【解決手段】所定の規格に準拠した放送信号を受信可能な放送受信装置を、放送信号を受信可能な位置と、この位置にて受信可能な、同一内容のサービスを放送する複数の放送信号と、を関連付けて保持する保持部と、放送受信装置の現在位置情報を取得する取得部と、受信対象である第1の放送信号が受信できないと、保持部に保持された放送信号の中から、現在位置情報が示す現在位置にて受信可能な、第1の放送信号によるサービスと同一内容のサービスを放送する第2の放送信号を検出する検出部と、を備える構成とする。
前記検出部により前記第2の放送信号を検出できないとき、前記現在位置にて受信可能な、前記第1の放送信号によるサービスと同一内容のサービスを放送する第3の前記放送信号を検索する検索部と、
前記検索部により前記第3の放送信号が検索されると、検索された第3の放送信号を、前記第1の放送信号と同一内容のサービスを放送する放送信号として、前記第1の放送信号と同じ位置に関連付けて前記保持部に記憶させる記憶部と、
を更に備える、
請求項1又は請求項2に記載の放送受信装置。
所定の規格に準拠した放送信号を受信可能な放送受信装置であって、前記放送信号を受信可能な位置と、前記位置にて受信可能な、同一内容のサービスを放送する複数の前記放送信号とを関連付けて保持する保持部を備える、放送受信装置が実行する放送受信方法であって、
前記放送受信装置の現在位置情報を取得する取得ステップと、
受信対象である第1の前記放送信号が受信できないと、前記保持部に保持された放送信号の中から、前記現在位置情報が示す現在位置にて受信可能な、前記第1の放送信号によるサービスと同一内容のサービスを放送する第2の前記放送信号を検出する検出ステップと、
を含む、
放送受信方法。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下においては、本発明の一実施形態として、DAB−DABリンクを実行可能な放送受信装置を備える放送受信システムを例に取り説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係る放送受信システム1の構成を示すブロック図である。
図1に示されるように、本実施形態に係る放送受信システム1は、放送受信装置10、GPS受信機20、オーディオアンプ40及びスピーカ50を備える。
【0023】
放送受信装置10及びGPS受信機20は、同じ車両に設置されており、通信可能に接続される。放送受信装置10は車載された装置に限らず、例えば、スマートフォン、フィーチャフォン、PHS(Personal Handy phone System)、タブレット端末、ノートPC、PDA(Personal Digital Assistant)、PND(Portable Navigation Device)、携帯ゲーム機等の携帯型端末に備えられるものであってもよい。
【0024】
放送受信装置10は、DABのアンサンブル信号(言い換えると、所定の規格に準拠した放送信号)を受信可能な装置であり、受信対象であるアンサンブル信号が受信できないと、再生対象のサービスを、このアンサンブル信号によるDABサービスから、これと同一内容を放送する別のアンサンブル信号のDABサービスに切り替えるものである。すなわち、放送受信装置10は、DAB−DABリンクを実行可能な装置である。
【0025】
図1に示されるように、放送受信装置10は、MPU(Micro Processing Unit)110、HMI(Human Machine Interface)120、DAB信号処理回路130、RDS信号処理回路140、セレクタ150、フラッシュメモリ160及び通信インタフェース170を備える。放送受信装置10(具体的にはセレクタ150)の後段には、オーディオアンプ40及びスピーカ50が接続される。
【0026】
なお、
図1では、本実施形態の説明に必要な主たる構成要素を図示しており、例えば放送受信装置10として必須な構成要素である筐体など、一部の構成要素については、その図示を適宜省略する。
【0027】
例えば車両にエンジンが掛けられると、図示省略されたバッテリから放送受信装置10の各回路に電源ラインを通じて電源供給が行われる。MPU110は電源供給後、内部メモリに格納された制御プログラムを読み出してワークエリアにロードし、ロードされた制御プログラムを実行することにより、放送受信装置10全体の制御を行う。
【0028】
HMI120は、ユーザと放送受信装置10とが情報をやり取りするためのインタフェースであり、具体的には、タッチパネルディスプレイ及びその周りに配置されたメカニカルキー、リモートコントローラ等である。MPU110は、HMI120に対する選局操作に従い、DAB信号処理回路130及びRDS信号処理回路140に受信制御信号を出力する。
【0029】
DAB信号処理回路130は、DABの放送信号(以下「DAB信号」と記す。)の受信処理を行う回路であり、アンテナ131、DAB_RF部132、DAB復調部133及び信号検出部134を備える。
【0030】
アンテナ131は、DAB信号を受信する。DAB_RF部132は、MPU110より入力される受信制御信号に従い、アンテナ131にて受信されたDAB信号からアンサンブル信号を抽出してDAB復調部133に出力する。
【0031】
アンサンブル信号は、概略的には、復調の際にフレーム同期に用いられる同期チャンネル、サービス構成情報等が含まれるFIC(Fast Information Channel)、音声サービスやデータサービスが含まれるMSC(Main Service Channel)で構成される。
【0032】
FICは、FIB(Fast Information Block)で構成されており、SID(Service Identifier)、EID(Ensemble Identifier)、SCIdS(Service Component Identifier within the Service)等の各識別子及び該識別子に関連付けられたラベルデータ(例えばラジオ放送サービス名(ラジオ放送番組名)を示すサービスラベル)を含む。FIBは、FIG(Fast Information Group)及びCRC(Cyclic Redundancy Check)を含む。FIGは、その用途によりType 0からType 7の8種類で分類される。
【0033】
FIGには、DAB−DABリンクの実行に必要なハードリンク・サービス情報、FI、OEサービス情報が含まれる。
【0034】
放送受信装置10は、DAB−RDS(Radio Data System)リンクも実行可能である。DAB−RDSリンクでは、アンサンブル信号の受信信号品質が劣化等したときの切替先がDABサービスでなく、FM(Frequency Modulation)のRDSの放送信号(以下、「RDS信号」と記す。)によるサイマル放送(以下、「RDSサイマル放送」と記す。)である。FIGには、DABサービスからRDSサイマル放送への切替時に用いる情報も含まれる。この情報は、具体的には、DABサービスのSIDと、DABサービスと同一内容を放送するRDSサイマル放送のPI(Program Identifier)とを関連付けたサービス・リンキング情報である。
【0035】
DAB復調部133は、DAB_RF部132より入力されるアンサンブル信号を復調し、MPU110より入力される受信制御信号に従い、復調されたアンサンブル信号からDABサービスを選択して復調する。この復調処理によって得られた音声信号(以下、「DAB音声信号」と記す。)、表示用データ(サービスラベルを含む。)は、それぞれ、オーディオアンプ40、HMI120に出力される。
【0036】
信号検出部134は、DAB復調部133にてアンサンブル信号が復調されたことによって得られる多重化データを検出したり、エラーレートに基づいて受信信号品質に関する情報を検出したりする。
【0037】
RDS信号処理回路140は、RDS信号の受信処理を行う回路であり、アンテナ141、RDS_RF部142、RDS復調部143及び信号検出部144を備える。
【0038】
アンテナ141は、RDS信号を受信する。RDS_RF部142は、MPU110より入力される受信制御信号に従い、アンテナ141にて受信されたRDS信号に対する選局処理を行い、選局されたRDSサイマル放送の信号をRDS復調部143に出力する。なお、選局されるRDSサイマル放送は、例えばDABサービスのSIDと同一PIのRDSサイマル放送又はサービス・リンキング情報によってDABサービスのSIDと関連付けられたPIのRDSサイマル放送である。
【0039】
RDS復調部143は、RDS_RF部142より入力されるRDSサイマル放送の信号を音声信号(以下、「RDS音声信号」と記す。)及び文字情報データに復調する。この復調処理によって得られたRDS音声信号、文字情報データは、それぞれ、オーディオアンプ40、HMI120に出力される。
【0040】
RDS信号には、RDSの放送局を識別するためのPI等のデータが多重化されている。信号検出部144は、RDS復調部143によりRDSサイマル放送の信号が復調されたことによって得られる多重化データを検出したり、RDSサイマル放送の受信レベル等に基づいて受信信号品質に関する情報を検出したりする。
【0041】
MPU110は、セレクタ信号をセレクタ150に出力する。セレクタ150は、MPU110より入力されるセレクタ信号に従い、DAB音声信号又はRDS音声信号を出力する。例示的には、セレクタ150は、DAB−RDSリンクの実行時、出力音声信号をDAB音声信号とRDS音声信号との間で切り替える。セレクタ150より出力される音声信号は、オーディオアンプ40にて増幅されて、スピーカ50より出力再生される。
【0042】
DABのステーションリストについて説明する。ステーションリストは、アンサンブルラベル、サービスラベル、SID、SCIds、種別(Primary, Secondary)、ハードリンク・サービス情報、FI、OEサービス等の各情報を関連付けて保持するリストデータである。
【0043】
例えば、MPU110は、DAB信号処理回路130を制御して、DAB信号を放送する全ての周波数チャンネルをシークする。概説すると、MPU110は、DAB信号処理回路130に受信制御信号を出力して、1つの周波数チャンネルの選局を指示する。DAB信号処理回路130では、MPU110より入力される受信制御信号に従って受信処理が行われる。DAB信号処理回路130にてアンサンブル信号が検出されて復調処理が成功すると、ステーションリスト112の作成に必要なサービス構成情報が得られて、MPU110に出力される。MPU110は、DAB信号処理回路130よりサービス構成情報を取得すると、次の周波数チャンネルの選局をDAB信号処理回路130に指示して、次の周波数チャンネルについても同様にサービス構成情報の取得を試みる。MPU110は、一定時間内にDAB信号処理回路130よりサービス構成情報を取得できなかった場合にも、次の周波数チャンネルの選局をDAB信号処理回路130に指示してサービス構成情報の取得を試みる。MPU110は、このシーク処理を、DAB信号を放送する全ての周波数チャンネルについて行う。
【0044】
MPU110は、DAB信号を放送する全ての周波数チャンネルについてサービス構成情報の取得・取得失敗の結果が得られると、取得されたサービス構成情報に基づいてステーションリスト112を作成し、作成したステーションリスト112をその内部メモリに格納する。
【0045】
ステーションリスト112が保持するサービスラベルは、例えばHMI120のタッチパネルディスプレイ上に表示される。ユーザは、HMI120のタッチパネルディスプレイ上に表示されたステーションリスト112の中から希望するDABサービスをタッチ操作によって選択することができる。ステーションリスト112上のDABサービスが選択操作されると、MPU110は、選択されたDABサービスに関連付けられて記憶されたアンサンブル信号の周波数、EID、SID等に基づいてアンサンブル信号を受信し、受信したアンサンブル信号に含まれる選択局のDABサービスのDAB音声信号をスピーカ50より出力再生させるとともに、このDABサービスの表示用データをタッチパネルディスプレイ上に表示させる。
【0046】
図2は、本実施形態においてMPU110により実行されるDAB−DABリンクのフローチャートである。MPU110は、例えば、アンサンブル信号の受信信号品質の劣化(例えばアンサンブル信号のエラーレートが所定閾値以上になったこと)が検出されたときや、ステーションリスト112で選択されたDABサービスを放送するアンサンブル信号の受信レベルがDAB音声信号を出力再生できないレベルにあるとき、
図2に示されるDAB−DABリンクの実行を開始する。言い換えると、MPU110は、受信対象のアンサンブル信号が受信できないと、
図2に示されるDAB−DABリンクの実行を開始する。
【0047】
より正確には、MPU110は、受信対象のアンサンブル信号が受信できないと、まずは後述の
図3に示されるDAB−DABリンクを実行し、このDAB−DABリンクではAFサービスへの切替ができなかった場合に、
図2に示されるDAB−DABリンクの実行を開始する。
【0048】
MPU110は、受信していたDABサービスを放送するアンサンブル信号又はステーションリスト112で選択されたDABサービスを放送するアンサンブル信号(以下、これらのアンサンブル信号を「受信対象のアンサンブル信号」と記す。)の多重化データの中に、受信を試行していないAFサービスの情報が残っているか否かを判定する(ステップS11)。
【0049】
MPU110は、受信を試行していないAFサービスの情報が残っている場合(ステップS11:YES)、残っているAFサービスの情報の中から1つのAFサービスの情報を選択する(ステップS12)。
【0050】
例えば多重化データの中に、ハードリンク・サービス情報、FI、OEサービス情報が含まれる場合を考える。この場合、ステップS12において、MPU110は、例えば多重化データの中から、受信していた又は選択されたDABサービスと同一SID(又はハードリンク・サービス情報で通知されるハードリンク・サービスのSID)を決定し、決定されたSIDのAFサービスが放送されるアンサンブル信号のEIDをOEサービス情報から取得し、取得されたアンサンブル信号が放送される周波数チャンネルの情報をFIから取得する。すなわち、MPU110は、ハードリンク・サービス情報、FI、OEサービス情報を複合的に利用してAFサービスの情報を選択する。なお、AFサービスの情報が複数残っている場合、例えば受信していた又は選択されたDABサービスと同一SIDのAFサービスが、ハードリンク・サービスで通知されるSIDのAFサービスよりも優先して選択される。この優先順位は一例に過ぎない。別の実施形態では、例えばハードリンク・サービスで通知されるSIDのAFサービスが優先的に選択されてもよい。
【0051】
MPU110は、アンサンブル信号の多重化データに含まれる情報を用いて、ステップS12にて選択されたAFサービスを含むアンサンブル信号の周波数チャンネルを選局し、選局した周波数チャンネルで放送されるアンサンブル信号の受信を試行し、アンサンブル信号が受信できた場合にはこれに含まれるAFサービスの選択を試行する。MPU110は、このAFサービスの選択が成功すると(ステップS13:YES)、再生対象のサービスを、選択が成功したAFサービスへ切り替える(ステップS14)。これにより、DAB−DABリンクが完了して、AFサービスが出力再生される。
【0052】
MPU110は、ステップS13にてAFサービスの選択に失敗すると(ステップS13:NO)、ステップS11に戻り、ステップS11の処理を再度実行する。
【0053】
MPU110は、受信を試行していないAFサービスの情報が残っていない場合(ステップS11:NO)、AFサービスを含むアンサンブル信号の周波数チャンネルを対象としたシーク処理を行う(ステップS15)。なお、アンサンブル信号にFIGの情報がそもそも含まれない場合にも、本フローチャートの処理は、ステップS11からステップS15へ進む。
【0054】
MPU110は、ステップS15にてシークした周波数チャンネルでAFサービスを含むアンサンブル信号が放送されているか否かを判定する(ステップS16)。MPU110は、シークした周波数チャンネルでAFサービスを含むアンサンブル信号が放送されている場合(ステップS16:YES)、再生対象のサービスを、このAFサービスへ切り替える(ステップS14)。これにより、DAB−DABリンクが完了して、AFサービスが出力再生される。
【0055】
MPU110は、シークした周波数チャンネルでAFサービスを含むアンサンブル信号が放送されていない場合(ステップS16:NO)、DAB信号を放送する全ての周波数チャンネルについてシークを行ったか否かを判定する(ステップS17)。MPU110は、未シークの周波数チャンネルが残っている場合(ステップS17:NO)、ステップS15に戻り、未シークの周波数チャンネルを対象にステップS15の処理を実行する。
【0056】
MPU110は、DAB信号を放送する全ての周波数チャンネルについてシークを行った場合(ステップS17:YES)、本フローチャートの処理を終了する。一定時間経過すると、DAB信号の受信環境が改善される可能性がある。そのため、MPU110は、一定時間経過後、本フローチャートの実行を最初から(すなわちステップS11から)開始する。
【0057】
本フローチャート中、シーク処理(すなわちステップS15〜S17)に移行すると、1つ1つの周波数チャンネルに対し、AFサービスを含むアンサンブル信号の受信が試行される。そのため、場合によっては、AFサービスの切替までに時間がかかり、長い期間、放送受信装置10の出力が無音状態になってしまうことがある。
【0058】
無音状態の発生を抑制するため、DAB−DABリンクと並行してDAB−RDSリンクを実行し、AFサービスが出力されるまでの間、AFサービスに代わり、RDSサイマル放送を出力することが考えられる。しかし、デジタル音声を聴取したいユーザにとっては、アナログ音声であるRDSサイマル放送が放送受信装置10から出力再生されることが好ましい状況であるとは限らない。
【0059】
そこで、本実施形態では、MPU110により、テーブル162に登録された登録情報を用いたDAB−DABリンクが実行される。これにより、AFサービスを含むアンサンブル信号を検出するのにかかる時間を抑制することができる。
【0060】
図3に、テーブル162に登録された登録情報を用いたDAB−DABリンクのフローチャートを示す。
図4に、テーブル162に登録された登録情報を示す。なお、テーブル162は、フラッシュメモリ160に記憶されたデータベースである。ここで「登録」とは、便宜的に用いた表現である。テーブル162のレコードとしてフラッシュメモリ160にデータを記憶させることを「登録」と表現している。
【0061】
テーブル162には、グループ、位置、SID及び周波数チャンネルが関連付けて記憶される。テーブル162に記憶された位置の情報は、緯度と経度の情報よりなる。SID及び周波数チャンネルは、これらに関連付けられた位置にて受信可能な放送信号の情報である。附言するに、SID及び周波数チャンネルは、当該位置を含む放送エリア(例えば当該位置を中心とした半径100km内の領域)にて受信可能な放送信号の情報である。同じ位置(言い換えると同じグループ)に関連付けられたSIDは、同一内容を放送するDABサービスのSIDである。
【0062】
すなわち、テーブル162では、同一内容を放送するDABサービスのSID及びその周波数チャンネルが、受信可能な位置毎にグループ分けして管理される。なお、放送受信装置10は、受信環境や地形等の影響にもよるが、原則、現在位置する放送エリアとは別の放送エリアで放送されるアンサンブル信号を受信することができないものとする。そのため、テーブル162では、同一内容を放送するDABサービスであっても、互いに異なる放送エリアでしか受信できないものは、別々のグループに分けて管理される。
【0063】
例えば、グループG1には、周波数チャンネル5Aのアンサンブル信号に含まれるDABサービスのSID「A001」、周波数チャンネル6Aのアンサンブル信号に含まれるDABサービスのSID「A001」及び周波数チャンネル7Aのアンサンブル信号に含まれるDABサービスのSID「A011」が含まれる。前二者のSIDは同一であり、同一内容を放送するDABサービスのSIDである。SID「A011」は前二者のSID「A001」とは異なるが、同一内容を放送するDABサービスのSIDである。これら3つのDABサービスは、位置Aを含む放送エリア内で受信可能である。以下、位置A〜Dのそれぞれを含む放送エリアを、放送エリアA〜Dと記す。
【0064】
SIDの一桁目は、十六進表記の国コードである。例えばDABが普及している欧州では、16を超える国があるため、全ての国に対して異なる国コードを付与することができない。そのため、欧州では、互いに遠く離れた国間で同一の国コードを割り当てる運用がなされている。
【0065】
例えば、周波数チャンネル7Bのアンサンブル信号に含まれるDABサービスのSID「B003」と、周波数チャンネル9Bのアンサンブル信号に含まれるDABサービスのSID「B003」は、同一内容を放送するDABサービスのSIDである。前者のDABサービスは、国aで放送され、後者のDABサービスは、国aとは遠く離れた国bで放送される。そのため、前者のDABサービスを放送エリアDで受信することはできず、また、後者のDABサービスを放送エリアCで受信することもできない。そのため、テーブル162では、両者のDABサービスのSIDが別のグループ(すなわち、グループG3とグループG4)に分けて管理される。
【0066】
このように、フラッシュメモリ160(テーブル162)は、放送信号を受信可能な位置と、当該位置にて受信可能な、同一内容のサービスを放送する複数の放送信号と、を関連付けて保持する保持部として動作する。
【0067】
MPU110は、受信対象のアンサンブル信号(第1の放送信号)が受信できないと、
図3に示されるDAB−DABリンクの実行を開始する。
【0068】
MPU110は、通信インタフェース170を介してGPS受信機20から放送受信装置10(言い換えると、車両)の現在位置情報を取得する(ステップS21)。取得される位置情報は、緯度と経度の情報よりなる。なお、放送受信装置10とGPS受信機20は、同じ車両内に近接して設置され、且つ一体的に移動する。そのため、取得される位置情報は、厳密には、GPS受信機20の現在位置を示す情報ではあるが、放送受信装置10の現在位置(又は車両の現在位置)を示す情報とみなしても実質的に差し支えない。
【0069】
ステップS21において、MPU110は、放送受信装置の現在位置情報を取得する取得部として動作する。
【0070】
MPU110は、検索対象のSIDを決定する(ステップS22)。検索対象のSIDは、例えば、受信信号品質が劣化したDABサービスのSID又はステーションリスト112で選択されたDABサービスのSIDである。
【0071】
MPU110は、テーブル162に記憶されたSIDの中から、ステップS22にて決定したSIDと一致するSIDを検索する(ステップS23)。
【0072】
MPU110は、ステップS22にて決定したSIDと一致するSIDが検索されると(ステップS23:YES)、この検索されたSIDと関連付けられた位置が、ステップS21にて取得した放送受信装置10の現在位置から第1の距離(例えば100km)以内か否かを判定する(ステップS24)。言い換えると、MPU110は、ステップS21にて取得した放送受信装置10の現在位置が、ステップS23にて検索されたSIDと関連付けられた位置を含む放送エリアに属するか否かを判定する。
【0073】
MPU110は、ステップS24において第1の距離以内と判定すると(ステップS24:YES)、ステップS23にて検索されたSIDと関連付けられたグループ内の各SIDと関連付けられた周波数チャンネルを選局し、選局した周波数チャンネルで放送されるアンサンブル信号の受信を試行し、アンサンブル信号が受信できた場合にはこれに含まれるAFサービスの選択を試行する(ステップS25)。
【0074】
MPU110は、AFサービスの選択が成功すると(ステップS26:YES)、再生対象のサービスを、選択が成功したAFサービスへ切り替える(ステップS27)。これにより、DAB−DABリンクが完了して、AFサービスが出力再生される。
【0075】
例えば、SID「A001」のDABサービスの受信信号品質が劣化して、
図3のDAB−DABリンクが実行される場合であって、ステップS24においてSID「A001」と関連付けられた位置Aが放送受信装置10の現在位置から第1の距離以内と判定された場合を考える。この場合、ステップS25において、グループG1に属するDABサービス(言い換えると、現在位置(又は現在位置が属する放送エリアA内)で受信できる可能性の高いAFサービス)に対する選択処理が試行される。一例として、周波数チャンネル5Aのアンサンブル信号の受信が試行され、アンサンブル信号が受信できた場合にはこれに含まれるAFサービスの選択が試行される。このAFサービスの選択に失敗すると、周波数チャンネル6Aに対する選択処理が試行され、これに失敗すると、周波数チャンネル7Aに対する選択処理が試行される。
【0076】
すなわち、本実施形態では、FIGの情報がアンサンブル信号に含まれない場合であっても、受信できる可能性の高い切替先候補のAFサービスが速やかに選定され、アンサンブル信号の受信及びAFサービスの選択が試行される。そのため、放送受信装置10では、受信可能なAFサービスを放送するアンサンブル信号を検出するのにかかる時間が抑制可能となっている。
【0077】
また、例えば、放送エリアD内にて、ユーザが、周波数チャンネル7Bのアンサンブル信号に含まれるSID「B003」のDABサービスをステーションリスト112から選択した場合を考える。このDABサービスは、放送エリアCでは受信することができるが、放送エリアDでは受信することができない。また、周波数チャンネル8Bのアンサンブル信号に含まれるSID「B033」のDABサービスも、放送エリアCでは受信することができるが、放送エリアDでは受信することができない。
【0078】
この例では、切替先候補のAFサービスが、現在位置(又は現在位置が属する放送エリアD内)で受信できる可能性の高い、周波数チャンネル9Bのアンサンブル信号に含まれるSID「B003」と、周波数チャンネル10Bのアンサンブル信号に含まれるSID「B033」の2つのDABサービスに選定される。周波数チャンネル8Bのアンサンブル信号に含まれるSID「B033」のDABサービスは、選定対象から除外される。すなわち、テーブル162に登録された位置(言い換えると放送エリア)の情報は、切替先候補のAFサービスの絞り込み、言い換えると、受信可能なAFサービスを放送するアンサンブル信号を検出するのにかかる時間の抑制に寄与する。
【0079】
ステップS22〜S26において、MPU110は、受信対象である第1の前記放送信号が受信できないと、保持部(すなわちテーブル162)に保持された放送信号の中から、現在位置情報が示す現在位置にて受信可能な、第1の放送信号によるサービスと同一内容のサービス(すなわちAFサービス)を放送する第2の放送信号を検出(言い換えると、受信可能なAFサービスを選択)する検出部として動作する。
【0080】
附言するに、MPU110は、ステップS23〜S24では、保持部に保持された放送信号の中から、現在位置との距離が第1の距離以内となる位置と関連付けられた放送信号を検索し、ステップS25〜S26では、検索された放送信号の中から、第2の放送信号を検出(言い換えると、アンサンブル信号を受信し、これに含まれるAFサービスを選択)する。
【0081】
また、ステップS27において、MPU110は、再生対象のサービスを、第1の放送信号によるサービスから、検出部により検出された第2の放送信号によるサービスへ切り替える切替部として動作する。
【0082】
MPU110は、ステップS24において第1の距離を超えると判定すると(ステップS24:NO)又はAFサービスの選択に失敗すると(ステップS26:NO)、テーブル162に記憶されたSIDの中に未検索のSIDが残っているか否かを判定する(ステップS28)。
【0083】
MPU110は、テーブル162に記憶されたSIDの中に未検索のSIDが残っていると(ステップS28:YES)、ステップS23に戻り、テーブル162内の未検索のSIDを対象にステップS23の処理を実行する。
【0084】
MPU110は、テーブル162に記憶されたSIDの中から、ステップS22にて決定したSIDと一致するSIDが検索されない場合(ステップS23:NO)又はテーブル162に記憶されたSIDの中に未検索のSIDが残っていない場合(ステップS28:NO)、ステップS22にて決定すべき検索対象のSIDが残っているか否かを判定する(ステップS29)。
【0085】
MPU110は、ステップS22にて決定すべき検索対象のSIDが残っていると(ステップS29:YES)、ステップS22に戻り、ステップS22の処理を実行する。
【0086】
例えば、受信信号品質が劣化したDABサービスを放送するアンサンブル信号又はステーションリスト112で選択されたDABサービスを放送するアンサンブル信号の中にハードリンク・サービス情報が含まれている場合を考える。ハードリンク・サービス情報は、AFサービスの候補を示す情報である。MPU110は、この情報により特定されるSIDの中にステップS22にて検索対象のSIDとして決定されていないものがある場合には、ステップS22に戻る。MPU110は、ステップS22において、これらの情報のうち1つを用いて検索対象のSIDとして決定し、ステップS23以降の処理を実行する。
【0087】
MPU110は、ステップS22にて決定すべき検索対象のSIDが残っていない場合(ステップS29:NO)、テーブル162に記憶されたSIDにはAFサービスとなるSIDが含まれないことから、本フローチャートの処理を終了し、
図2のDAB−DABリンクの実行を開始する。すなわち、MPU110は、テーブル162に登録された登録情報を用いないDAB−DABリンクの実行を最初から(すなわちステップS11から)開始して、テーブル162に記憶されていないAFサービスを含むアンサンブル信号(第3の放送信号)を検索する。言い換えると、MPU110は、検出部により第2の放送信号を検出できないとき、現在位置にて受信可能な、第1の放送信号によるサービスと同一内容のサービスを放送する第3の放送信号を検索する検索部として動作する。
【0088】
図5に、本実施形態においてMPU110により実行される、テーブル162に登録情報を登録する登録処理のフローチャートを示す。
【0089】
図2のDAB−DABリンクにおいてAFサービスの選択が成功したとき(
図2のステップS13)又はシークした周波数チャンネルでAFサービスを含むアンサンブル信号が放送されていると判定したとき(
図2のステップS16)、
図5に示される登録処理の実行が開始される。言い換えると、MPU110は、現在位置にて受信可能なAFサービス(便宜上「検索成功AFサービス」と記す。)を含むアンサンブル信号(第3の放送信号)が検索されると、
図5に示される登録処理の実行を開始する。
【0090】
MPU110は、通信インタフェース170を介してGPS受信機20から放送受信装置10(言い換えると、車両)の現在位置情報を取得する(ステップS31)。なお、
図3のステップS21の実行により、放送受信装置10の現在位置情報が既に取得されている場合は、本ステップS31を省略してもよい。
【0091】
MPU110は、検索成功AFサービスのSID及びその周波数チャンネルを参照し、検索成功AFサービスと同一内容を放送するDABサービスがテーブル162に登録されているか否かを判定する(ステップS32)。
【0092】
MPU110は、検索成功AFサービスと同一内容を放送するDABサービスがテーブル162に登録されている場合(ステップS32:YES)、このDABサービスと関連付けられた位置と、ステップS31にて取得した現在位置情報が示す現在位置との距離が第2の距離(例えば100km)以内か否かを判定する(ステップS33)。
【0093】
MPU110は、検索成功AFサービスと同一内容を放送するDABサービスと関連付けられた位置と、現在位置との距離が第2の距離以内と判定すると(ステップS33:YES)、検索成功AFサービスが、このDABサービスと関連付けられた位置にて受信可能であるものとして、検索成功AFサービスのSID及びその周波数チャンネルを、このDABサービスと同一グループに登録する(ステップS34)。
【0094】
このように、ステップS34において、MPU110は、検索部により第3の放送信号(検索成功AFサービス)が検索されると、検索された第3の放送信号を、第1の放送信号と同一内容のサービスを放送する放送信号として、第1の放送信号と同じ位置に関連付けて保持部に記憶させる記憶部として動作する。
【0095】
MPU110は、検索成功AFサービスと同一内容を放送するDABサービスがテーブル162に登録されていない場合(ステップS32:NO)又はこのDABサービスと関連付けられた位置と現在位置との距離が第2の距離を超える場合(ステップS33:NO)、テーブル162に新規グループを登録し、登録した新規グループに、検索成功AFサービスのSID及びその周波数チャンネルを、ステップS31にて取得した現在位置情報が示す現在位置と関連付けて登録する(ステップS35)。
【0096】
すなわち、ステップS32〜S35において、MPU110は、検索部により検索された第3の放送信号(検索成功AFサービス)の受信位置と、保持部にて第1の放送信号と関連付けられた位置との距離が第2の距離以内か否かを判定し、上記距離が第2の距離以内の場合に、第3の放送信号を、第1の放送信号と同じ位置に関連付けて前記保持部に記憶させ、上記距離が第2の距離を超える場合に、第3の放送信号をその受信位置に関連付けて保持部に記憶させる。
【0097】
図6A〜
図6Cは、
図5に示される登録処理を説明する概略図である。
図4及び
図6A〜
図6Cを用いて、
図5に示される登録処理の具体例を説明する。なお、ここでは、テーブル162に1つの登録情報も登録されていない場合に実行される登録処理について説明する。
【0098】
まず、周波数チャンネル5Aのアンサンブル信号に含まれるSID「A001」のDABサービスを受信していた状態から、
図2のDAB−DABリンクの実行により、検索成功AFサービスとして、周波数チャンネル6Aのアンサンブル信号に含まれるSID「A001」のDABサービスが検索されたものとする。この場合、MPU110は、テーブル162に新規グループG1を登録し、この新規グループG1に、放送受信装置10の現在位置である位置Aと、SID「A001」と、周波数チャンネル「5A」及び「6A」とを関連付けて登録する(
図6A参照)。
【0099】
なお、周波数チャンネル5Aのアンサンブル信号に含まれるSID「A002」も取得できていた場合には、MPU110は、SID「A002」のDABサービスが検索成功AFサービスと同一内容であるか否かを判定する。ここでは同一内容でないと判定されるため、MPU110は、テーブル162に新規グループG2を登録し、この新規グループG2に、放送受信装置10の現在位置である位置Bと、SID「A002」と、周波数チャンネル「5A」とを関連付けて登録する(
図6A参照)。
【0100】
グループG1に登録された位置Aと、グループG2に登録された位置Bは、同一の緯度及び同一の経度よりなる(すなわち同一の位置である)。MPU110は、テーブル162内で位置Aと位置Bとを区別可能とするため、例えばこれらの位置に枝番を付ける。MPU110は、同一の位置である位置Aと位置Bに枝番を付けることにより、これらの位置を異なる位置として取り扱う。
【0101】
周波数チャンネル6Aのアンサンブル信号に含まれるSID「A022」も取得できていた場合には、MPU110は、SID「A022」のDABサービスと同一内容を放送するDABサービスがテーブル162に登録されているか否かを判定する。ここでは、SID「A002」のDABサービスが同一内容であると判定される。そのため、MPU110は、グループG2に、SID「A022」と、周波数チャンネル「6A」とを関連付けて登録する(
図6A参照)。
【0102】
次いで、
図2のDAB−DABリンクの更なる実行により、位置A近辺(例えば位置Aから10km離れた位置)で、検索成功AFサービスとして、周波数チャンネル7Aのアンサンブル信号に含まれるSID「A011」のDABサービスが検索されたものとする。MPU110は、SID「A011」のDABサービスと同一内容を放送するDABサービスがテーブル162に登録されているか否かを判定する。ここでは、SID「A001」のDABサービスが同一内容であると判定される。放送受信装置10の現在位置と位置Aとが第2の距離以内であるため、MPU110は、グループG1に、SID「A011」と、周波数チャンネル「7A」とを関連付けて登録する(
図6B参照)。
【0103】
次いで、
図2のDAB−DABリンクの更なる実行により、位置Cで、検索成功AFサービスとして、周波数チャンネル7Bのアンサンブル信号に含まれるSID「B003」のDABサービスが検索されたものとする。ここでは、MPU110は、SID「B003」のDABサービスと同一内容を放送するDABサービスがテーブル162に登録されていないと判定する。そのため、MPU110は、テーブル162に新規グループG3を登録し、この新規グループG3に、放送受信装置10の現在位置である位置Cと、SID「B003」と、周波数チャンネル「7B」とを関連付けて登録する(
図6C参照)。
【0104】
次いで、
図2のDAB−DABリンクの更なる実行により、位置C近辺(例えば位置Cから5km離れた位置)で、検索成功AFサービスとして、周波数チャンネル8Bのアンサンブル信号に含まれるSID「B033」のDABサービスが検索されたものとする。ここでは、MPU110は、SID「B003」のDABサービスが同一内容であると判定する。放送受信装置10の現在位置と位置Cとが第2の距離以内であるため、MPU110は、グループG3に、SID「B033」と、周波数チャンネル「8B」とを関連付けて登録する(
図6C参照)。
【0105】
次いで、
図2のDAB−DABリンクの更なる実行により、位置D(例えば位置Cから1000km離れた位置)で、検索成功AFサービスとして、周波数チャンネル9Bのアンサンブル信号に含まれるSID「B003」のDABサービスが検索されたものとする。SID「B003」は、グループG3に登録されている。しかし、グループG3に登録されたSID「B003」のDABサービスは、位置Dでは受信できない。そのため、MPU110は、テーブル162に新規グループG4を登録し、この新規グループG4に、放送受信装置10の現在位置である位置Dと、SID「B003」と、周波数チャンネル「9B」とを関連付けて登録する(
図4参照)。
【0106】
次いで、
図2のDAB−DABリンクの更なる実行により、位置D近辺(例えば位置Dから5km離れた位置)で、検索成功AFサービスとして、周波数チャンネル10Bのアンサンブル信号に含まれるSID「B033」のDABサービスが検索されたものとする。放送受信装置10の現在位置と位置Dとが第2の距離以内であるため、MPU110は、グループG4に、SID「B033」と、周波数チャンネル「10B」とを関連付けて登録する(
図4参照)。
【0107】
このようにして、
図4に例示される、放送信号を受信可能な位置と、当該位置にて受信可能な、同一内容のサービスを放送する複数の放送信号と、が関連付けられた情報がテーブル162に登録される。
【0108】
以上が本発明の例示的な実施形態の説明である。本発明の実施形態は、上記に説明したものに限定されず、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。例えば明細書中に例示的に明示される実施例等又は自明な実施例等を適宜組み合わせた内容も本願の実施形態に含まれる。