【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明に係る枕は、柔軟な薄肉シートから形成されるとともに、流体が所定量充填された密封容器と、上記密封容器の少なくとも下面に積層されるクッション体とを備え、上記流体は、所定の流動性を有するとともに、使用状態において上記密封容器を構成する上下の上記薄肉シートの内面が所定範囲で互いに接触させることができるように、上記流体が充填されている。
【0013】
上記密封容器を、柔軟な薄肉シートから形成するとともに、上記流体を所定量充填して構成することにより、頭部の重量によって上記密封容器内の流体が排除された状態で頭部が保持される。また、頭部の移動によって、上記流体が上記密封容器内で流動させられるため、上記密封容器を変形させるための抵抗、特に弾性的な抵抗はほとんど発生しない。したがって、上記密封容器については、従来のスポンジのような大きな移動抵抗は発生しない。
【0014】
一方、本願発明においては、頭部の重量は、上記密封容器のみによって支持されるのではなく、上記密封容器の下方に配置されたクッション体によっても直接的に支持される。すなわち、上記密封容器は、使用者の頭部の重量によって、上記密封容器を構成する上下の上記薄肉シートの内面が、所定範囲で互いに接触させることができるように、上記流体と上記気体とが充填されている。この構成によって、密封容器内に充填された流体から作用する圧力のみで頭部を保持するのではなく、上記流体及び上記密封容器から作用する圧力(一種の浮力)と、上記密封容器の下方に配置されるクッション体から直接的に作用する圧力の2つの力によって頭部を支持できるように構成されている。
【0015】
上記クッション体として、種々の材料から形成されたものを採用できる。たとえば、従来の枕の材料として使用されるタオルやスポンジを採用できる。また、小豆、蕎麦殻等の粒子状材料を採用できる。上記クッション体は、上記密封容器に充填された流体とは異なり、頭部を移動させるのにクッション体自体を変形させる必要があり、頭部が移動する際に抵抗が発生する。本願発明は、上記流体が充填された密封容器と上記クッション体の双方で頭部の重量を分担支持するように構成することにより、所定の位置で頭部を安定的に保持できるとともに、寝返り等に伴う頭部の移動に必要な抵抗を低減させ、睡眠を阻害することがないように構成している。
【0016】
頭部を載置したときの上記密封容器の変形量と上記クッション体の変形量は、上記密封容器の流体充填可能容量(最大充填可能容量)と、充填された流体の量と、上記密封容器の下方に配置されたクッション体の変形特性と、頭部の大きさ等によって複雑に変化する。このため、これらの多くの特性に基づいて、枕の特性を規定するのは困難である。特に、密封容器の最大充填可能容量に対する上記流体の充填率が高いと、頭部を載置した場合に、上記密封容器を構成する上下の上記薄肉シートの内面を、所定範囲で互いに接触させることができなくなる。また、充填率が同じ密封容器であっても、密封容器の形態によって、上下の上記薄肉シートの内面を接触できる面積が大きく変化する。
【0017】
一方、所定の直径を有する球体を押し付けたときの上記密封容器を構成する上下の上記薄肉シートの内面が接触させられる領域の面積は容易に計測できる。しかも、上記接触させられる領域の面積は、上記クッション体の変形量を直接示すものであり、これを特定することにより頭部の移動抵抗等を規定することが可能となり、枕の特性を特定することも可能となる。なお、球体における球冠の表面積は、球体の高さに比例する。すなわち、クッション体の球体に沈み込んだ高さと、沈み込んだ球体の接触表面積とは比例する。したがって、接触面積の代わりに、上記球体がクッション体に沈み込んだ高さを計測して基準とすることもできる。
【0018】
頭部を枕の上に載置したとき、上記密封容器の上下の内面が接触させられる領域の面積が大きくなるほど、上記クッション体の変形量が大きくなり、上記クッション体によって支持される重量も大きくなる。また、上記密封容器の上下の内面が接触させられる領域の面積が大きくなるほど、頭部を移動させる際の上記クッション体の変形抵抗も大きくなることは明らかである。
【0019】
人の頭部の大きさは、年齢によって異なるものの、それほど広く分布するものではない。このため、特定の半径を有する球体を人の頭部と仮定した場合、各部材(密封容器とクッション体)の変形特性が異なっていても、上記接触させられる領域の面積(あるいは、球冠の高さ)を容易に測定することが可能であり、また、上下の上記薄肉シートの内面の接触可能面積を規定することにより、所要の変形特性を有するクッション体を設定することも可能となる。すなわち、上記接触面積によって、寝心地に関する上記枕の特性を規定することが可能となる。
【0020】
本願発明では、使用状態における、すなわち、頭部を載置した状態で、上記密封容器を構成する上下の上記薄肉シートの内面が、所定範囲で互いに接触させることができるように、上記密封容器に上記流体が充填されている。人の頭部の大きさ及び形態は、人や年齢によって異なるが、上述したように、ほぼある範囲内に収まる。このため、使用状態における上記接触面積の範囲を容易に規定することができる。本願発明では、少なくとも20cmの直径を有する球体を頭部とみなして密封容器の上方から押し付けたとき、上記球体が上記密封容器内の流体を排除して、上記密封容器の上下の上記薄肉シートの内面が所定範囲で接触させられるように構成している。すなわち、頭部とみなした上記球体を枕の上に載置した場合、まず、上記球体によって枕内の流体が排除された分だけ上記球体が上記密封容器内に沈み込む。次に、沈んだ上記球体によって上下の上記薄肉シートの内面が接触させられる。そして、上下の上記薄肉シートの接触面積が増加するように球体が上記クッション体に沈み込む。さらに、上記球体によって排除された流体が、上記密封容器の容量に達した場合、すなわち、上記球体によって上記排除された流体が退避する容量がなくなった場合、上記密封容器内の圧力が高まり、上記球体が密封容器内へそれ以上沈み込むことがなくなる。この変形態様は、上記密封容器の上下に種々の弾性特性を有するクッション等を設けた場合にも同様に生じる。
【0021】
人の頭部の周囲の長さ(頭囲)は、帽子を選ぶ際の基準となるものであり、大人男性で平均570mmであり、また、その分布は、528mmから613mmの範囲にあるとされている。頭部が球形であると仮定すると、上記の頭囲の値から、その直径は平均値が181mmであり、168mm〜195mmの範囲にあることになる。したがって、少なくとも直径20cmの直径を有する球体を、上記密封容器上に載置して押し付けたときに、上記球体が上記密封容器内の流体及び気体を排除して、上記密封容器の上下の内面が所定範囲で接触させられるように設定することにより、ほぼすべての人の頭を載置した場合に、上記密封容器の上下の内面が接触させられることになる。また、上記直径の球体を用いることにより、人の頭部が上記密封容器に載置された場合における、上記接触面積の範囲を規定することが可能となる。なお、子供の頭部のように、頭部の重量や寸法が小さい場合は、上記密封容器内の流体の浮力のみによって頭部の重量が支持される場合(すなわち、上記密封容器の上下の内面が接触しない場合)も考えられるが、本願発明において要求される流動性を確保できる上記流体の比重は、頭部の比重に比べて小さく、また、頭部の全体が上記密封容器内に沈み込むことは考えられないため、考慮する必要はないと考えられる。
【0022】
上記構成を採用することにより、頭部を、上記密封容器から作用する反力と、上記クッション体から作用する反力の双方の力によって支持することが可能となる。なお、上記接触面積は、上記密封容器の下方にクッション体を配置した場合について説明したが、下方のクッション体に加えて、上記密封容器の上方にタオル等の薄いクッション体を配置した場合も、頭部の重量は最終的には、上記密封容器と下方に配置された上記クッション体で支持されることになるため、同様の効果を得られる。
【0023】
上記密封容器を構成する上下の上記薄肉シートの内面の接触面積が小さい場合、上記クッション体から作用する力が小さくなり、頭部を移動させる場合の抵抗力も小さくなる。頭部が移動するのに所要の抵抗を発生させるには、上下の上記薄肉シートの内面が接触させられる領域の面積を、少なくとも上記球体(頭部)の全表面積の20分の1以上となるように構成するのが望ましい。
【0024】
頭部の形が球体であると仮定した場合で全表面積の20分の1によって上下の上記薄肉シート内面が接触させられた場合、上記頭部は直径の約20分1の高さ分だけ、上記クッション体が沈み込むことになる。そして、頭部が転がり移動するには、上記密封容器内の流体移動と、上記クッション体の変形が必要となる。上記密封容器内の流体は容易に流動することができるため、頭部の動きによる変形抵抗はほとんど発生しない。一方、上記クッション体には変形抵抗が生じるため、頭部の移動に所定の抵抗が発生する。また、上記クッション体は流体ではなく、変形に対する固定的な抵抗が存在するため、頭部を所定の位置及び姿勢で保持する保持力が発生する。また、頭部の下面の一部が保持された状態で左右に揺れるように移動することも容易になる。すなわち、船が岩礁で座礁した場合、所定位置を保持しつつ波によって揺り動かされるような状態となる。所定位置における頭部の一種の揺れを許容することにより、所定の安定感を得られるとともに、揺れによって血行を促進する効果を期待でき、また、首等の筋肉を弛緩させて睡眠を促進する効果を期待できる。
【0025】
上記抵抗や保持力は、クッション体の変形特性に応じて変化する。しかしながら、上記クッション体に作用するのは頭部の全重量ではないため、従来のように頭部の全体を上記クッション体に直接支持させた場合に比べて小さくなり、通常の枕に比べて頭部を容易に移動させることができる。このため、寝返り等を容易に行うことも可能になるとともに、所定の位置に頭部を保持する保持力も発生する。
【0026】
頭部(球体と仮定した場合には、直径20cmの球体)の全表面積の20分の1〜3分の1の領域で、より好ましくは、全表面積の10分の1〜3分の1の領域で、上記密封容器の上下内面が接触させられるように構成するのが望ましい。接触面積が、頭部の全表面積の20分の1以下では、頭部の移動抵抗が小さくなって、頭部を安定支持することができなくなる。一方、接触面積が、3分の1以上になると、頭がクッション体に大きく沈み込むため(球体と仮定した頭部の直径の3分の1以上がクッション体に沈み込む)、頭部を移動させるのが困難になる恐れがある。上記の範囲に設定することにより、頭部に適度の移動抵抗を確保することが可能となる。
【0027】
上述した内容は、上記密封容器の下方にクッション体を設けた場合において、密封容器の上下の内面が接触する場合について述べたが、密封容器を変形しない平坦面に載置して、上記密封容器の上下の上記薄肉シートの内面を接触させることができる球体の直径を規定することにより、上記密封容器の特性を示すことができる。後述するように、使用者の好みによって上記クッション体が選択される場合がある。また、密封容器の特性(仕様)を規定しておき、上述した接触面積となるように、クッション体の材料や厚みを設定する場合も考えられる。このため、所定の範囲のクッション体に適合する密封容器の特性を規定する必要がある。
【0028】
たとえば、上記密封容器を、変形しない平坦面に設置して、少なくとも25cmの直径を有する球体を載置したとき、上記球体が上記密封容器内の流体及び気体を排除して、上記密封容器の上下の内面が接触させられるとともに、上記密封容器内の容量に余裕がなくなるように構成することができる。
【0029】
直径25cmの球体は、人間の頭部の約1.5倍の直径となる。上記平坦面及び上記球体は変形しないため、理論的には、密封容器の上下の内面は一点で接触させられることになる。上記基準の密封容器に、枕として構成可能なクッション体を組み合わせた場合、使用状態において、上述した面積の範囲内で、密封容器の上下内面を接触させることが可能となる。
【0030】
密封容器に液体のみ充填した場合、頭部の移動による流動音を発生させるにはかなり大きな流速を発生させる必要がある。特に、密封容器に液体のみ充填した場合は、就寝中の頭部の移動によっては、流動音はほとんど発生しない。本願発明では、上記密封容器内に、所定の流動性を有する液体と気体とを所定の割合で含む流体を充填する。
【0031】
液体と気体とを混合した流体を採用することにより、頭部の移動によって粘度の異なる流体が流動させられることになり、これら流体間に速度差が生じる。また、気体は、液体より比重が小さく、密封容器内の空間の上方内面に沿って流動させられるとともに、頭部の移動によって一種の泡となって、分割集合させられる。このため、液体と気体とを混合して、密封容器に充填することにより、所要の流動音を発生させることができる。
【0032】
就寝中の使用者に与える音の影響についての詳細な効果は実証されていない。しかしながら、海の波音や川のせせらぎ音等の自然の音が、睡眠導入によい効果をもたらすことは周知である。本願発明に係る上記密封容器によって発生する音は、上記波音や川のせせらぎ音に近く、したがって、睡眠導入の促進効果を期待できる。
【0033】
また、就寝中であっても音に対する認知機能は発揮されており、レム睡眠中の寝返り時等においては、音が脳を刺激することが実証されている。また、睡眠中の音の刺激が認知症の予防あるいは治療に効果があるとの研究結果がある。
【0034】
本願発明では、頭部の移動にともなう流動音が発生する。しかも、自己の頭部の移動によって発生する音声であり、また、液体の流動音であるため自然界の水音に近く、睡眠を阻害することはない。
【0035】
上記流体の粘度は、頭部の移動によって大きな抵抗を発生しない範囲であって、気体と混合することにより、所要の流動音を発生させるように設定することができる。たとえば、上記液体の粘度を、0.1〜20mPa・sの範囲に設定することができる。また、液体の粘度を、0.5〜10mPa・sに設定するのが好ましい。液体の粘度が0.1mPa・s未満であると、流動抵抗が小さくなり、発生する流動音も水の流動音と異質のものとなる。また、0.1mPa・s未満の液体は揮発性のものが多くなるため、利用するのは困難である。一方、液体の粘度が、20mPa・sを越えると、流動抵抗が大きくなり、流速も低下するため、流動音が発生しにくくなり、波音やせせらぎ音からは遠くなるため、睡眠促進効果は期待できないと考えられる。なお、20℃における水の粘度は1.0mPa・sであり、波音や川のせせらぎ音に近い流動音を発生させるには、流体として水を採用するか、水の粘度に近い粘度を有する流体を採用するのが好ましい。
【0036】
なお、流動音は、上記流体の粘度等の特性によって変化するため、使用者の好みに合わせて、所要の粘度を有する流体を選択することもできる。たとえば、上記流体として水を採用し、上記気体として空気を採用できる。また、安全性を確保できれば、流動性のある種々の液体状の油脂を採用できる。なお、気体にも粘性があるが、液体と比較すると非常に小さいため、発生する音声に気体の粘度が関係することはほとんどなく、考慮する必要はないと考えられる。
【0037】
上記流動音は、上記液体の流動抵抗と上記気体の流動抵抗(流動速度)の差からも生じるものであり、配合割合によって、流動音が変化する。たとえば、ゴム風船の中に水と空気とを充填した水ヨウヨウのように、配合割合で流動音が変化する。
【0038】
睡眠に適する流動音を発生させるには、上記気体を上記液体に対して、大気圧の下で、容積割合で0.5〜10%の割合で混合したものを採用するのが好ましい。上記範囲に設定することにより、頭部の移動にともなう上記液体の流動によって、波音や川のせせらぎ音に近い音を発生させることができ、睡眠を促進できる流動音を発生することが可能となる。
【0039】
上記混合割合が0.5%未満では、流動音が小さくなりすぎて、睡眠中の人が感知しうる流動音を発生させることができない。一方、10%を越えると、密封容器の変形に上記空気の弾性の影響が出て、寝心地を低下させる恐れがある。
【0040】
砂浜に波が打ち寄せる音が、睡眠を促進させるとの種々の報告がある。砂浜に打ち寄せる波音は、砂浜の砂が流体によって流動させられる際の衝突音を含む。このため、上記密封容器内の上記流体に粒子状固形物を混合することにより、頭部の移動によって粒子間の衝突音を発生させることが可能となり、砂浜に波が打ち寄せる音に近い音を発生させることができる。
【0041】
上記密封容器内に、5〜20容量%の粒子状固形物を含ませるのが好ましい。粒子状固形物の配合割合が5容量%未満の場合、効果のある衝突音を発生させることが困難である。一方、20容量%以上配合すると、流体の流動性が低下させられて、本願発明の上述した作用効果がなくなる恐れがある。
【0042】
上記粒子状固形物は、上記密封容器に充填された液体の比重以下の比重を有するとともに、上記密封容器を平坦面に載置したときの上記密封容器の厚みの5分の1以下の粒径を有するものを採用するのが好ましい。
【0043】
上記粒子状固形物として、液体の比重以下のものを採用することにより、上記粒子状固形物を上記液体に浮遊させた状態で保持することができる。このため、液体の流動にともなって、上記粒子状固形物を効果的に流動させることが可能となり、所要の衝突音を発生させることができる。また、上記粒子状固形物を浮遊させることにより、頭部の下に挟まれることがなくなり、寝心地を低下させる恐れもなくなる。また、粒子状固形物の大きさが大きいと、上記液体の流動を阻害する。また、上記密封容器を平坦面に載置したときの上記密封容器の厚みの5分の1以上の粒径を有するものを採用すると、頭部の移動による流体の流動によって、これら粒子状固形物を流動させるのが困難になる。このため、効果的な衝突音を発生させることができなくなる。
【0044】
上記粒子状固形物は、衝突によって衝突音が発生するものであれば特に限定されることはない。充填された液体より比重の軽い天然あるいは人工の無機物質等を採用することができる。たとえば、液体として水を採用した場合は、水に浮く軽石粒子や水より比重の小さい樹脂粒子を採用できる。また、硬質ゴムや硬質プラスチック等で形成された粒子を採用できる。ゴムやプラスチックは、金属等に比べて衝突の際に生じる音が小さく、また、音の周波数も小さい。このため、睡眠を阻害するような衝突音が発生しにくい。
【0045】
枕には、通常カバーが設けられる。一方、本願発明に係る枕は、密封容器とクッション体とを備えて構成される。このため、上記カバーは、上記密封容器と、上記クッション体とを収容できるように構成するのが望ましい。
【0046】
また、上記密封容器と上記クッション体とを積層して、一の収容部に収容することもできる。さらに、上記密封容器と上記クッション体とを接着等して一体化し、一のカバーに収容できるように構成してもよい。
【0047】
上記密封容器と上記クッション体とを別途形成して、使用に際して重ね合わすこともできる。この場合、たとえば、上記カバーを、上記密封容器を収容して上下面を覆う第1の収容部と、上記第1の収容部の上方又は下方に積層可能に連結される第2の収容部とを備えて構成し、これら収容部を折り重ねるように構成することができる。
【0048】
上記密封容器と上記クッション体とを別途収容できるように構成することにより、使用者の好みに応じた、上記密封容器及びクッション体を選択して、上記カバーに装着できる。たとえば、上記クッション体として、スポンジやタオル等の種々の材料から構成されたものを採用できる。また、種々の厚みのクッション体を採用することが可能となり、頭部の保持高さ等を変更して、最適な寝心地を有する枕を構成できる。
【0049】
少なくとも、上記密封容器の下方にクッション体が配置されるが、上記下方のクッション体に加えて、密封容器の上方にもクッション体を配置することができる。たとえば、上記カバーを、上記第1の収容部又は上記第2の収容部に積層可能に連結される第3の収容部を設けて構成し、この第3の収容部に第2のクッション体を収容して、上記第1又は第2の収容部に対して選択的に重ね合わすことができるように構成することができる。
【0050】
上記構成を採用することにより、上記密封容器の上下にクッション体を設けた構成の枕のみならず、上記密封容器の下方に上記第1のクッション体と上記第2のクッション体を設けた構成の枕、及び第1のクッション体のみ備える枕を構成できる。したがって、使用者の好みに応じて種々の枕を構成することが可能となる。
【0051】
また、上述したカバーを、上記密封容器及び上記クッション体を着脱可能に保持するものとすることにより、上記カバーのみを洗濯することができるため、衛生性にも優れる。
【0052】
さらに、上記カバーを、上記第1の収容部又は上記第2の収容部に積層可能に連結されるとともに、第3のクッション体を収容できる第4の収容部を添えて構成することができる。これにより、3種類のクッション体を組み合わせて種々の順で積層し、使用者の個々の好みに対応することも可能となる。
【0053】
上記密封容器に充填される流体の充填量(最大充填可能容量に対する充填割合)によって、上述した接触させられる領域の面積や、密封容器の高さが変化する。このため、上記密封容器の最大充填容量に対する流体の充填割合を変化させることにより、寝心地を変化させることが可能となり、適用可能範囲を広げることができる。たとえば、上記密封容器を、少なくとも一の縁部において、密封容器を構成する上記薄肉シートの一部を変形させて、上記流体が充填された空間の容量を調節できるように構成することができる。この構成を採用すると、上記密封容器の最大充填容量に対する流体の充填割合を調整することが可能となり、上記密封容器と上記クッション体によって分担保持される頭部重量の割合を変更することが可能となる。このため、寝心地を容易に変更することができる。
【0054】
本願発明に係る枕は、柔軟な薄肉シートから形成されるとともに、所定の流動性を有する流体が充填された密封容器と、上記密封容器の下面に積層されるクッション体とを備えて構成されている。上記枕において、少なくとも頭部によって上記密封容器内の流体が排除されて、上記密封容器を構成する上下の上記薄肉シートの内面が互いに接触させられる。すなわち、本願発明に係る枕の頭部の支持方法においては、頭部重量が上記密封容器と上記クッション体の双方によって分担支持される。この頭部の支持方法によって、従来にない寝心地を得ることができる。
【0055】
特に、上下の上記薄肉シートの内面が接触させられる領域の面積を、上記頭部の全表面積の1/20〜1/3の範囲に設定することにより、頭部の移動に適度の抵抗を発生させ、所要の寝心地を得ることができる。また、所要の寝心地を得るために、上記接触面において、上記頭部の重量の20%〜95%、好ましくは20〜90%を支持するように構成するのが望ましい。20%より小さい場合、密封容器によって支持される割合が高くなため、載置位置を保持する機能が低くなり、十分な安定感を得ることができない。一方、90%を超えると、頭部の移動抵抗が大きくなる。上記範囲に設定することにより、寝返り等における、頭部の移動を阻害することなく、また、頭部を安定的に保持するための抵抗を得ることが可能となる。
【0056】
頭部を冷却することにより、睡眠導入が促進されることが報告されている。上記頭部を冷却するには、頭部から発生する熱をいずれかに逃がす必要がある。また、冷却効果を感じさせるには、頭部を枕に載置した際に、接触冷感を与えるのが効果的である。
【0057】
本願発明では、上記流体として水を用いることができるため、それ自体で冷却効果がある。特に、接触冷感を得ることができるように構成することにより、より睡眠を促進することができる。なお、接触冷感とは、接触した場合に冷たく感じる感覚であり、熱伝導性によるものである。
【0058】
接触冷感を高めるため、上記カバーを、最大熱吸収速度(qーmax)が、0.3以上、好ましくは0.4以上の繊維材料から形成するのが好ましい。上記値が0.3以上のものを採用すると、使用初期にひんやりしていると感じられる。また、上記値が0.4以上に設定することにより、接触初期に明確な冷たさを感じることができるとされている。たとえば、ポリエチレン繊維素材、麻素材等から形成されたカバーを採用するのが好ましい。
【0059】
本願発明では、密封容器に液体が充填されているため、熱容量の大きな液体を採用することにより、水枕と同様に冷却効果を確保することは容易である。一方、上記液体に頭部の熱をいかに移動させることができるかが問題である。上記最大熱吸収速度(qーmax)が大きな材料を採用しても、上記密封容器との間に空気層が形成されるため、顕著な効果は期待できない。
【0060】
上記課題を解決するため、上記カバーが上記密封容器の表面に接する部分に、熱伝導を促進するコーティング層を設けることができる。
【0061】
上記コーティング層は、上記密封容器の表面に密着できる材料から構成するのが好ましい。たとえば、上記最大熱吸収速度(qーmax)が大きな繊維シートに、ポリエチレンやポリアミドから形成されたコーティング層を設けることができる。上記コーティング層を設けることにより、上記カバー材料と上記密封容器の接触面積を増加させることが可能となり、接触冷感が高まるばかりでなく、上記カバーを介して頭部の熱を上記密封容器内の液体に継続的に移動させることが可能となる。このため、接触冷感を持続させることが可能となり、睡眠をより促進することができる。
【0062】
しかも、上記構成を採用することにより、接触冷感を長時間維持することができるばかりでなく、上記密封容器とカバーとを分離して洗濯することができるため、衛生性を高めることが可能となる。