【解決手段】半導体装置100において、第1半導体領域14a及び第2半導体領域14bの上から第2半導体層12に到達するトレンチ20内に設けられ、酸化シリコンを含む第1絶縁膜22と、トレンチ内に、第1絶縁膜を介して第2半導体層に対向して設けられた、ポリシリコンを含む第2電極24と、第2電極の上に、酸化シリコンを含む第2絶縁膜21a、21bを介して第1半導体領域及び第2半導体領域に対向して設けられた第3電極28と、第2電極と第3電極の間に設けられ、窒化シリコンを含む第3絶縁膜26と、を備える。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明では、同一の部材等には同一の符号を付し、一度説明した部材等については適宜その説明を省略する。
【0008】
本明細書中、部品等の位置関係を示すために、図面の上方向を「上」、図面の下方向を「下」と記述する。本明細書中、「上」、「下」の概念は、必ずしも重力の向きとの関係を示す用語ではない。
【0009】
以下、第1導電型がn型、第2導電型がp型である場合を例に説明する。
【0010】
以下の説明において、n
+、n、n
−および、p
+、p、p
−の表記は、各導電型における不純物濃度の相対的な高低を表す。すなわちn
+はnよりもn型の不純物濃度が相対的に高く、n
−はnよりもn型の不純物濃度が相対的に低いことを示す。また、p
+はpよりもp型の不純物濃度が相対的に高く、p
−はpよりもp型の不純物濃度が相対的に低いことを示す。なお、n
+型、n
−型を単にn型、p
+型、p
−型を単にp型と記載する場合もある。
【0011】
(第1実施形態)
本実施形態の半導体装置は、第1電極と、第1電極の上に設けられた第1導電型の第1半導体層と、第1半導体層の上に設けられた、第1導電型の第2半導体層と、第2半導体層の上に設けられた、第2導電型の第1半導体領域と、第2半導体層の上に設けられた、第2導電型の第2半導体領域と、第1半導体領域と第2半導体領域の間において、第1半導体領域及び第2半導体領域の上から第2半導体層に到達するトレンチ内に設けられ、酸化シリコンを含む第1絶縁膜と、トレンチ内に、酸化シリコンを含む第1絶縁膜を介して第2半導体層に対向して設けられた、ポリシリコンを含む第2電極と、第2電極の上に、酸化シリコンを含む第2絶縁膜を介して第1半導体領域及び第2半導体領域に対向して設けられた第3電極と、第2電極と第3電極の間に設けられ、窒化シリコンを含む第3絶縁膜と、第1半導体領域の上に設けられた、第1導電型の第3半導体領域と、第2半導体領域の上に設けられた、第1導電型の第4半導体領域と、第3電極の上に設けられた層間絶縁膜と、層間絶縁膜の上に設けられ、第3半導体領域及び第4半導体領域と電気的に接続された第4電極と、を備える。
【0012】
図1は、本実施形態の半導体装置100の模式断面図である。半導体装置100は、例えば、縦型のMOSFETである。
【0013】
半導体装置100は、ドレイン層10と、ドリフト層12と、ベース領域14と、ソース領域16と、コンタクト領域18と、第1トレンチ20と、第2絶縁膜21と、第1絶縁膜22と、第1フィールドプレート電極24と、第3絶縁膜26と、第1ゲート電極28と、第2トレンチ40と、第6絶縁膜41と、第5絶縁膜42と、第2フィールドプレート電極44と、第7絶縁膜46と、第2ゲート電極48と、ドレイン電極60と、ソース電極66と、層間絶縁膜70と、を備える。
【0014】
なお、ドレイン層10は、第1半導体層の一例である。ドリフト層12は、第2半導体層の一例である。ベース領域14としてのベース領域14aは、第1半導体領域の一例である。ベース領域14としてのベース領域14bは、第2半導体領域の一例である。ソース領域16としてのソース領域16aは、第3半導体領域の一例である。ソース領域16としてのソース領域16bは、第4半導体領域の一例である。第1トレンチ20は、トレンチの一例である。ドレイン電極60は、第1電極の一例である。第1フィールドプレート電極24は、フィールドプレート電極又は第2電極の一例である。第1ゲート電極28は、ゲート電極又は第3電極の一例である。ソース電極66は、第4電極の一例である。
【0015】
ドレイン層10は、MOSFETのドレインとして機能する層である。ドレイン層10は、例えば、n
+型の半導体材料を含む。
【0016】
ドレイン電極60は、ドレイン層10の下に設けられ、ドレイン層10と電気的に接続されている。ドレイン電極60は、MOSFETのドレイン電極として機能する電極である。
【0017】
ドリフト層12は、ドレイン層10の上に設けられている。ドリフト層12は、MOSFETのドリフト層として機能する層である。ドリフト層12は、例えば、n
−型の半導体材料を含む。
【0018】
ここで、X方向と、X方向に対して垂直に交差するY方向と、X方向及びY方向に垂直に交差するZ方向を定義する。ドレイン層10及びドリフト層12は、X方向及びY方向に平行なXY平面に平行に設けられた層である。Z方向は、ドレイン層10及びドリフト層12が積層された方向である。
【0019】
ベース領域14は、ドリフト層12の上に設けられている。ベース領域14は、MOSFETのベースとして機能する。ベース領域14は、第1ゲート電極28又は第2ゲート電極48に電圧が印加された場合にチャネルを形成し、ソース領域16とドレイン層10の間にキャリアが流れることを可能とする領域である。ベース領域14は、例えば、p型の半導体材料を含む。半導体装置100は、ベース領域14としての、ベース領域14a、14b及び14cを有する。
【0020】
ソース領域16は、ベース領域14の上に設けられている。ソース領域16は、MOSFETのソースとして機能する領域である。第1ゲート電極28又は第2ゲート電極48に適切な電圧が印加された場合に、ソース領域16とドレイン層10の間にキャリアが流れる。ソース領域16は、例えば、n
+型の半導体材料を含む。半導体装置100は、ソース領域16としての、ソース領域16a、16b、16c及び16dを有する。
【0021】
コンタクト領域18は、ベース領域14の上に設けられ、ベース領域14及びソース領域16と電気的に接続されている。コンタクト領域18は、ベース領域14及びソース領域16とソース電極66の電気的接触を向上させるために設けられている。コンタクト領域18は、例えば、p
+型の半導体材料を含む。なお、
図1にはベース領域14bの上にコンタクト領域18が設けられているが、ベース領域14a及びベース領域14cの上にさらにコンタクト領域18が設けられていてもかまわない。
【0022】
第1トレンチ20は、ソース領域16の上からドリフト層12に到達するように設けられている。
【0023】
第1絶縁膜22は、第1トレンチ20内に設けられている。例えば、第1絶縁膜22は、第1フィールドプレート電極24を覆うように設けられている。また、例えば、第1絶縁膜22は、第1フィールドプレート電極24と第1ゲート電極28の間に設けられている。しかし、第1絶縁膜22の形態は、これに限定されるものではない。第1絶縁膜22はSiOx(酸化シリコン)を含むが、これに限定されるものではない。例えば、第1絶縁膜22は、熱酸化法又はCVD(Chemical Vapor Deposition)により形成される。
【0024】
第2絶縁膜21は、第1トレンチ20内の、第1絶縁膜22の上に設けられている。第2絶縁膜21としての第2絶縁膜21aは、ベース領域14aと第1ゲート電極28の間及び層間絶縁膜70aとソース領域16aの間に設けられている。第2絶縁膜21としての第2絶縁膜21bは、ベース領域14bと第1ゲート電極28の間及び層間絶縁膜70aとソース領域16bの間に設けられている。第2絶縁膜21はSiOx(酸化シリコン)を含むが、これに限定されるものではない。例えば、第2絶縁膜21は、熱酸化法又はCVDにより形成される。なお、第2絶縁膜21は第1絶縁膜22と同じ工程で同時に形成されていても良いし、別の工程で形成されていてもかまわない。
【0025】
第1フィールドプレート電極24は、第1トレンチ20内において、ドリフト層12に第1絶縁膜22を介して対向して設けられている。例えば、第1フィールドプレート電極24は、ドリフト層12と並んで設けられている。第1フィールドプレート電極24は、例えば、トレンチ深さ方向のドリフト層中の電界分布をフラットに近付け、耐圧を増加させるために設けられている。第1フィールドプレート電極24は、例えば、
図1の奥行き方向に設けられた、図示されていない部分において、上方に延びた部分を有する。そして、第1フィールドプレート電極24は、かかる上方に延びた部分を用いて、ソース電極66と電気的に接続されている。なお、第1フィールドプレート電極24とソース電極66の接続のされ方は、これに限定されるものではない。
【0026】
第1ゲート電極28は、ベース領域14aとベース領域14bの間で、第1フィールドプレート電極24の上に、それぞれ第2絶縁膜21を介して設けられている。第1ゲート電極28は、MOSFETのゲートとして機能する電極である。
【0027】
第3絶縁膜26は、第1フィールドプレート電極24と第1ゲート電極28の間に設けられている。第3絶縁膜26はSiNx(窒化シリコン)を含むが、これに限定されるものではない。第3絶縁膜26の膜厚は10nm以上であることが好ましい。第3絶縁膜26は、例えばLPCVD法により形成されることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0028】
第2トレンチ40は、ソース領域16の上からドリフト層12に到達するように設けられている。
【0029】
第5絶縁膜42は、第2トレンチ40内に設けられている。例えば、第5絶縁膜42は、第2フィールドプレート電極44を覆うように設けられている。また、例えば、第5絶縁膜42は、第2フィールドプレート電極44と第2ゲート電極48の間に設けられている。しかし、第5絶縁膜42の形態は、これに限定されるものではない。第5絶縁膜42はSiOx(酸化シリコン)を含むが、これに限定されるものではない。例えば、第5絶縁膜42は、熱酸化法又はCVD(Chemical Vapor Deposition)により形成される。
【0030】
第6絶縁膜41は、第2トレンチ40内の、第5絶縁膜42の上に設けられている。第6絶縁膜41としての第6絶縁膜41aは、ベース領域14bと第2ゲート電極48の間及び層間絶縁膜70bとソース領域16cの間に設けられている。第6絶縁膜41としての第6絶縁膜41bは、ベース領域14cと第2ゲート電極48の間及び層間絶縁膜70bとソース領域16dの間に設けられている。第6絶縁膜41はSiOx(酸化シリコン)を含むが、これに限定されるものではない。例えば、第6絶縁膜41は、熱酸化法又はCVDにより形成される。なお、第6絶縁膜41は第5絶縁膜42と同じ工程で同時に形成されていても良いし、別の工程で形成されていてもかまわない。
【0031】
第2フィールドプレート電極44は、第2トレンチ40内において、ドリフト層12に第5絶縁膜42を介して対向して設けられている。例えば、第2フィールドプレート電極44は、ドリフト層12と並んで設けられている。第2フィールドプレート電極44は、例えば、トレンチ深さ方向のドリフト層中の電界分布をフラットに近付け、耐圧を増加させるために設けられている。第2フィールドプレート電極44は、例えば、
図1の奥行き方向に設けられた、図示されていない部分において、上方に延びた部分を有する。そして、第2フィールドプレート電極44は、かかる上方に延びた部分を用いて、ソース電極66と電気的に接続されている。なお、第2フィールドプレート電極44とソース電極66の接続のされ方は、これに限定されるものではない。
【0032】
第2ゲート電極48は、ベース領域14bとベース領域14cの間で、第2フィールドプレート電極44の上に、それぞれ第6絶縁膜41を介して設けられている。第2ゲート電極48は、MOSFETのゲートとして機能する電極である。
【0033】
第7絶縁膜46は、第2フィールドプレート電極44と第2ゲート電極48の間に設けられている。第7絶縁膜46はSiNx(窒化シリコン)を含むが、これに限定されるものではない。第7絶縁膜46の膜厚は10nm以上であることが好ましい。
【0034】
層間絶縁膜70としての層間絶縁膜70aは、ソース領域16a、ソース領域16b、第1ゲート電極28及び第2絶縁膜21の上に設けられている。層間絶縁膜70としての層間絶縁膜70bは、ソース領域16c、ソース領域16d、第2ゲート電極48及び第6絶縁膜41の上に設けられている。層間絶縁膜70は例えばSiOxを含むが、これに限定されるものではない。
【0035】
ドレイン層10、ドリフト層12、ベース領域14及びソース領域16に用いられる半導体材料は、例えばシリコン(Si)である。しかし、ドレイン層10、ドリフト層12、ベース領域14及びソース領域16に用いられる半導体材料は、例えば炭化シリコン(SiC)、窒化ガリウム(GaN)又はヒ化ガリウム(GaAs)等の他の半導体材料であってもかまわない。
【0036】
半導体材料としてSiが用いられる場合、n型不純物としては例えばヒ素(As)、リン(P)又はアンチモン(Sb)を、またp型不純物としては例えばB(ホウ素)を、それぞれ用いることができる。
【0037】
第1フィールドプレート電極24及び第2フィールドプレート電極44は、例えば導電型不純物を含むポリシリコン等の導電材料を含む。
【0038】
第1ゲート電極28及び第2ゲート電極48は、例えば導電型不純物を含むポリシリコン等の導電材料を含む。ドレイン電極60及びソース電極66は、例えば金属等の導電材料を含む。
【0039】
第1フィールドプレート電極24及び第2フィールドプレート電極44が、導電型不純物を含む場合、かかる導電型不純物を1×10
19atoms/cm
3以上1×10
22atoms/cm
3以下含むことが好ましい。
【0040】
図2は、本実施形態の他の態様の半導体装置110の模式断面図である。半導体装置110においては、第1ゲート電極28と第3絶縁膜26の間に、例えばSiOxを含む第4絶縁膜30が設けられている。また、第2ゲート電極48と第7絶縁膜46の間に、例えばSiOxを含む第8絶縁膜50が設けられている。かかる第4絶縁膜30及び第8絶縁膜50は、例えば、第3絶縁膜26及び第7絶縁膜46の上面を酸化することにより形成することができる。しかし、第4絶縁膜30及び第8絶縁膜50の製造方法は、これに限定されるものではない。
【0041】
図3乃至
図5は、本実施形態の半導体装置100の製造工程を示す模式断面図である。
【0042】
まず、ドレイン層10の上に、ドリフト層12を形成する。例えば、ドレイン層10をSi基板である半導体基板とし、ドレイン層10の上にエピタキシャル成長によりドリフト層12を形成する。しかし、ドレイン層10及びドリフト層12の製造工程は、上記に限定されるものではない。次に、例えばフォトリソグラフィ及びRIE(Reactive Ion Etching)を用いて、ドリフト層12に到達する第1トレンチ20及び第2トレンチ40を形成する。次に、例えば熱酸化法又はCVDにより、ドリフト層12の上、第1トレンチ20内及び第2トレンチ40内に、例えばSiOxを含む絶縁膜80を形成する。次に、絶縁膜80の上に、例えばCVDを用いて、例えば導電型不純物を含むポリシリコンを含む、導電材料90を形成する(
図3)。ここで、かかる導電型不純物の濃度は1×10
19atoms/cm
3以上1×10
22atoms/cm
3以下であることが好ましい。
【0043】
次に、例えばエッチバックにより、導電材料90の一部を除去して、第1トレンチ20内に第1フィールドプレート電極24を形成する。また、第2トレンチ内に第2フィールドプレート電極44を形成する(
図4)。
【0044】
次に、例えばウェットエッチングを用いて、第1フィールドプレート電極24の側面の上部及び上面、第2フィールドプレート電極44の側面の上部及び上面、第1フィールドプレート電極24の上の第1トレンチ20の側壁、第2フィールドプレート電極44の上の第2トレンチ40の側壁、並びにドリフト層12の表面が露出するように、絶縁膜80の一部を除去する。次に、絶縁膜80の上面、第1フィールドプレート電極24の側面の上部及び上面、第2フィールドプレート電極44の側面の上部及び上面、第1フィールドプレート電極24の上の第1トレンチ20の側壁、第2フィールドプレート電極44の上の第2トレンチ40の側壁、並びにドリフト層12の表面に、例えば熱酸化法によりSiOxを含む絶縁膜83を形成する。次に、例えばLPCVD(Low Pressure CVD)を用いて、絶縁膜83の上に、SiNxを含む絶縁膜92を形成する(
図5)。
【0045】
次に、絶縁膜92の一部を、RIE、ウェットエッチング又はCDE(Chemical Dry Etching)を用いてエッチバックする。これにより、第3絶縁膜26及び第7絶縁膜46が形成される。なお、上記と同様にして、
図2に示した半導体装置110における第4絶縁膜30及び第8絶縁膜50が形成可能である。また、第1フィールドプレート電極24の上の、第1トレンチ20の側壁に残った絶縁膜83の一部は、第2絶縁膜21となる。また、第2フィールドプレート電極44の上の、第2トレンチ40の側壁に残った絶縁膜83の一部は、第6絶縁膜41となる。
【0046】
次に、例えばCVDにより、導電型不純物を含むポリシリコンや金属等の導電材料を含む、第1ゲート電極28及び第2ゲート電極48を形成する。ここで、
図1に示した半導体装置100では、第3絶縁膜26上に第1ゲート電極28を形成し、第7絶縁膜46上に第2ゲート電極48を形成する。また、
図2に示した半導体装置110では、第3絶縁膜26及び第4絶縁膜30上に第1ゲート電極28を形成し、第7絶縁膜46及び第8絶縁膜50上に第2ゲート電極48を形成する。次に、第1ゲート電極28上及び第2ゲート電極48の上に層間絶縁膜70である、層間絶縁膜70a及び層間絶縁膜70bを形成する。次に、層間絶縁膜70の一部、絶縁膜の一部、及び絶縁膜83の一部を、例えばエッチングにより除去し、ソース領域16及びコンタクト領域18とコンタクトをとるための開口を形成する。
【0047】
次に、ドリフト層12の上にベース領域14、ソース領域16及びコンタクト領域18を、例えばイオン注入法により形成する。次に、ドレイン層10の下にドレイン電極60を形成する。
【0048】
次に、例えば上述の製造工程により製造された、製造途中の半導体装置に対して、ベース領域14、ソース領域16及びコンタクト領域18における不純物活性化のための熱処理を行う。次に、例えば上述の不純物活性化のための熱処理を行った、製造途中の半導体装置に対して、さらに、例えば1000℃程度に温度を上昇させる熱処理を行う。その後熱処理を止めて、かかる製造途中の半導体装置の温度を下げる。ここで、出来るだけ急激に、製造途中の半導体装置の温度を下げることが好ましい。例えばRTA(Rapid Thermal Annealing)に用いられる炉を使用し、熱処理のために製造途中の半導体装置の温度をかかる炉内で1000℃程度に上昇させることが好ましい。そして、その後かかる製造途中の半導体装置を、RTAに用いられる炉の外に搬出し、600℃程度にまで、例えば1分程度の時間で急冷することが好ましい。以上により、本実施形態の半導体装置100を得る。
【0049】
次に、本実施形態の作用効果を記載する。
【0050】
図6は、本実施形態の半導体装置100の作用効果を説明する模式断面図である。
【0051】
半導体装置100のようなMOSFETにおいては、オン抵抗を低減することが好ましい。ここで、例えばキャリアが電子である場合、MOSFETのチャネルを、キャリアが移動する方向に対して平行に、引っ張り方向の応力を与えることが考えられる。かかる応力により、キャリアの移動度が増加するために、オン抵抗を低減することが可能になる。
【0052】
かかる応力を付与する方法として、第1絶縁膜22又は第5絶縁膜42が有する圧縮応力を用いる方法が考えられる。すなわち、第1絶縁膜22を例にとって説明すると、第1絶縁膜22がZ方向に圧縮される際に、第1絶縁膜22がX方向又はY方向に、言い換えると第1トレンチ20の外側に向かって膨脹する応力を利用して、上述の引っ張り方向の応力を与えようとするものである。このためには、例えば熱酸化法で形成する場合、第1絶縁膜22の形成温度の低温化や、第1絶縁膜22中のOH基含有量の削減が好ましい。しかしこの結果、第1絶縁膜22の形状が意図せずに変化してしまうという問題があった。また、第1絶縁膜22に用いられるSiの酸化速度が低下するために半導体装置の生産性が低下してしまうという問題があった。
【0053】
一方、導電型不純物活性化のために行われる熱処理により、第1フィールドプレート電極24が膨脹することを利用して、チャネル方向に引っ張り方向の応力を与えることが考えられる。具体的には、かかる熱処理の後に急冷を行うことにより、第1フィールドプレート電極24がX方向又はY方向に平行な方向に、言い換えると第1トレンチ20の外側に向かって膨脹する応力を残存させて、チャネル方向に引っ張り方向の応力を与えようとするものである。
【0054】
そこで本実施形態の半導体装置100は、第1フィールドプレート電極24と第1ゲート電極28の間に設けられ、窒化シリコンを含む第3絶縁膜26を備えている。窒化シリコンの体積弾性率は大きい。また、窒化シリコンは機械構造的に安定している。そのため、窒化シリコンを含む第3絶縁膜26を設けることにより、第1フィールドプレート電極24は、
図6の紙面において上の方向にはあまり膨脹せず、X方向又はY方向に平行な方向に、言い換えると第1トレンチ20の外側に向かって、より膨脹する。その結果、チャネル方向に、より大きな引っ張り方向の応力が印加される。これにより、オン抵抗の低減された半導体装置の提供が可能となる。
【0055】
上述の通り、第1フィールドプレート電極24が第1トレンチ20の外側に向かって膨脹する応力を残存させるためには、第1フィールドプレート電極24を熱処理の後に急冷することが、第1フィールドプレート電極24が膨脹した状態を維持できるため、好ましい。また、第1フィールドプレート電極24に含まれるポリシリコンは、導電型不純物を1×10
19atoms/cm
3以上1×10
22atoms/cm
3以下含むことが、上記の膨脹する応力を大きくするために好ましい。
【0056】
第3絶縁膜26の膜厚は10nm以上であることが好ましい。10nm未満である場合には第3絶縁膜26の膜厚が薄すぎるため、第1フィールドプレート電極24が上の方向に膨脹することにより発生する応力を十分に抑制できないためである。
【0057】
第3絶縁膜26は、LPCVD法により形成されることが好ましい。LPCVD法の場合、例えば700℃以上800℃以下の比較的高温で、第3絶縁膜26は形成される。この場合には、第3絶縁膜26中の水素濃度が比較的低くなる。これに対して、プラズマCVD法により形成される場合には、例えば300℃以上400℃以下の比較的低温で、第3絶縁膜26は形成される。この場合には、第3絶縁膜26中の水素濃度が比較的高くなる。このようにして含有された第3絶縁膜26中の水素は、例えば形成温度より高い温度において行われる不純物活性化のための熱処理や、半導体装置100の信頼性試験における熱処理において、第3絶縁膜26の外に抜けることがある。この場合に、半導体装置100の閾値が変動してしまうという問題がある。また、プラズマCVD法に形成される膜よりもLPCVD法により形成される膜の方が、被覆性(カバレッジ)に優れている。そのため、第3絶縁膜26は、LPCVD法により形成されることが好ましい。
【0058】
第1ゲート電極28と第3絶縁膜26の間にSiOxを含む第4絶縁膜30を設けることにより、第1ゲート電極28中のポリシリコンと第3絶縁膜26中のSiNxの間においてキャリアがトラップされる準位の形成が抑制される。
【0059】
本実施形態の半導体装置によれば、オン抵抗の低い半導体装置の提供が可能になる。
【0060】
(第2実施形態)
本実施形態の半導体装置は、ゲート電極は、第1部分と、第1部分の下において、フィールドプレート電極と第1半導体領域の間に設けられ、第1部分と電気的に接続された第2部分と、第1部分の下において、フィールドプレート電極と第2半導体領域の間に設けられ、第1部分と電気的に接続された第3部分と、を備える点で、第1実施形態の半導体装置と異なっている。また、第3絶縁膜は、第1部分の下面、第2部分の内側面及び第3部分の内側面に設けられている点で、第1実施形態の半導体装置と異なっている。ここで、第1実施形態の半導体装置と重複する点は省略する。
【0061】
図7は、本実施形態の半導体装置110の模式断面図である。
【0062】
第1ゲート電極28は、第1部分28aと、第2部分28bと、第3部分28cと、を有している。第1部分28aは、第1フィールドプレート電極24と層間絶縁膜70aの間に設けられている。第2部分28bは、第1部分28aの下において、第1フィールドプレート電極24とベース領域14aの間に設けられている。また、第2部分28bは、第1部分28aと電気的に接続されている。第3部分28cは、第1部分28aの下において、第1フィールドプレート電極24とベース領域14bの間に設けられている。また、第3部分28cは、第1部分28aと電気的に接続されている。
【0063】
例えば、第1ゲート電極28は、第1部分28aと、第2部分28bと、第3部分28cと、で下向きコの字(inverted u−shaped)の形状を有していることが、特に耐圧が高いデバイスの場合には好ましい。
【0064】
第3絶縁膜26は、第1部分の下面28a
1に接する第3絶縁膜26aと、第2部分の内側面28b
1に接する第3絶縁膜26bと、第3部分の内側面28c
1に接する第3絶縁膜26cと、を有する。
【0065】
同様に、第2ゲート電極48は、第4部分48aと、第5部分48bと、第6部分48cと、を有している。第4部分48aは、第2フィールドプレート電極44と層間絶縁膜70bの間に設けられている。第5部分48bは、第4部分48aの下において、第2フィールドプレート電極44とベース領域14bの間に設けられている。また、第5部分48bは、第4部分48aと電気的に接続されている。第6部分48cは、第4部分48aの下において、第2フィールドプレート電極44とベース領域14cの間に設けられている。また、第6部分48cは、第4部分48aと電気的に接続されている。
【0066】
例えば、第2ゲート電極48は、第4部分48aと、第5部分48bと、第6部分48cと、で下向きコの字(inverted u−shaped)の形状を有していることが、特に耐圧が高いデバイスの場合には好ましい。
【0067】
第7絶縁膜46は、第4部分の下面48a
1、第5部分の内側面48b
1及び第6部分の内側面48c
1に接して設けられている。
【0068】
比較的耐圧が高い半導体装置においては、第1トレンチ20及び第2トレンチ40の開口寸法が大きくなるため、トレンチの埋込に必要な第1ゲート電極28及び第2ゲート電極48の膜厚が非常に厚くなる。そのため、ゲート電極を形成するための装置の負荷が大きくなる。これに対して、本実施形態のような、下向きコの字(inverted u−shaped)の形状の第1ゲート電極28及び第2ゲート電極48の場合は、第2部分28b、第3部分28c、第5部分48b及び第6部分48cも基にして第1ゲート電極28及び第2ゲート電極48が形成される。そのため、ゲート電極の膜厚を薄くして形成することも可能となり、有利である。
【0069】
図8は、本実施形態の他の態様の半導体装置120の模式断面図である。第4絶縁膜30aは、第1部分の下面28a
1と第3絶縁膜26aの間に設けられている。第4絶縁膜30bは、第2部分の内側面28b
1と第3絶縁膜26bの間に設けられている。第4絶縁膜30cは、第3部分の内側面28c
1と第3絶縁膜26cの間に設けられている。第8絶縁膜50aは、第4部分の下面48a
1と第7絶縁膜46aの間に設けられている。第8絶縁膜50bは、第5部分の内側面48b
1と第7絶縁膜46bの間に設けられている。第8絶縁膜50cは、第6部分の内側面48c
1と第7絶縁膜46cの間に設けられている。このように第4絶縁膜30及び第8絶縁膜50を設けることにより、ポリシリコンとSiNxの間においてキャリアがトラップされる準位の形成が抑制される。
【0070】
本実施形態の半導体装置によっても、オン抵抗の低い半導体装置の提供が可能になる。
【0071】
(第3実施形態)
本実施形態の半導体装置は、第3絶縁膜は、ゲート電極の外側面にさらに設けられている点で、第1実施形態及び第2実施形態の半導体装置と異なっている。ここで、第1実施形態及び第2実施形態と重複する内容の記載は省略する。
【0072】
図9は、本実施形態の半導体装置130の模式断面図である。第3絶縁膜26dは、第2部分の下面28b
2に接して設けられている。第3絶縁膜26eは、第1ゲート電極の外側面28b
3に接して設けられている。第3絶縁膜26fは、第3部分の下面28c
2に接して設けられている。第3絶縁膜26gは、第1ゲート電極の外側面28c
3に接して設けられている。第7絶縁膜46dは、第5部分の下面48b
2に接して設けられている。第7絶縁膜46eは、第2ゲート電極48の外側面48b
3に接して設けられている。第7絶縁膜46fは、第6部分の下面48c
2に接して設けられている。第7絶縁膜46gは、第2ゲート電極48の外側面48c
3に接して設けられている。
【0073】
図10は、本実施形態の他の態様の半導体装置140の模式断面図である。第4絶縁膜30dは、第3絶縁膜26dと第2部分の下面28b
2の間に設けられている。第4絶縁膜30eは、第3絶縁膜26eと第1ゲート電極の外側面28b
3の間に設けられている。第4絶縁膜30fは、第3絶縁膜26fと第3部分の下面28c
2の間に設けられている。第4絶縁膜30gは、第3絶縁膜26gと第1ゲート電極の外側面28c
3の間に設けられている。第8絶縁膜50dは、第7絶縁膜46dと第5部分の下面48b
2の間に設けられている。第8絶縁膜50eは、第7絶縁膜46eと第2ゲート電極の外側面48b
3の間に設けられている。第8絶縁膜50fは、第7絶縁膜46fと第6部分の下面48c
2の間に設けられている。第8絶縁膜50gは、第7絶縁膜46gと第2ゲート電極の外側面48c
3の間に設けられている。このように第4絶縁膜30及び第8絶縁膜50を設けることにより、ポリシリコンとSiNxの間においてキャリアがトラップされる準位の形成が抑制される。
【0074】
本実施形態の半導体装置130及び半導体装置140における第3絶縁膜26及び第7絶縁膜46の膜厚は、50nm以下であることが好ましい。膜厚が50nmより厚くなると、MOSFETのチャネル近傍のゲート絶縁膜の膜厚が厚くなることに相当するため、MOSFETの閾値電圧が高くなりすぎるためである。
【0075】
本実施形態の半導体装置によっても、オン抵抗の低い半導体装置の提供が可能になる。
【0076】
本発明のいくつかの実施形態及び実施例を説明したが、これらの実施形態及び実施例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことが出来る。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。