【解決手段】ハウジングとケーブル保持体を含む。ケーブル保持体は、外側面のそれぞれに、少なくとも3つの係合部を有し、ケーブル保持体からのケーブルの導出方向に沿う方向において、第一の係合部は、ケーブルの導出側から遠い側に配置され、第二の係合部は、近い側に配置され、第三の係合部は、それらの間に配置されている。ハウジングは、内側面のそれぞれに、対応係合部を有している。ケーブル保持体は、ハウジングに対し、第一及び第二の係合部は第一及び第二の対応係合部とそれぞれ係合しているが、第三の係合部は第三の対応係合部と未だ係合していない第一の係合位置と、第一乃至第三の係合部の全てが第一乃至第三の対応係合部と係合している第二の係合位置とに、少なくとも位置付けられる。
前記ケーブル保持体は、前記ハウジングに対して前記第一の係合位置に位置付けられる前に、前記第二の係合部と前記第二の対応係合部の係合を通じて前記ハウジングに対して回動可能に設置され得る、請求項2に記載のケーブルコネクタ。
前記ケーブル保持体が前記ハウジングに対して前記第一又は前記第二の係合位置に位置付けられたときに、前記導出方向に沿う方向と前記係合方向に沿う方向とが互いに交差する、請求項4に記載のケーブルコネクタ。
前記第一の対応係合部は、前記ケーブル保持体が前記ハウジングに対して前記第一の係合位置に位置付けられたときに前記第一の係合部を仮留めする仮留部と、前記ケーブル保持体が前記ハウジングに対して前記第二の係合位置に位置付けられたときに前記第一の係合部を固定する第一の固定部を含み、前記仮留部と前記第一の固定部は、前記係合方向に沿う方向において互いに分離されており、
前記第二の対応係合部は、前記ケーブル保持体が前記ハウジングに対して前記第一の係合位置に位置付けられたときに前記第二の係合部が係合する位置と前記第二の係合位置に位置付けられたときに前記第二の係合部が係合する位置との間で前記第二の係合部がスライドし得るように、前記係合方向に沿って連続的に延びているスライド部として形成されており、
前記第三の対応係合部は、前記ケーブル保持体が前記ハウジングに対して前記第二の係合位置に位置付けられたときに前記第三の係合部を固定する第三の固定部を含み、前記ケーブル保持体が前記ハウジングに対して前記第一の係合位置に位置付けられたときは、前記係合方向に沿う方向と交差する方向に延びる前記ハウジングの縁部が前記第三の対応係合部として働く、請求項1乃至5のいずれかに記載のケーブルコネクタ。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2018/016389号(特許文献1)に、従来のケーブルコネクタを含む電気コネクタ装置の一例が示されている。
図21乃至
図25に、特許文献1に開示された図面の一部を示す。
【0003】
図21は、ケーブル保持体を備える従来のケーブルコネクタとこれを含む電気コネクタ装置の斜視図を電気ケーブル及び基板と共に示したものである。電気コネクタ装置1は、ケーブルコネクタ10と相手コネクタ90の組から成る。
【0004】
ケーブルコネクタ10は、図示矢印「α」方向に沿って、基板コネクタ90に対して嵌合、抜去させることができる。ケーブルコネクタ10と基板コネクタ90を嵌合させたとき、基板コネクタ90の前面に設けた略矩形の嵌合穴97に、ケーブルコネクタ10のシェルに設けた先細の被嵌合部50aが挿入され、基板コネクタ90のシェル98の天井部及び底板部に設けた貫通孔99に、ケーブルコネクタ10の先端部50aの上側及び下側から弾性的に突出したロック突部35が嵌る。
【0005】
図22に、
図21に示したフード12と電気ケーブル4の外被を取り除いた状態で、ケーブルコネクタ10の分解斜視図をツイストペアケーブル5と共に示す。ケーブルコネクタ10は、シェル30の外周面を覆う絶縁性のフード12(
図21参照)に加え、更に、樹脂等の絶縁部材から成るハウジング20と、同様に樹脂等の絶縁部材から成る端子11を支持する端子支持体70、ケーブル5を保持するケーブル保持体60、及びハウジング20等の外周面を覆う導電性のシェル30を含む。
【0006】
図23に、
図22に示したケーブルコネクタ10における構成部品である、ハウジング20、端子支持体70、及びケーブル保持体60の分解斜視図を、ツイストペアケーブル5と共に示す。
【0007】
ハウジング20は、本体29と、本体29から突設させた、基板コネクタ90に対して嵌合、抜去させる部分である被挿入部25を含む。本体29は、厚肉の基部21と、基部21の後方に延設された対向する2枚の板状側壁26を含む。これら板状側壁26の間に形成された空間26fには、対を成す端子支持体70と、同様に対を成すケーブル保持体60とが設置される。
【0008】
ケーブル保持体60は、主に、略直方形状の本体67と、本体67の底面67bからハウジング20に対するケーブル保持体60の取付け方向「γ1」、「γ2」に延びる片持ち梁状のアーム部61を含む。
【0009】
本体67の左右それぞれの側面67c、67dには、ハウジング20の板状側壁26に設けた対応係合部26aである、例えば係止穴に係止される係止突部62が設けられている。また、アーム部61の自由端付近には、端子支持体70の立設部75に設けた係止突部75aに係止される係止突部61aが設けられている。これらケーブル保持体60の係止突部62とハウジング20側の係止穴26a、及び、ケーブル保持体60の係止突部61aと端子支持体70の係止突部75aは、ハウジング20に対するケーブル保持体60の取付け方向「γ1」、「γ2」に沿って設けられている。これらの係止手段を利用して、ケーブル保持体60をハウジング20に係止させることができる。
【0010】
図24、
図25は、ハウジング20に対するケーブル保持体60の取付け方法を説明した図である。
図24は、ケーブル保持体60がハウジング20に対して仮固定位置にあるときの状態を示す側面図である。仮固定位置にあるとき、ケーブル保持体60の係止突部61a、62と、ハウジング20側の対応係止部75a、26aは、未だ係止されていない。一方、
図25は、ケーブル保持体60がハウジング20に対して係止完了位置にあるときの状態を示す側面図である。係止完了定位置にあるとき、ケーブル保持体60の係止突部61a、62と、ハウジング20側の対応係止部75a、26aは、既に係止されている。
【0011】
端子支持体70やハウジング20に対してケーブル保持体60を取り付ける際、ケーブル保持体60は、実際に係止固定される前に、
図24に示す仮固定位置にて位置決めされる。仮固定位置では、ケーブル保持体60に設けた係止突部61aや、係止突部62のテーパーが、それぞれ、ハウジング20側の一部である、端子支持体70の立設部75に設けた係止突部75aや、板状側壁26の上縁26dと衝突し、この結果、ケーブル保持体60は、取付け方向「γ1」、「γ2」において、係止完了位置におけるときよりもハウジング20から離した状態で位置決めされる。
【0012】
図24に示す仮固定位置に位置決めした後、ケーブル保持体60は、指先や冶具等を用いて、例えば、対面する対のケーブル保持体60の上面67aを同時に挟み込む力を一時に加えることによって一度にハウジング20等に取り付けることができる。
【0013】
図25に示すように、係止完了位置では、ケーブル保持体60のアーム部61に設けた係止突部61aは、端子支持体70の立設部75に設けた係止突部75aを乗り越えてそこに係止され、また、ケーブル保持体60の本体67の側面67c、67dに設けた係止突部62は、ハウジング20の板状側壁26の上縁26dを乗り越えて係止穴26aに嵌る。また、このとき、ケーブル保持体60に設けた突部66は、端子支持体70に設けた切欠76を通じて、相手側のケーブル保持体に近接した状態で配置される。
【0014】
更に、ケーブル保持体60が、
図24に示す仮固定位置から
図25に示す係止完了位置に移行する際、ケーブル保持体60に保持されたツイストペアケーブル5は、ケーブル保持体60をハウジング20に取り付けるために加えた力を利用して、端子11のケーブル圧接部11bと接続され得る。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態によるケーブルコネクタ及びこれを含む電気コネクタ装置について説明する。ここでは、本発明の好適な実施形態のみを示すが、勿論、これによって本発明を限定しようとするものではない。例えば、本実施形態では、ツイストペアケーブルを用いているが、以下の記載から明らかなように、ツイストペアケーブルに限らず、例えば、シングルケーブル、撚線ケーブル等のケーブルを使用することもできる。
【0024】
本発明は、
図21等に示した従来のケーブルコネクタ10における構成部品の、特に、ハウジング20とケーブル保持体60の構成に改良を加えたものである。以下、これらの構成部品の構成を中心に説明する。特に説明しない事項については、特許文献1と同様に考えることもできるが、勿論、特許文献1に開示された構成に限定する意図はない。言い換えれば、本発明のハウジング20とケーブル保持体60は、特許文献1に開示された構成に適用可能なものであるが、勿論、これ以外の構成にも適用可能である。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態によるケーブルコネクタ10の構成部品であるハウジング20、端子支持体70、及びケーブル保持体60を上側から見た斜視図、
図2は、これらを下側から見た斜視図である。ケーブル保持体60は、ここでは2つ(60A、60B)設けられている。これら
図1、
図2は、ケーブル保持体60をハウジング20に取り付ける前の状態で、且つ、端子支持体70をハウジング20に取り付けた後の状態で示している。更に、
図3に、
図1、
図2に示したハウジング20及び端子支持体70の斜視図を、角度を変えて示す。
図4は、
図3の平面図、
図5は、その背面図である。
【0026】
端子支持体70は、複数の端子11を片持ち梁状に支持する。端子11は、一体成形によって端子支持体70に組み込まれてもよいし、圧入等を利用して端子支持体70に組み込まれてもよい。本例では一体成形されているものとする。一体成形後も、端子11の一部、例えば、端子11の前方、即ち、ハウジング20の基部21側に延出させた、端子11の先端11f付近や、端子11の後方、即ち、ツイストペアケーブル5(後述する
図13等参照)が圧接されるケーブル圧接部11b、更に、先端11fとケーブル圧接部11bを連結する配線部11e等は、露出されている。
【0027】
端子支持体70は板状の本体77を有する。本体77の上面77aには立設部75が、また、本体77の左右側面には外方に突出したロック突部71aが、更に、本体77の後縁には内部に向って切り欠かれた平面視U字状の切欠76が、それぞれ設けられている。ロック突部71aを、ハウジング20の板状側壁26に設けたロック穴26dに「α」方向に沿って嵌めることにより、端子支持体70はハウジング20に対してロックされ得る。ハウジング20に対する端子支持体70の取付け状態は、板状側壁26に設けた窓26eを通じて確認することもできる。
【0028】
端子支持体70によって支持された端子11は、それらの先端11fに設けた接点11d同士の間に、被接触物、例えば、基板コネクタ90(
図21参照)の嵌合穴97に設けた嵌合凸部が挿入された際に相手端子と接続されるギャップを形成し得る。ギャップは、「γ」方向に沿って形成され、端子11の先端11f側は、「γ」方向に沿って弾性変位可能である。
【0029】
立設部75は、端子支持体70の上面77aに、「γ」方向に沿って立ち上げた状態で設けられている。端子11は、立設部75において、端子支持体70に固定される。
【0030】
ケーブル圧接部11bは、端子支持体70の本体77の上面77aにおいて立設部75と同方向「γ」に延びている。これら5つのケーブル圧接部11bは、「β」方向に沿って所定の間隔をあけ、かつ「α」方向において交互に位置するように配置されている。ケーブル圧接部11bの先端部14は二股に分かれて溝を成しており、この溝にケーブル保持体60によって保持されたツイストペアケーブル5が圧入されるようになっている。溝に圧入されたツイストペアケーブル5の外側の被覆はここで切断され、この結果、内部の芯線が溝に挟み込まれて、ケーブル5と端子11は導通し得る。
【0031】
図6に、
図1、
図2に示したケーブル保持体60を上側から見た斜視図、
図7に、これを下側から見た斜視図、
図8に、ケーブル保持体60の側面図を、それぞれ示す。
【0032】
ケーブル保持体60は、本実施形態に示すように、互いに同じ大きさ及び形状を有する対60A、60Bで形成されていてもよい。同じ大きさ及び形状とすることにより、部品管理が容易となり、製造工程も簡易化される。但し、必ずしも同じ大きさ及び形状とする必要はなく、異なる大きさや形状としてもよい。また、所望の効果が得られるのであれば、完全に同じ大きさや形状とする必要はなく、実質的に同じ大きさや形状であれば足りる。尚、以下の記載では、ケーブル保持体60Aとケーブル保持体60Bとを区別する必要があるときにのみ、「A」、「B」の文字を付してそれらを区別する。
【0033】
ケーブル保持体60は、主に、略直方形状の本体67と、この本体67の底面67bから下方に片持ち梁状に延びるアーム部61と突部66を含む。
【0034】
アーム部61は、本体67の前面67e側にて側面67cに沿って延びている。アーム部61は板厚方向「β」に弾性変位可能である。片持ち梁状に延びたアーム部61の自由端付近には、端子支持体70の一部に設けた係止突部75a(
図1参照)に係止され得る係止突部61aが設けられている。
【0035】
突部66は、本体67の後面67f側にて延びている。突部66は、ケーブル保持体60がハウジング20に対して取り付けられたときに、端子支持体70に設けた切欠76に嵌る。突部66は、アーム部61と同方向に本体67の底面67bに立設されている。
【0036】
本体67には、前面67eと後面67fのそれぞれに達する複数の貫通孔63が、ケーブル5(後述する
図13等参照)の導出方向「K1」に沿う方向「K」に設けられている。これらの貫通孔63を利用して、ツイストペアケーブル5の一端側がケーブル保持体60に保持され、保持されたツイストペアケーブル5の一端側は、本体67の後面67fの側、即ち、ケーブル5の導出側から、本体67の外部に「K1」方向に導出している。一方、ケーブル保持体60に保持されたツイストペアケーブルの一端側における端部は、ケーブル5の導出側(67f)とは反対側(67e)において、本体67の前面67eの近傍に至る。
【0037】
本体67の底面67bに、端子支持体70のケーブル圧接部11bが挿入される挿通孔64が設けられている。挿通孔64は、ツイストペアケーブル5が挿通される貫通孔63と連通しており、ハウジング20へのケーブル保持体60の取付け時に、貫通孔63に挿通されたツイストペアケーブル5の被覆を、挿通孔64を通じて挿入されたケーブル圧接部11bによって切断できるようになっている。
【0038】
対向配置された本体67の外側面67c、67dのそれぞれに、少なくとも3つの係合部62a乃至62cが設けられている。これら3つの係合部62a乃至62cはそれぞれ、ケーブル保持体60の外側面67c、67dのそれぞれに、例えば外方に突出した凸状部として形成されている。導出方向「K1」に沿う方向「K」において、係合部62aは、ケーブル保持体60におけるケーブル55の導出側(67f)から遠い側(67e)に配置され、係合部62bは、導出側(67f)に近い側に配置され、係合部62cは、係合部62aと係合部62bの間に配置されている。
【0039】
係合部62aは、主として、ケーブル保持体60をハウジング20に仮留めすることを目的として設けられている。係合部62aは、導出方向「K1」に沿う方向「K」に比較的短い長さを有し、且つ、外側面67c、67dの外方に比較的小さく突出している。また、係合部62aは、「K」方向と交差する断面にて略台形状を有し、ハウジング20に対する取付け側に、例えばテーパー状の先細部620aを有する。
【0040】
係合部62cは、主として、ケーブル保持体60をハウジング20に固定することを目的として設けられている。係合部62cは、導出方向「K1」に沿う方向「K」に比較的長い長さを有し、且つ、外側面67c、67dの外方に比較的大きく突出している。係合部62cも、係合部62aと同様に、「K」方向と交差する断面にて略台形状を有し、ハウジング20に対する取付け側に、例えばテーパー状の先細部620cを有する。
【0041】
係合部62bは、主として、ケーブル保持体60をハウジング20に取り付ける際に、ケーブル保持体60をハウジング20に対して回動可能に保持すること、及び、ケーブル保持体60がハウジング20に対して「K」方向等にずれることを防止することを目的として設けられている。係合部62a、62cと異なり、係合部62bは、外側面67c、67dから突出した略円柱形状を有し、ケーブル保持体60は、係合部62bの略円柱に形成された曲面を利用して、ハウジング20に対して回動可能に設置される。係合部62bの略円柱の頂面端部をその一部において斜めに切り欠くことによって、テーパー620bが形成されている。
【0042】
図1乃至
図5を再び参照すると、ケーブル保持体60に設けたこれら3つの係合部62a乃至62cに対応して、対向配置されたハウジング20の板状側壁26の内側面27c、27dのそれぞれに、3つの対応係合部26a乃至26cが設けられている。これら3つの対応係合部26a乃至26cはそれぞれ、ハウジング20の内側面27c、27dのそれぞれに、内方に窪んだ凹状部として、本実施形態では、特に係止穴として形成されている。ハウジング20に対してケーブル保持体60を取り付ける際、ケーブル保持体60に設けた係合部62a乃至62cはそれぞれ、ハウジング20に設けた対応係合部26a乃至26cのそれぞれと係合して、凹状部と凸状部の組み合わせを構成し得る。
【0043】
図9乃至
図13は、ハウジング20にケーブル保持体60を取り付ける際の、ケーブル保持体60の姿勢及び位置を段階的に示した側面図である。ケーブル保持体60は、
図9、
図10の状態を順に経て、
図11、
図12の状態とされ、最終的に、
図13の状態とされる。
【0044】
ハウジング20にケーブル保持体60を取り付ける際、ケーブル保持体60に設けた係合部62a乃至62cのそれぞれと、ハウジング20に設けた対応係合部26a乃至26cのそれぞれが係合する。このとき、これら係合部62a乃至62cと対応係合部26a乃至26cとによって、ケーブル保持体60は、ハウジング20に対して少なくとも2つの係合位置、即ち、
図11、
図12に示した「第一の係合位置」と、
図13に示した「第二の係合位置」を採る。
【0045】
図11、
図12に示した第一の係合位置は、係合部62a、62bは対応係合部26a、26bとそれぞれ係合しているが、係合部62cは対応係合部26cと未だ係合していない位置である。
一方、
図13に示した第二の係合位置は、係合部62a、62b、62cの全てが対応係合部26a、26b、26cとそれぞれ係合している位置である。
言い換えれば、第一の係合位置は、ケーブル保持体60をハウジング20に対して仮留めするための位置(特許文献1における「仮固定位置」に相当)、一方、第二の係合位置は、ケーブル保持体60をハウジング20に対して固定(本留め)するための位置(上述した特許文献1における「係止完了位置」に相当)である。ハウジング20に対してケーブル保持体60を取り付ける際は、第一の係合位置から第二の係合位置へ向かう係合方向「γ1」、「γ2」に沿って、ケーブル保持体60をハウジング20に対して押し付ける。これにより、係合部62a乃至62cのそれぞれと、対応係合部26a乃至26cのそれぞれを係合させることができる。
【0046】
第一の係合位置及び第二の係合位置に関連して、対応係合部26aは更に、ケーブル保持体60がハウジング20に対して第一の係合位置に位置付けられたときに係合部62aを仮留めする仮留部260aと、ケーブル保持体60がハウジング20に対して第二の係合位置に位置付けられたときに係合部62aを当該位置に固定する固定部261aを含む。これら仮留部260aと固定部261aは、係合方向「γ1」、「γ2」(
図12、14参照)に沿う方向「γ」において互いに分離されている。尚、図示実施形態のように、固定部261aは、窓26eの一部としてもよい。
【0047】
また、第一の係合位置及び第二の係合位置に関連して、対応係合部26cは、ケーブル保持体60がハウジング20に対して第二の係合位置に位置付けられたときに係合部62cを固定する固定部として機能する。一方、ケーブル保持体60がハウジング20に対して第一の係合位置に位置付けられたときは、係合方向「γ1」、「γ2」に沿う方向「γ」と交差する方向に延びるハウジング20の上縁部262が対応係合部26cとして機能する。
【0048】
更に、第一の係合位置及び第二の係合位置に関連して、対応係合部26bは、ケーブル保持体60がハウジング20に対して第一の係合位置に位置付けられたときに係合部62bが係合する位置と、第二の係合位置に位置付けられたときに係合部62bが係合する位置との間で、係合部62bが係合、ここでは例えばスライドする態様で係合し得るように、係合方向「γ1」、「γ2」に沿って連続的に延びているスライド部として形成されている。
【0049】
ハウジング20の板状側壁26の内側面27c、27dには、ケーブル保持体60をハウジング20に取り付ける際に、係合部62bを対応係合部26bに案内する案内部として機能する凹状案内溝27aが設けられている(
図1、
図3参照)。凹状案内溝27aは、第一の係合位置から第二の係合位置へ向かう係合方向「γ1」、「γ2」に沿う方向「γ」と交差する方向「α」に沿って延び、ハウジング20の後面67fに形成される縁263から、各内側面27c、27dの更に内方に向って突出する凸部271aを経て対応係合部26bに至る。このように、凹状案内溝27aを、係合方向に沿う方向「γ」ではなく、これと交差する方向「α」に沿って設けることにより、ハウジング20の板状側壁26の強度を低下させることなく、そのような案内部を設けることができる。凹状案内溝27aには、また、ケーブル保持体60の係合部62bに設けたテーパー620bに対応して、対応係合部26bの側に進むにつれて、テーパー620bの通路を該テーパー620bとの関係において狭くするテーパー270aが設けられている。テーパー270aは最終的に凸部271aに至る。このようなテーパー270aを設けることにより、係合部62bを、よりスムーズに対応係合部26bに案内することができるようになっている。
【0050】
ケーブル保持体60をハウジング20に取り付ける際は、
図9に示すように、ケーブル保持体60を、ハウジング20に対して斜めに、更に詳細には、ケーブル保持体60の導出方向に沿う方向(K)と係合方向に沿う方向(γ)とが成す角度(「K」と「γ」が成す角度のうち小さい方の角度)を互いに鋭角に交差させた状態で、「α1」方向にてハウジング20に接近させる。尚、特に図示しないが、ケーブル保持体60の導出方向に沿う方向(K)と係合方向に沿う方向(γ)は互いに略直角としてもよい。この結果、先ず、ケーブル保持体60に設けた係合部62bが、ハウジング20に設けた凹状案内溝27a(
図1、
図3参照)へ挿入され、凹状案内溝27aに沿って案内される。係合部62bに設けたテーパー620bは、係合部62bがこのような姿勢にあるときに、対応係合部26bの側に位置し、凹状案内溝27aに設けたテーパー270aに対応して、対応係合部26bの側に進むにつれて、対向配置されたハウジング20の板状側壁26の内側面27c、27dが互いに接近する側に向って先細となるように形成されている。この結果、係合部62bは、初期段階においては、凹状案内溝27aにスムーズに案内され、その後は、テーパー270aを形成している板状側壁26の弾性作用を利用して、最後は、凹状案内溝27aの一部に設けた凸部271aを乗り越えることによって、対応係合部26bにパチンと嵌る。
【0051】
図10に、上記の手順を経て係合部62bを係合部26bと係合させた直後の状態が示されている。このとき、係合部62bは、導出方向「K1」方向においては、係合側とは反対側、即ち、テーパー620bが設けられていない側において、対応係合部26bと面することになるから、ケーブル保持体60がハウジング20から容易に抜け出してしまうことはない。
【0052】
図10の状態とした後、係合部62bを中心として、ケーブル保持体60をハウジング20に対して「θ」方向に回動させる。これにより、ケーブル保持体60は、
図11に示す第一の係合位置を採る。このとき、係合部62aは、先細部620a(
図6乃至
図8参照)と板状側壁26の弾性作用を利用して、仮留部260aに係合する。一方、係合部62cは未だ、対応係合部26cと係合しておらず、代わりに、係合部62cのテーパー状の先細部620cが、ハウジング20の上縁部262と係合した状態、ここでは、単に載置された状態とされる。また、このとき、係合部62cと対応係合部26cは、導出方向「K1」に沿う方向「K」において、圧接部11bの近傍に位置付けられるように調整されている。
図12は、
図11に示したのと同様の方法で、ケーブル保持体60Bを、ハウジング20に取り付けた後の状態、言い換えれば、第一の係合位置を示したものである。
図11、
図12に示した第一の係合位置は、製品出荷時における状態に相当するものであって、係合部62cと対応係合部26cは未だ係合していないにもかかわらず、係合部62aと仮留部260aの係合、及び、係合部62bと係合部26bの係合を通じて、安定した状態で維持される。
【0053】
図11、
図12に示す状態とした後、治具等を用いて、第一の係合位置から第二の係合位置へ向かう係合方向「γ1」、「γ2」に、ケーブル保持体60をハウジング20に対して押し付ける。これにより、ケーブル保持体60は、
図13に示す第二の係合位置を採る。このとき、係合部62aは、板状側壁26の弾性作用等を利用して固定部261aと係合し、また、係合部62cは、先細部620cと板状側壁26の弾性作用等を利用して、対応係合部26cに係合し、更に、係合部62bは、対応係合部26bにおいて、仮留位置260bから固定位置261bにスライド移動する。係合部62bの対応係合部26bにおけるスライド移動の方向は、第一の係合位置から第二の係合位置を採るときにおける、ケーブル保持体60A、60Bのハウジング20に対する移動方向、即ち、係合方向「γ1」、「γ2」と同じであることから、ケーブル保持体60は、係合部62bと対応係合部26bの係合を利用して、その姿勢を保持したまま、第一の係合位置から第二の係合位置に至ることができる。また、このとき、係合部62bは、係合部62bが導出方向「K1」へ移動することを防止するストッパとして機能し、且つ、ケーブル保持体60をハウジング20に押し付ける際の、その押付方向「γ」を規定するガイドとしても機能する。
ケーブル保持体60をハウジング20に押し付けて第一の係合位置から第二の係合位置とする際、各ケーブル5は、各ケーブル圧接部11bに圧接されることになるが、この結果、各ケーブル圧接部11bが位置する部分、言い換えれば、導出方向「K1」に沿う方向「K」において、係合部62c及び対応係合部26cを設けた部分において、ユーザは大きな反力を受けることになる。このため、治具等を用いた押し付け作業は、係合部62c及び対応係合部26cを設けた位置の近傍で行うのが好ましい。これら係合部62c及び対応係合部26cは、導出方向「K1」に沿う方向「K」において、係合部62a乃至62cの中間及び対応係合部26a乃至26cの中間に位置付けられていることから、力を均等に分散する意味という意味においても、係合部62c及び対応係合部26cを設けた位置の近傍で押し付け作業を行うのが好ましい。この位置で押し付け作業を行うことにより、姿勢を保った状態で、更に言えば、係合部62aの側を浮き上がらせたり、逆に、係合部62b側を浮き上がらせたりさせることなく、ケーブル保持体60を、
図11、
図12に示す第一の係合位置から、
図13に示す第二の係合位置とすることができる。尚、係合部62cには比較的大きな力を加えることになるため、係合部62cの突出は、係合部62aのそれよりも大きく設定されている。
【0054】
図11乃至
図13に示すように、ケーブル保持体60がハウジング20に対して第一又は第二の係合位置に位置付けられたとき、導出方向に沿う方向「K」と係合方向に沿う方向「γ」は互いに交差、本実施形態では、略90度の角度で交差する。この結果、
図13に示す状態において、仮に、ケーブル保持体60によって保持されたケーブル5の、特に導出側(
図11、
図12等の67f参照)において、ケーブル5に、例えば、係合方向に沿う「γ2」方向に誤って力が加えられると、係合部62cと対応係合部26cの係合部に大きな力が加わることになるが、ケーブル保持体60に設けた係合部62a乃至62cのそれぞれと、ハウジング20に設けた対応係合部26a乃至26cのそれぞれを係合させる位置は、導出方向「K1」に沿う方向「K」において、互いに離間して設けられていることから、仮に、そのような力が加わった場合でも、導出側とは反対側(
図11、
図12等の67e参照)における係合手段、特に、係合部62aと対応係合部26aの係合を通じて、ケーブル保持体60がハウジング20から外れてしまうことを効果的に防止することができる。
【0055】
最後に、
図14乃至
図20を参照して、第一の係合位置にあるケーブル保持体60のハウジング20に対する状態を更に詳細に説明する。
図14は、
図12に対応する側面図、
図15は、
図12に示したケーブル保持体60及びハウジング20等を後ろ側から見た斜視図である。
また、
図16乃至
図19は、それぞれ、
図14におけるA−A線乃至E−E線断面図である。
図16は、特に、ケーブル保持体60の係合部62cと、ハウジング20の上縁部262との係合状態を示すもの、
図17は、特に、ケーブル保持体60の係合部62aと、ハウジング20の対応係合部26a(仮留部260a)との係合状態を示すもの、
図18は、特に、ケーブル保持体60の係合部62cと、ハウジング20の対応係合部(固定部)26cとの関係を示すもの、
図19は、特に、ケーブル保持体60の係合部62bと、ハウジング20の対応係合部(スライド部)26bとの係合状態を示すものとなっている。
【0056】
これら
図14乃至
図20に示す状態は、例えば、製品出荷時における状態に相当する。このとき、ケーブル5は未だ取り付けられていないが、ケーブル保持体60は、ハウジング20に対して、第一の係合位置に既にプリセットされた状態にある。既に説明したように、このプリセットされた状態は、係合部62aと仮留部260aの係合、及び、係合部62bと係合部26bの係合を通じて、安定的に維持される。従って、製品出荷中に生じる振動等によって、第一の係合位置が解除されてしまうことはない。
【0057】
また、製品が工場等の作業現場に届いた後に行われる、ケーブル保持体6に対する結線作業時においても、このプリセットされた状態は安定的に維持される。結線作業中、取り分け、第一の係合位置の状態において既にケーブル保持体60にケーブル5(
図12等参照)の一端側を保持させた状態にあるときであって、ユーザが誤ってケーブルに触れて、ケーブルを介してケーブル保持体60に力を加えてしまった場合、より具体的には、ケーブル保持体60A又は60Bのそれぞれをハウジング20に対して「γ1」方向又は「γ2」方向に押し付ける方向とは逆方向の、即ち、ケーブル保持体60をハウジング20から引き離す方向の力を加えてしまった場合でも、本構成によれば、ケーブルを保持している側とは、導出方向「K1」に沿う方向「K」において、反対側に位置する係合部62aと対応係合部26aが係合していることから、プリセットされた第一の係合位置を確実に維持することができる。
【0058】
結線作業の後は、ケーブル保持体60の上面67aに設けた押圧部65(
図1、
図15等によく示されている)を治具等を用いて押圧するだけで、
図13に示した第二の係合位置とすることができる。
この場合、係合部62cは、実施形態に示すように、導出方向「K1」に沿う方向「K(α)」においてケーブル圧接部11bの対応位置に配置されるように位置付け、且つ、押圧部65を係合部62cの近傍に設けるのが好ましい。このような構成とすることにより、押圧部65に与えた力をより効率的に、ケーブル圧接部11bの上部に配置されたケーブル5に伝達することができる。
【0059】
尚、本発明は、上述した実施の形態に限定されるわけではなく、その他種々の変更が可能である。
例えば、上に説明した実施形態では、ケーブル保持体60の外側面67c、67dに設けた係合部62a乃至62cは、外側面67c、67dのそれぞれから、例えば外方に突出した凸状部とし、一方、ハウジング20の内側面27c、27dに設けた対応係合部26a乃至26cは、内側面27c、27dのそれぞれに、例えば内方に窪んだ凹状部としているが、これとは逆に、ケーブル保持体60の外側面67c、67dに設けた係合部62a乃至62cを、例えば内方に窪んだ凹状部とし、ハウジング20の内側面27c、27dに設けた対応係合部26a乃至26cを、例えば外方に突出した凸状部としてもよい。
【0060】
また、例えば、上の実施形態は、電気ケーブルに適用する例を示したが、光ファイバケーブル等にも本発明の構成を適用することもできる。このように本願の図面及び説明は例示に過ぎず、これに限定されるものではない。