【課題】(10R)−7−アミノ−12−フルオロ−2,10,16−トリメチル−15−オキソ−10,15,16,17−テトラヒドロ−2H−8,4−(メテノ)ピラゾロ[4,3−h][2,5,11]ベンゾオキサジアザシクロテトラデシン−3−カルボニトリル(ロルラチニブ)マレイン酸塩の新たな結晶質形態を提供する。
【解決手段】10.6、12.7、16.2、18.5、および27.8°2θ±0.2°2θからなる群から選択される2θ値の箇所に2つ以上のピークを含む粉末X線回折(PXRD)パターンを有する、ロルラチニブマレイン酸塩水和物の結晶質形態を提供する。
10.6、12.7、16.2、18.5、および27.8°2θ±0.2°2θからなる群から選択される2θ値の箇所に2つ以上のピークを含む粉末X線回折(PXRD)パターンを有する、(10R)−7−アミノ−12−フルオロ−2,10,16−トリメチル−15−オキソ−10,15,16,17−テトラヒドロ−2H−8,4−(メテノ)ピラゾロ[4,3−h][2,5,11]ベンゾオキサジアザシクロテトラデシン−3−カルボニトリル(ロルラチニブ)マレイン酸塩水和物の結晶質形態。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、本発明の実施形態および本明細書に含まれる実施例からなる以下の詳細な説明を参照することで、さらに容易に理解することができる。本明細書で使用する術語は、特定の実施形態について述べる目的のものに過ぎず、限定する意図はないことを理解されたい。本明細書で特に定義しない限り、本明細書で使用する述語は、関連業界で知られているようなその伝統的な意味を示すものであることもさらに理解されたい。
【0026】
本明細書で使用する単数形の「a」、「an」、および「the」は、別段指摘しない限り、複数の言及を包含する。たとえば、「a」substituent(置換基)は、1つまたは複数の置換基を包含する。
【0027】
用語「約」は、当業者が考えて、容認される平均の標準誤差内にある値を有することを意味する。
【0028】
本明細書で使用する用語「実質的に同じ」とは、特定の方法に典型的な、ばらつきが考慮に入れられていることを意味する。たとえば、X線回折ピーク位置に関して、用語「実質的に同じ」とは、ピーク位置および強度の典型的なばらつきが考慮に入れられていることを意味する。当業者なら、ピーク位置(2θ)が、通常は±0.2°程度の多少のばらつきを示すことは理解されよう。さらに、当業者なら、相対ピーク強度は、装置間のばらつき、ならびに結晶化度の程度、好ましい配向、調製試料表面、および当業者に知られている他の要素によるばらつきを示し、定性的な測定値とみなすにとどめるべきであることも理解されよう。同様に、ラマンスペクトル波数(cm
−1)値も、通常は±2cm
−1程度のばらつきを示し、
13Cおよび
19F固体NMRスペクトル(ppm)も、通常は±0.2ppm程度のばらつきを示す。
【0029】
本明細書で使用する用語「結晶質」とは、分子または外表面の配置が規則的に繰り返されていることを意味する。諸結晶質形態は、熱力学的安定性、物理的パラメーター、X線構造、および調製方法に関して相違することがある。
【0030】
用語「非晶質」とは、無秩序な固体状態を指す。
【0031】
本明細書で使用する用語「溶媒和物」とは、表面上に、格子中に、または表面上および格子中に、非共有結合性の分子間力によって拘束された、化学量論量または非化学量論量の溶媒、たとえば、水、酢酸、メタノールなど、またはその混合物を有することを意味する。用語「水和物」は、水を含む溶媒について述べるのに特に使用することができる。
【0032】
本明細書で使用する用語「無水」とは、カールフィッシャー分析などの標準の方法によって割り出される吸着水分を約1%(w/w)未満しか含有しない結晶質形態を意味する。
【0033】
本明細書に記載の本発明は、本明細書で特に開示しない要素の存在なしに適切に実施することができる。したがって、たとえば、本明細書における各場合において、用語「comprising(含む)」、「consisting essentially of(実質的に〜からなる)」、および「consisting of(からなる)」はいずれも、他の2つの用語のいずれかで置き換えることができる。
【0034】
一態様において、本発明は、ロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)を提供する。本明細書で開示するように、形態2は、医薬製剤にして使用するのに好都合である、物理的安定性、製造可能性、および機械特性を有する。本明細書に記載の方法では、実質的に純粋であり、以前に開示されている溶媒和形態を含めたこれ以外の形態を含まない、ロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)が提供される。
【0035】
本明細書に記載のとおり、ロルラチニブマレイン酸塩形態1および形態2は、PXRD、ラマン分光法、
13Cおよび
19F固体NMR分光法によって特徴付けた。フーリエ変換赤外分光法(FTIR)、示差走査熱量測定(DSC)、熱重量分析(TGA)、示差熱分析(DTA)などの追加の技術によって、こうした結晶質形態をさらに特徴付けてもよい。
【0036】
本発明の態様それぞれの一部の実施形態では、ロルラチニブマレイン酸塩は、その粉末X線回折(PXRD)パターンによって特徴付けられる。本発明の態様それぞれの他の実施形態では、ロルラチニブマレイン酸塩は、そのラマンスペクトルによって特徴付けられる。本発明の態様それぞれの他の実施形態では、ロルラチニブマレイン酸塩は、その
13C固体NMRスペクトルによって特徴付けられる。本発明の態様それぞれのさらに他の実施形態では、ロルラチニブマレイン酸塩は、その
19F固体NMRスペクトルによって特徴付けられる。
【0037】
別の実施形態では、ロルラチニブマレイン酸塩は、これらの方法の2つ、3つ、または4つを組み合わせて特徴付けられる。本明細書では、粉末X線回折(PXRD)パターン(2θ)、ラマンスペクトル波数値(cm
−1)、
13C固体NMRスペクトル(ppm)、または
19F固体NMRスペクトル(ppm)の2つ以上を含む典型的な組合せが提供される。2つ、3つ、または4つの技術の他の組合せを使用して、本明細書で開示するロルラチニブマレイン酸塩を一意的に特徴付けてもよいことは理解されよう。
【0038】
第1の態様において、本発明は、ロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)を提供する。一実施形態では、ロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)は、10.6、12.7、16.2、18.5、および27.8°2θ±0.2°2θからなる群から選択される2θ値の箇所に1つまたは複数のピークを含むPXRDパターンを有する。別の実施形態では、ロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)は、10.6、12.7、16.2、18.5、および27.8°2θ±0.2°2θからなる群から選択される2θ値の箇所に2つ以上のピークを含むPXRDパターンを有する。別の実施形態では、ロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)は、10.6、12.7、16.2、18.5、および27.8°2θ±0.2°2θからなる群から選択される2θ値の箇所に3つ以上のピークを含むPXRDパターンを有する。
【0039】
別の実施形態では、形態2は、10.6、18.5、および27.8°2θ±0.2°2θの2θ値の箇所にピークを含むPXRDパターンを有する。一部のこうした実施形態では、形態2は、12.7°2θ±0.2°2θの2θ値の箇所にピークをさらに含むPXRDパターンを有する。他のこうした実施形態では、形態2は、16.2°2θ±0.2°2θの2θ値の箇所にピークをさらに含むPXRDパターンを有する。
【0040】
別の実施形態では、ロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)は、10.6°2θ±0.2°2θの2θ値の箇所にピークを含むPXRDパターンを有する。別の実施形態では、形態2は、18.5°2θ±0.2°2θの2θ値の箇所にピークを含むPXRDパターンを有する。別の実施形態では、形態2は、27.8°2θ±0.2°2θの2θ値の箇所にピークを含むPXRDパターンを有する。別の実施形態では、形態2は、12.7°2θ±0.2°2θの2θ値の箇所にピークを含むPXRDパターンを有する。別の実施形態では、形態2は、16.2°2θ±0.2°2θの2θ値の箇所にピークを含むPXRDパターンを有する。
【0041】
別の実施形態では、ロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)は、10.6、12.7、18.5、および27.8°2θ±0.2°2θの2θ値の箇所にピークを含むPXRDパターンを有する。別の実施形態では、ロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)は、10.6、16.2、18.5、および27.8°2θ±0.2°2θの2θ値の箇所にピークを含むPXRDパターンを有する。さらに別の実施形態では、ロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)は、10.6、12.7、16.2、18.5、および27.8°2θ±0.2°2θの2θ値の箇所にピークを含むPXRDパターンを有する。一部のこうした実施形態では、PXRDパターンは、表1にあるピークからなる群から選択される2θ値の箇所に1つまたは複数の追加ピークをさらに含む。
【0042】
特定の実施形態では、ロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)は、
(a)表1にある°2θ±0.2°2θのピークからなる群から選択される1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、もしくは5つ超のピーク、(b)表1にある°2θ±0.2°2θの特徴的なピークからなる群から選択される1つ、2つ、3つ、4つ、もしくは5つのピーク、または(c)
図1に示すのと実質的に同じ2θ値の箇所にあるピークを含む、PXRDパターンを有する。
【0043】
一実施形態では、ロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)は、808、1307、1553、1571、1672、および2233cm
−1±2cm
−1からなる群から選択される1つまたは複数の波数(cm
−1)値を含むラマンスペクトルを有する。別の実施形態では、ロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)は、808、1307、1553、1571、1672、および2233cm
−1±2cm
−1からなる群から選択される2つ以上の波数(cm
−1)値を含むラマンスペクトルを有する。別の実施形態では、ロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)は、808、1307、1553、1571、1672、および2233cm
−1±2cm
−1からなる群から選択される3つ以上の波数(cm
−1)値を含むラマンスペクトルを有する。別の実施形態では、ロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)は、808、1553、1672、および2233cm
−1±2cm
−1の波数(cm
−1)値を含むラマンスペクトルを有する。一部のこうした実施形態では、形態2は、1307cm
−1±2cm
−1の波数(cm
−1)値の箇所にピークをさらに含むラマンスペクトルを有する。他のこうした実施形態では、形態2は、1571cm
−1±2cm
−1の波数(cm
−1)値の箇所にピークをさらに含むラマンスペクトルを有する。さらなるこうした実施形態では、形態2は、1307および1571cm
−1±2cm
−1の波数(cm
−1)値の箇所にピークをさらに含むラマンスペクトルを有する。
【0044】
別の実施形態では、ロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)は、808cm
−1±2cm
−1の波数(cm
−1)値を含むラマンスペクトルを有する。別の実施形態では、形態2は、1553cm
−1±2cm
−1の波数(cm
−1)値を含むラマンスペクトルを有する。別の実施形態では、形態2は、1672cm
−1±2cm
−1の波数(cm
−1)値を含むラマンスペクトルを有する。さらに別の実施形態では、形態2は、2233cm
−1±2cm
−1の波数(cm
−1)値を含むラマンスペクトルを有する。
【0045】
別の実施形態では、形態2は、808、1307、1553、1672、および2233cm
−1±2cm
−1の波数(cm
−1)値を含むラマンスペクトルを有する。さらに別の実施形態では、形態2は、808、1553、1571、1672、および2233cm
−1±2cm
−1の波数(cm
−1)値を含むラマンスペクトルを有する。別の実施形態では、形態2は、808、1307、1553、1571、1672、および2233cm
−1±2cm
−1の波数(cm
−1)値を含むラマンスペクトルを有する。
【0046】
特定の実施形態では、ロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)は、(a)表2にあるcm
−1±2cm
−1の値からなる群から選択される1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、もしくは5つ超の波数(cm
−1)値、(b)表2にあるcm
−1±2cm
−1の特徴的な値からなる群から選択される1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、もしくは5つ超の波数(cm
−1)値、または(c)
図2に示すのと実質的に同じ波数(cm
−1)値を含む、ラマンスペクトルを有する。
【0047】
一実施形態では、ロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)は、48.7、116.0、131.3、および136.1ppm±0.2ppmからなる群から選択される1つまたは複数の共鳴(ppm)値を含む
13C固体NMRスペクトルを有する。別の実施形態では、ロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)は、48.7、116.0、131.3、および136.1ppm±0.2ppmからなる群から選択される2つ以上の共鳴(ppm)値を含む
13C固体NMRスペクトルを有する。別の実施形態では、ロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)は、48.7、116.0、131.3、および136.1ppm±0.2ppmからなる群から選択される3つ以上の共鳴(ppm)値を含む
13C固体NMRスペクトルを有する。
【0048】
一部の実施形態では、ロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)は、136.1ppm±0.2ppmの共鳴(ppm)値を含む
13C固体NMRスペクトルを有する。別の実施形態では、形態2は、131.3ppm±0.2ppmの共鳴(ppm)値を含む
13C固体NMRスペクトルを有する。別の実施形態では、形態2は、131.3および136.1ppm±0.2ppmの共鳴(ppm)値を含む
13C固体NMRスペクトルを有する。一部のこうした実施形態では、形態2は、48.7ppm±0.2ppmの共鳴(ppm)値をさらに含む
13C固体NMRスペクトルを有する。他のこうした実施形態では、形態2は、116.0ppm±0.2ppmの共鳴(ppm)値をさらに含む
13C固体NMRスペクトルを有する。
【0049】
別の実施形態では、形態2は、48.7、131.3、および136.1ppm±0.2ppmの共鳴(ppm)値を含む
13C固体NMRスペクトルを有する。別の実施形態では、形態2は、116.0、131.3、および136.1ppm±0.2ppmの共鳴(ppm)値を含む
13C固体NMRスペクトルを有する。別の実施形態では、形態2は、48.7、116.0、131.3、および136.1ppm±0.2ppmの共鳴(ppm)値を含む
13C固体NMRスペクトルを有する。
【0050】
特定の実施形態では、ロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)は、(a)表3にあるppm±0.2ppmの値からなる群から選択される1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、もしくは5つ超の共鳴(ppm)値、(b)表3にあるppm±0.2ppmの特徴的な値からなる群から選択される1つ、2つ、3つ、もしくは4つの共鳴(ppm)値、または(c)
図3に示すのと実質的に同じ共鳴(ppm)値を含む、
13C固体NMRスペクトル(ppm)を有する。
【0051】
別の実施形態では、ロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)は、−110.1ppm±0.2ppmの共鳴(ppm)値を含む
19F固体NMRスペクトルを有する。
【0052】
別の実施形態では、形態2は、(a)表4にあるppm±0.2ppmの共鳴(ppm)値、または(b)
図4に示すのと実質的に同じ共鳴(ppm)値を含む、
19F固体NMRスペクトルを有する。
【0053】
別の実施形態では、ロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)は、互いに矛盾しない、上述の実施形態の2つ、3つ、もしくは4つを組み合わせて特徴付けられる。ロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)の一意的な特徴付けに使用することのできる例としての実施形態を以下に示す。
【0054】
一実施形態では、ロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)は、10.6、18.5、および27.8°2θ±0.2°2θの2θ値の箇所にピークを含む粉末X線回折パターンを有する。
【0055】
別の実施形態では、ロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)は、10.6、12.7、18.5、および27.8°2θ±0.2°2θの2θ値の箇所にピークを含む粉末X線回折パターンを有する。
【0056】
別の実施形態では、ロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)は、10.6、16.2、18.5、および27.8°2θ±0.2°2θの2θ値の箇所にピークを含む粉末X線回折パターンを有する。
【0057】
別の実施形態では、ロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)は、10.6、12.7、16.2、18.5、および27.8°2θ±0.2°2θの2θ値の箇所にピークを含む粉末X線回折パターンを有する。
【0058】
別の実施形態では、ロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)は、(a)10.6、18.5、および27.8°2θ±0.2°2θの2θ値の箇所にピークを含む粉末X線回折パターンと、(b)808、1553、1672および2233cm
−1±2cm
−1の波数(cm
−1)値を含むラマンスペクトルとを有する。
【0059】
さらに別の実施形態では、ロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)は、(a)10.6、18.5、および27.8°2θ±0.2°2θの2θ値の箇所にピークを含む粉末X線回折パターンと、(b)136.1ppm±0.2ppmの共鳴(ppm)値を含む
13C固体NMRスペクトルとを有する。
【0060】
別の実施形態では、ロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)は、(a)10.6、18.5、および27.8°2θ±0.2°2θの2θ値の箇所にピークを含む粉末X線回折パターンと、(b)−110.1ppm±0.2ppmの共鳴(ppm)値を含む
19F固体NMRスペクトルとを有する。
【0061】
別の実施形態では、ロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)は、808、1553、1672および2233cm
−1±2cm
−1の波数(cm
−1)値を含むラマンスペクトルを有する。
【0062】
別の実施形態では、ロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)は、808、1307、1553、1672、および2233cm
−1±2cm
−1の波数(cm
−1)値を含むラマンスペクトルを有する。
【0063】
さらに別の実施形態では、ロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)は、808、1553、1571、1672、および2233cm
−1±2cm
−1の波数(cm
−1)値を含むラマンスペクトルを有する。
【0064】
さらに別の実施形態では、ロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)は、808、1307、1553、1571、1672、および2233cm
−1±2cm
−1の波数(cm
−1)値を含むラマンスペクトルを有する。
【0065】
別の実施形態では、ロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)は、(a)808、1553、1672および2233cm
−1±2cm
−1の波数(cm
−1)値を含むラマンスペクトルと、(b)136.1ppm±0.2ppmの共鳴(ppm)値を含む
13C固体NMRスペクトルとを有する。
【0066】
別の実施形態では、ロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)は、(a)808、1553、1672および2233cm
−1±2cm
−1の波数(cm
−1)値を含むラマンスペクトルと、(b)−110.1ppm±0.2ppmの共鳴(ppm)値を含む
19F固体NMRスペクトルとを有する。
【0067】
別の実施形態では、ロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)は、131.3および136.1ppm±0.2ppmの共鳴(ppm)値を含む
13C固体NMRスペクトルを有する。
【0068】
別の実施形態では、ロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)は、48.7、131.3および136.1ppm±0.2ppmの共鳴(ppm)値を含む
13C固体NMRスペクトルを有する。
【0069】
さらなる実施形態では、ロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)は、116.0、131.3、および136.1ppm±0.2ppmの共鳴(ppm)値を含む
13C固体NMRスペクトルを有する。
【0070】
さらに別の実施形態では、ロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)は、48.7、116.0、131.3、および136.1ppm±0.2ppmの共鳴(ppm)値を含む
13C固体NMRスペクトルを有する。
【0071】
別の実施形態では、ロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)は、−110.1ppm±0.2ppmの共鳴(ppm)値を含む
19F固体NMRスペクトルを有する。
【0072】
別の実施形態では、ロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)は、(a)−110.1ppm±0.2ppmの共鳴(ppm)値を含む
19F固体NMRスペクトルと、(b)10.6、18.5、および27.8°2θ±0.2°2θの2θ値の箇所にピークを含む粉末X線回折パターンとを有する。
【0073】
別の実施形態では、ロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)は、(a)−110.1ppm±0.2ppmの共鳴(ppm)値を含む
19F固体NMRスペクトルと、(b)808、1553、1672、および2233cm
−1±2cm
−1の波数(cm
−1)値を含むラマンスペクトルとを有する。
【0074】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の実施形態のいずれかに従って特徴付けられたロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)と、薬学的に許容できる担体または添加剤とを含む医薬組成物を提供する。
【0075】
第2の態様において、本発明は、無水ロルラチニブマレイン酸塩(形態1)を提供する。一実施形態では、無水ロルラチニブマレイン酸塩(形態1)は、9.8、12.2、13.7、および23.1°2θ±0.2°2θからなる群から選択される2θ値の箇所に1つまたは複数のピークを含むPXRDパターンを有する。別の実施形態では、形態1は、9.8、12.2、13.7、および23.1°2θ±0.2°2θからなる群から選択される2θ値の箇所に2つ以上のピークを含むPXRDパターンを有する。別の実施形態では、形態1は、9.8、12.2、13.7、および23.1°2θ±0.2°2θからなる群から選択される2θ値の箇所に3つ以上のピークを含むPXRDパターンを有する。
【0076】
別の実施形態では、形態1は、9.8、12.2、13.7、および23.1°2θ±0.2°2θの2θ値の箇所にピークを含むPXRDパターンを有する。一部のこうした実施形態では、形態は、表5にある2θ値の箇所に1つまたは複数の追加ピークをさらに含むPXRDパターンを有する。
【0077】
別の実施形態では、本発明は、−104.9ppm±0.2ppmの共鳴(ppm)値を含む
19F固体NMRスペクトルを有する、無水ロルラチニブマレイン酸塩の結晶質形態(形態1)を提供する。
【0078】
別の実施形態では、形態1は、9.8、12.2、13.7、および23.1°2θ±0.2°2θからなる群から選択される2θ値の箇所に2つ以上のピークを含むPXRDパターンと、−104.9ppm±0.2ppmの共鳴(ppm)値を含む
19F固体NMRスペクトルとを有する。
【0079】
別の実施形態では、形態1は、9.8、12.2、13.7、および23.1°2θ±0.2°2θからなる群から選択される2θ値の箇所に3つ以上のピークを含むPXRDパターンと、−104.9ppm±0.2ppmの共鳴(ppm)値を含む
19F固体NMRスペクトルとを有する。
【0080】
さらに別の実施形態では、形態1は、9.8、12.2、13.7、および23.1°2θ±0.2°2θの2θ値の箇所にピークを含むPXRDパターンと、−104.9ppm±0.2ppmの共鳴(ppm)値を含む
19F固体NMRスペクトルとを有する。
【0081】
一部の実施形態では、形態1は、表6にあるcm
−1±2cm
−1の値からなる群から選択される1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または5超の波数(cm
−1)値を含むラマンスペクトルを有する。
【0082】
他の実施形態では、形態1は、表7にあるppm±0.2ppmの値からなる群から選択される1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または5超の共鳴(ppm)値を含む
13C固体NMRスペクトル(ppm)を有する。
【0083】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の実施形態のいずれかに従って特徴付けられた無水ロルラチニブマレイン酸塩(形態1)と、薬学的に許容できる担体または添加剤とを含む医薬組成物を提供する。
【0084】
別の態様において、本発明は、哺乳動物において異常な細胞成長を治療する方法であって、哺乳動物に、治療有効量の本明細書に記載の態様または実施形態のいずれかに従うロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)または無水ロルラチニブマレイン酸塩(形態1)を投与することを含む方法を提供する。
【0085】
別の態様において、本発明は、哺乳動物において異常な細胞成長を治療する方法における、本明細書に記載の態様または実施形態のいずれかに従うロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)または無水ロルラチニブマレイン酸塩(形態1)の使用を提供する。
【0086】
さらに別の態様において、本発明は、哺乳動物において異常な細胞成長を治療するための医薬の製造における、本明細書に記載の態様または実施形態のいずれかに従うロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)または無水ロルラチニブマレイン酸塩(形態1)の使用を提供する。
【0087】
本明細書で使用する用語「治療有効量」とは、治療する障害の症状の1つまたは複数をある程度緩和する、投与される化合物の量を指す。がんの治療に関して、治療有効量とは、(1)腫瘍の大きさを縮小する、(2)腫瘍転移を阻害する(すなわち、ある程度緩慢にする、好ましくは阻止する)、(3)腫瘍成長もしくは腫瘍侵襲性をある程度阻害する(すなわち、ある程度緩慢にする、好ましくは阻止する)、および/または(4)がんと関連する1つまたは複数の徴候もしくは症状をある程度緩和する(もしくは解消することが好ましい)効果を有する量を指す。
【0088】
本明細書で使用する「哺乳動物」とは、ヒトまたは動物対象を指す。ある特定の好ましい実施形態では、哺乳動物は、ヒトである。
【0089】
本明細書で使用する用語「治療する」とは、別段指摘しない限り、このような用語が適用される障害もしくは状態、またはそのような障害もしくは状態の1つまたは複数の症状を、後退させ、軽減し、進行を阻害する、または予防することを意味する。本明細書で使用する用語「治療」とは、別段指摘しない限り、治療する行為を指し、「治療する」は、直前で定義したとおりである。用語「治療する」は、対象のアジュバントおよびネオアジュバント治療も包含する。
【0090】
本明細書で使用する「異常な細胞増殖」とは、別段指摘しない限り、正常な調節機序と無関係(たとえば、接触阻害の欠失)である細胞増殖を指す。異常な細胞増殖は、良性(がん性でない)場合も、悪性(がん性)である場合もある。本明細書で提供する方法の頻出する実施形態では、異常な細胞増殖は、がんである。
【0091】
本明細書で使用する「がん」とは、異常な細胞増殖によって引き起こされた、悪性かつ/または侵襲性のあらゆる増殖または腫瘍を指す。用語「がん」は、限定はしないが、身体の特定の部位に端を発する原発がん、がんが始まった場所から身体の他の部分に広がってしまった転移がん、寛解後の元の原発がんからの再発、および以前に後のがんとは異なるタイプのがんであった病歴を有する者における新たな原発がんである二次原発がんを包含する。
【0092】
一部の実施形態では、異常な細胞増殖は、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)によって媒介されるがんである。一部のこうした実施形態では、ALKは、遺伝子変化したALKである。他の実施形態では、異常な細胞増殖は、ROS1キナーゼによって媒介されるがんである。一部のこうした実施形態では、ROS1キナーゼは、遺伝子変化したROS1キナーゼである。頻出する実施形態では、異常な細胞増殖は、がん、詳細にはNSCLCである。一部のこうした実施形態では、NSCLCは、ALKまたはROS1によって媒介される。特定の実施形態では、がんは、遺伝子変化したALKまたは遺伝子変化したROS1によって媒介されるNSCLCである。
【0093】
本発明の医薬組成物は、たとえば、錠剤、カプセル剤、丸剤、粉末、持効性製剤、溶液、懸濁液として経口投与に、滅菌溶液、懸濁液、もしくは乳濁液として非経口注射に、軟膏もしくはクリームとして局所投与に、または坐剤として直腸投与に適する形態にすることができる。医薬組成物は、正確な投薬量を1回だけ投与するのに適する単位剤形にしてもよい。医薬組成物は、従来の医薬担体または添加剤と、活性成分としての本発明による化合物とを含むことになる。加えて、医薬組成物は、他の薬用品または医薬品、担体、佐剤などを含んでもよい。
【0094】
典型的な非経口投与形態としては、活性化合物を滅菌水溶液、たとえば、プロピレングリコールまたはデキストロース水溶液に溶解または懸濁させた溶液または懸濁液が挙げられる。このような剤形は、所望であれば、適切に緩衝されていてもよい。
【0095】
適切な医薬担体としては、不活性希釈剤または賦形剤、水、および種々の有機溶媒が挙げられる。医薬組成物は、所望であれば、着香剤、結合剤、添加剤などの追加の成分を含有してもよい。たとえば、経口投与については、クエン酸などの種々の添加剤を含有する錠剤を、デンプン、アルギン酸、ある特定の複合シリケートなどの種々の崩壊剤、およびスクロース、ゼラチン、アカシアなどの結合剤と共に用いることができる。加えて、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、タルクなどの滑沢剤は、打錠の用途に多くの場合有用である。同様のタイプの固体組成物を、軟および硬充填ゼラチンカプセルの中に用いることもできる。好ましい材料としては、ラクトースまたは乳糖、および高分子量ポリエチレングリコールが挙げられる。経口投与に水性懸濁液またはエリキシルが所望される場合、その中の活性化合物は、種々の甘味剤または着香剤、着色物質または色素、および、所望であれば、乳化剤または懸濁化剤、ならびに水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン、またはこれらの組合せなどの希釈剤と混ぜ合わされていてもよい。
【0096】
特定の量の活性化合物で種々の医薬組成物を調製する方法は、当業者に知られており、または明白となる。たとえば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、ペンシルヴェニア州イーストン、第15版(1975)を参照されたい。
【実施例】
【0097】
以下に示す実施例および調製例によって、本発明の詳細な態様および実施形態をさらに説明し、例示する。本発明の範囲は、以下の実施例の範囲によって限定されないことを理解されたい。
【0098】
一般法1.粉末X線回折(PXRD)
図1のPXRDデータは、以下の一般プロトコールに従って収集した。
【0099】
計測方法:
PXRDパターンは、自動試料交換器、θ−θゴニオメーター、自動ビーム発散スリット、およびPSD Vantec−1検出器を備えた、Bruker−AXS Ltd.のD4粉末X線回折計で収集した。X線管ボルト数およびアンペア数は、それぞれ40kVおよび40mAに設定した。データ収集当日に、回折計を最終調整し、コランダム基準材料を使用して較正チェックを行った。データは、活性医薬成分(API)と製剤された錠剤試料の両方について、波長を1.541ÅとするCuΚ1で、0.018°のステップサイズおよび11.3時間の走査時間を使用し、2.0〜65.0°2θを走査して収集した。API試料は、低バックグラウンドキャビティー保持器に粉末を入れて調製した。試料粉末をガラススライドで押し付けて、試料の高さが確実に適正になるようにし、収集する間回転させた。錠剤試料は、切断にかけた。錠剤表面を、メスを使用してかき取って、滑らかで一様な表面を得た。錠剤をblue tackで固定されたPXRDウェーハに載せ、X線透過性フィルムで覆った後、API試料と同じ方法を使用してデータを収集した。データは、Bruker DIFFRACソフトウェアを使用して収集し、DIFFRAC EVAソフトウェア(バージョン3.1)によって分析を行った。
【0100】
ピーク選択方法
収集されたPXRDパターンを、Bruker DIFFRAC EVAソフトウェア、バージョン3.1にインポートした。測定されたPXRDパターンを、内部基準を有する試料のパターンと重ね合わせ、APIの絶対ピーク位置を求めた。使用した内部基準は、コランダムであり、コランダムの絶対ピーク位置は、使用される標準物質についてのCertificate of Analysis(NIST SRM 676)に示されている、コランダムセルパラメーターに基づき算出した。APIのすべてのピークを表に抽出し、1つのd.p.に対する正確なピーク位置を、相対ピーク強度と共に示した。
【0101】
ピーク位置の±0.2°2θの典型的な誤差が、このデータに適用される。この測定に伴う軽微な誤差は、(a)試料調製(たとえば、試料の高さ)、(b)計器、(c)較正、(d)操作者(ピーク位置決定の際に存在する誤差を含める)、および(e)材料の性質(たとえば、好ましい配向および透明性の誤差)を含めた様々な要素の結果として生じうる。したがって、ピークは、±0.2°2θの典型的な関連誤差を有するとみなされる。一覧では、2つのピークが部分的に重なる(±0.2°2θ)とみなされる場合、強度が小さい方のピークを掲載項目から除外してある。強度のより大きい近傍ピークのショルダーとして存在するピークも、ピーク一覧から除外してある。ショルダーは、近傍ピークの位置から0.2°2θを超える場合もあるが、近傍ピークと識別可能であるとはみなされない。
【0102】
一般法2.ラマン分光法
図2のラマンスペクトルデータは、以下の一般プロトコールに従って収集した。
【0103】
計測方法:
ロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)のラマンスペクトルは、Vertex70 FTIR分光計に取り付けたRAM II FTラマンモジュールを使用して収集した。この計器は、1064nm Nd:YAGレーザーと液体窒素で冷却されたゲルマニウム検出器とを備えている。データ取得の前に、白色光源、ポリスチレンおよびナフタレン基準物質を使用して、計器を運転させ、較正を検証した。25mgA試作品錠剤およびロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)のラマンスペクトルも、同じ取得条件下で取得した。
【0104】
試料は、切り詰めたNMR管(直径5mm)で分析し、NMR管をスペクトル収集の間回転させた。以下のパラメーターを使用して、回転体の中の試料からの後方散乱によるラマンシグナルを最適化し、スペクトルを取得した。
レーザー出力:500mW
スペクトル分解:2cm
−1
収集範囲:約4000〜50cm
−1
走査数:512
アポダイゼーション関数:Blackmann−Harris 4項
この実験設定におけるピーク位置のばらつきは、±2cm
−1内である。
【0105】
ピーク選択方法
ピーク選択の前に、ストークス散乱ラマンシグナルの強度スケールを1.0に正規化した。次いで、GRAMS/AI v.9.1ソフトウェア(Thermo Fisher Scientific)においてピーク選択機能を使用し、閾値を0.05に設定して、ピーク位置を特定した。
【0106】
相対強度が1.0〜0.51の間、0.50〜0.26の間、および0.25以下であるピークを、強、中、および弱とそれぞれ分類した。
【0107】
FTラマンと分散ラマンは、類似した技術であるので、計器較正が適切であると仮定すれば、FTラマンスペクトルについて本明細書で報告するピーク位置は、分散ラマン測定を使用して観察されるであろうピーク位置と一致することが予想される。
【0108】
一般法3.固体NMR(ssNMR)分光法:
図3、4、7および8の炭素CPMASおよびフッ素MAS ssNMRデータは、以下の一般プロトコールに従って収集した。
【0109】
計測方法:
19F固体NMR(ssNMR)分析は、Bruker−BioSpin Avance III HD 400MHz(1H振動数)NMR分光計の中に配置されたBruker−BioSpin交差偏波マジック角スピン(CPMAS)プローブを用い、20℃で行った。フッ素ssNMRスペクトルは、プロトン脱カップリング直線偏波マジック角スピン(MAS)実験を使用して収集した。スペクトルを取得する間、およそ60kHzの位相変調されたプロトンデカップリング場を適用した。形態1スペクトルは、20.0kHzのMASおよび60秒のリサイクルディレイを使用して、8回の走査について収集した。形態2スペクトルは、14.0kHzのMASおよび150秒のリサイクルディレイを使用して、8回の走査について収集した。0/50体積/体積のトリフルオロ酢酸および水からなる外部標準でのプロトン脱カップリング直線偏波フッ素実験を使用し、その共鳴を−76.54ppmに設定したフッ素化学シフトスケールを基準とした。
【0110】
形態1に対する炭素固体NMR(ssNMR)分析は、Varian VNMRS 400MHz(1H振動数)NMR分光計の中に配置されたVarian CPMASプローブを用い、周囲温度および圧力で行った。炭素ssNMRスペクトルは、TOSSスピン側波帯抑圧を用いたCPMAS実験を使用して収集した。スペクトルを取得する間、およそ80kHzの位相変調されたプロトンデカップリング場を適用した。形態1スペクトルは、8.0kHzのMAS、5msの交差偏波接触時間、および5秒のリサイクルディレイを使用して、5760回の走査について収集した。結晶質アダマンタンの外部標準に対するプロトン脱カップリング炭素CPMAS実験を使用し、その低磁場共鳴を38.5ppm(無希釈TMSから求めた)に設定した炭素化学シフトスケールを基準とした。
【0111】
形態2に対する炭素固体NMR(ssNMR)分析は、Bruker−BioSpin Avance III HD 400MHz(1H振動数)NMR分光計の中に配置されたBruker−BioSpin CPMASプローブを用い、20℃で行った。炭素ssNMRスペクトルは、TOSSスピン側波帯抑圧を用いたプロトン脱カップリングCPMAS実験を使用して収集した。スペクトルを取得する間、およそ75kHzの位相変調されたプロトンデカップリング場を適用した。形態2スペクトルは、10.0kHzのMAS、7msの交差偏波接触時間、および10.5秒のリサイクルディレイを使用して、5269回の走査について収集した。結晶質アダマンタンの外部標準に対するプロトン脱カップリング炭素CPMAS実験を使用し、その低磁場共鳴を38.5ppm(無希釈TMSから求めた)に設定した炭素化学シフトスケールを基準とした。
【0112】
ピーク選択方法:
Bruker−BioSpin TopSpinバージョン3.2ソフトウェアを使用して、自動ピーク選択を行った。一般に、相対強度5%の閾値を使用して、ピークを予備選択した。自動化によるピーク選択の出力を目視によって確認して妥当性を保証し、必要なら、調整を手作業で行った。
【0113】
本明細書では特定の
13Cおよび
19F固体NMRピーク値を報告するとはいえ、そうしたピーク値には、計器、試料、および試料調製の違いによる較差が存在する。これは、ピーク値には元来ばらつきがあるため、固体NMRの技術においてはありふれたことである。
13Cおよび
19F化学シフトのx軸値についての典型的なばらつきは、結晶質固体ではだいたいプラスマイナス0.2ppmである。本明細書で報告する固体NMRピーク高さは、相対強度である。固体NMR強度は、実験パラメーターの実際の設定および試料の熱履歴に応じて一様でないことがある。
【0114】
選択される特徴的な炭素ピークは、狭く、高い強度を有し、分子における単一の炭素に属する。形態2の
13Cおよび
19Fスペクトルを、それぞれ
図3および4に示す。
【0115】
(実施例1)
(10R)−7−アミノ−12−フルオロ−2,10,16−トリメチル−15−オキソ−10,15,16,17−テトラヒドロ−2H−8,4−(メテノ)ピラゾロ[4,3−h][2,5,11]ベンゾオキサジアザシクロテトラデシン−3−カルボニトリル(PF−06463922)マレイン酸塩水和物(形態2)の調製
【0116】
【化2】
磁気撹拌子を含む500mLのガラス瓶に、マレイン酸(1.20当量、3.12g)、EtOAc(10.0mL/g、90.0mL)、および水(4当量、1.60mL)を装入した。内容物を室温において数分間撹拌した。透明なマレイン酸溶液をEasyMax定量供給ポンプに装入した。
【0117】
オーバーヘッド撹拌機、温度プローブ、および定量供給ポンプを備えた100mLのEasyMax反応器に、ロルラチニブ遊離塩基(9.00g、1.00当量)およびEtOAc(5.0mL/g、45.0mL)を装入し、懸濁液を70℃に加熱した(Tj)。反応器に、追加の10mLのEtOAc(10.0mL、1.11mL/g)を装入して、合計EtOAc体積を55.0mL(6.11mL/g)とした。固体が残らず、70℃で透明な溶液が持続したことが目視によって確認されたなら、マレイン酸溶液を90分かけて定量供給した(dosed)(1mL/分)。45.0mLが定量供給された後、ジャケット温度を60℃に下げ、定量供給を継続した。反応器を18時間60°(Tj)に保ち、次いで33分かけて10℃に冷却した(1.5K/分)。
【0118】
Whatman濾紙で内側が覆われた65mLの中多孔度焼結ガラス漏斗で濾過して、固体を単離した。母液を反応器に戻し、450rpmで撹拌して、反応器に接着した固体を除去した。数分後、反応器中のスラリーを、濾過ケークの上に空けた。濾過ケークから母液を引き、減圧を解除し、新鮮な無水EtOAc(15.0mL)を濾過ケーク上に注いだ。スパチュラを使用して濾過ケークを手作業で撹拌し、次いで再び減圧下に置き、EtOAcすすぎ液を引いた。生成物ケークを清潔な結晶皿で覆い、フィルターを介して空気を吸い込むことにより、3日間乾燥した(11.1g、収率92.7%)。
【0119】
ロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)の特徴付け
PXRDデータ
図1に、一般法1に従って収集した、ロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)のPXRDデータを示す。回折角度2θ°(°2θ)±0.2°2θの箇所のPXRDピークおよびその相対強度の一覧を表1に示す。形態2の弁別になる特徴的なPXRDピークをアステリスク(*)で示す。
【0120】
【表1】
【0121】
FT−ラマンデータ
図2に、一般法2に従って収集した、ロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)のFT−ラマンスペクトルを示す。FT−ラマンピーク(cm
−1)および定性的な強度の一覧を、表2に、cm
−1±2cm
−1で示す。形態2の弁別になる特徴的なFT−ラマンピーク(cm
−1)をアステリスク(*)で示す。正規化したピーク強度を、W=弱、M=中、S=強として示す。
【0122】
【表2-1】
【0123】
【表2-2】
【0124】
ssNMRデータ
図3に、一般法3に従って収集した、ロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)の炭素CPMASスペクトルを示す。化学シフトは、百万分率(ppm)で示し、29.5ppmでの固相アダマンタン外部試料を基準としている。形態2のssNMR
13C化学シフト(ppm)の一覧を、表3にppm±0.2ppmで示す。形態2の弁別になる特徴的なssNMR
13C化学シフト(ppm)をアステリスク(*)で示す。
【0125】
【表3】
【0126】
図4に、一般法3に従って収集した、ロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)のフッ素MAS(ssNMR)スペクトルを示す。化学シフトは、−76.54ppmでのトリフルオロ酢酸(H
2O中50%V/V)外部試料を基準とした百万分率(ppm)で示す。
【0127】
形態2のssNMR
19F化学シフト(ppm)を、表4にppm±0.2ppmで示す。形態2の弁別になる特徴的なssNMR
19F化学シフト(ppm)をアステリスク(*)で示す。
【0128】
【表4】
【0129】
(実施例2)
無水(10R)−7−アミノ−12−フルオロ−2,10,16−トリメチル−15−オキソ−10,15,16,17−テトラヒドロ−2H−8,4−(メテノ)ピラゾロ[4,3−h][2,5,11]ベンゾオキサジアザシクロテトラデシン−3−カルボニトリル(PF−06463922)マレイン酸塩(形態1)の調製
【0130】
【化3】
15〜25℃の反応器において、ロルラチニブ酢酸溶媒和物(0.70kg、1.5モル)、酢酸エチル(8.5L)、および工程用水(1.4L)を混ぜ合わせた。水酸化ナトリウムの1M溶液(1.65L、1.65モル)を、およそ50分かけて、制御された速度で装入した。反応混合物を15〜25℃で少なくとも15分間撹拌し、次いで35〜45℃に加熱した。35〜45℃に達した後、底の水層を分離して除き、上部の有機層を40±5℃の工程用水(3.5L)で洗浄した。底の水性洗液層を分離して除去した。有機層を含有する生成物を、常圧蒸留によって、およそ3Lの体積の体積に濃縮し、酢酸エチル(7L)で処理し、さらに濃縮して、およそ4Lの体積の溶液とした。生成物溶液を45〜55℃に調整し、酢酸エチル(7L)に溶解させたマレイン酸(0.21kg、1.8モル)の溶液を、内部温度を50±5℃の間に保ちながら、10〜15分かけて装入した。混合物を55〜65℃に調整し、およそ1時間撹拌した。スラリーを、少なくとも1時間かけて、10〜20℃に徐々に冷却した。生成物を濾過し、酢酸エチル(1.5L)で洗浄し、次いで45〜55℃で減圧乾燥した。合計0.638kg(理論の82%)の無水ロルラチニブマレイン酸塩(形態1)を回収した。
【0131】
無水ロルラチニブマレイン酸塩(形態1)の特徴付け
PXRDデータ
図5に、一般法1に従って収集した、無水ロルラチニブマレイン酸塩(形態1)のPXRDデータを示す。回折角度2θ°(°2θ)±0.2°2θの箇所のPXRDピークおよびその相対強度の一覧を表5に示す。形態1の弁別になる特徴的なPXRDピークをアステリスク(*)で示す。
【0132】
【表5】
【0133】
FT−ラマンデータ
図6に、一般法2に従って収集した、無水ロルラチニブマレイン酸塩(形態1)のFT−ラマンスペクトルを示す。FT−ラマンピーク(cm
−1)および定性的な強度の一覧を、表6に、cm
−1±2cm
−1で示す。正規化したピーク強度を、W=弱、M=中、S=強として示す。
【0134】
【表6】
【0135】
ssNMRデータ
図7に、一般法3に従って収集した、無水ロルラチニブマレイン酸塩(形態1)の炭素CPMASスペクトルを示す。化学シフトは、百万分率(ppm)で示し、29.5ppmでの固相アダマンタン外部試料を基準としている。形態1のssNMR
13C化学シフト(ppm)の一覧を、表7にppm±0.2ppmで示す。
【0136】
【表7】
【0137】
図8に、一般法3に従って収集した、無水ロルラチニブマレイン酸塩(形態1)のフッ素MAS(ssNMR)スペクトルを示す。化学シフトは、−76.54ppmでのトリフルオロ酢酸(H
2O中50%V/V)外部試料を基準とした百万分率(ppm)で示す。
【0138】
形態1についてのssNMR
19F化学シフト(ppm)を、表8にppm±0.2ppmで示す。形態1の弁別になる特徴的なssNMR
19F化学シフト(ppm)をアステリスク(*)で示す。
【0139】
【表8】
【0140】
(実施例3)
ロルラチニブマレイン酸塩(形態2)の代表的な医薬品製剤
ロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)を含む即時放出(IR)錠剤は、打錠製剤に一般に使用される従来の添加剤を使用して調製することができる。錠剤は通常、w/wベースで1〜30%のロルラチニブを含有する。微結晶セルロース、リン酸水素カルシウム無水物(DCP)、および/またはラクトース水和物を錠剤賦形剤として使用することができ、デンプングリコール酸ナトリウムを崩壊剤として使用することができる。ステアリン酸マグネシウムは、滑沢剤として使用することができる。
【0141】
リン酸水素カルシウム無水物(DCP)を錠剤賦形剤として含んでいる、形態2の典型的なIR錠剤(DCP錠剤)処方を表9に示す。
【0142】
【表9】
【0143】
ロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)のIR錠剤は、圧縮の前に乾式造粒工程を使用して製造することができる。この工程では、結晶質材料を、標準範囲内にあるいくらかの割合の添加剤と混和し、混和物を、ローラコンパクタを使用して乾式造粒する。顆粒は、この工程の一環として粉砕してもよい。顆粒を、いずれの添加剤(たとえば、ステアリン酸マグネシウム)の残りとも混和してから、圧縮する。
【0144】
図9に、10%w/wのロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)を含む試作品DCP錠剤のPXRDパターンを示す。
図10に、10%w/wのロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)を含む試作品DCP錠剤のFT−ラマンスペクトルを示す。
【0145】
(実施例4)
比較による熱力学的安定性
無水ロルラチニブマレイン酸塩(形態1)およびロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)の熱力学的安定性を、一定範囲の水分活性および温度条件下でのスラリー実験を用いて評価した。形態1の懸濁液を、アセトニトリル/水およびメタノール/水溶媒系において、水分活性(Aw)を0.1〜0.9の範囲とし、5℃、室温、および40℃の3通りの異なる温度で、2週間平衡化した。2週間後、平衡状態の固体を単離し、固体形態をPXRDによって評価した。
【0146】
表10にまとめた結果から、無水ロルラチニブマレイン酸塩(形態1)APIが、0.1〜0.9の範囲の水分活性かつ5℃〜40℃の温度で、熱力学的により安定したロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)に変換されることが明らかである。最小限の量の水(Aw=0.1)でさえ、形態1を形態2に変換させるのに十分であった。無水条件(Aw=0)においてのみ、水和物形態2への変換が検出されなかった。メタノール/水では、Aw=0.1および0.3、かつ40℃の温度で、溶媒和材料が観察された。
【0147】
【表10】
【0148】
表11に示すとおり、形態2の熱力学的安定性を、様々な溶媒系において、5℃〜40℃の温度でさらに評価した。示した条件下で形態2の懸濁液を調製し、2週間平衡化した。得られた固体をPXRDによって分析した。いずれの条件下でも、形態1への変換は検出されなかった。エタノールおよびメタノール中での新たな材料の生成は、溶媒和形態になると考えられる。形態2は、広範な水分活性および溶媒条件下で熱力学的に安定することが明らかになった。
【0149】
【表11】
【0150】
(実施例5)
形態1 APIおよび医薬品の固体状態での物理的安定性
無水ロルラチニブマレイン酸塩(形態1)APIの物理的安定性を、様々な温度および相対湿度パーセント(%RH)で調べた。試料を、25℃/60%RHおよび40℃/75%RHの条件下、乾燥保存なしで保ち、3か月後、得られる形態をPXRD法によって確認した。いくつもの新たなPXRDピークが観察され、それらのピークは、形態2と一致した。PXRDによれば、40°/75%RHで貯蔵した材料は、こうした条件下で、ほぼ完全に形態2への変換が起きた。周囲温度かつ75%RHおよび90%RHの高めの湿度レベルで貯蔵した形態1は、6か月後、完全に形態2への変換が起きた。
【0151】
【表12】
【0152】
無水ロルラチニブマレイン酸塩(形態1)は、ロルラチニブマレイン酸塩水和物(形態2)に関して準安定であったが、形態1の代表的な医薬品製剤は、WO2014/207606で開示されているロルラチニブ遊離塩基の酢酸溶媒和物に比べて優れた物理的安定性を示した。
【0153】
形態1およびロルラチニブ酢酸溶媒和物の医薬品としての物理的安定性を、様々な条件下で調べた。結果を表13に要約する。固相不純物の性質は、研究したが十分に特徴付けられなかった。
【0154】
【表13】
【0155】
形態1の種々の添加剤との2種および3種混合物を50℃/75%RHで貯蔵し、固体形態変化を、PXRDを使用してモニターした。ステアリン酸を含有する混合物は、1週間後に形態変化が起き、ステアリン酸マグネシウムを含有する混合物は、2週間後に形態変化を示した。
【0156】
【表14】
【0157】
前記事項には、本発明の基本的な態様から逸脱することなく、変更を加えてもよい。本発明について、1つまたは複数の特定の実施形態に関連してかなり詳細に述べてきたが、当業者なら、本出願で特に開示した実施形態には変更を加えることができ、そうした修飾形態および改良形態も、本発明の範囲および真意の範囲内であると認識されよう。
9.8、12.2 、13.7、および23.1°2θ±0.2°2θからなる群から選択される2θ値の箇所に2つ以上のピークを含む粉末X線回折(PXRD)パターンを有する、無水(10R)−7−アミノ−12−フルオロ−2,10,16−トリメチル−15−オキソ−10,15,16,17−テトラヒドロ−2H−8,4−(メテノ)ピラゾロ[4,3−h][2,5,11]ベンゾオキサジアザシクロテトラデシン−3−カルボニトリル(ロルラチニブ)マレイン酸塩(形態1)の結晶質形態。
9.8、12.2 、13.7、および23.1°2θ±0.2°2θからなる群から選択される2θ値の箇所に3つ以上のピークを含む粉末X線回折(PXRD)パターンを有する、請求項1に記載の結晶質形態。