複数の中心トレンチ13が設けられている点において、第1の実施形態によるショットキーバリアダイオード1と相違している。その他の基本的な構成は第1の実施形態によるショットキーバリアダイオード1と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0038】
中心トレンチ13は、外周トレンチ11に囲まれた領域に形成されており、いずれも平面視でアノード電極40と重なる位置に設けられている。そして、アノード電極40は、絶縁膜63を介して中心トレンチ13に埋め込まれている。本例では、中心トレンチ13の内壁を絶縁膜63で覆うとともに、中心トレンチ13の内部をアノード電極40と同じ材料で埋め込んでいるが、絶縁膜63を用いることなく、逆導電型の半導体材料で中心トレンチ13を埋め込んでも構わない。ここで、中心トレンチ13と外周トレンチ11が完全に分離されている必要はなく、外周トレンチ11と中心トレンチ13がつながっていても構わない。
【0039】
ドリフト層30のうちトレンチ11,13によって区画される部分はメサ領域Mを構成する。メサ領域Mは、アノード電極40とカソード電極50との間に逆方向電圧が印加されると空乏層となるため、ドリフト層30のチャネル領域がピンチオフされる。これにより、逆方向電圧が印加された場合のリーク電流が大幅に抑制される。
【0040】
図14は、第1の変形例によるショットキーバリアダイオード4Aの構成を示す模式的な断面図である。変形例によるショットキーバリアダイオード4Aは、第2の実施形態によるショットキーバリアダイオード2と同様、フィールド絶縁膜70が設けられている点において、第4の実施形態によるショットキーバリアダイオード4と相違している。このように、複数の中心トレンチ13を設けるとともに、フィールド絶縁膜70を設けても構わない。
【0041】
図15は、第2の変形例によるショットキーバリアダイオード4Bの構成を示す模式的な断面図である。変形例によるショットキーバリアダイオード4Bは、第3の実施形態によるショットキーバリアダイオード3と同様、裏面トレンチ12が絶縁材料80で埋め込まれている点において、第4の実施形態によるショットキーバリアダイオード4と相違している。このように、複数の中心トレンチ13を設けるとともに、裏面トレンチ12を絶縁材料80で埋め込んでも構わない。
【0042】
図16は、第3の変形例によるショットキーバリアダイオード4Cの構成を示す模式的な断面図である。変形例によるショットキーバリアダイオード4Cは、第2の変形例によるショットキーバリアダイオード4Bの構成に加え、フィールド絶縁膜70が設けられた構成を有している。
【0043】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【実施例】
【0044】
<実施例1>
図1及び
図2に示したショットキーバリアダイオード1と同じ構造を有する実施例1のシミュレーションモデルを想定し、アノード電極40とカソード電極50の間に1000Vの逆方向電圧を印加した場合の電界強度をシミュレーションした。半導体基板20のドーパント濃度については1×10
18cm
−3とし、ドリフト層30のドーパント濃度としては3×10
16cm
−3とした。ドリフト層30の厚みは7μmとした。また、外周トレンチ11の幅は10μm、深さは3μmとした。裏面トレンチ12の幅は10μm、深さはドリフト層30の下面32から2μmとした。外周トレンチ11の内壁を覆う絶縁膜61は厚さ50nmのHfO
2とした。アノード電極40の材料は銅(Cu)とし、カソード電極50はTi/Auの積層膜とした。
【0045】
その結果、ドリフト層30に加わる最大電界は7.1MV/cmであり、酸化ガリウムの絶縁破壊電界強度である8MV/cmを十分に下回っていた。
【0046】
<実施例2>
図13に示したショットキーバリアダイオード4と同じ構造を有する実施例2のシミュレーションモデルを想定し、アノード電極40とカソード電極50の間に800Vの逆方向電圧を印加した場合の電界強度をシミュレーションした。中心トレンチ13の幅は2μm、深さは3μmとした。また、アノード電極40と接する部分におけるドリフト層30の幅、つまりメサ領域Mの幅は2μmとした。絶縁膜63は厚さ50nmのHfO
2膜とした。その他のパラメータは、実施例1のシミュレーションモデルと同じである。
【0047】
その結果、ドリフト層30に加わる最大電界は6.6MV/cmであり、実施例1のシミュレーションモデルよりも最大電界が低かった。
【0048】
<実施例3>
図1及び
図2に示したショットキーバリアダイオード1と同じ構造を有する実施例3のシミュレーションモデルを想定し、
図17に示すように、外周トレンチ11の底面に沿った水平方向の仮想線をx軸とし、外周トレンチ11の内周壁E2に沿った垂直方向の仮想線をy軸とした場合に、裏面トレンチ12の内周エッジ(裏面トレンチ12の内周壁E4と底面がぶつかる点)の座標Aと、ドリフト層30に加わる最大電界の関係をシミュレーションした。外周トレンチ11の幅は10μmとし、外周トレンチ11の外周壁E1とドリフト層30の側壁までの距離は30μmとした。その他のパラメータは、実施例1のシミュレーションモデルと同じである。
【0049】
結果を
図18に示す。
図18において網掛け表示しているのは、酸化ガリウムの絶縁破壊電界強度である8MV/cmに達していることを示す。
図18に示すように、座標Aのx方向成分が小さいほどドリフト層30に加わる最大電界が小さく、座標Aのy方向成分が小さいほどドリフト層30に加わる最大電界が小さかった。特に、x方向成分が10μmである場合、つまり、外周トレンチ11の外周壁E1と裏面トレンチ12の内周壁E4が平面視で一致する場合、y方向成分を2μm以下とする必要があるのに対し、x方向成分が9.3μm以下である場合は、y方向成分が3.5μmであっても、最大電界は7.1MV/cm程度であった。