【解決手段】実施形態の半導体装置は、第1の面と第2の面を有する半導体層であって、第1の面の側の第1のトレンチと、第2の面の側の第2のトレンチと、第1導電形の第1の半導体領域と、第1の半導体領域と第1の面との間の第2導電形の第2の半導体領域と、第2の半導体領域と第1の面との間の第1導電形の第3の半導体領域と、第3の半導体領域と第1の面との間の第2導電形の第4の半導体領域と、第2のトレンチと第3の半導体領域との間に設けられ、第3の半導体領域及び第1の半導体領域と離間し、第2のトレンチに接する第1導電形の第5の半導体領域と、を含む半導体層と、第1のトレンチの中の第1のゲート電極と、第2のトレンチの中の第2のゲート電極と、半導体層の第1の面の側の第1の電極と、半導体層の第2の面の第2の電極とを、備える。
前記半導体層は、前記第1の半導体領域と前記第2の半導体領域との間に設けられ、前記第2の半導体領域よりも第2導電形不純物濃度の高い第2導電形の第7の半導体領域を、更に含む請求項1ないし請求項4いずれか一項記載の半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明では、同一又は類似の部材などには同一の符号を付し、一度説明した部材などについては適宜その説明を省略する。
【0010】
本明細書中、n
+形、n形、n
−形との表記がある場合、n
+形、n形、n
−形の順でn形の不純物濃度が低くなっていることを意味する。また、p
+形、p形、p
−形の表記がある場合、p
+形、p形、p
−形の順で、p形の不純物濃度が低くなっていることを意味する。
【0011】
本明細書中、半導体領域の不純物濃度の分布及び絶対値は、例えば、二次イオン質量分析法(Secondary Ion Mass Spectrometry:SIMS)を用いて測定することが可能である。また、2つの半導体領域の不純物濃度の相対的な大小関係は、例えば、走査型静電容量顕微鏡法(Scanning Capacitance Microscopy:SCM)を用いて判定することが可能である。また、不純物濃度の分布及び絶対値は、例えば、拡がり抵抗測定法(Spreading Resistance Analysis:SRA)を用いて測定することが可能である。SCM及びSRAでは、半導体領域のキャリア濃度の相対的な大小関係や絶対値が求まる。不純物の活性化率を仮定することで、SCM及びSRAの測定結果から、2つの半導体領域の不純物濃度の間の相対的な大小関係、不純物濃度の分布、及び、不純物濃度の絶対値を求めることが可能である。
【0012】
(第1の実施形態)
第1の実施形態の半導体装置は、第1の面と、第1の面と対向する第2の面を有する半導体層であって、第1の面の側に設けられた第1のトレンチと、第2の面の側に設けられた第2のトレンチと、第2の面に接する第1導電形の第1の半導体領域と、第1の半導体領域と第1の面との間に設けられた第2導電形の第2の半導体領域と、第2の半導体領域と第1の面との間に設けられた第1導電形の第3の半導体領域と、第3の半導体領域と第1の面との間に設けられた第2導電形の第4の半導体領域と、第2のトレンチと第3の半導体領域との間に設けられ、第3の半導体領域及び第1の半導体領域と離間し、第2のトレンチに接する第1導電形の第5の半導体領域と、を含む半導体層と、第1のトレンチの中に設けられた第1のゲート電極と、第1のゲート電極と第2の半導体領域との間、第1のゲート電極と第3の半導体領域との間、及び、第1のゲート電極と第4の半導体領域との間に設けられた第1のゲート絶縁膜と、第2のトレンチの中に設けられた第2のゲート電極と、第2のゲート電極と第1の半導体領域との間、及び、第2のゲート電極と第5の半導体領域との間に設けられた第2のゲート絶縁膜と、半導体層の第1の面の側に設けられ、第4の半導体領域に電気的に接続された第1の電極と、半導体層の第2の面の側に設けられ、第1の半導体領域に電気的に接続された第2の電極と、を備える。
【0013】
第1の実施形態の半導体装置は、半導体層の表面及び裏面にゲート電極を備える両面ゲート構造のIGBT100である。また、IGBT100は、表面及び裏面のゲート電極がトレンチの中に設けられたトレンチゲート構造を有する。以下、第1導電形がp形、第2導電形がn形である場合を例に説明する。
【0014】
図1は、第1の実施形態の半導体装置の模式図である。
図1は、IGBT100の半導体チップのレイアウト図である。IGBT100は、トランジスタ領域100a、表面ゲート電極パッド100b、裏面ゲート電極パッド100cを備える。裏面ゲート電極パッド100cは、表面ゲート電極パッド100bに対して半導体チップの反対面側に位置する。
【0015】
図2は、第1の実施形態の半導体装置の一部の模式断面図である。
図3及び
図4は、第1の実施形態の半導体装置の一部の模式平面図である。
図2は、
図1及び
図3のAA’断面である。
図3は、半導体層の表面、すなわち、第1の面P1における平面図である。
図4は、半導層の裏面、すなわち、第2の面P2における平面図である。
【0016】
第1の実施形態のIGBT100は、半導体層10、エミッタ電極12(第1の電極)、コレクタ電極14(第2の電極)、表面ゲート絶縁膜41(第1のゲート絶縁膜)、裏面ゲート絶縁膜42(第2のゲート絶縁膜)、表面ゲート電極51(第1のゲート電極)、裏面ゲート電極52(第2のゲート電極)、第1の層間絶縁層61、第2の層間絶縁層62を備える。
【0017】
半導体層10の中には、表面ゲートトレンチ21(第1のトレンチ)、裏面ゲートトレンチ22(第2のトレンチ)、p形コレクタ領域26(第1の半導体領域)、n形コレクタ領域28(第6の半導体領域)、バッファ領域30(第7の半導体領域)、ドリフト領域32(第2の半導体領域)、p形フローティング領域34(第5の半導体領域)、ベース領域36(第3の半導体領域)、エミッタ領域38(第4の半導体領域)、及び、コンタクト領域40が設けられる。
【0018】
半導体層10は、第1の面P1と、第1の面P1に対向する第2の面P2とを有する。半導体層10は、例えば、単結晶シリコンである。半導体層10の膜厚は、例えば、40μm以上700μm以下である。
【0019】
本明細書中、第1の面P1に平行な一方向を第1の方向と称する。また、第1の面P1に平行で第1の方向に直交する方向を第2の方向と称する。
【0020】
エミッタ電極12は、半導体層10の第1の面P1の側に設けられる。エミッタ電極12の少なくとも一部は半導体層10の第1の面P1に接する。
【0021】
エミッタ電極12は、IGBT100のエミッタ電極として機能する。
【0022】
エミッタ電極12は、例えば、金属である。エミッタ電極12は、例えば、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、金(Au)、及び、多結晶シリコン(Si)からなる群から選ばれる少なくとも一つの金属又は半導体を含む。
【0023】
エミッタ電極12は、エミッタ領域38に電気的に接続される。エミッタ電極12は、コンタクト領域40に電気的に接続される。エミッタ電極12は、コンタクト領域40を介してベース領域36に電気的に接続される。
【0024】
コレクタ電極14は、半導体層10の第2の面P2の側に設けられる。コレクタ電極14の少なくとも一部は半導体層10の第2の面P2に接する。
【0025】
コレクタ電極14は、例えば、金属である。コレクタ電極14は、例えば、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、金(Au)、及び、多結晶シリコン(Si)からなる群から選ばれる少なくとも一つの金属又は半導体を含む。
【0026】
コレクタ電極14は、p形コレクタ領域26及びn形コレクタ領域28に電気的に接続される。
【0027】
表面ゲートトレンチ21は、半導体層10の第1の面P1の側に設けられる。表面ゲートトレンチ21は、ベース領域36に接して設けられる。
【0028】
表面ゲートトレンチ21は、半導体層10に設けられた溝である。表面ゲートトレンチ21は、半導体層10の一部である。
【0029】
表面ゲートトレンチ21は、
図3に示すように、第1の面P1において、第1の面P1に平行な第1の方向に延伸する。表面ゲートトレンチ21は、ストライプ形状を有する。複数の表面ゲートトレンチ21は、第1の方向に直交する第2の方向に繰り返し配置される。
【0030】
表面ゲートトレンチ21は、ベース領域36を貫通し、ドリフト領域32に達する。表面ゲートトレンチ21の第1の面P1を基準とする深さは、例えば、8μm以下である。
【0031】
裏面ゲートトレンチ22は、半導体層10の第2の面P2の側に設けられる。裏面ゲートトレンチ22は、バッファ領域30及びドリフト領域32に接して設けられる。
【0032】
裏面ゲートトレンチ22は、半導体層10に設けられた溝である。裏面ゲートトレンチ22は、半導体層10の一部である。
【0033】
裏面ゲートトレンチ22は、
図4に示すように、第2の面P2において、第2の面P2に平行な第1の方向に延伸する。裏面ゲートトレンチ22は、ストライプ形状を有する。複数の裏面ゲートトレンチ22は、第1の方向に直交する第2の方向に繰り返し配置される。
【0034】
裏面ゲートトレンチ22は、バッファ領域30を貫通し、ドリフト領域32に達する。裏面ゲートトレンチ22の第2の面P2を基準とする深さは、例えば、8μm以下である。
【0035】
裏面ゲートトレンチ22の第2の方向の幅は、例えば、表面ゲートトレンチ21の第2の方向の幅よりも広い。
【0036】
p形コレクタ領域26は、p
+形の半導体領域である。p形コレクタ領域26は、第2の面P2に接する。p形コレクタ領域26は、コレクタ電極14に電気的に接続される。p形コレクタ領域26は、コレクタ電極14に接する。p形コレクタ領域26は、IGBT100のオン状態の際にホールの供給源となる。
【0037】
n形コレクタ領域28は、n
+形の半導体領域である。n形コレクタ領域28は、第2の面P2に接する。n形コレクタ領域28は、p形コレクタ領域26に隣り合って設けられる。n形コレクタ領域28は、コレクタ電極14に電気的に接続される。n形コレクタ領域28は、コレクタ電極14に接する。n形コレクタ領域28は、IGBT100のターンオン動作の際に電子がドリフト領域32からコレクタ電極14に流れる経路となる。
【0038】
バッファ領域30は、n形の半導体領域である。バッファ領域30は、p形コレクタ領域26と第1の面P1との間に設けられる。バッファ領域30は、p形コレクタ領域26とドリフト領域32との間に設けられる。バッファ領域30は、n形コレクタ領域28と第1の面P1との間に設けられる。バッファ領域30は、n形コレクタ領域28とドリフト領域32との間に設けられる。
【0039】
バッファ領域30のn形不純物濃度は、ドリフト領域32のn形不純物濃度より高い。バッファ領域30のn形不純物濃度は、n形コレクタ領域28のn形不純物濃度より低い。
【0040】
バッファ領域30は、IGBT100のオフ状態において、IGBT100がパンチスルー状態になることを抑制する機能を有する。ベース領域36の側からドリフト領域32に伸びる空乏層の伸びが、バッファ領域30で抑制される。例えば、ドリフト領域32の厚さを厚くして、バッファ領域30を省略することも可能である。
【0041】
ドリフト領域32は、n
−形の半導体領域である。ドリフト領域32は、p形コレクタ領域26と第1の面P1との間に設けられる。ドリフト領域32は、バッファ領域30とベース領域36との間に設けられる。
【0042】
ドリフト領域32のn形不純物濃度は、バッファ領域30のn形不純物濃度より低い。
【0043】
ドリフト領域32は、IGBT100のオン状態の際にオン電流の経路となる。ドリフト領域32は、IGBT100のオフ状態の際に空乏化し、IGBT100の耐圧を維持する機能を有する。
【0044】
ベース領域36は、p形の半導体領域である。ベース領域36は、ドリフト領域32と第1の面P1との間に設けられる。ベース領域36は、ドリフト領域32に接する。
【0045】
ベース領域36の第1の面P1を基準とする深さは、例えば、8μm以下である。ベース領域36の表面ゲート電極51と対向する領域には、IGBT100のオン状態の際にn形反転層が形成される。ベース領域36はトランジスタのチャネル領域として機能する。
【0046】
エミッタ領域38は、n
+形の半導体領域である。エミッタ領域38は、ベース領域36と第1の面P1との間に設けられる。エミッタ領域38は、第1の面P1において、第1の方向に延びる。
【0047】
エミッタ領域38は、表面ゲート絶縁膜41に接する。
【0048】
エミッタ領域38のn形不純物濃度は、ドリフト領域32のn形不純物濃度より高い。
【0049】
エミッタ領域38は、エミッタ電極12に電気的に接続される。エミッタ領域38は、エミッタ電極12に接する。エミッタ領域38は、IGBT100のオン状態の際に電子の供給源となる。
【0050】
コンタクト領域40は、p
+形の半導体領域である。コンタクト領域40は、ベース領域36と第1の面P1との間に設けられる。
【0051】
コンタクト領域40は、第1の面P1において、第1の方向に延伸する。コンタクト領域40は、エミッタ電極12に電気的に接続される。
【0052】
コンタクト領域40のp形不純物濃度は、ベース領域36のp形不純物濃度よりも高い。
【0053】
p形フローティング領域34は、p
+形の半導体領域である。p形フローティング領域34は、裏面ゲートトレンチ22とベース領域36との間に設けられる。p形フローティング領域34は、裏面ゲートトレンチ22と、ドリフト領域32との間に設けられる。
【0054】
p形フローティング領域34は、ベース領域36と離間する。p形フローティング領域34は、p形コレクタ領域26と離間する。
【0055】
p形フローティング領域34は、裏面ゲートトレンチ22に接する。p形フローティング領域34は、裏面ゲートトレンチ22の角部を覆う。p形フローティング領域34は、裏面ゲートトレンチ22の底部及び側面の一部に接する。
【0056】
p形フローティング領域34のp形不純物濃度は、例えば、ベース領域36のp形不純物濃度よりも高い。
【0057】
p形フローティング領域34は、IGBT100のオン状態の際にホールの供給源の一部となる。
【0058】
表面ゲート電極51は、表面ゲートトレンチ21の中に設けられる。表面ゲート電極51は、例えば、半導体又は金属である。表面ゲート電極51は、例えば、n形不純物又はp形不純物を含むアモルファスシリコン、又は、n形不純物又はp形不純物を含む多結晶シリコンである。
【0059】
表面ゲート電極51は、表面ゲート電極パッド100bに電気的に接続される。表面ゲート電極パッド100bには、第1のゲート電圧(Vg1)が印加される。表面ゲート電極51には、第1のゲート電圧(Vg1)が印加される。
【0060】
表面ゲート絶縁膜41は、表面ゲート電極51と半導体層10との間に設けられる。表面ゲート絶縁膜41は、表面ゲート電極51とドリフト領域32との間、表面ゲート電極51とベース領域36との間、及び、表面ゲート電極51とエミッタ領域38との間に設けられる。表面ゲート絶縁膜41は、ドリフト領域32、ベース領域36、及び、エミッタ領域38に接する。表面ゲート絶縁膜41は、例えば、酸化シリコンである。
【0061】
裏面ゲート電極52は、裏面ゲートトレンチ22の中に設けられる。裏面ゲート電極52は、例えば、半導体又は金属である。裏面ゲート電極52は、例えば、n形不純物又はp形不純物を含むアモルファスシリコン、又は、n形不純物又はp形不純物を含む多結晶シリコンである。
【0062】
裏面ゲート電極52は、裏面ゲート電極パッド100cに電気的に接続される。裏面ゲート電極パッド100cには、第2のゲート電圧(Vg2)が印加される。裏面ゲート電極52には、第2のゲート電圧(Vg2)が印加される。
【0063】
裏面ゲート絶縁膜42は、裏面ゲート電極52と半導体層10との間に設けられる。裏面ゲート絶縁膜42は、裏面ゲート電極52とp形コレクタ領域26との間、裏面ゲート電極52とバッファ領域30との間、裏面ゲート電極52とドリフト領域32との間、及び、裏面ゲート電極52とp形フローティング領域34との間に設けられる。
【0064】
裏面ゲート絶縁膜42は、p形コレクタ領域26、バッファ領域30、ドリフト領域32、及び、p形フローティング領域34に接する。裏面ゲート絶縁膜42は、例えば、酸化シリコンである。
【0065】
第1の層間絶縁層61は、表面ゲート電極51とエミッタ電極12との間に設けられる。第1の層間絶縁層61は、表面ゲート電極51とエミッタ電極12との間を電気的に分離する。第1の層間絶縁層61は、例えば、酸化シリコンである。
【0066】
第2の層間絶縁層62は、裏面ゲート電極52とコレクタ電極14との間に設けられる。第2の層間絶縁層62は、裏面ゲート電極52とコレクタ電極14との間を電気的に分離する。第2の層間絶縁層62は、例えば、酸化シリコンである。
【0067】
次に、IGBT100の駆動方法について説明する。
【0068】
図5は、第1の実施形態の半導体装置の駆動方法の説明図である。
図5は、表面ゲート電極パッド100bに印加される第1のゲート電圧(Vg1)と、裏面ゲート電極パッド100cに印加される第2のゲート電圧(Vg2)のタイミングチャートである。
【0069】
以下、動作説明の便宜上、表面ゲート電極51を有するトランジスタという記述をする。
【0070】
IGBT100のオフ状態では、例えば、エミッタ電極12には、エミッタ電圧が印加される。エミッタ電圧は、例えば、0Vである。コレクタ電極14には、コレクタ電圧が印加される。コレクタ電圧は、例えば、200V以上6500V以下である。
【0071】
IGBT100のオフ状態では、表面ゲート電極パッド100bには、ターンオフ電圧(Voff)が印加されている。第1のゲート電圧(Vg1)がターンオフ電圧(Voff)となる。したがって、表面ゲート電極51にもターンオフ電圧(Voff)が印加されている。
【0072】
ターンオフ電圧(Voff)は、表面ゲート電極51を有するトランジスタがオン状態とならない閾値電圧未満の電圧であり、例えば、0V又は負電圧である。
【0073】
オフ状態では、表面ゲート電極51と対向し、表面ゲート絶縁膜41に接するベース領域36には、n形反転層は形成されない。
【0074】
IGBT100のオフ状態では、裏面ゲート電極パッド100cには、初期電圧(V0)が印加されている。第2のゲート電圧(Vg2)が初期電圧(V0)となる。したがって、裏面ゲート電極52にも、初期電圧(V0)が印加される。
【0075】
初期電圧(V0)は、例えば、裏面ゲート電極52と対向し、裏面ゲート絶縁膜42に接するバッファ領域30及びドリフト領域32にp形反転層が形成されない電圧である。初期電圧(V0)は、バッファ領域30及びドリフト領域32にp形反転層が形成される閾値電圧より高い電圧である。初期電圧(V0)は、例えば、0V又は正電圧である。
【0076】
オフ状態では、裏面ゲート絶縁膜42に接するバッファ領域30及びドリフト領域32にp形反転層が形成されない。このため、p形コレクタ領域26とp形フローティング領域34が電気的に分離されている。このため、p形フローティング領域34の電位はフローティングである。
【0077】
IGBT100のオフ状態では、コレクタ電極14とエミッタ電極12との間には、電流は流れない。
【0078】
IGBT100をオン状態にする際(
図5の時刻t1)に、表面ゲート電極パッド100bにターンオン電圧(Von)を印加する。第1のゲート電圧(Vg1)がターンオン電圧(Von)となる。表面ゲート電極51にもターンオン電圧(Von)が印加される。
【0079】
ターンオン電圧(Von)とは、表面ゲート電極51を有するトランジスタの閾値電圧を超える正電圧である。ターンオン電圧(Von)は、例えば、15Vである。表面ゲート電極51へのターンオン電圧(Von)の印加により、表面ゲート電極51を有するトランジスタがオン状態になる。
【0080】
IGBT100をオン状態にする際(
図5の時刻t1)、裏面ゲート電極パッド100cに、第1の電圧(V1)を印加する。第2のゲート電圧(Vg2)が第1の電圧(V1)となる。したがって、裏面ゲート電極52にも、第1の電圧(V1)が印加される。
【0081】
なお、
図5では、表面ゲート電極パッド100bにターンオン電圧(Von)を印加する時刻と、裏面ゲート電極パッド100cに第1の電圧(V1)が印加される時刻が同じ場合を例示したが、2つの時刻は必ずしも同じでなくとも構わない。一方の時刻が、他方の時刻の前であっても構わない。
【0082】
第1の電圧(V1)は、裏面ゲート電極52と対向し、裏面ゲート絶縁膜42に接するバッファ領域30及びドリフト領域32にp形反転層が形成される電圧である。第1の電圧(V1)は、負電圧である。第1の電圧(V1)は、例えば、−15V以上0V未満である。
【0083】
裏面ゲート電極52に、第1の電圧(V1)が印加されることで、裏面ゲート絶縁膜42に接するバッファ領域30及びドリフト領域32にp形反転層が形成される。したがって、p形コレクタ領域26とp形フローティング領域34が電気的に接続される。
【0084】
IGBT100のオン状態では、p形コレクタ領域26とp形フローティング領域34が電気的に接続される。このため、p形フローティング領域34の電位は、p形コレクタ領域26の電位と同電位となる。
【0085】
したがって、p形フローティング領域34もp形コレクタ領域と同様に、ホール注入領域として機能する。IGBT100のオン状態では、コレクタ電極14とエミッタ電極12との間に、p形コレクタ領域26と共にp形フローティング領域34を通ってもオン電流が流れる。
【0086】
IGBT100をオフ状態にする際(
図5の時刻t3)に、表面ゲート電極パッド100bにターンオフ電圧(Voff)を印加する。第1のゲート電圧(Vg1)がターンオフ電圧(Voff)となる。表面ゲート電極51にもターンオフ電圧(Voff)が印加される。
【0087】
例えば、第1のゲート電圧(Vg1)をターンオン電圧(Von)からターンオフ電圧(Voff)に変化させる前、すなわち時刻t3の前に、第2のゲート電圧(Vg2)を第1の電圧(V1)から第2の電圧(V2)に変化させる。裏面ゲート電極パッド100cに印加する電圧を時刻t2に、第1の電圧(V1)から第2の電圧(V2)に変化させる。
【0088】
第2の電圧(V2)は、初期電圧(V0)である。裏面ゲート電極52にも、初期電圧(V0)が印加される。初期電圧(V0)は、バッファ領域30及びドリフト領域32にp形反転層が形成される閾値電圧より高い電圧である。初期電圧(V0)は、例えば、0V又は正電圧である。
【0089】
裏面ゲート電極52に、0V又は正電圧が印加されることで、裏面ゲート絶縁膜42に接するドリフト領域32に形成されていたp形反転層が消滅する。したがって、p形コレクタ領域26とp形フローティング領域34が電気的に分離される。
【0090】
なお、
図5では、時刻t2が時刻t3の前となる場合を例示したが、時刻t2は時刻t3と同じであっても構わない。また、時刻t2は時刻t3の後であっても構わない。
【0091】
時刻t2と時刻t3の間は、例えば、20マイクロ秒以下である。
【0092】
次に、第1の実施形態の半導体装置の作用及び効果について説明する。
【0093】
IGBTの低消費電力化を実現するために、定常損失やターンオフ損失等の損失の低減することが望まれる。定常損失を低減するためには、IGBTのオン抵抗の低減が必要となる。例えば、オン抵抗を低減するためにドリフト領域の厚さを薄くすることが考えられる。しかし、この場合、IGBTの耐圧が低下することになる。つまり、オン抵抗と耐圧はトレードオフの関係にある。
【0094】
また、オン抵抗を低減するために、例えば、トレンチゲート構造を用いることが考えられる。トレンチ構造を用いることで、ドリフト領域にキャリアを効率良く蓄積し、オン抵抗が低減できる。しかし、キャリアを十分蓄積して低いオン抵抗を実現する場合、IGBTのターンオフ時にドリフト領域から排出すべきキャリアの量が多くなる。このため、ターンオフ時間が長くなり、ターンオフ損失が大きくなる。つまり、オン抵抗とターンオフ損失はトレードオフの関係にある。
【0095】
第1の実施形態のIGBT100は、オフ状態では、裏面ゲート絶縁膜42に接するバッファ領域30及びドリフト領域32にp形反転層が形成されない。このため、p形コレクタ領域26とp形フローティング領域34が電気的に分離されている。したがって、ドリフト領域の実効的な厚さは、ベース領域36とp形コレクタ領域26との間の距離に等しくなる。
【0096】
一方、IGBT100のオン状態では、裏面ゲート絶縁膜42に接するバッファ領域30及びドリフト領域32にp形反転層が形成される。このため、p形コレクタ領域26とp形フローティング領域34が電気的に接続され、p形フローティング領域34もp形コレクタ領域と同様にホール注入領域として機能する。したがって、ドリフト領域の実効的な厚さは、ベース領域36とp形フローティング領域34との間の距離に等しくなり、オフ状態の場合に比べて短くなる。
【0097】
IGBT100は、オフ状態の場合とオン状態の場合で、ドリフト領域の実効的な厚さが変化する。オン状態の場合が、オフ状態の場合に比べて、ドリフト領域の実効的な厚さが短くなる。したがって、オン抵抗と耐圧のトレードオフの関係が改善する。よって、IGBT100のオン抵抗を低減し、定常損失を低減することが可能となる。
【0098】
IGBT100をオフ状態にする際、裏面ゲート絶縁膜42に接するドリフト領域32に形成されていたp形反転層が消滅する。このため、p形コレクタ領域26とp形フローティング領域34が電気的に分離される。
【0099】
p形フローティング領域34が電気的に分離されることで、電子がドリフト領域32から、バッファ領域30及びn形コレクタ領域28を通ってコレクタ電極14へと排出される経路が機能する。つまり、n形のドリフト領域32とコレクタ電極14とが短絡しているアノード・ショートの効果が強くなる。
【0100】
ドリフト領域32からのキャリアの排出が促進される。このため、ターンオフ時間が短くなる。つまり、オン抵抗とターンオフ損失のトレードオフの関係が改善する。よって、IGBT100のターンオフ損失を低減することが可能となる。
【0101】
IGBT100では、ベース領域36からp形フローティング領域34までの距離が、ベース領域36からn形コレクタ領域28までの距離よりも短い。言い換えれば、p形フローティング領域34とn形コレクタ領域28が離れている。したがって、n形コレクタ領域28が設けられたことによるターンオン電流の立ち上がり電圧の増加も生じにくい。よって、ターンオン時間が短くなりターンオン損失が低減できる。
【0102】
また、IGBT100では、p形フローティング領域34が、裏面ゲートトレンチ22の角部を覆う。したがって、IGBT100のオフ状態の際に、裏面ゲートトレンチ22の角部の裏面ゲート絶縁膜42に印加される電界強度が緩和される。したがって、裏面ゲート絶縁膜42の信頼性が向上する。
【0103】
裏面ゲートトレンチ22の形成を容易にする観点から、裏面ゲートトレンチ22の第2の面P2を基準とする深さは、表面ゲートトレンチ21の第1の面P1を基準とする深さよりも浅いことが好ましい。
【0104】
一方、IGBT100のオン抵抗を低減する観点から、裏面ゲートトレンチ22の第2の面P2を基準とする深さは、表面ゲートトレンチ21の第1の面P1を基準とする深さよりも深いことが好ましい。
【0105】
IGBT100がオン状態の際の、p形フローティング領域34からのホール注入量を増加させる観点から、p形フローティング領域34のp形不純物濃度は、ベース領域36のp形不純物濃度よりも高いことが好ましい。
【0106】
以上、第1の実施形態によれば、定常損失及びターンオフ損失の低減を可能とする半導体装置が実現できる。
【0107】
(第2の実施形態)
第2の実施形態の半導体装置は、半導体層は、第2の面に接し、第2の電極に電気的に接続された第2導電形の第6の半導体領域を含まない点で、第1の実施形態の半導体装置と異なっている。以下、第1の実施形態と重複する内容については一部記述を省略する場合がある。
【0108】
第2の実施形態の半導体装置は、半導体層の表面及び裏面にゲート電極を備える両面ゲート構造のIGBT200である。また、IGBT200は、表面及び裏面のゲート電極がトレンチの中に設けられたトレンチゲート構造を有する。以下、第1導電形がp形、第2導電形がn形である場合を例に説明する。
【0109】
図6は、第2の実施形態の半導体装置の一部の模式断面図である。
図6は、第1の実施形態の
図1に対応する図である。
【0110】
第2の実施形態のIGBT200は、半導体層10、エミッタ電極12(第1の電極)、コレクタ電極14(第2の電極)、表面ゲート絶縁膜41(第1のゲート絶縁膜)、裏面ゲート絶縁膜42(第2のゲート絶縁膜)、表面ゲート電極51(第1のゲート電極)、裏面ゲート電極52(第2のゲート電極)、第1の層間絶縁層61、第2の層間絶縁層62を備える。
【0111】
半導体層10の中には、表面ゲートトレンチ21(第1のトレンチ)、裏面ゲートトレンチ22(第2のトレンチ)、p形コレクタ領域26(第1の半導体領域)、バッファ領域30(第7の半導体領域)、ドリフト領域32(第2の半導体領域)、p形フローティング領域34(第5の半導体領域)、ベース領域36(第3の半導体領域)、エミッタ領域38(第4の半導体領域)、及び、コンタクト領域40が設けられる。
【0112】
IGBT200の半導体層10は、第1の実施形態のIGBT100の半導体層10が有するn形コレクタ領域28(第6の半導体領域)を有しない。
【0113】
第2の実施形態のIGBT200によれば、第1の実施形態と同様、オフ状態の場合とオン状態の場合で、ドリフト領域の実効的な厚さが変化する。オン状態の場合が、オフ状態の場合に比べて、ドリフト領域の実効的な厚さが短くなる。したがって、オン抵抗と耐圧のトレードオフの関係が改善する。よって、IGBT200のオン抵抗を低減し、定常損失を低減することが可能となる。
【0114】
以上、第2の実施形態によれば、定常損失の低減を可能とする半導体装置が実現できる。
【0115】
(第3の実施形態)
第3の実施形態の半導体装置は、第1のトレンチは、第1の面において、第1の面に平行な第1の方向に延び、第2のトレンチは、第2の面において、第1の面に平行で、第1の方向に直交する第2の方向に延びる点で、第1の実施形態の半導体装置と異なっている。以下、第1の実施形態と重複する内容については一部記述を省略する場合がある。
【0116】
第3の実施形態の半導体装置は、半導体層の表面及び裏面にゲート電極を備える両面ゲート構造のIGBT300である。また、IGBT300は、表面及び裏面のゲート電極がトレンチの中に設けられたトレンチゲート構造を有する。以下、第1導電形がp形、第2導電形がn形である場合を例に説明する。
【0117】
図7は、第3の実施形態の半導体装置の一部の模式断面図である。
図8及び
図9は、第3の実施形態の半導体装置の一部の模式平面図である。
図10は、第3の実施形態の半導体装置の一部の模式断面図である。
【0118】
図7は、
図9のBB’断面である。
図8は、半導体層の表面、すなわち、第1の面P1における平面図である。
図9は、半導層の裏面、すなわち、第2の面P2における平面図である。
図10は、
図9のCC’断面である。
【0119】
第3の実施形態のIGBT300は、半導体層10、エミッタ電極12(第1の電極)、コレクタ電極14(第2の電極)、表面ゲート絶縁膜41(第1のゲート絶縁膜)、裏面ゲート絶縁膜42(第2のゲート絶縁膜)、表面ゲート電極51(第1のゲート電極)、裏面ゲート電極52(第2のゲート電極)、第1の層間絶縁層61、第2の層間絶縁層62を備える。
【0120】
半導体層10の中には、表面ゲートトレンチ21(第1のトレンチ)、裏面ゲートトレンチ22(第2のトレンチ)、p形コレクタ領域26(第1の半導体領域)、n形コレクタ領域28(第6の半導体領域)、バッファ領域30(第7の半導体領域)、ドリフト領域32(第2の半導体領域)、p形フローティング領域34(第5の半導体領域)、ベース領域36(第3の半導体領域)、エミッタ領域38(第4の半導体領域)、及び、コンタクト領域40が設けられる。
【0121】
表面ゲートトレンチ21は、第1の面P1において、第1の面P1に平行な第1の方向に延びる。また、裏面ゲートトレンチ22は、第2の面P2において、第1の面P1に平行で、第1の方向に直交する第2の方向に延びる。裏面ゲートトレンチ22は、表面ゲートトレンチ21と直交する方向に延びる。
【0122】
裏面ゲートトレンチ22が、表面ゲートトレンチ21と直交する方向に延びることで、IGBT300のオン電流の流れが均一化する。したがって、局所的なオン電流の集中が生じにくい。したがって、IGBT300の信頼性及び破壊耐量が向上する。
【0123】
以上、第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様、定常損失及びターンオフ損失の低減を可能とする半導体装置が実現できる。更に、信頼性及び破壊耐量が向上する半導体装置が実現できる。
【0124】
(第4の実施形態)
第4の実施形態の半導体装置は、第1の面の側に設けられた第3のトレンチを、更に含み、第3のトレンチの中に設けられ、第1の電極に電気的に接続された導電層と、導電層と第2の半導体領域との間、及び、導電層と第3の半導体領域との間、に設けられた絶縁膜とを、更に備える点で、第1の実施形態の半導体装置と異なっている。以下、第1の実施形態と重複する内容については一部記述を省略する場合がある。
【0125】
第4の実施形態の半導体装置は、半導体層の表面及び裏面にゲート電極を備える両面ゲート構造のIGBT400である。また、IGBT400は、表面及び裏面のゲート電極がトレンチの中に設けられたトレンチゲート構造を有する。以下、第1導電形がp形、第2導電形がn形である場合を例に説明する。
【0126】
図11は、第4の実施形態の半導体装置の一部の模式断面図である。
図11は、第1の実施形態の
図1に対応する図である。
【0127】
第4の実施形態のIGBT400は、半導体層10、エミッタ電極12(第1の電極)、コレクタ電極14(第2の電極)、表面ゲート絶縁膜41(第1のゲート絶縁膜)、裏面ゲート絶縁膜42(第2のゲート絶縁膜)、ダミーゲート絶縁膜43(絶縁膜)、表面ゲート電極51(第1のゲート電極)、裏面ゲート電極52(第2のゲート電極)、ダミーゲート電極53(導電層)、第1の層間絶縁層61、第2の層間絶縁層62を備える。
【0128】
半導体層10の中には、表面ゲートトレンチ21(第1のトレンチ)、裏面ゲートトレンチ22(第2のトレンチ)、ダミーゲートトレンチ23(第3のトレンチ)、p形コレクタ領域26(第1の半導体領域)、n形コレクタ領域28(第6の半導体領域)、バッファ領域30(第7の半導体領域)、ドリフト領域32(第2の半導体領域)、p形フローティング領域34(第5の半導体領域)、ベース領域36(第3の半導体領域)、エミッタ領域38(第4の半導体領域)、及び、コンタクト領域40が設けられる。
【0129】
ダミーゲートトレンチ23は、半導体層10の第1の面P1の側に設けられる。ダミーゲートトレンチ23は、ベース領域36に接して設けられる。
【0130】
ダミーゲートトレンチ23は、半導体層10に設けられた溝である。ダミーゲートトレンチ23は、半導体層10の一部である。
【0131】
ダミーゲートトレンチ23は、第1の面P1において、第1の面P1に平行な第1の方向に延伸する。ダミーゲートトレンチ23は、ストライプ形状を有する。複数のダミーゲートトレンチ23は、第1の方向に直交する第2の方向に繰り返し配置される。
【0132】
ダミーゲートトレンチ23は、2個の表面ゲートトレンチ21の間に挟まれて設けられる。
【0133】
ダミーゲートトレンチ23は、ベース領域36を貫通し、ドリフト領域32に達する。ダミーゲートトレンチ23の第1の面P1を基準とする深さは、例えば、8μm以下である。
【0134】
ダミーゲート電極53は、ダミーゲートトレンチ23の中に設けられる。ダミーゲート電極53は、例えば、半導体又は金属である。ダミーゲート電極53は、例えば、n形不純物又はp形不純物を含むアモルファスシリコン、又は、n形不純物又はp形不純物を含む多結晶シリコンである。
【0135】
ダミーゲート電極53は、エミッタ電極12に電気的に接続される。ダミーゲート電極53は、エミッタ電極12と同電位である。
【0136】
ダミーゲート絶縁膜43は、ダミーゲート電極53と半導体層10との間に設けられる。ダミーゲート絶縁膜43は、ダミーゲート電極53とドリフト領域32との間、ダミーゲート電極53とベース領域36との間、及び、ダミーゲート電極53とコンタクト領域40との間に設けられる。ダミーゲート絶縁膜43は、ドリフト領域32、ベース領域36、及び、コンタクト領域40に接する。ダミーゲート絶縁膜43は、エミッタ領域38と離間する。ダミーゲート絶縁膜43は、例えば、酸化シリコンである。
【0137】
第4の実施形態のIGBT400は、ダミーゲートトレンチ23、ダミーゲート絶縁膜43、及び、ダミーゲート電極53を設けることで、オン状態の際に、ドリフト領域に蓄積されるキャリアの量を増加させることができる。よって、IGBT400のオン抵抗を低減し、定常損失を低減することが可能となる。
【0138】
以上、第4の実施形態によれば、第1の実施形態と同様、定常損失及びターンオフ損失の低減を可能とする半導体装置が実現できる。更に、オン抵抗を低減し、定常損失を低減することが可能となる。
【0139】
(第5の実施形態)
第5の実施形態の半導体回路は、第1のゲート電極にターンオン電圧が印加されている際に、第2のゲート電極には、第1導電形がp形の場合には負電圧が印加され、第1導電形がn形の場合には正電圧が印加されるように半導体装置を制御する制御回路と、を備える点で、第1の実施形態の半導体装置と異なっている。以下、第1の実施形態と重複する内容については一部記述を省略する場合がある。
【0140】
図12は、第5の実施形態の半導体回路の模式図である。第5の実施形態の半導体回路500は、第1の実施形態のIGBT100と制御回路150を備える。半導体回路500は、例えば、IGBT100と制御回路150が実装された半導体モジュールである。
【0141】
IGBT100は、トランジスタ領域100a、表面ゲート電極パッド100b、裏面ゲート電極パッド100cを備える。裏面ゲート電極パッド100cは、表面ゲート電極パッド100bに対して半導体チップの反対面側に位置する。
【0142】
制御回路150は、IGBT100を制御する。制御回路150は、ゲートドライバ回路である。ゲートドライバ回路は、表面ゲート電極パッド100b、及び、裏面ゲート電極パッド100cに印加する電圧を制御する。ゲートドライバ回路は、表面ゲート電極51に印加する第1のゲート電圧(Vg1)、及び、裏面ゲート電極52に印加する第2のゲート電圧(Vg2)を制御する。
【0143】
ゲートドライバ回路は、表面ゲート電極51にターンオン電圧(Von)が印加されている際に、裏面ゲート電極52には、負電圧が印加されるように、第1のゲート電圧(Vg1)と第2のゲート電圧(Vg2)を制御する。
【0144】
以上、第5の実施形態によれば、定常損失及びターンオフ損失の低減を可能とする半導体回路が実現できる。
【0145】
第1ないし第4の実施形態においては、半導体層が単結晶シリコンである場合を例に説明したが、半導体層は単結晶シリコンに限られることはない。例えば、単結晶炭化珪素など、その他の単結晶半導体であっても構わない。
【0146】
第1、第2、及び、第4の実施形態においては、表面ゲートトレンチ21及び裏面ゲートトレンチ22が、いずれもストライプ形状である場合を例に説明したが、表面ゲートトレンチ21及び裏面ゲートトレンチ22の形状はストライプ形状に限定されるものではない。例えば、表面ゲートトレンチ21及び裏面ゲートトレンチ22のいずれか一方、又は、両方が、多角形状等、ストライプ形状以外の形状であっても構わない。
【0147】
第1ないし第5の実施形態においては、第1導電形がp形、第2導電形がn形である場合を例に説明したが、第1導電形をn形、第2導電形をp形とすることも可能である。第1導電形をn形、第2導電形をp形とする場合、例えば、第2の電圧(V2)は正電圧となる。
【0148】
第1ないし第4の実施形態においては、バッファ領域30とベース領域36との間の距離が、p形フローティング領域34とベース領域36との間の距離よりも長い場合を例に説明したが、バッファ領域30とベース領域36との間の距離を、p形フローティング領域34とベース領域36との間の距離よりも短くすることも可能である。この場合、p形フローティング領域34は、バッファ領域30に囲まれることになる。
【0149】
第5の実施形態においては、半導体装置が第1の実施形態の半導体装置である場合を例に説明したが、半導体装置は、第1ないし第4の実施形態の半導体装置であっても構わない。
【0150】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。例えば、一実施形態の構成要素を他の実施形態の構成要素と置き換え又は変更してもよい。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。