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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-152314(P2021-152314A)
(43)【公開日】2021年9月30日
(54)【発明の名称】セグメント継手及びセグメント
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/04 20060101AFI20210903BHJP
【FI】
   E21D11/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2020-53653(P2020-53653)
(22)【出願日】2020年3月25日
(71)【出願人】
【識別番号】593064881
【氏名又は名称】メトロ開発株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】519121027
【氏名又は名称】岩崎 吉孝
(71)【出願人】
【識別番号】000228660
【氏名又は名称】日本コンクリート工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390004776
【氏名又は名称】ジヨイント工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520103757
【氏名又は名称】有限会社幸和
(74)【代理人】
【識別番号】110000431
【氏名又は名称】特許業務法人高橋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 吉孝
(72)【発明者】
【氏名】藤木 育雄
(72)【発明者】
【氏名】小泉 淳
(72)【発明者】
【氏名】水上 博之
(72)【発明者】
【氏名】津田 達也
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155GC02
2D155GC04
2D155GD05
(57)【要約】
【課題】セグメント同士の接続が容易で、外力が作用しても容易に解除されず、しかも、形状が複雑ではなく、小型・軽量化を実現出来るセグメント継手と、セグメントの提供。
【解決手段】本発明のセグメント継手(100)は、雄継手本体部(1)は雄継手先端部(3)及びアンカー部(4)を有し、雄継手先端部(3)は、本体部(1)の長手方向に直交する一方向が雄継手凸部(3A)を形成し、他方は雄継手凹部(3B)を形成し、雌継手本体部(2)は雌継手先端部(5)及びアンカー部(6)を有し、雌継手先端部(5)における雄継手先端部(3)と相補的な形状の内部空間(5S)の本体部(2)の長手方向に直交する一方が雌継手凹部(5A)を形成し、他方は雌継手凸部(5B)を形成し、雌継手凸部(5B)の縁部は雄継手凹部(3B)の肩部と相補的な形状であり、雌継手凹部(5A)の縁部は雄継手凸部(3A)の肩部と相補的な形状である。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄継手と雌継手から構成され、
雄継手は雄継手本体部を有し、雄継手本体部は雌継手と係合する雄継手先端部及びその反対側端部に設けられてセグメントに埋設される雄継手アンカー部を有し、
雄継手先端部は、雄継手本体部の長手方向に対して直交する方向の何れか一方が突出して雄継手凸部を形成し、他方は窪んで雄継手凹部を形成し、雄継手凸部及び雄継手凹部の雄継手アンカー部側縁部は肩部を形成しており、
雌継手は雌継手本体部を有し、雌継手本体部は雄継手と係合する雌継手先端部及びその反対側端部に設けられてセグメントに埋設される雌継手アンカー部を有しており、
雌継手先端部は雄継手先端部と相補的な形状の内部空間を備え、当該内部空間の雌継手本体部の長手方向に対して直交する方向の何れか一方が窪んで雌継手凹部を形成し、他方には突出した雌継手凸部を形成し、雌継手凸部の雌継手アンカー部から離隔した側の縁部は前記雄継手凹部の肩部と相補的な形状であり、雌継手凹部の雌継手アンカー部から離隔した側の縁部は前記雄継手凸部の肩部と相補的な形状であることを特徴とするセグメント継手。
【請求項2】
雄継手及び雌継手はセグメントの半径方向外方の領域に埋設され、
雄継手本体部の長手方向に対して直交する方向であって、雄継手が埋設されるセグメントの半径方向外方が突出して雄継手凸部が形成され、
雌継手本体部の長手方向に対して直交する方向であって、雌継手が埋設されるセグメントの半径方向外方が窪んで雌継手凹部が形成される請求項1のセグメント継手。
【請求項3】
雄継手及び雌継手はセグメントの半径方向内方の領域に埋設され、
雄継手本体部の長手方向に対して直交する方向であって、雄継手が埋設されるセグメントの半径方向内方が突出して雄継手凸部が形成され、
雌継手本体部の長手方向に対して直交する方向であって、雌継手が埋設されるセグメントの半径方向内方が窪んで雌継手凹部が形成されている請求項1、2の何れかのセグメント継手。
【請求項4】
雄継手凹部の肩部と雌継手凸部の雌継手アンカー部から離隔した側の縁部はテーパー部を構成しており、当該テーパー部は雄継手及び雌継手に作用する外力の方向に対して傾斜している請求項1〜3の何れか1項のセグメント継手。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項のセグメント継手を周方向端面に埋設しており、
雌継手を埋設したセグメントの周方向端面から雌継手先端部が突出しており、セグメントを接続した際に隣接するセグメントの境界に雄継手先端部と係合した雌継手先端部が位置することを特徴とするセグメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル覆工等で用いられるセグメントを接続する技術であって、より詳細には、トンネル周方向において隣接するセグメント同士を接続するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル覆工においては、掘削孔の内壁面に円環状のライナーを配置して掘削孔の崩壊等を防止している。当該円環状のライナーは、円周方向に複数個のセグメントを接続して構成されている。
トンネル覆工に際しては、トンネル(或いは円環状のライナー)の円周方向に隣接するセグメント同士を接続して円環状のライナーを掘削孔内壁に配置する。そして掘削孔(或いはトンネル)が延在すると共に、掘削孔(トンネル)の長手方向に円環状のライナーを隣接して接続する。
【0003】
セグメントをトンネル円周方向に接続するに際しては、接続するべき一方のセグメントに雌継手、他方のセグメントに雄継手を埋設して固定し、雄継手の一部を雌継手に挿入することにより、セグメント同士を接続している。
そのようなセグメント接手としては、円周方向に隣接したセグメント同士を容易に接続することが出来て、しかも、セグメントを離隔させる方向に外力が作用してもセグメント同士の接続が容易に解除されないことが要求されている。そして、係る要求に応えることが出来るセグメント継手が、既に提案されている(特許文献1参照)。
係る従来技術(特許文献1)は大変に有用であるが、雄継手と雌継手の形状が複雑であり、製造に係る労力及びコストが大変に大きいという問題を有している。それと共に、隣接するセグメントの接続面の中央部に雄継手或いは雌継手を設けて、単一の継手によりセグメントを周方向に接続する用途を主としているため、その寸法及び重量が大きいという問題も有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6460970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、円周方向に隣接したセグメント同士を容易に接続することが出来て、セグメントを離隔させる方向に外力が作用してもセグメント同士の接続が容易に解除されず、しかも、形状が複雑ではなく、小型・軽量化を実現することが出来るセグメント接手と、その様なセグメント継手を備えたセグメントを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のセグメント継手(100)は雄継手(10)と雌継手(20)から構成され、
雄継手(10)は雄継手本体部(1)を有し、雄継手本体部(1)は雌継手(20)と係合する雄継手先端部(3)及びその反対側端部に設けられてセグメント(SG)に埋設される雄継手アンカー部(4)を有し、
雄継手先端部(3)は、雄継手本体部(1)の長手方向(図1では左右方向)に対して直交する方向(図1では上下方向)の何れか一方(図1では上方)が突出して雄継手凸部(3A)を形成し、他方(図1では下方)は窪んで雄継手凹部(3B)を形成し、雄継手凸部(3A)及び雄継手凹部(3B)の雄継手アンカー部(4)側縁部は肩部(3AA、3BA:段差)を形成しており、
雌継手(20)は雌継手本体部(2)を有し、雌継手本体部(2)は雄継手(10)と係合する雌継手先端部(5)及びその反対側端部に設けられてセグメント(SG)に埋設される雌継手アンカー部(6)を有しており、
雌継手先端部(5)は雄継手先端部(3)と相補的な形状の内部空間(5S)を備え、当該内部空間(5S)の雌継手本体部(2)の長手方向(図3では左右方向)に対して直交する方向(図3では上下方向)の何れか一方(図3では上方)が窪んで雌継手凹部(5A)を形成し、他方(図3では下方)には突出した雌継手凸部(5B:図3では板状の部材)を形成し、雌継手凸部(5B)の雌継手アンカー部(6)から離隔した側の縁部(5BA)は前記雄継手凹部(3B)の肩部(3BA)と相補的な形状であり、雌継手凹部(5A)の雌継手アンカー部(6)から離隔した側の縁部(5AA)は前記雄継手凸部(3A)の肩部(3AA)と相補的な形状であることを特徴としている。
【0007】
ここで、セグメント(SG)の半径方向外方(地山側)の領域に埋設される雄継手(10)では、雄継手本体部(1)の長手方向(図1では左右方向)に対して直交する方向(図1では上下方向)であって、雄継手(10)が埋設されるセグメント(SG)の半径方向外方(地山側)が突出して雄継手凸部(3A)を形成しているのが好ましい。
そして、セグメント(SG)の半径方向外方(地山側)の領域に埋設されている雌継手(20)では、雌継手本体部(2)の長手方向(図3では左右方向)に対して直交する方向(図3では上下方向)であって、雌継手(20)が埋設されるセグメント(SG)の半径方向外方(地山側)が窪んで雌継手凹部(5A)を形成しているのが好ましい。
【0008】
一方、セグメント(SG)の半径方向内方(ライナーの内部空間側)の領域に埋設される雄継手(10)では、雄継手本体部(1)の長手方向(図1では左右方向)に対して直交する方向(図1では上下方向)であって、雄継手(10)が埋設されるセグメント(SG)の半径方向内方(ライナーの内部空間側)が突出して雄継手凸部(3A)を形成しているのが好ましい。
そして、セグメント(SG)の半径方向内方(ライナーの内部空間側)の領域に埋設されている雌継手(20)では、雌継手本体部(2)の長手方向(図3では左右方向)に対して直交する方向(図3では上下方向)であって、雌継手(20)が埋設されるセグメント(SG)の半径方向内方(ライナーの内部空間側)が窪んで雌継手凹部(5A)を形成しているのが好ましい。
【0009】
本発明のセグメント継手(100)において、雄継手凹部(3B)の肩部(3BA)と雌継手凸部(5B)の雌継手アンカー部(6)から離隔した側の縁部(5BA)は(図1図3の矢印V方向の)テーパー部を構成しており、当該テーパー部は雄継手(10)及び雌継手(20)(が埋設されているセグメント)に作用する外力の方向(抜け方向:図8の矢印R方向)に対して傾斜している(図8の矢印V方向)のが好ましい。
【0010】
本発明のセグメント(SG)では、上述したセグメント継手(100:請求項1〜4の何れか1項のセグメント継手)を周方向端面に埋設しており、
雌継手(20)を埋設したセグメント(SG)の周方向端面から雌継手先端部(5)が突出しており、セグメント(SG)を接続した際に隣接するセグメント(SG)の境界に雄継手先端部(3)と係合した雌継手先端部(5)が位置することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
上述の構成を具備する本発明によれば、雄継手本体部(1)の長手方向(図1では左右方向)に対して直交する方向(図1では上下方向)の何れか一方(図1では上方)だけが突出して雄継手凸部(3A)を形成し、雌継手先端部(5)の内部空間(5S)の雌継手本体部(2)の長手方向(図3では左右方向)に対して直交する方向(図3では上下方向)の何れか一方(図3では上方)のみが窪んで雌継手凹部(5A)を形成しているため、雄継手(10)は上述した従来技術(特許文献1)の雄継手を長手方向中心線で2分割した様な形状(いわゆる「半割」形状)となっており、雌継手は上述した従来技術(特許文献1)の雌継手を長手方向中心線で2分割した様な形状(いわゆる「半割」形状)となっている。そして、半割形状とした分だけ雄継手及び雌継手における凹凸が上述した従来技術(特許文献1)に比較して少なくなり、形状が簡便になっている。そのため、凹凸が多く複雑な形状の従来技術(特許文献1)に比較して製造に係る労力、コストを節減することが出来る。
また、半割形状としているため、上述した従来技術(特許文献1)に比較して、雄継手及び雌継手の小型軽量化を実現している。
雄継手(10)と雌継手(20)を接続(係合)するに際しては、雌継手先端部(5)の内部空間(5S)における雌継手凹部(5A)に雄継手先端部(3)の雄継手凸部(3A)を挿入すれば、雄継手凸部(3A)が雌継手凹部(5A)と係合するので、雄継手(10)が埋設されたセグメント(SG)と雌継手(20)が埋設されたセグメント(SG)を容易に(いわゆる「ワンタッチ」で)接続することが出来る。
【0012】
また本発明のセグメント継手(100)或いは本発明のセグメント(SG)において、(トンネル周方向に)隣接するセグメント(SG)の各々の接合面において、雄継手(10)及び/又は雌継手(20)が半径方向内方の領域と半径方向外方の領域にそれぞれ設けられており、雄継手(10)の雄継手凸部(3A)が突出している方向と、当該雄継手凸部(3A)と係合する雌継手(20)の雌継手凹部(5A)が形成されている方向を、半径方向内方の領域と半径方向外方の領域で相違させれば、セグメント(SG)に外力(例えば土圧等)が作用した場合に、外力が作用する方向と隣接するセグメント同士の接続面或いは境界の相対的な位置関係により、引張力が作用する場合と圧縮力が作用する場合とがあるが、その様な引張力及び圧縮力を効果的に支持することが出来る。
より詳細には、隣接するセグメント同士の境界に引張力が作用する場合は、雄継手の凸部(3A)と雌継手の凹部(5A)の係合部が、当該引張力を支持或いは負荷している。そのため、セグメント(SG)が負荷できない引張力を雄継手(10)と雌継手(20)が負荷するので、セグメント(SG)に外力(例えば土圧等)が作用しても、発生した引張力を確実に負荷することが出来る。
一方、セグメント(SG)に外力して隣接するセグメント同士の接続面或いは境界に圧縮力が作用した場合には、雄継手凸部(3A)と雌継手凹部(5A)とが係合、当接しており、且つ、雄継手凹部(3B)と雌継手凸部(5B)も係合、当接しているので、雄継手凸部(3A)と雌継手凹部(5A)の係合面及び雄継手凹部(3B)と雌継手凸部(5B)の係合面により圧縮力を負荷することが出来る。セグメント(SG)を構成するコンクリート自体が圧縮力を負荷することに加えて、雄継手(10)及び雌継手(20)の凹部(3B)、(5A)及び凸部(3A)、(5B)が負荷することにより、セグメント(SG)に外力(例えば土圧等)が作用しても、発生した引張力を確実に負荷することが出来る。
【0013】
ここで従来の継手では、雄継手と雌継手が係合した後、セグメントの自重などの外力に起因して、雄継手が雌継手から係合解除されて抜け出てしまい、隣接するセグメントから抜け落ちてしまう恐れが存在する。
それに対して本発明のセグメント継手(100)では、雄継手凹部(3B)の肩部(3BA)と雌継手凸部(5B)の雌継手アンカー部(6)から離隔した側の縁部(5BA)は(図1図3の矢印V方向の)テーパー部を構成しており、当該テーパー部が雄継手(10)及び雌継手(20)(が埋設されているセグメント)に作用する外力の方向(抜け方向:図8の矢印R方向)に対して傾斜しているので(図8の矢印V方向)、次の述べる様な作用効果を生じる。
すなわち、セグメント(SG)の自重などの外力に起因して雄継手(10)が雌継手(20)から係合解除されて、継手が埋設されているセグメント(SG)が隣接するセグメント(SG)から抜け出そうとしても、テーパー部の傾斜が当該継手(10)、(20)を埋設したセグメント(SG)に作用する重力(外力)が作用する方向(抜け方向R)に対して傾斜しており、外力の作用する方向(R)が、雄継手(10)及び雌継手(20)におけるテーパー部の傾斜方向(V)と異なる。そのため、当該外力(セグメントSGに作用する重力)は雄継手凹部(3B)の肩部(3BA)のテーパー部と雌継手凸部(5B)の雌継手アンカー部(6)から離隔した側の縁部(5BA)のテーパー部が互いに圧縮しあう方向に作用し、テーパー部同士が相互移動することを抑制する様に作用するので、雄継手(10)と雌継手(20)が相対移動することは防止される。その結果、雄側凹部(3B)のテーパー部と雌側凸部(5B)のテーパー部が摺動してしまうことが防止され、雄継手(10)と雌継手(20)は係合解除せず、セグメント(SG)が抜け落ちてしまうことが防止される。
【0014】
また本発明のセグメント(SG)によれば、雌継手(20)を埋設したセグメント(SG)の周方向端面から雌継手先端部(5)が突出しており、セグメント(SG)を接続した際に隣接するセグメント(SG)の境界に雄継手先端部(3)と係合した雌継手先端部(5)が位置するので、隣接するセグメント(SG)の境界に作用するせん断力は断面積が大きく、雄継手先端(3)と係合している雌継手先端部(5)が受け持つことになる。
従来は断面積が小さい雄継手の延在している部分(特許文献1では雄継手の本体部)が隣接するセグメントの境界に位置して、セグメント間に作用するせん断力を支持していたのに比較して、本発明における雄継手先端部(3)と係合している雌継手先端部(5)の断面積の方が大きいので、同一の素材であれば、耐せん断力が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】図示の実施形態で用いられる雄継手を示す斜視図である。
図2】雄継手におけるテーパー部を説明する図1のA2矢視説明図である。
図3】図示の実施形態で用いられる雌継手を示す斜視図である。
図4】雌継手におけるテーパー部を説明する図3のA4矢視説明図である。
図5】雌継手における組み立ての一態様を説明する部分説明図である。
図6】雄継手と雌継手を係合する一工程を示す説明図である。
図7】雄継手と雌継手が係合した状態を示す説明図である。
図8】雄継手と雌継手が係合した状態における要部を示す部分拡大説明図である。
図9】継手のセグメント半径方向位置により、雄継手凸部が突出する方向及び雌継手凹部が窪む方向が異なることを示す説明図である。
図10】図示の実施形態における雌継手先端部と隣接するセグメントの境界との相対位置を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
最初に図1図8を参照して、図示の実施形態に係るセグメント継手を説明する。
図示の実施形態におけるセグメント継手100は、雄継手10及び雌継手20から構成されている。
図1において、雄継手10は雄継手本体部1を有し、雄継手本体部1は雌継手20と係合する雄継手先端部3と雄継手アンカー部4を有している。雄継手アンカー部4は雄継手先端部3の反対側端部に設けられ、図示しないセグメントに埋設される。
雄継手先端部3は、雄継手本体部1の長手方向(図1では左右方向)に対して直交する方向(図1では上下方向)の一方、図1では上方、が突出して雄継手凸部3Aを形成している。そして、雄継手本体部1の長手方向に対して直交する方向の他方(図1では下方)は窪んで、雄継手凹部3Bを形成している。
雄継手凸部3Aと雄継手凹部3Bの雄継手アンカー部4側の縁部は、それぞれ肩部3AA、3BAを形成しており、肩部3AA、3BAは雄継手本体部1と段差を形成している。
【0017】
雄継手アンカー部4は、雄継手本体部1の長手方向(図1では左右方向)に対して直交する方向、図1では上下方向、に延在する板状部材により構成されており、図1では図示しないセグメントに埋設、定着される。図示の実施形態においては、雄継手アンカー部4は、雄継手本体部1と同一の幅寸法(図1の紙面に対して垂直方向における長さ)を有している。
図1及び図2で示す様に、雄継手本体部1には軽量化のための貫通孔1Aが形成されている。貫通孔1Aに代えて窪みを形成して、軽量化を図ることも出来る。
雄継手本体部1の雄継手凸部3Aは、後述する雌継手20における雌継手先端部5の雌継手凹部5Aと係合する様に構成されている。雄継手10は前記従来技術(特許文献1)における雄継手を長手方向中心線で2分割した様な形状(いわゆる「半割」形状)となっている。そして、後述する雌継手20は前記従来技術(特許文献1)の雌継手を長手方向中心線で2分割した様な形状(いわゆる「半割」形状)となっている。
図示の実施形態に係る雄継手本体部1は、鍛造により一体成型することが可能であり、また鋳造することも可能である。
【0018】
図1のA2矢視図である図2において、雄継手凸部3Aの肩部3AAは破線で表示されており、雄継手凹部3Bの肩部3BAは実線で表示されている。
雄継手凸部3Aの肩部3AA、雄継手凹部3Bの肩部3BAは、それぞれ、図1の矢印V方向にテーパー部を形成している。肩部3AA、3BAの各々におけるテーパー部は、後述する雌継手凹部5Aの縁部5AA、雌継手凸部5Bの縁部5BAと係合した際に、雄継手及び/又は雌継手が埋設されたセグメント(図1図2では図示せず)に外力が発生した場合に、雄継手凸部3Aと雌継手凹部5Aの係合状態と、雄側凹部3Bと雌側凸部5Bの係合状態が解除されない様に構成されている。従来技術(特許文献1)でも、雄継手の先端部と雌継手の鉤状部分にテーパー部が形成されているが、当該従来技術におけるテーパー部は雄継手の先端部を雌継手の鉤状部分に挿入するのを容易にするために形成されており、その点で、図示の実施形態のテーパー部とは相違している。雄継手10と雌継手20の係合解除を防止する構成及び作用効果については、図8を参照して後述する。
【0019】
雌継手凹部5Aの縁部5AA、雌継手凸部5Bの縁部5BAにもテーパー部が形成されている。
図示の実施形態において、雄継手凸部3Aの肩部3AA、雄継手凹部3Bの肩部3BAにおけるテーパーは、例えば1/10である。
【0020】
図3において、雌継手20は雌継手本体部2を有し、雌継手本体部2は雄継手10と係合する雌継手先端部5及び雌継手アンカー部6を有している。雌継手先端部5は雄継手10と係合する部分であり、雌継手アンカー部6は雌継手先端部5の反対側端部に設けられてセグメント(図3図4では図示せず)に埋設される。
雌継手先端部5は内部空間5Sを備え、内部空間5Sは雄継手先端部3と相補的な形状を有し、雄継手10と雌継手20が係合する際に内部空間5Sに雄継手先端部3が挿入される。
内部空間5Sの雌継手本体部2の長手方向(図3では左右方向)に対して直交する方向(図3では上下方向)の一方(図3では上方)が窪んで雌継手凹部5Aを構成している。雌継手本体部2の長手方向に対して直交する方向の他方(図3では下方)に、図3では右方向(図3では図示しない雄継手10側)に板状部材が突出しており、当該突出した板状部材が雌継手凸部5Bを構成している。
そして、雌継手凸部5Bにおいて、雌継手アンカー部6から離隔した側(図3図4では右側)の縁部5BAは、雄継手凹部3Bの肩部3BAと相補的な形状である。また、雌継手凹部5Aにおいて、雌継手アンカー部6から離隔した側(図3図4では右側)の縁部5AAは、雄継手凸部3Aの肩部3AAと相補的な形状である。
【0021】
雌継手アンカー部6は、雌継手本体部2の長手方向(図3では左右方向)に対して直交する方向(図3では上下方向)に延在する板状部材であり、図3では表示しないセグメントに埋設されて、定着される。図示の実施形態の雌継手アンカー部6では、雌継手本体部2と同一の幅寸法(図3の紙面に垂直方向の長さ)を有している。
図3及び図4に示す様に、雌継手本体部2には軽量化のための貫通孔2Aが形成されている。貫通孔2Aに代えて窪みを形成しても良い。
ここで、雌継手20(ただし雌継手凸部5Bを除いた部分)は上述した従来技術(特許文献1)の雌継手を長手方向中心線で2分割した様な形状(いわゆる「半割」形状)となっている。
【0022】
図3のA4矢視図である図4において、雌継手凹部5Aの縁部5AAは破線で表示されており、雌継手凸部5Bの縁部5BAは実線で表示されている。
図4において、板状の雌継手凸部5Bは実線で表示され、雌継手凹部5Aにおける縁部5AA以外の2方の縁部(雌継手凸部5Bと重なる部分)は破線で表示されている。
雌継手凹部5Aの縁部5AA、雌継手凸部5Bの縁部5BAはテーパー部を構成しており、当該テーパーは、例えば1/10である。
図8を参照して後述するが、当該テーパー部により、セグメントに外力が発生した場合でも、雄継手凸部3Aと雌継手凹部5Aの係合状態と、雄側凹部3Bと雌側凸部5Bの係合状態が解除されてしまうことが抑制される。
【0023】
図示の実施形態において、図5でも示す様に、雌継手20(雌継手本体部2)は雌側凸部5Bが存在するため、鍛造により一体成形することは困難である。図示の実施形態において、雌継手20を鍛造により製造するためには、雌継手凸部5Bのみを単独で製造し、雌継手20の雌継手凸部5B以外の部分を鍛造で一体成形する。そして、単独で製造した板状の雌継手凸部5Bを雌継手20のその他の部分に溶接する。図5で示す領域R5は、溶接する際に、雌継手凸部5B以外の部分と接続される領域である。領域R5は、図3において、雌継手先端部5の開口している側(雄継手10側:テーパー部を形成した縁部5BA側)とは反対側に位置している。
雌継手凸部5Bを雌継手先端部5に溶接した雌継手20であっても、雄継手10と係合した際に、雌継手凸部5Bを雌継手先端部5から引っ張る力は作用しないので、強度的に問題はない。
ここで、雌継手20を鋳造で製造することが可能であり、雌継手20を鋳造により製造した場合には、一体成形が可能であり、複数の部品同士を溶接する必要は無い。
【0024】
次に図6図7を参照して、雄継手10と雌継手20の係合について説明する。
図6は、雄継手10を雌継手20に係合させる直前の状態を示し、雄継手先端部3と、雌継手先端部5の内部空間5Sとを対向させて配置している。ここで、図6図7における上下方向は、セグメント同士を接続した円環状のライナーの接続方向(トンネルの長手方向)であり、図1図3における上下方向とは異なっている。
図1図4を参照して上述した通り、雌継手先端部5の内部空間5Sと、雄継手先端部3とは相補的な形状である。
【0025】
図6で示す状態から、雄継手10を雌継手20側(図6図7の下側)へ(相対的に)移動すれば、雄継手先端部3が雌継手先端部5の内部空間5Sに係合して、雄継手10と雌継手20は係合する。雄継手10を雌継手20側に相対的に移動する際に、雄継手凸部3Aの肩部3AAは雌継手凹部5Aの縁部5AAに沿って移動或いは摺動し、雄継手凹部3Bの肩部3BAは雌継手凸部5Bの縁部5BAに沿って移動或いは摺動する。そして、図7で示す状態(雄継手10と雌継手20が係合した状態)になる。
図7で示す雄継手10と雌継手20が係合した状態を解除するためには、図7において、雄継手10を雌継手20に対して(図6図7の上下方向に)相対的に移動する。係る相対移動により、雄継手先端部3が雌継手先端部5の内部空間5Sから係合解除されて、雄継手10と雌継手20が係合解除される。
【0026】
次に図8を参照して、雄継手10と雌継手20が外力によっては係合解除がされ難い理由を説明する。
図8において、雄継手10の雄継手先端部3が雌継手20の雌継手先端部5の内部空間5Sに収容され、雄継手10と雌継手20は係合している。上述した様に、雌継手凸部5Bの縁部5BAと雄継手凹部3Bの肩部3BAには、共に、テーパー部(例えば1/10のテーパー:矢印V方向のテーパー)が形成されている。雌継手凹部5Aの縁部5AA及び雄継手凸部3Aの肩部3AAにも、テーパー部(例えば1/10のテーパー:矢印V方向のテーパー)が形成されている。そして、雄継手10と雌継手20が係合した際は、雌継手凸部5Bの縁部5BAと雄継手凹部3Bの肩部3BA、雌継手凹部5Aの縁部5AAと雄継手凸部3Aの肩部3AAが、それぞれ密接している。
【0027】
ここで、雄継手10が埋設されたセグメントと雌継手20が埋設されたセグメントを接合する場合、例えば雄継手10が埋設されたセグメントを、雌継手20が埋設されたセグメントに向かって、例えばジャッキによって押圧して接続する。しかし、ジャッキを外すと、セグメントに作用する重力や地山圧力等の外力により、セグメント同士の接合が解除され、接続されたセグメントが抜け落ちてしまう恐れがある。
それに対して、図示の実施形態では図8に示す様に、前記テーパー部(矢印V方向)は雄継手10及び雌継手20(が埋設されているセグメント)に作用する外力の方向(抜け方向:矢印R方向)に対して傾斜しているため、雄継手10と雌継手20が係合した後、雄継手10が雌継手20から抜けてしまうことが抑制される。そのため、一方のセグメントが他方のセグメントから外れることが抑制される。
【0028】
図8を参照して上述した様に、雄継手凸部3Aの肩部3AAと雌継手凹部5Aの縁部5AA、雄継手凹部3Bの肩部3BAと雌継手凸部5Bの縁部5BAには矢印V方向のテーパーが形成されているため、雌継手先端部5の内部空間5Sと雄継手先端部3との係合を解除する際には、矢印V方向に雄継手10と雌継手20を相対移動させなければならない。
換言すれば、雄継手先端部3と雌継手先端部5の内部空間5Sを係合した後は、雄継手10と雌継手20を矢印V方向に相対移動しない限り、雄継手10と雌継手20は係合解除されない。
【0029】
そのため、セグメントに作用する重力や地山の圧力等により矢印R方向に力が作用しても、矢印V方向の力が作用していないので、雄継手凹部3Bの肩部3BAのテーパー部と雌継手凸部5Bの縁部5BAのテーパー部も相互に摺動せず、係合解除しない。
そして矢印R方向の外力は、雄継手凹部3Bの肩部3BAのテーパー部と雌継手凸部5Bの縁部5BAのテーパー部は互いに圧縮する様に作用し、雄継手10と雌継手20の係合解除に対する抵抗となる。
【0030】
例えば、図8において、雌継手20を埋設したセグメント(図8では図示せず)が先行して配置、固定され、雌継手20を埋設したセグメントに雄継手10を埋設したセグメント(図8では図示せず)が取り付けられる場合であって、雄継手10を埋設したセグメントに作用する重力が図8の矢印R方向(図8の上方)に作用する場合を説明する。
その場合、雌継手20に対して図8の上方に配置した雄継手10を、矢印VA方向(矢印Vの反対方向)に移動して雌継手20に接合する。矢印VA方向は、雄継手凹部3Bの肩部3BAのテーパー部の傾斜及び雌継手凸部5Bの縁部5BAのテーパー部の傾斜と平行であるため、雄継手10は雌継手20に摺動して係合し、図8で示す状態になる。
図8で示す状態で、重力により雄継手10を埋設したセグメントが矢印R方向に移動しようとしても(抜け落ちようとしても)、雄継手凹部3Bの肩部3BAのテーパー部が雌継手凸部5Bの縁部5BAのテーパー部を矢印R方向に押圧するのみで、雄継手凹部3Bの肩部3BAのテーパー部は雌継手凸部5Bの縁部5BAのテーパー部に対して相対的に移動(摺動)することは出来ない。
【0031】
次に、図8において、雄継手10を埋設したセグメントが先行して配置、固定され、雄継手10を埋設したセグメントに雌継手20を埋設したセグメント取り付けられる場合であって、雄継手10を埋設したセグメントに作用する重力が図8の矢印R方向(図8の上方)に作用する場合を説明する。
その場合、雄継手10に対して図8の下方に配置した雌継手20を、矢印V方向に移動して雄継手10に接合する。矢印V方向は、雄継手凹部3Bの肩部3BAのテーパー部の傾斜及び雌継手凸部5Bの縁部5BAのテーパー部の傾斜と平行であるため、雌継手20は雄継手10に摺動して係合し、図8で示す状態になる。
図8で示す状態で、重力により雌継手20を埋設したセグメントが矢印R方向に移動しようとしても(抜け落ちようとしても)、雌継手20の先端部5の一部5Wが雄継手10の先端部3と当接しているため、雌継手20は図8で示す状態から矢印R方向に移動することは出来ない。
ここで、雌継手先端部5の一部5Wは、雌継手先端部5の開放端側に延在する板状部分であって、且つ、雌継手凸部5Bと接触している板状部分である。
【0032】
また図8において、雌継手20を埋設したセグメントが先行して配置、固定され、雌継手20を埋設したセグメントに雄継手10を埋設したセグメントが取り付けられる場合であって、雄継手10を埋設したセグメントに作用する重力が図8の矢印RA方向(図8の下方)に作用する場合を説明する。
その場合、雌継手20に対して図8の上方に配置した雄継手10を、矢印VA方向に移動して雌継手10に接合する。矢印VA方向は、雄継手凹部3Bの肩部3BAのテーパー部の傾斜及び雌継手凸部5Bの縁部5BAのテーパー部の傾斜と平行であるため、雄継手10は雌継手20に摺動して係合し、図8で示す状態になる。
図8で示す状態で、重力により雄継手10を埋設したセグメントが矢印RA方向に移動しようとしても(抜け落ちようとしても)、雌継手20の先端部5の一部5Wが雄継手10の先端部3と当接しているため、雌継手20は図8で示す状態から矢印RA方向に移動することは出来ない。
【0033】
さらに図8において、雄継手10を埋設したセグメントが先行して配置、固定され、雄継手10を埋設したセグメントに雌継手20を埋設したセグメントが取り付けられる場合であって、雌継手20を埋設したセグメントに作用する重力が図8の矢印RA方向(図8の下方)に作用する場合を説明する。
係る場合においては、雄継手10に対して図8の上方に配置した雌継手20を、矢印VA方向に移動して雄継手10に接合する。矢印VA方向は、雄継手凹部3Bの肩部3BAのテーパー部の傾斜及び雌継手凸部5Bの縁部5BAのテーパー部の傾斜と平行であるため、雌継手20は雄継手10に摺動して係合し、図8で示す状態になる。
図8で示す状態で、重力により雌継手20を埋設したセグメントが矢印RA方向に移動しようとしても(抜け落ちようとしても)、雌継手凸部5Bの縁部5BAのテーパー部が雄継手凹部3Bの肩部3BAのテーパー部を矢印RA方向に押圧するのみで、雌継手凸部5Bの縁部5BAのテーパー部は雄継手凹部3Bの肩部3BAのテーパー部に対して相対的に移動(摺動)することは出来ない。
このように、雄継手10と雌継手20が係合して、雄継手10を埋設したセグメントと雌継手20を埋設したセグメントが接続されると、接続した側のセグメントは先行して配置されて固定されているセグメントに対して矢印V或いは矢印VA方向に相対移動しない限りは、接続が解除されてしまうことはない。
【0034】
次に、図9を参照して、図示の実施形態に係るセグメント継手100を埋設したセグメントについて説明する。
図9において、隣接するセグメントSG1とセグメントSG2をトンネル円周方向Cに接続するに際して、セグメントSG1には雄継手10、セグメントSG2には雌継手20を埋設し、雄継手10の雄継手先端部3を雌継手20の先端部5における内部空間5Sに挿入することにより、セグメントSG1とセグメントSG2を接続している。
図9では、セグメントSG1とセグメントSG2には、それぞれ、半径方向外方(地山側、矢印O側)の領域と、セグメントの半径方向内方(ライナーの内部空間側、矢印I側)の領域に、雄継手10或いは雌継手20が埋設されている。すなわち、セグメントSG1、SG2には、合計2個のセグメント継手が埋設されている。
【0035】
図9において、セグメントSG1の半径方向外方(地山側、矢印O側)の領域に埋設される雄継手10では、雄継手本体部1の長手方向(図9では左右方向)に対して直交する方向(図9では上下方向)であって、雄継手10が埋設されるセグメントSG1の半径方向外方(地山側、矢印O側)に向かって突出して雄継手凸部3Aを形成している。
そして、セグメントSG2の半径方向外方(地山側、矢印O側)の領域に埋設されている雌継手20では、雌継手本体部2の長手方向(図9では左右方向)に対して直交する方向(図9では上下方向)であって、雌継手20が埋設されるセグメントSG2の半径方向外方(地山側、矢印O側)に向かって窪んだ雌継手凹部5Aを形成している。
【0036】
一方、セグメントSG1の半径方向内方(ライナーの内部空間側、矢印I側)の領域に埋設される雄継手10では、雄継手本体部1の長手方向に対して直交する方向であって、雄継手10が埋設されるセグメントSG1の半径方向内方(ライナーの内部空間側、矢印I側)に向かって突出して雄継手凸部3Aを形成している。
そして、セグメントSG2の半径方向内方(ライナーの内部空間側、矢印I側)の領域に埋設されている雌継手20では、雌継手本体部2の長手方向に対して直交する方向であって、雌継手20が埋設されるセグメントSG2の半径方向内方(ライナーの内部空間側、矢印I側)に向かって窪んだ雌継手凹部5Aを形成している。
【0037】
ここで、セグメントSG1、SG2に外力(例えば土圧等)が作用した場合に、外力が作用する方向と隣接するセグメント同士の接続面或いは境界の相対的な位置関係により、引張力が作用する場合と圧縮力が作用する場合とがある。換言すると、セグメントの半径方向外方(地山側、矢印O側)に圧縮力、半径方向内方(ライナー内の空間側、矢印I側)に引張力が作用する場合があり、或いは、半径方向外方(地山側)に引張力、半径方向内方(ライナー内の空間側)は圧縮力が作用する場合がある。
圧縮力については、セグメントを構成するコンクリートが圧縮力を負荷することが出来るが、コンクリートは引張力に対しては支持しないので、係合した雄継手10、雌継手20により、当該引張力を負荷或いは支持する必要がある。
特許文献1に開示された継手では、1組の継手のみをセグメントに埋設して使用することを原則としているため、雄継手或いは雌継手をセグメントの半径方向中央に配置し、大きな耐力を有する大型の継手を使用している。
【0038】
それに対して、図示の実施形態においては、図9で示す様に、(トンネル周方向Cについて)隣接するセグメントSG1、SG2の各々の接合面において、雄継手10及び/又は雌継手20は、セグメントの接合面(境界)の半径方向内方の領域と半径方向外方の領域にそれぞれ設けられている。
そして、半径方向外方の雄継手凸部3Aは半径方向外方に突出し、当該凸部3Aと係合する雌継手凹部5Aは半径方向外方に向かって窪んでおり、雄継手凸部3Aと雌継手凹部5Aが係合する箇所は、雄継手本体部1及び雌継手本体部2の中心軸CLに対して半径方向外方に位置している。そのため、引張力がセグメントSG1、SG2の半径方向外方の領域に作用した場合に、当該引張力を効果的に支持することが出来る。
一方、半径方向内方の雄継手凸部3Aは半径方向内方に突出し、当該凸部3Aと係合する雌継手凹部5Aは半径方向内方に向かって窪んでおり、雄継手凸部3Aと雌継手凹部5Aが係合する箇所は、雄継手本体部1及び雌継手本体部2の中心軸CLよりも半径方向内方となる。そのため、引張力がセグメントSG1、SG2の半径方向内方の領域に作用した場合に、係合している雄継手10及び雌継手20により当該引張力を効果的に支持することが出来る。
【0039】
次に図10を参照して、図示の実施形態によれば、隣接するセグメントSG1、SG2の境界に作用するせん断力に対して良好な耐性を有することを説明する。ここで、図示の簡略化のために、図10では雄継手10及び雌継手20を単純化して示している。
図10(B)において、従来技術(特許文献1)では、雄継手10Aと雌継手20Aの嵌合箇所D(係合箇所)がセグメントSG2内であり、セグメントSG1、SG2の境界において、雄継手10Aのピン状或いは板状の部分1Aがせん断力を受け持っている。そのため、断面積が小さい部分によってせん断力を支持している。
それに対して図示の実施形態においては、図10(A)で示す様に、雌継手20が雄継手10の側に突出している。より詳細には、図10(A)においては、雌継手20を埋設したセグメントSG2の周方向端面から、雌継手先端部5がセグメントSG1側に突出している。そして、セグメントSG1とセグメントSG2を接続した際に、セグメントSG1、SG2の境界に雌継手先端部5が位置しており、断面積が大きな雌継手先端部5によりセグメントSG1、SG2の境界に作用するせん断力を支持している。雌継手先端部5の断面積が、従来技術に係る雄継手の部分1Aよりも大きいことは、図10(A)と図10(B)とを比較すれば明らかである。そのため、セグメントSG1とセグメントSG2の境界において、大きな断面積でせん断力を受け持つ図示の実施形態に係るセグメント継手では、耐せん断力が改善される。
また、従来技術(特許文献1)のセグメント継手は基本的にセグメントの周方向端面に1個だけ埋設する。それに対して、図示の実施形態のセグメント継手100では、図9で示す様に、隣接するセグメントSG1、SG2の境界の半径方向内方(セグメント内部空間側)と半径方向外方(地山側)の2箇所に継手(雄継手10、雌継手20)を埋設している。そのため、耐せん断性能が向上している。
【0040】
図示の実施形態によれば、雄継手本体部1の長手方向(図1では左右方向)に対して直交する方向(図1では上下方向)の上方だけが突出して雄継手凸部3Aを形成し、雌継手先端部5における内部空間5Sの雌継手本体部2の長手方向(図3では左右方向)に対して直交する方向(図3では上下方向)の上方のみが窪んで雌継手凹部5Aを形成しており、雄継手10は従来技術(特許文献1)の雄継手を長手方向中心線で2分割した様な形状(いわゆる「半割」形状)となっており、雌継手は従来技術(特許文献1)の雌継手を長手方向中心線で2分割した様な形状(いわゆる「半割」形状)となっている。
従来技術(特許文献1)に係る継手の半割形状とした結果、図示の実施形態に係る雄継手及び雌継手における凹凸が少なくなり、形状が簡便化され、製造に係る労力、コストを節減することが出来て、小型軽量化が実現される。
雄継手10と雌継手20の接続(係合)に際しては、雌継手先端部5の内部空間5Sにおける雌継手凹部5Aに雄継手先端部3の雄継手凸部3Aを挿入することにより、雄継手凸部3Aが雌継手凹部5Aに係合され、雄継手10が埋設されたセグメントSGと雌継手20が埋設されたセグメントSGを容易に(いわゆる「ワンタッチ」で)接続することが出来る。
【0041】
また、図示の実施形態のセグメント継手100或いはセグメントSGにおいて、(トンネル周方向Cに)隣接するセグメントSG1、SG2(図9)の各々の接合面において、雄継手10及び/又は雌継手20は半径方向内方の領域と半径方向外方の領域にそれぞれ設けられており、雄継手10の雄継手凸部3Aが突出している方向と、当該雄継手凸部3Aと係合する雌継手20の雌継手凹部5Aが形成されている方向は、半径方向内方の領域と半径方向外方の領域で相違させている。
そのため、セグメントSGに外力(例えば土圧等)が作用した場合に、外力が作用する方向と隣接するセグメント同士の接続面或いは境界の相対的な位置関係により、引張力が作用する場合と圧縮力が作用する場合が生じても、どのような場合においても外力により発生する引張力等を効果的に支持することが出来る。
【0042】
図示の実施形態では、半径方向外方の雄継手凸部3Aが半径方向外方に突出し、当該凸部3Aと係合する雌継手凹部5Aが半径方向外方に向かって窪んでいるので、雄継手凸部3Aと雌継手凹部5Aが係合する箇所(雄継手凸部3Aの肩部3AAと雌継手凹部5Aの縁部5AA)は、雄継手本体部1及び雌継手本体部2の中心軸CLよりも半径方向外方となり、引張力が半径方向外方の領域に作用した場合に、効率的に支持することが出来る。
一方、半径方向内方の雄継手凸部3Aが半径方向内方に突出し、当該凸部3Aと係合する雌継手凹部5Aは半径方向内方に向かって窪んでいるので、雄継手凸部3Aと雌継手凹部5Aが係合する箇所(雄継手凸部3Aの肩部3AAと雌継手凹部5Aの縁部5AA)は、雄継手本体部1及び雌継手本体部2の中心軸CLよりも半径方向内方となり、引張力が半径方向内方の領域に作用した場合に、効率的に支持することが出来る。
【0043】
さらに、図示の実施形態によれば、雄継手先端部3及び雌継手先端部5の内部空間5Sの係合箇所であって、雄継手凸部3Aの肩部3AAと雌継手凹部5Aの縁部5AA及び雄継手凹部3Bの肩部3BAと雌継手凸部5Bの縁部5BAにはテーパー部(図1図3図8の矢印V方向のテーパー)が形成されており、当該テーパー部はセグメントSGに作用する外力の方向(抜け方向:図8の矢印R方向)に対して傾斜している(図8の矢印V方向)。
そのため、セグメントSGの自重等の外力がセグメントSG及びセグメント継手100に作用しても、前記テーパー部の傾斜が雄継手10、雌継手20を埋設したセグメントSGの自重が作用する方向(抜け方向R)に対して傾斜しているため、外力の作用する方向が、雄継手10及び雌継手20におけるテーパー部の傾斜方向と相違する。そのため、当該外力は雄継手凹部3Bの肩部3BAのテーパー部と雌継手凸部5Bの縁部5BAのテーパー部が互いに圧縮しあう方向に作用して、テーパー部同士が摺動、相互移動して雄継手10と雌継手20が相対移動することはなく、雄継手10と雌継手20は係合解除せず、セグメントSGが抜け落ちてしまうことが防止される。
或いは、雌継手先端5の部分5Wが雄継手先端3と当接することにより、雄継手10を埋設したセグメントと雌継手20を埋設したセグメントが、重力により矢印R或いは矢印RAに相対移動することが防止される。
【0044】
また、図示の実施形態によれば、雌継手20を埋設したセグメントSGの周方向端面から雌継手先端部5が雄継手10を埋設したセグメントSG側に突出しており、セグメントSGを接続した際に隣接するセグメントSGとの境界に雄継手先端部3と係合した雌継手先端部5が位置し、雌継手先端部5の断面積は継手本体部1、2の断面積に比較して大きく設定されている。そのため、隣接するセグメントSGの境界に作用するせん断力を大きな断面積で受け持つことにより、耐せん断力性能が向上する。
従来技術(特許文献1)の様に断面積が小さい雄継手の本体部がセグメントの境界に位置してせん断力を支持している構造に比較して、同一の素材であれば、図示の実施形態に係るセグメント継手の方が耐せん断力性能は改善される。
【0045】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
例えば、図示の実施形態においては、雄継手凹部3Bの肩部3BAと雌継手凸部5Bの縁部5BAのみにテーパー部を形成しても良い。或いは、テーパー部の方向を、図8の矢印V方向と異なり、図8で上方に行くほど矢印Rの方向から左側にそれる方向(V方向と矢印Rの方向に対して線対称な方向)とした上で、雄継手凸部3Aの肩部3AAと雌継手凹部5Aの縁部5AAのみにテーパー部を形成しても良い。
また、図示の実施形態においては、雄継手10、雌継手20のそれぞれのアンカー部4、6を板状部材で構成したが、棒状部材(例えば異形棒鋼やボルト)によりアンカー部4、6を構成して、雄継手本体部1、雌継手本体部2に固定することも可能である。
【符号の説明】
【0046】
1・・・雄継手本体部
2・・・雌継手本体部
3・・・雄継手先端部
3A・・・雄継手凸部
3AA・・・肩部
3B・・・雄継手凹部
3BA・・・肩部
4・・・雄継手アンカー部
5・・・雌継手先端部
5A・・・雌継手凹部
5AA・・・縁部
5B・・・雌継手凸部
5BA・・・縁部
5S・・・内部空間
6・・・雌継手アンカー部
10・・・雄継手
20・・・雌継手
100・・・セグメント継手
SG・・・セグメント
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2020年3月30日
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0003
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0003】
セグメントをトンネル円周方向に接続するに際しては、接続するべき一方のセグメントに雌継手、他方のセグメントに雄継手を埋設して固定し、雄継手の一部を雌継手に挿入することにより、セグメント同士を接続している。
そのようなセグメント継手としては、円周方向に隣接したセグメント同士を容易に接続することが出来て、しかも、セグメントを離隔させる方向に外力が作用してもセグメント同士の接続が容易に解除されないことが要求されている。そして、係る要求に応えることが出来るセグメント継手が、既に提案されている(特許文献1参照)。
係る従来技術(特許文献1)は大変に有用であるが、雄継手と雌継手の形状が複雑であり、製造に係る労力及びコストが大変に大きいという問題を有している。それと共に、隣接するセグメントの接続面の中央部に雄継手或いは雌継手を設けて、単一の継手によりセグメントを周方向に接続する用途を主としているため、その寸法及び重量が大きいという問題も有している。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、円周方向に隣接したセグメント同士を容易に接続することが出来て、セグメントを離隔させる方向に外力が作用してもセグメント同士の接続が容易に解除されず、しかも、形状が複雑ではなく、小型・軽量化を実現することが出来るセグメント継手と、その様なセグメント継手を備えたセグメントを提供することを目的としている。